(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態に係る電磁弁につき、図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態に係る電磁弁をバルブボディと共に示す断面図である。
図2は、本発明の実施の形態に係る電磁弁の弁部を示す断面図である。この電磁弁1は、例えば車両用自動変速機の油圧装置を制御する流体制御弁として使用される。
【0019】
電磁弁1は、コイル20に供給される電流に応じてプランジャ22が軸方向移動するソレノイド部2と、ソレノイド部2に取り付けられ、プランジャ22と同軸に形成された弁孔30を有する筒状のスリーブ3と、弁孔30に収容され、プランジャ22の軸方向移動に伴って弁孔30の内面と摺動するスプール4とを備えている。
【0020】
電磁弁1は、
図1に示すように、バルブボディ5に形成された嵌合穴50にスリーブ3が嵌合した状態で使用される。バルブボディ5には、作動油を供給する供給通路51、及び作動油を制御対象(例えば車両用自動変速機の油圧装置)61に導く出力通路52、出力通路52に連通したフィードバック通路53、及びスリーブ3の弁孔30から排出された作動油をドレンタンク62に導くドレン通路54が形成されている。供給通路51には、図略のオイルポンプ60から吐出された作動油が供給される。
【0021】
(ソレノイド部2の構成)
ソレノイド部2は、コイル20と、固定鉄心としてのソレノイドコア21と、可動鉄心としてのプランジャ22と、有底円筒状のソレノイドケース23とを有し、電磁弁1における軸線O方向の一方側(
図1では左側)に配置されている。プランジャ22は、円筒状の本体部220、及び本体部220の中心部を貫通して固定されたシャフト221を有している。
【0022】
コイル20は、ソレノイドケース23の内周側で樹脂からなるボビン24に巻き回されている。ボビン24には、ソレノイドケース23外に露出し、かつコイル20に接続された外部接続用のコネクタピン(図示せず)を内蔵するコネクタ部25が連結部26を介して一体に設けられている。
【0023】
ソレノイドコア21は、コイル20の内側に配置され、プランジャ22のシャフト221を挿通させる円筒部211と、円筒部211におけるスリーブ3側の一端部から外方に突出して形成された環状の鍔部212と、円筒部211の他端部に形成された円筒ヨーク部213を有している。円筒ヨーク部213の内径は、円筒部211の内径よりも大きく形成されている。
【0024】
円筒部211は、電磁弁1の初期状態(コイル20の非励磁状態)においてプランジャ22の本体部220に対して軸線方向に間隔をもって、シャフト221の外周囲に配置されている。鍔部212は、ソレノイドケース23の加締め部233に加締められている。円筒ヨーク部213は、電磁弁1の作動状態(コイル20の励磁状態)においてプランジャ22の本体部220の端部の外側を包囲する。
図1及び
図2では、軸線Oよりも上側に電磁弁1の作動状態を、軸線Oよりも下側に電磁弁1の初期状態を、それぞれ示している。
【0025】
プランジャ22は、ソレノイドケース23内に軸受ブッシュ27,28を介して軸方向移動可能に支持されている。軸受ブッシュ27は、本体部220とソレノイドケース23の突出部232との間に配置され、軸受ブッシュ28は、シャフト221とソレノイドコア21の円筒部211との間に配置されている。プランジャ22は、コイル20への通電による電磁力の発生(コイル20の励磁)によって初期位置からスリーブ3側に移動し、シャフト221に固定されたストッパ222がソレノイドコア21の円筒部211の端面に当接する。
【0026】
円筒部211に挿通されたプランジャ22の先端部は、スプール4の一方の軸方向端面に当接し、コイル20に通電されると、スプール4を軸方向に押圧する。また、プランジャ22は、コイル20への通電が解除されると、スリーブ3に収容された復帰用スプリング29のばね力(復帰力)をスプール4を介して受け、初期位置に復帰する。
【0027】
ソレノイドケース23は、円筒状の本体部230と、底部231と、底部231から軸線Oに沿って突出した円筒状の突出部232と、本体部230における底部231とは反対側の端部に形成された加締め部233とを有している。本体部230と突出部232との間には、コイル20及びボビン24が収容されている。
【0028】
(スリーブ3の構成)
スリーブ3は、円筒状の本体部3a及び鍔部3bを有し、鍔部3bをソレノイドコア21の鍔部21bに当接させてソレノイドケース23(加締め部233)に取り付けられている。スリーブ3には、ソレノイドコア21の円筒部211内に連通し、かつスプール4を軸方向移動可能に収容する弁孔30が本体部3aに設けられている。
【0029】
弁孔30における鍔部3bとは反対側の端部の内面には、ねじ部3cが設けられている。弁孔30の一端は、ねじ部3cに螺合する栓体300によって閉塞され、栓体300とスプール4の軸方向の一端部との間には、復帰用スプリング29が配置されている。
【0030】
スリーブ3は、弁孔30に作動油を入力する入力ポート31と、弁孔30からスプール4の軸方向の位置に応じた圧力の作動油を出力する出力ポート32と、出力ポート32から出力される作動油の一部を弁孔30に戻すためのフィードバックポート33と、弁孔30から作動油を排出する排出ポート34とを有している。
【0031】
入力ポート31は、スリーブ3の本体部3aがバルブボディ5の嵌合穴50に嵌合することで、バルブボディ5の供給通路51に連通する。同様に、出力ポート32は、バルブボディ5の出力通路52に連通し、フィードバックポート33は、バルブボディ5のフィードバック通路53に連通する。また、排出ポート34は、バルブボディ5のドレン通路54に連通する。
【0032】
入力ポート31は、出力ポート32とフィードバックポート33との間に設けられている。排出ポート34は、入力ポート31との間に出力ポート32を挟む位置に設けられている。本実施の形態では、鍔部3bからねじ部3cに向かって、排出ポート34,出力ポート32,入力ポート31,及びフィードバックポート33がこの順序に並列して設けられている。
【0033】
また、スリーブ3は、入力ポート31と出力ポート32との間に形成された第1中間ポート35と、出力ポート32と排出ポート34との間に形成された第2中間ポート36とを有している。入力ポート31,出力ポート32,フィードバックポート33,及び排出ポート34は軸線Oに直交する第1の方向(
図2に示す矢印D
1方向)に開口し、第1中間ポート35及び第2中間ポート36は、第1の方向とは反対向きの第2の方向(
図2に示す矢印D
2方向)に開口している。第1中間ポート35及び第2中間ポート36の開口は、バルブボディ5の嵌合穴50の内面によって閉塞されている。
【0034】
入力ポート31,出力ポート32,フィードバックポート33,排出ポート34,第1中間ポート35,及び第2中間ポート36は、抜き勾配を有して鋳抜きによって形成されている。つまり、入力ポート31,出力ポート32,フィードバックポート33,及び排出ポート34は、第1の方向に向かって徐々に軸線O方向の幅が広くなるように形成され、第1中間ポート35及び第2中間ポート36は、第2の方向に向かって徐々に軸線O方向の幅が広くなるように形成されている。
【0035】
図2では、スリーブ3の製造時における鋳型の輪郭を二点鎖線で示している。フィードバックポート33,入力ポート31,出力ポート32,及び排出ポート34は、それぞれ鋳型の第1乃至第4突起71〜74の鋳抜きによって形成される。第1中間ポート35及び第2中間ポート36は、それぞれ鋳型の第5及び第6突起75,76の鋳抜きによって形成される。スリーブ3の成形後、第1乃至第4突起71〜74は矢印D
1方向に抜かれ、第5及び第6突起75,76は矢印D
2方向に抜かれる。つまり、入力ポート31,出力ポート32,フィードバックポート33,及び排出ポート34は、矢印D
1方向への片側鋳抜きによって形成される。第1中間ポート35及び第2中間ポート36は、矢印D
2方向への片側鋳抜きによって形成される。
【0036】
スリーブ3の製造時(鋳造時)において、第1中間ポート35を形成するための第5突起75は、入力ポート31を形成するための第2突起72と出力ポート32を形成するための第3突起73との間に介在する。また、第2中間ポート36を形成するための第6突起76は、出力ポート32を形成するための第3突起73と排出ポート34を形成するための第4突起74との間に介在する。つまり、第2乃至第4突起72〜74と、第5及び第6突起75,76とは、互い違いに配置される。
【0037】
(スプール4の構成)
スプール4には、ねじ部3c側から鍔部3b側に向かって、第1乃至第5のランド41〜45が形成されている。第2乃至第4のランド42〜44の外径はそれぞれ等しく、かつ第1のランド41の外径よりも大きく形成されている。フィードバックポート33における作動油のフィードバック圧は、このフィードバック圧を受ける第1のランド41の受圧面積と第2のランド42の受圧面積との差によって、スプール4を鍔部3b側に押圧する押圧力を発生させる。
【0038】
第2のランド42は、入力ポート31と第1中間ポート35との間の流路面積を変化させる。第2のランド42の外周面42aは、コイル20の非励磁状態で、弁孔30における入力ポート31と第1中間ポート35との間の内面30aにラップ部a
1において重なり、入力ポート31から第1中間ポート35への作動油の流動を抑制する。
【0039】
第3のランド43は、第1中間ポート35と出力ポート32との間の流路面積を変化させる。第3のランド43の外周面43aは、コイル20の非励磁状態で、弁孔30における第1中間ポート35と出力ポート32との間の内面30bにラップ部a
2において重なり、第1中間ポート35から出力ポート32への作動油の流動を抑制する。
【0040】
一方、コイル20が励磁されると、
図2における軸線Oよりも上側に示すように、入力ポート31と出力ポート32とが第1中間ポート35を介して連通し、出力ポート32から弁孔30内におけるスプール4の軸方向位置に応じた圧力の作動油が出力される。
【0041】
ラップ部a
1における第2のランド42の外周面42aと弁孔30の内面30aとの重なり部分の軸線O方向の長さは、ラップ部a
2における第3のランド43の外周面43aと弁孔30の内面30bとの重なり部分の軸線O方向の長さと同じである。これにより、第1中間ポート35における作動油の圧力は、入力ポート31における作動油の圧力(供給圧)と出力ポート32における作動油の圧力との中間の圧力となる。
【0042】
第4のランド44は、出力ポート32と第2中間ポート36との間の流路面積を変化させる。第4のランド44の外周面44aは、コイル20の励磁状態で、弁孔30における出力ポート32と第2中間ポート36との間の内面30cにラップ部b
1において重なり、出力ポート32から第2中間ポート36への作動油の流動を抑制する。
【0043】
第5のランド45は、第2中間ポート36と排出ポート34との間の流路面積を変化させる。第5のランド45の外周面45aは、コイル20の励磁状態で、弁孔30における第2中間ポート36と排出ポート34との間の内面30dにラップ部b
2において重なり、第2中間ポート36から排出ポート34への作動油の流動を抑制する。
【0044】
一方、コイル20への通電が遮断されると、
図2における軸線Oよりも下側に示すように、出力ポート32と排出ポート34とが第2中間ポート36を介して連通する。
【0045】
ラップ部b
1における第4のランド44の外周面44aと弁孔30の内面30cとの重なり部分の軸線O方向の長さは、ラップ部b
2における第5のランド45の外周面45aと弁孔30の内面30dとの重なり部分の軸線O方向の長さと同じである。これにより、第2中間ポート36における作動油の圧力は、出力ポート32における作動油の圧力と排出ポート34における作動油の圧力との中間の圧力となる。排出ポート34は、ドレン通路54を介してドレンタンク62に連通しているので、排出ポート34における作動油の圧力はゼロであり、第2中間ポート36における作動油の圧力は、出力ポート32における作動油の圧力の半分の圧力となる。
【0046】
(スプール4の偏心抑制構造)
次に、スプール4のスリーブ3内における偏心抑制構造について説明する。
【0047】
前述のように、スリーブ3の各ポート(入力ポート31,出力ポート32,フィードバックポート33,排出ポート34,第1中間ポート35,及び第2中間ポート36)は、片側鋳抜きによって形成されるので、軸線Oに平行な方向の幅が、奥側から開口側に向かって徐々に広がるように形成される。これにより、各ポートでは、スプール4を弁孔30の内面に押し付ける偏荷重が発生する。この偏荷重が発生する理由について、入力ポート31を例にとって
図3乃至
図5を参照して説明する。
【0048】
図3は、入力ポート31の周辺部を示す
図2の一部拡大図である。
図4は、
図3のA−A線断面図である。
図5は、入力ポート31におけるスプール4の第2のランド42を示し、(a)は入力ポート31の開口側から見た状態を、(b)は入力ポート31の奥側から見た状態を、それぞれ示す。なお、これらの図では、入力ポート31の抜き勾配を誇張して表している。
【0049】
入力ポート31は、
図3及び
図4に示すように、軸線O方向に向かい合う一対の平面31a,31bと、軸線Oの周方向に沿って湾曲した半円状の底面31cと、一対の平面31a,31bの間でスプール4を挟んで向かい合う一対の側面31d,31eとによって形成されている。一対の平面31a,31b間の幅は、奥側の底面31cから入力ポート31の開口側に近づくにつれて広くなる。一対の平面31a,31bは、それぞれ軸線Oの径方向に対して傾斜しており、この傾斜が製造時における鋳型の第2突起72(
図2に示す)を鋳抜く際の抜き勾配αとなっている。抜き勾配αは、例えば0.5°から2°である。
【0050】
この抜き勾配αにより、入力ポート31における作動油から圧力を受ける第2のランド42の外周面42aの軸方向長さが、入力ポート31の奥側と開口側で異なる。つまり、
図3に示すように、入力ポート31の開口側において第2のランド42の外周面42aが作動油の圧力を受ける範囲の軸方向長さをL
1とし、入力ポート31の奥側において第2のランド42の外周面42aが作動油の圧力を受ける範囲の軸方向長さをL
2とすると、L
1>L
2となる。
【0051】
この作動油の圧力を受ける範囲の軸方向長さの違いにより、スプール4は、軸線Oに直交する方向の偏荷重を受ける。
図5(a)では、スプール4の第2のランド42の外周面42aのうち、軸線Oよりも入力ポート31の開口側で作動油の圧力を受ける受圧領域42bをクロスハッチングで示している。また、
図5(b)では、スプール4の第2のランド42の外周面42aのうち、軸線Oよりも入力ポート31の奥側で作動油の圧力を受ける受圧領域42cをクロスハッチングで示している。
【0052】
入力ポート31の開口側から見た受圧領域42bの面積(投影面積)をS
1とし、入力ポート31の奥側から見た受圧領域42cの面積(投影面積)をS
2とすると、受圧領域42b,42cの軸線O方向の幅の違いによってS
1>S
2となり、S
1とS
2との差を受圧面積差ΔS
1(ΔS
1=S
1−S
2)とすると、ΔS
1は正の値となる。また、入力ポート31における作動油の油圧をP
1とすると、スプール4は、入力ポート31の奥側に押し付けられる方向の偏荷重(P
1×ΔS
1)を受ける。
【0053】
このような偏荷重は、出力ポート32及びフィードバックポート33においても同様に発生する。このため、これらの偏荷重に対する対策を施さない場合には、スプール4が弁孔30の内面に押し付けられ、スプール4の滑らかな摺動が妨げられると共に、スプール4の外周面及び弁孔30の内面が摩耗して作動油の漏れ量が増大してしまう。そこで、本実施の形態では、第1中間ポート35及び第2中間ポート36を形成すると共に、第1中間ポート35及び第2中間ポート36の開口を入力ポート31,出力ポート32,及びフィードバックポート33の開口の反対側に設け、それぞれのポートで発生する偏荷重を相殺するようにしている。つまり、入力ポート31,フィードバックポート33,第1中間ポート35,及び第2中間ポート36においてスプール4に加わる偏荷重が互いに打ち消し合うように、これら各ポートにおける作動油の圧力及び抜き勾配が設定されている。
【0054】
より具体的には、フィードバックポート33における作動油の圧力及び受圧面積差をP
2,ΔS
2とし、第1中間ポート35における作動油の圧力及び受圧面積差をP
3,ΔS
3とし、第2中間ポート36における作動油の圧力及び受圧面積差をP
4,ΔS
4とすると、これらが下式(1)を満たす関係にある。
〔数1〕
P
1×ΔS
1+P
2×ΔS
2=P
3×ΔS
3+P
4×ΔS
4 −(1)
【0055】
ここで、式(1)の左辺は、スプール4を
図2の下向き(矢印D
2方向)に押し付ける下向き偏荷重であり、式(1)の右辺は、スプール4を
図2の上向き(矢印D
1方向)に押し付ける上向き偏荷重である。なお、下向き偏荷重と上向き偏荷重とは、必ずしも同一の値でなくともよく、例えば下向き偏荷重が上向き偏荷重の0.8〜1.2倍であれば、スプール4を滑らかに摺動させることができると共に、スプール4の外周面及び弁孔30の内面の摩耗を適切に抑制することが可能となる。また、ΔS
1,ΔS
2,ΔS
3,ΔS
4は、例えば入力ポート31,フィードバックポート33,第1中間ポート35,第2中間ポート36の抜き勾配を調節することによって、所望の値に設定することが可能である。
【0056】
なお、本実施の形態では、出力ポート32に対応するランドをスプール4が有していないので、出力ポート32における受圧面積差は考慮していない。
【実施例1】
【0057】
以下に、本発明のさらに具体的な実施の形態としての実施例について説明する。なお、この実施例は、上記の式(1)を満たすための好適な構成例として示すものであり、本発明は、この実施例に限定されるものでないことは勿論である。
【0058】
本実施例では、式(1)に含まれる各要素が下記(a)〜(e)の条件式を満たすように設定されている。また、下記(a)及び(b)では、出力ポート32の作動油の圧力をPoで表している。前述のように、フィードバック通路53は出力通路52に連通しているので、Po=P
2である。
(a) P
3=(P
1+Po)/2
(b) P
4=Po/2
(c) ΔS
2=ΔS
1×1.5
(d) ΔS
3=ΔS
1×2
(e) ΔS
4=ΔS
1
【0059】
この場合、コイル20に供給される励磁電流の制御によってスプール4が軸方向移動し、出力ポート32から出力される作動油の圧力(以下、この圧力を「制御圧」という)が最小値(Po=0)から最大値(Po=P
1)まで変化しても、常に式(1)の関係式が満たされる。このことを、制御圧が最小値の場合と最大値の場合のそれぞれについて、具体的に説明する。
【0060】
制御圧が最小値の場合には、P
2=Po=0であるので、式(1)の左辺にあたる下向き偏荷重は、P
1×ΔS
1となる。また、P
4=Po/2=0であるので、式(1)の右辺にあたる上向き偏荷重は、条件式(a)及び(d)により、P
3×ΔS
3=((P
1+Po)/2)×ΔS
1×2=P
1×ΔS
1となる。よって、式(1)の関係式が満たされる。
【0061】
一方、制御圧が最大値の場合には、P
2=Po=P
1であるので、式(1)の左辺にあたる下向き偏荷重は、条件式(c)により、P
1×ΔS
1×2.5となる。また、式(1)の右辺にあたる上向き偏荷重は、条件式(a),(b),(d),(e)により、P
3×ΔS
3+P
4×ΔS
4=((P
1+Po)/2)×ΔS
1×2+Po/2×ΔS
1=P
1×ΔS
1×2+P
1×ΔS
1×0.5=P
1×ΔS
1×2.5となる。よって、式(1)の関係式が満たされる。
【0062】
このように、制御圧が最小値(Po=0)から最大値(Po=P
1)まで変化しても、式(1)の関係式が満たされ、下向き偏荷重及び上向き偏荷重が互いに相殺されることにより、スプール4を滑らかに摺動させることができ、スプール4の外周面及び弁孔30の内面の摩耗が抑制される。
【0063】
以上、本発明の電磁弁を上記実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能であり、例えば次に示すような変形も可能である。
【0064】
(1)上記実施の形態では、入力ポート31,出力ポート32,フィードバックポート33,及び排出ポート34が第1の方向に開口し、第1中間ポート35及び第2中間ポート36が第2の方向に開口する場合について説明したが、これに限らず、各ポートの開口の向きはバルブボディ5の構成等に基づいて適宜変更することができる。
【0065】
(2)上記実施の形態では、鍔部3bからねじ部3cに向かって、排出ポート34,出力ポート32,入力ポート31,及びフィードバックポート33がこの順序に並列する場合について説明したが、これに限らず、各ポートの位置は適宜変更することができる。
【0066】
(3)上記実施の形態では、コイル20の励磁状態において入力ポート31から出力ポート32に作動油が供給され、コイル20の非励磁状態において出力ポート32への入力ポート31からの作動油の供給が遮断されるノーマルクローズタイプの電磁弁1に本発明を適用した場合について説明したが、これに限らず、コイル20の非励磁状態において入力ポート31から出力ポート32に作動油が供給されるノーマルオープンタイプの電磁弁に本発明を適用してもよい。
【0067】
(4)電磁弁1の用途には特に制限はなく、車両用自動変速機の他、様々な用途に電磁弁1を使用することが可能である。