特許第6127592号(P6127592)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6127592
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】コンバータの制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20170508BHJP
【FI】
   H02M7/48 M
   H02M7/48 E
   H02M7/48 U
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-46347(P2013-46347)
(22)【出願日】2013年3月8日
(65)【公開番号】特開2014-176186(P2014-176186A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2015年12月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100096459
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 剛
(72)【発明者】
【氏名】野村 昌克
(72)【発明者】
【氏名】吉田 崇伸
【審査官】 北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−015161(JP,A)
【文献】 特開平10−257773(JP,A)
【文献】 特開平03−230762(JP,A)
【文献】 特開平06−105563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流側が交流電源に接続されたコンバータと、該コンバータの正、負出力端間に接続された平滑コンデンサと、直流側が前記平滑コンデンサに接続され、交流側が負荷に接続されたインバータとを備えた装置において、
前記コンバータの直流出力電圧を検出し、該直流出力電圧を検出した電圧が直流電圧指令値にほぼ等しくなるようにフィードバック制御するコンバータの制御装置であって、
前記コンバータの直流電圧指令値とコンバータの直流出力電圧を検出した電圧の偏差に基づいて電流指令値の積分項を演算する積分項演算部と、
前記コンバータの直流電圧指令値とコンバータの直流出力電圧を検出した電圧の偏差から、前記直流出力電圧を検出した電圧が直流電圧指令値以下である第1の状態か、又は直流出力電圧を検出した電圧が直流電圧指令値よりも大である第2の状態かを判定した判定出力と、前記コンバータの直流電圧指令値とコンバータの直流出力電圧を検出した電圧の偏差を微分した微分値とに基づいて、前記第1の状態であるときの第1のゲイン定数と、前記第2の状態であるときの、前記第1のゲイン定数よりも小さい第2のゲイン定数とを作成し、
前記インバータからコンバータへの電力回生時に、前記第1のゲイン定数、第2のゲイン定数を用いて、前記インバータの電流がコンバータの電流以下となったときから、前記インバータの電流がコンバータの電流以下である期間における前記積分項演算部の積分ゲインを、前記インバータの電流がコンバータの電流よりも大である期間における前記積分項演算部の積分ゲインよりも小さくする積分ゲイン変更部と、
を備えたことを特徴とするコンバータの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷への電力供給および負荷からの電力を電源側へ回生する電力変換装置におけるコンバータの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図1に電力変換装置の一例を示す。図1において、三相の交流電源11はリアクトルおよびコンデンサから成るフィルタ回路12を介してコンバータ13の三相入力側に接続されている。
【0003】
コンバータ13は、例えばIGBTなどの半導体スイッチング素子を三相ブリッジ接続して構成され、正、負極端間にはDCコンデンサ(平滑コンデンサ)14が接続されている。
【0004】
15は、例えばIGBTなどの半導体スイッチング素子を三相ブリッジ接続して構成されたインバータであり、直流側は前記DCコンデンサ14の両端間に接続され、交流側は電動機などの負荷16に接続されている。
【0005】
尚上記のように構成された電力変換装置において、コンバータの直流出力電圧変動を抑制する方法は、従来、例えば特許文献1〜3に記載のものが提案されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−223959号公報
【特許文献2】特開平10−257773号公報
【特許文献3】特開平11−150955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図1のように構成された電力変換装置では、DCコンデンサ14の電圧VDCを一定になるようにコンバータ電流ICの制御を行う。ここで電動機のようにエネルギーを電源側に回生を行う負荷(16)が接続されている場合、エネルギーはインバータ15の動作により、一旦DCコンデンサ14に蓄えられ、次にコンバータ13の動作により交流電源11に送られる。
【0008】
このとき、回生電力の立ち上がりが急峻であり、コンバータ13の直流電圧制御が遅いと、直流電圧VDCが上昇し、過電圧となる。直流電圧VDCの制御応答を良くすると直流電圧が過電圧レベルまで上昇することを避けることができるが、コンバータ電流(図1のICの矢印と逆向きに流れる電流)が過大となり、過電圧故障となる可能性がある。
【0009】
本発明は上記課題を解決するものであり、その目的は、電力変換装置における電力回生時に、直流電圧と直流電流の上昇を抑制することができるコンバータの制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための請求項1に記載のコンバータの制御装置は、交流側が交流電源に接続されたコンバータと、該コンバータの正、負出力端間に接続された平滑コンデンサと、直流側が前記平滑コンデンサに接続され、交流側が負荷に接続されたインバータとを備えた装置において、
前記コンバータの直流出力電圧を検出し、該直流出力電圧を検出した電圧が直流電圧指令値にほぼ等しくなるようにフィードバック制御するコンバータの制御装置であって、
前記コンバータの直流電圧指令値とコンバータの直流出力電圧を検出した電圧の偏差に基づいて電流指令値の積分項を演算する積分項演算部と、
前記コンバータの直流電圧指令値とコンバータの直流出力電圧を検出した電圧の偏差から、前記直流出力電圧を検出した電圧が直流電圧指令値以下である第1の状態か、又は直流出力電圧を検出した電圧が直流電圧指令値よりも大である第2の状態かを判定した判定出力と、前記コンバータの直流電圧指令値とコンバータの直流出力電圧を検出した電圧の偏差を微分した微分値とに基づいて、前記第1の状態であるときの第1のゲイン定数と、前記第2の状態であるときの、前記第1のゲイン定数よりも小さい第2のゲイン定数とを作成し、
前記インバータからコンバータへの電力回生時に、前記第1のゲイン定数、第2のゲイン定数を用いて、前記インバータの電流がコンバータの電流以下となったときから、前記インバータの電流がコンバータの電流以下である期間における前記積分項演算部の積分ゲインを、前記インバータの電流がコンバータの電流よりも大である期間における前記積分項演算部の積分ゲインよりも小さくする積分ゲイン変更部と、
を備えたことを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、電力回生時に、回生電流の立ち上がりが急峻であり、インバータの回生電流がコンバータの電流よりも大である期間は、コンバータ制御の制御応答が高くなるため、回生電力を速やかに交流電源側に回生することができるので、この期間における直流電圧の上昇を抑制することができる。
【0013】
また、インバータの電流がコンバータの電流以下となった場合、コンバータ制御の制御応答が低くなるため、コンバータから交流電源側へ流れる電流が過大になることが避けられる。
【発明の効果】
【0016】
(1)請求項1に記載の発明によれば、電力回生時に、直流電圧と直流電流の上昇を抑制し、過電圧、過電流による故障発生を防止することができる。また、回生状態を確実に認識し、制御応答の高低を切り換えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明が適用される電力変換装置の一例を示す回路図。
図2】本発明の実施形態例における直流電圧制御系を表す制御ブロック図。
図3】従来の制御方法による回生電力とコンバータの電圧、電流の関係を示す特性図。
図4】本発明の実施形態例における直流電圧制御系の要部構成図。
図5】本発明の実施形態例の制御方法による回生電力とコンバータの電圧、電流の関係を示す特性図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明するが、本発明は下記の実施形態例に限定されるものではない。図2は本発明を図1に示す電力変換装置に適用した実施形態における、コンバータによる直流電圧制御系の制御ブロック図である。
【0019】
本実施形態では、図1のコンバータ13の直流電圧(DCコンデンサ14の電圧)VDCを検出し、該直流電圧VDCが直流電圧指令値VDC*にほぼ等しくなるように、本発明の制御部としてのPIコントローラ20によってフィードバック制御を行うものである。
【0020】
PIコントローラ20は、前記VDCとVDC*の偏差に基づいて電流指令値の比例項および積分項を演算し、コンバータの電流指令値Ic*を求める。
【0021】
コンバータ電流ICとインバータ電流IINVの偏差がコンデンサ電流IDCとなり、このIDCによってDCコンデンサ14(CDC)に直流電圧VDCが生じることを表している。
【0022】
DCコンデンサ14から負荷16側に流れる電流IINVとコンバータ13からDCコンデンサ14に流れる電流ICの差により直流電圧VDCは式(1)となる。
【0023】
【数1】
【0024】
ただし、回生開始時をt=0とする。
【0025】
ここで、コンバータ13によりVDC図2に示すように制御する。図2ではPIコントローラ20により、コンバータ電流ICの指令値IC*を演算し、直流電圧VDCが指令値VDC*となるようにICを流す。ここでコンバータの電流ICは指令値IC*と等しいとする。
【0026】
前記VDC*を一定として、IINVに対するVDC*−VDCのラプラス変換は、
【0027】
【数2】
【0028】
コンバータの電流ICとインバータ電流IINVの関係は、
【0029】
【数3】
【0030】
となる。
【0031】
インバータ電流IINVとコンバータ電流ICの関係から、以下の過程を経て直流電圧VDCが設定した値VDC*となる。
【0032】
図3にその様子を示す。ただし、図3においては、電流の向きは図1の矢印とは逆にしている。
【0033】
(1)IINV>ICの期間 直流電圧VDCが上昇
(2)IINV=ICで直流電圧VDCが最大
(3)IINV<ICの期間 直流電圧VDCが減少
ここで、期間(1)においてIINVとICの差が小であれば、VDCの最大値が小となり、過電圧を避けることができる。従って、コンバータ13を高応答にすることで、過電圧を避けることができる。
【0034】
一方、コンバータ13から電源側に流れる電流は期間(3)で最大となるので、過電圧を避けるためにコンバータ13を高応答に調整すると前記式(3)は、期間(3)において、オーバーシュート気味になる。これにより、コンバータ電流ICが過大となって半導体スイッチング素子の破損に至る可能性が増大する。
【0035】
そこで本実施形態例では、負荷からの回生電流の立ち上がり期間(前記期間(1))に直流電圧が過電圧になることを防ぐため、直流電圧制御系の応答を上げ、また、コンバータ電流が過大になることを避けるために、IINVとICが等しくなった時点(前記期間(2))でPIコントローラ20のゲインを切り換え、応答を遅くする。
【0036】
図4は、本実施形態の図2の直流電圧制御系におけるPIコントローラ20の詳細を示しており、図2と同一部分は同一符号をもって示している。図4において、21は電流指令値の積分項を演算する積分項演算部であり、22は電流指令値の比例項を演算する比例項演算部である。
【0037】
23は、直流電圧指令値VDC*と直流電圧VDCの差eを微分する微分器であり、24は前記電圧の差eから回生又は駆動状態における符号を判定する符号判定器である。
【0038】
25は、微分器23の出力と符号判定器24の出力Pを乗算する乗算器であり、26は、乗算器25の出力aが0以上のときは1のゲイン定数(第1のゲイン定数)を、0未満のときは0〜1の値のゲイン定数G(第2のゲイン定数)を各々作成するゲイン定数作成部である。
【0039】
このゲイン定数作成部26の出力hは乗算器27において前記VDC*とVDCの偏差eと掛け合わせ、乗算器27の出力xを前記積分項演算部21の入力としている。
【0040】
積分項演算部21と比例項演算部22の出力は加算器28にて加算されて、コンバータ13の電流指令値IC*を出力している。
【0041】
尚、前記微分器23、符号判定器24、乗算器25,27およびゲイン定数作成部26によって積分ゲイン変更部を構成している。
【0042】
前記期間(2)でインバータ電流IINVとコンバータ電流ICが等しくなると、VDC*とVDCの偏差eの微分は0となる。この時点でPIコントローラ20のパラメータを変更し、制御応答を遅くする。図4では、状態を偏差eの符号から判断し、e<0のとき、偏差の微分に符号判定器24の出力Pを乗算した、乗算器25の出力aが0未満になるときに、PIコントローラ20の積分ゲインが小さくなるように、積分項の入力に、ゲイン定数作成部26で作成したゲイン定数G(0以上、1以下)を乗じる。
【0043】
図5図4の制御回路を適用した場合の回生時のコンバータ電圧、電流の様子を示している。期間(1)は図3の場合と同様の電圧、電流であるが、期間(2)の時点ではPIコントローラ20のパラメータを変更し、制御応答が遅くなった結果、期間(3)において、コンバータ電流ICの最大値は抑えられている。ただし、制御応答が遅くなった結果、直流電圧が指令値に収束する時間は長くなる。
【0044】
上記のように本実施形態例によれば、直流電圧制御系の応答を振動的になるまで上げることにより、負荷からの回生電流の立ち上がり期間に、回生電力を速やかに電源側に出力できるので、直流電圧の上昇を抑制できる。また、回生電力とコンバータの電源への出力電力が等しくなった時点で制御器(PIコントローラ20)の応答を遅くしているため、直流電圧制御系の応答を振動的になるまで上げても、コンバータ電流の最大値を抑えることができる。
【符号の説明】
【0045】
11…交流電源
12…フィルタ回路
13…コンバータ
14…DCコンデンサ
15…インバータ
16…負荷
20…PIコントローラ
21…積分項演算部
22…比例項演算部
23…微分器
24…符号判定器
25,27…乗算器
26…ゲイン定数作成部
28…加算器
図1
図2
図3
図4
図5