特許第6127758号(P6127758)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6127758車両用リンク装置、及びそのリンク装置を使用した車両のスロープ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6127758
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】車両用リンク装置、及びそのリンク装置を使用した車両のスロープ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 3/00 20060101AFI20170508BHJP
   B60P 3/00 20060101ALI20170508BHJP
   B60P 1/43 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   B60R3/00
   B60P3/00 A
   B60P1/43 B
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-125540(P2013-125540)
(22)【出願日】2013年6月14日
(65)【公開番号】特開2015-622(P2015-622A)
(43)【公開日】2015年1月5日
【審査請求日】2016年5月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】板東 伸幸
【審査官】 倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−041263(JP,A)
【文献】 特開2002−154368(JP,A)
【文献】 特開2004−066963(JP,A)
【文献】 特開2003−312354(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 3/00 − 3/02
B60P 1/43
B60P 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ボディに対して回動可能な状態で連結された板状部材を使用位置と格納位置間で回動させる車両用リンク装置であって、
駆動機構の可動部に一端側が回動可能に連結された第1リンクと、
前記第1リンクの他端側に一端側が回動可能に連結されて、他端側が前記板状部材の回動中心から離れた部位に回動可能に連結されている第2リンクとを有し、
前記駆動機構の可動部が前記第1リンク、第2リンクを介して前記板状部材を引っ張ることで、その板状部材が格納位置に格納される構成であり、
前記板状部材が格納位置まで回動したときの前記第1リンクと第2リンクとのなす角度は、前記板状部材が使用位置まで回動したときの前記第1リンクと第2リンクとのなす角度よりも小さくなるように設定されていることを特徴とする車両用リンク装置。
【請求項2】
請求項1に記載された車両用リンク装置であって、
前記板状部材には、前記板状部材が格納位置に向かって所定角度まで回動したときに前記第2リンクに係合し、前記板状部材がさらに回動する間、前記板状部材と前記第2リンクとの角度変化を規制して前記第1リンクと第2リンクとのなす角度が小さくなるように、両リンクを相対的に回動させる角度規制部が設けられていることを特徴とする車両用リンク装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載された車両用リンク装置であって、
前記駆動機構の可動部には、前記板状部材が格納位置にあるときに、前記第2リンクを格納位置に保持する保持部が設けられていることを特徴とする車両用リンク装置。
【請求項4】
請求項3に記載された車両用リンク装置であって、
前記第2リンクには、窪み部を備える湾曲部が設けられており、
前記駆動機構の可動部の保持部は、前記第2リンクの湾曲部の窪み部に嵌るピンであることを特徴とする車両用リンク装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載された車両用リンク装置であって、
前記駆動機構の可動部には、前記板状部材が格納位置にあるときに、前記第1リンクと第2リンクとの連結部位が収められる曲がり部が設けられていることを特徴とする車両用リンク装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載された車両用リンク装置を備えており、
前記板状部材は、車両ボディに対して上下回動可能な状態で連結されて、前記使用位置で車両のドア開口部と路面間に掛け渡されるスロープ板であることを特徴とする車両のスロープ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ボディに対して回動可能な状態で連結された板状部材を使用位置と格納位置間で回動させる車両用リンク装置、及びそのリンク装置を使用した車両のスロープ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これに関連する車両用リンク装置が非特許文献1に記載されている。
非特許文献1に記載された車両用のリンク装置100は、図10に示すように、ワンボックス車両(図示省略)の後側ドア開口部Hの内側に設置されたスロープ板本体部110を展開、あるいは格納するための装置である。スロープ板本体部110は、先端側平板部111と基端側平板部112とからなり、図に示す格納位置で両平板部111,112が折り畳まれるように構成されている。スロープ板本体部110は、基端側平板部112が後方に回動することで、先端側平板部111がその基端側平板部112に対して展開するようになる。そして、展開した先端側平板部111と基端側平板部112とが後側ドア開口部Hと路面間に掛け渡されことで、車椅子の乗員をドア開口部Hから乗降させることが可能になる。
【0003】
リンク装置100は、アーム付き歯車102と、そのアーム付き歯車102と噛合するモータ側歯車106と、前記アーム付き歯車102のアーム部102aに一端側が回動可能に連結された第1リンク103と、その第1リンク103の他端側と基端側平板部112の回動中心から離れた部位とをつなぐ第2リンク104とから構成されている。そして、アーム付き歯車102が右回転し、第1リンク103と第2リンク104とが一直線上に配置された状態でスロープ板本体部110の基端側平板部112を後方に押圧することで、基端側平板部112は後方に回動するようになる。また、アーム付き歯車102が左回転し、第1リンク103と第2リンク104とが一直線上に配置された状態でスロープ板本体部110の基端側平板部112を前上方に引っ張ることで、基端側平板部112は格納位置まで前上方に回動するようになる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】発明協会公開技報 公技番号2007−505799号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した車両用のリンク装置100では、スロープ板本体部110(基端側平板部112)が格納位置にある状態でリンク装置100の第1リンク103と第2リンク104とが一直線上に配置される。このため、図10に示すように、第1リンク103の端部(左端部)から第2リンク104の端部(右端部)までの全長寸法が大きくなり、スロープ板本体部110を格納した状態におけるリンク装置100の車両前後方向の長さ寸法が大きくなる。このため、車両の室内スペースがリンク装置100によって狭められるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、板状部材を格納した状態における車両用リンク装置の収納スペースを小さくできるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、車両ボディに対して回動可能な状態で連結された板状部材を使用位置と格納位置間で回動させる車両用リンク装置であって、駆動機構の可動部に一端側が回動可能に連結された第1リンクと、前記第1リンクの他端側に一端側が回動可能に連結されて、他端側が前記板状部材の回動中心から離れた部位に回動可能に連結されている第2リンクとを有し、前記駆動機構の可動部が前記第1リンク、第2リンクを介して前記板状部材を引っ張ることで、その板状部材が格納位置に格納される構成であり、前記板状部材が格納位置まで回動したときの前記第1リンクと第2リンクとのなす角度は、前記板状部材が使用位置まで回動したときの前記第1リンクと第2リンクとのなす角度よりも小さくなるように設定されていることを特徴とする。
【0008】
本発明によると、板状部材が格納位置まで回動したときの第1リンクと第2リンクとのなす角度は、板状部材が使用位置まで回動したときの前記第1リンクと第2リンクとのなす角度よりも小さくなるように設定されている。即ち、板状部材が格納位置まで回動したときは、板状部材が使用位置まで回動したときと比べ、第1リンクに対して第2リンクが大きく折れ曲がるようになる。このため、板状部材が格納位置にあるときの第1リンクの端部から第2リンクの端部までの全長寸法は、板状部材が使用位置にあるときの第1リンクの端部から第2リンクの端部までの全長寸法よりも小さくなる。したがって、板状部材を格納した状態における第1リンクの第2リンクの収納スペースを小さくできる。
【0009】
請求項2の発明によると、板状部材には、板状部材が格納位置に向かって所定角度まで回動したときに前記第2リンクに係合し、前記板状部材がさらに回動する間、前記板状部材と前記第2リンクとの角度変化を規制して前記第1リンクと第2リンクとのなす角度が小さくなるように、両リンクを相対的に回動させる角度規制部が設けられていることを特徴とする。
このため、板状部材が格納位置に向かって所定角度まで回動することで確実に第2リンクを第1リンクに対して折り曲げることができる。
【0010】
請求項3の発明によると、駆動機構の可動部には、板状部材が格納位置にあるときに、第2リンクを格納位置に保持する保持部が設けられていることを特徴とする。
請求項4の発明によると、第2リンクには、窪み部を備える湾曲部が設けられており、駆動機構の可動部の保持部は、前記第2リンクの湾曲部の窪み部に嵌るピンであることを特徴とする。
即ち、保持部(ピン)により第2リンクを格納位置に保持することで、板状部材を格納位置でロックすることができる。
【0011】
請求項5の発明によると、駆動機構の可動部には、板状部材が格納位置にあるときに、第1リンクと第2リンクとの連結部位が収められる曲がり部が設けられていることを特徴とする。
このため、格納位置において駆動機構の可動部と第1リンク、第2リンクとのまとまりが良くなる。
請求項6の発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載された車両用リンク装置を備えており、板状部材は、車両ボディに対して上下回動可能な状態で連結されて、使用位置で車両のドア開口部と路面間に掛け渡されるスロープ板であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、板状部材を格納した状態における車両用リンク装置の収納スペースを小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態1に係る車両用リンク装置の動作により車室内に格納されたスロープ装置のスロープ板本体部を表す模式斜視図である。
図2】前記車両用リンク装置の動作により使用位置まで後方に回動し、展開したスロープ装置のスロープ板本体部を表す模式斜視図である。
図3】前記スロープ装置のスロープ板本体部を格納した状態を表す車両用リンク装置の側面図である。
図4】前記スロープ装置のスロープ板本体部を使用位置まで回動させた状態を表す車両用リンク装置の側面図である。
図5図4における車両用リンク装置の拡大図である。
図6】前記スロープ装置のスロープ板本体部を使用位置から格納位置まで回動させる際の車両用リンク装置の動作を表す側面図である。
図7】前記スロープ装置のスロープ板本体部を使用位置から格納位置まで回動させる際の車両用リンク装置の動作を表す側面図である。
図8】前記スロープ装置のスロープ板本体部を使用位置から格納位置まで回動させる際の車両用リンク装置の動作を表す側面図である。
図9】前記スロープ装置のスロープ板本体部を格納位置まで回動させたときの車両用リンク装置の側面図(図3における車両用リンク装置の拡大図)である。
図10】従来の車両用リンク装置の模式側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施形態1]
以下、図1から図9に基づいて本発明の実施形態1に係る車両用リンク装置ついて説明する。
本実施形態に係る車両用リンク装置40(以下、リンク装置40という)は、ワンボックス車両Cのドア開口部Hに設置されたスロープ装置10のスロープ板本体部20を格納位置と使用位置間で上下回動させる装置である。
なお、図中に示す前後左右及び上下は前記リンク装置40を備えるワンボックス車両Cの前後左右及び上下に対応している。
【0015】
<ワンボックス車両Cの概要について>
本実施形態に係るリンク装置40について説明する前に、先ず、ワンボックス車両Cとスロープ装置10の概要について簡単に説明する。
ワンボックス車両C(以下、車両Cという)は、図1図2に示すように、車室の後端部にドア開口部Hを備えており、そのドア開口部Hが上方に跳ね上げ式のバックドアDbによって開閉可能に構成されている。そして、車両Cのドア開口部Hの内側に、乗員を車椅子でドア開口部Hから乗降させる際に使用されるスロープ装置10が設置されている。
【0016】
<スロープ装置10の概要について>
スロープ装置10は、図2図3等に示すように、スロープ板本体部20と、スロープ板展開機構30とを備えている。スロープ板本体部20は、図3等に示すように、車椅子用のスロープを構成する板部であり、基端側平板部22と、その基端側平板部22の先端に連結部23を介して上下回動可能な状態で連結されている先端側平板部21とから構成されている。
基端側平板部22の基端部は、テールゲート部15(図2等参照)に支持されており、そのテールゲート部15が、図3等に示すように、車両Cのドア開口部Hの下辺を構成するボディパネル12にヒンジ機構17を介して上下回動可能な状態で連結されている。
そして、スロープ板本体部20(基端側平板部22)がテールゲート部15と共に使用位置から格納位置まで上方に回動すると、図3に示すように、テールゲート部15は真直ぐに起立し、スロープ板本体部20は前傾となってボディ側のストッパ12sに当接するようになる。
【0017】
スロープ板展開機構30は、スロープ板本体部20の基端側平板部22が格納位置(図3参照)から後方の使用位置(図4参照)まで後下方に回動する過程で、先端側平板部21を基端側平板部22に対して展開させるための機構である。スロープ板展開機構30は、図3等に示すように、スロープ板本体部20の基端側平板部22と先端側平板部21とに通されるワイヤ32と、基端側平板部22と先端側平板部21との連結部23の位置で前記ワイヤ32が掛けられるリール部34とから構成されている。そして、ワイヤ32の一端側が車両Cのボディパネル12の床面位置に固定された第1引き止め金具36に連結されている。また、ワイヤ32の他端側は先端側平板部21の途中位置に設けられた第2引き止め金具38に連結されている。
【0018】
第1引き止め金具36は、図3に示すように、前傾となる格納位置に保持されたスロープ板本体部20の基端側平板部22の直近で、その基端側平板部22の延長線上に位置決めされている。そして、第1引き止め金具36の位置がスロープ板本体部20の回動中心であるヒンジ機構17の位置から前方にズレている。
このため、スロープ板本体部20の基端側平板部22が後方に下回動すると、図4に示すように、第1引き止め金具36から基端側平板部22が後方に離れるようになる。これにより、ワイヤ32が引っ張られ、先端側平板部21が基端側平板部22に対して展開するようになる。
また、図4に示す状態からスロープ板本体部20の基端側平板部22が上回動すると、第1引き止め金具38に対して基端側平板部22が接近して、ワイヤ32が緩められ、先端側平板部21は自重で基端側平板部22に対して折り畳まれるようになる。
【0019】
<リンク装置40について>
リンク装置40は、スロープ板本体部20の基端側平板部22を格納位置と使用位置(倒伏位置)間で回動させる機構である。
リンク装置40は、図4図5図4の拡大図)等に示すように、アーム付き歯車42と、そのアーム付き歯車42を回転させるモータ46、及びモータ側歯車45と、第1リンク43と、第2リンク44とから構成されている。
アーム付き歯車42は、円盤状の歯車部42wと、その歯車部42wから半径方向外側に突出するL形アーム部42aとを備えている。L形アーム部42aは、歯車部42wから半径方向外側に突出する突出部分と、その突出部分の先端から歯車部42wの略接線方向に曲げられた曲がり部分とにより略L字形に形成されている。また、歯車部42wの側面には、その歯車部42wの周縁近傍の所定位置にピン42pが設けられている。そして、歯車部42wが左回転する過程で前記ピン42pが、図8図9に示すように、第2リンク44の中央段差44xから窪み部44c(後記する)にかけて当接可能に構成されている。円盤状の歯車部42wは、中心軸42jを備えており、その中心軸42jが水平な状態で装置架台(図示省略)の軸受に回転自在に支持されている。ここで、前記装置架台は、車両Cのドア開口部Hの内側に固定されている。
また、前記装置架台には、モータ46が固定されており、そのモータ46の出力軸にモータ側歯車45が同軸に取付けられている。そして、モータ側歯車45がアーム付き歯車42の歯車部42wと噛合している。
即ち、前記モータ46、モータ側歯車45、及びアーム付き歯車42が本発明の駆動機構に相当し、アーム付き歯車42が本発明の駆動機構の可動部に相当する。また、アーム付き歯車42のL形アーム部42aが本発明の可動部の曲がり部に相当する。
【0020】
アーム付き歯車42のL形アーム部42aの先端部には、図4図5等に示すように、第1リンク43の一端側が回動可能な状態で連結されており、その第1リンク43の他端側に第2リンク44の一端側が回動可能な状態で連結されている。また、第2リンク44の他端側がスロープ板本体部20の基端側平板部22における回転中心(ヒンジ機構17の回動中心)から離れた部位に連結部材22zにより上下回動可能な状態で連結されている。
第1リンク43は、図5に示すように、直線状の短いリンクであり、その第1リンク43の他端側下端に下回動ストッパ43sが設けられている。また、第1リンク43の中央部上端には、上回動ストッパ43uが設けられている。第1リンク43の下回動ストッパ43sは、第2リンク44が第1リンク43の延長線上にある状態で(図5参照)、その第2リンク44が第1リンク43に対して下方に下回動しないようにするストッパである。また、第1リンク43の上回動ストッパ43uは、図8等に示すように、第2リンク44が第1リンク43に対して上方に一定角度(約90°)以上回動しないようにするストッパである。
【0021】
第2リンク44は、図5に示すように、直線部44mと湾曲部44wとから構成されている。第2リンク44の直線部44mの先端部分(第2リンク44の一端側)には、第1リンク43の下回動ストッパ43sに当接可能な先端下側段差部44dと、第1リンク43の上回動ストッパ43uに当接可能な張出上平面44fとが形成されている。また、第2リンク44の直線部44mと湾曲部44wとの境界位置下側には、アーム付き歯車42のピン42pが当接可能に構成された中央段差部44xが形成されている。
【0022】
第2リンク44の湾曲部44wは、上方に凸となるように湾曲しており、その湾曲部44wの下側に窪み部44cが形成されている。そして、アーム付き歯車42が左回動(格納方向に回動)する際に、図8図9に示すように、そのアーム付き歯車42のピン42pが第2リンク44の中央段差部44xの位置から窪み部44cに沿ってガイドされるように構成されている。
また、第2リンク44の湾曲部44wの端部(第2リンク44の他端側)には、連結部材22zの半径方向外側位置に段差状の押圧力受部44zが形成されている。第2リンク44の他端側の押圧力受部44zは、スロープ板本体部20の基端側平板部22が格納位置まで上方に回動する際に、その基端側平板部22に形成された押圧ピン22pによって押圧されるように構成されている。即ち、スロープ板本体部20の先端側平板部21と基端側平板部22とが格納位置の近傍で折り畳まれる際にそのスロープ板本体部20の回動力が押圧ピン22pを介して第2リンク44の押圧力受部44zに加わるようになる。これにより、第2リンク44が連結部材22zの回りを左回動し、図3等に示すように、第2リンク44が第1リンク43に対して上方に折れ曲がるようになる。即ち、第1リンク43と第2リンク44とのなす角度θが小さくなる。
ここで、第1リンク43と第2リンク44とのなす角度θとは、図3に示すように、第1リンク43の一端側と他端側との連結部位を結ぶ仮想直線(一点鎖線参照)と、第2リンク44の一端側と他端側との連結部位を結ぶ仮想直線(一点鎖線参照)とのなす角度θをいう。
【0023】
<スロープ装置10及びリンク装置40の動作について>
次に、スロープ装置10の動作説明とともにリンク装置40の動作を説明する。
図3に示すように、スロープ板本体部20が格納位置にある状態からモータ46が正転方向に回転してアーム付き歯車42が右回転すると、L形アーム部42aの先端が歯車部42wの外周に沿って上後方に移動し、第1リンク43、第2リンク44を介してスロープ板本体部20が後方に押圧される。これにより、スロープ板本体部20の基端側平板部22と、その基端側平板部22に折り重なる先端側平板部21とが後方に回動(右回動)する。そして、スロープ板本体部20が後方に倒れる過程でスロープ板展開機構30の働きにより先端側平板部21が基端側平板部22に対して展開するようになる。また、スロープ板本体部20が後方に倒れることにより、スロープ板本体部20の重量がリンク装置40の第1リンク43と第2リンク44とに加わり、第2リンク44は第1リンク43の延長線上(第1リンク43と第2リンク44とのなす角度θ=θ2)に保持される。
ここで、第1リンク43に対して第2リンク44が下方に回動しようとしても、第1リンク43の下回動ストッパ43sと第2リンク44の先端下側段差部44dが当接することで、第2リンク44は第1リンク43の延長線上に保持される。そして、スロープ板本体部20の基端側平板部22が、図4図5に示すように、使用位置(倒伏位置)まで回動した状態で、スロープ板本体部20の先端側平板部21と基端側平板部22とがワンボックス車両Cのドア開口部Hと路面間に掛け渡される。
【0024】
次に、この状態からモータ46が逆転方向に回転してアーム付き歯車42が左回転すると、L形アーム部42aの先端が歯車部42wの外周に沿って前上方に移動することで、リンク43がスロープ板本体部20の基端側平板部22を徐々に引っ張って起立(左回動)させる。これにより、スロープ板展開機構30のワイヤ32が緩められ、スロープ板本体部20の先端側平板部21と基端側平板部22とが折り畳まれる。さらに、図6図7に示すように、スロープ板本体部20の基端側平板部22が起立(左回動)することで、その基端側平板部22の側面に形成された押圧ピン22pがリンク装置40の第2リンク44の押圧力受部44zに当接し、第2リンク44の押圧力受部44zを徐々に押圧する。そして、スロープ板本体部20の基端側平板部22の左回動が継続されることで、図7に示すように、リンク装置40の第2リンク44の押圧力受部44zが基端側平板部22の押圧ピン22pに押され、その第2リンク44が連結部材22zの回りを左回動し、第1リンク43に対して徐々に上方に折れ曲がるようになる。即ち、第1リンク43と第2リンク44とのなす角度θが徐々に小さくなる。
なお、第2リンク44の張出上平面44fが第1リンク43の上回動ストッパ43uに当接した場合には第1リンク43に対する第2リンク44の上方の回動が禁止される。
【0025】
さらに、スロープ板本体部20の基端側平板部22の左回動が継続されることで、図8に示すように、アーム付き歯車42のピン42pがリンク装置40の第2リンク44の中央段差部44xに当接する。そして、第2リンク44の湾曲部44wの窪み部44cに沿って移動する。このようにして、スロープ板本体部20の基端側平板部22が格納位置まで回動すると、図9図3)に示すように、基端側平板部22の下部がボディ側のストッパ12sに当接するようになる。また、アーム付き歯車42のピン42pが第2リンク44の湾曲部44wの窪み部44cと嵌合するようになる。これにより、スロープ板本体部20が格納位置で回転ロックされる。また、この状態で、第1リンク43と第2リンク44との連結部位がアーム付き歯車42のL形アーム部42aの窪み部(図番省略)に収められる。
このように、スロープ板本体部20が格納位置まで回動する過程で、第2リンク44がスロープ板本体部20に押されて第1リンク43に対して上方に折れ曲がるようになる。即ち、格納位置では、第1リンク43と第2リンク44とのなす角度θ(=θ1)が、使用位置における第1リンク43と第2リンク44とのなす角度θ(=θ2)よりも十分小さくなる。このため、格納位置では、使用位置と比べて、第1リンク43の端部から第2リンク44の端部までの全長寸法が小さくなる。したがって、スロープ板本体部20を格納した状態におけるリンク装置40の収納スペースを小さくできる。
即ち、スロープ板本体部20が本発明における板状部材に相当する。また、スロープ板本体部20の基端側平板部22における押圧ピン22pが本発明の板状部材の角度規制部に相当する。
【0026】
<本実施形態に係る車両用リンク装置40の長所について>
本実施形態に係る車両用リンク装置40によると、スロープ板本体部20(板状部材)が格納位置まで回動したときの第1リンク43と第2リンク44とのなす角度θ1は、スロープ板本体部20(板状部材)が使用位置まで回動したときの前記第1リンク43と第2リンク44とのなす角度θ2よりも小さくなるように設定されている。即ち、スロープ板本体部20(板状部材)が格納位置まで回動したときは、スロープ板本体部20が使用位置まで回動したときと比べ、第1リンク43に対して第2リンク44が大きく折れ曲がるようになる。このため、スロープ板本体部20が格納位置にあるときの第1リンク43の端部から第2リンク44の端部までの全長寸法は、スロープ板本体部20が使用位置にあるときの第1リンク43の端部から第2リンク44の端部までの全長寸法よりも小さくなる。したがって、スロープ板本体部20を格納した状態におけるリンク装置40の収納スペースを小さくできる。
また、第2リンク44には、その第2リンク44とスロープ板本体部20とを回動可能に連結する連結部材22zの半径方向外側位置に、スロープ板本体部20の押圧ピン22p(角度規制部)からの押圧力を受けられるように構成された押圧力受部44zが形成されている。このため、スロープ板本体部20が第2リンク44を押圧する位置まで上回動することで確実に第2リンク44を第1リンクに対して上方に折り曲げることができる。即ち、第1リンク43と第2リンク44とのなす角度θを小さくすることができる。
また、スロープ板本体部20の格納位置でアーム付き歯車42のピン42pが第2リンク44の湾曲部44wの窪み部44cに嵌るため、そのピン42pと窪み部44cの働きでスロープ板本体部20を格納位置で回転ロックすることができる。
また、アーム付き歯車42のL形アーム部42a(曲がり部)は、第1リンク43と第2リンク44との連結部位を収められるようにアーム付き歯車42の接線方向に曲げられているため、格納位置においてアーム付き歯車42のL形アーム部42aと第1リンク、第2リンクとのまとまりが良くなる。
【0027】
<変更例>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、スロープ板本体部20の先端側平板部21を基端側平板部22に対してスロープ板展開機構30により展開させる例を示した。しかし、例えば、スロープ板本体部20の基端側平板部22に対して先端側平板部21を重ねて収納できるようにし、基端側平板部22から先端側平板部21を引き出すことで、スロープ板本体部20を展開させる構成でも可能である。
また、本実施形態では、リンク装置40の第2リンク44の端部に押圧力受部44zとを設け、スロープ板本体部20の押圧ピン22p(角度規制部)で第2リンク44の押圧力受部44zを押圧することで、その第2リンク44を第1リンク43に対して上方に折り曲げる例を示した。しかし、例えば、アーム付き歯車42の側面に形成したピン(カムフォロア)と第2リンク44に形成されたカム面の働きで、第2リンクを第1リンク43に対して上方に折り曲げることも可能である。
また、本実施形態では、使用位置と格納位置間で回動する板状部材の一例として、スロープ板本体部20を例示したが、荷台のプラットホーム等に本発明の板状部材を適用することも可能である。
また、本実施形態では、リンク装置40の駆動源としてモータ46、及びモータ歯車45を使用する例を示した。しかし、モータ45の代わりに油圧アクチュエータ等を利用して駆動側歯車を回転させて、リンク装置40を動作させる構成でも可能である。
また、例えば、油圧アクチュエータ等の可動部で第1リンク43、第2リンク44を介してスロープ板本体部20等を回動させる構成でも可能である。
【符号の説明】
【0028】
20・・・・・スロープ板本体部(板状部材)
22・・・・・基端側平板部
22p・・・・押圧ピン(角度規制部)
22z・・・・連結部材
40・・・・・リンク装置
42・・・・・アーム付き歯車(駆動機構の可動部)
42a・・・・L形アーム部(可動部の曲がり部)
42w・・・・歯車部
42p・・・・ピン(保持部)
43・・・・・第1リンク
44・・・・・第2リンク
44w・・・・湾曲部
44c・・・・窪み部
44z・・・・押圧力受部
45・・・・・モータ側歯車(駆動機構)
図1
図2
図3
図4
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図7
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図10