(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
◎実施の形態の概要
図1(a)は本発明が適用された画像形成装置の実施の形態の概要を示す説明図、(b)は(a)中B方向から見た転写部周辺の説明図である。
同図において、画像形成装置は、記録材Sに対向する対向部材1aを有し、画像を保持して移動する移動体1と、移動体1に接触した状態で対向部材1aに対向して配置され、移動体1との間の接触域nで記録材Sを挟持搬送し、当該移動体1に保持された画像Gを記録材Sに転写する転写部材2と、移動体1と転写部材2との間の接触域nよりも記録材Sの搬送方向の下流側に設けられ、記録材Sの搬送方向に交差する幅方向に沿って延び、記録材Sの転写部材2側である裏面との間に対し記録材S剥離のための剥離用電界Ehを形成する剥離電極3と、移動体1と転写部材2との
接触域nを通過する際の記録材Sの幅方向に沿う予め決められた転写荷重分布情報に基づき、接触域nを通過する記録材Sとの幅方向における排出姿勢の変化を
予測し、記録材Sの幅方向の中央部と端部とに作用する剥離電極3により形成される電界強度の差を小さくするように、剥離電極3と記録材Sとの間に形成される剥離用電界Ehを、剥離電極3の長手方向の中央部と端部とで異ならせるように調整する調整装置5と、を備えている。
【0010】
このような技術的手段において、本件は、転写域を通過する記録材Sの排出姿勢が長手方向で変化する状況に起因する記録材Sの詰まり現象を改善するものである。
本例において、移動体1とは、記録材Sに対向する対向部材1aを有し、画像Gを保持して搬送する機能を有するものであれば適宜選定して差し支えない。例えば感光体等の像保持体上に形成された画像Gを記録材Sに直接転写する態様では、像保持体が移動体1に相当し、また、像保持体上の画像Gを中間転写体を介して記録材Sに転写する態様では、中間転写体が移動体1に相当する。
また、転写部材2は、移動体1に接触して移動体1との間で記録材Sを挟持搬送する機能と、移動体1上の画像Gを記録材Sに転写する機能とを具備するものであればよく、代表的には転写ロールが挙げられる。
更に、剥離電極3としては、移動体1と転写部材2との間に記録材剥離のための剥離用電界Ehを形成する電極であればよく、代表的には記録材Sの搬送方向に交差する幅方向に沿って針状電極部を多数配列したものが挙げられるが、これに限られず、剥離用電界Ehを形成する電極として機能する態様であれば板状、棒状電極など適宜選定して差し支えない。
尚、図中、符号4は剥離電極3に剥離用電圧Vhを印加する剥離用電源である。
更にまた、調整装置5は、剥離電極3の構成や剥離電極3へ印加すべき剥離用電圧を工夫することで所望の剥離用電界Ehを調整するものであればよい。
本態様では、記録材Sの排出姿勢が幅方向において変化すると、剥離電極3により形成される剥離用電界Ehに基づく記録材Sに対する電荷調整度合が記録材Sの幅方向において異なり、剥離電極3による記録材Sの電荷調整が不均一になり易いため、これを解消するという観点から、「移動体1と転写部材2との接触域nを通過する記録材Sの幅方向における排出姿勢の変化を考慮し、」という要件を付加したものである。
尚、このように、記録材Sの排出姿勢が幅方向において変化するのは、腰の弱い低坪量又は厚さの薄いものにおいて顕著である。
【0011】
ここで、転写域を通過した記録材Sに働く力、並びに、同記録材Sの排出姿勢及び剥離電極3による剥離作用について
図2(a)(b)を用いて説明する。
<転写域を通過した記録材に働く力>
この種の画像形成装置では、記録材Sが移動体1と転写部材2との間の接触域n(転写域に相当)を通過すると、移動体1の対向部材1aと転写部材2との間に転写電界が形成され、移動体1上の画像Gが記録材Sに転写される。
このため、記録材Sは転写域を通過するときに転写電界の影響を受け、接触域n及び接触域nの出口近傍において帯電する。そして、接触域nの出口近傍の転写電界の作用により記録材Sは静電力を受ける。
ここで、記録材Sに作用する力fについて検討してみると、以下の数式(1)で表すことが可能である。
f=qEh+mg−k(1/r’)−mrω
2 ……(1)
但し、qは記録材Sの帯電電荷量、Ehは剥離電極3と記録材Sとの間に形成される剥離用電界、mは記録材Sの質量、gは重力加速度、rは転写部材2の曲率半径、ωはその角速度、r’は接触域nを通過した記録材Sの曲率半径であって転写部材2の曲率半径rに対して転写部材2や対向部材1aの変形分を考慮したもの、kは記録材Sの種類によって予め決まる弾性係数である。
そして、数式(1)のうち、‘qEh’は静電気力成分、‘mg’は重力成分、‘k(1/r’)’は記録材属性による復元力成分(所謂腰の強さ)、‘mrω
2’は遠心力成分であり、静電気力成分以外は記録材Sの属性や搬送速度などで一義的に決まってくるため、本例では、静電気力成分を増減することで記録材Sに作用する力fを調整することが可能であることが理解される。
よって、数式(1)によれば、静電気力成分及び重力成分の合力に対し、記録材Sの復元力成分(所謂腰の強さ)が弱いと記録材Sが変形し、転写部材2に捲き付いたり、移動体1へ貼り付いたりしてしまい、記録材Sの詰まり現象(ジャム)が発生する。この詰まり現象は腰の弱い低坪量又は厚さの薄い記録材Sほど起こり易い。
【0012】
このような技術的課題については、比較の形態に係る画像形成装置(接触域nよりも記録材Sの搬送方向下流側に剥離電極3を配設し、この剥離電極3に対し剥離用電源4にて予め決められた剥離用電圧を印加するもので調整装置5を具備していない態様)は、転写域を通過する記録材Sの帯電電荷を調整することで静電気力成分の影響を小さくし、もって、記録材Sが移動体1に貼り付いたり、転写部材2に捲き付く事態を抑制することを企図している。
この種の電荷調整は、
図2(b)に示すように、剥離電極3と記録材Sの裏面との間の放電により行われるため、剥離電極3と記録材Sとの間の間隙g、及び、剥離電極3へ印加する剥離用電圧Vhを適性にすることが重要である。また、転写域を通過する記録材Sの排出姿勢は接触域nでの転写荷重(転写部材2が対向部材1aに加圧されるときの荷重に相当)に依存することが知られており、接触域nでの転写荷重の大小によって記録材Sの排出姿勢の角度θが変化する。
尚、
図2(b)中、L0は接触域nの入口部分と出口部位とを結んだ方向に延びる基準線、Lは接触域nの出口部分から記録材Sの排出姿勢方向に延びる排出方向線で、基準線L0に対して角度θだけ変位したものになっている。
【0013】
<転写域での転写荷重分布と記録材の排出姿勢との関係>
次に、転写域での転写荷重分布と記録材Sの排出姿勢との関係について
図3を用いて説明する。
本例では、転写域での転写荷重分布は転写部材2の軸方向中央部が端部に比べて小さい傾向を示す。これは、転写部材2が対向部材1aにより通常下方に配置され、この状態で、対向部材1a側に食い込んだ状態で加圧される態様であるが、転写部材2は通常両端支持されることから、転写部材2の軸方向中央部が端部に比べて自重により撓み変形し、これに伴って、転写部材2と対向部材1aとの加圧状態として転写部材2の軸方向中央部の転写荷重が端部よりも低減することに基づく。
このような状況において、転写域を通過する記録材Sは、転写部材2の軸方向中央部にて小さい転写荷重を受けると共に、転写部材2の軸方向端部にて大きい転写荷重を受けることになる。このとき、例えば転写部材2が対向部材1aに比べて高硬度である場合には、転写荷重がかかると、柔らかい対向部材1aの方が変形することになるため、対向部材1aの変形は軸方向中央部よりも端部の方が大きい。それゆえ、
図3(a)に示すように、転写域を通過した記録材Sの幅方向中央部の排出姿勢は、同記録材Sの幅方向端部の排出姿勢に比べて移動体1側に接近する方向(上向き)に変化する。
このとき、剥離電極3による帯電調整手法として、例えば記録材Sの幅方向端部の帯電電荷に対して最適化調整するように、剥離電極3にて記録材Sの帯電電荷e+(
図3(a)では+符号で表記)を打ち消すべく剥離電荷e−(
図3(a)では−符号で表記)を付与すると、記録材Sの幅方向端部では帯電電荷e+が剥離電荷e−で適性に打ち消され、記録材Sの幅方向端部は効果的に除電される。これに対し、記録材Sの幅方向中央部では当該記録材Sの幅方向中央部の排出姿勢が記録材Sの幅方向端部に比べて上向きに配置されることから、剥離電極3と記録材Sとの間の間隙が広がり、その分、剥離電極3に予め決められた剥離用電圧vhを印加したとしても、剥離電極3と記録材Sとの間に形成される剥離用電界Ehの強度が弱くなり、記録材Sの幅方向中央部に付与される剥離電荷e−が記録材Sの幅方向端部よりも少なく、剥離電極3による電荷調整(剥離電荷e−の供給量)が不足気味になり、記録材Sの幅方向中央部の帯電電荷e+は剥離電荷e−によって十分には除電されない虞れがある。このため、転写域を通過した記録材Sの幅方向中央部における帯電調整が不足してしまい、当該記録材Sの幅方向中央部は帯電電荷e+が不必要に残存してしまい移動体1側に貼り付き易いという事態が発生する。
【0014】
また、
図3(b)に示すように、例えば記録材Sの幅方向中央部の帯電電荷に対して最適化調整するように、剥離電極3にて記録材Sの帯電電荷e+(
図3(b)では+符号で表記)を打ち消すべく剥離電荷e−(
図3(b)では−符号で表記)を付与すると、記録材Sの幅方向中央部では帯電電荷e+が剥離電荷e−で適性に打ち消され、記録材Sの幅方向中央は効果的に除電される。これに対し、記録材Sの幅方向端部では当該記録材Sの幅方向端部の排出姿勢が記録材Sの幅方向中央部に比べて下向きに配置されることから、剥離電極3と記録材Sとの間の間隙が狭まり、その分、剥離電極3に予め決められた剥離用電圧Vhを印加した場合には、剥離電極3と記録材Sとの間に形成される剥離用電界Ehの強度が強くなり、記録材Sの幅方向端部に付与される剥離電荷e−が記録材Sの幅方向中央部よりも多く、剥離電極3による電荷調整(剥離電荷e−の供給量)が過多気味になり、記録材Sの幅方向端部の帯電電荷e+は剥離電荷e−によって打ち消される事態を越えて放電過多になる虞れがある。このため、転写域を通過した記録材Sの幅方向端部は剥離電荷e−が過多になって記録材Sが負帯電となり、転写部材2側に捲き付き易いという事態が発生する。
【0015】
また、例えば転写部材2が対向部材1aに比べて低硬度である場合には、転写荷重がかかると、柔らかい転写部材2の方が変形することになるため、転写部材2の変形は軸方向中央部よりも端部の方が大きい。それゆえ、
図3に示す場合とは逆に、転写域を通過した記録材Sの幅方向端部の排出姿勢は、同記録材Sの幅方向中央部の排出姿勢に比べて移動体1側に接近する方向(上向き)に変化する。
このため、剥離電極3による帯電調整手法として、例えば記録材Sの幅方向端部の帯電電荷に対して最適化調整するようにしても、記録材Sの幅方向中央部に対する帯電調整が不足気味になり易く、また逆に、記録材Sの幅方向中央部の帯電電荷に対して最適化調整するようにすると、記録材Sの幅方向端部に対する帯電調整が過多になり易い。
【0016】
<調整装置による作用>
しかしながら、本実施の形態では、調整装置5は、記録材Sの幅方向中央部と端部とで剥離電極3による帯電量を調整することが可能であることから、転写域での記録材Sに対する転写荷重分布の差異により、記録材Sの幅方向中央部と端部とで記録材Sの排出姿勢が変化したとしても、記録材Sの排出姿勢に合わせて記録材Sの幅方向中央部、端部に対して帯電調整が可能になり、記録材Sは、移動体1に貼り付いたり、転写部材2に巻き付くことなく、転写域を通過して排出される。
【0017】
次に、本実施の形態に係る画像形成装置の代表的態様又は好ましい態様について説明する。
先ず、移動体1と転写部材2との接触域nの代表的態様としては、
図1(b)に示すように、対向部材1aよりも転写部材2を高硬度に形成し、調整装置5は、剥離電極3と記録材Sとの間に形成される剥離用電界Ehを、剥離電極3の長手方向の端部よりも中央部で大きくなるように調整すればよい。
このように、転写部材2が移動体1の対向部材1aよりも高硬度である条件では、移動体1と転写部材2との接触域nの荷重分布が、記録材Sの幅方向の中央部に比べて端部の方が大きいことにより、対向部材1aの変形は中央部よりも端部の方が大きい。よって、記録材Sの排出姿勢としては、接触荷重の小さい中央部は、接触荷重の大きい端部に比べて、剥離電極3から離れた向きに排出される。この場合、記録材Sの幅方向中央部と剥離電極3との間隙gcは、記録材Sの幅方向端部と剥離電極3との間隙geに比べて広がることから、剥離用電界Ehとしては、記録材Sの幅方向中央部の電界Ehcを端部の電界Eheに比べて大きくなるように調整することで、記録材Sの幅方向における電界強度の差を小さくすることが可能である。
【0018】
また、移動体1と転写部材2との接触域nの別の代表的態様としては、対向部材1aよりも転写部材2を低硬度に形成し、調整装置5は、剥離電極3と記録材Sとの間に形成される剥離用電界Ehを、剥離電極3の長手方向の中央部よりも端部で大きくなるように調整すればよい。
このように、転写部材2が移動体1の対向部材1aよりも低硬度である条件では、
図1(b)に二点鎖線で示すように、記録材Sの排出姿勢としては、転写部材2の変形が大きい端部は、転写部材2の変形が小さい中央部に比べて、剥離電極3から離れた向きに排出される。この場合、記録材Sの幅方向端部と剥離電極3との間隙geは、記録材Sの幅方向中央部と剥離電極3との間隙gcに比べて広がることから、剥離用電界Ehとしては、記録材Sの幅方向端部の電界Eheを中央部の電界Ehcに比べて大きくなるように調整することで、記録材Sの幅方向における電界強度の差を小さくすることが可能である。
【0019】
また、画像形成装置の代表的態様としては、移動体1は複数の張架部材に循環移動可能に掛け渡されるベルト部材からなり、転写部材2はベルト部材の張架部材を対向部材1aとしてベルト部材に接触して配置されている態様が挙げられる。
本態様は、移動体1がベルト部材で、その張架部材の一つを対向部材として兼用する態様であり、主としては、中間転写方式の中間転写ベルトの二次転写部の構成として採用されるが、直接転写方式の感光体ベルトの転写部の構成として採用してもよい。
更に、調整装置5の代表的態様としては、剥離電極3を長手方向において複数に分割し、分割された複数の電極要素に印加する剥離用電圧Vh(例えばVhc,Vhe)を変化させることで異なる剥離用電界Eh(Ehc,Ehe)を形成するものが挙げられる。
本態様では、分割された剥離電極3の各電極要素に印加する剥離用電圧Vhを変化させ、対応する電極要素と記録材Sとの間の剥離用電界Ehを異ならせる態様であり、剥離電極3の分割数は、少なくとも長手方向の中央部と端部とが分離可能であれば適宜選定して差し支えない。
更にまた、調整装置5の別の代表的態様としては、剥離電極3の長手方向において記録材Sに対向する放電位置を変化させ、当該剥離電極3に剥離用電圧Vhを印加することで異なる剥離用電界Ehを形成するものが挙げられる。
本態様では、剥離電極3は例えば長手方向において複数に分割され、複数に分割された電極要素と記録材Sとの相対距離を変化させるようにすればよい。尚、記録材Sの排出姿勢の傾向が予め決まっている態様では、記録材Sの排出姿勢の傾向に合わせて剥離電極3の放電位置を予め設定したものを複数用意しておき、最適なものを選定して配設するようにしてもよい。
また、記録材Sの種類に応じて調整装置5による剥離用電界Ehの調整動作を異なるようにしてもよい。
例えば記録材Sが予め決められた坪量又は厚さ以下の薄い記録材Sであるか否かを判別する記録材種判別手段を有し、調整装置5は、記録材種判別手段にて記録材Sが薄い記録材Sであると判別されたときに、剥離電極3と記録材Sとの間に形成される剥離用電界Ehを、剥離電極3の長手方向の中央部と端部とで異ならせるように調整するようにしてもよい。
本態様では、記録材Sの排出姿勢が幅方向において変化し易い薄い記録材Sであるときに、調整装置5によって剥離用電界Ehを所望のものに切り替える方式である。
ここで、薄い記録材Sでない場合には、記録材Sの排出姿勢はその腰の強さから略一定になることから、剥離電極3の長手方向において剥離用電界Ehを異ならせる必要がなく、剥離電極3の長手方向において略均等な剥離用電界Ehを形成するようにすれば足りる。これに対し、薄い記録材Sを使用する場合には、記録材Sの排出姿勢の変化を考慮した所望の剥離用電界Ehに切り替え、記録材Sの剥離性を確保することが可能である。
【0020】
◎実施の形態1
<画像形成装置の全体構成>
図4は実施の形態1に係る画像形成装置の全体構成を示す説明図である。
同図において、画像形成装置20は、所謂タンデム型の中間転写方式の態様であり、複数の色成分(本例ではイエロ(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K))の画像形成部21(具体的には21a〜21d)を略水平に沿う横方向に配列し、各画像形成部21に対向した部位にはベルト状の中間転写体22を循環移動可能に配設する一方、各画像形成部21に対応した中間転写体22の裏面には、各画像形成部21で形成された各色成分トナーによる画像が中間転写体22に一次転写させられる一次転写装置23(具体的には23a〜23d)を配設すると共に、中間転写体22の移動方向に対し最下流に位置する画像形成部21(本例では21d)よりも下流側に位置する中間転写体22の一部には、当該中間転写体22に一次転写された各色成分画像が記録材としての用紙Sに二次転写(一括転写)させられる二次転写装置25を配設したものである。
更に、本例の画像形成装置20は、二次転写装置25にて一括転写された画像を用紙S上に定着させる定着装置27と、二次転写装置25による転写部位及び定着装置27による定着部位に用紙Sを搬送する用紙搬送系28と、を備えている。
【0021】
本実施の形態において、各画像形成部21(21a〜21d)は、ドラム状の感光体31を有し、各感光体31の周囲には、感光体31が帯電されるコロトロンなどの帯電装置32、帯電された感光体31上に静電潜像が書込まれるレーザ走査装置などの露光装置33、感光体31上に書込まれた静電潜像が各色成分トナーにて現像される現像装置34及び感光体31上の残留トナーが除去される清掃装置35を夫々配設したものである。
また、中間転写体22は、例えばゴム又は樹脂材料によってベルト状に構成され、複数(本実施の形態では3つ)の張架ロール41〜43に掛け渡されており、張架ロール41が駆動モータ(図示せず)にて駆動される駆動ロールとして用いられると共に、張架ロール42,43が従動ロールとして用いられ、また、張架ロール42は張架ロール41と共に各感光体31の一次転写面を形成するものであり、更に、張架ロール43が二次転写装置25の対向ロールとして用いられる。そしてまた、張架ロール41に対向した中間転写体22の表面側には、二次転写後の中間転写体22上の残留トナーを除去するための清掃装置48が設けられている。
【0022】
更に、本実施の形態において、一次転写装置23は、各感光体31に対応して中間転写体22の裏面に接触配置される一次転写ロール51を有しており、各感光体31に対して一次転写ロール51を予め決められた荷重をもって押圧することで、感光体31と中間転写体22との間に一次転写域として作用する接触域を形成し、更に、一次転写ロール51に予め決められた一次転写電流を供給することで、一次転写域に一次転写電界を作用させ、中間転写体22に対し感光体31上の各色成分トナーによる画像を転写させるものである。
更にまた、二次転写装置25は、
図4及び
図5に示すように、張架ロール43に対応する中間転写体22の表面に接触配置される二次転写ロール71を有し、この二次転写ロール71と中間転写体22との間に二次転写域として作用する接触域nを形成する一方、二次転写ロール71の対向ロール72としての張架ロール43の表面には給電ロール73を接触配置し、この給電ロール73に予め決められた二次転写電圧Vtを印加すると共に二次転写ロール71を接地することで、二次転写域に二次転写電界を作用させ、用紙Sに対し中間転写体22上の各色成分トナーによる画像を転写させるものである。
【0023】
更に、定着装置27は、例えば内部に加熱源を有する加熱定着ロール81と、この加熱定着ロール81に圧接配置されて当該加熱定着ロール81に追従して回転する加圧定着ロール82と、を備え、両定着ロール81,82間にて用紙S上の未定着画像を加熱・加圧定着するようになっている。
また、用紙搬送系28は、用紙収容容器91に収容された用紙Sをフィードロール92にて用紙搬送路に繰り出し、用紙搬送路には適宜数の搬送ロール93を配設すると共に、二次転写域の直前に位置する用紙搬送路には用紙Sが位置決めされた後に所定のタイミングで二次転写域に供給される位置決めロール94を配設し、更に、用紙搬送路の二次転写域の下流側には定着装置27に向けて用紙Sが搬送可能な搬送ベルト95を配設したものである。
【0024】
<二次転写装置の構成例>
本例では、二次転写装置25は、
図4及び
図5に示すように、二次転写ロール71が対向ロール72の下方に配置されており、二次転写ロール71と対向ロール72(張架ロール43を兼用)との間に二次転写域としての接触域nを有している。尚、
図5中、‘O’は二次転写ロール71と対向ロール72との中心間を結んだ中心線を示す。
この二次転写域としての接触域nの形状は適宜選定して差し支えないが、本例では、二次転写ロール71の硬度をHt、径寸法をdt、対向ロール72の硬度をHb、径寸法をdbとすると、以下のような関係を満たすように選定されている。
Ht>Hb
dt>db
ここで、二次転写ロール71及び対向ロール72の硬度、寸法関係からすると、
図5に示すように、二次転写域としての接触域nの形状は対向ロール72側に凸状になっていることから、二次転写域としての接触域nを通過する用紙Sは、
図5のUで囲む領域に示すように、中間転写体22から離れる方向、つまり、二次転写ロール71側に寄って排出される。
また、本例では、二次転写ロール71はその軸方向両端部が加圧される方式を採用していることから、二次転写ロール71の軸方向中央部が自重で撓み変形し、これに伴って、二次転写域での転写荷重分布は、二次転写ロール71の軸方向端部(Out,In)に比べて中央部(Cnt)が低くなる傾向がある(例えば
図8参照)。
本例では、二次転写域での転写荷重分布については、例えば画像形成装置の出荷時に測定した転写荷重分布データが後述する制御装置110の記憶部111に読み出し可能に予め格納される。
【0025】
<帯電補正装置>
本実施の形態では、用紙搬送路のうち二次転写域の用紙搬送方向の下流側直後には帯電補正装置96が設けられている。この帯電補正装置96は、用紙Sの二次転写ロール71側、つまり用紙Sの画像保持面とは異なる裏面側に対向して設けられ、二次転写域を通過した用紙Sが中間転写体22に貼り付いたり、二次転写ロール71に捲き付いたりしないように用紙Sの帯電状態を補正することで、中間転写体22及び二次転写ロール71から用紙Sを剥離するものである。
ここで、帯電補正装置96としては、例えば用紙Sの帯電電荷を低減させる除電器97が代表的である。この除電器97は、
図5及び
図6に示すように、用紙Sの裏面に対向して設けられ、用紙Sの搬送方向に交差する幅方向に沿って延びる板状の剥離電極98と、この剥離電極98に対して剥離用電圧Vhを印加する剥離用電源99と、を備えている。
特に、本実施の形態では、剥離電極98は、複数、本例では用紙Sの両端部及び中央部に対応して3つに分割された電極要素98a〜98cからなり、各電極要素98a〜98cは夫々電極板100を有し、この電極板100の用紙Sの裏面側にはのこぎり刃状の除電針101を多数配列した状態で突出して形成したものである。
また、剥離用電源99は各電極要素98a〜98cに対して個々的に異なる剥離用電圧Vhを印加可能に構成されている。
【0026】
<剥離用電源の制御系>
本実施の形態では、画像形成装置の一連の画像処理を制御する制御装置110が設けられている。この制御装置110はCPU等の制御部(図示せず)、ROM、RAM等の記憶部111、表示部112及び操作部113を含むマイクロコンピュータからなり、記憶部111に例えば
図7に示す‘剥離電極の剥離条件設定処理プログラム’(用紙に対する帯電補正処理)を予め格納しておき、制御部にてこのプログラムを実行することで、剥離電極98の各電極要素98a〜98cに対し印加すべき所定の剥離用電圧Vhを設定するようになっている。
【0027】
<画像形成装置の作動>
次に、本実施の形態に係る画像形成装置の作動について説明する。
本実施の形態では、制御装置110は、各画像形成部21にて各色成分トナーによる画像Gを感光体31上に形成し、一次転写装置23にて感光体31上の各色成分画像を中間転写体22に一次転写した後、二次転写装置25にて中間転写体22上の各色成分画像を用紙Sに一括転写する。
そして、二次転写域を通過した用紙Sは、帯電補正装置96としての除電器97にて帯電補正されて二次転写域から剥離した状態で排出され、搬送ベルト95を通じて定着装置27に至り、用紙S上に画像Gを定着した後に図示外の用紙収容受けに排出される。
このような作像処理過程の中で帯電補正装置96による用紙Sの帯電補正は以下のように実施される。
【0028】
<用紙に対する帯電補正処理1>
図7は本実施の形態に係る画像形成装置における用紙に対する帯電補正処理としての剥離電極の剥離条件設定処理を示すフローチャートである。
今、制御装置110は、先ず、記憶部111に格納されている転写荷重分布データを読み出す。
このとき、読み出した転写荷重分布が
図8に示すものであると仮定すると、この転写荷重分布は、用紙Sの幅方向中央部が両端部に比べて小さい傾向を示す。この状態においては、用紙Sの排出姿勢は転写荷重に大きく依存しており、用紙Sの幅方向端部では、転写荷重が大きいことから、二次転写域を通過した用紙Sの排出姿勢は、接触域nの入口部分と出口部分とを結んだ方向に延びる基準線L0よりも下向きに傾斜して配置され、また、用紙Sの幅方向中央部では、転写荷重が小さいことから、二次転写域を通過した用紙Sの排出姿勢は、基準線L0よりも上向きに傾斜して配置される。
ここで、二次転写域での転写荷重分布と用紙Sの排出姿勢とを関連付けた情報を、実験や予測アルゴリズムに基づいて予め記憶部111に格納しておけば、制御装置110は読み出した転写荷重分布データに基づいて用紙Sの幅方向中央部及び両端部の排出姿勢を予測することが可能になる。
そして、制御装置110は、予測した用紙Sの幅方向中央部及び両端部の排出姿勢から、用紙Sの各部と剥離電極98の各電極要素98a〜98cとの間の間隙gを割り出し、剥離電極98の電極要素98a〜98c毎に剥離用電圧Vhを設定する。
この結果、二次転写域を通過した用紙Sの排出姿勢は、幅方向中央部と両端部とで異なったとしても、用紙Sの夫々の排出姿勢に応じて夫々適性な剥離用電界Ehを形成することが可能である。
つまり、本例では、
図9(a)に示すように、用紙Sの幅方向中央部と剥離電極98の電極要素98cとの間隙をgc、用紙Sの幅方向両端部と剥離電極98の電極要素98a,98bとの間の間隙をgeとしたときにgc>geであるため、剥離電極98の電極要素98cに印加する剥離用電圧をVhc、剥離電極98の電極要素98a,98bに印加する剥離用電圧をVheとすると、Vhc>Vheになるように設定することで、用紙Sの幅方向中央部へ作用する剥離用電界をEhc、用紙Sの幅方向両端部へ作用する剥離用電界をEheとすると、Ehc>Eheを満たす関係が得られる。
この結果、用紙Sの排出姿勢が異なっても、適性な剥離用電界Ehを形成することで用紙Sの各部での帯電補正効果を調整することが可能である。
【0029】
<用紙に対する帯電補正処理の変形例>
本実施の形態では、二次転写域での転写荷重分布に基づいて用紙Sに対する帯電補正処理を実施するようにしているが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば他の補正条件を加味するようにしてもよい。ここで、補正条件としては、例えば
図7に2点鎖線で示すように、二次転写ロール71及び対向ロール72の抵抗(体積抵抗)を考慮するようにしてもよい。
例えば二次転写ロール71の抵抗をRt、対向ロール72の抵抗をRbとしたときに、Rt>Rbの関係を満たすと仮定すると、用紙Sは抵抗の高い二次転写ロール71側に引っ張られる傾向にある。このため、このような抵抗関係を満たす場合には、用紙Sの排出姿勢は、抵抗差のない態様に比べて幾分か変化する可能性もあるため、この変化分を補正量に付加するようにして剥離用電圧Vhを設定するようにしてもよいことは勿論である。
尚、補正条件として、二次転写ロール71及び対向ロール72の抵抗以外に、環境条件(温度、湿度)などを考慮してもよい。
【0030】
<用紙に対する帯電補正処理2>
本実施の形態では、二次転写ロール71及び対向ロール72の硬度関係がHt>Hbである態様を例に挙げて説明したが、例えば硬度関係がHt<Hbである場合には以下のようである。
本例では、二次転写域での転写荷重分布は
図8と同様である。この状態においては、用紙Sの幅方向中央部では、転写荷重が小さい又は、二次転写ロール71の変形が小さいことから、二次転写域を通過した用紙Sの排出姿勢は、基準線L0よりも下向きに傾斜して配置され、また、用紙Sの幅方向両端部では、転写荷重が大きい又は二次転写ロール71の変形が大きいことから、二次転写域を通過した用紙Sの排出姿勢は、基準線L0よりも上向きに傾斜して配置される。
このため、本態様では、
図9(b)に示すように、用紙Sの幅方向中央部と剥離電極98の電極要素98cとの間隙gcと、用紙Sの幅方向両端部と剥離電極98の電極要素98a,98bとの間の間隙geとはgc<geの関係を満たす。このため、剥離電極98の電極要素98cに印加する剥離用電圧Vhc、剥離電極98の電極要素98a,98bに印加する剥離用電圧VheとはVhc<Vheの関係を満たすように設定することで、用紙Sの幅方向中央部へ作用する剥離用電界Ehc、用紙Sの幅方向両端部へ作用する剥離用電界EheとはEhc<Eheを満たす関係が得られる。
この結果、用紙Sの排出姿勢が異なっても、適性な剥離用電界Ehを形成することで用紙Sの各部での帯電補正効果を調整することが可能である。尚、本態様についても、二次転写ロール71及び対向ロール72の硬度関係以外に他の補正条件を加味して剥離用電界Ehを調整してもよいことは勿論である。
【0031】
◎実施の形態2
図10は実施の形態2に係る画像形成装置の要部を示す説明図である。
同図において、画像形成装置の基本的構成は、実施の形態1と略同様であるが、用紙Sに対する帯電補正処理が実施の形態1と異なるものである。尚、実施の形態1と同様な構成要素については実施の形態1と同様な符号を付してここではその詳細な説明を省略する。
本例では、帯電補正装置96としての除電器97は、実施の形態1と同様に、複数(本例では3つ)の電極要素98a〜98cからなる剥離電極98と、この剥離電極98に対して剥離用電圧Vhを印加する剥離用電源99と、を備えているが、実施の形態1と異なり、剥離電極98のうち、用紙Sの幅方向中央部に対応した電極要素98cは昇降装置120によって昇降可能に支持されており、制御装置110からの制御信号に基づいて電極要素98cの昇降位置が設定され、また、剥離用電源99は各電極要素98a〜98cに対して共通の剥離用電圧Vhを印加するようになっている。尚、昇降装置120としては電極要素98cを昇降させる機能部材(例えばカム等)を有していれば適宜選定して差し支えない。
【0032】
次に、本実施の形態に係る画像形成装置の用紙に対する帯電補正処理について説明する。
<用紙に対する帯電補正処理1>
先ず、二次転写ロール71の硬度Htと対向ロール72の硬度HbとがHt>Hbの関係を満たす場合には、実施の形態1で説明したように、二次転写域での転写荷重分布は
図8に示すように、用紙Sの幅方向中央部が両端部に比べて小さい傾向を示し、用紙Sの排出姿勢は、幅方向中央部が上向きで幅方向両端部が下向きになるように予測される。
この状態において、本例では、
図11(a)に示すように、用紙Sの幅方向中央部と剥離電極98の電極要素98cとの間隙をgc、用紙Sの幅方向両端部と剥離電極98の電極要素98a,98bとの間の間隙をgeとしたときにgc>geであるため、昇降装置120にて剥離電極98の電極要素98cを用紙S側に向けて上昇させ、その間隙gcがgeと略同程度になる位置まで移動させ、この状態で、予め決められた剥離用電圧Vhを設定するようにすれば、用紙Sの幅方向中央部へ作用する剥離用電界Ehc、用紙Sの幅方向両端部へ作用する剥離用電界Eheとは、Ehc≒Eheを満たす関係が得られる。
この結果、用紙Sの排出姿勢が異なっても、適性な剥離用電界Ehを形成することで用紙Sの各部での帯電補正効果を調整することが可能である。
【0033】
<用紙に対する帯電補正処理2>
次に、二次転写ロール71の硬度Htと対向ロール72の硬度HbとがHt<Hbの関係を満たす場合には、実施の形態1で説明したように、用紙Sの排出姿勢は、幅方向中央部が下向きで幅方向両端部が上向きになるように予測される。
この状態において、本例では、
図11(b)に示すように、用紙Sの幅方向中央部と剥離電極98の電極要素98cとの間隙gc、用紙Sの幅方向両端部と剥離電極98の電極要素98a,98bとの間の間隙geとはgc<geの関係にあるため、昇降装置120にて剥離電極98の電極要素98cを用紙Sから離す方向に向けて降下させ、その間隙gcがgeと略同程度になる位置まで移動させ、この状態で、予め決められた剥離用電圧Vhを設定するようにすれば、用紙Sの幅方向中央部へ作用する剥離用電界Ehc、用紙Sの幅方向両端部へ作用する剥離用電界Eheとは、Ehc≒Eheを満たす関係が得られる。
この結果、用紙Sの排出姿勢が異なっても、適性な剥離用電界Ehを形成することで用紙Sの各部での帯電補正効果を調整することが可能である。
尚、本実施の形態では、二次転写域での転写荷重分布から用紙Sの排出姿勢を予測しているが、これに限られるものではなく、実施の形態1と同様に、他の補正条件を加味してもよい。また、本実施の形態では、剥離電極98の電極要素98cのみを昇降装置120で昇降させるようにしているが、これに限られるものではなく、例えば電極要素98cを固定設置し、剥離電極98の他の電極要素98a,98bを昇降装置120で昇降させるようにしてもよいし、あるいは、全ての電極要素98a〜98cを昇降装置120で個別に昇降させるようにしてもよい。更に、本実施の形態では、剥離電極98の各電極要素98a〜98cに印加する剥離用電圧Vhは同じものが選定されているが、剥離電極98の電極要素98a〜98cの位置に加えて剥離用電圧Vhをも調整対象にしてもよいことは勿論である。
【0034】
◎実施の形態3
図12は実施の形態3に係る画像形成装置の要部を示す説明図である。
同図において、画像形成装置の基本的構成は実施の形態1と略同様であるが、実施の形態1と異なり、用紙Sの種類を判別し、用紙Sの坪量又は厚さが予め決められた値以下の所謂薄紙であるときに、用紙Sに対する帯電補正処理として用紙各部の排出姿勢を予測した帯電補正処理を実施し、薄紙に該当しない場合には通常の帯電補正処理を実施するようにしたものである。
本例では、制御装置110には例えば用紙選択スイッチ130からの信号が入力されるようになっており、制御装置110は用紙選択スイッチ130からの信号に基づき薄紙が選択されたか否かを判別するようになっている。尚、このような用紙の種類の判別は、用紙選択スイッチ130に限られるものではなく、例えば用紙の厚みセンサなどの信号を用いてもよいことは勿論である。
次に、本実施の形態に係る画像形成装置の用紙に対する帯電補正処理について
図13を用いて説明する。
同図において、今、用紙選択スイッチ130にて薄紙が選択されたとすると、制御装置110は薄紙が選択されたことを判別し、実施の形態1と同様に、用紙の各部に対して帯電補正処理を個別に実施する。
これに対し、用紙選択スイッチ130にて薄紙ではない厚紙が選択されたとすると、制御装置110は厚紙が選択されたと判別し、用紙S全体の排出姿勢を判別すると共に、剥離電極98に印加する剥離用電圧Vhを予め決められた標準モードに設定する。尚、ここでいう‘標準モード’とは、剥離電極98の各電極要素98a〜98cに対して共通の剥離用電圧Vhを設定するものであるが、用紙Sに対する帯電補正処理が不要である場合には剥離用電圧Vhを0とすることも含む。
【実施例】
【0035】
◎実施例1
本実施例は、実施の形態1に係る画像形成装置を具現化したものに対し、二次転写域の転写荷重(gf/cm
2)と二次転写域を通過した用紙の排出姿勢角度θ(°)との関係を調べた。
ここで、転写荷重1(gf/cm
2)は0.0098(N/cm
2)に相当し、排出姿勢角度θ(°)は二次転写域の入口、出口を結ぶ基準線に対する用紙の排出方向線の交差角度である。
本実施例では、二次転写ロールは対向ロールよりも高硬度(アスカC硬度で78度と62度)であり、
図14(a)に示すように、二次転写域のうち二次転写ロールの軸方向中央部に対応した領域を通紙領域とし、この通紙領域に短冊状の幅寸法ws(本例では70mm)の用紙S’を通過させ、転写荷重及び用紙S’の排出姿勢角度θ(°)を測定したところ、
図14(b)に示す結果が得られた。
同図によれば、二次転写域の転写荷重が減少するにつれて用紙S’の排出姿勢角度θ(°)は大きくなり、中間転写体側に向かう上向きに変化することが理解される。
このことからすると、二次転写域での転写荷重分布から用紙S’の排出姿勢が予測可能であることが推測される。
【0036】
◎実施例2
本実施例は、実施例1と同様の画像形成装置を用い、所定の薄紙が二次転写域を通過する条件として、剥離電極へ印加する剥離用電圧と二次転写域における転写荷重との相関を調べたものである。
実施例条件は以下の通りである。
・薄紙:坪量が72gsmコート紙
・ 二次転写ロール:ECO/NBRゴム層上にフッ素系樹脂コートを施したもので、外径24φ、体積抵抗7.0logΩ、アスカC硬度78度を具備。
・対向ロール:ECO/NBRゴムを発泡させたもので、外径20φ、体積抵抗6.5logΩ、アスカC硬度62度を具備。
・剥離電極:二次転写域の入口、出口を結ぶ基準線L0との距離が10mmに設定。
結果を
図15に示す。
同図において、横軸の‘転写荷重’は二次転写域の用紙幅方向の中央部に幅寸法ws70mmの用紙S’を通るように搬送させたときの加圧荷重を示し、縦軸の‘剥離電極印加電圧’とは剥離電極へ印加した電圧を示す。
そして、図中●は所定の転写荷重、印加電圧の条件で、二次転写域の用紙幅方向の中央部に幅寸法ws(本例では70mm)の用紙S’を通るように搬送させ、10枚出力したときに全て通紙できたことを示し、▲は10枚の用紙S’のうち1枚以上ベルト状の中間転写体上に用紙S’が貼り付いた現象(POB:PAPER ON BELT)が見られたことを示し、■は10枚の用紙S’のうち1枚以上二次転写ロール(BTR)に捲き付いた現象を示す。
図15によれば、用紙の剥離性(通紙性)を良好に保つには、転写荷重が大きい場合には、剥離電極の印加電圧(剥離用電圧に相当)を小さく設定してもよいことが理解され、
また、転写荷重が小さい場合には、剥離電極への印加電圧を大きく設定すればよいことが理解される。
図15によれば、例えば、二次転写ロールの撓みにより軸方向端部の転写荷重が5000gf/cm
2で、軸方向中央部の転写荷重が3500gf/cm
2となった場合を例に挙げると、用紙Sの幅方向端部では剥離電極の電極要素への印加電圧はなくてもよく、用紙Sの幅方向中央部では剥離電極の電極要素に対し−2kVの剥離用電圧を印加することで全体として適性な用紙帯電量に調整できることが把握される。