(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱可塑性樹脂として、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリアミド樹脂、およびポリエーテルイミド樹脂から選択される少なくとも1種類を含む請求項1に記載の管状の押出し成形体。
請求項1または請求項2に記載の管状の押出し成形体と、前記管状の押出し成形体を張力がかかった状態で掛け渡す複数のロールと、を備え、画像形成装置に脱着される管状成形体ユニット。
熱可塑性樹脂、前記熱可塑性樹脂100質量部に対する量が18質量部以上30質量部以下であるpH8以上のカーボンブラック、並びにステアリン酸カリウムおよびステアリン酸ナトリウムから選択される少なくとも一種を溶融混練して混練物を得る溶融混練工程と、
前記混練物を押出成形にて管状に成形する押出し成形工程と、
を備える管状の押出し成形体の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、表面での破泡痕の発生が抑制された管状の押出し成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
熱可塑性樹脂と、
前記熱可塑性樹脂100質量部に対する量が18質量部以上30質量部以下である、pH8以上のカーボンブラックと、
ステアリン酸カリウムおよびステアリン酸ナトリウムから選択される少なくとも一種と、
を含む管状の押出し成形体である。
【0008】
請求項2に係る発明は、
前記熱可塑性樹脂として、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリアミド樹脂、およびポリエーテルイミド樹脂から選択される少なくとも1種類を含む請求項1に記載の管状の押出し成形体である。
【0009】
請求項3に係る発明は、
請求項1または請求項2に記載の管状の押出し成形体と、前記管状の押出し成形体を張力がかかった状態で掛け渡す複数のロールと、を備え、画像形成装置に脱着される管状成形体ユニットである。
【0010】
請求項4に係る発明は、
請求項1または請求項2に記載の管状の押出し成形体からなる中間転写体である。
【0011】
請求項5に係る発明は、
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、
前記像保持体の表面の潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記像保持体の表面に形成された前記トナー像が転写される、請求項4に記載の中間転写体と、
前記像保持体の表面に形成された前記トナー像を前記中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、
前記中間転写体の表面に転写された前記トナー像を記録媒体に二次転写する二次転写手段と、
を備える画像形成装置である。
【0012】
請求項6に係る発明は、
請求項4に記載の中間転写体と、
像保持体、前記像保持体の表面を帯電する帯電手段、帯電した前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段、前記像保持体の表面の潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段、前記像保持体の表面に形成された前記トナー像を前記中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段、前記中間転写体の表面に転写された前記トナー像を記録媒体に二次転写する二次転写手段、前記トナー像が二次転写された後の前記中間転写体の表面を清掃する清掃手段、および前記記録媒体に転写された前記トナー像を定着する定着手段から選択される少なくとも1種と、
を備え、画像形成装置に脱着されるプロセスカートリッジである。
【0013】
請求項7に係る発明は、
熱可塑性樹脂、前記熱可塑性樹脂100質量部に対する量が18質量部以上30質量部以下であるpH8以上のカーボンブラック、並びにステアリン酸カリウムおよびステアリン酸ナトリウムから選択される少なくとも一種を溶融混練して混練物を得る溶融混練工程と、
前記混練物を押出成形にて管状に成形する押出し成形工程と、
を備える管状の押出し成形体の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、ステアリン酸カリウムおよびステアリン酸ナトリウムから選択される少なくとも一種を含有しない場合に比べ、表面での破泡痕の発生が抑制された管状の押出し成形体を提供し得る。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、ステアリン酸カリウムおよびステアリン酸ナトリウムから選択される少なくとも一種を含有しない場合に比べ、熱可塑性樹脂として前記の樹脂を含む場合であっても、表面での破泡痕の発生が抑制された管状の押出し成形体を提供し得る。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、ステアリン酸カリウムおよびステアリン酸ナトリウムから選択される少なくとも一種を含有する管状の押出し成形体を備えない場合に比べ、表面での破泡痕の発生が抑制された管状の押出し成形体を備える管状成形体ユニットを提供し得る。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、ステアリン酸カリウムおよびステアリン酸ナトリウムから選択される少なくとも一種を含有する管状の押出し成形体からなるものでない場合に比べ、表面での破泡痕の発生が抑制された中間転写体を提供し得る。
【0018】
請求項5に係る発明によれば、中間転写体として、ステアリン酸カリウムおよびステアリン酸ナトリウムから選択される少なくとも一種を含有する管状の押出し成形体を備えない場合に比べ、優れた画像を形成し得る画像形成装置を提供し得る。
【0019】
請求項6に係る発明によれば、中間転写体として、ステアリン酸カリウムおよびステアリン酸ナトリウムから選択される少なくとも一種を含有する管状の押出し成形体を備えない場合に比べ、優れた画像を形成し得るプロセスカートリッジを提供し得る。
【0020】
請求項7に係る発明によれば、溶融混練工程においてステアリン酸カリウムおよびステアリン酸ナトリウムから選択される少なくとも一種を添加しない場合に比べ、表面での破泡痕の発生を抑制し得る管状の押出し成形体の製造方法を提供し得る。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0023】
[管状の押出し成形体]
本実施形態に係る管状の押出し成形体(以下単に「管状体」とも称す)は、熱可塑性樹脂と、前記熱可塑性樹脂100質量部に対する量が18質量部以上30質量部以下であるpH8以上のカーボンブラックと、ステアリン酸カリウムおよびステアリン酸ナトリウムから選択される少なくとも一種と、を含む。この管状体は、押出成型にて成形されてなる。
【0024】
熱可塑性樹脂を含む管状体の抵抗率を求められる範囲に制御する為にカーボンブラックを分散した系では、上記抵抗率の低下を効果的に抑制する観点で、カーボンブラックを前記熱可塑性樹脂100質量部に対して18質量部以上と多量に添加することがある。しかし、カーボンブラックを上記の通り多量に添加する為に、管状体を押出し成形する際に、管状体表面に破泡痕が発生することがある。
尚、この破泡痕の発生は押出し成形の際の成形温度が高いほど(例えば最高温度部が280℃以上)、顕著に発生する。
【0025】
これに対し、本実施形態に係る管状体は、滑剤としてステアリン酸カリウムおよびステアリン酸ナトリウムから選択される少なくとも一種を含むことにより、表面における破泡痕が効果的に抑制される。
これは、必ずしも明確ではないものの、カーボンブラックを上記の通り多量に添加した場合、混練物の粘度が上昇して押出し成形の際に空気の巻き込みが発生し、巻き込まれた空気が破裂することで破泡痕が発生するものと考えられる。一方、本実施形態では、滑剤の中でも特にステアリン酸カリウムおよびステアリン酸ナトリウムの少なくとも一方を含むことで、押出し成形の際に混練物の噛み込みが抑制され、また混練物のパッキングによる脱気効果により、空気の巻き込みが低減され、その結果破泡痕の発生が抑制されるものと推測される。
【0026】
次いで、本実施形態に係る管状体を構成する構成材料や、管状体の特性等について説明する。
【0027】
本実施形態に係る管状体は、熱可塑性樹脂とカーボンブラックとステアリン酸カリウムおよびステアリン酸ナトリウムから選択される少なくとも一種とを含み、その他の添加剤を含んでもよい。また、熱可塑性樹脂とカーボンブラックとステアリン酸カリウムおよびステアリン酸ナトリウムから選択される少なくとも一種とを含む層を有していればよく、該層とその他の層とを積層した積層体であってもよい。
【0028】
−熱可塑性樹脂−
熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではなく管状体に用いられる一般的な熱可塑性樹脂を用い得る。例えば、ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリサルフォン(PES)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、液晶ポリマー(LCP)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリカーボネート(PC)等が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、上記のものを1種のみ用いても2種以上併用してもよい。
【0029】
尚、管状体を作製する際に発生する破泡痕は、管状体を押出し成形する際にかけられる温度が高温である(例えば最高温度部が280℃以上)ほど顕著となる傾向にある。そのため、熱可塑性樹脂として溶融温度が高い樹脂を用いるほど、管状体を押出し成形する際にかけるべき温度も高くなることから、破泡痕の発生が顕著となる。
従って、熱可塑性樹脂として溶融温度が高い樹脂を用いるほど、本実施形態による破泡痕の抑制効果も、より顕著となる。
【0030】
破泡の抑制効果の観点から、熱可塑性樹脂としては、溶融温度が250℃以上のものが好ましく、300℃以上がより好ましく、330℃以上が更に好ましい。
但し、ステアリン酸カリウムとステアリン酸ナトリウムの分解との観点から熱可塑性樹脂における溶融温度の上限は400℃以下のものが好ましく、380℃以下がより好ましく、370℃以下が更に好ましい。
【0031】
尚、上記溶融温度とは、熱可塑性樹脂の粘度が10000Pa・s以下になる温度を表し、下記の方法によって測定される。
つまり上記溶融温度は、キャピラリーレオメーターにより、溶融樹脂がキャピラリーを通して流出するときの、せん断速度、せん断応力を検出し溶融粘度を測定する際の加熱温度により測定される。
【0032】
前述した熱可塑性樹脂の中でも、上記溶融温度がより高いとの観点からポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS)、ポリアミド樹脂(PA)、およびポリエーテルイミド樹脂(PEI)から選択される少なくとも1種類を含むことがより好ましく、熱可塑性樹脂としてPPS、PA、PEI以外の樹脂を含まないことが更に好ましい。
尚、管状体における熱可塑性樹脂としてPPS、PAおよびPEIを用いることは、破断などの耐久性の点で好ましい。
【0033】
・ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS)
ポリフェニレンスルフィド樹脂としては、例えば、ジクロロベンゼンと硫化ナトリウムとを単量体として重合させる方法、すなわちポリフェニレンスルフィド樹脂の一般的な合成方法であるフィリップス・ぺトローリアム法で得られる下記式(1)で表される繰り返し構造単位を含む重合体が挙げられる。
【0035】
未架橋のポリフェニレンスルフィド樹脂は、架橋されていない一次元の分子鎖を有する樹脂であり、靭性および伸縮性に優れた樹脂である。
また、ポリフェニレンスルフィド樹脂として架橋構造を有する樹脂を用いてもよく、具体的には、同一の分子鎖内または異なる分子鎖間、並びに同一の分子鎖内および異なる分子鎖間に、例えば、単結合、エーテル結合を介して架橋されているポリフェニレンスルフィド樹脂の架橋構造が挙げられる。例えば、エーテル結合で架橋したポリフェニレンスルフィド樹脂の架橋構造(下記式(2)の構造)や、単結合で架橋したポリフェニレンスルフィド樹脂の架橋構造(下記式(3)の構造)を有する物が挙げられる。
【0038】
ポリフェニレンスルフィド樹脂の市販品としては、例えば、東レ社のE2080、E2880、T1881、M3910、M2900、ポリポラスチック社の0220C9、DIC社のFZ2100等が挙げられる。
【0039】
・ポリアミド樹脂(PA)
ポリアミド樹脂としては、特に制限はないが、ポリアミド樹脂ハンドブック,福本修,8400(日刊工業新聞社)に記述のポリアミド樹脂が挙げられる。
ポリアミド樹脂としては、例えば、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6,6、ナイロン6,10、これらのナイロンをアルコキシアルキル化したN−アルコキシアルキル化ナイロン、これらのナイロンのうち少なくとも2つの共重合体である共重合ナイロンなどのポリアミド樹脂が挙げられる。
【0040】
ポリアミド樹脂の市販品としては、例えば、東レ社のCM1056、CM1021FS、ダイセル・エボニック社のダイアミド等が挙げられる。
【0041】
・ポリエーテルイミド樹脂(PEI)
ポリエーテルイミド樹脂は、エーテル結合とイミド結合によってつながった樹脂である。
【0042】
ポリエーテルイミド樹脂の市販品としては、例えば、サビック社のウルテム1000、1000P等が挙げられる。
【0043】
−カーボンブラック−
本実施形態では、カーボンブラックとして、pH8以上のカーボンブラックを用いる。pHが8以上であることにより、押出し成形の際の空気の巻き込みに起因する破泡痕の発生が、より効果的に抑制される。
尚、カーボンブラックのpHは更に8.3以上がより好ましく、8.5以上が更に好ましい。一方、pHの上限値としては、特に限定されるものではないが10以下がより好ましい。
【0044】
カーボンブラックのpHは、以下の方法により測定される。即ち、カーボンブラックと純水の混合液を準備し、ガラス電極pHメーターにより測定する。
【0045】
尚、管状体中に含まれるカーボンブラックの場合は、まずカーボンブラックを管状体から取り出す。カーボンブラックを取り出す方法としては、例えば熱可塑性樹脂を溶解しカーボンブラックを溶解しない溶剤により管状体を溶解してカーボンブラックを取り出す方法が挙げられる。尚、熱可塑性樹脂を溶解させる際、加熱した溶剤を用いてもよい。
前記溶剤としては、特に限定されるものではないが、例えば熱可塑性樹脂としてポリフェニレンスルフィド(PPS)を溶解する溶剤としては、1−クロロナフタレン等が挙げられる。
ポリアミド(PA)を溶解する溶剤としては、フェノール、クレゾール類等が挙げられる。
ポリエーテルイミド(PEI)を溶解する溶剤としては、ハロゲン化炭化水素、ケトン系溶剤、アミン系溶剤等が挙げられる。
【0046】
次いで、管状体から取り出したカーボンブラックについて、前述の方法により測定が行われる。
【0047】
カーボンブラックとしては、例えば、ケッチェンブラック、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック等が挙げられる。カーボンブラックとしては、これらの中から1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、pHを前記範囲に制御する観点から、表面酸価処理されていないカーボンブラックがより好ましい。
【0048】
カーボンブラックの平均粒径は13nm以上25nm以下が好ましく、更には13nm以上20nm以下がより好ましい。
カーボンブラックの平均一次粒径は、次の方法により測定される。まず、管状体をミクロトームにより切断して100nmの厚さの測定サンプルを採取し、該測定サンプルをTEM(透過型電子顕微鏡)により観察する。カーボンブラックの粒子50個の各々の投影面積に等しい円の直径を粒径とし、その平均値を平均一次粒径とする。
【0049】
カーボンブラックの配合量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して18質量部以上30質量部以下であり、更には18質量部以上25質量部以下がより好ましく、18質量部以上22質量部以下が更に好ましい。
カーボンブラックの配合量が上記下限値未満であると、経時において管状体における抵抗率の低下が発生する。一方、上記上限値を超えると、管状体が脆くなり、破断や端部の裂けが発生し、使用が困難になるなどの欠点がある。
【0050】
また、本実施形態にかかる管状体には、カーボンブラック以外の導電剤を併用してもよい。但し、含有される導電剤中においてカーボンブラックが占める割合が50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上がより好ましく、導電剤としてカーボンブラックのみを含有することが更に好ましい。
【0051】
導電剤としては、例えば、アルミニウム、ニッケル等の金属;酸化イットリウム、酸化スズ等の金属酸化物;チタン酸カリウム、塩化カリウム等のイオン導電性物質;ポリアニリン、ポリピロール、ポリサルフォン、ポリアセチレン等の導電性高分子等が挙げられる。
尚、導電剤とは、添加することで本実施形態に係る管状体に目的とする導電性を付与し得る物質を指す。
【0052】
−滑剤−
本実施形態にかかる管状体には、滑剤として少なくともステアリン酸カリウムおよびステアリン酸ナトリウムから選択される少なくとも一種が含まれる。
【0053】
ステアリン酸カリウムおよびステアリン酸ナトリウムの総添加量としては、熱可塑性樹脂100質量部に対して0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、更には0.05質量%以上4質量%以下がより好ましく、0.5質量%以上3質量%以下が更に好ましい。
上記添加量が上記下限値以上であると、破泡痕の抑制が見込まれる。一方、上記添加量が上記上限値以下であると、押出し成形機での混練時の樹脂圧が均一となりやすく、押出し樹脂の脈動が抑えられる。
【0054】
また、本実施形態にかかる管状体には、ステアリン酸カリウムおよびステアリン酸ナトリウム以外の滑剤を併用してもよい。但し、含有される滑剤中においてステアリン酸カリウムおよびステアリン酸ナトリウムが占める割合が50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上がより好ましく、滑剤としてステアリン酸カリウムおよびステアリン酸ナトリウムのみを含有することが更に好ましい。
【0055】
滑剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ベヘン酸ナトリウム、ベヘン酸カルシウム、モンタン酸カルシム、モンタン酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ステアリン酸アミド等が挙げられる。
【0056】
−その他添加剤−
その他添加剤としては、例えば、管状体の熱劣化を防止するための酸化防止剤や、流動性を向上させるための界面活性剤、耐熱老化防止剤等、特に画像形成装置の無端ベルトに配合される周知の添加剤が挙げられる。
【0057】
−物性−
次に、本実施形態に係る管状体の物性について説明する。
本実施形態に係る管状体は、常温常湿(温度22℃、湿度55RH%)環境下で、電圧100Vを印加して測定したときの表面抵抗率が9logΩ/□以上12Ω/□以下であることがよい。
なお、上記表面抵抗率は、常温常湿(温度22℃、湿度55RH%)環境下で、電圧100Vを印加して測定したときの測定値である。
【0058】
本実施形態に係る管状体は、常温常湿(温度22℃、湿度55RH%)環境下で電圧100Vを印加して測定したときの表面抵抗率と、常温常湿(温度22℃、湿度55RH%)環境下で電圧1000Vを印加して測定したときの表面抵抗率と、の差が1.0logΩ/□以下であることがよい。
本実施形態に係る管状体は、低温低湿(温度10℃、湿度10RH%)環境下で電圧100Vを印加して測定したときの表面抵抗率と、高温高湿(温度30℃、湿度85RH%)環境下で電圧100Vを印加して測定したときの表面抵抗率と、の差が1.0logΩ/□以下であることがよい。
【0059】
ここで、表面抵抗率は、JIS−K−6911(1995年)に準じて、円形電極(三菱油化(株)製ハイレスターIPのURプローブ:円柱状電極の外径Φ16mm、リング状電極部の内径Φ30mm、外径Φ40mm)を用い、測定対象物を絶縁板の上に置き、目的とする環境下で、目的とする電圧を印加し、印加後5sec後の外径から内径に流れる電流値をアドバンテスト製、微小電流計 R8340Aを用いることにより測定し、その電流値より得た表面抵抗値から求められる。
【0060】
−製造方法−
本実施形態に係る管状体の製造方法は、熱可塑性樹脂、前記熱可塑性樹脂100質量部に対する量が18質量部以上30質量部以下であるpH8以上のカーボンブラック、並びにステアリン酸カリウムおよびステアリン酸ナトリウムから選択される少なくとも一種を溶融混練して混練物を得る溶融混練工程と、前記混練物を押出成形にて管状に成形する押出し成形工程と、を備える。
【0061】
以下、本実施形態に係る管状体の製造方法について説明する。
まず、熱可塑性樹脂と、前記要件を満たす前記量のカーボンブラックと、ステアリン酸カリウムおよびステアリン酸ナトリウムから選択される少なくとも一種と、更に必要に応じて他の添加剤と、をそれぞれ目的とする配合量で溶融混練して混練物を得、その後押出成形機を用いて管状(円筒状)に押し出し、冷却固化させることで管状の成形体が得られる。そして、得られた管状の成形体を目的とする幅に切断して管状体を得る。
【0062】
本実施形態に係る管状体は、例えば、画像形成装置用のベルト(具体的には、中間転写ベルト、記録媒体搬送ベルト、定着ベルトの基材、トナー定着後の記録媒体を冷却する冷却ベルト)等に適用され得る。
【0063】
(管状成形体ユニット)
図1は、本実施形態に係る管状成形体ユニットを示す概略斜視図である。
本実施形態に係る管状成形体ユニット130は、
図1に示すように、上記本実施形態に係る管状体10を備えており、例えば、管状体10は対向して配置された駆動ロール131および従動ロール132により張力がかかった状態で掛け渡されている(以下「張架」という場合がある)。
ここで、本実施形態に係る管状成形体ユニット130は、管状体10を中間転写体として適用させる場合、管状体10を張架するロールとして、感光体(像保持体)表面のトナー像を管状体10上に1次転写させるためのロールと、管状体10上に転写されたトナー像をさらに記録媒体に2次転写させるためのロールが配置されていてもよい。
なお、管状体10を張架するロールの数は限定されず、使用態様に応じて配置すればよい。このような構成の管状成形体ユニット130は、装置に組み込まれて使用され、駆動ロール131、従動ロール132の回転に伴って管状体10も張架した状態で回転する。
【0064】
(画像形成装置)
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、像保持体表面を帯電する帯電手段と、像保持体表面に潜像を形成する潜像形成手段と、潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、を有し、転写手段が、上記本実施形態に係る管状体を備えるものである。
具体的には、本実施形態に係る画像形成装置は、例えば、転写手段が中間転写体と、像保持体に形成されたトナー像を中間転写体に一次転写する一次転写手段と、中間転写体に転写されたトナー像を記録媒体に二次転写する二次転写手段と、を備え、当該中間転写体として上記本実施形態に係る管状体を備える構成が挙げられる。
【0065】
また、本実施形態に係る画像形成装置は、例えば、転写手段が記録媒体を搬送するための搬送転写体(搬送転写ベルト)と像保持体に形成されたトナー像を用紙転写体により搬送された記録媒体に転写するための転写手段とを備え、当該記録媒体転写体として上記本実施形態に係る管状体を備える構成が挙げられる。
【0066】
本実施形態に係る画像形成装置は、例えば、現像装置内に単色のトナーのみを収容する通常のモノカラー画像形成装置、像保持体上に保持されたトナー像を中間転写体に順次一次転写を繰り返すカラー画像形成装置、各色毎の現像器を備えた複数の像保持体を中間転写体上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置が挙げられる。
【0067】
以下、本実施形態に係る画像形成装置を、図面を参照しつつ説明する。
図2は、実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【0068】
本実施形態に係る画像形成装置100は、
図2に示すように、例えば、いわゆるタンデム方式であり、電子写真感光体からなる4つの像保持体101a〜101dの周囲に、その回転方向に沿って順次、帯電装置102a〜102d、露光装置114a〜114d、現像装置103a〜103d、一次転写装置(一次転写ロール)105a〜105d、像保持体クリーニング装置104a〜104dが配置されている。尚、転写後の像保持体101a〜101dの表面に残留している残留電位を除去するために除電器を備えていてもよい。
【0069】
中間転写ベルト107が、支持ロール106a〜106d、駆動ロール111および対向ロール108により張力を付与しつつ支持され、管状成形体ユニット107bを形成している。これらの支持ロール106a〜106d、駆動ロール111および対向ロール108により、中間転写ベルト107は、各像保持体101a〜101dの表面に接触しながら各像保持体101a〜101dと一次転写ロール105a〜105dとを矢印Aの方向に移動し得る。一次転写ロール105a〜105dが中間転写ベルト107を介して像保持体101a〜101dに接触する部位が一次転写部となり、像保持体101a〜101dと一次転写ロール105a〜105dとの接触部には一次転写電圧が印加される。
【0070】
二次転写装置として、中間転写ベルト107および二次転写ベルト116を介して対向ロール108と二次転写ロール109が対向配置されている。紙等の記録媒体115が中間転写ベルト107の表面に接触しながら中間転写ベルト107と二次転写ロール109とで挟まれる領域を矢印Bの方向に移動し、その後、定着装置110を通過する。二次転写ロール109が中間転写ベルト107および二次転写ベルト116を介して対向ロール108に接触する部位が二次転写部となり、二次転写ロール109と対向ロール108との接触部には二次転写電圧が印加される。更に、転写後の中間転写ベルト107と接触するように、中間転写ベルトクリーニング装置112および113が配置されている。
【0071】
この構成の多色画像形成装置100では、像保持体101aが矢印Cの方向に回転するとともに、その表面が帯電装置102aによって帯電された後、レーザー光等の露光装置114aにより第1色目の静電潜像が形成される。形成された静電潜像はその色に対応するトナーを収容した現像装置103aにより、トナーで現像(顕像化)されてトナー像が形成される。なお、現像装置103a〜103dには、各色の静電潜像に対応するトナー(例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)がそれぞれ収容されている。
【0072】
像保持体101a上に形成されたトナー像は、一次転写部を通過する際に、一次転写ロール105aによって中間転写ベルト107上に静電的に転写(一次転写)される。以降、第1色目のトナー像を保持した中間転写ベルト107上に、一次転写ロール105b〜105dによって、第2色目、第3色目、第4色目のトナー像が順次重ね合わせられるよう一次転写され、最終的に多色の多重トナー像が得られる。
【0073】
中間転写ベルト107上に形成された多重トナー像は、二次転写部を通過する際に、記録媒体115に静電的に一括転写される。トナー像が転写された記録媒体115は、定着装置110に搬送され、加熱および加圧、または加熱若しくは加圧により定着処理された後、機外に排出される。
【0074】
一次転写後の像保持体101a〜101dは、像保持体クリーニング装置104a〜104dにより残留トナーが除去される。一方、二次転写後の中間転写ベルト107は、中間転写ベルトクリーニング装置112および113により残留トナーが除去され、次の画像形成プロセスに備える。
【0075】
−像保持体−
像保持体101a〜101dとしては、公知の電子写真感光体が広く適用される。電子写真感光体としては、感光層が無機材料で構成される無機感光体や、感光層が有機材料で構成される有機感光体などが用いられる。有機感光体においては、露光により電荷を発生する電荷発生層と、電荷を輸送する電荷輸送層を積層する機能分離型有機感光体や、電荷を発生する機能と電荷を輸送する機能を果たす単層型有機感光体が好適に用いられる。また、無機感光体においては、感光層がアモルファスシリコンにより構成されているものが、好適に用いられる。
【0076】
また、像保持体の形状には特に限定はなく、例えば、円筒ドラム状、シート状またはプレート状等、公知の形状が採用される。
【0077】
−帯電装置−
帯電装置102a〜102dとしては、特に制限はなく、例えば、導電性(ここで、帯電装置における「導電性」とは例えば体積抵抗率が10
7Ω・cm未満を意味する。)または半導電性(ここで、帯電装置における「半導電性」とは例えば体積抵抗率が10
7乃至10
13Ωcmを意味する。)のローラ、ブラシ、フィルム、またはゴムブレード等を用いた接触型帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器など、公知の帯電器が広く適用される。これらの中でも接触型帯電器が望ましい。
【0078】
帯電装置102a〜102dは、像保持体101a〜101dに対し、通常、直流電流を印加するが、交流電流を更に重畳させて印加してもよい。
【0079】
−露光装置−
露光装置114a〜114dとしては、特に制限はなく、例えば、像保持体101a〜101dの表面に、半導体レーザー光、LED(Light Emitting Diode、発光ダイオード)光、または液晶シャッタ光等の光源、或いはこれらの光源からポリゴンミラーを介して定められた像様に露光し得る光学系機器など、公知の露光装置が広く適用される。
【0080】
−現像装置−
現像装置103a〜103dとしては、目的に応じて選択され。例えば、一成分系現像剤または二成分系現像剤をブラシ、またはローラ等を用い接触或いは非接触させて現像する公知の現像器などが挙げられる。
【0081】
−一次転写ロール−
一次転写ロール105a〜105dは単層或いは多層のいずれでもよい。例えば、単層構造の場合は、発泡または無発泡のシリコーンゴム、ウレタンゴム、またはEPDM等にカーボンブラック等の導電性粒子が適量配合されたロールで構成される。
【0082】
−像保持体クリーニング装置−
像保持体クリーニング装置104a〜104dは、一次転写工程後の像保持体101a〜101dの表面に付着する残存トナーを除去するためのものであり、クリーニングブレードの他、ブラシクリーニング、またはロールクリーニング等が用いられる。これらの中でもクリーニングブレードを用いることが望ましい。また、クリーニングブレードの材質としてはウレタンゴム、ネオプレンゴム、またはシリコーンゴム等が挙げられる。
【0083】
−二次転写ロール−
二次転写ロール109の層構造は、特に限定されるものではないが、例えば、三層構造の場合、コア層と中間層とその表面を被覆するコーティング層により構成される。コア層は導電性粒子を分散したシリコーンゴム、ウレタンゴム、またはEPDM等の発泡体で、中間層はこれらの無発泡体で構成される。コーティング層の材料としては、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、またはパーフルオロアルコキシ樹脂などが挙げられる。二次転写ロール109の体積抵抗率は10
7Ωcm以下であることが望ましい。また、中間層を除いた2層構造としてもよい。
【0084】
−対向ロール−
対向ロール108は、二次転写ロール109の対向電極を形成する。対向ロール108の層構造は、単層或いは多層のいずれでもよい。例えば単層構造の場合は、シリコーンゴム、ウレタンゴム、またはEPDM等にカーボンブラック等の導電性粒子が適量配合されたロールで構成される。二層構造の場合は、上記のゴム材料で構成される弾性層の外周面を高抵抗層で被覆したロールから構成される。
【0085】
対向ロール108と二次転写ロール109のシャフトとには、通常1kV以上6kV以下の電圧が印加される。対向ロール108のシャフトへの電圧印加に代えて、対向ロール108に接触させた電気良導性の電極部材と二次転写ロール109とに電圧を印加してもよい。上記電極部材としては、金属ロール、導電性ゴムロール、導電性ブラシ、金属プレート、または導電性樹脂プレート等が挙げられる。
【0086】
−定着装置−
定着装置110としては、例えば、熱ローラ定着器、加圧ローラ定着器、またはフラッシュ定着器など公知の定着器が広く適用される。
【0087】
−中間転写ベルトクリーニング装置−
中間転写ベルトクリーニング装置112および113としては、クリーニングブレードの他、ブラシクリーニング、またはロールクリーニング等が用いられる、これらの中でもクリーニングブレードを用いることが望ましい。また、クリーニングブレードの材質としてはウレタンゴム、ネオプレンゴム、またはシリコーンゴム等が挙げられる。
【実施例】
【0088】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0089】
〈実施例1〉
・溶融混練
熱可塑性樹脂としてPPS樹脂(T1881(東レ社製))100質量部、そして樹脂100質量部に対してカーボンブラックとして「Printex alpha(オリオンエンジニアードカーボン社製)、pHが9.7」29質量部、ステアリン酸Na0.3質量部を準備した。
二軸押出溶融混練機(L/D60(パーカーコーポレーション社製))を用い、溶融させたPPS樹脂中にカーボンブラックおよびステアリン酸ナトリウム(ステアリン酸Na)を上記量配合し溶融混練し、混練された溶融物を水槽中に入れて冷却固化、定められたサイズにカットし、混合樹脂ペレットを得た。
【0090】
・押出し成形
得られたペレットを一軸溶融押出機(L/D24、溶融押出装置(池貝製))に投入(加熱温度350℃)し、300℃に設定した金型ダイとニップルの間隙から溶融押出しながら、溶融樹脂の内周面に円筒状のインナーサイジングダイの外面を接触させて冷却し、その後定められた幅に切断し、平均膜厚100μmの管状ベルトを得た。
【0091】
《カーボンブラックのpH》
カーボンブラックのpHを、樹脂に混練する前にカーボンブラックと純水の混合液をガラス電極pHメーターで測定した。
【0092】
《押出し成形体の表面状態観察》
得られた管状ベルトの破泡痕を目視にて観察し、10cm角内の個数を目視計測した。評価基準は以下の通りである。
A:破泡痕欠陥なし(個数0)
B:破泡痕発生(個数1以上、10以下)
C:破泡痕発生(個数10を超える)
【0093】
《表面抵抗率維持性》
得られた管状ベルトを中間転写体として富士ゼロックス社製のDocuPrint CP200Wに組み込み、10℃15%RHの低温低湿環境下において、ハーフトーン(マゼンタ濃度30%)の画像をA5縦用紙に連続して3000枚出力した。このときの2次転写電圧は5.6kVとした。この3000枚出力前後における管状ベルトの表面抵抗率を測定し、出力前の表面抵抗率の常用対数値と出力後の表面抵抗率の常用対数値の差を求めた。
この差を表面抵抗維持性として評価した。表面抵抗維持性としての表面抵抗率の変化は、望ましくは0.3未満である。
A:表面抵抗率の常用対数値の差が0.3未満
B:表面抵抗率の常用対数値の差が0.3以上
【0094】
〈実施例2〉
実施例1においてカーボンブラックとして「Printex P(オリオンエンジニアードカーボン社製)、pH10」を22質量部、熱可塑性樹脂としてポリエーテルイミド樹脂であるウルテム1000(サビック社製)を用い、ステアリン酸Na0.2質量部とステアリン酸K0.2質量部を添加した以外は、同様の手順により管状体を得た。
【0095】
(実施例3)
実施例1においてカーボンブラックを20質量部にし、熱可塑性樹脂としてナイロン12樹脂であるアミランSP500(東レ社製)を用い、押出加工温度(加熱温度)を350℃から280℃に変更し、ステアリン酸カリウムを0.3質量部添加した以外は、同様の手順により管状体を得た。
【0096】
(実施例4)
実施例1においてカーボンブラックとして「Printex L6(オリオンエンジニアードカーボン社製)、pH9.0」を18質量部、モンタン酸Ca0.5部添加し、同様の手順によりペレットを得た。得られたペレットにステアリン酸Na0.05部塗し、130℃で乾燥した後、実施例1と同様の手順で管状体を得た。
【0097】
〈比較例1〉
実施例1においてカーボンブラックとして「デンカブラック粒状品(電気化学工業社製)、pH10」を17質量部にした以外は、同様の手順により管状体を得た。
【0098】
〈比較例2〉
実施例1においてカーボンブラックとして「#4000B(三菱化学社製)、pH10」を31質量部にし、ステアリン酸Na0.2質量部とステアリン酸K0.2質量部を添加した以外は、同様の手順により管状体を得た。
【0099】
〈比較例3〉
実施例1においてカーボンブラックとして「BlackPearls880(キャボット社製)、pH7」を18質量部にし、ステアリン酸Na0.2質量部とステアリン酸K0.2質量部を添加した以外は、同様の手順により管状体を得た。
【0100】
(比較例4)
実施例1においてカーボンブラックとして「Ensaco250G(TIMCAL社製)、pH6」を30質量部にし、ステアリン酸Na0.2質量部とステアリン酸K0.2質量部を添加した以外は、同様の手順により管状体を得た。
【0101】
(比較例5)
実施例1においてステアリン酸Naを使用しなかった以外は、同様の手順により管状体を得た。
【0102】
【表1】