(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
上述した核医学診断装置、すなわちECT(Emission Computed Tomography)装置として、PET(Positron Emission Tomography)装置を例に採って説明する。PET装置は、陽電子、すなわちポジトロンの消滅によって発生する複数本の光子を検出して複数個の検出器で光子を同時に検出したときのみ被検体の断層画像を再構成するように構成されている。
【0003】
具体的には、陽電子放出核種を含んだ放射性薬剤を被検体内に投与して、投与された被検体内から放出される511KeVの対消滅光子を多数の検出素子(例えばシンチレータ)群からなる検出器で検出する。そして、2つの検出器で一定時間内に光子を検出した場合に同時に検出したとして、それを一対の対消滅光子として計数し、さらに対消滅発生地点を、検出した検出器対の直線上と特定する。このような同時計数情報を蓄積して再構成処理を行って、陽電子放出核種分布画像(すなわち断層画像)を得る。
【0004】
図3は、全身用PET装置の概略図である。
図3に示すように、ガントリ101の開口部101aに被検体Mが挿入され、ガントリ101内に埋設された検出器102によって、被検体Mの断層画像(PET画像)を取得することができる。被検体Mに特定の病巣に集積しやすい放射性薬剤を投与することで、被検体Mにその病巣がある場合にはその病巣がPET画像上に高い画素値となって表れて識別することができる。よって、撮像対象を乳房とした場合には、被検体Mの乳房の断層画像(PET画像)を取得することにより、乳癌を識別することができる。
【0005】
しかし、
図3に示すような全身用PET装置を用いて乳房を撮像しようとすると、検出器を乳房に近接させることができず、詳細な画像を得ることができない。そこで、撮像対象を乳房専用とした乳房専用PET装置(「マンモPET装置」とも呼ばれる)が考案されている。座位状態の被検体の乳房を上下から平板で圧迫させて撮像を行う「平板圧迫型・乳房専用PET装置」や、伏臥位(うつ伏せ)状態の被検体の乳房をベッドの開口部に挿入して撮像を行う「伏臥位型・乳房専用PET装置」や、座位で前傾状態の被検体の乳房を環状(リング状)あるいはボックス型の検出器ユニット内に挿入して撮像を行う「座位型・乳房専用PET装置」などが知られている。平板圧迫型・乳房専用PET装置では乳房を圧迫により検出器に近接させることができて、詳細な画像を得ることができる。
【0006】
しかし、平板圧迫型・乳房専用PET装置の場合には乳房を圧迫させるので痛みを感じるという短所がある。これに対して、伏臥位型・乳房専用PET装置や座位型・乳房専用PET装置の場合には、乳房を重力により検出器に近接させることができ、また乳房を圧迫しないので乳房の痛みを感じることなく撮像を行うことができる。
【0007】
通常、PET装置は断層画像を得るために複数の検出器を環状(正確にはn角形)に配置している。これは、断層方向に対して全ての角度に関する情報を収集し(これによって得られた投影データは「完全投影データ」と呼ばれる)、画像を再構成するためである。しかし、検出器を複数に環状(リング状)に並べて配置して、そのリング内に乳房を挿入しようとすると、通常は胸や肩や腹部がリング状の検出器ユニットに物理的に接触する。その結果、乳房の周辺での乳癌の好発部位(例えば体側側の乳房の付け根や胸壁や腋窩リンパ節など)が撮像視野内に入らない、もしくは入っても撮像視野のギリギリになっている。
【0008】
そこで、リング状に検出器を意図的に配置せずに欠落部分を設けることで、乳房の周辺での乳癌の好発部位を撮像視野内に入れる検出器ユニットが本出願人から提案されている(例えば、特許文献1参照)。通常、PET検査には10分前後の時間がかかる。したがって、被検体の呼吸による体位の変化のみならず、長時間の検査によって被検体が思わず体位を変えてしまったことにより、画像のズレが発生することがある。そこで、被検体の体動を補正する体動補正(例えば体動補正)などが開発されている。
【0009】
また、核医学診断装置の分野とは別にX線による画像診断に関する全身用の装置において、撮像対象が乳幼児の場合には乳幼児が動き回らないように保持具で固定した技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【実施例】
【0025】
以下、図面を参照してこの発明の実施例を説明する。
図1は、実施例に係る乳房専用PET(Positron Emission Tomography)装置の概略図であり、
図2は、実施例に係る乳房専用PET装置のブロック図である。本実施例では、核医学診断装置として、PET装置を例に採って説明する。
【0026】
図1に示すように、本実施例に係る乳房専用PET装置1は、座位状態の被検体Mの乳房を撮像する環状(リング状)の検出器ユニット2と、リング状の検出器ユニット2に当該乳房に近い方の腕を挿入した状態で当該腕を支える腕置台3とを備えている。乳房専用PET装置1は、この発明における乳房専用核医学診断装置に相当し、検出器ユニット2は、この発明における検出器ユニットに相当し、腕置台3は、この発明における腕置台に相当する。
【0027】
本実施例では、検出器ユニット2は、被検体Mから発生した光子を検出する検出器(図示省略)を複数にリング状に並べて構成されている。また、乳房を撮像するために、当該乳房に近い方の腕が挿入可能な当該腕側にある肩部から体側側の乳房の付け根まで及ぶ内径の孔を有した検出器ユニット2で構成する。
【0028】
したがって、右の乳房を撮像する場合には、右の乳房に近い方の腕が右腕となるので、検出器ユニット2に右腕を挿入することにより右腕側にある肩(右肩)部から体側側の乳房の付け根までを各検出器が取り囲む。この構成により、右体側側の乳房の付け根や右肩付近や右胸壁や右腋窩リンパ節などに代表される右の乳房の周辺の組織が視野中心にセッティングされる。同じく、左の乳房を撮像する場合には、左の乳房に近い方の腕が左腕となるので、検出器ユニット2に左腕を挿入することにより左腕側にある肩(左肩)部から体側側の乳房の付け根までを各検出器が取り囲む。この構成により、左体側側の乳房の付け根や左肩付近や左胸壁や左腋窩リンパ節などに代表される左の乳房の周辺の組織が視野中心にセッティングされる。
【0029】
本実施例では、腕が挿入可能になるように検出器ユニット2の内径は300mm〜400mmの範囲であるが、この範囲に限定されない。極端に太い腕や極端に細い腕に対応するために、検出器ユニット2の内径を適宜設計すればよい。
【0030】
本実施例では、このように検出器ユニット2は、リング状で、かつ(挿入される腕に対して)垂直に設置されているが、検出器ユニット2の構成は本実施例のような構成には限定されない。腕が挿入可能な構成であればよい。
【0031】
腕置台3は、
図1(b)の上面図に示すように、挿入した腕の指を掛ける構造を備えている。
図1(b)の場合には、腕置台3は、挿入した腕の肘を置く肘置き部31と、挿入した腕の手のひらを置く格子部32とからなる。肘置き部31および格子部32は一体化して構成されている(一体化の構成については図示省略)。
【0032】
格子部32は、指が挟まらない程度に円筒状の格子を複数に並べて構成されている。本実施例では、円筒状の格子をそれぞれ左右に2つ以上(
図1(b)ではそれぞれ左右に3つ)並べている。これによって、肘置き部31と格子部32との隙間および格子部32の隣接する格子の隙間が合計で、それぞれ左右に格子の数と同数(
図1(b)ではそれぞれ左右に3つ)となる。このように格子を複数並べることにより、前腕の長さは個人差があっても指を掛ける深さや格子の位置を被検体M自身でフィットするようにセッティングすることができる。
【0033】
また、格子が円筒状であるので、指が掛け易く、掛ける指に圧力が掛かり難いという効果を奏する。もちろん、格子そのものは、円筒状に限定されず、直方体状でも構わない。また、格子間は貫通する必要はなく、格子そのものが溝を有して、その溝に指を掛けてもよい。
【0034】
右の乳房を撮像する場合には、
図1(b)に示すように、検出器ユニット2に右腕を挿入して、挿入した右腕の指(すなわち右指)を、対向する左側の格子部32に掛ける。同じく、左の乳房を撮像する場合には、
図1(c)の上面図に示すように、検出器ユニット2に左腕を挿入して、挿入した左腕の指(すなわち左指)を、対向する右側の格子部32に掛ける。
【0035】
その他に、乳房専用PET装置1は、挿入した腕とは逆側の腕(右の乳房を撮像する場合には左腕,左の乳房を撮像する場合には右腕)の肘を被検体Mの背中側に置く肘置台4と、腕置台3に支える方の前腕,上腕あるいは肘の内側に圧力を与える腕用エアバッグ5(
図1(b)または
図1(c)を参照)と、被検体Mの背中に圧力を与える背中用エアバッグ6とを備えている。腕用エアバッグ5は、この発明における腕用圧力付与機構に相当し、背中用エアバッグ6は、この発明における背中用圧力付与機構に相当する。
【0036】
腕用エアバッグ5および背中用エアバッグ6は、少なくともセッティング時および撮像時に膨らんでおり、それによって腕用エアバッグ5は前腕,上腕あるいは肘の内側に圧力を与えるとともに、背中用エアバッグ6は被検体Mの背中に圧力を与える。腕用エアバッグ5および背中用エアバッグ6は、常に膨らんでいてもよい。また、後述するカメラC(
図1(a)の側面図および
図2を参照)による被検体Mの透視画像に基づいて、腕用エアバッグ5および背中用エアバッグ6内の圧力(空気量)を自動で可変制御してもよいし、被検体M自身が腕用エアバッグ5および背中用エアバッグ6内の圧力(空気量)を手動で調整するようにしてもよい。
【0037】
また、
図2に示すように、乳房専用PET装置1の外部には、カメラCが設置されており、被検体Mの透視画像をリアルタイムにモニタリングすることにより被検体Mを監視する。「課題を解決するための手段」の欄でも述べたように、カメラCなどに代表される監視機構は、乳房専用PET装置1に備えられる構成でなく、外部装置であることに留意されたい。カメラCは、この発明における監視機構に相当する。
【0038】
その他に、乳房専用PET装置1は、コントローラ7と入力部8と出力部9とメモリ部10と同時計数回路11とGPU(Graphics Processing Unit)12とを備えている。コントローラ7は、この発明における撮像補助制御機構に相当し、出力部9は、この発明における出力機構に相当する。
【0039】
コントローラ7は、本実施例に係る乳房専用PET装置1を構成する各部分を統括制御する。コントローラ7は、中央演算処理装置(CPU)などで構成されている。本実施例では、コントローラ7は、カメラCから得られたデータ(透視画像)に基づいて乳房の撮像を補助する制御を行う。そして、コントローラ7は、カメラCから得られたデータ(透視画像)に基づいて腕置台3や腕用エアバッグ5や背中用エアバッグ6を操作する。
【0040】
入力部8は、技師が入力したデータや命令をコントローラ7に送り込む。入力部8は、マウスやキーボードやジョイスティックやトラックボールやタッチパネルなどに代表されるポインティングデバイスで構成されている。
【0041】
出力部9はモニタなどに代表される表示部やプリンタなどで構成されている。本実施例では、カメラCから得られたデータ(透視画像)を出力部9のモニタに出力表示することにより、技師がモニタ越しに被検体Mのセッティングを確認することができる。
【0042】
メモリ部10は、ROM(Read-only Memory)やRAM(Random-Access Memory)などに代表される記憶媒体で構成されている。本実施例では、同時計数回路11で同時計数された計数値(カウント)や同時計数した2つ検出器からなる検出器対といった同時計数に関するデータや、GPU12で演算処理された被検体Mの乳房の核医学用データ(PET画像)についてはRAMに書き込んで記憶し、必要に応じてRAMから読み出す。ROMには、各種の制御処理(例えば撮像補助制御)や画像処理(例えば断層画像処理)を行うためのプログラム等を予め記憶しており、そのプログラムをコントローラ7およびGPU12が実行することでそのプログラムに応じた制御処理や画像処理をそれぞれ行う。
【0043】
次に撮像のセッティングについて説明する。乳房を撮像するために、当該乳房に近い方の腕を検出器ユニット2の中に挿入して検査を行う。挿入した腕とは逆側の腕を被検体Mの背中側にある肘置台4にまで伸ばして置く。一方、挿入した腕を腕置台3にまで伸ばして、挿入した腕の肘を腕置台3の肘置き部31に置く。その肘置き部31で肘を約90度に曲げる。なお、上腕の長さは個人差があるので、長さに応じて曲げる肘の角度は鋭角あるいは鈍角になる。このとき、上腕が地面に対して水平になるように肘置き部31を加工すると、成年後は年齢や体型の変化に対して上腕の長さはほとんど変わらないので、セッティングの再現性が高くなる。
【0044】
そして、挿入した腕の手のひらを腕置台3の格子部32に置いて、円筒状の格子のいずれかに指を掛けることができる。上述したように前腕の長さは個人差があっても指を掛ける深さや格子の位置を被検体M自身でフィットするようにセッティングすることができる。
【0045】
乳房の撮像を自動で補助する場合には、カメラCから得られたデータ(透視画像)をコントローラ7に送り込み、当該データ(透視画像)に基づいてコントローラ7は乳房の撮像を補助する制御を行う。具体的には、透視画像に基づいてコントローラ7が腕置台3を自動的に操作することにより、例えば腕置台3の高さや水平位置を自動で可変制御する。また、透視画像に基づいてコントローラ7が腕用エアバッグ5や背中用エアバッグ6を自動的に操作することにより、例えば腕用エアバッグ5や背中用エアバッグ6内の圧力(空気量)を自動で可変制御する。このように、セッティングが自動的に行われると、セッティングによる技師の被曝が発生しない。
【0046】
また、乳房の撮像を手動で補助する場合には、カメラCから得られたデータ(透視画像)を、コントローラ7を介して出力部9に送り込み、データ(透視画像)を出力部9のモニタに出力表示することにより、技師がモニタ越しに被検体Mのセッティングを確認して乳房の撮像を補助する。例えば、技師がモニタ越しに被検体Mのセッティングを確認した後に、技師は被検体Mに音声指示を行う。このように被検体Mが技師からの音声指示だけで被検体M自らがセッティングすることができた場合には、セッティングによる技師の被曝が発生しない。なお、ある時点での透視画像を出力部9のプリンタに出力印刷する(カメラCによる撮像を行う)ことにより、出力印刷の結果に基づいて技師が被検体Mのセッティングを確認して乳房の撮像を補助してもよい。
【0047】
腕用エアバッグ5を膨らまして前腕,上腕あるいは肘の内側に圧力を与えることにより、被検体Mは腕用エアバッグ5に抱き付いた状態でセッティングを行うことができる。よって、被検体M自らが乳房専用PET装置1への密着度を調整することができるので、痛みなども発生し難い。さらに、背中用エアバッグ6を膨らまして被検体Mの背中に圧力を与えることにより、背筋が楽に伸びた体勢となり、その姿勢を長時間維持し易くなる。さらに、本実施例では、格子部32を握っている手を離せばその固定を容易に解除することができるので、緊急離脱時にも被検体Mは固定を自ら解除して乳房専用PET装置1から安全に離れることができる。
【0048】
撮像のセッティングが終了したら、放射性薬剤が投与された被検体から発生した光子を検出器ユニット2の検出器(図示省略)のシンチレータブロック(図示省略)が光に変換して、検出器の光電子増倍管(図示省略)が光電変換して電気信号に出力する。その電気信号をイベントとして同時計数回路11に送り込む。対向する両側にある2つの検出器のシンチレータブロックに光子が同時(一定時間内)に入射したときのみ、送り込まれたイベントを適正なデータと判定する。一方のシンチレータブロックのみに光子が入射したときには、同時計数回路11は棄却する。つまり、同時計数回路11は、上述した電気信号に基づいて、2つの検出器において光子が同時観測(すなわち同時計数)されたことを検出する。
【0049】
同時計数されたデータを用いてGPU12が逐次近似法などの再構成処理を行うことにより、被検体Mの乳房の断層画像(PET画像)を取得する。このようにして、放射性薬剤が投与された被検体Mから発生した光子に基づいて被検体Mの乳房の核医学用データ(PET画像)を求める。
【0050】
本実施例に係る乳房専用PET装置1によれば、検出器ユニット2に(撮像する)乳房に近い方の腕を挿入するので、被検体Mの他の部位(例えば足)を動かしたあるいは当該部位が動いたとしても乳房自体は体動しにくい。また、上述した検出器ユニット2に(撮像する)乳房に近い方の腕を挿入した状態で当該腕を支える腕置台3を備え、その腕置台3の一部に当該腕の指を掛ける構造(ここでは格子部32)を備えることで、被検体M自らが指を掛けることで手を固定することができる。その結果、被検体M自らがセッティングして、かつ乳房が体動しないようにすることができる。
【0051】
本実施例では、上述した腕置台3に支える方の前腕,上腕あるいは肘の内側に圧力を与える腕用圧力付与機構(本実施例では腕用エアバッグ5)を備えるのが好ましい。その腕用圧力付与機構(腕用エアバッグ5)により被検体Mが検出器ユニット2に乳房を深く挿入するのを補助し、前腕,上腕あるいは肘が固定し易くなる。
【0052】
本実施例では、被検体Mの背中に圧力を与える背中用圧力付与機構(本実施例では背中用エアバッグ6)を備えるのが好ましい。その背中用圧力付与機構(背中用エアバッグ6)により被検体Mの背筋が伸びた体勢で、その姿勢を長時間維持し易くしつつ、被検体Mが検出器ユニット2に乳房を深く挿入するのを補助する。
【0053】
本実施例では、被検体Mを監視する監視機構(本実施例ではカメラC)から得られたデータ(本実施例では透視画像)に基づいて乳房の撮像を補助する制御を行う撮像補助制御機構(コントローラ7)を備えるのが好ましい。撮像補助制御機構(コントローラ7)を備えることで、技師自らが被検体Mの近くで被検体Mのセッティングを指導・補助することなく、監視機構(カメラC)から得られたデータ(透視画像)に基づいて遠隔操作により乳房の撮像を補助することができる。よって、技師の被曝が低減する。
【0054】
撮像補助制御機構(コントローラ7)は、上述した腕置台3を操作することにより乳房の撮像を補助する制御(例えば腕置台3の高さや水平位置の可変制御)を行う。撮像補助制御機構(コントローラ7)が腕置台3を自動的に操作することにより、腕置台3に関する被検体Mによるセッティングが低減する。
【0055】
また、撮像補助制御機構(コントローラ7)は、上述した腕用圧力付与機構(腕用エアバッグ5)を操作することにより乳房の撮像を補助する制御(例えば腕用エアバッグ5内の圧力の可変制御)を行う。撮像補助制御機構(コントローラ7)が腕用圧力付与機構(腕用エアバッグ5)を自動的に操作することにより、腕用圧力付与機構(腕用エアバッグ5)に関する被検体Mによるセッティングが低減する。
【0056】
また、撮像補助制御機構(コントローラ7)は、上述した背中用圧力付与機構(背中用エアバッグ6)を操作することにより乳房の撮像を補助する制御(例えば背中用エアバッグ6内の圧力の可変制御)を行う。撮像補助制御機構(コントローラ7)が背中用圧力付与機構(背中用エアバッグ6)を自動的に操作することにより、背中用圧力付与機構(背中用エアバッグ6)に関する被検体Mによるセッティングが低減する。
【0057】
撮像補助制御機構(コントローラ7)が、腕置台3,腕用圧力付与機構(腕用エアバッグ5)および背中用圧力付与機構(背中用エアバッグ6)を全て自動的に操作してもよい。また、撮像補助制御機構(コントローラ7)が、腕置台3および腕用圧力付与機構(腕用エアバッグ5)を自動的に操作してもよいし、腕置台3および背中用圧力付与機構(背中用エアバッグ6)を自動的に操作してもよいし、腕用圧力付与機構(腕用エアバッグ5)および背中用圧力付与機構(背中用エアバッグ6)を自動的に操作してもよい。
【0058】
本実施例では、被検体Mを監視する監視機構(カメラC)から得られたデータ(透視画像)を出力する出力機構(本実施例では出力部9)を備えている。技師は、当該データ(透視画像)の出力結果を見ることで、撮像補助制御機構(コントローラ7)が乳房の撮像を自動で補助する場合と同じく、技師自らが被検体Mの近くで被検体Mのセッティングを指導・補助することなく、遠隔操作により乳房の撮像を補助することができる。よって、技師の被曝が低減する。本実施例の場合には、撮像補助制御機構(コントローラ7)が乳房の撮像を自動で補助するとともに、出力機構(出力部9)により乳房の撮像を手動で補助することにより、乳房の撮像を自動で補助するのと、乳房の撮像を手動で補助するのを両方組み合わせている。
【0059】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0060】
(1)上述した実施例では、核医学診断装置として、PET装置を例に採って説明したが、この発明は、単一の光子を検出して被検体(ここでは乳房)の断層画像を再構成するSPECT(Single Photon Emission CT)装置などにも適用することができる。
【0061】
(2)上述した実施例では、環状(リング状)の検出器ユニットを例に採って説明したが、腕が挿入可能な構成であれば、必ずしもリング状である必要はない。例えば上述した乳房専用SPECT装置の場合には、腕を挟んで検出器を互いに対向配置して構成された検出器ユニットにも適用することができる。
【0062】
(3)上述した実施例では、腕置台に支える方の前腕,上腕あるいは肘の内側に圧力を与える腕用圧力付与機構(実施例では腕用エアバッグ5)を備えたが、必ずしも腕用圧力付与機構(腕用エアバッグ5)を備える必要はない。また、腕置台に支える方の前腕,上腕あるいは肘の内側に圧力を与える機構であれば、腕用圧力付与機構はエアバッグに限定されない。メカニカルに駆動するクッションや、ポリウレタンやゴムなどに代表される弾性体で形成されたボールやポールで腕用圧力付与機構を構成し、クッションやボールやポールに被検体Mが抱き付くようにしてもよい。また、腕用圧力付与機構として、血圧計のように前腕または上腕の周囲を360度に取り囲む構造を採用し、360度から膨らんで前腕または上腕を固定してもよい。ただし、腕用圧力付与機構として血圧計のような前腕または上腕を固定する構造を採用した場合には、安定して固定することができる反面、緊急離脱時被検体が乳房専用核医学診断装置から安全に離れることができなくなるので、緊急離脱用の解除ボタンを必要とする。
【0063】
(4)上述した実施例では、被検体の背中に圧力を与える背中用圧力付与機構(実施例では背中用エアバッグ6)を備えたが、必ずしも背中用圧力付与機構(背中用エアバッグ6)を備える必要はない。また、被検体の背中に圧力を与える機構であれば、腕用圧力付与機構でも述べたように、背中用圧力付与機構はエアバッグに限定されない。メカニカルに駆動するクッションや、ポリウレタンやゴムなどに代表される弾性体で形成されたボールやポールで背中用圧力付与機構を構成し、クッションやボールやポールに被検体が背筋を伸ばしつつ、もたれ掛けるようにしてもよい。
【0064】
(5)上述した実施例では、被検体を監視する監視機構(実施例ではカメラC)から得られたデータ(実施例では透視画像)に基づいて乳房の撮像を補助する制御を行う撮像補助制御機構(実施例ではコントローラ7)や、当該データ(透視画像)を出力する出力機構(実施例では出力部9)を備えたが、被検体を監視せずに技師自らが被検体の近くで被検体のセッティングを指導・補助してもよい。また、撮像補助制御機構としてコントローラ(CPU)を例に採って説明したが、プログラムデータに応じて内部の使用するハードウェア回路(例えば論理回路)が変更可能なプログラマブルデバイス(例えばFPGA(Field Programmable Gate Array))で撮像補助制御機構を構成してもよい。
【0065】
(6)上述した実施例では、被検体を監視する監視機構としてカメラCを例に採って説明したが、被検体を監視する機構であれば、監視機構はカメラCに限定されない。例えば、接触センサや圧力センサで監視機構を構成し、検査中に被検体が接触センサや圧力センサを握ることにより被検体を監視してもよい。また、監視機構を乳房専用核医学診断装置に備えてもよい。
【0066】
(7)上述した実施例では、挿入した腕とは逆側の腕の肘を被検体の背中側に置く肘置台を備えたが、必ずしも肘置台を備える必要はない。また、挿入した腕とは逆側の腕で抱き付くあるいは握ることができるような構造(上述したようなポリウレタンやゴムなどに代表される弾性体で形成されたボールやポール)を備えてもよい。