特許第6127809号(P6127809)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6127809
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】安全柵組立体
(51)【国際特許分類】
   E04H 17/16 20060101AFI20170508BHJP
   B65G 1/00 20060101ALI20170508BHJP
   F16C 11/04 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   E04H17/16 103
   B65G1/00 511B
   F16C11/04 F
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-157202(P2013-157202)
(22)【出願日】2013年7月29日
(65)【公開番号】特開2015-25346(P2015-25346A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2016年5月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】柏原 豊
【審査官】 小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−037094(JP,A)
【文献】 特開昭61−043301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 17/16
B65G 1/00
F16C 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動的に動作する動作部を有する自動機器の前記動作部の動作範囲を仕切る安全柵組立体であって、
網状、または、格子状の第一柵と、
網状、または、格子状の第二柵と、
前記第一柵の端縁と前記第二柵の端縁とが突き合わせ状態で配置される突き合わせ部において、前記第一柵と前記第二柵とにまたがって前記第一柵と前記第二柵とを固定的に連結する第一連結体とを備え、
前記第一連結体の剛性は、前記第一柵、および、前記第二柵の剛性よりも低い
安全柵組立体。
【請求項2】
さらに、
前記第一柵を複数備え、
突き合わせ状態で隣接する前記第一柵を固定的に連結し、前記第一連結体より剛性の高い第二連結体と
を備える請求項1に記載の安全柵組立体。
【請求項3】
さらに、
前記第一柵に対し前記第二柵を回動可能に連結するヒンジ
を備える請求項1または2に記載の安全柵組立体。
【請求項4】
前記第一連結体は、前記第一柵、および、前記第二柵のそれぞれにネジ止めされる
請求項1〜3のいずれか1項に記載の安全柵組立体。
【請求項5】
前記第二柵は、前記第一柵より小さい
請求項1〜4のいずれか1項に記載の安全柵組立体。
【請求項6】
さらに、
前記第一連結体が破壊されたことにより生じた前記第一柵と前記第二柵とのずれを検出し、前記自動機器の前記動作部の動作を停止させる停止情報を発生させるずれ検出手段
を備える請求項1〜5のいずれか1項に記載の安全柵組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、自動機器の動作部から人を保護する安全柵組立体に関し、特に緊急時などにおいては人が通過することのできる通路の形成が可能な安全柵組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ロボットや自動倉庫などの自動機器は、高速で移動する動作部や、低速で移動する比較的重量のある動作部を備える場合がある。これら自動機器の通常の操業時においては、動作部の動作範囲に人が進入しないように動作範囲を仕切って囲うように安全柵が設けられている場合がある。
【0003】
特許文献1には、自動機器の動作範囲を仕切るための安全柵に関する技術が記載されている。特許文献1に記載の安全柵は、軽量でありながら、網の目を細かくして人の腕や指などが安全柵を通過することを防止できる安全柵である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−20847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、安全柵は自動機器の動作範囲を仕切り、動作範囲内への人の不用意な進入を防止するものである。一方、定期的なメンテナンスや突発的な故障が発生した場合などは、動作範囲内、すなわち安全柵で仕切られた範囲内に作業員が立ち入って作業をする場合などがある。しかし、安全柵内で作業員が作業している際に自動機器に何らかの不具合が発生し、作業員が安全柵外へ即座に脱出したい場合もある。また、火災や大規模災害が発生した場合など、消防士などが外部から安全柵を通過して自動機器の動作範囲内に進入しなければならない場合も想定される。
【0006】
本願発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、自動機器の通常稼働時には動作部の動作範囲への人の進入を防止し、緊急時には人が安全に通過する通路を形成することのできる安全柵組立体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本願発明にかかる安全柵組立体は、自動的に動作する動作部を有する自動機器の前記動作部の動作範囲を仕切る安全柵組立体であって、網状、または、格子状の第一柵と、網状、または、格子状の第二柵と、前記第一柵の端縁と前記第二柵の端縁とが突き合わせ状態で配置される突き合わせ部において、前記第一柵と前記第二柵とにまたがって前記第一柵と前記第二柵とを固定的に連結する第一連結体とを備え、前記第一連結体の剛性は、前記第一柵、および、前記第二柵の剛性よりも低いことを特徴としている。
【0008】
さらに、前記第一柵を複数備え、突き合わせ状態で隣接する前記第一柵を固定的に連結し、前記第一連結体より剛性の高い第二連結体とを備えるものでもよい。
【0009】
これによれば、緊急時などにおいて、第二柵に対し人が力を加えれば第一連結体が破壊されて、第一柵に対し第二柵が相対的に移動し、第二柵が設けられていた場所において人が安全柵組立体を通過する通路を形成することが可能となる。しかも、第二柵が網状、または、格子状であるため、第二柵に力を加える前に通過先の状況を視認することができ安全を確認することができる。また、第二柵自体は破壊されないため、安全柵組立体を容易に復旧させることが可能となる。
【0010】
ここで、第一連結体の剛性は、前記第一柵、および、第二柵の剛性よりも低いとは、第一連結体を構成する材質の剛性と第一柵、および、第二柵を構成する材質の剛性とを比較したものではなく、第一柵と第二柵とを第一連結体で固定的に連結した状態において、第一柵に対して第二柵が相対的に移動する方向に第二柵に力を加えた場合に、第一柵、および、第二柵よりも先に第一連結体が破壊する状態を示したものである。「剛性」の文言の意味については、明細書内、および、特許請求の範囲で同様に使用している。
【0011】
さらに、前記第一柵に対し前記第二柵を回動可能に連結するヒンジを備えてもかまわない。
【0012】
これによれば、第二柵に力を加えて第一連結体を破壊した場合、第二柵が第一柵に対して完全に離脱するのではなく、第一柵に第二柵が回動可能に接続された状態で安全柵組立体を通過する通路を形成することができるため、足下に落ちた第二柵が人の脱出の妨げになるような状態を回避することができる。また、安全柵組立体を容易に復旧させることが可能となる。
【0013】
また、前記第一連結体は、前記第一柵、および、前記第二柵のそれぞれにネジ止めされるものが好ましい。
【0014】
これによれば、破壊された第一連結体を第一柵や第二柵から容易に取り外すことができ、安全柵組立体を復旧する際には、容易に第一柵と第二柵とを第一連結体で接続することが可能となる。
【0015】
また、前記第二柵は、前記第一柵より小さいものであることが好ましい。
【0016】
これによれば、安全柵組立体を通過する際において通路を容易に形成することが可能となる。
【0017】
さらに、前記第一連結体が破壊されたことにより生じた前記第一柵と前記第二柵とのずれを検出し、前記自動機器の前記動作部の動作を停止させる停止情報を発生させるずれ検出手段を備えてもかまわない。
【0018】
これによれば、災害発生時などにおいて安全柵組立体に通路を形成しなければならない場合、安全柵組立体を通過する人の安全を確保することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本願発明によれば、自動機器の動作部の動作範囲を仕切る安全柵組立体に、緊急通過用の通路を容易に形成することができる。また、通路を形成する際の安全を視認により確保することができる。また、通路を形成した後、安全柵組立体を容易に復旧することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、安全柵組立体が設置されている工場全体を模式的に示す平面図である。
図2図2は、安全柵組立体を正面から示す正面図である。
図3図3は、第一連結体およびその近傍を正面から示す正面図である。
図4図4は、別態様の安全柵組立体を正面から示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本願発明に係る安全柵組立体の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態は、本願発明に係る安全柵組立体の一例を示したものに過ぎない。従って本願発明は、以下の実施の形態を参考に請求の範囲の文言によって範囲が画定されるものであり、以下の実施の形態のみに限定されるものではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、本発明の課題を達成するのに必ずしも必要ではないが、より好ましい形態を構成するものとして説明される。
【0022】
図1は、安全柵組立体が設置されている工場全体を模式的に示す平面図である。
【0023】
同図に示すように、工場建屋200内には、安全柵組立体101と、自動機器102とが設けられている。また、本実施の形態の場合、自動機器102は、自動倉庫であり、動作部121としてスタッカクレーンを備えている。工場建屋200内には、スタッカクレーンにより移載される荷物を保持する棚201が複数列設置されている。
【0024】
なお本実施の形態の場合、工場建屋200には、緊急避難、または、緊急進入用の扉202が設けられている。
【0025】
自動機器102は、自動的に動作する動作部121を有する機器であり。本実施の形態の場合、自動機器102は、動作部121として、スタッカクレーンを備えている。スタッカクレーンは、床面などに敷設されるレール129に沿って走行する台車(図示せず)と、上下方向に延びた状態で前記台車に取り付けられるマスト122と、マスト122に沿って昇降する昇降台123と、昇降台123と棚201との間で荷物を移載する移載装置124とを備えている。
【0026】
図2は、安全柵組立体を正面から示す正面図である。
【0027】
同図に示すように安全柵組立体101は、自動機器102の動作部121の動作範囲Aを仕切る複数の柵を組み立てて形成した構造物であって、第一柵111と、第二柵112と、第一連結体131とを備えている。また本実施の形態の場合、安全柵組立体101は、第一柵111を複数備え、第二連結体132と、ずれ検出手段133と、ヒンジ134とを備えている。
【0028】
第一柵111は、網状、または、格子状の柵であり、自動機器102の動作範囲Aを他の範囲と仕切る柵である。ここで、網状、または、格子状とは、第一柵111で隔てられた向こう側を視認できる程度に厚さ方向に貫通した貫通部分を多数備えていることを意味し、網や櫛歯に限定されるものではなく、例えばパンチングメタルなども含む意味で用いている。
【0029】
本実施の形態の場合、第一柵111は、第一枠体113に金属製の網が取り付けられたものであり、床面Fに固定的に設置されている。
【0030】
また本実施の形態の場合、安全柵組立体101は、連結された複数の第一柵111により主たる部分が形成されている。
【0031】
第二柵112は、網状、または、格子状の柵であり、通常の操業時などにおいては自動機器102の動作範囲Aを他の範囲と仕切る柵である。また、緊急時などにおいては、第一柵111に対して相対的に移動し、安全柵組立体101を通過するための通路を安全柵組立体101に形成するための柵である。本実施の形態の場合、第二柵112は、第一柵111より小さく、人一人がくぐり抜けることができる程度の大きさになっている。
【0032】
本実施の形態の場合、第二柵112は、第二枠体114に金属製の網が取り付けられたものであり、床面Fには直接設置されず、ヒンジ134によって第一柵111に回動可能に取り付けられている。
【0033】
図3は、第一連結体およびその近傍を正面から示す正面図である。
【0034】
第一連結体131は、第一柵111の端縁と第二柵112の端縁とが突き合わせ状態で配置される突き合わせ部Bにおいて、第一柵111と第二柵112とにまたがって第一柵111と第二柵112とを固定的に連結する部材である。また、第一連結体131の剛性は、第一柵111、および、第二柵112の剛性よりも低く、第一柵111に対し第二柵112を相対的に移動させようとして人が第二柵112に力を加えた場合、第一柵111、および、第二柵112は破壊されることなく第一連結体131が破損する程度の剛性を第一連結体131は備えている。
【0035】
本実施の形態の場合、第一連結体131は、板状の部材であり、第一柵111、および、第二柵112のそれぞれにネジ止めされている。具体的に第一連結体131は、左右方向(図中Y軸方向)においてヒンジ134が取り付けられている部分の反対側において、第一柵111の第一枠体113に設けられたネジ穴に直接ボルトをねじ込むことにより左右方向(図中Y事項方向)の一端部が締結され、第二柵112の第二枠体114に設けられたネジ穴に直接ボルト135をねじ込むことにより左右方向(図中Y事項方向)の他端部が締結されている。なお、締結方法は特に限定されるものではなく、第一柵111や第二柵112に設けられた貫通孔にボルトを刺し通し、ナットによって締結してもかまわない。
【0036】
また、第一連結体131は、厚さ方向に貫通した肉抜き部136を備えており、第一連結体131の剛性を調整して、選択的に破損する部分を形成している。
【0037】
第二連結体132は、突き合わせ状態で隣接する第一柵111どうしを固定的に連結する部材であり、第一連結体131より剛性の高い部材である。つまり、安全柵組立体101に通過用の通路を形成する際、第二柵112を押した場合に、第二連結体132が破損する前に、第一連結体131が破損する剛性を第一連結体131は備えている。
【0038】
ずれ検出手段133は、第一連結体131が破壊されたことにより生じた第一柵111と第二柵112とのずれを検出し、自動機器102の動作部121の動作を停止させる停止情報を電気的に発生させる装置である。
【0039】
なお、ずれ検出手段133から送信された停止情報に基づき、工場建屋200内の全ての自動機器102の動作部121を停止させてもよく、ずれ検出手段133が取り付けられた第二柵112が開放されることによって、人の進入が可能となる動作範囲Aに対応する動作部121のみを停止させるものでもよい。
【0040】
以上の安全柵組立体101によれば、緊急時などに人が安全柵組立体101を通過した場合、第二柵112に力を加えれば第一連結体131が破壊されて、第二柵112が開放され、安全柵組立体101を通過する通路を形成することが可能となる。また通路を形成する際において、第二柵112を通して向こう側を視認することができるため、安全を確認しつつ通路を形成することが可能となる。また、第二柵112自体は破壊されず、ヒンジ134により第一柵111に取り付けられているため、通路を形成した後であっても容易に安全柵組立体101を復旧させることが可能となる。
【0041】
なお、本願発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、本明細書において記載した構成要素を任意に組み合わせて、また、構成要素のいくつかを除外して実現される別の実施の形態を本願発明の実施の形態としてもよい。また、上記実施の形態に対して本願発明の主旨、すなわち、請求の範囲に記載される文言が示す意味を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例も本願発明に含まれる。
【0042】
例えば図4に示すように、第二柵112は、第一柵111に対して第一連結体131のみにより固定されていてもかまわない。また、第二柵112は、異なる第一柵111にそれぞれ連結されていてもかまわない。
【0043】
また、第二柵112が第二枠体114と網とで形成され、網が可撓性を備えている場合、網を押しても第一連結体131が破壊できない状態を回避するため、第二枠体114に架橋状に取り付けられる可撓性の低い桟部材115を設けてもかまわない。また、桟部材115を手で押しやすい部分や足で蹴りやすい部分に設けることで、手や足で加えた力が桟部材115、および、第二枠体114を介して第一連結体131に届くため、第一連結体131を思い通りに破壊することが可能となる。
【0044】
また、第一柵111と第二柵112との網の目の並びや網の目の粗さを異なるものとしてもかまわない。これによれば、第二柵112の位置を容易に視認することができ、安全柵組立体101において通過可能な場所を容易に見つけることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本願発明は、スタッカクレーンや走行車システムなど動作部を備える自動機器が設置される工場などに利用可能である。
【符号の説明】
【0046】
101 安全柵組立体
102 自動機器
111 第一柵
112 第二柵
113 第一枠体
114 第二枠体
115 桟部材
121 動作部
122 マスト
123 昇降台
124 移載装置
129 レール
131 第一連結体
132 第二連結体
133 ずれ検出手段
134 ヒンジ
135 ボルト
136 肉抜き部
200 工場建屋
201 棚
202 扉
図1
図2
図3
図4