(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施形態]
実施形態の光受信器について説明する。
実施形態の光受信器は、波長分割多重通信をサポートする。波長分割多重通信とは、波長の異なる複数の光信号を多重化した通信信号を送受信する通信方式である。以下、実施形態の光受信器のことを単に光受信器ともいう。
【0015】
光受信器は、光増幅部、分波部、変換部、モニタ部、検出部、制御部、記憶部、および供給部の機能を有する。
そして、光受信器では、通信信号を受信すると、入力段に設けられた光増幅部で通信信号に含まれる複数の光信号を一括増幅する。以下の説明において、通信信号に含まれる複数の光信号を一括増幅することを、単に通信信号を増幅するともいう。
【0016】
光増幅部で増幅された通信信号は、分波部で複数の光信号に分波される。そして、分波された複数の光信号は、それぞれ変換部で電気信号に変換されてモニタ部に出力される。
モニタ部は、入力された電気信号それぞれの電力値から複数の光信号の光パワー値を測定する。
【0017】
検出部は、通信信号に含まれる複数の光信号の光パワー値の最大値である最大光パワー値を検出する。また、検出部は、通信信号に含まれる複数の光信号の光パワー値の最小値である最小光パワー値を検出する。さらに、検出部は、最大光パワー値と最小光パワー値との差である光パワー差を検出する。
【0018】
記憶部は、最大光パワー値の目標値である第1目標値と、最小光パワー値の目標値である第2目標値と、第1の目標値と第2の目標値との差である光パワー差閾値とを記憶する。
供給部は、制御部に制御され、光増幅部の利得を制御する制御電流を光増幅部に供給する。
【0019】
制御部は、光パワー差が、光パワー差閾値以下であり、かつ最大光パワー値が第1目標値よりも大きいとき、供給部を制御して、最大光パワー値を第1目標値にするように、制御電流の大きさを変化させ、光増幅部の利得を調整する。また、制御部は、光パワー差が光パワー差閾値よりも大きいとき、供給部を制御して、最小光パワー値を第2の目標値にするように、制御電流の大きさを変更させ、光増幅部の利得を調整する。
【0020】
以上のように、実施形態の光受信器は、光増幅器から出力される複数の光信号の光パワーを測定し、光増幅器から出力される各光信号の光パワーがフォトダイオードの受光範囲に収まるように、光増幅器の利得を調整する。これにより、光受信器は、最大光パワーを有する光信号の光パワーを受光範囲内に抑え、かつ最小光パワーを有する光信号の光パワーが、フォトダイオードの受光範囲よりも小さくなることを回避する。したがって、光受信器は、フォトダイオードに入力する光信号の光パワーを調整する光増幅器の利得に、波長依存性がある半導体光増幅器を用いても、広いダイナミックレンジを実現することができる。
【0021】
図1は、光受信器が使用される光通信システムの一実施例を示す図である。
図1を参照して、実施形態の光受信器が適用される光通信システム100を説明する。
図1に示す光通信システム100は、光送信器110、光受信器120、および光ファイバ130を有する。
【0022】
光送信器110は、ドライバ(Drv)10〜1n、レーザーダイオード(LD)20〜2n、および合波器3(合波部)を有する。
ドライバ10〜1nは、図示しない情報処理装置や入力装置からデータ信号が入力されると、レーザーダイオード20〜2nから出力される光キャリアを変調する変調信号を生成し、生成した変調信号をレーザーダイオード20〜2nに出力する。
【0023】
レーザーダイオード20〜2nは、それぞれ波長の異なる光キャリアを生成する。そして、各光キャリアは、図示しない変調器により、ドライバ10〜1nから入力される変調信号にしたがって変調され、データ信号を表す光信号として合波器3に入力される。なお、100ギガビットイーサネットの光受信器120では、例えば、25Gbs×4chのWDM伝送が適用され、周波数間隔800GHzの4つのレーザーダイオードが用いられる。
【0024】
合波器3は、レーザーダイオード20〜2nから入力された波長の異なる複数の光信号を多重化して通信信号を生成し、光ファイバ130に出力する。これにより、光送信器110は、光受信器120に通信信号を送信する。
【0025】
光受信器120は、光増幅器4、分波器5、およびフォトダイオード(PD:Photodiode)60〜6nを有する。
光増幅器4は、光ファイバ130を介して通信信号が入力されると、通信信号の光パワーを増幅する。すなわち、光増幅器4は、通信信号に含まれる複数の光信号の光パワーを一括して増幅する。また、光増幅器4は、例えば、半導体光増幅器(SOA:Semiconductor Optical Amplifier)などである。以下の説明では、実施形態の光受信器120に半導体光増幅器を設けた構成について説明する。
【0026】
分波器5は、光増幅器4から入力される増幅された通信信号を、複数の光信号に分波する。そして、分波器5は、分波した各光信号をフォトダイオード60〜6nにそれぞれ出力する。
【0027】
フォトダイオード60〜6nは、分波器5からそれぞれ光信号が入力されると、光信号の光パワーの大きさに応じた大きさの電流信号(電気信号)を生成する。そして、フォトダイオード60〜6nは、図示しない情報処理装置に電流信号を出力する。フォトダイオード60〜6nには、例えば、Pin−PDやPN−PDが用いられる。
【0028】
光ファイバ130は、光送信器110と光受信器120とを通信可能に接続する。光ファイバ130は、特に限定しないが、例えば、シングルモードファイバを用いると良い。
【0029】
図2は、光受信器の一実施例を示す機能ブロック図である。
図2に示す光受信器120は、光増幅部201、分波部202、変換部203、モニタ部204、検出部205、記憶部206、制御部207、および供給部208を有する。
【0030】
光増幅部201は、光受信器120の入力段に設けられ、光送信器110から送信された通信信号が入力されると、通信信号に含まれる波長の異なる複数の光信号を一括増幅する。また、光増幅部201の利得は、供給部208から入力される制御電流の大きさに応じて変化する。一例として、光増幅部201に半導体光増幅器を適用した場合、光増幅部201の利得は、供給部208から入力される制御電流の大きさに比例する。また、光増幅部201は、例えば、
図1の光増幅器4である。
【0031】
分波部202は、光増幅部201で光パワーが増幅された通信信号が入力されると、通信信号を分波して複数波長の光信号を出力する。
変換部203は、分波部202から出力される複数波長の光信号を、それぞれの光パワーに応じた電気信号に変換する。変換部203は、例えば、
図1のフォトダイオード60〜6nであり、受光した光信号を示す電気信号に正確に変換できる範囲として、受光範囲が設定されている。
【0032】
モニタ部204は、分波部202から出力される複数波長の光信号の光パワーをそれぞれ測定する。モニタ部204は、例えば、変換部203から入力される電気信号の電流値を監視することにより、光信号の光パワーを測定しても良い。また、モニタ部204は、変換部203から入力される電気信号の振幅の大きさを監視することにより、光信号の光パワーを測定しても良い。
【0033】
検出部205は、モニタ部204で測定された複数波長の光信号の光パワーの大きさである光パワー値から、最大光パワー値と、最小光パワー値と、最大光パワー値と最小光パワー値との差である光パワー差とを検出する。
【0034】
最大光パワー値とは、モニタ部204で測定された複数波長の光信号の光パワー値の中で、一番大きい光パワー値である。また、最小光パワー値とは、モニタ部204で測定された複数の光信号の光パワー値の中で、一番小さい光パワー値である。
【0035】
記憶部206は、
図3に示す設定値テーブル300を記憶する。
設定値テーブル300には、最大光パワー値の目標値P1(第1の目標値)と、最小光パワー値の目標値P2(第2の目標値)と、目標値P1と目標値P2との差である光パワー差閾値P3と、光増幅部201の利得の調整を開始するときの制御電流の初期値I0とが格納されている。
【0036】
目標値P1と目標値P2とは、変換部203の受光範囲内に入るように設定される。一例として、変換部203の受光範囲が−10dBm(最小受信電力)〜+5dBm(最大受信電力)のとき、目標値P1を−2dBm、目標値P2を−8dBmと設定すれば良い。目標値P1、P2は、変換部203の受光範囲との間にマージンを持って設定すると良い。これにより、光受信器120は、後述する利得の制御に誤差が生じたときでも、誤差をマージンで吸収し、光増幅部201から出力される複数波長の光信号の最大光パワーと最小光パワーとを、変換部203の受光範囲内にすることができる。
【0037】
光パワー差閾値P3は、目標値P1から目標値P2を減算した値である。すなわち、光パワー差閾値P3は、目標値P1と目標値P2との光パワーの差である。
初期値I0は、例えば、光受信器120に要求されるダイナミックレンジの最小受信電力の光パワーを受信したときに、出力される光パワーが変換部203の受光範囲に入るように設定される。
【0038】
制御部207は、検出部205で検出された最大光パワー値、最小光パワー値、および光パワー差を取得する。また、制御部207は、記憶部206に記憶されている設定値テーブル300に格納されている目標値P1と、目標値P2と、光パワー差閾値P3と、初期値I0とを取得する。
【0039】
そして、制御部207は、光パワー差が光パワー差閾値P3以下であり、かつ最大光パワー値が目標値P1よりも大きいとき、最大光パワー値を目標値P1にするように、光増幅部201の利得を調整する。このとき、制御部207は、検出部205で検出される最大光パワー値を参照しながら、供給部208を制御して、制御電流の大きさを小さくしていき、最大光パワー値を目標値P1にする。また、制御部207は、複数の光信号の光パワー値が、全て目標値P1と目標値P2との間になると、光増幅部201の利得を一定にする。すなわち、制御部207は、複数の光信号の光パワー値が、全て目標値P1と目標値P2との間になると、供給部208を制御して、制御電流を一定にする。
【0040】
さらに、制御部207は、光パワー差が光パワー差閾値P3よりも大きいとき、最小光パワー値を目標値P2にするように、光増幅部201の利得を調整する。このとき、制御部207は、検出部205で検出される最小光パワー値を参照しながら、供給部208を制御して、制御電流の大きさを大きくしていき、最大光パワー値を目標値P2にする。また、制御部207は、複数の光信号の光パワー値が、全て目標値P1と目標値P2との間になると、光増幅部201の利得を一定にする。すなわち、制御部207は、複数の光信号の光パワー値が、全て目標値P1と目標値P2との間になると、供給部208を制御して、制御電流を一定にする。
【0041】
制御部207は、光増幅部201の利得調整を開始するとき、利得の大きさを、光受信器120の最小受信電力の光パワーを有する光信号が光増幅器4に入力されたとき、光増幅器4から出力される光信号の光パワーが、変換部203の受光範囲内に収まる大きさにする。このとき、制御部207は、例えば、設定値テーブル300から初期値I0を取得し、供給部208を制御して、初期値I0の制御電流を光増幅部201に供給させる。そして、制御部207は、複数の光信号の光パワー値が、全て目標値P1と目標値P2の間であるとき、供給部208を制御して、制御電流を初期値I0で一定にする。
供給部208は、光増幅部201に利得を制御する制御電流を供給する。
【0042】
図4は、光受信器の一実施例を示すブロック図である。
図4に示す光受信器120は、光増幅器4、分波器5、フォトダイオード60〜6n、電力モニタ70〜7n、制御回路8、記憶装置9および供給回路41を有する。
図1と同じ構成については、説明を省略する。
【0043】
光増幅器4は、
図2の光増幅部201として機能する。
分波器5は、
図2の分波部202として機能する。
フォトダイオード60〜6nは、
図2の変換部203として機能する。
電力モニタ70〜7nは、例えば、電力計であり、
図2のモニタ部204として機能する。
【0044】
制御回路8は、例えば、CPU、マルチコアCPU、FPGA(Field Programmable Gate Array)およびPLD(Programmable Logic Device)などである。そして、制御回路8の最大光パワー値検出回路81、最小光パワー値検出回路82および光パワー差検出回路83は、
図2の検出部205として機能する。また、制御回路8の制御切替回路84は、
図2の制御部207として機能する。さらに、制御回路8は、電力モニタ70〜7nからアナログ信号で入力される光パワー値を、デジタル信号に変換するためのA/D変換回路85と、制御切替回路84からデジタル信号で出力される制御電流値を、アナログ信号に変換するD/A変換回路86とを有する。
【0045】
記憶装置9は、各種データを記憶する。そして、記憶装置9は、例えば、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などである。RAMは、制御回路8のワークエリアとして使用されても良い。ROMには、制御回路8を検出部205と制御部207として機能させるためのプログラムや設定値テーブル300を記憶しても良い。そして、記憶装置9は、
図2の記憶部206として機能する。
供給回路41は、例えば、電流調整回路を有する電源である。そして、供給回路41は、
図2の供給部208として機能する。
【0046】
図5、6は、光増幅器の入出力特性の一例を示す図である。
図7は、光増幅器の制御電流値の一例を示す図である。
以下の説明では、光受信器120の光増幅器4に、半導体光増幅器を適用したものとする。一例として、光受信器120に要求されるダイナミックレンジが25dBmであり、範囲が−20dBm〜+5dBmであるものとする。さらに、変換部203の受光範囲が−10dBm〜+2dBmであるとする。そして、目標値P1、目標値P2、光パワー差閾値P3、および初期値I0は、
図3に設定されている値を用いるものとする。
【0047】
図5、6に示す、L0〜L3は、それぞれ光増幅器4に入力される複数波長の光信号(通信信号)の入出力特性を示す。
図5、6の横軸は、光増幅器4に入力される光信号の光パワーを示す。
図5、6の縦軸は、光増幅器4から出力される光信号の光パワーを示す。
【0048】
図7の横軸は、光増幅器4に入力される光パワーを示す。
図7の縦軸は、制御電流の大きさを示す。
図5の光増幅器の入出力特性と、
図7の光増幅器の制御電流値とを参照して、最大光パワー値を調整する光増幅器4の利得制御(以下、最大利得制御ともいう。)を説明する。
以下の説明では、
図2の機能ブロックを参照する。なお、光増幅部201は、光増幅器4のことである。
【0049】
図5、7に示すように、初期値I0(120mA)は、光受信器120に要求されるダイナミックレンジの最小受信電力(−20dBm)の光パワーを受信したとき、出力される光パワーが平均して−5.5dBmとなるように設定された値である。
【0050】
そして、制御部207は、光増幅部201に入力される通信信号の光パワーが−20dBm〜−15dBmのとき、初期値I0を光増幅部201に供給する。これにより、制御部207は、光増幅部201に入力される通信信号の光パワーが−20dBm〜−15dBmのとき、光増幅部201から出力される光パワー(−5.5dBm〜−2dBm)を変換部203の受光範囲に入れることができる。
【0051】
光増幅部201に入力される通信信号の光パワーが−15dBmよりも大きいとき、初期値I0の電流を光増幅部201に入力すると、光増幅部201から出力される最大光パワー値は、目標値P1(−2dBm)よりも大きくなる。
【0052】
すると、制御部207は、
図5、7に示すように、最大光パワー値を目標値P1とするため、供給部208を制御して、光増幅部201に供給する電流を変更し、光増幅部201の利得を調整する。このとき、制御部207は、モニタ部204で測定される最大光パワー値を参照しながら光増幅部201に供給する制御電流を変更する。なお、制御部207による制御電流の変更は、例えば、予め実験で定められた必要な分解能の電流値dIずつ変更しても良い。そして、制御部207は、制御電流の電流値を電流値dI変更するごとに、最大光パワー値が目標値P1となったか否かを判定し、最大光パワー値が目標値P1になったとき、制御電流を一定にしても良い。
【0053】
以上の制御を行うことで、
図5に示すように光受信器120は、−20dBm〜+0dBmまでの20dBmの範囲で、光増幅部201から出力される光信号の光パワーを、目標値P1〜目標値P2の範囲内にすることができる。また、目標値P1〜目標値P2の範囲は、変換部203の受光範囲である−10dBm〜+2dBmよりも狭く設定される。これにより、光受信器120は、要求されるダイナミックレンジ内の20dBmの範囲でマージンを持って、光増幅部201で複数波長の光信号の光パワーを増幅し、通信信号を受信することができる。
【0054】
図6の光増幅器の入出力特性と、
図7の光増幅器の制御電流値の実線とを参照して、最大光パワー値と最小光パワー値とを調整する実施形態の光増幅部201の利得制御を説明する。
光増幅部201に入力される通信信号の光パワーが−20dBm〜0dBmのとき、実施形態の利得制御は、
図5、7を参照して説明した最大利得制御と同じである。
【0055】
光増幅部201に入力される通信信号の光パワーが0dBmよりも大きいとき、最大利得制御を実行すると、
図6に示すように、光増幅部201から出力される最小光パワー値(L0)は、目標値P2よりも小さくなる。すなわち、光増幅部201に入力される通信信号の光パワーが0dBmよりも大きいとき、最大利得制御を実行すると、光パワー差閾値P3よりも最大光パワー値(L3)と最小光パワー値との光パワー差が大きくなる。
【0056】
そこで、制御部207は、
図7に示すように、最小光パワー値を目標値P2とするために、供給部208を制御して、光増幅部201に供給する制御電流を変更し、光増幅部201の利得を調整する。このとき、制御部207は、モニタ部204で測定される最小光パワー値を参照しながら光増幅部201に供給する電流を変更する。なお、制御部207による制御電流の変更は、例えば、予め実験で定められた必要な分解能の電流値−dIずつ変更しても良い。そして、制御部207は、制御電流の電流値を電流値−dI変更するごとに、最小光パワー値が目標値P2となったか否かを判定し、最小光パワー値が目標値P2になったとき、制御電流を一定にしても良い。
【0057】
以上の制御を行うことで、
図6に示すように光受信器120は、−20dBm〜+5dBmまでの25dBmの範囲で、光増幅部201から出力される光信号の光パワーを、目標値P1〜目標値P2の範囲内にすることができる。また、目標値P1〜目標値P2の範囲は、変換部203の受光範囲である−10dBm〜+2dBmよりも狭く設定される。これにより、光受信器120は、要求されるダイナミックレンジ内の25dBmの範囲でマージンを持って、光増幅部201で複数波長の光信号の光パワーを増幅し、通信信号を受信することができる。
【0058】
図8は、光増幅器の利得制御の処理内容を示すフローチャートである。
図8を参照して、光増幅器の利得制御の処理内容を説明する。
以下の説明では、
図2の機能ブロックを参照する。
【0059】
検出部205は、モニタ部204で測定された通信信号に含まれる各光波長の光パワー値を参照し、最大光パワー値(Pmax)、最小光パワー値(Pmin)、および光パワー差(dP)を検出する(S1)。
【0060】
そして、制御部207は、検出部205で検出された光パワー差と、光パワー差閾値P3とを比較する(S2)。
制御部207は、光パワー差閾値P3よりも光パワー差が大きいとき(S2にてYes)、制御パラメータを最小光パワー値に、制御ターゲットを目標値P2に決定する(S3)。すると、制御部207は、最小光パワー値が目標値P2となるように、制御電流(ISOA)を制御する(S4)。
【0061】
そして、制御部207は、利得制御を終了するか否かを判定する(S5)。制御部207は、利得制御を終了すると判定したとき(S5にてYes)、一連の処理を終了する。なお、制御部207は、例えば、S5の前の処理において、ユーザにより、利得制御の終了を示す信号が入力されたとき、または光送信器110との通信が終了したときなどに、利得制御を終了すると判定しても良い。
【0062】
また、制御部207は、利得制御を継続すると判定したとき、S1の処理を実行する。なお、制御部207は、例えば、S5の前の処理において、ユーザや図示しない情報処理装置からの利得制御終了の要求がなかったとき、利得制御を継続すると判定しても良い。また、制御部207は、例えば、S4の処理で制御電流を変更して一定時間経過後に、S1の処理を実行しても良い。これにより、制御部207は、一連の処理の回数を求められる利得制御の精度に応じて少なくすることができ、処理負担を軽減することができる。
【0063】
S2において、光パワー差閾値P3よりも光パワー差が小さいとき(S2にてNo)、制御部207は、検出部205で検出された最大光パワー値と目標値P1とを比較する(S6)。
制御部207は、目標値P1よりも最大光パワー値が大きいとき(S6にてYes)、制御パラメータを最大光パワー値に、制御ターゲットを目標値P1に決定する(S7)。すると、制御部207は、最大光パワー値が目標値P1となるように、制御電流を制御する(S4)。そして、制御部207は、S5の処理を実行する。
【0064】
S6において、目標値P1よりも最大光パワー値が小さいとき(S6にてNo)、制御パラメータを制御電流に、制御ターゲットを初期値I0に決定する(S8)。すると、制御部207は、制御電流が初期値I0となるように、制御電流を制御する(S4)。そして、制御部207は、S5の処理を実行する。
【0065】
以上のように、実施形態の光受信器120は、分波部202から出力される複数波長の光信号の光パワーを測定し、各光パワーがそれぞれフォトダイオード60〜6nの受光範囲に収まるように、光増幅器の利得を調整する。これにより、光受信器120は、最大光パワーを有する光信号の光パワーを受光範囲内に抑え、かつ最小光パワーを有する光信号の光パワーが、フォトダイオードの受光範囲よりも小さくなることを回避する。したがって、光受信器は、フォトダイオードに入力する光信号の光パワーを調整する光受信器120に、波長依存性がある半導体光増幅器を用いても、広いダイナミックレンジを実現することができる。
【0066】
実施形態の光受信器120は、
図6で説明したように、光増幅器4に半導体光増幅器を適用したときにおいても、広いダイナミックレンジを実現することができる。したがって、実施形態の光増幅器4は、100ギガイーサネットの40km規格において、ファイバ光増幅器ではなく半導体光増幅器を用いることができ、光受信器120を小型化することができる。
【0067】
以上記載した各実施例を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。なお、本発明は、以下の付記に限定されるものではない。
(付記1)
波長の異なる複数の光信号を多重化した通信信号が入力されると、該通信信号の光パワーを増幅して出力する光増幅部と、
前記光増幅部で光パワーが増幅された前記通信信号が入力されると、該通信信号を分波して前記複数の光信号を出力する分波部と、
前記分波部から出力される前記複数の光信号の光パワーをそれぞれ測定するモニタ部と、
前記モニタ部で測定された前記複数の光信号の光パワー値から、最大光パワー値と、最小光パワー値と、最大光パワー値と最小光パワー値との差である光パワー差とを検出する検出部と、
前記光パワー差が、前記最大光パワー値の目標値である第1目標値と、前記最小光パワー値の目標値である第2目標値との差である光パワー差閾値以下であり、かつ前記最大光パワー値が前記第1目標値よりも大きいとき、前記最大光パワー値を第1目標値にするように、前記光増幅部の利得を調整し、
前記光パワー差が前記光パワー差閾値よりも大きいとき、前記最小光パワー値を前記第2の目標値にするように、前記光増幅部の利得を調整する制御部と、
を備えることを特徴とする光受信器。
(付記2)
前記制御部は、
前記複数の光信号の光パワー値が、全て前記第1の目標値と前記第2の目標値の間にあるとき、前記光増幅部の利得を一定にする
ことを特徴とする付記1に記載の光受信器。
(付記3)
前記光受信器は、さらに、
前記分波部から出力される前記複数の光信号を、それぞれの光パワーに応じた電気信号に変換する変換部を備え、
前記制御部は、
前記光増幅部の利得の調整を開始するとき、該利得の大きさを、前記光受信器の最小受信電力の光パワーを有する光信号が前記光増幅器に入力されたとき、該光増幅器から出力される該光信号の光パワーが、前記変換部の受光範囲内に収まる大きさにすることを特徴とする付記1または2に記載の光受信器。
(付記4)
前記光増幅部に利得を制御する制御電流を供給する供給部と、
前記光増幅部の利得の調整を開始するときの制御電流の電流値である初期値を記憶する記憶部と、
を備え、
前記光増幅部は、
前記制御電流の大きさに応じて利得が変化し、
前記制御部は、
前記光増幅部の利得の調整を開始するとき、前記供給部を制御して、前記初期値の制御電流を前記光増幅部に供給させる
ことを特徴とする付記2または3に記載の光受信器。
(付記5)
前記光増幅部は、
制御電流の大きさに応じて利得が変化し、
前記制御部は、
前記光増幅部の利得を調整するとき、前記制御電流の大きさを変更する
ことを特徴とする付記1〜4のいずれか一つに記載の光受信器
(付記6)
前記第1目標値と、前記第2目標値と、前記光パワー差閾値とを記憶する記憶部を備え、
前記制御部は、
前記制御電流の大きさを変更するとき、前記記憶部に記憶された前記第1目標値と、前記第2目標値と、前記光パワー差閾値とを用いる
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の光受信器。
(付記7)
前記光受信器は、さらに、
前記分波部から出力される前記複数の光信号を、それぞれの光パワーに応じた電気信号に変換する変換部を備え、
前記モニタ部は、
前記電気信号の電流値を監視することにより、前記光信号の光パワーを測定する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の光受信器。
(付記8)
前記分波部から出力される前記複数の光信号を、それぞれの光パワーに応じた電気信号に変換する変換部をさらに備え、
前記モニタ部は、
前記電気信号の振幅を監視することにより、前記光信号の光パワーを測定する
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の光受信器。
(付記9)
前記光増幅部は、
半導体増幅器であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の光受信器。
(付記10)
前記検出部と前記制御部とは、
CPUにより実行されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載の光受信器。
(付記11)
波長の異なる複数の光信号を多重化した通信信号が入力されると、該通信信号の光パワーを増幅し、
前記光パワーが増幅された通信信号を分波し、
前記通信信号を分波する処理で分波された前記複数の光信号の光パワーをそれぞれ測定し、
前記測定した複数の光信号の光パワー値から、最大光パワー値と、最小光パワー値と、最大光パワー値と最小光パワー値との差である光パワー差とを検出し、
前記光パワー差が、前記最大光パワー値の目標値である第1目標値と、前記最小光パワー値の目標値である第2目標値との差である光パワー差閾値以下であり、かつ前記最大光パワー値が前記第1目標値よりも大きいとき、前記最大光パワー値を第1目標値にするように、前記通信信号の光パワーを増幅する処理において、前記通信信号を増幅する利得を調整し、
前記光パワー差が前記光パワー差閾値よりも大きいとき、前記最小光パワー値を前記第2の目標値にするように、前記通信信号の光パワーを増幅する処理において、前記通信信号を増幅する利得を調整する
ことを特徴とする光受信方法。
(付記12)
光送信器は、
波長の異なる複数の光信号が入力されると、該複数の光信号を多重化した通信信号を出力する合波部を備え、
光受信器は、
前記光送信器から送信された通信信号が入力されると、該通信信号の光パワーを増幅して出力する光増幅部と、
前記光増幅部で光パワーが増幅された前記通信信号が入力されると、該通信信号を分波して前記複数の光信号を出力する分波部と、
前記分波部から出力される前記複数の光信号の光パワーをそれぞれ測定するモニタ部と、
前記モニタ部で測定された前記複数の光信号の光パワー値を参照し、最大光パワー値と、最小光パワー値と、最大光パワー値と最小光パワー値との差である光パワー差とを検出する検出部と、
前記光パワー差が、前記最大光パワー値の目標値である第1目標値と、前記最小光パワー値の目標値である第2目標値との差である光パワー差閾値以下であり、かつ前記最大光パワー値が前記第1目標値よりも大きいとき、前記最大光パワー値を第1目標値にするように、前記光増幅部の利得を調整し、
前記光パワー差が前記光パワー差閾値よりも大きいとき、前記最小光パワー値を前記第2の目標値にするように、前記光増幅部の利得を調整する制御部と、
を備えることを特徴とする光通信システム。