特許第6127483号(P6127483)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6127483
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】カーテンウォールの搬送システム
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/14 20060101AFI20170508BHJP
   E04B 2/90 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   E04G21/14
   E04B2/90
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-268028(P2012-268028)
(22)【出願日】2012年12月7日
(65)【公開番号】特開2014-114559(P2014-114559A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2015年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】笹原 大介
(72)【発明者】
【氏名】小林 秀典
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 靖洋
(72)【発明者】
【氏名】兼杉 崇
(72)【発明者】
【氏名】橋本 浩明
(72)【発明者】
【氏名】栄 志学
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−336233(JP,A)
【文献】 特公平06−068216(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/88 − 2/96
E04G 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーテンウォールを建物の外周面に沿って垂直に搬送する垂直搬送システムと、
カーテンウォールを前記建物の外周面に沿って水平に搬送する水平搬送システムとを備えるカーテンウォールの搬送システムであって、
前記垂直搬送システムは、
カーテンウォールを支持する架台と、
カーテンウォールの設置階よりも上階に設置され、前記架台を引揚げる垂直搬送用の揚重装置と、
設置済のカーテンウォールのサッシに着脱可能に設けられた仮設材であるガイドレールと、
前記架台に設けられ、前記架台を前記ガイドレールに沿って昇降するように案内するガイド機構とを備え、
前記水平搬送システムは、
カーテンウォールの設置階と前記垂直搬送用の揚重装置の設置階との間に設置され、前記建物の外周面に沿って水平に延びる水平レールと、
前記水平レールに沿って移動可能に前記水平レールに支持され、カーテンウォールを高さ調整可能に吊持する吊持装置とを備えるカーテンウォールの搬送システム。
【請求項2】
カーテンウォールの上部に着脱可能に設けられ、前記吊持装置が接続されるブラケットを備える請求項1に記載のカーテンウォールの搬送システム。
【請求項3】
前記架台に設けられ、前記ブラケットを介してカーテンウォールを前記架台上に引揚げる架台用の揚重装置を備える請求項に記載のカーテンウォールの搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーテンウォールの搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
カーテンウォールを屋外で建物外周面の設置位置まで搬送する搬送システムとして様々なものが知られている(例えば、特許文献1〜4参照)。特許文献1に記載の搬送システムでは、設置済のカーテンウォールのサッシをガイドレールとし、カーテンウォールにガイド部材を取り付けて、これらによってカーテンウォールの上昇を案内している。また、特許文献2に記載の搬送システムでは、設置済のカーテンウォールのサッシをガイドレールとし、カーテンウォールにガイドローラーを取り付けて、これらによってカーテンウォールの上昇を案内している。
【0003】
また、特許文献3に記載の搬送システムでは、カーテンウォールの設置位置の上下にレールを架設し、カーテンウォールの下部にガイドローラーを設けて、これらによってカーテンウォールの水平移動を案内している。さらに、特許文献4に記載の搬送システムでは、2本のガイドワイヤーを平行に張架し、カーテンウォールを2本のガイドワイヤーに上下動可能に連結して、2本のガイドワイヤーによってカーテンウォールの上昇を案内している。また、2本のガイドワイヤーとウインチとを水平移動可能に支持する水平レールを建物上部に設置することにより、カーテンウォールの水平移動を可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−317207号公報
【特許文献2】特開平7−62871号公報
【特許文献3】特開平10−8610号公報
【特許文献4】特開2008−248664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2に記載の搬送システムでは、カーテンウォールを垂直に搬送するのみで水平に搬送することができない。また、特許文献3に記載の搬送システムでは、カーテンウォールの水平方向への移動はガイド機構によって案内されるものの、カーテンウォールの上昇は案内されないため、上昇時のカーテンウォールは前後左右に振れることになる。また、特許文献4に記載の搬送システムでは、建設する建物が高層ビルになると、ガイドワイヤーを建物の下層から上層まで張架することは困難であるため、高層ビルの施工には不適合である。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、カーテンウォールの垂直方向及び水平方向への搬送を案内でき、高層の建物の施工にも適合するカーテンウォールの搬送システムを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るカーテンウォールの搬送システムは、カーテンウォールを建物の外周面に沿って垂直(鉛直)に搬送する垂直搬送システムと、カーテンウォールを前記建物の外周面に沿って水平に搬送する水平搬送システムとを備えるカーテンウォールの搬送システムであって、前記垂直搬送システムは、カーテンウォールを支持する架台と、カーテンウォールの設置階よりも上階に設置され、前記架台を引揚げる垂直搬送用の揚重装置と、設置済のカーテンウォールのサッシに着脱可能に設けられた仮設材であるガイドレールと、前記架台に設けられ、前記架台を前記ガイドレールに沿って昇降するように案内するガイド機構とを備え、前記水平搬送システムは、カーテンウォールの設置階と前記垂直搬送用の揚重装置の設置階との間に設置され、前記建物の外周面に沿って水平に延びる水平レールと、前記水平レールに沿って移動可能に前記水平レールに支持され、カーテンウォールを高さ調整可能に吊持する吊持装置とを備える。
【0009】
前記カーテンウォールの搬送システムは、カーテンウォールの上部に着脱可能に設けられ、前記吊持装置が接続されるブラケットを備えてもよい。
【0010】
前記カーテンウォールの搬送システムは、前記架台に設けられ、前記ブラケットを介してカーテンウォールを前記架台上に引揚げる架台用の揚重装置を備えてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、カーテンウォールの垂直方向及び水平方向への搬送を案内でき、高層の建物の施工にも適合できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態に係るカーテンウォールの搬送システムの概要を示す立面図である。
図2】垂直搬送システムを示す立面図(正面図)である。
図3図2の3−3矢視図(側面図)である。
図4】架台を示す平面図である。
図5】ガイドローラーユニットを拡大して示す平面図である。
図6図5の6−6矢視図である。
図7図5の7−7矢視図である。
図8】下部振れ止め機構を拡大して示す側面図である。
図9】上部振れ止め機構を拡大して示す側面図である。
図10】下部振れ止め機構と上部振れ止め機構との高さ方向の距離を調整する調整機構を示す側面図である。。
図11】水平搬送システムを示す側面図(一部断面図)である。
図12】一組の垂直搬送システムと水平搬送システムとを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、一実施形態に係るカーテンウォール1の搬送システム100の概要を示す立面図である。この図に示すように、搬送システム100は、建設中の高層ビル2の屋外に設置された複数の垂直搬送システム10及び複数の水平搬送システム50とを備えている。カーテンウォール1は、上下2枚のガラスとこれらを保持するサッシとからなり、ビル1階分の高さを有する外壁ユニットである。
【0014】
垂直搬送システム10は、建設中の高層ビル2の複数階毎に2組ずつ設置され、水平搬送システム50は、複数階毎に1組ずつ設置されている。垂直搬送システム10は、建設中の高層ビル2の所定階のフロアレベルに設置された揚重装置12と、揚重装置12によって揚重される架台20とを備えている。また、水平搬送システム50は、揚重装置12の設置階の1階下のフロアレベルに当該階の全周に亘って設置された水平レール60と、水平レール60に沿って移動可能に設けられた揚重装置52とを備えている。垂直搬送システム10では、揚重装置12が、カーテンウォール1を支持した架台20を、建設中の高層ビル2の外周面に沿って垂直(鉛直)に揚重する。そして、水平搬送システム50では、揚重装置52が、カーテンウォール1をその上部に取り付けられたブラケット3を介して吊持した状態で、水平レール60に沿って水平に搬送する。
【0015】
図2は、垂直搬送システム10を示す立面図(正面図)であり、図3は、図2の3−3矢視図(側面図)である。また、図4は、架台20を示す平面図である。これらの図に示すように、垂直搬送システム10は、揚重装置12と、揚重装置12の設置階のフロアレベルに設置された架台14と、架台14上に水平移動可能に構成され、揚重装置12が固定された移動台16と、制御盤18と、コントローラー19とを備えている。
【0016】
揚重装置12は、電動ウインチであり、ワイヤを介して架台20を揚重する。また、架台14は、揚重装置12の設置階の床面から屋外に張り出すように設置されている。この架台14の上面には、ビル外周面に沿って延びる一対のレールが設けられ、移動台16の下面には、レールに沿って走行可能な車輪16Aが設けられている。また、移動台16の下面には、一対のアンカーブロック16Bが設けられており、このアンカーブロック16Bで移動台16を架台14に固定することが可能である。これにより、揚重装置12をビル外周面に沿って水平に移動させて揚重装置12の水平方向の位置を調整し、その位置で揚重装置12を架台14に固定することが可能である。
【0017】
コントローラー19は、ジョイスティック式の操作装置であり、有線で制御盤18に接続されている。作業者によりコントローラー19が操作されると、制御盤18から揚重装置12に駆動信号が送信されて揚重装置12が駆動される。
【0018】
架台20は、2枚のカーテンウォール1が横に並べられて立てられた状態で設置される縦長の台であり、複数の角型の鋼管21A〜Fが組み合わされて構成された本体21を備える。また、架台20は、本体21の上部に設置された左右一対の揚重装置22と、本体21の左側に設置された上下一対のガイドローラーユニット23と、本体21の右側に設置された上下一対のガイドローラーユニット24と、本体21の下部と上下方向中間部とに夫々設置された下部振れ止め機構25及び上部振れ止め機構26とを備えている。
【0019】
鋼管21Aは、本体21の上部に水平に配されている。この鋼管21Aには、左右一対のワイヤロープ取付部27が設けられている。左右のワイヤロープ取付部27は、鋼管21Aの軸方向中央部から等距離の位置に設けられており、揚重装置12のフック12Fに掛けられた玉掛けワイヤロープWRがシャックルSを介して取り付けられている。また、鋼管21Aには、左右一対の揚重装置取付部28が設けられている。左右の揚重装置取付部28は、鋼管21Aの軸方向端部に設けられており、揚重装置22が吊り下げられている。
【0020】
左右一対の鋼管21Bは、鉛直に配されてその上端が鋼管21Aに結合されている。左右の鋼管21Bは、左右のワイヤロープ取付部27の直下に配されている。上下一対の鋼管21Cは、水平に配されて一対の鋼管21Bの中間部又は下端部に結合されている。この鋼管21Cの両端には、ガイドローラーユニット23、24が取り付けられている。
【0021】
左右一対の鋼管21Dは、左右一対の鋼管21Bを左右に挟むように鉛直に配されて上下一対の鋼管21Cに結合されている。また、左右一対の鋼管21Eは、夫々鋼管21Bと鋼管21Dの上端部との間に水平に配されてこれらを結合している。さらに、鋼管21Fは、本体21の下部に水平に配されて左右一対の鋼管21Dの下端に結合されている。
【0022】
揚重装置22は、電動式のチェーンブロックであり、カーテンウォール1の上部に取り付けられたブラケット3にフック22Fを掛けた状態で、カーテンウォール1を架台20上まで引揚げる。ガイドローラーユニット23、24は、架台20の昇降を案内する。ここで、ビル外周面に設置済のカーテンウォール1のサッシには、仮設材であるガイドレール4が取り付けられており、このガイドレール4が複数階に亘って鉛直方向に連続している。ガイドローラーユニット23、24は、ガイドレール4に沿って昇降することにより、架台20の昇降を案内する。
【0023】
下部振れ止め機構25は、鋼管21Fの軸方向中央部及び両側部に取り付けられた3個の振れ止め材37を備えており、これらによりカーテンウォール1の下部の振れ止めを行う。また、上部振れ止め機構26は、左右一対の鋼管21Dの上端部と左右一対の鋼管21Bの上下方向中間部とに取り付けられた4個の振れ止め材38を備えており、これらによりカーテンウォール1の上部の振れ止めを行う。
【0024】
図5は、ガイドローラーユニット23、24を拡大して示す平面図であり、図6は、図5の6−6矢視図であり、また、図7は、図5の7−7矢視図である。これらの図に示すように、ガイドレール4は、互いに平行な一対のフランジ4Fと、これらを結合する互いに平行な一対のウェブWとにより、断面II(ローマ数字の2)字状に構成されており、左右両側にコ字状の溝4Cが形成されている。
【0025】
ガイドローラーユニット23、24は、複数のガイドローラー31と、複数のガイドローラー32とを備えている。複数のガイドローラー31は、各組2個ずつの複数組に分けられており、各組の2個のガイドローラー31は、一対のウェブ4Wを左右に挟むように配され、複数組のガイドローラー31は、上下方向に並べて配されている。このガイドローラー31は、カーテンウォール1に対して直交する回転軸の周りに回転可能であり、その外周面をウェブ4Wに当接させた状態で回転可能である。このため、複数組のガイドローラー31とこれらに挟まれるウェブ4Wとが、架台20の左右の振れを止める。
【0026】
また、複数のガイドローラー32は、各組2個ずつの複数組に分けられており、各組の2個のガイドローラー31は、一対のウェブ4Wを左右に挟むように配され、複数組のガイドローラー32は、上下方向に並べて配されている。このガイドローラー32は、ガイドローラー31の回転軸に対して直交する水平な回転軸の周りに回転可能であり、その外周面をフランジ4Fに当接させた状態で回転可能である。このため、複数組のガイドローラー32とこれらを挟む一対のフランジ4Fとが、架台20の前後の振れを止める。
【0027】
図5に示すように、ガイドローラーユニット23、24は、左右一対のローラーホルダー33を備えており、このローラーホルダー33にガイドローラー31、32が回転可能に取り付けられている。また、鋼管21Cには左右一対のブラケット34が結合され、ローラーホルダー33には左右一対のブラケット33Aが設けられている。この左右一対のブラケット33Aが左右一対のブラケット34の間に挿入されており、これらは、左右方向に貫通する連結ピン35により結合されている。
【0028】
ここで、ガイドローラーユニット23では、左右のブラケット33Aとそれらの外側のブラケット34とが、隙間が無い状態で結合されているのに対して、ガイドローラーユニット24では、左右のブラケット33Aとそれらの外側のブラケット34とが、カラー36を挟んだ状態で結合されている。すなわち、ガイドローラーユニット24では、カラー36の厚みを変えて左右のブラケット33Aとそれらの外側のブラケット34との隙間を調整することによって、ガイドローラーユニット24と鋼管21Cとの左右方向の相対位置を調整することが可能になっている。
【0029】
図8は、下部振れ止め機構25を拡大して示す側面図である。この図に示すように、カーテンウォール1の下端には、ビル外周面に沿って水平に延びる溝1Aが設けられている。下部振れ止め機構25が備える3個の振れ止め材37は、鋼管21Fから前方へ水平に突出して直角に上側に屈曲するL字状のフック部37Aを備えている。このフック部37Aの先端が、カーテンウォール1の下端の溝1Aに嵌ることにより、カーテンウォール1の下部の前後の振れが止まる。
【0030】
図9は、上部振れ止め機構26を拡大して示す側面図である。この図に示すように、カーテンウォール1の上端には、ビル外周面に沿って水平に延びる溝1Bが設けられている。上部振れ止め機構26が備える4個の振れ止め材38は、鋼管21B又は鋼管21Dの側面に回動可能に取り付けられたL字状のフック部38Aと、このフック部38Aを図中反時計周り方向に付勢するバネ(図示省略)とを備えている。フック部38Aは、鋼管21B又は鋼管21Dから前方へ突出して直角に下側に屈曲する。このフック部38Aの先端が、カーテンウォール1の上端の溝1Bに嵌ることにより、カーテンウォール1の上部の前後の振れが止まる。また、フック部38Aをバネの付勢力に抗して図中時計周り方向に回動させることにより、フック部38Aをカーテンウォール1の上部の溝1Bから外すことができる。
【0031】
図10は、下部振れ止め機構25と上部振れ止め機構26との高さ方向の距離を調整する調整機構40を示す側面図である。この図に示すように、調整機構40は、鋼管21Fと一体で形成されて鋼管21Fから鉛直上方に延びる角型の鋼管41を備える。この鋼管41には、鋼管21Dの下部が挿入されており、鋼管41と鋼管21Dの下部とはボルトで固定されている。
【0032】
ここで、鋼管41及び鋼管21Dの下部には上下方向に所定間隔で複数のボルト通し孔Hが形成されており、鋼管41と鋼管21Dとの結合位置を変えることにより、鋼管21Dの下端から鋼管21Fまでの長さを調整し、下部振れ止め機構25と上部振れ止め機構26との高さ方向の距離を調整することが可能である。これによって、カーテンウォール1の高さ寸法に応じて、下部振れ止め機構25と上部振れ止め機構26との高さ方向の距離を調整することが可能であり、高さ寸法が異なる複数種類のカーテンウォール1を、架台20に設置することが可能である。
【0033】
図11は、水平搬送システム50を示す側面図(一部断面図)である。これらの図に示すように、水平搬送システム50は、揚重装置52と、水平レール60と、水平レール60を設置階に支持する架台62と、揚重装置52を水平レール60に移動可能に支持する支持機構70と、揚重装置52に給電する給電機構80とを備えている。
【0034】
揚重装置52は、電動チェーンブロックであり、チェーンCとブラケット3とを介してカーテンウォール1を揚重する。この揚重装置52は、不図示の有線又は無線のリモコンで操作される。水平レール60は、I形鋼である。架台62は、揚重装置52の設置階の床面から屋外に張り出すように設置されており、この架台62の先端部の下面に水平レール60の上側のフランジ60Fが固定されている。また、架台62の先端部と上階の架台20の基端部とは斜張材としてのワイヤロープ63で繋がれており、架台62に作用する荷重が、上階の躯体で支えられる。
【0035】
支持機構70は、揚重装置52に固定され揚重装置52から上方へ張り出した一対の支持板72と、一対の支持板72に支持された一対のガイドローラー74とを備えている。一対の支持板72は、水平レール60をフランジ60Fの幅方向に挟むように配されている。また、ガイドローラー74は、一対の支持板72の間に、水平レール60のウェブ60Wを挟み、下側のフランジ60F上を転動できるように配されている。このため、揚重装置52に水平方向の力が与えられると、ガイドローラー74が水平レール60の下側のフランジ60F上で転動することにより、揚重装置52が水平レール60に沿って移動する。
【0036】
給電機構80は、架台62の先端部にブラケット81を介して取り付けられたトロリーダクト82と、一方の支持板72にブラケット83を介して取り付けられたトロリー84とを備えている。トロリーダクト82は、水平レール60に沿って延びており、複数列の端子が水平レール60に沿って配されている。このトロリーダクト82は電源に接続されている。トロリー84は、トロリーダクト82の端子に接触する複数の端子を備え、揚重装置52と電源ケーブルで接続されている。このため、揚重装置52の位置や停止・移動の状態にかかわらず、トロリーダクト82及びトロリー84を介して揚重装置52に電源を供給できる。
【0037】
図12は、一組の垂直搬送システム10と水平搬送システム50とを示す側面図である。この図に示すように、垂直搬送システム10の揚重装置12は、フック12Fが水平レール60とビル外周面との間を通って昇降するように配され、水平搬送システム50の揚重装置52は、フック52Fが水平レール60の直下で昇降するように配されている。
【0038】
以下、カーテンウォール1を設置位置まで搬送して設置する方法について説明する。まず、カーテンウォール1を垂直搬送システム10の架台20に載せる(図2〜4参照)。この工程では、まず、ブラケット3とガイドレール4とをカーテンウォール1に取り付ける。また、架台20の下方の屋外スペースに台車を設置する。そして、その台車の上にカーテンウォール1を、ブラケット3側が架台20の下方に位置するように寝かせた状態で載置する。そして、揚重装置22のフック22Fをブラケット3に掛けて、揚重装置22によりカーテンウォール1を引揚げる。この際、カーテンウォール1がその上部側から引揚げられるのに追従して、台車がビル屋内側へ移動する。これにより、カーテンウォール1の下部が引きずられることを防止でき、カーテンウォール1の下部に傷がつくことを防止できる。
【0039】
そして、揚重装置22により架台20上に引揚げたカーテンウォール1の下部を、下部振れ止め機構25にセットする。この際、振れ止め材37のフック部37Aの先端を、カーテンウォール1の下部の溝1Aに嵌める(図8参照)。また、カーテンウォール1の上部を、上部振れ止め機構26にセットする。この際、振れ止め材38のフック部38Aの先端を、カーテンウォール1の上部の溝1Bに嵌める(図9参照)。
【0040】
つぎに、垂直搬送システム10の揚重装置12により架台20を、カーテンウォール1の設置階まで揚重する(図12参照)。この工程では、架台20は、左右両側のガイドローラーユニット23、24と、ビル外周面に残置されている左右一対のガイドレール4とにより前後左右に位置決めされた状態で上昇する。ここで、ガイドローラーユニット23、24のガイドローラー31と、ガイドレール4の一対のウェブ4Wとにより、架台20の左右方向の位置決めがなされ、ガイドローラーユニット23、24のガイドローラー32と、ガイドレール4の一対のフランジ4Fとにより、架台20の前後方向の位置決めがなされる。これにより、架台20を安定した状態で揚重することができる。
【0041】
つぎに、カーテンウォール1を、垂直搬送システム10の揚重装置12から水平搬送システム50の揚重装置52に受け替える(図12参照)。この工程では、まず、水平搬送システム50の揚重装置52のフック52FをワイヤロープWR及びシャックルSを介してブラケット3に取り付け、架台20の揚重装置22のフック22Fをブラケット3から取り外す。また、上部振れ止め機構26の振れ止め材38をカーテンウォール1の上部の溝1Bから外す。そして、揚重装置52でカーテンウォール1を揚重する。
【0042】
つぎに、カーテンウォール1を設置位置まで水平に移動させる。ここで、水平搬送システム50の揚重装置52は、水平レール60に水平移動可能に吊り下げられているため、カーテンウォール1をビル外周面に沿って横方向に押すことにより、カーテンウォール1を揚重装置52と共に水平方向に移動させることができる。
【0043】
最後に、カーテンウォール1を所定位置に設置する。この工程では、カーテンウォール1の水平方向の位置を調整すると共に、リモコンで揚重装置52を操作してカーテンウォール1の高さを調節する。そして、カーテンウォール1を所定位置に固定する。その後、ブラケット3をカーテンウォール1から取り外す。
【0044】
ところで、カーテンウォール1は、建設工事中の高層ビル2の下層の所定階に搬入して、当該階から設置位置まで搬送システム100により屋外で搬送する。ここで、垂直搬送システム10によりカーテンウォール1を垂直に搬送する際には、設置済のカーテンウォール1に取り付けられたガイドレール4を使ってカーテンウォール1の搬送を案内する。そのため、カーテンウォール1の設置は、下層から高層へと進めていく。その際、カーテンウォール1の設置を下層で行う際には、下層に設置した搬送システム100を使用し、カーテンウォール1の設置を高層で行う際には、高層に設置した搬送システム100を使用する。ここで、カーテンウォール1の搬送路に水平レール60や架台62等が位置しないように、カーテンウォール1の設置が完了した階層の水平搬送システム50は撤去しておく。
【0045】
以上説明したように、本実施形態に係るカーテンウォール1の搬送システム100では、垂直搬送システム10が、カーテンウォール1を支持する架台20と、カーテンウォール1の設置階よりも上階に設置され、架台20を引揚げる垂直搬送用の揚重装置12と、設置済のカーテンウォール1のサッシに着脱可能に設けられたガイドレール4と、架台20に設けられ、架台20をガイドレール4に沿って上昇するように案内するガイドローラーユニット23、24とを備える。また、水平搬送システム50が、カーテンウォール1の設置階と垂直搬送用の揚重装置12の設置階との間に設置され、建設中の高層ビル2の外周面に沿って水平に延びる水平レール60と、水平レール60に沿って移動可能に水平レール60に支持され、カーテンウォール1を高さ調整可能に吊持する揚重装置52とを備える。
【0046】
以上の構成を備えるカーテンウォール1の搬送システム100によれば、まず、カーテンウォール1を、その設置階又はそれよりも上階まで、ガイドレール4とガイドローラーユニット23、24とにより案内される状態で、垂直搬送用の揚重装置12により揚重することができる。ここで、ガイドレール4は、カーテンウォール1の設置が下層から高層へと進むにつれて上方へ延びていく。そのため、ガイドレール4とガイドローラーユニット23、24とにより、カーテンウォール1の垂直搬送を高層まで案内することができる。そして、カーテンウォール1は、垂直搬送用の揚重装置12に支持された架台20に支持されているため、架台20に支持された状態のカーテンウォール1に水平搬送用の揚重装置52を接続することにより、カーテンウォール1を垂直搬送用の揚重装置12から水平搬送用の揚重装置52に受け替えることができる。さらに、カーテンウォール1を、揚重装置52と共に水平レール60に沿って水平に移動させると共に、揚重装置52で高さを調整することにより、カーテンウォール1を設置位置まで搬送することができる。以上により、本実施形態に係るカーテンウォール1の搬送システム100によれば、カーテンウォール1の垂直方向及び水平方向への搬送を案内することができ、高層ビル2の施工にも適合できる
【0047】
また、仮設材であるガイドレール4をカーテンウォール1のサッシに着脱可能に設けたことによって、本設材であるカーテンウォール1に傷がつくことを防止できる。また、カーテンウォール1の上部に、水平搬送用の揚重装置52のフック52Fを掛けるブラケット3を着脱可能に設けたことによって、垂直搬送用の揚重装置12から水平搬送用の揚重装置52へのカーテンウォール1の受替えを容易に実施できる。
【0048】
また、架台20に設けた揚重装置22によりブラケット3を介してカーテンウォール1を架台20上に引揚げることによって、カーテンウォール1を架台20に載せる作業を容易に実施できる。
【0049】
また、カーテンウォール1を支持する架台20を、垂直搬送用の揚重装置12で揚重するようにしたことによって、複数のカーテンウォール1を架台20に支持させて、その架台20を揚重装置12で揚重することが可能になる。即ち、複数のカーテンウォール1を一度で垂直方向に搬送することができる。
【0050】
また、カーテンウォール1を搬入する下層の所定階から最上階まで、カーテンウォール1を屋外で垂直方向に搬送することが可能である。これにより、カーテンウォール1を建設中の高層ビル2の屋内で運搬する作業を削減することができる。また、カーテンウォール1の保管・組付作業の場所を、上記下層の所定階のみにすることができる。即ち、内装作業と外装作業とを区別でき、また、所定階での集中作業が可能になる。
【0051】
なお、上述の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。例えば、上述の実施形態では、ガイドレール4を仮設材とし、カーテンウォール1のサッシに着脱可能に設けたが、ガイドレール4を本設材とし、カーテンウォール1のサッシに一体で設けてもよい。また、架台20の昇降を案内するためのガイド機構として、ガイドローラー31、32をガイドレール4の溝4Cに嵌まり込むように設けたが、その代わりにゴム等の弾性部材をガイドレール4の溝4Cに嵌まり込むように設ける等してもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 カーテンウォール、1A 溝、1B 溝、2 高層ビル、3 ブラケット、4 ガイドレール、4C 溝、4F フランジ、4W ウェブ、10 垂直搬送システム、12 揚重装置、12F フック、14 架台、16 移動台、16A 車輪、16B アンカーブロック、18 制御盤、19 コントローラー、20 架台、21 本体、21A 鋼管、21B 鋼管、21C 鋼管、21D 鋼管、21E 鋼管、21F 鋼管、22 揚重装置、22F フック、23 ガイドローラーユニット、24 ガイドローラーユニット、25 下部振れ止め機構、26 上部振れ止め機構、27 ワイヤロープ取付部、28 揚重装置取付部、31 ガイドローラー、32 ガイドローラー、33 ローラーホルダー、33A ブラケット、34 ブラケット、35 連結ピン、36 カラー、37 振れ止め材、37A フック部、38 振れ止め材、38A フック部、40 調整機構、41 鋼管、50 水平搬送システム、52 揚重装置、52F フック、60 水平レール、60F フランジ、60W ウェブ、62 架台、63 ワイヤロープ、70 支持機構、72 支持板、74 ガイドローラー、80 給電機構、81 ブラケット、82 トロリーダクト、83 ブラケット、84 トロリー、100 搬送システム
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