(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記脚片は、前記振動電極板に結合された箇所と反対側の端部でアンカーを介して前記静止部材により支持されうるようになっていることを特徴とする、請求項1に記載の静電容量型センサ。
【背景技術】
【0002】
音響センサに用いられるダイアフラムでは、音響振動よるダイアフラムの変位を大きくして音響センサの感度を向上させるため、ダイアフラムを脚片で支持したものがある。
図1Aは、従来の音響センサを示す平面図である。ただし、
図1Aでは、バックプレートや固定電極板を除いてダイアフラムを露出させている。
【0003】
図1Aに示す音響センサでは、基板11に開口されたチャンバ(図示せず)を覆うようにして基板11の上面に矩形状のダイアフラム12が配置されている。ダイアフラム12のコーナー部からは、対角方向外向きに脚片13が延出している。チャンバの縁において基板11の上面には4個のアンカー14が設けられており、脚片13の先端部下面はそれぞれアンカー14によって支持されている。よって、ダイアフラム12は、基板11の上面において剛性の小さな脚片13によって支持されており、音響振動によって上下に大きく変位する構造となっている。このような構造のダイアフラムを有する音響センサとしては、たとえば特許文献1に開示されたものや、特許文献2に開示されたものがある。
【0004】
しかし、
図1Aのようにダイアフラム12から外側へ脚片13を延出させた構造の場合には、脚片13と脚片13の間の領域、すなわち
図1Bにおいてハッチングを施した領域にはダイアフラム12が存在せず、この領域が有効活用されていない。そのため、ダイアフラムの面積に比較して基板の面積が大きくなり、音響センサを小型化するうえでの阻害要因となっていた。あるいは、同じ基板サイズであればダイアフラムの面積が小さくなり、音響センサの感度が低下する。
【0005】
図1Aのような支持構造のダイアフラム12においてその面積を大きくしようとすれば、たとえば
図2のように脚片13と脚片13の間の領域へダイアフラム12を延出させることが考えられる。しかし、
図2のようなダイアフラム12であると、脚片13と脚片13の間へ延出された部分12aは脚片13により支持された部分(
図1Aのもともとダイアフラム12であった部分)によって片持ち状に支持されている。そのため、延出部分12aは、ダイアフラム12が固有に持つ反りの影響を受けやすく、上方又は下方へ反り返ったりしやすい。このような反り返りの方向や程度は、生産工程におけるウエハ間やロット間でのばらつきで生じるので、
図2のような構造のダイアフラムは、音響センサの感度などをばらつかせる原因となる。また、場合によっては、反り返った部分12aが基板11やバックプレートに衝突するおそれがある。
【0006】
また、ダイアフラム12の面積を大きくするためには、脚片13の長さを短くすればよい。しかし、脚片13の長さを短くすると、脚片13の剛性が高くなるので、ダイアフラム12の変位量が小さくなり、音響センサの感度が低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的とするところは、センササイズを小型化しつつ感度を向上させることのできる音響センサなどの静電容量型センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る静電容量型センサは、少なくとも上面で開口した空洞を有する基板と、前記空洞の上面を覆うようにして前記基板の上方に形成された振動電極板と、前記振動電極板と対向するように配置された固定電極板とを備えた静電容量型センサであって、全周を前記振動電極板に囲まれ、かつ、一部を前記振動電極板に結合された脚片を有し、前記脚片は、静止部材により支持されうるようになっていることを特徴としている。ここで、振動電極板は脚片を含まない概念である。また、振動電極板は、変位可能な部分であって、基板に固定されていて変位することのできない部分は含まない。
【0010】
本発明の静電容量センサにあっては、静止部材によって支持されうる脚片の全周が振動電極板に囲まれている。すなわち、脚片が振動電極板の内部に設けられている。したがって、脚片と脚片の間に無駄な領域が生じないので、振動電極板の面積を広くでき、静電容量型センサの感度を向上させることができる。また、脚片が振動電極板の内部に設けられていて、脚片が振動電極板から外側へ延出されないので、静電容量センサを小型化することができる。また、振動電極板の脚片間の部分が片持ち状とならず、静止部材ないし脚片によって張力を加えられるので、脚片間の部分に反りが発生しにくい。
【0011】
本発明に係る静電容量型センサのある実施態様は、前記脚片が、スリットによって前記振動電極板と分離されていることを特徴としている。かかる実施態様では、脚片と振動電極板がスリットで分離されているので、脚片が撓みやすくなる。よって、振動電極板の変位量を大きくでき、静電容量型センサの感度をより向上させることができる。
【0012】
本発明に係る静電容量型センサの別な実施態様は、前記脚片が、前記振動電極板の外縁部に位置していることを特徴としている。かかる実施態様によれば、振動電極板を脚片によって安定に支持させることができる。また、基板の空洞が狭くなりにくい。
【0013】
また、前記脚片は、前記振動電極板に結合された箇所から前記振動電極板の中心方向へ向けて延出していてもよく、あるいは、前記振動電極板に結合された箇所から前記振動電極板の外周方向へ向けて延出していてもよい。
【0014】
本発明に係る静電容量型センサのさらに別な実施態様は、前記脚片が、前記振動電極板に結合された箇所と反対側の端部でアンカーを介して前記静止部材により支持されうるようになっていることを特徴としている。かかる実施態様によれば、脚片の変形部分を長くできるので、振動電極板の変位量が大きくなり、センサの感度が向上する。
【0015】
本発明に係る静電容量型センサのさらに別な実施態様は、前記基板の上面に垂直な方向から見て、前記空洞は、前記脚片間の領域へ張り出していることを特徴としている。かかる実施形態によれば、基板の空洞の容量を大きくすることができる。
【0016】
また、本発明に係る静電容量型センサにおいては、前記静止部材が前記基板であり、前記脚片は、アンカーを介して前記基板の上方に固定されていてもよい。このとき、脚片はアンカーを介して前記基板の上に固定されていてもよく、前記基板の上面に設けられた絶縁膜や保護膜の上に固定されていてもよい。あるいは、前記振動電極板を覆うようにして前記基板の上方にバックプレートが形成されている場合には、前記静止部材が前記バックプレートであり、前記脚片は、アンカーを介して前記バックプレートの下面に支持されうるようになっていてもよい。また、前記静止部材が前記固定電極板であり、前記脚片は、アンカーを介して前記固定電極板に固定されうるようになっていてもよい。
【0017】
このうち、脚片が、アンカーを介して基板の上面に固定されている場合には、前記アンカーの内部を貫通する導電部によって前記脚片と前記基板とが導通していてもよい。かかる実施形態によれば、振動電極板から配線を引き回す必要がなくなるので、センササイズを小型化することができる。
【0018】
本発明に係る音響センサは、本発明に係る静電容量型センサを利用した音響センサであって、前記バックプレート及び前記固定電極板には、音響振動を通過させるための複数個の孔が形成されていることを特徴としている。本発明の音響センサは、本発明に係る静電容量センサを利用しているので、音響振動の検知感度を向上させるとともにセンササイズを小型化することができる。
【0019】
また、本発明の音響センサは、音響センサからの信号を増幅して外部に出力する回路部と組みあわせることによってマイクロフォンを構成することができる。
【0020】
なお、本発明における前記課題を解決するための手段は、以上説明した構成要素を適宜組み合せた特徴を有するものであり、本発明はかかる構成要素の組合せによる多くのバリエーションを可能とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1Aは、従来の音響センサの、バックプレート及び固定電極板を除いた状態の平面図である。
図1Bは、
図1Aの音響センサにおける無駄な領域を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1Aのダイアフラムを元にして、その面積を広げた比較例を示す平面図である。
【
図3】
図3Aは、本発明の実施形態1による音響センサを示す平面図である。
図3Bは、
図3Aに示す音響センサからバックプレート及び固定電極板を除いてダイアフラムを露出させた状態を示す平面図である。
【
図5】
図5は、
図3Bの音響センサにおいて、ダイアフラムが変位している様子を示す断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態1による音響センサの変形例を示す平面図である。
【
図7】
図7A及び
図7Bは、それぞれ本発明の実施形態1による音響センサのべつな変形例を示す平面図である。
【
図8】
図8Aは、本発明の実施形態2による音響センサを示す平面図である。
図8Bは、
図8Aに示す音響センサからバックプレート及び固定電極板を除いてダイアフラムを露出させた状態を示す平面図である。
【
図9】
図9は、
図8Bの音響センサにおいて、ダイアフラムが変位している様子を示す断面図である。
【
図12】
図12は、本発明の実施形態3による音響センサを示す断面図である。
【
図13】
図13は、実施形態3の音響センサの動作時の状態を示す断面図である。
【
図14】
図14Aは、実施形態3の音響センサに用いられるダイアフラムの平面図である。
図14Bは、実施形態3の音響センサに用いられる別なダイアフラムの平面図である。
【
図15】
図15は、本発明の実施形態4による音響センサを示す断面図である。
【
図16】
図16は、本発明の実施形態4による音響センサを示す断面図である。
【
図17】
図17は、本発明に係る音響センサを内蔵したマイクロフォンの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々設計変更することができる。
【0023】
(実施形態1)
以下、
図3−5を参照して本発明の実施形態1による静電容量型センサ、すなわち音響センサ21を説明する。
図3Aは、本発明の実施形態1による音響センサ21の平面図である。
図3Bは、
図3Aの音響センサ21からバックプレート28と固定電極板29を除いてダイアフラム24を露出させた状態の平面図である。
図4Aは、音響センサ21の断面図である。
図4Bは、
図4AのX部の断面を示す拡大図である。
図5は、ダイアフラム24が変位した状態を示す断面図である。
【0024】
この音響センサ21は、MEMS技術を利用して作製された静電容量型素子である。
図4Aに示すように、この音響センサ21は、シリコン基板22(基板)の上面にアンカー27を介してダイアフラム24を設け、ダイアフラム24と対向させてダイアフラム24の上方に固定電極板29を設けたものである。
【0025】
シリコン基板22には、上面から下面に貫通したチャンバ23(空洞)が開口されている。ダイアフラム24は、チャンバ23の上面開口を覆うようにしてシリコン基板22の上面に配置されている。ダイアフラム24は、導電性を有するポリシリコン薄膜によって略矩形状に形成されていてダイアフラム24自体が振動電極板となっている。
【0026】
図3Bに示すように、ダイアフラム24の4箇所のコーナー部には、それぞれ脚片26が設けられている。脚片26は、ダイアフラム24に用いたポリシリコン薄膜にU字状のスリット25を設けることにより形成されており、スリット25によってダイアフラム24と分離されている。スリット25に囲まれた脚片26は、ダイアフラム24の対角線方向に延びており、ダイアフラム24の外周側に位置する端部がダイアフラム24とつながっている。したがって、脚片26は、ダイアフラム24の外縁部においてダイアフラム24内に位置しており、全周をダイアフラム24により囲まれている。
【0027】
なお、スリット25の端は、ダイアフラム24の振動によって亀裂が生じるおそれがある。よって、スリット25の端は円弧状に丸くしておくか、あるいは円形の孔で終端させておくことが好ましい。
【0028】
チャンバ23の外側において、シリコン基板22の上面には複数個の4個のアンカー27が配置されている。各アンカー27は、チャンバ23の対角方向に位置している。脚片26は、ダイアフラム24の中心側に位置する端部の下面をアンカー27によって支持されている。こうしてダイアフラム24は、チャンバ23の上面開口を覆うように配置されており、チャンバ23の上面開口及びシリコン基板22の上面から浮いている。
【0029】
脚片26をダイアフラム24の内側に配置したことでチャンバ23の容積が小さくなるので、できるだけチャンバ23の容積を大きくしている。すなわち、
図3Bに示すように、シリコン基板22の上面に垂直な方向から見てダイアフラム24の縁からはみ出さないようにしつつ、チャンバ23をアンカー27間の領域へ突出させている。この結果、上面から見たチャンバ23の形状は、十文字状となっている。また、チャンバ23をアンカー27間の領域へ突出させることにより、シリコン基板22の上面とダイアフラム24の下面とが対向している隙間(ベントホール)の長さを短くでき、音響センサ21の音響抵抗を下げることができる。
【0030】
アンカー27の少なくとも1つは、
図4Bに示すように貫通孔27aを有しており、脚片26の一部がスルーホール部32(導電部)となって貫通孔27a内に埋め込まれ、シリコン基板22の上面と接触している。シリコン基板22は導電性を有しているので、かかるスルーホール構造や脚片26を通じてダイアフラム24がシリコン基板22に導通している。また、
図3Aに示すように、シリコン基板22の上面には電極パッド34が設けられており、ダイアフラム24はシリコン基板22を通して電極パッド34と導通している。このような構造によれば、ダイアフラム24から引出配線を引き回す必要がないので、音響センサ21の小型化に寄与する。
【0031】
上記のような脚片26で支持されたダイアフラム24でも、
図5に示すように、細い脚片26を撓ませることによって上下方向に変位もしくは振動することができる。よって、脚片26によってダイアフラム24の変位量を増大させることができ、音響センサ21の感度を高くできる。
【0032】
図4Aに示すように、SiNからなるバックプレート28の下面には、ポリシリコンからなる固定電極板29が設けられている。バックプレート28は、ドーム状に形成されていてその下に空洞部分を有しており、その空洞部分でダイアフラム24を覆っている。固定電極板29の下面とダイアフラム24の上面との間には微小なエアギャップ30(空隙)が形成されている。
図3A及び
図4に示すように、バックプレート28の一部からはシリコン基板22の上面外周へ向けて膨出部28aが延出している。固定電極板29からは、膨出部28aの下面に沿って引出配線33が引き出されている。引出配線33の先端には膨出部28aの上面に設けた電極パッド35が接続されている。よって、固定電極板29は電極パッド35に導通している。
【0033】
バックプレート28と固定電極板29には、上面から下面に貫通するようにして、音響振動を通過させるためのアコースティックホール31(音響孔)が多数穿孔されている。
図3Aに示すように、アコースティックホール31は、規則的に配列されている。図示例では、アコースティックホール31は、互いに120°又は60°の角度を成す3方向に沿って三角形状に配列されているが、矩形状や同心円状などに配置されていてもよい。
【0034】
この音響センサ21にあっては、固定電極板29とダイアフラム24が、エアギャップ30を挟んでコンデンサ構造を構成している。そして、音響振動に感応してダイアフラム24が振動すると、固定電極板29とダイアフラム24の間の静電容量が変化し、音響振動が静電容量の変化を通して電気信号に変換される。
【0035】
さらに、この音響センサ21では、脚片26がダイアフラム24で囲まれていてダイアフラム24の内部に位置しているので、脚片26と脚片26の間の領域もダイアフラム24として活用されている。この結果、同じ広さの基板上面にダイアフラムを設ける場合、ダイアフラム24の面積を広くすることができ、音響センサ21の感度を向上させることができる。あるいは、ダイアフラムの面積が同じである場合、
図1Aのようなダイアフラム12では外向きに脚片13が出ているので、基板サイズ(センササイズ)が大きくなるが、本実施形態の音響センサ21では脚片26がダイアフラム24の内側にあるので、基板サイズが大きくならない。
【0036】
また、この音響センサ21では、ダイアフラム24のうち脚片26と脚片26の間の領域は、
図2のダイアフラム12の延出部分12aのように片持ち状にならず、外側の縁まで脚片26により支持されている。そのため、ダイアフラム24のうち脚片26と脚片26の間の領域は、アンカー27及び脚片26からの張力(
図3Bに矢印で示す向きの張力)によってピンと張られており、反りや歪みが生じにくい。さらに、音響センサ21では、ダイアフラム24が変位しやすいように脚片26の長さを長くしてもダイアフラム24の面積の減少はわずかである。
【0037】
よって、本実施形態のような音響センサ21によれば、基板上面のダイアフラム設置スペースを有効に活用してダイアフラム面積を広くでき、センササイズの小型化を図りつつ感度を向上させることができる。
【0038】
(変形例)
図6は、実施形態1の変形例であって、異なる平面形状のチャンバ23を表している。この変形例では、上方から見たチャンバ23の形状を略八角形として、チャンバ23を脚片26と脚片26の間の領域へ張り出させている。このような形状のチャンバ23であっても、チャンバ23の容積を大きくし、ベントホールの長さを短くすることができる。
【0039】
また、ダイアフラム24の形状は、
図3Bのような略矩形状のものに限らない。たとえば、
図7Aのように八角形のダイアフラム24を用いてもよく、
図7Bのように円形のダイアフラム24を用いてもよい。また、脚片26の数や配置もダイアフラム24の形状に応じて適宜変更することができる。
【0040】
(実施形態2)
図8Aは、本発明の実施形態2による音響センサ41を示す平面図である。
図8Bは、
図8Aの音響センサ41からバックプレート28と固定電極板29を除いてダイアフラム24を露出させた状態の平面図である。
図9は、ダイアフラム24が変位した状態を示す断面図である。
【0041】
本発明の実施形態2による音響センサ41でも脚片26はダイアフラム24の対角線方向に延びているが、脚片26は、ダイアフラム24の中心側に位置する端部がダイアフラム24とつながっており、ダイアフラム24の外周側に位置する端部がアンカー27によって支持されている。したがって、実施形態2では、脚片26は、ダイアフラム24から外側へ向けて延びている。その他の点については、実施形態1の場合と同様であるので、同一構成部分には同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0042】
実施形態2のように脚片26がダイアフラム24から外側へ延びている場合も、
図9に示すように、ダイアフラム24は細い脚片26を撓ませることによって上下方向に変位もしくは振動することができる。よって、脚片26によってダイアフラム24の変位量を増大させることができ、音響センサ41の感度を高くできる。
【0043】
実施形態2の音響センサ41でも、実施形態1で述べた音響センサ21の各効果と同様な効果を得ることができる。
【0044】
なお、
図8Bでは、略八角形状のチャンバ23を示しているが、
図3Bに示されているような十文字状のチャンバ23を設けてもよい。また、
図8Bでは、上面から見て脚片26又はアンカー27と重ならないようにチャンバ23を形成しているが、チャンバ23が脚片26やアンカー27と重なるようにしてチャンバ23の縁をアンカー27の近くまで広げても差し支えない。また、実施形態2の場合も、略八角形のダイアフラム24(
図7A参照)や円形のダイアフラム24(
図7B参照)を用いてもよい。
【0045】
(実施形態1、2の音響センサの製造工程)
つぎに、実施形態1及び2の音響センサ21、41の製造工程を
図10、
図11により説明する。まず、
図10Aに示すように、シリコン基板22の上面に酸化シリコン(SiO
2)からなる第1犠牲層51を成膜し、その上にポリシリコンからなる第2犠牲層52を積層し、再び第2犠牲層52の上に第1犠牲層51を積層し、第1犠牲層51で第2犠牲層52を覆う。ついで、第1犠牲層51の上面にポリシリコン膜を成膜し、ポリシリコン膜をパターニングしてダイアフラム24及び脚片26を形成し、ダイアフラム24と脚片26の間のスリット25を形成する。
【0046】
この後、
図10Bに示すように、さらにダイアフラム24及び脚片26の上に第1犠牲層51を積層し、ダイアフラム24及び脚片26を第1犠牲層51で覆う。ついで、第1犠牲層の外周面を斜めにエッチングして傾斜面とする。第1犠牲層51の上面にGAP酸化膜を形成し、GAP酸化膜をパターニングして第1犠牲層51の上面に固定電極板29を形成する。このとき、固定電極板29にはアコースティックホール31も開口しておく。
【0047】
図10Cに示すように、シリコン基板22の上面の積層物の全体をSiNで覆ってバックプレート28を設けた後、
図10Dに示すように、バックプレート28にアコースティックホール31を開口し、シリコン基板22の裏面を研磨し、基板厚みを薄くする。
【0048】
ついで、
図11Aに示すように、シリコン基板22を裏面側からドライエッチング(DRIE)し、シリコン基板22にチャンバ23を開口する。この後、シリコン基板22の下面とチャンバ23の壁面を第1犠牲層51で覆って保護する。
【0049】
こうしてシリコン基板22を第1犠牲層51で保護した後、
図11Bに示すように、チャンバ23内にエッチング液を導いて第2犠牲層52をエッチングする。この際、第2犠牲層52を一部残してエッチングを終了する。
【0050】
この後、第1犠牲層51をエッチングにより除去し、バックプレート28内の空間を形成する。
【0051】
(実施形態3)
図12は、本発明の実施形態3による音響センサ61の構造を示す断面図である。この実施形態においては、ダイアフラム24及び脚片26はシリコン基板22の上面に固定されておらず、シリコン基板22の上面に乗っているだけである。ダイアフラム24及び脚片26は、
図14Aに示すように、スリット25によって分離されている点は、実施形態1と同様である。しかし、シリコン基板22の上面にアンカーはなく、脚片26はシリコン基板22の上面に固定されていない。よって、ダイアフラム24及び脚片26は、シリコン基板22の上面から離れて浮くことが可能になっている。また、ダイアフラム24又は脚片26の下面には突起62が突設されており、ダイアフラム24や脚片26がシリコン基板22の上面に密着して離れなくなるのを防止している。バックプレート28の下面には、
図14Aに示すように、脚片26の先端部上面に対応して複数個のアンカー27が突出している。
【0052】
音響センサ61は、非動作時には、
図12に示すように、ダイアフラム24及び脚片26はシリコン基板22の上面に乗っている。しかし、音響センサ61が動作状態になると、
図13に示すように固定電極板29とダイアフラム24の間に働く静電吸引力によってダイアフラム24及び脚片26が上方へ引き上げられる。上方へ引き上げられた脚片26は、
図13に示すようにアンカー27に当たり、固定電極板29とダイアフラム24の間の静電吸引力によってアンカー27が脚片26に押し付けられる。よって、脚片26は、バックプレート28の下面においてアンカー27によって支持され、ダイアフラム24が固定電極板29と対向する。そして、ダイアフラム24は、バックプレート28の下面に吊り下げられた状態で音響振動によって変位又は振動する。
【0053】
ダイアフラム24からは引出配線63が引き出されており、当該引出配線63はシリコン基板22又はバックプレート28側へ導かれているので、ダイアフラム24が上昇するときに回転しにくく、脚片26がアンカー27からずれるおそれは少ない。しかし、より確実に脚片26をアンカー27に接触させるためには、ダイアフラム24に適宜回り止め手段を講じてもよい。
【0054】
また、
図14Aの脚片26は、ダイアフラム24の外側から内側へ延びているが、実施形態3に用いる脚片26は、
図14Bのようにダイアフラム24の内側から外側へ延びたものであってもよい。
【0055】
なお、上記実施形態3では、非動作時にはダイアフラム24及び脚片26はシリコン基板22の上面に乗っていたが、脚片26をバックプレート28の下面に設けたアンカー27に固定し、ダイアフラム24及び脚片26が常時バックプレート28の下面に吊り下げられた構造としてもよい。
【0056】
(実施形態4)
図15は、本発明の実施形態4による音響センサ71を示す断面図である。この音響センサ71にあっては、固定電極板29がドーム状に形成されており、必要な剛性を得られる程度の厚みを有している。固定電極板29は、絶縁層72を挟んでシリコン基板22の上面に設けられており、シリコン基板22の上方に配設されたダイアフラム24を覆っている。この実施形態のように、圧力センサは、バックプレートを用いないものであってもよい。
【0057】
(実施形態5)
図16は、本発明の実施形態4による音響センサ81を示す断面図である。この音響センサ81では、シリコン基板22の上面に絶縁層82を介して平板状の固定電極板29を設けている。さらに、固定電極板29の上方には、固定電極板29と対向させるようにしてダイアフラム24が配設されている。ダイアフラム24につながった脚片26は、固定電極板29の上面に設けられたアンカー27によって支持されている。また、チャンバ23の上方において、固定電極板29には複数のアコースティックホール31が開口されている。この実施形態のように、圧力センサは、ダイアフラムの下方で固定電極板がダイアフラムに対向していてもよい。
【0058】
(マイクロフォンへの応用)
図17は、本発明に係る音響センサ、たとえば実施形態1の音響センサ21を内蔵したボトムポート型のマイクロフォン91の概略断面図である。このマイクロフォン91は、回路基板92とカバー93からなるパッケージ内に音響センサ21と回路部である信号処理回路95(ASIC)とを内蔵したものである。音響センサ21と信号処理回路95は、回路基板92の上面に実装されている。回路基板92には、音響センサ21内に音響振動を導き入れるための音導入孔94が開口されている。音響センサ21は、チャンバ23の下面開口を音導入孔94に合わせ、音導入孔94を覆うようにして回路基板92の上面に実装されている。したがって、音響センサ21のチャンバ23がフロントチャンバとなり、パッケージ内の空間がバックチャンバとなる。
【0059】
音響センサ21と信号処理回路95は、ボンディングワイヤ96によって接続されている。さらに、信号処理回路95は、ボンディングワイヤ97によって回路基板92に接続されている。なお、信号処理回路95は、音響センサ21へ電源を供給する機能や、音響センサ21の容量変化信号を外部へ出力する機能を有する。
【0060】
回路基板92の上面には、音響センサ21及び信号処理回路95を覆うようにしてカバー93が取り付けられる。パッケージは電磁シールドの機能を有しており、外部からの電気的な外乱や機械的な衝撃から音響センサ21や信号処理回路95を保護している。
【0061】
こうして、音導入孔94からチャンバ23内に入った音響振動は、音響センサ21によって検出され、信号処理回路95によって増幅及び信号処理された後に出力される。このマイクロフォン91では、パッケージ内の空間をバックチャンバとしているので、バックチャンバの容積を大きくでき、マイクロフォン91を高感度化することができる。
【0062】
なお、このマイクロフォン91においては、パッケージ内に音響振動を導き入れるための音導入孔94をカバー93の上面に開口していてもよい。この場合には、音響センサ21のチャンバ23がバックチャンバとなり、パッケージ内の空間がフロントチャンバとなる。