(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6127509
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】尿素SCR用尿素水消費量診断装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/08 20060101AFI20170508BHJP
F01N 3/18 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
F01N3/08 GZAB
F01N3/18 C
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-288065(P2012-288065)
(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公開番号】特開2014-129764(P2014-129764A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2015年11月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】二本木 茂
(72)【発明者】
【氏名】高橋 弘隆
(72)【発明者】
【氏名】嶺澤 正信
(72)【発明者】
【氏名】福岡 武史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 豊
(72)【発明者】
【氏名】高橋 康一
【審査官】
今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−151094(JP,A)
【文献】
特開2006−250117(JP,A)
【文献】
特開2008−274765(JP,A)
【文献】
特開2009−121413(JP,A)
【文献】
特開2008−291828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00−3/38、9/00−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿素水タンク内の尿素水を、サプライポンプにて吸い込み、これを圧送ラインを介してSCR装置の上流側に設けたドージングバルブから噴射するための尿素SCR用尿素水消費量診断装置において、
尿素水タンク内の尿素水のレベルを検出する尿素水センサと、
排ガス中のNOxに応じて前記ドージングバルブから噴射する尿素水量を指示する噴射量指示手段と、
前記噴射量指示手段で指示した指示噴射量を積算する指示噴射量積算手段と、
前記尿素水センサから入力される検出値から積算消費量を算出する消費量算出手段と、
前記指示噴射量積算手段からの積算指示噴射量と前記消費量算出手段からの積算消費量を比較してドージングバルブによる尿素水噴射が正常か異常かを判定する異常診断手段とを備え、
前記異常診断手段は、積算指示噴射量が判定量を超えたとき、そのときの積算指示噴射量と積算消費量とを比較し、両者の差が一定量を超えたときに尿素水消費量異常と判定し、超えなかったときに正常と判定し、
前記消費量算出手段は、尿素水タンクに尿素水が補充されたとき、尿素水センサのレベル変化から補充量を算出し、積算消費量に補充量を足した値を積算消費量として前記異常診断手段に出力し、
前記消費量算出手段は、イグニッションキーがON且つ車両が停止状態のとき、繰り返し尿素水センサのレベルを読み込み、尿素水タンクへの尿素水の補充により尿素水センサのレベルが変化する度にそのレベルを記憶更新することを特徴とする尿素SCR用尿素水消費量診断装置。
【請求項2】
消費量算出手段は、イグニッションキーがONされたときに、尿素水センサで検出したレベルを記憶すると共にOFFされたときのレベルを記憶し、その後イグニッションキーがON・OFFされたときにレベルを記憶して積算消費量を順次算出し、
指示噴射量積算手段は、イグニッションキーがONされたときに、指示噴射量の積算を開始すると共にOFFされたときに積算指示噴射量を記憶し、その後イグニッションキーがON・OFFされたときに記憶した積算指示噴射量を基に順次指示噴射量を積算し、
異常診断手段は、指示噴射量積算手段からの積算指示噴射量が判定値を超えたとき、そのときの積算指示噴射量と積算消費量を比較して正常・異常の診断を行い、診断後に積算指示噴射量をリセットする請求項1記載の尿素SCR用尿素水消費量診断装置。
【請求項3】
消費量算出手段による補充量の算出は、尿素水タンクのレベルが尿素水センサの検出精度以上の値よりも大きく変化したときに補充有りとすると共に補充後の尿素水センサの検出レベルの最大値と補充前に記憶したレベルから補充量を算出する請求項1または2記載の尿素SCR用尿素水消費量診断装置。
【請求項4】
判定量は、尿素水の積算指示噴射量が、数L〜十数Lの間で設定される請求項1〜3いずれかに記載の尿素SCR用尿素水消費量診断装置。
【請求項5】
前記消費量算出手段は、イグニッションキーがON且つ車両が走行したとき、記憶更新されたレベルと、イグニッションキーがONされた直後のレベルとの差が尿素水センサの検出精度以上の値より大きい場合に補充有りとし、前記差を前記補充量とする請求項1〜4いずれかに記載の尿素SCR用尿素水消費量診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排ガス中のNOxを尿素水を用いて選択還元する尿素SCRシステムに係り、特に、ドージングバルブで噴射した尿素水の尿素水量を的確に診断できる尿素SCR用尿素水消費量診断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンの排気ガス中のNOxを浄化するための排気ガス浄化システムとして、選択還元触媒を用いた選択触媒還元(Selective Catalytic Reduction)システム(SCRシステム)が開発されている。
【0003】
このSCRシステムは、尿素水タンクに貯留された尿素水をSCR装置の排気ガス上流に供給し、排気ガスの熱で尿素水を加水分解してアンモニアを生成し、このアンモニアによってSCR装置内の触媒でNOxを還元して浄化するものである。尿素水は、SCR装置の上流側に設けられたドージングバルブから噴射されることで、SCRの排気ガス上流に供給される。
【0004】
ドージングバルブへの尿素水の供給は、サプライモジュールポンプ(SMポンプ)や尿素水圧力センサなどを備えたサプライモジュールによってなされる。サプライモジュールは、吸込ラインを介して尿素水タンクと接続されており、尿素水タンクから吸込ラインを通じて吸い上げた尿素水を、サプライモジュールとドージングバルブとを接続する圧送ラインを通じてドージングバルブに供給する。ドージングバルブは、DCU(ドージングコントロールユニット)により制御され、SCR装置の下流に設けたNOxセンサの検出値に応じてドージングバルブが開閉制御されて尿素噴射量が調整される。
【0005】
尿素水タンク内の尿素水のレベルは、尿素水タンク内に設けた尿素水センサで検出され、尿素水センサで検出した尿素水のレベルから尿素水の残存量を検出し、尿素水の補充の目安としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−247137号公報
【特許文献2】特開2012−2061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、尿素水をNOx触媒内に噴射するドージングバルブ内、およびそこに至る圧送ライン内が異物により詰まりが生じた場合、それを検出する手段がない。またドージングバルブが異物等の固着により、開状態で固着した場合にも同様に検出する手段がない問題がある。
【0008】
この尿素水の消費量については、尿素水タンク内の尿素水センサのレベル変化を検出すれば、その消費量はおおよそ推測できる。しかし、尿素水センサの検出精度は、尿素レベルを段階的に検出するもので、走行中の車両の傾斜や尿素水タンク内での尿素水の揺れがあるときには、正確なレベルを検出することは困難である。よって、現状の尿素水センサは、尿素水タンク内の尿素水がどの程度あるか或いは補充時期を検出する機能しかない。
【0009】
また、仮に尿素水センサの検出精度が良いものを用いたとしても、消費される尿素水量は僅かであり、この尿素水センサによるレベル変化で、詰まり等を確実に検出することも困難である。
【0010】
さらに、ドージングバルブが開状態で固着し、尿素水が吹きっぱなしになったときには、尿素水センサのレベル変化でこれを検出することは不可能である。
【0011】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、圧送ラインやドージングバルブが異物により詰まったり固着したとき、或いはドージングバルブで尿素水が吹きっぱなしになったときでも、これらを検出できる尿素SCR用尿素水消費量診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明は、尿素水タンク内の尿素水を、サプライポンプにて吸い込み、これを圧送ラインを介してSCR装置の上流側に設けたドージングバルブから噴射するための尿素SCR用尿素水消費量診断装置において、尿素水タンク内の尿素水のレベルを検出する尿素水センサと、排ガス中のNOxに応じて前記ドージングバルブから噴射する尿素水量を指示する噴射量指示手段と、前記噴射量指示手段で指示した指示噴射量を積算する指示噴射量積算手段と、前記尿素水センサから入力される検出値から積算消費量を算出する消費量算出手段と、前記指示噴射量積算手段からの積算指示噴射量と前記消費量算出手段からの積算消費量を比較してドージングバルブによる尿素水噴射が正常か異常かを判定する異常診断手段とを備えたことを特徴とする尿素SCR用尿素水消費量診断装置である。
【0013】
異常診断手段は、指示噴射量積算手段からの積算指示噴射量と消費量算出手段からの積算消費量が入力され、積算指示噴射量が判定量を超えたとき、その積算指示噴射量とそのときの積算消費量とを比較して、両者の差が一定量を超えたときに尿素水消費量異常と判定し、超えなかったときに正常と判定するのが好ましい。
【0014】
消費量算出手段は、イグニッションキーがONされたときに、尿素水センサで検出したレベルを記憶すると共にOFFされたときのレベルを記憶し、その後イグニッションキーがON・OFFされたときにレベルを記憶して積算消費量を順次算出し、指示噴射量積算手段は、イグニッションキーがONされたときに、指示噴射量の積算を開始すると共にOFFされたときに積算指示噴射量を記憶し、その後イグニッションキーがON・OFFされたときに記憶した積算指示噴射量を基に順次指示噴射量を積算し、異常診断手段は、指示噴射量積算手段からの積算指示噴射量が判定値を超えたとき、その判定値と消費量算出手段からの積算消費量を比較して正常・異常の診断を行い、診断後に指示噴射量積算手段の積算値をリセットするのが好ましい。
【0015】
消費量算出手段は、尿素水タンクに尿素水が補充されたとき、尿素水センサのレベル変化から補充量を算出し、異常診断手段で異常診断を行うときに算出した積算消費量に補充量を足した値を積算消費量として異常診断手段に出力するのが好ましい。
【0016】
消費量算出手段による補充量の算出は、尿素水タンクのレベル変化が尿素水センサの検出精度以上変化したときに補充有りとすると共に補充後の尿素水センサの検出レベルの最大値と補充前に記憶したレベルから補充量を算出するのが好ましい。
【0017】
判定量は、尿素水の積算指示噴射量が、数L〜十数Lの間で設定されるのが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、尿素水の指示噴射量と尿素水のレベル変化に基づく差を比較することで、ドージングバルブ又は圧送配管内の詰まりや、ドージングバルブ開固着状態による吹きっぱなし等の不具合の検出が可能となるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明におけるSCRシステムの概略図である。
【
図2】本発明の尿素SCR用尿素水消費量診断装置の消費量診断のフローチャートを示す図である。
【
図3】本発明の尿素SCR用尿素水消費量診断装置において、尿素水タンクに尿素水の補充無しのケースでの尿素水センサの検出位置と尿素水の積算消費量と積算指示噴射量を時系列で説明する図である。
【
図4】本発明の尿素SCR用尿素水消費量診断装置において、尿素水タンクに尿素水の補充有りのケースでの尿素水センサの検出位置と尿素水の積算消費量と積算指示噴射量を時系列で説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な一実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0021】
図1は、SCRシステムの概略を示したもので、ディーゼルエンジン(図示せず)の排気管10には、SCR装置11が接続され、そのSCR装置11の上流側に尿素水を噴射するドージングバルブ12が設けられ、SCR装置11の下流側には、NOxセンサ13が設けられる。
【0022】
NOxセンサ13の検出値はDCU(ドージングコントロールユニット)14に入力され、DCU14によりドージングバルブ12が開閉制御される。
【0023】
ドージングバルブ12から噴射される尿素水Uは、尿素水タンク15に溜められ、サクションライン16からサプライモジュール17のサプライポンプ18に吸引され、サプライポンプ18からフィルタ19を通して異物が除去され、圧送ライン20にてドージングバルブ12に圧送される。また余剰の尿素水Uは、フィルタ19の吐出側の圧送ライン20から戻しライン21にて尿素水タンク15内に戻される。
【0024】
尿素水タンク15内には、尿素水センサ22が設けられ、尿素水センサ22が尿素水タンク15内の尿素水のレベルを計測し、DCU14へ送信する。
【0025】
DCU14は、SCR装置11へ尿素水を噴射する量、タイミングを算出し、サプライポンプ18を駆動させ尿素水を規定圧まで高め、ドージングバルブ12の開閉を制御し、適切な量を適切なタイミングで噴射する。
【0026】
NOxセンサ13は、ドージングバルブ12から尿素水が適切に噴射されていることにより、SCR装置11の下流の排ガス中のNOx値が定常となっていることをモニタするために、DCU14へ計測値を送信する。
【0027】
DCU14には、主に燃料噴射制御を行うECM(エンジンコントロールモジュール)23と接続され、ECM23からDCU14へ、車速信号など、各種入力情報、ECM23の制御情報が送信される。
【0028】
また、DCU14には、バッテリー24が接続されると共にイグニッションキー25のON、OFF信号が入力される。
【0029】
このSCRシステムにおいて、DCU14は、ECM23の情報を基にNOxセンサ13の検出値が定常となるようドージングバルブ12から噴射する尿素水の噴射指示量を決定し、その決定値に基づいてドージングバルブ12を開閉制御するが、サプライポンプ18から圧送ライン20とドージングバルブ12に至る経路で異物等による詰まりが生じたときには、ドージングバルブ12から適正に尿素水が噴射されているかどうかを判定することができず、またドージングバルブ12が開固着状態で閉じなかったときには、尿素水がドージングバルブ12から吹きっぱなしになってしまい、この状態も検出することができない。
【0030】
そこで、本発明においては、DCU14に、ECM23の情報とNOxセンサ13の検出値に基づいてドージングバルブ12から噴射する尿素水量を指示する噴射量指示手段30と、噴射量指示手段30で指示した指示噴射量を積算する指示噴射量積算手段31と、尿素水センサ22から入力される検出値から積算消費量Dを算出する消費量算出手段32と、指示噴射量積算手段31からの積算指示噴射量Pと消費量算出手段32からの積算消費量Dを比較してドージングバルブ12による尿素水噴射が正常か異常かを判定する異常診断手段33とを備えて構成する。
【0031】
先ず、診断を開始するときには、指示噴射量積算手段31の積算指示噴射量Pをゼロにリセットし、同時に、消費量算出手段32は、尿素水センサ22で検出されたレベルをレベル(S0)として記憶する。その後、車両が走行し、ドージングバルブ12から尿素水が噴射されたとき、指示噴射量積算手段31は、噴射量指示手段30による指示噴射量を順次積算し、積算指示噴射量Pを記憶する。
【0032】
異常診断手段33での尿素水噴射が正常か異常かを検出するには、ある程度尿素水を消費(例えば消費量が数Lから十数L)したときでなければ、検出精度が高くならないため、車両走行が何回か行われたとき、すなわちイグニッションキー25がON・OFFを繰り返し、指示噴射量積算手段31での積算指示噴射量Pが判定量L(例えば15L)を超えたときに、消費量算出手段32での積算消費量Dと積算指示噴射量Pを比較し、|D−P|>K1かどうかを判断する。
【0033】
この判断において、尿素水が適正に噴射されていれば、積算消費量Dと積算指示噴射量Pとは同じであり、尿素水センサ22のレベル測定の誤差範囲で決まる値K1以下であれば、正常と診断し、K1以上であれば異常と判断する。この際、両者の差の絶対値で比較することで、異物等で噴射がないときにはD≪Pで、D−Pはマイナスとなり、ドージングバルブ12が吹きっぱなしとなればD≫Pで、D−Pはプラスとなり、そのプラス・マイナスから固着による詰まりと、ドージングバルブ12の吹きっぱなしが判断できる。
【0034】
また、尿素水タンク15には、尿素水の補充があるため、キースイッチのON・OFFのタイミングで尿素水センサ22によるレベルセンサのレベルを検出してその変化から消費量算出手段32が補充量を判断する。すなわち消費量算出手段32は、制御開始から診断時までその補充量を積算し、実際のレベル変化にその積算補充量を足して尿素水の積算消費量Dを求める。
【0035】
これを
図2のフローチャートにより説明する。
【0036】
ステップS1で診断が開始され、キースイッチがONされたとき(ステップS2)、尿素水センサで初期のレベルセンサ位置(S0)を読み込み、記憶する(ステップS3)。次にステップS4で、車速=0kmかどうかを判断し、車両が停止状態のとき(Yes)は、繰り返しレベルセンサ位置(S0’)を読み込み、その停止中に尿素水の補充があればそのレベルS0’を最大値として記憶更新する(ステップS5)。このステップS4で車両が走行したとき(No)、ステップS6の判断で、最初に記憶したレベルS0と停止中に記憶したレベルS0’の差(S0’−S0)が、尿素水センサの検出精度以上又は誤差範囲以上の値(K1)に対して大きいかどうか(S0’−S0>K1)を判断する。このステップS4の判断で、誤差範囲以上にレベルが上昇したならば(Yes)、S0’−S0=Rp0とし、その補充量を積算補充量RΣに加算(ステップS7)して、指示噴射量積算開始のステップS8に移行し、また、レベルS0’が最初のレベルS0に対して誤差範囲であれば(No)、ステップS8に移行する。この指示噴射量積算開始のステップS8では、ステップS9のキースイッチOFFまで指示噴射量を積算すると共に尿素水はレベルS0として記憶する。ステップ9でキースイッチがOFFとされたときに、制御開始から一回目の走行後のレベルセンサ位置S1を読み込み、そのときの尿素水の積算消費量D(=S1−S0)を記憶する(ステップS10)。
【0037】
次に、ステップS11で、キースイッチがONとされたとき、ステップS12の判断で、その前の走行による積算指示噴射量Pが判定量Lに達したかどうか(P≧L)を判定する。この判定量Lは、数L〜十数Lの範囲で、例えば15Lに設定する。
【0038】
このステップS12の判断で、尿素水の積算指示噴射量Pが判定量Lに達していないとき(No)、ステップS13に移行して、レベルセンサ位置(S1
+n)を読み込んで記憶する。次にステップS14の判断で、その記憶したレベル(S1
+1)とステップS11でキースイッチがONとされる前のレベルS1とを比較し、S1
+n−S1>K1かどうかを判断して尿素水の補充の有無を判断し、補充がなければ(No)、ステップS17に移行し、補充があれば(Yes)、ステップS15で、S1
+n−S1=R1を計算し、R1を補充量として記憶した後、ステップS16で補充量R1を積算補充量RΣに加算し、ステップS17に移行し、そのステップS17で、指示噴射量積算を継続する。その後ステップS18でキースイッチがOFFされたならば、ステップS19でレベルセンサ位置(S2
+n)を読み込み、そのレベル(S2
+n)を基に積算消費量D(=S2
+n−S1)を計算して記憶すると共にステップS11の上流側に戻す。次に、ステップS11でキースイッチがONとされたとき、ステップS12で、尿素水の積算指示噴射量Pが判定量Lに達したかどうかを判断する。積算指示噴射量Pが判定量Lに達していないときには、上述したステップS13〜S19、S11を繰り返し、積算指示噴射量Pが判定量Lに達したとき(Yes)、ステップS20で積算補充量RΣ=0かを判断し、補充がないとき(Yes)は、ステップS22で、|D−P|>K1を判断し、補充があるとき(No)は、ステップS21で、補充時Dの訂正(D=S2
+1−S1+RΣ)を行ってステップS22の判断に戻す。
【0039】
このステップS22の判断で、ドージングバルブからの尿素水の噴射が正常であれば、積算消費量Dと積算指示噴射量Pとは略同じで0で、検出誤差K1以内であるため(No)、ステップS23で消費量正常と判定し、制御を終了(ステップS25)する。ステップS22の判断で、ドージングバルブ等が詰まって噴射が行われていないときには、積算消費量Dは、積算指示噴射量Pに対して十分少なく、またドージングバルブが開固着状態で尿素水が吹きっぱなしのときには、積算消費量Dは、積算指示噴射量Pに対して十分に大きくなるため、両者の差の絶対値(|D−P|)とK1とを比較し、その絶対値がK1より大きければ、ステップS24で消費量異常と判定して制御を終了(ステップS25)する。
【0040】
次に、レベルセンサ検出位置、積算消費量、積算指示噴射量の変化を時系列で示した
図3、
図4にて説明する。
【0041】
この
図3、4では尿素水のレベル検出位置は満側から空側までのレベルを1〜20で、判定量Lは15Lとし、説明の便宜上、1レベル変化を1Lとして説明する。
【0042】
図3は尿素水の補充がないときのレベルセンサ検出位置S、レベルセンサに基づく尿素水の積算消費量D、ドージングバルブで噴射した積算指示噴射量Pを時系列で示したものである。
【0043】
先ず時間TnでキースイッチがOFFで診断が終了し、時間T0で、キースイッチがONとなり診断の制御が開始されるとすると、積算指示噴射量Pをゼロにリセットすると共にレベルセンサの検出位置で診断開始の初期のレベル3をレベルS0として記憶し、またそのレベル3を積算消費量D0として記憶する。
【0044】
時間T0から車両が走行している間、指示噴射量を積算して積算指示噴射量Pを順次記憶する。時間T1で停止され、キースイッチがOFFとされたときに、レベルセンサの検出位置のレベル6を、レベルS1として記憶すると共にそのときの積算消費量D1を算出して記憶し、またそのときまでに積算した積算指示噴射量の値a(=P1、3L)を記憶する。次に時間T2でキースイッチがONされたとき、レベルセンサの検出位置のレベル6をレベルS2としてまたレベルS2の位置を積算消費量D2として記憶する。この時間T2からキースイッチがON・OFFされて繰り返し走行され、時間Tn-2でキースイッチがOFFとされたとき、レベルセンサの検出位置のレベル17をレベルSn-2として記憶すると共にレベルSn-2の位置を積算消費量Dn-2として記憶し、積算指示噴射量の値b(=Pn-2、11L)を記憶する。
【0045】
次に、時間Tn-1でキースイッチがONされたとき、レベルセンサの検出位置のレベル17をレベルSn-1としてまたレベルSn-1の位置を積算消費量Dn-1として記憶して走行する。この時間Tn-1から時間Tnの間(図では説明の便宜上キースイッチがOFFされたとき)に積算指示噴射量Pが判定量L(15L)を超えたとき、すなわち時間Tn-1から時間Tnの間の積算指示噴射量の値c(3L)と、それまで記憶した値a、bを積算した積算指示噴射量P(Pn=a+b+c、17L)と積算消費量D(Sn−S0、17L)を求め、その積算消費量D(17L)と積算指示噴射量Pとを比較することで、尿素水がドージングバルブから適正に噴射されているかどうかを検出できる。この
図3では、正常に噴射されている状態を示し、積算指示噴射量Pをゼロにリセットして、次の時間T0から再度診断を行う。
【0046】
図4は、尿素水の補充があるときのレベルセンサ検出位置S、レベルセンサに基づく尿素水の積算消費量D、ドージングバルブで噴射した積算指示噴射量Pを時系列で示したものである。
【0047】
時間TnでキースイッチがOFFで診断が終了し、時間T0で、キースイッチがONとなり診断の制御が開始されるとすると、積算指示噴射量Pをゼロにリセットすると共にレベルセンサの検出位置で診断開始の初期のレベル13をレベルS0として記憶し、またそのレベル13を積算消費量D0として記憶する。
【0048】
時間T0から車両が走行している間、積算指示噴射量Pを順次積算し、時間T1で停止され、キースイッチがOFFとされたときにレベルセンサの検出位置のレベル16をレベルS1として記憶すると共に積算消費量D1を記憶し、またそのときの積算指示噴射量Pの値a(=P1、3L)を記憶する。
【0049】
次に時間T1から時間T2の間に尿素水が補充され、時間T2でキースイッチがONされたとき、レベルセンサの検出位置のレベル8をレベルS2として記憶すると共に積算消費量D2を記憶する。この際に先に記憶したレベルS1との差(S2−S1)から補充ありとしてその補充量R1(8L)を記憶する。
【0050】
この時間T2からキースイッチがON・OFFが繰り返して走行され、時間Tn-2でキースイッチがOFFとされたとき、レベルセンサの検出位置のレベル19をレベルSn-2として記憶すると共にレベルSn-2の位置を積算消費量Dn-2として記憶し、積算指示噴射量Pの値b(=Pn-2、11L)を記憶する。
【0051】
次に、時間Tn-1でキースイッチがONされたとき、レベルセンサの検出位置のレベル7をレベルSn-1としてまたレベルSn-1の位置を積算消費量Dn-1として記憶する。この時間Tn-1に至る間に尿素水がn回補充されたときに、レベルSn-2とレベルSn-1との差(Sn-2−Sn-1)から補充ありとしてその補充量Rn(14L)を記憶する。
【0052】
その後、この時間Tn-1から時間Tnの間の走行で積算指示噴射量Pが判定量Lを超えたとき、積算指示噴射量P(Pn=a+b+c、17L)と積算消費量Dとを比較する。この際、積算消費量Dは、初期の時間T0が積算消費量D0(レベルS0)で、時間Tnのとき積算消費量Dn(レベルSn)であるが、その間に尿素水の積算補充量RΣ(=R1+Rn)であるため、積算消費量Dを、D=Sn−S0+RΣを基に積算消費量D(D=8−13+(8+14)=17L)を訂正し、その積算消費量Dと積算指示噴射量Pとを比較することで、尿素水がドージングバルブから適正に噴射されているかどうかを検出できる。
【符号の説明】
【0053】
10 排気管
11 SCR装置
12 ドージングバルブ
13 NOxセンサ
15 尿素水タンク
22 尿素水センサ
20 噴射量指示手段
31 指示噴射量積算手段
32 消費量算出手段
33 異常診断手段