特許第6127532号(P6127532)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6127532-フェンダー内着雪着氷防止装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6127532
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】フェンダー内着雪着氷防止装置
(51)【国際特許分類】
   B60S 1/66 20060101AFI20170508BHJP
   B62D 25/18 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   B60S1/66
   B62D25/18 A
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-7629(P2013-7629)
(22)【出願日】2013年1月18日
(65)【公開番号】特開2014-136561(P2014-136561A)
(43)【公開日】2014年7月28日
【審査請求日】2015年12月2日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】酒井 健児
【審査官】 飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−153186(JP,U)
【文献】 特開2005−297882(JP,A)
【文献】 特開昭61−232967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 1/66
B62D 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフェンダーに配設されるヒーターと、外気温を検知する外気温検知手段と、前記外気温検知手段で検知した外気温が閾値以下であるときに前記ヒーターを作動させるヒーター作動手段と、前記ヒーターを覆うように前記フェンダーに配設される伝熱板とを備え、前記伝熱板と前記フェンダーとの間にシーリング材を挟み込むことを特徴とするフェンダー内着雪着氷防止装置。
【請求項2】
前記シーリング材は、前記伝熱板の上端縁部に配設されると共に、前記伝熱板の左右両側縁部の上端部から上下方向高さの半分程度の位置までに配設された請求項1に記載のフェンダー内着雪着氷防止装置。
【請求項3】
前記外気温検知手段及び前記ヒーター作動手段は、前記ヒーターと前記ヒーターの電源との間の電気回路に介設される外気温検知サーモスタットである請求項1又は2に記載のフェンダー内着雪着氷防止装置。
【請求項4】
前記外気温検知手段は、外気温を測定する外気温センサーであり、前記ヒーター作動手段は、前記外気温センサーの出力信号に応じて前記ヒーターの作動を制御する電子制御ユニットである請求項1又は2に記載のフェンダー内着雪着氷防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるフェンダー内着雪着氷防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
寒冷地で使用される車両においては、タイヤハウスを構成する枠部分であるフェンダーのタイヤ後方縦壁面にステンレス板が取り付けられることがある。ステンレス板でフェンダーのタイヤ後方縦壁面の凹凸を無くし、タイヤ後方縦壁面に取り付けたステンレス板に着雪着氷(着雪或いは着氷)しても、その着雪着氷を棒やパイプ等で落とし易くするためである。
【0003】
なお、例えば特許文献1には、吸音性能及び着氷防止性を発揮することができるように構成された車両用フェンダーライナが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−240821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特に寒冷地で使用される車両に対しては、「フェンダー内への着雪着氷を防止したい」というユーザーの要求がある。
【0006】
「フェンダー内への着雪着氷を防止したい」理由としては、例えば、以下の(1)から(3)に示すような理由がある。
【0007】
(1)フェンダー内への着雪着氷による不具合(操舵不良等)が発生する可能性がある。
【0008】
(2)着雪着氷除去作業に多大な労力を要する。
【0009】
(3)フェンダー内への着雪着氷による二次不具合(着雪着氷除去作業時の他部分の損傷、着雪着氷除去による防錆材の剥がれ等)が発生する可能性がある。
【0010】
そこで、本発明の目的は、車両のフェンダー内への着雪着氷を防止するフェンダー内着雪着氷防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するために、本発明に係るフェンダー内着雪着氷防止装置は、車両のフェンダーに配設されるヒーターと、外気温を検知する外気温検知手段と、前記外気温検知手段で検知した外気温が閾値以下であるときに前記ヒーターを作動させるヒーター作動手段とを備えるものである。
【0012】
前記フェンダー内着雪着氷防止装置は、前記ヒーターを覆うように前記フェンダーに配設される伝熱板をさらに備えるものであっても良い。
【0013】
前記ヒーターは、前記フェンダーのタイヤ後方縦壁面に取り付けられても良い。
【0014】
前記外気温検知手段及び前記ヒーター作動手段は、前記ヒーターと前記ヒーターの電源との間の電気回路に介設される外気温検知サーモスタットであっても良い。
【0015】
前記外気温検知手段は、外気温を測定する外気温センサーであり、前記ヒーター作動手段は、前記外気温センサーの出力信号に応じて前記ヒーターの作動を制御する電子制御ユニットであっても良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、車両のフェンダー内への着雪着氷を防止することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第一実施形態に係るフェンダー内着雪着氷防止装置の概略構成図である。
図2】車両のフェンダー構造の概略斜視図である。
図3】本発明の第二実施形態に係るフェンダー内着雪着氷防止装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0019】
第一実施形態及び第二実施形態は、フェンダー内着雪着氷防止装置をバスに搭載した例を示すものである。なお、図1及び図3において、矢印FRは車両前方向を示し、矢印REは車両後方向を示す。
【0020】
[第一実施形態]
第一実施形態に係るフェンダー内着雪着氷防止装置10Aを図1及び図2に基づいて説明する。
【0021】
図1及び図2に示すように、第一実施形態に係るフェンダー内着雪着氷防止装置10Aは、車両1のフェンダー2に配設されるヒーター11と、外気温を検知する外気温検知手段と、外気温検知手段で検知した外気温が閾値以下であるときにヒーター11を作動させるヒーター作動手段とを備える。
【0022】
車両1のフェンダー2は、タイヤ(前輪、後輪)3を挟んで対向する根太(図示せず)間に架設されており、アーチ状部材4及び側壁部5から主に構成されている。アーチ状部材4の下部により、タイヤ3よりも車両前方向に位置するタイヤ前方縦壁面6と、タイヤ3よりも車両後方向に位置するタイヤ後方縦壁面7とが形成される。
【0023】
第一実施形態に係るフェンダー内着雪着氷防止装置10Aにおいては、フェンダー2のタイヤ後方縦壁面7にヒーター11が取り付けられており、ヒーター11は電気回路12を介して電源(車載用バッテリー)13に接続されている。ヒーター11は、例えば、熱線をシリコンゴムで被覆した電熱マット(熱線入り電熱マット)により構成される。
【0024】
また、ヒーター11を覆うようにフェンダー2のタイヤ後方縦壁面7に伝熱板14が取り付けられており、ヒーター11の放熱面積拡大が図られている。伝熱板14は、ヒーター(電熱マット)11よりも一回り程度大きいサイズの板材からなり、チッピング(棒やパイプ等により突くこと)によるヒーター11の損傷防止の機能も有する。伝熱板14は、例えば、ステンレス板により構成される。
【0025】
伝熱板14は、フェンダー2のタイヤ後方縦壁面7においてマッドフラップ8が取り付けられている下端部を除いて、タイヤ後方縦壁面7のほぼ全面を覆うように配設されている。また、伝熱板14は、上下左右のヒーター11が無い部分でフェンダー2のタイヤ後方縦壁面7にビス(小ねじ)15を用いて固定されている。
【0026】
フェンダー2のタイヤ後方縦壁面7(根太)の錆防止対策として、シーリング材16が伝熱板14とタイヤ後方縦壁面7との間に挟み込まれている。また、伝熱板14とフェンダー2のタイヤ後方縦壁面7との間に万が一水が入っても抜けやすくするため、伝熱板14の上端縁部についてはほぼ全体にシーリング材16が配設されているが、伝熱板14の左右両側縁部については上端縁付近から上下方向高さの半分程度の位置までシーリング材16が配設されている(図2参照)。
【0027】
また、車両1には、外気温を検知する外気温検知サーモスタット17と、フェンダー内着雪着氷防止装置10Aのメインスイッチ18とが配設されている。外気温検知サーモスタット17は、外気温が閾値(当該実施形態では、0℃)以下となるとONになるものであり、ヒーター11と電源13との間の電気回路12に介設されている。外気温検知サーモスタット17が本発明の外気温検知手段及びヒーター作動手段を構成する。また、メインスイッチ18は、運転席のドライバー等によりONとOFFとが切り換えられるものであり、電気回路12に電気的に接続されている。
【0028】
次に、第一実施形態に係るフェンダー内着雪着氷防止装置10Aによる作用効果について説明する。
【0029】
第一実施形態に係るフェンダー内着雪着氷防止装置10Aでは、(1)エンジン作動中(イグニッションキースイッチがON)、(2)フェンダー内着雪着氷防止装置10Aのメインスイッチ18がON、(3)外気温検知サーモスタット17がON(外気温が0℃以下)の各条件が全て揃ったときに、自ずとヒーター11に通電される。その結果として、フェンダー2のタイヤ後方縦壁面7の温度が水の凝固温度である0℃以上に維持されることとなる。一方、上述の(1)から(3)の各条件が全て揃わないときは、ヒーター11への通電がなされない。
【0030】
フェンダー2のタイヤ後方縦壁面7に着雪着氷が生じる原因としては、0℃以下の温度環境下でタイヤ後方縦壁面7に付着した水分(液体)が氷(固体)に変化することと、その氷にタイヤ3で巻き上げられた水分が結合(固着)することが考えられる。
【0031】
第一実施形態に係るフェンダー内着雪着氷防止装置10Aによれば、フェンダー2内において着雪着氷面となるタイヤ後方縦壁面7の温度が0℃以上に維持されるので、車両1のフェンダー2内への着雪着氷を防止することが可能になる。
【0032】
また、車両1のフェンダー2内への着雪着氷を防止することが可能になることにより、例えば、以下の(1)から(3)に示すような利点が得られる。
【0033】
(1)フェンダー2内(タイヤハウス)への着雪着氷による不具合(操舵不良等)が発生する懸念がなくなる。
【0034】
(2)フェンダー2に対する着雪着氷除去作業が必要なくなり、車両1の整備が容易になる。
【0035】
(3)フェンダー2に対する着雪着氷除去作業が必要なくなり、フェンダー2内(タイヤハウス)への着雪着氷による二次不具合(着雪着氷除去作業時の他部分の損傷、着雪着氷除去による防錆材の剥がれ等)が発生する懸念がなくなる。
【0036】
[第二実施形態]
第二実施形態に係るフェンダー内着雪着氷防止装置10Bを図3に基づいて説明する。なお、図1に示す第一実施形態に係るフェンダー内着雪着氷防止装置10Aと同一の構成要素には図3において同一符号を付して、その説明を省略する。
【0037】
図3に示すように、第二実施形態に係るフェンダー内着雪着氷防止装置10Bにおいては、車両1に、外気温を測定する外気温センサー31と、外気温センサー31の出力信号に応じてヒーター11の作動を制御するECU(電子制御ユニット)32とが配設されている。外気温センサー31はECU32に接続されており、ECU32は、フェンダー内着雪着氷防止装置10Bのメインスイッチ18がONであり、且つ、外気温センサー31の測定値が閾値(当該実施形態では、0℃)以下であるときに、ヒーター11への通電を行う。外気温センサー31が本発明の外気温検出手段を構成し、ECU32が本発明のヒーター作動手段を構成する。
【0038】
次に、第二実施形態に係るフェンダー内着雪着氷防止装置10Bによる作用効果について説明する。
【0039】
第二実施形態に係るフェンダー内着雪着氷防止装置10Bでは、(1)エンジン作動中(イグニッションキースイッチがON)、(2)フェンダー内着雪着氷防止装置10Bのメインスイッチ18がON、(3)外気温センサー31の測定値が0℃以下(外気温が0℃以下)の各条件が全て揃ったときに、ECU32はヒーター11に通電する。その結果として、フェンダー2のタイヤ後方縦壁面7の温度が水の凝固温度である0℃以上に維持されることとなる。一方、上述の(1)から(3)の各条件が全て揃わないときは、ECU32によるヒーター11への通電がなされない。
【0040】
第二実施形態に係るフェンダー内着雪着氷防止装置10Bによれば、第一実施形態と同様に、フェンダー2において着雪着氷面となるタイヤ後方縦壁面7の温度が0℃以上に維持されるので、車両1のフェンダー2内への着雪着氷を防止することが可能になる。
【0041】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態には限定されず他の様々な実施形態を採ることが可能である。
【0042】
例えば、上述の実施形態では、ヒーター11及び伝熱板14をフェンダー2のタイヤ後方縦壁面7に取り付けるとしたが、これには限定はされず、ヒーター11及び伝熱板14をフェンダー2において着雪着氷面となり得る他の部分に取り付けることができる。例えば、ヒーター11及び伝熱板14をフェンダー2のタイヤ前方縦壁面6に取り付けても良い。
【0043】
さらに、フェンダー内着雪着氷防止装置10が搭載される車両1としては、上述の実施形態で示したバス以外にも、トラックや乗用車等であっても良い。
【符号の説明】
【0044】
1 車両
2 フェンダー
6 タイヤ前方縦壁面
7 タイヤ後方縦壁面
10 フェンダー内着雪着氷防止装置
11 ヒーター
12 電気回路
13 電源
14 伝熱板
17 外気温検知サーモスタット(外気温検知手段、ヒーター作動手段)
31 外気温センサー(外気温検知手段)
32 電子制御ユニット(ヒーター作動手段)
図1
図2
図3