特許第6127577号(P6127577)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6127577
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】詰替え容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 33/38 20060101AFI20170508BHJP
   B65D 33/00 20060101ALI20170508BHJP
   B65D 30/16 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   B65D33/38
   B65D33/00 C
   B65D30/16 A
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-35567(P2013-35567)
(22)【出願日】2013年2月26日
(65)【公開番号】特開2014-162512(P2014-162512A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2016年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】今井 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】大塚 浩之
(72)【発明者】
【氏名】小出 洋子
(72)【発明者】
【氏名】福田 彰男
【審査官】 家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−255947(JP,A)
【文献】 特開2001−233355(JP,A)
【文献】 特開2001−348045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D30/00−33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材とシーラント層を有する1枚の積層体を、シーラント層を内側にして折り曲げて、折り曲げ部と本体表面積層体と本体裏面積層体を形成し、周縁をシールしてなる詰替え容器であって、
前記折り曲げ部は、前記表面積層体および裏面積層体および注出ノズルシール部と共に、内容物を注ぎ出すための注出ノズルを形成しており、
該注出ノズルの先端は注出ノズル先端シール部によってシールされており、前記注出ノズルシール部に設けられた開封用切目線によって分離形成された開封つまみを持って開封予定線に沿って切り離すことにより注出口を形成するものであり、
前記開封予定線を含む注出ノズル部には、開封予定線に並行する複数のレーザーカット線が施されており、
前記開封用切目線の先端部は、前記レーザーカット線と平行な方向に向かって折れ曲がっており、開封用切目線の先端部と前記レーザーカット線のなす角度(α)が、±10°以内であり、
前記開封用切目線の先端部において、水平線に対して前記レーザーカット線のなす角度(β)が45°以上であり、
前記レーザーカット線は、前記注出口から見て凹む方向に、くの字状に湾曲しており、レーザーカット線が前記折り曲げ部と交差する角度が90°であることを特徴とする詰替え容器。
【請求項2】
基材とシーラント層を少なくとも有する1枚の積層体を、シーラント層を外側にして折り曲げて底テープとし、前記本体表面積層体と本体裏面積層体の間に挿入して周縁をシールしてなるスタンディングパウチ形状としたことを特徴とする請求項1に記載の詰替え容器。
【請求項3】
前記折り曲げ部の一部を切り開き、内容物充填用開口部としたことを特徴とする請求項1または2に記載の詰替え容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体洗剤、柔軟剤などのトイレタリー用品や、食用油、インスタントコーヒーなどの食品等を収納する詰め替え容器に関する。
【背景技術】
【0002】
液体洗剤や柔軟仕上げ剤などのトイレタリー用品や、食用油、インスタントコーヒーなどの食品は、それぞれ使いやすいような形状の専用容器に収納されている。専用容器は、構造もしっかりしており、従って高価であることから、内容物が無くなった段階で、繰り返し使用することができるように、内容物のみを詰替える詰替え容器入りの製品が別途販売されていることが多い。
【0003】
例えば液体洗剤の容器は、洗剤を使用する時にその都度適切な量を計量して取り出す必要があるため、軽量カップに注ぎやすいように、注出口にノズルを備えた剛性のあるプラスチック容器が、繰り返し使用容器として用いられている。この容器に対して、内容物を補充するための詰め替え用の容器としては、軟包装フィルムからなる柔軟な容器に、注出口を形成した容器や、口栓を取付けた容器が一般的に使用されている。
【0004】
繰り返し使用する剛性の容器は、もっぱら注出し易いように設計されているため、繰り返し使用する容器に対して、詰替え容器から内容物を補充する詰替え操作の利便性を考慮したものでは、必ずしもなかった。
【0005】
また一方、詰替え容器も、もっぱら安価に製造することに重点を置くあまり、必ずしも詰替え操作の利便性を考慮したものではなかった。
【0006】
繰り返し使用する容器に設けられたノズルを利用して、詰替え容器の開封を行うことができ、さらに詰替え中に、詰替え容器が自立するために、手で保持しなくてもよい詰替え容器が提案されている。この手放し詰め替え容器は、繰り返し使用する容器の開口部に着脱可能かつ脱落不能に連結される結合部材と、詰め替え容器本体を密封する容器密封部材とを備えた詰め替え容器である(特許文献1参照)。
【0007】
特許文献1に記載された詰め替え容器は、繰り返し使用する容器と詰め替え容器を結合するために、口栓部に、結合部材と容器密封部材という2つの部材を用いているため、容器のコストが高いものとならざるを得ない。また詰め替え容器を、繰り返し使用する容器の開口部にねじ込んで使用する構造であるため、両者の結合は確実であるが、反面、操作が面倒であるばかりでなく、口栓のコスト面においても不利であるという欠点があった。
【0008】
コストの面からは、図6に示したような表裏2枚の包装フィルムの周縁をシールしてなる包装袋が有利である。この詰替え用包装袋は、容器の口径に見合った任意の巾の注出口を設けることができるが、表裏2枚のフィルムの端縁部をシールして注出口部を形成した場合、内容物を注出する際、開口部がシールされた両端に引張られ、表裏のフィルムが疑似密着状態となり、注出口が閉塞してしまうという問題や、注出口が折れ曲がり易く、詰替え操作中に注出口が繰り返し使用する容器から外れてしまうといった問題がある。
【0009】
この注出口が閉塞したり、折れ曲がったりする問題を解決するために、注出口部にフィルムとは別部材のパーツを挿入したり(特許文献2参照)、注出口部付近のフィルムを膨らませて立体形状とすることで、開口面積を確保したりするものが多く提案されている(
特許文献3参照)。
【0010】
しかしこれらの包装袋は、別部材を取り付ける工程や、フィルムに深いエンボス加工を施す工程などが増加するという問題の他、充填時に包装袋の供給部において包装袋を整然と積み上げて揃えることができないという問題や、表裏2枚のフィルムをシールしてなる注出口は、両端にシール部が存在するため、その分だけ開口巾が狭くなり、十分な開口面積を確保することができないという基本的な問題があった。十分な開口面積が確保できないと、詰替え時の注出に要する時間は長くなってしまう。
【0011】
この問題を解決するために、包装袋を構成するフィルムを折り曲げて、注出口の片側を形成し、注出口のシール部を片側だけとする包装袋が提案されている(特許文献4、5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2004−99082号公報
【特許文献2】特開平5−132069号公報
【特許文献3】特許第4110940号
【特許文献4】特開平11−236058号公報
【特許文献5】特開2008−18991号公報
【特許文献6】特開2011−255947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献4、5に示されたような、注出口の片側が折り曲げられたフィルムで構成されている包装袋の場合、注出口が閉塞する問題や、注出口部の開口面積が不足するという問題は解消されるが、特許文献5に示された軟質包装袋の注出口に見られるように、注出時の操作のし易さを考慮して注出口を斜めに設定した場合、開封操作性が不安定になるという問題が生じることが判明した。
【0014】
図7(1)は、特許文献5に開示された軟質包装袋を示した図であり、図7(2)は、注出口部分の拡大図である。本出願人の出願になるこの軟質包装袋は、注出口部分に、切れ目線aとV字状の切欠きbと切れ目線aを覆うように設けられた網点状の傷加工cを備えているにも拘わらず、V字状の切欠きbの位置が多少ずれたような場合には、包装袋の裂け目が切れ目線aから外れてしまい、本来の切れ目線aの位置で開封できないという問題が生じる可能性があることが分かった。
【0015】
本出願人の出願になる特許文献6に記載された詰替え容器は、この問題を解決するためになされたものであり、折り曲げ部に対して傾斜した開封予定線に沿って、複数の傷線からなる易カット加工を施し、さらに開封用切目線の先端を開封予定線と平行な方向に向けて折り曲げたことを特徴とする。
【0016】
特許文献6に記載された詰替え容器によれば、開封時に包装袋の裂け目が開封予定線から外れてしまうという問題は相当改善されるが、依然としてごくまれに開封不良が発生し、さらなる改良が求められていた。
【0017】
本発明の解決しようとする課題は、口栓等の別部材を使用することなく、大面積の注出口が形成できる折り曲げ部を有する詰替え容器において、注出口の開封操作が容易かつ、より確実にできる詰替え容器を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、基材とシーラント層を有する1枚の積層体を、シーラント層を内側にして折り曲げて、折り曲げ部と本体表面積層体と本体裏面積層体を形成し、周縁をシールしてなる詰替え容器であって、
前記折り曲げ部は、前記表面積層体および裏面積層体および注出ノズルシール部と共に、内容物を注ぎ出すための注出ノズルを形成しており、
該注出ノズルの先端は注出ノズル先端シール部によってシールされており、前記注出ノズルシール部に設けられた開封用切目線によって分離形成された開封つまみを持って開封予定線に沿って切り離すことにより注出口を形成するものであり、
前記開封予定線を含む注出ノズル部には、開封予定線に並行する複数のレーザーカット線が施されており、
前記開封用切目線の先端部は、前記レーザーカット線と平行な方向に向かって折れ曲がっており、開封用切目線の先端部と前記レーザーカット線のなす角度(α)が、±10°以内であり、
前記開封用切目線の先端部において、水平線に対して前記レーザーカット線のなす角度(β)が45°以上であり、
前記レーザーカット線は、前記注出口から見て凹む方向に、くの字状に湾曲しており、レーザーカット線が前記折り曲げ部と交差する角度が90°であることを特徴とする詰替え容器である。
【0019】
本発明に係る詰替え容器は、開封予定線に並行する複数のレーザーカット線を施し、切目をこのレーザーカット線に導くための開封用切目線の先端部を、レーザーカット線に対して±10°以内の範囲に特定したことにより、積層体の切目を確実にレーザーカット線に導くことができる。
【0020】
削除。
【0021】
本発明の詰替え容器においては、包装袋の上辺に折り曲げ部が存在するため、開封の方向としては、下方から上方に向かって開封せざるを得ないが、この時、レーザーカット線の角度が小さすぎる(寝ている)と、切目がそれやすくなる。レーザーカット線の角度を45°以上とすることで、開封の安定性が向上する。
【0022】
削除。
【0023】
また、本発明によれば、レーザーカット線が折り曲げ部と交差する角度を90°としたことにより、開封時の終点となる折り曲げ部における切り離れ性が良好となる他、製造工程における許容誤差範囲が広がり、安定した製造が可能となる。これについては、後に詳述する。
【0024】
また、請求項に記載の発明は、基材とシーラント層を少なくとも有する1枚の積層体を、シーラント層を外側にして折り曲げて底テープとし、前記本体表面積層体と本体裏面積層体の間に挿入して周縁をシールしてなるスタンディングパウチ形状としたことを特徴とする請求項1に記載の詰替え容器である。
【0025】
また、請求項に記載の発明は、前記折り曲げ部の一部を切り開き、内容物充填用開口部としたことを特徴とする請求項1または2に記載の詰替え容器である。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る詰替え容器は、基材とシーラント層を少なくとも有する1枚の積層体を、シーラント層を内側にして折り曲げて、折り曲げ部と本体表面積層体と本体裏面積層体を
形成し、周縁をシールしてなる詰替え容器であるから、プラスチックボトルや、プラスチック製の口栓を使用した容器などと異なり、軟包装用積層体のみから製造することができるため、安価に製造することができる。
【0027】
また、本発明に係る詰替え容器は、1枚の積層体を、シーラント層を内側にして折り曲げて、折り曲げ部を形成し、該折り曲げ部は、前記表面積層体および裏面積層体および注出ノズルシール部と共に、内容物を注ぎ出すための注出ノズルを形成したので、大面積の注出口を安定して確保することが可能となり、その結果円滑かつ迅速な詰め替え操作が可能となった。また、注出口の形成も容易かつ確実にできる。
【0028】
また、本発明に係る詰替え容器は、注出口を形成する開封予定線が、前記折曲部に対して傾斜しているため、容器を傾けて内容液を注出する際の操作性が良い。
【0029】
また、開封予定線上には、開封予定線に平行な複数のレーザーカット線が施されており、開封用切目線の先端部が、開封予定線と平行な方向に向かって折れ曲がっており、この開封用切目線の先端部とレーザーカット線のなす角度を±10°以内としたことで、開封つまみを引き上げると、積層体の裂け目が自然に開封予定線に沿って進み、所定の位置に注出口を形成することが容易にしかも確実に可能となった。
【0030】
発明のように、開封用切目線の先端部において、水平線に対してレーザーカット線のなす角度(β)を45°以上とした場合には、開封用切目線から出発した切目がスムーズにレーザーカット線に移行し、開封予定線に沿った開封が安定してできる。
【0031】
また発明のように、レーザーカット線が、注出口から見て凹む方向に湾曲しており、レーザーカット線が折り曲げ部と交差する角度が90°である場合、開封時の最終点において、表裏面の積層体の切目が一致し易くなり、切り離れ性が向上する。また、製造時において、折り曲げ部の位置ずれに対する許容度が広がるため、安定した製造が可能となる。
【0032】
また、請求項に記載の発明のように、基材とシーラント層を少なくとも有する1枚の積層体を、シーラント層を外側にして折り曲げて底テープとし、本体表面積層体と本体裏面積層体の間に挿入して周縁をシールしてなるスタンディングパウチ形状とした場合には、自立性を有する大容量の詰替え容器とすることが可能となり、本発明の特徴を十分に生かせるものとなる。
【0033】
また、請求項に記載の発明のように、折り曲げ部の一部を切り開き、内容物充填用開口部とした場合には、他のシール部分を充填用開口部とすることができないような形状の容器であっても、安定した充填操作が可能となる。
【0034】
本発明に係る詰替え容器は、ノズルキャップを有する繰り返し使用する容器のノズルを前記注出ノズルに挿入可能とした場合、水平に保持した注出ノズルに前記繰り返し使用する容器のノズルを挿入した後に、注出ノズルが垂直になるように容器を傾けることにより、迅速な詰め替えを可能とした詰替え容器となり、本発明の効果が最大限に発揮される。すなわち、本発明に係る詰替え容器は、1枚の積層体を折り曲げた折り曲げ部の存在によって、注出口が自然に開くので、目的とする容器のノズルを挿入し易く、またノズルに合わせて注出口の寸法を設計することにより、ノズルにぴったり合った注出口とすることができる。このため、水平に保持した注出ノズルに繰り返し使用する容器のノズルを挿入した後に、注出ノズルが垂直になるように傾けることにより、迅速な詰替え操作が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、本発明に係る詰替え容器の一参考態様を示した模式図である。
図2図2は、図1のX−X’断面を示した断面模式図であり、詰替え容器を構成する積層体の層構成を示す。
図3図3は、図1の注出ノズル部分の詳細を示した拡大説明図である。
図4図4は、本発明に係る詰替え容器の実施態様を示した模式図である。
図5図5は、本発明に係る詰替え容器の他の参考態様を示した模式図である。
図6図6は、従来の詰替え容器の一例を示した模式図である。
図7図7は、特許文献5に記載された軟質包装袋とその注出口を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下本発明に係る詰替え容器について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明に係る詰替え容器の一参考態様を示した模式図である。また図2は、図1のX−X’断面を示した断面模式図であり、詰替え容器を構成する積層体の層構成を示したものである。また図3は、図1の注出ノズル部分の詳細を示した拡大説明図である。
【0037】
本発明に係る詰替え容器(1)は、図2に示したように、基材(11)とシーラント層(12)を少なくとも有する積層体からなる詰替え容器であって、図1に示したように、1枚の積層体を、シーラント層を内側にして折り曲げて、折り曲げ部(6)と本体表面積層体(2)と本体裏面積層体(3)を形成し、周縁をシールしてなる詰替え容器である。
【0038】
折り曲げ部(6)は、表面積層体(2)および裏面積層体(3)および注出ノズルシール部(24)と共に、内容物を注ぎ出すための注出ノズル(32)を形成しており、注出ノズル(32)の先端は注出ノズル先端シール部(25)によってシールされており、開封予定線(36)に沿って切り離すことにより注出口(31)を形成する。
【0039】
注出ノズル先端シール部(25)の下部には、注出ノズルシール部(24)に設けられた開封用切目線(35)によって分離形成された開封つまみ(34)が形成されている。この開封つまみ(34)を持って開封予定線(36)に沿って切り離すことにより注出口(31)が形成される。
【0040】
開封予定線(36)を含む注出ノズル部には、開封予定線に並行する複数のレーザーカット線(33)が施されており、開封用切目線の先端部(35a)は、レーザーカット線(33)と平行な方向に向かって折れ曲がっている。開封用切目線の先端部とレーザーカット線のなす角度(α)すなわち両者の角度のずれは、±10°以内であることを必須要件とする。
【0041】
本発明に係る詰替え容器における第一の特徴は、折り曲げ部(6)を有することである。折り曲げ部(6)は、1枚の積層体をシーラント層(12)を内側にして天部で折り曲げて形成したものであり、折り曲げ部(6)は、折り曲げ部の下部に設けた注出ノズルシール部(24)および本体表面積層体(2)、本体裏面積層体(3)と共に、注出口(31)に至る内容物の流出路を形成している。折り曲げ部(6)における積層体の戻ろうとする弾性の働きにより、流出路の断面は、常に上部が膨らんだ状態となる。このため、注出口(31)の断面積を広く確保することが可能となり、一度に大量の内容物を排出することが可能となる。
【0042】
また本発明に係る詰替え容器における第二の特徴は、注出ノズルシール部(24)に設けられた開封用切目線(35)によって分離形成された開封つまみ(34)を持って開封予定線(36)に沿って切り離すことにより注出口(31)を形成するものであり、開封
予定線(36)は、少なくとも開封用切目線の先端部(35a)においては、折曲部(6)の稜線に対して傾斜しており、開封予定線を含む注出ノズル部には、開封予定線に並行する複数のレーザーカット線(33)が施されている。
【0043】
さらに開封用切目線の先端部(35a)は、レーザーカット線(33)と平行な方向に向かって折れ曲がっており、開封用切目線の先端部(35a)とレーザーカット線(33)のなす角度(α)が、±10°以内であることにより、開封用切目線の先端から出発した積層体の切目が、確実にレーザーカット線(33)に沿って進行し、開封が確実に行われる。
【0044】
開封用切目線の先端部の角度とレーザーカット線の角度の差が10°を超えるような場合には、開封用切目線の先端から出発した積層体の切目が、レーザーカット線に沿って進行せず、異なる方向にずれてしまう可能性がある。
【0045】
また開封つまみ(34)が、V字型等の切込によって形成されていると、注出口シール部と完全に分離しているので、ぶらぶらして不必要に引っ掛かったりする場合があるが、本発明のように切目線によって形成されている場合には、ぶらぶらしたりしないという利点がある。
【0046】
図1に示した参考態様においては、本体表面積層体(2)と本体裏面積層体(3)は、サイドシール部(22)とボトムシール部(23)においてシールされて袋状となっている。実際の容器では、内容物を充填するための充填用開口部が必要であるが図1では省略されている。図1に示された参考態様においては、ボトムシール部(23)ないしはサイドシール部(22)に充填用開口部を設けることができる。また折り曲げ部(6)の一部を切り開いて、充填用開口部とすることもできる。
【0047】
開封予定線(36)は、開封位置を示す仮想的な線であるが、開封位置を明らかにするために、実際に印刷表示等を行っても良い。また、レーザーカット線(33)は、開封予定線に並行するように開封予定線を含む注出ノズル部に設けられる。レーザーカット線は、本体表面積層体(2)および本体裏面積層体(3)の外側面に連続して設けたハーフカット線であることが好ましい。このようにすることにより、開封予定線(36)の部分を手で引き裂いて注出口(31)を容易に形成することが可能となる。レーザーの種類としては、炭酸ガスレーザーが好ましい。
【0048】
図3に示したように、レーザーカット線(33)は、開封用切目線の先端部(35a)においては、開封用切目線先端部の角度と等しいことが望ましいが、両者の角度のずれが±10°以内であれば切目がレーザーカット線からそれて外れてしまうような問題が生じない。
【0049】
一方、レーザーカット線(33)が、開封用切目線(35)の先端部(35a)において水平線に対してなす角度(β)については、45°以上であることが望ましい。これは、この角度が小さい場合、すなわちレーザーカット線が寝ている場合には、下方から上方に向かって開封する操作が不安定となり、切目の外れが発生しやすいためである。
【0050】
また一方、レーザーカット線(33)が折り曲げ部(6)の稜線と交わる部分における角度については、垂直であることが最も好ましい。これは、詰替え容器の製造工程において、通常は1枚の積層体にレーザーカット線(33)を形成した後に、積層体を折り曲げて折り曲げ部(6)を形成するためである。
【0051】
レーザーカット線(33)が折り曲げ部の稜線と斜めに交わる場合、折り曲げる前の積
層体では、V字型に形成しなければならない。次に折り曲げ部(6)を形成する際には、折り曲げ位置が正確にこのV字の頂点を通るようにしなければならないが、実際には多少のずれが生じる。
【0052】
折り曲げ位置がずれると、表裏面の積層体のレーザーカット線の交点が折り曲げ部において一致せず、表裏どちらかにずれた位置になる。すると開封時に表裏両面から進行してきた積層体の切目が折り曲げ部(6)で一致しないため、切り離れが悪くなることがある。
【0053】
これに対して、レーザーカット線(33)が折り曲げ部の稜線と垂直に交わる場合には、折り曲げ位置が多少ずれたとしても、何ら問題とはならず、開封時に表裏両面から進行してきた積層体の切目は、折り曲げ部(6)において必ず一致する。
【0054】
そこで図4に示したように、レーザーカット線(33)が注出口から見て凹む方向に湾曲しており、レーザーカット線が前記開封用切目線先端部においては、水平線に対して45°以上の角度であり、折り曲げ部と交差する位置においては、その角度が90°である場合には、最も安定した開封性が得られることになる。
【0055】
このように、レーザーカット線(33)が注出口から見て凹む方向に湾曲していると、注出口(31)の開口面積が広くなり、注出性が向上するという別の効果も生じる。
【0056】
本発明に係る詰替え容器に使用する積層体としては、通常軟包装袋に使用される積層体を用いることができる。基材(11)としては、1層ないしは数層からなる紙や金属箔や合成樹脂フィルムを使用する。一例を挙げれば、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリオレフィン系エラストマー等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)等のポリエステル系樹脂、セロハン、三酢酸セルロース(TAC)等のセルロース系樹脂、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)樹脂、エチレン−酢酸ビニル系共重合樹脂(EVA)、アイオノマー樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂(PS)、ポリ塩化ビニル系樹脂(PVC)、ポリ塩化ビニリデン系樹脂(PVDC)、ポリカーボネート樹脂(PC)、フッ素系樹脂、ウレタン系樹脂等の合成樹脂フィルムおよび紙、金属箔等が単体または、複合して使用される。基材(11)には、必要に応じて印刷層や接着剤層が含まれる。
【0057】
紙としては、上質紙、片アート紙、コート紙、キャストコート紙、模造紙などを用いることができる。積層体に紙を用いた場合には、深いエンボス加工により紙に割れが生じることがあるので、本発明に係る詰替え容器に用いる場合は、凸エンボスおよび凹エンボスとして、筋状のエンボスを採用することにより、紙を用いた積層体を安定して使用することができる。環境配慮の点からも、紙を用いることは有効である。
【0058】
シーラント層(12)としては、ポリオレフィン系樹脂が一般的に使用され、具体的には、低密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・αオレフィン共重合体などのエチレン系樹脂や、ホモポリプロピレン樹脂、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレンブロック共重合体、プロピレン・αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂などが使用される。またこれらの樹脂を複合した多層フィルムが使用されることもある。
【0059】
積層体の具体的な構成例としては、PET/印刷層/接着剤層/延伸ポリアミド樹脂フィルム(以下ONYと略す)/接着剤層/LLDPEからなる構成のフィルムや、ONY/接着剤層/LLDPE、ONY/接着剤層/ONY/接着剤層/LLDPE、紙/LDPE/アルミニウム箔/LDPE、紙/LDPEなどが挙げられる。
【0060】
図5は、本発明に係る詰替え容器の他の参考態様を示した模式図である。
この参考態様は、基材とシーラント層を少なくとも有する1枚の積層体を、シーラント層を外側にして折り曲げて底テープ(4)とし、本体表面積層体(2)と本体裏面積層体(3)の間に挿入して周縁をシールしてなるスタンディングパウチ形状としたものである。このような形状の場合、内容物を充填する充填用開口部をサイドシール部に設けることができないため、折り曲げ部(6)の一部を切り開いて、充填用開口部(41)としてある。このように、容器の天部に充填用の開口部が存在すると、内容物の充填操作がやり易くなる利点がある。
【0061】
スタンディングパウチ形状の容器は、底テープ(4)が広がるため、大容量の容器とすることが容易に可能である。従って、本発明に係る詰替え容器における注出時間が短くて済むという特徴を十分に生かすことができる。
【0062】
折り曲げ部(6)は、1枚の積層体をシーラント層を内側にして天部で折り曲げて、形成されており、折り曲げ部(6)は表面積層体(2)および裏面積層体(3)および注出ノズルシール部(24)と共に、注出口に至る内容物の流出路を形成している。このようにすることにより、特に内容物が液体の場合には、内容物を注出する際、内容物が直線状の流出路を円滑に流れるために、迅速な注出を可能とする。この特徴は、この参考態様においては、容器が大容量であるためにより一層効果的なものとなっている。
【0063】
図5に示した詰替え容器を製造するには、容器の高さに相当する巾のほぼ2倍の巾にスリットした積層体をシーラント層面を内側にして天部で折り曲げて対向させ、本体表面積層体(2)と本体裏面積層体(3)とし、これを連続的に供給し、この間にシーラント層面が外側になるように二つ折りにした底テープ(4)を連続的に供給し、必要なシールを行った後に、打ち抜いて容器とする。
【0064】
このように、本発明に係る詰替え容器は、特別のプラスチック製の口栓等を使用せずに、大面積の注出口を確保することが可能であり、またこの注出口の大きさは、目的とする繰り返し使用容器の口栓の形状に合わせて自由に設計することができるので、迅速な詰替え操作が可能な専用詰替え容器として極めて価値の高いものである。
以下実施例に基づいて、本発明に係る詰替え容器についてさらに具体的に説明する。
【実施例】
【0065】
[参考例1]
本体表面積層体および本体裏面積層体として以下の構成からなる積層体を使用した。
<積層体の構成>
PET(東レ社製P60、12μm)/印刷層/接着剤層(東洋モートン社製TM272、3g/m(dry))/ONY(ユニチカ社製ONMB、15μm)/接着剤層(同上)/LLDPE(東セロ社製TUX−FCS、120μm)
底テープとして以下の構成からなる積層体を使用した。
<積層体の構成>
ONY(ユニチカ社製ONM、15μm)/LLDPE(同上、120μm)
【0066】
上記の積層体を用いて、図5に示した形状のスタンディングパウチを作製した。パウチサイズは、巾130mm、高さ260mm、底折込35mmとした。開口部の巾は、約1
8mmである。
充填用開口部としては、折り曲げ部の一部をカットし、充填用開口部とした。また注出ノズル先端部の注出口となるべき開封予定線を含む部分に、レーザー加工による3本の直線状のレーザーカット線を設けた。また注出ノズルシール部に開封用切込線を設け、その先端は、レーザーカット線の角度と一致する方向に折り曲げた。α=5°、β=60°である。
【0067】
[実施例1]
レーザーカット線の形状を図4に示したものとした以外は、参考例1と同様の材料を用いて同様の形状のスタンディングパウチを作製した。α=0°、β=50°、レーザーカット線と折り曲げ部のなす角度=90°である。
【0068】
実施例1と参考の詰替え容器について、開封性を評価した。評価方法としては、各サンプルのカット予定位置を治具でつかみ、レーザーカット線に沿って引き裂いた時の引裂強度(N)を測定した。また、手で実際に引き裂いた時の引裂性の感触を官能評価した。その結果を表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
このように、本発明に係る詰替え容器は、実際に手で開封する時の開封適性に優れており、特に、レーザーカット線を湾曲させた実施例では、その効果が高いことが分かる。
【符号の説明】
【0071】
1・・・詰替え容器
2・・・本体表面積層体
3・・・本体裏面積層体
4・・・底テープ
6・・・折り曲げ部
11・・・基材
12・・・シーラント層
21・・・トップシール部
22・・・サイドシール部
23・・・ボトムシール部
24・・・注出ノズルシール部
25・・・注出ノズル先端シール部
31・・・注出口
32・・・注出ノズル
33・・・レーザーカット線
34・・・開封つまみ
35・・・開封用切目線
35a・・・開封用切目線先端部
36・・・開封予定線
a・・・切れ目線
b・・・V字切欠き
c・・・網点状の傷加工
41・・・内容物充填用開口部
α・・・開封用切目線先端部とレーザーカット線のなす角度
β・・・レーザーカット線のなす角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7