(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記弁開閉時期制御装置が、前記従動側回転体を前記駆動側回転体に内包することにより、前記駆動側回転体の内側表面との間に進角室及び遅角室で成る流体圧室を形成しており、前記位相変更部が、前記進角室に流体を供給することで前記相対回転位相を進角方向に変化させ、前記遅角室に流体を供給することで前記相対回転位相を遅角方向に変化させるように油圧作動型に構成され、
前記位相変更アシスト手段が、前記流体を加圧状態で貯留するアキュムレータで構成される、又は、電力により前記流体を送り出す電動流体圧ポンプで構成されている請求項1記載の内燃機関。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1〜3に示されるように内燃機関の始動時には、クランキングの開始以前に弁開閉時期制御装置に流体を供給することにより、弁の開閉時期の変更や、ロック機構のロックを解除することは内燃機関の始動性を高める観点から望まれている。
【0009】
ここで、弁開閉時期制御装置の制御により弁の開閉時期を変更する作動を考えると、特許文献1や特許文献2に記載されるように駆動側回転体がクランクシャフトとタイミンチェーン等で連係する構成では、弁の開閉時期を変更するために流体を供給した場合に駆動側回転体は固定された状態で、従動側回転体が回転する形態となる。
【0010】
しかしながら、従動側回転体はカムシャフトに直結しており、カムシャフトは弁を開閉する機構と連係しているため、従動側回転体を回転させる際には、弁をリフト方向に付勢するスプリングの付勢力に抗して回転を可能にするための強力な駆動力を必要とする。
【0011】
このような理由から特許文献1や特許文献2に記載されるように電動モータで駆動される流体圧ポンプを備える場合には、強力な電動モータを必要とすることになり、また、特許文献3に記載されるようにアキュムレータを備える構成では、アキュムレータに貯留される流体の圧力を上昇させるためにアキュムレータが大型化することが考えられる。このような構成では弁開閉時期制御装置を制御する機器の大型化を招くだけではなく、エネルギーを無駄に消費する観点で改善の余地がある。
【0012】
本発明の目的は、内燃機関のクランキングを開始する以前に弁の開閉時期を調節するための構成の大型化を抑制しつつ、この調節を行う際のエネルギーの無駄を抑制する内燃機関を合理的に構成する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の特徴は、リフト量調節部の駆動力によ
り内燃機関の弁開閉用のカムシャフトの回転時における燃焼室の弁のリフト量を調節するリフト量調節装置を備え、当該内燃機関のクランクシャフトと同期回転する駆動側回転体と、カムシャフトと一体回転する従動側回転体とを同軸芯上に配置し、前記駆動側回転体と前記従動側回転体との相対回転位相を所定のロック位相に固定するロック機構を有し、位相変更部の駆動力により前記駆動側回転体と前記従動側回転体との相対回転位相を変更して前記弁の開閉時期を調節する弁開閉時期制御装置を備え、当該内燃機関の停止時に前記リフト量調節部によるリフト量の調節を可能にするリフト量調節アシスト手段と、当該内燃機関の停止時に前記位相変更部による相対回転位相の変更を可能にする位相変更アシスト手段とを備え、当該内燃機関を始動させる始動情報を取得した場合に、前記カムシャフトの回転時に前記弁からカムシャフトに作用する押圧力を減ずる方向に前記リフト量調節部を制御するリフト量調節制御を行い、次に、前記相対回転位相を当該内燃機関の始動に適した方向に前記位相変更部を制御する位相変更制御を行い、次に、前記リフト量を元の値に戻すように前記リフト量調節部を制御するリフト量復元制御を行い、この後に、当該内燃機関のスタータモータを駆動する始動制御を行う機関制御部を備え
、
前記ロック機構が、冷熱状態にある前記内燃機関の始動に適した相対回転位相に固定する中間ロック位相と、温熱状態にある前記内燃機関の始動に適した相対回転位相に固定する遅角側ロック位相との少なくとも2つのロック位相に固定可能に構成され、当該内燃機関の温度を検知する温度センサと、前記弁開閉時期制御装置の相対回転位相を検知する回転位相センサとを備え、前記機関制御部は、前記温度センサと前記回転位相センサとの検知結果を取得し、前記内燃機関が温熱状態にあり、前記相対回転位相が前記中間ロック位相にあることを判定した場合には、前記位相変更制御として前記相対回転位相を遅角側ロック位相に設定し、前記内燃機関が冷熱状態にあり、前記相対回転位相が前記遅角側ロック位相にあることを判定した場合には、前記位相変更制御として前記相対回転位相を中間ロック位相に設定する点にある。
【0014】
この構成によると、内燃機関を始動させる始動情報を機関制御部が取得した場合には、この機関制御部がリフト量調節部を制御することにより、リフト量調節アシスト手段がカムシャフトの回転時に弁からカムシャフトに作用する押圧力を減ずるようにリフト量調節制御を実現する。次に、機関制御部が位相変更部を制御することにより、位相変更アシスト手段が弁開閉時期制御装置の相対回転位相を内燃機関の始動に適した位相に設定する位相変更制御を実現する。次に、機関制御部がリフト量調節部を制御することにより、位相変更アシスト手段が弁のリフト量を元の値に戻すリフト量復元制御を実現する。この後に、機関制御部がスタータモータを駆動することでクランキングを開始して内燃機関の始動が可能となる。
つまり、この制御では弁開閉時期制御装置の相対回転位相を変更する時点では、弁のリフト量を小さくして従動側回転体を回転させる駆動力を低減できるため、大型のアクチュエータ等を用いずとも小型のアクチュエータを用い、小さいエネルギーで弁開閉時期制御装置の開演位相を変更することが可能なる。この後に、弁のリフト量を元の値に復元することにより弁を適正に開閉させる形態でクランキングを行い内燃機関の始動を実現する。
従って、内燃機関のクランキングを開始する以前に弁の開閉時期を調節するための構成の大型化を抑制しつつ、この調節を行う際のエネルギーの無駄を抑制する内燃機関が構成された。
また、機関制御部が始動情報を取得した場合に、冷熱状態、あるいは、温熱状態に適した弁の開閉時期でクランキングを行い内燃機関の始動を行える。
【0017】
本発明は、前記弁開閉時期制御装置が、前記従動側回転体を前記駆動側回転体に内包することにより、前記駆動側回転体の内側表面との間に進角室及び遅角室で成る流体圧室を形成しており、前記位相変更部が、前記進角室に流体を供給することで前記相対回転位相を進角方向に変化させ、前記遅角室に流体を供給することで前記相対回転位相を遅角方向に変化させるように油圧作動型に構成され、前記位相変更アシスト手段が、前記流体を加圧状態で貯留するアキュムレータで構成される、又は、電力により前記流体を送り出す電動流体圧ポンプで構成されても良い。
【0018】
これによると、位相変更制御が行われる際には弁のリフト量が低減されているので、位相変更アシスト手段がアキュムレータで構成されたものでは、大型のアキュムレータを用いる必要がなく、位相変更アシスト手段が電動流体圧ポンプで構成されたものでは、大型の電動モータを用いる必要がない。
【0019】
本発明は、遅角側ロック位相が、最遅角又は最遅角近傍の位相に設定されていてもよい。
【0020】
これによると、冷熱状態の内燃機関を始動する場合には、ロック機構が、相対回転位相を最遅角又は最遅角近傍の位相にロックすることにより良好な始動が実現する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔基本構成〕
図1及び
図2に示すように、吸気弁Vaの開閉時期(タイミング)を制御するように吸気カムシャフト7aと同軸芯上に配置され、クランクシャフト1と同期回転する弁開閉時期制御装置Aを備えて内燃機関としてのエンジンEが構成されている。
【0023】
エンジンEは、シリンダブロック2の上部にシリンダヘッド3を連結し、シリンダブロック2に形成された複数のシリンダボアにピストン4を摺動自在に収容し、ピストン4をコネクティングロッド5によりクランクシャフト1に連結した4サイクル式に構成されている。
【0024】
シリンダヘッド3には、燃焼室の吸気を行う吸気弁Vaと、燃焼室の燃焼ガスの排気を行う排気弁Vbとが備えられると共に、吸気弁Vaを制御する吸気カムシャフト7aと、排気弁Vbを制御する排気カムシャフト7bが備えられている。また、クランクシャフト1の出力スプロケット1Sと、弁開閉時期制御装置Aの外部ロータ20(駆動側回転体の一例)の駆動スプロケット22Sと、排気カムシャフト7bのシャフトスプロケット7Sとに亘ってタイミングチェーン6が巻回されている。
【0025】
シリンダヘッド3には、吸気弁Vaを介して燃焼室に空気を供給するインテークマニホールド8と、排気弁Vbを介して燃焼室からの排気ガスを送り出すエキゾーストマニホールド9とが連結されている。シリンダヘッド3には、点火プラグ10と、燃料噴射ノズル11とが備えられている。エンジンEの外部にはクランクシャフト1に回転力を作用させるスタータモータ12が備えられている。
【0026】
このエンジンEは、複数のピストン4が吸気行程、圧縮行程、燃焼行程、排気行程を順次行うように4サイクル式エンジンに構成されている。そして、これらの行程に連係してクランクシャフト1の回転力がタイミングチェーン6から吸気カムシャフト7aと排気カムシャフト7bとに伝えられ、吸気弁Vaと排気弁Vbとがクランクシャフト1の回転に同期して開閉する。
【0027】
また、このエンジンEでは、吸気カムシャフト7aの回転時における、吸気弁Vaのリフト量を調節するリフト量調節装置Dを備えており、このリフト量調節装置Dは、エンジンEの稼動時に、エンジンEの回転速度や負荷等に基づいて制御される。
【0028】
なお、このエンジンEは、排気弁Vbの開閉時期を制御するため排気カムシャフト7bに弁開閉時期制御装置Aを併せて備えても良い。また、外部ロータ20に駆動スプロケット22Sを形成することに代えて、外部ロータ20にタイミングプーリを形成し、これにタイミングベルトによりクランクシャフト1の回転力を伝える構成を用いて良い。これと同様に、外部ロータ20の外面にギヤを形成し、これにギヤトレインによりクランクシャフト1の回転力を伝える構成を用いても良い。
【0029】
エンジンEは乗用車等の車両に備えられるものであり、エンジンEと弁開閉時期制御装置Aとは、ECUとして構成される機関制御部としてのエンジン制御ユニットBによって制御される。エンジンEにはクランクシャフト1の回転姿勢を検知するクランクセンサ13を備えており、弁開閉時期制御装置Aの近傍位置には外部ロータ20と内部ロータ30との相対回転位相とを検知する回転位相センサ14を備え、エンジンEには温度を検知する温度センサ15を備えている。
【0030】
〔弁開閉時期制御装置〕
図1〜
図5に示すように、弁開閉時期制御装置Aは、クランクシャフト1と同期回転する駆動側回転体としての外部ロータ20と、吸気カムシャフト7aに対して連結ボルト33により連結する従動側回転体としての内部ロータ30とを備えている。これらは吸気カムシャフト7aの回転軸芯Xと同軸芯上に配置され、回転軸芯Xを中心にして相対回転自在に支持されている。この弁開閉時期制御装置Aは、外部ロータ20と内部ロータ30との相対回転位相(以下、相対回転位相と称する)の変更により吸気弁Vaの開閉時期(開閉タイミング)を制御するように構成されている。
【0031】
外部ロータ20は、円筒状となるロータ本体21を有すると共に、回転軸芯Xに沿う方向でロータ本体21の一方の端部に当接して配置されるリヤブロック22と、回転軸芯Xに沿う方向でロータ本体21の他方の端部に当接して配置されるフロントプレート23とを複数の締結ボルト24により締結した構成を有している。リヤブロック22の外周には、クランクシャフト1から回転力が伝達される駆動スプロケット22Sが形成され、ロータ本体21には円筒状の内壁面と、回転軸芯Xに近接する方向(径方向内側)に突出する複数の突出部21Tとが一体的に形成されている。
【0032】
1つの突出部21Tに対して回転軸芯Xから放射状となる姿勢で一対のガイド溝が形成され、これらのガイド溝にプレート状のロック部材25を出退自在に挿入している。ロータ本体21の内部にはロック部材25を回転軸芯Xに接近する方向に付勢する付勢手段としてのロックスプリング26を備えている。この構成から、一方のロック部材25と、これを突出方向に付勢するロックスプリング26とで第1ロック機構L1が構成され、他方のロック部材25と、これを突出方向に付勢するロックスプリング26とで第2ロック機構L2が構成されている。なお、第1ロック機構L1と第2ロック機構L2との上位概念をロック機構Lと称しており、ロック部材25の形状はプレート状に限るものではなく、例えば、ロッド状であっても良い。
【0033】
内部ロータ30は、回転軸芯Xと同軸芯上でシリンダ内面状となる内周面30Sが形成されると共に、回転軸芯Xを中心とする外周面が形成され、この外周面には外方に突出する複数のベーン31が嵌め込まれている。この内部ロータ30のうち回転軸芯Xに沿う方向での一方の端部には鍔状部32が形成され、この鍔状部32の内周位置の孔部に挿通する連結ボルト33により内部ロータ30が吸気カムシャフト7aに連結されている。
【0034】
また、内部ロータ30を外部ロータ20に嵌め込む(内包する)ことでロータ本体21の内側表面(円筒状の内壁面及び複数の突出部21T)と内部ロータ30の外周面とで取り囲まれる領域に流体圧室Cが形成される。更に、この流体圧室Cをベーン31が仕切る形態となり進角室Caと遅角室Cbとが形成されている。このように進角室Caと遅角室Cbとベーン31とを有し、油圧により相対回転位相を変更する油圧作動型に位相変更部が構成されている。内部ロータ30には進角室Caに連通する進角流路34と、遅角室Cbに連通する遅角流路35と、ロック解除流路36とが形成されている。
【0035】
この内部ロータ30の外周には前述した第1ロック機構L1のロック部材25と、第2ロック機構L2のロック部材25とが係合・離脱の可能な中間ロック凹部37が溝状に形成されると共に、第2ロック機構L2のロック部材25の係合・離脱が可能な最遅角ロック凹部38とが形成されている。この中間ロック凹部37と最遅角ロック凹部38とは、内部ロータ30の外周面に対して回転軸芯Xの方向に窪む凹部として形成されている。中間ロック凹部37にはロック解除流路36が連通し、最遅角ロック凹部38には進角流路34が連通している。
【0036】
中間ロック凹部37に第1ロック機構L1のロック部材25と、第2ロック機構L2のロック部材25とが係合した状態では、
図3に示すように、この中間ロック凹部37の両端部位置に夫々のロック部材25が当接することで相対回転位相を中間ロック位相に固定する。この中間ロック位相においてロック解除流路36に作動油(流体の具体例)が供給されることによりロックスプリング26の付勢力に抗して2つのロック部材25の係合が解除され
図4に示すようにロック解除状態に達する。尚、中間ロック位相とは、相対回転位相の変更が可能な領域の中央を特定するものではなく、最進角位相と最遅角位相とを除いた中間領域に含まれる何れの位相であっても良い。
【0037】
第2ロック機構L2のロック部材25が最遅角ロック凹部38に係合した状態では
図5に示すように、相対回転位相を最遅角位相(最遅角ロック位相)に固定する。この最遅角ロック位相(遅角側ロック位相の一例)において進角流路34に作動油が供給されることによりロックスプリング26の付勢力に抗して第1ロック部材L1のロック部材25の係合が解除されロック解除状態に達すると共に、相対回転位相が進角方向Saに変位する。
【0038】
また、外部ロータ20のリヤブロック22と内部ロータ30とに亘って、トーションスプリング27が備えられる。このトーションスプリング27は、例えば、相対回転位相が最遅角にある状態から、少なくとも中間ロック位相に達するまで付勢力を作用させる。
【0039】
この弁開閉時期制御装置Aでは、タイミングチェーン6から伝えられる駆動力により外部ロータ20が駆動回転方向Sの方向に回転する。また、外部ロータ20に対して内部ロータ30が駆動回転方向Sと同方向へ回転する方向を進角方向Saと称し、この逆方向への回転方向を遅角方向Sbと称する。この弁開閉時期制御装置Aでは、相対回転位相が進角方向Saに変位する際に、変位量の増大に伴い吸気圧縮比を高め、相対回転位相が遅角方向Sbに変位する際に変位量の増大に伴い吸気圧縮比を低減するようにクランクシャフト1と吸気カムシャフト7aとの関係が設定されている。
【0040】
また、進角室Caに作動油(流体の具体例)が供給されることで相対回転位相を進角方向Saに変位させ、遅角室Cbに作動油が供給されることで相対回転位相を遅角方向Sbに変位させる。ベーン31が進角方向Saの移動端(回転軸芯Xを中心にした回動限界)に達した状態での相対回転位相を最進角位相と称し、ベーン31が遅角側の移動端(回転軸芯Xを中心にした回動限界)に達した状態での相対回転位相を最遅角位相と称している。特に、この実施形態では最遅角位相において最遅角ロック位相(遅角側ロック位相の一例)に達し、この位相が固定されるように構成されている。
【0041】
尚、最遅角位相は、遅角側位相の概念に含まれるものであり、この遅角側位相には最遅角近傍の位相も含まれる。また、最遅角位相は遅角側の移動端に限るものではなく、この移動端の近傍を含む概念である。従って、遅角側ロック位相には、前述した最遅角ロック位相を含み、これより中間位相に近い最遅角近傍の位相を含んでいる。これと同様に、最進角とは進角側の移動端に限るものではなく、この移動端の近傍を含む概念である。
【0042】
特に、本発明の弁開閉時期制御装置Aは、ロック機構Lが相対回転位相を遅角側ロック位相に固定する際には、
図5に示す最遅角ロック位相の位相だけでなく、この最遅角ロック位相より内部ロータ30が進角方向Saに変位した最遅角近傍ロック位相でも固定するように構成しても良い。このように、遅角側ロック位相には所定の位相領域として捉えることが可能であり、例えば、内部ロータ30に複数の凹部を形成することにより、この遅角側領域では2つ以上のロック位相で固定するように構成することも可能である。
【0043】
また、本発明の弁開閉時期制御装置Aは、ロック機構Lが相対回転位相を中間ロック位相に固定する際には、
図3に示す中間ロック位相だけではなく、同図に示す回転位相より内部ロータ30が進角方向Saに変位する、あるいは、遅角方向Sbに変位する位相に固定するように構成しても良い。このように、中間ロック位相には所定の位相領域として捉えることが可能であり、例えば、内部ロータ30に複数の凹部を形成することにより、この中間位相では2つ以上のロック位相で固定するように構成することも可能である。
【0044】
〔弁ユニット〕
弁ユニットVUは、ユニットケースに対して位相制御弁41とロック制御弁42とを収容した構造を有しており、このユニットケースに一体的に形成した流路形成軸部43を内部ロータ30の内周面30Sに挿入する形態で備えられている。この流路形成軸部43の外周には、位相制御弁41のポートと連通する周状の溝状部と、ロック制御弁42のポートと連通する周状の溝状部とが形成され、これらの溝状部を分離するように流路形成軸部43の外周と、内部ロータ30の内周面30Sとの間には複数のリング状のシール44が備えられている。
【0045】
エンジンEには、オイルパンのオイルを作動油として供給するようにエンジンEで駆動される第1油圧ポンプP1と、電動型のポンプモータMで駆動される第2油圧ポンプP2(電動流体圧ポンプの一例)とを備えており、この第1油圧ポンプP1と第2油圧ポンプP2との何れか一方からの作動油を位相制御弁41とロック制御弁42とに供給する流路が形成されている。また、ポンプモータMで駆動される第2油圧ポンプP2と、ポンプモータMに電力を供給する電源とによりエンジンEの停止時においても油圧式に相対回転位相を変更する位相変更部による相対回転位相の変更を可能にする位相変更アシスト手段が構成されている。
【0046】
エンジン制御ユニットBは、電磁式の位相制御弁41と電磁式のロック制御弁42とを操作することで吸気タイミングの制御を実現する(弁開閉時期制御装置の作動形態は後述する)。位相制御弁41とロック制御弁42とは単一の弁ユニットVUに収容され、この弁ユニットVUの一部が弁開閉時期制御装置Aに挿入される形態で備えられている。
【0047】
〔リフト量調節装置〕
図1、
図6、
図7に示すように、吸気弁Vaと排気弁Vbとは、バルブステム50の上端にラッシュアジャスタ51を備え、バルブスプリング52により閉じ方向に付勢されている。また、ラッシュアジャスタ51は、作動油が供給されることにより上端部が上方に変位し、カムシャフト(吸気カムシャフト7a、排気カムシャフト7b)のカム部が当接することにより内部の作動油を排出しながら上端部が下方に変位することによりクリアランスを調整し、衝撃を吸収するように機能する。このラッシュアジャスタ51の上端には当接ローラ53が回転自在に支持されている。
【0048】
リフト量調節装置Dは、回動軸芯Qを中心に回動自在な支持アーム55と、この支持アーム55に基端部分が揺動軸芯Rを中心に揺動自在に支持されるロッカーアーム56とを備えている。ロッカーアーム56は吸気弁Vaに等しい数のものが備えられ、各々のロッカーアーム56の先端には当接体56Aが形成され、各々このロッカーアーム56の中間には回転自在に中間ローラ56Bが回転自在に支持さている。
【0049】
また、支持アーム55を、回動軸芯Qを中心に回動させるようにリフト量調節部としての電動型の回動駆動部57を備えている。この回動駆動部57は単一であり、この回動駆動部57と、これに電力を供給する電源とにより、エンジンEの停止時においても吸気弁Vaのリフト量を調節することが可能なリフト量調節アシスト手段が構成されている。
【0050】
このリフト量調節装置Dは、吸気カムシャフト7aのカム部が中間ローラ56Bに当接することにより、ロッカーアーム56を、回動軸芯Qを中心に揺動させる。このロッカーアーム56の揺動により、当接体56Aを吸気弁Vaの当接ローラ53に当接させ、バルブスプリング52の付勢力に抗して吸気弁Vaを開放作動させる作動を行う。
【0051】
リフト量を調節する場合には、支持アーム55を、回動軸芯Qを中心に回動させることにより、揺動軸芯Rの位置を変更し、吸気カムシャフト7aのカム部が当接した際のロッカーアーム56の揺動量を変化させる。つまり、揺動軸芯Rの位置を最大位置Maxに設定することにより吸気弁Vaのリフト量を最大値Tmaxにし、揺動軸芯Rの位置を最小位置Minに設定することにより吸気弁Vaのリフト量を最小値Tminにする。
【0052】
この構成から、吸気カムシャフト7aの回転により、この吸気カムシャフト7aのカム部からの押圧力で吸気弁Vaが開放する場合には、バルブスプリング52の付勢力に抗して吸気弁Vaを作動させるため吸気カムシャフト7aには大きい反力が作用する。また、リフト量調節装置Dによってリフト量を小さくする制御が行われた場合には、吸気弁Vaの作動量が小さくなるためバルブスプリング52の圧縮量が小さくなり、吸気カムシャフト7aに作用する反力も小さくなる。
【0053】
リフト量調節装置Dは、
図6、
図7に示す構成に限るものではなく、例えば、特開2007−170180号公報や、特開2009−85136号公報に示される構成のものを用いても良い。この実施形態では、リフト量調節装置Dを吸気弁Vaのリフト量だけを調節するために備えているが、排気弁Vbのリフト量も調節するためのリフト量調節装置Dを併せて備えても良い。
【0054】
〔エンジン制御ユニット〕
エンジン制御ユニットBは、
図1に示すように、マイクロプロセッサやDSP等を用い、ソフトウエアにより制御を実現するものであり、ソフトウエアで構成されるエンジン始動制御部61と、位相制御部62と、リフト量制御部63と、エンジン停止制御部64とを備えている。これらエンジン始動制御部61と、位相制御部62と、リフト量制御部63と、エンジン停止制御部64とはハードウエアで構成されるものでも良く、ソフトウエアとハードウエアとの組み合わせにより構成されるものであっても良い。
【0055】
このエンジン制御ユニットBは、クランクセンサ13と、回転位相センサ14と、温度センサ15と、始動スイッチ16とからの情報を取得する入力系を備えている。また、このエンジン制御ユニットBは、点火プラグ10と、燃料噴射ノズル11と、スタータモータ12と、弁ユニットVUの位相制御弁41及びロック制御弁42と、リフト量調節装置Dの回動駆動部57と、ポンプモータMとに制御情報を出力する出力系を備えている。
【0056】
エンジン始動制御部61は、始動スイッチ16から始動情報を取得することにより、スタータモータ12を作動させ、点火プラグ10と燃料噴射ノズル11とを制御してエンジンEの始動を行うように基本的な制御形態が設定されている。特に、このエンジン始動制御部61は、温度センサ15で検知されるエンジンEの温度と、回転位相センサ14で取得される相対回転位相とに基づき、スタータモータ12によるクランキングに先立って弁開閉時期制御装置Aの相対回転位相をエンジンEの始動に適切な位相に設定する制御を行う(この制御形態については後述する)。
【0057】
位相制御部62は、エンジンEの稼動時にエンジンEの回転速度やエンジン負荷に基づき、回転位相センサ14から相対回転位相をフィードバックする状態で弁ユニットVUを制御して弁開閉時期制御装置Aの相対回転位相を必要とする値に設定する。
【0058】
リフト量制御部63は、位相制御部62と同様にエンジンEの稼動時にエンジンEの回転速度やエンジン負荷に基づき、回動駆動部57を制御することにより、リフト量調節装置Dによる吸気弁Vaのリフト量を調節する。
【0059】
エンジン停止制御部64は、エンジンEの停止時に弁開閉時期制御装置Aの相対回転位相を所定の位相に設定した後に、点火プラグ10と燃料噴射ノズル11とを制御してエンジンEの停止を行う。
【0060】
〔制御形態〕
エンジン停止制御部64では、運転者がブレーキペダルを踏み込み操作した場合にエンジンEを自動的に停止させるアイドルストップ制御と、運転者が始動スイッチ16をOFF操作してエンジンEを停止させるマニュアル停止制御と実行する。アイドルストップ制御では、弁開閉時期制御装置Aの相対回転位相を最遅角位相に変化させ、
図5に示すように、最遅角ロック状態に移行した後にエンジンEを停止させる。また、マニュアル停止制御では、弁開閉時期制御装置Aの相対回転位相を中間位相に変化させ、
図3に示すように、中間ロック状態に移行した後にエンジンEを停止させる。
【0061】
アイドルストップ制御によりエンジンEが停止した状況で始動スイッチ16がOFF操作された場合には、相対回転位相は最遅角ロック状態に維持されることになる。なお、ハイブリッドシステムを搭載している車両のようにエンジンEの駆動力で発電を行い、この発電によりバッテリーの充電が完了した時点でエンジンEを停止させる制御を行うものでも、エンジンEの停止時に弁開閉時期制御装置Aは最遅角ロック位相(遅角側ロック位相の一例)に固定される。この〔制御形態〕では、弁開閉時期制御装置Aが最遅角ロック位相に固定された状態でエンジンEが停止した後に、冷熱状態のエンジンEを始動する場合には、後述するように相対回転位相を中間ロック位相に移行することで良好にエンジンEを始動させるものである。
【0062】
また、弁開閉時期制御装置Aが中間ロック位相に固定された状態でエンジンEが停止し、この停止の直後にエンジンEを始動させる場合のように、温熱状態のエンジンEを始動させる場合には、弁開閉時期制御装置Aが中間ロック位相に固定されたままエンジンEを始動させても良いが、この〔制御形態〕では、弁開閉時期制御装置Aの相対回転位相を最遅角ロック位相に変更して始動させる例を以下に説明している。
【0063】
エンジン始動制御部61では、エンジンEが停止した状態で始動スイッチ16がON操作された場合(始動情報を取得した場合)には
図8に示すフローチャートに従う制御が行われる。つまり、始動スイッチ16がON操作されたことを判定すると、温度センサ15でエンジンEの温度を取得し、この温度が設定値未満である冷温状態(「冷」)にある場合には、回転位相センサ14の検知信号から弁開閉時期制御装置Aの相対回転位相を取得し、中間ロック位相であることを判定した場合には、スタータモータ12を制御してクランキングを開始し、点火プラグ10と燃料噴射ノズル11とを制御することでエンジンEの燃焼室の混合気の点火を行いエンジンEを始動する(#01、#02、#010、#011ステップ)。
【0064】
また、エンジンEの温度が設定値未満であり、弁開閉時期制御装置Aの相対回転位相が中間ロック位相にないことを判定した場合には(通常は最遅角ロック位相)、第2油圧ポンプP2のポンプモータMを駆動し、リフト量調節装置Dの回動駆動部57を制御して支持アーム55を、回動軸芯Qを中心に回動させ、揺動軸芯Rの位置を最小位置Minに設定する。これにより吸気弁Vaのリフト量が最小値まで低減する(#03ステップ・リフト量調節制御の具体例)。つまり、#03ステップでは、吸気弁Vaから吸気カムシャフト7aの回転に作用する押圧力を減ずる方向にリフト量調節装置Dを制御している。
【0065】
次に、回転位相センサ14の検知情報をフィードバックする状態で位相制御弁41の制御により、第2油圧ポンプP2から供給される作動油で相対回転位相を中間位相の方向(進角方向Saの方向)に変化させ、中間ロック位相に固定する(#04ステップ・位相変更制御の具体例)。尚、最遅角ロック位相に固定されている状態から相対回転位相を中間位相の方向に変更する場合にはロックが解除された後に相対回転位相が変化する。
【0066】
次に、リフト量調節装置Dの回動駆動部57を制御して吸気弁Vaのリフト量を元のリフト量まで復元する(#05ステップ・リフト量復元制御の具体例)。この後に、#010、#011ステップの制御に移行してエンジンEの始動を実行する(始動制御の具体例)。
【0067】
これとは逆に、始動スイッチ16のON操作時に、温度センサ15で取得されたエンジンEの温度が設定値以上である温熱状態(「温」)にある場合には、回転位相センサ14の検知信号から弁開閉時期制御装置Aの相対回転位相を取得し、最遅角位相であることを判定した場合には、スタータモータ12を制御してクランキングを開始し、点火プラグ10と燃料噴射ノズル11とを制御することでエンジンEの燃焼室の混合気の点火を行いエンジンEを始動する(#01、#06、#010、#011ステップ)。
【0068】
また、エンジンEの温度が設定値以上であり、弁開閉時期制御装置Aの相対回転位相が最遅角位相にないことを判定した場合には(通常は中間ロック位相)、第2油圧ポンプP2のポンプモータMを駆動し、リフト量調節装置Dの回動駆動部57を制御して支持アーム55を、回動軸芯Qを中心に回動させ、揺動軸芯Rの位置を最小位置Minに設定する。これにより吸気弁Vaのリフト量が最小値まで低減する(#07ステップ・リフト量調節制御の具体例)。
【0069】
次に、回転位相センサ14の検知情報をフィードバックする状態で位相制御弁41の制御により、第2油圧ポンプP2から供給される作動油で相対回転位相を最遅角位相の方向(遅角方向Sbの方向)に変化させ、最遅角ロック位相に固定する(#08ステップ・位相変更制御の具体例)。尚、中間ロック位相に固定されている状態から相対回転位相を遅角位相の方向に変更する場合には、ロックが解除された後に相対回転位相が変化する。
【0070】
次に、リフト量調節装置Dの回動駆動部57を制御して吸気弁Vaのリフト量を元のリフト量まで復元する(#09ステップ・リフト量復元制御の具体例)。この後に、#010、#011ステップの制御に移行してエンジンEの始動を実行する(始動制御の具体例)。
【0071】
この制御によりエンジンEの始動が確認された場合には、第2油圧ポンプP2のポンプモータMを停止することで、第1油圧ポンプP1からの作動油だけを弁ユニットVUに供給する状態に移行する。また、エンジンEの稼動状況に応じて弁開閉時期制御装置Aの相対回転位相を調整する。
【0072】
上記構成では、クランキングを行う以前にエンジン制御ユニットBが、温度センサ15で取得した温度に対応したエンジンEの始動に適した相対回転位相と比較する。また、このエンジン制御ユニットBは、回転位相センサ14から取得した弁開閉時期制御装置Aの相対回転位相から適否を判定し、適正である場合には、スタータモータ12を駆動してエンジンEを始動するが、不適正である場合には、クランキングを行う以前に弁開閉時期制御装置Aの相対回転位相を適正となる位相に変更する。
【0073】
また、相対回転位相を変更するために、進角室Ca又は遅角室Cbに対して単純に作動油を供給する構成では、吸気カムシャフト7aのカム部が吸気弁Vaから大きい反力を受けるため、位相変更部に供給する作動油に高い圧力を必要とし、作動油の油量も増大する。これと同様の理由から弁開閉時期制御装置Aの位相変更部に電動モータを備えた場合にも、相対回転位相を変更するために大型の電動モータを必要とするだけでなく大電力を必要とする。
【0074】
この不都合を解消するため本発明では、リフト量調節装置Dを利用して吸気弁Vaのリフト量を低減して(リフト量調節制御)、作動油の圧力を高めることや油量を増大しなくとも、相対回転位相の変更を軽負荷で行うことを可能にしている(位相変更制御)。つまり、この設定状態で第1油圧ポンプP1や、これを駆動するポンプモータMの大容量化を抑制し、必要とする作動油の油量も低減する。なお、位相変更部に電動モータを備えて構成した場合には、電動モータの小型化が可能となり、相対回転位相を変更するための電力も少なくて済む。
【0075】
このように相対回転位相を変更した後には、リフト量調節装置Dの支持アーム55を逆方向に回転させることにより、吸気弁Vaのリフト量を適正な値に復元し(リフト量復元制御)、この状態でクランキングを行い点火を行うことにより適正なエンジンEの始動が実現する(始動制御)のである。
【0076】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い。
【0077】
(a)実施形態では、ポンプモータMで駆動される第2油圧ポンプP2を備えることにより位相変更アシスト手段を構成していたが、特許文献3に示されるように、エンジンEで駆動される油圧ポンプの作動油を蓄圧する状態で貯留しておき、エンジンEの停止時に位相変更部や、リフト量調節部に作動油を加圧状態で供給することが可能なアキュムレータを備えても良い。このように位相変更アシスト手段としてアキュムレータを備えることにより、ポンプモータMを備えずに済み、構成の簡素化が可能となる。
【0078】
(b)リフト量調節装置Dを、作動油の供給により作動してリフト量を調節するリフト量調節部を備えて構成する。このように構成したものでは第2油圧ポンプP2から供給される作動油によりリフト量調節装置Dが作動することになり、この第2油圧ポンプP2と、ポンプモータMに電力を供給する電源とによりエンジンEの停止時においても油圧式にリフト量を調節する位相変更アシスト手段として機能する。
【0079】
(c)弁開閉時期制御装置Aの位相変更部を電動モータの駆動力により位相を変更するように構成する。このように構成したものでは、位相変更部に電力を供給する電源がエンジンEの停止時においても吸気弁Vaのリフト量を調節することが可能なリフト量調節アシスト手段として機能する。