(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
反応管及び前記反応管への試料の出し入れのための試料導入部を備え、前記試料導入部は前記反応管につながる内部空間が外部との間に開閉口をもっている試料加熱装置と、
前記内部空間に設置された試料を前記反応管に出し入れする試料挿入機構と、
前記内部空間にキャリアガスを一定流量で供給するように構成されたキャリアガス供給部と、
前記反応管の下流に配置され、前記反応管から送られてきたガス中の二酸化炭素を測定する検出器と、
前記試料導入部の前記開閉口が閉じられてから所定の待機時間の経過を監視する制御部と、を備え、
前記制御部は、待機時間を記憶する待機時間記憶部と、前記待機時間記憶部に記憶された待機時間に基づいて測定開始のための動作を行う測定開始部と、前記検出器の検出信号のベースラインが安定しているか否かを判定し、前記検出信号のベースラインが安定するベースライン安定時間t1を検知するベースライン安定時間判定部と、を備えており、
前記待機時間記憶部は前記ベースライン安定時間判定部により検知されたベースライン安定時間t1に基づいて前記待機時間を設定するように構成されている炭素測定装置。
前記待機時間記憶部は予め設定された固定の待機時間を記憶した第1の領域と、前記ベースライン安定時間t1に基づく前記待機時間を設定するための第2の領域とを備えており、
前記測定開始部は第1と第2のいずれかの領域の待機時間に基づいて前記測定開始のための動作を行うように構成されている請求項1に記載の炭素測定装置。
反応管及び前記反応管への試料の出し入れのための試料導入部を備え、前記試料導入部は前記反応管につながる内部空間が外部との間に開閉口をもっている試料加熱装置と、
前記内部空間に設置された試料を反応管に出し入れする試料挿入機構と、
前記内部空間にキャリアガスを一定流量で供給するように構成されたキャリアガス供給部と、
前記反応管の下流に配置され、前記反応管から送られてきたガス中の二酸化炭素を測定する検出器と、
前記試料導入部の前記開閉口が閉じられてから所定の待機時間の経過を監視する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記検出器の検出信号のベースラインが安定しているか否かを判定し、前記検出信号のベースラインが安定するベースライン安定時間t1を検知するベースライン安定時間判定部と、ベースライン安定時間判定部によるベースライン安定時間t1検知後に測定開始のための動作を行う測定開始部と、を備えている炭素測定装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1により一実施例を説明する。この実施例は本発明の炭素測定装置をTC測定装置として構成した実施例である。TC測定用試料加熱装置1は反応管(TC反応管)5を備えている。反応管5は例えば石英ガラス製であり、横向きに配置され、内部に酸化触媒19が充填されている。酸化触媒19は試料内の全ての炭素成分をCO
2に変換するためのものであり、例えば白金酸化触媒を用いることができる。反応管5を所定の温度、例えば900℃に加熱するために、反応管5は横向きの筒状電気炉からなる加熱炉7内に収容されている。
【0017】
試料加熱装置1には反応管5への試料の出し入れのために試料導入部(TC試料導入部)3が設けられている。試料導入部3は、キャリアガスが供給される内部空間15、及び試料ボート出入口開閉機構として試料ポートカバー17を備えている。試料ポートカバー17で開閉される試料ボート出入口が内部空間15と外部との間の開閉口である。
【0018】
試料導入部3の内部空間15は反応管5につながっている。試料導入部3は反応管5への試料の出し入れのための試料ボート移動棒21を備えており、試料ボート移動棒21はその先端に試料ボートホルダ23を備えている。試料ボート移動棒21は試料挿入機構の一例である。試料ボートホルダ23は試料ボート29を保持するためのものである。試料ボート移動棒21は、内部空間15内で試料ボートホルダ23上に設置された試料ボート29を反応管5内へ移動させ、また反応管5内から内部空間15内へ引き出すためのものである。試料ボート29は、例えばセラミック製である。
【0019】
試料ボート移動棒21は内部空間15の外部から操作されるように配置されている。試料導入部3と試料ボート移動棒21との間には内部空間15の気密を維持するためにシール部材25が配置されている。シール部材25は、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製Oリングである。
【0020】
試料ボート移動棒21は手動で操作される。作業者は、後述するように、表示部82に測定開始が可能になったことが表示されると、試料ボート移動棒21を押し込んで試料を反応管5内へ移動させる。また、測定が終了すると、そのことが検出器43の検出信号から検知され、又は制御部48などに設定されたプログラムから検知され、又は時間により検知され、表示部82に表示されたりするなど、操作者に知らされる。操作者は測定終了を知ると、試料ボート移動棒21を引き出して試料を反応管5から取り出す。
【0021】
一方、試料ボート移動棒21の操作を自動で行うこともできる。
図1に示されているように、試料ボート移動棒21を自動で移動できるように、試料ボート移動棒21には駆動機構74が設けられている。駆動機構74は駆動用のモータなどを備え、制御部48からの指示により試料ボート移動棒21を操作する。駆動機構74は、測定開始時には制御部48からの指示により試料ボート移動棒21を介して試料ボート29を反応管5内へ移動させ、測定終了後にも制御部48からの指示により試料ボート移動棒21を介して試料ボート29を反応管5内から引き出す。
【0022】
試料ボート移動棒21の操作を自動で行うかどうかは任意である。そのため、試料ボート移動棒21の操作を自動で行わない場合は、駆動機構74を設ける必要がない。
【0023】
反応管5が高温に加熱されることから、反応管5につながる試料導入部3が高温になるのを防ぐために、試料導入部3の下部には反応管5側の位置に冷却用のファン45が設けられている。
【0024】
試料導入部3の内部空間15を経て反応管5にキャリアガスを供給するために、キャリアガス供給部37のキャリアガス供給口が内部空間15に接続されている。キャリアガス供給部37はキャリアガスが供給されるキャリアガス入口につながり、キャリアガス入口側から順に、供給されるキャリアガスの圧力を一定にする圧力調節弁60、流量を一定にするマスフローコントローラ62及び流量計64が配置されており、圧力調節弁60とマスフローコントローラ62の間に圧力計66が接続されている。キャリアガス供給部37は、試料導入部3の内部空間15にキャリアガスを一定流量、例えば500mL/分で連続して供給するように設定される。キャリアガスは、例えば支燃ガスを兼ねる酸素である。
【0025】
反応管5の下流には、反応管5で発生した水を凝縮させる除湿部としてのコイル状冷却管39が配置され、冷却管39には冷却用のファン47が設けられている。冷却管39の下流に遅延部として遅延チューブ42が配置されている。遅延チューブ42の下流には遅延チューブ42を経たガス中のCO
2を測定する検出器43が接続されている。検出器43は、例えば非分散形赤外線ガス分析計(NDIR)である。
【0026】
遅延チューブ42等の遅延部を設ける理由は次のようなものである。測定の際、試料を反応管5に導入すると試料中の炭素成分の急激な燃焼や試料に含まれる水分の急激な蒸発によってキャリアガスの圧力と流量が一時的に乱れる。後の実施例で示すIC反応管5Aでも同様の現象が起こる。検出器43がこの乱れの影響を受けている間にCO
2測定を行うと、測定精度が低下したり、試料濃度と検出出力との間の直線性が低下したりするなどの悪影響がでる。このような影響を防ぐために、十分な容量をもったチューブや容器を接続することによって意図的に時間遅れを作り出すのが遅延部である。この作用により、キャリアガスが安定した後にCO
2が検出器43に流入して正確な測定を行うことができるようになる。
【0027】
試料導入部3の開閉口が閉じられた時点が待機時間の開始点となる。開閉口が閉じられた時点を制御部48が認識できるようにするために、作業者が試料ポートカバー17を閉じたときに制御部48にボタンやキーボードなどの入力部から手動で信号を入力することができる。
【0028】
図1には、さらに、試料導入部3の開閉口が閉じられた時点を自動で検知できるようにするために、試料導入部3の開閉口の開閉を検知するカバーセンサ18が設けられている実施例も示している。カバーセンサ18としては、試料ポートカバー17の動きを検知できるものであれば特に限定されない。例えば、ホトセンサ、磁気的なセンサ、マイクロスイッチなどを用いることができる。
【0029】
制御部48はそのカバーセンサ18の検出信号を取り込み、試料導入部3の開閉口が閉じられてから所定の待機時間が経過すると、制御部48は液晶表示装置などの表示部82に測定開始が可能になったことを表示する。操作者はその表示をみて、試料ボート移動棒21を押し込んで試料ボート29を反応管5内へ移動させ、測定を開始させることができる。
【0030】
測定開始の動作も自動的に行うことができる実施例の場合は、制御部48はカバーセンサ18の検出信号を基にして、測定開始を指示する信号を駆動機構74に送り、駆動機構74により試料ボート移動棒21を駆動して試料ボート29を反応管5内へ移動させ、測定を開始させることができる。
【0031】
カバーセンサ18を設けるかどうかは任意である。そのため、開閉口が閉じられた時点を制御部48に手動で入力する場合には、カバーセンサ18を設ける必要がない。
【0032】
制御部48はこの炭素測定装置の動作を制御するための専用の制御コンピュータにより実現してもよく、駆動機構74を制御するための専用のコンピュータとして実現してもよく、又は汎用のパーソナルコンピュータにより実現してもよい。
【0033】
測定は次の手順で行う。操作者は、試料をボート29に載せ、試料ポートカバー17を開けて試料導入部3の内部空間15内の試料ボートホルダ23上に置き、試料ポートカバー17を閉じる。試料ポートカバー17が閉じられたことを操作者が手動で制御部48に入力してもよく、カバーセンサ18が設けられている場合には試料ポートカバー17が閉じられたことはカバーセンサ18により検知される。
【0034】
所定の待機時間が経過すると、制御部48により表示部82に測定開始が可能になったことが表示され、それに伴って操作者が手動で試料ボート移動棒21を操作して試料ボート29を反応管5内に挿入するか、又は測定開始動作が自動化されている場合には、駆動機構74により試料ボート移動棒21が操作されて試料ボート29が反応管5内に挿入される。これによって測定が開始される。
【0035】
測定が開始されると、試料中の炭素成分が燃焼酸化分解され、そのとき発生するCO
2がキャリアガスの流れで検出器43に導かれて検出される。検出器43では、流入するCO
2がベースライン上のピークとして捉えられ、検出器43からの信号を受けた演算処理装置45(
図3参照。)がその面積からCO
2量を測定する。演算処理装置45は、この炭素測定装置の動作を制御するための専用の制御コンピュータにより実現してもよく、検出器43の検出信号を演算処理するための専用のコンピュータとして実現してもよく、又は汎用のパーソナルコンピュータにより実現してもよい。この実施例では、炭素量としてTCが求められる。
【0036】
図2はこの炭素測定装置をTOC計に適用した第2の実施例を示す。TC測定用の試料加熱装置1とIC測定用の試料加熱装置35とを備え、試料加熱装置1と試料加熱装置35は直列に接続されている。
【0037】
TC測定用の試料加熱装置1は
図1を参照して説明したものと同じである。加熱炉7の炉温度は例えば900℃に設定される。キャリアガス供給部37から支燃ガスを兼ねるキャリアガス(酸素)が内部空間15へ連続的に例えば500mL/分の流量で導入される。キャリアガスが、TC用試料加熱装置1、冷却管39、除湿部41、IC用試料加熱装置35、再度除湿部41を経て、遅延部としての遅延チューブ42を経て検出器43に流れるように流路が構成されている。TC用試料導入部3と冷却管39にはそれぞれの冷却用ファン45,47が設けられている。
【0038】
IC測定用の試料加熱装置35は、基本的には、TC測定用の試料加熱装置1と同じ構成であるが、反応管5Aは内部に酸化触媒は備えていない単なる石英管である。また、反応管5AはTC測定用の反応管5に比べて加熱温度は低温でよい。IC測定用の試料加熱装置35において、TC測定用の試料加熱装置1と同じ機能を果たす部分にはTC測定用の試料加熱装置1と同じ符号に「A」を付加して付されている。
【0039】
IC測定用の試料加熱装置35において、試料が収容された試料ボート29Aは、試料導入部3Aの試料ボートカバー17Aが開けられて開閉口である試料ボート出入口から内部空間15A内へ入れられ、試料ボートホルダ23Aに搭載される。試料ボートカバー17Aが閉じられたことを操作者が手動で制御部48に入力してもよく、又は
図2のようにカバーセンサ18Aを設けて自動的に検知して制御部48に入力するようにしてもよい。
【0040】
制御部48は、試料導入部3Aの開閉口が閉じられたことを手動入力より認識し、又はカバーセンサ18Aの検出信号を取り込んで認識する。試料導入部3Aの開閉口が閉じられてから所定の待機時間が経過すると、制御部48は酸分注器53から試料ボート29内の試料に無機酸を添加させる。酸としては、不揮発性酸であるリン酸が好適である。酸を添加する操作は手動で行うこともできる。その場合は、待機時間が経過したことを制御部48が表示部82などに表示して操作者に知らせるようにする。
【0041】
無機酸の添加を手動で行った場合は、操作者は無機酸を添加したことを制御部48に入力することができる。無機酸の添加が自動で行われた場合は、制御部48自体において無機酸添加を認識することができる。
【0042】
無機酸の添加後、測定開始が可能になる。試料ボート移動棒21Aの移動を手動で行う場合は、操作者は試料ボート移動棒21Aを押して試料ボート29Aを反応管5A内へ移動させて測定を開始させ、測定終了後に試料ボート29Aを反応管5A内から引き出すことができる。
【0043】
試料ボート移動棒21Aの移動を自動で行う場合は、制御部48は測定開始を指示する信号を駆動機構74Aに送り、駆動機構74Aにより試料ボート移動棒21Aを駆動して試料ボート29Aを反応管5A内へ移動させる。制御部48は、測定終了後に試料ボート29Aを反応管5A内から引き出させる。
【0044】
制御部48はこの炭素測定装置の動作を制御するための専用の制御コンピュータにより実現してもよく、駆動機構74もしくは74Aを制御するための専用のコンピュータとして実現してもよく、又は汎用のパーソナルコンピュータにより実現してもよい。
【0045】
IC測定用の試料加熱装置35において、加熱炉7Aの加熱温度は、TC測定用の試料加熱装置1の加熱炉7に比べ比較的低温、例えば200℃であり、ここでは試料中のIC成分と酸との反応が促進され、さらには加熱による攪拌や追い出し作用を受けて、反応によって変換生成された二酸化炭素の気相への抽出が迅速に行なわれる。気相へ抽出されたCO
2ガスはキャリアガスと共に除湿部41から遅延チューブ42を経て検出器43に導かれて、TC測定と同様に、試料中のICが測定される。IC測定用のキャリアガスは、キャリアガス供給部27からTC測定用の試料加熱装置1、冷却管39、除湿部41を経てIC用の試料導入部3Aの内部空間15Aへ供給される。
【0046】
除湿部41と遅延チューブ42の間に冷却管50を設けてもよい。この冷却管50は、例えば試料加熱装置1と35を収容しているケースの外部に配置して、空冷により冷却するようにすることができる。
【0047】
IC測定用の試料加熱装置35の温度は比較的低温であるため、TC測定用の試料導入部3を冷却するファン45に相当するものは試料導入部3Aには必須ではないが、設けてもよい。
【0048】
制御部48は、TC用の試料導入部3が使用されてTC測定がなされるときはカバーセンサ18による検出信号に基づいて駆動機構74の動作を制御し、IC用の試料導入部3Aが使用されてIC測定がなされるときはカバーセンサ18Aによる検出信号に基づいて駆動機構74Aの動作を制御する。
【0049】
この実施例においても、カバーセンサ18,18Aと駆動機構74,74Aを設けるかどうかは任意であり、手動で操作をする場合にはカバーセンサ18,18Aと駆動機構74,74Aを設ける必要がない。
【0050】
TC用の試料導入部3が使用されるときもIC用の試料導入部3Aが使用されるときもキャリアガスの流量は同じであるが、それぞれの反応管5又は5Aから検出器43までの流路の長さが異なる。そのため、制御部48に設定する待機時間として、TC用の試料導入部3が使用されるときはIC用の試料導入部3Aが使用されるときよりも長くなるように設定するのが好ましい。しかし、その時間の差がそれほど大きくないときは、TC用の試料導入部3が使用されるときの待機時間を共通の待機時間として設定してもよい。
【0051】
TC測定は、TC測定用の試料加熱装置1において試料導入部3の試料ポートカバー17を開いて、試料が収容された試料ボート29を内部空間15内の試料ボートホルダ23に搭載する。その後の動作は
図1の実施例で述べたのと同じである。IC測定は、試料に酸を添加する点を除いて、TC測定の動作と同じである。
【0052】
測定終了後、演算処理装置45において、TC測定値からIC測定値が引き算されることによりTOC値が求められる。
【0053】
さらに他の実施例として、TC測定用の試料加熱装置1を備えず、IC用の試料導入部3Aのみを備えてIC測定装置として構成することもできる。
【0054】
次に、制御部48について
図3により説明する。
【0055】
第1の実施形態では、制御部48は、待機時間を記憶する待機時間記憶部70を備えている。制御部48は、さらに、待機時間記憶部70に記憶された待機時間に基づいて、表示部82に測定開始が可能になったことを表示するか、駆動機構74,74Aを作動させて測定を開始させるか、又はその両方を行う測定開始部72を備えている。待機時間記憶部70は所望の待機時間を設定できるように構成されている。
【0056】
制御部48はコンピュータであり、待機時間記憶部70はそのコンピュータの記憶装置により実現される。待機時間記憶部70は、コンピュータの電源を切った場合でも設定した待機時間を保持しておけることが好ましいことから、ディスク、EPROM、EEPROMなどが好ましい。制御部48内の待機時間記憶部70以外の各部は、コンピュータとそれに搭載されたプログラムにより実現される機能を表わしている。
【0057】
TC測定を行うときは、手動で試料ボート移動棒21を操作するか、又は制御部48が駆動機構74を介して試料ボート移動棒21を操作する。IC測定を行うときも同様に、手動で試料ボート移動棒21Aを操作するか、又は制御部48が駆動機構74Aを介して試料ボート移動棒21Aを操作する。
【0058】
好ましい形態では、待機時間記憶部70は予め設定された固定の待機時間を記憶した第1の領域と、所望の待機時間を任意に設定するための第2の領域とを備えており、制御部48の測定開始部72は第1と第2のいずれかの領域の待機時間に基づいて、表示部82へ測定開始が可能になったことを表示することと、駆動機構74,74Aを作動させることの一方又は両方を行うように構成されている。
【0059】
第1の領域に記憶されている固定の待機時間はこの炭素測定装置に固有の待機時間として予め設定されたもので、デフォルト待機時間ともいう。第2の領域にはユーザが所望の待機時間を設定することができる。したがって、待機時間の可変機能をオフにすると、仮にユーザが設定した待機時間があっても、測定はデフォルトの待機時間に基づいて実行されることになる。
【0060】
所望の待機時間を設定する方法には、手動で設定する形態と自動で設定する形態がある。制御部48は手動で設定する形態と自動で設定する形態のいずれかのみを実行できるように構成することができ、また手動と自動の両方の形態を実行できるように構成することもできる。両方の形態を実行できるように構成した場合は、いずれの形態が実行可能であるかを選択できるように、制御部48に接続された表示部82にモード切換えボタンを表示し、キーボードなどの入力部76からいずれかの形態を選択できるようにすることができる。
【0061】
手動で設定する形態では、制御部48は入力部76を介して待機時間記憶部70に所望の待機時間を設定できるように構成される。
【0062】
待機時間は測定環境や測定試料によってユーザが任意に設定できるので、CO
2の混入が少ない場合、又は測定値が大きく、混入したCO
2が測定値に与える影響が小さい場合は、待機時間を短く設定することで、測定時間を短縮することができる。反対に、CO
2の混入が多い場合、又は測定値が小さく、混入したCO
2が測定値に与える影響が大きい場合は、混入したCO
2が測定開始前に十分に除去されるように待機時間を長く設定できる。
【0063】
ユーザが待機時間を手動で設定する場合は、実際の測定に先立ち、実際の測定と同じ測定環境で測定試料と同程度の濃度の試料を用いて予備的な測定を行って待機時間を実験により求め、その求めた待機時間を、入力部76を介して待機時間記憶部70に設定するのが好ましい。
【0064】
待機時間を手動で設定する動作は、
図4に示されるように、手動で設定する形態において入力部76から待機時間が入力されると、制御部48は待機時間記憶部70にその入力された待機時間を記憶する。ユーザが待機時間を設定できる記憶領域にすでに設定された待機時間がある場合は、すでに設定された待機時間が新たに入力された待機時間に変更される。すなわち、ユーザが設定できる記憶領域の待機時間は最新の入力値により更新されることになる。
【0065】
待機時間を自動で設定する形態では、制御部48は、検出器43の検出信号からベースライン安定時間t1を検知するベースライン安定時間判定部78と、検出器43の検出信号からピーク開始時間tsを検知するピーク開始時間判定部79と、ベースライン安定時間判定部78により検知されたベースライン安定時間t1とピーク開始時間判定部79により検知されたピーク開始時間tsとの差が所定の範囲内になるように、待機時間記憶部70の待機時間を設定又は変更する待機時間変更部80とを備えている。
【0066】
待機時間Tと、ベースライン安定時間t1及びピーク開始時間tsの関係を
図5に示す。
図5の横軸は、試料導入部3又は3Aの開閉口が閉じられたことを操作者が制御部48に手動入力したときから、又は制御部48がカバーセンサ18又は18Aの検出信号により検知したときからの時間であり、縦軸は信号処理装置45からの信号である。
【0067】
図5(A)はピーク開始時間tsがベースライン安定時間t1より遅い状況を示している。ベースライン安定時間t1は、制御部48のベースライン安定時間判定部78により検出される。ベースライン安定時間判定部78は、検出器43の検出信号を、演算処理装置45を介してベースライン信号として取り込み、ベースライン信号の変動幅がしきい値以下になった時間が所定時間継続したときにベースラインが安定したと判定することができる。変動幅のしきい値と、安定したと判定する所定の継続時間は、適当な値を予め設定しておく。
【0068】
ピーク開始時間tsは既知のピーク検出プログラムにより検出することができる。例えば、検出信号の時間変化を検出しておき、その時間変化が所定値以上になった時点をピーク開始時間tsとすることができる。
【0069】
ベースライン安定時間判定部78が検出するベースライン安定時間t1を待機時間Tとすることもできる。その場合は
図5(A)の状況になる。試料のピークがベースライン安定後に検出されることは確実であるので測定精度の点では優れている。しかし、炭素測定装置の分析流路には、先に述べたような遅延チューブ42のような遅延部が設けられていることが一般的であるし、仮に遅延部が設けられていなくても分析流路の容量によっても遅延が生じるので、ベースライン安定時間t1からピーク開始時間tsまでの間にはその遅延による時間遅れが生じる。
【0070】
また、デフォルト値として設定された固定の待機時間T、又はユーザにより先に設定された待機時間Tにより測定を開始した場合、測定条件によっては
図5(A)の状況が生じる。
【0071】
そこで、待機時間変更部80は、その遅れ時間(ts−t1)だけ待機時間を短くした(T−(ts−t1))を新たな待機時間Tとして待機時間記憶部70に設定する。そのように設定された待機時間Tで測定を開始すると
図5(B)のように、ベースライン安定時間t1からピーク開始時間tsまでの時間差がなくなるか、又は時間差があってもその大きさが所定の範囲内に収まるようになる。
【0072】
図5(C)はピーク開始時間tsがベースライン安定時間t1より早く現れる状況を示している。この場合は、ベースライン安定時間t1は検出されない。この状況が生じるのは、実際の測定時の測定条件が、デフォルト値として設定された固定の待機時間T又はユーザにより先に設定された待機時間Tが想定している測定条件と異なっている場合である。
【0073】
この場合は、待機時間変更部80は、デフォルト値の待機時間T又はユーザにより先に設定された待機時間Tに一定時間αを加えた(T+α)を新たな待機時間Tとして待機時間記憶部70に設定する。そのように設定された待機時間Tで測定を開始すると
図5(D)のように、ベースライン安定時間t1の後にピーク開始時間tsが現れるようになる。
【0074】
一定時間αはユーザが適当な大きさに設定できる。αが小さすぎると1回の操作による新たな待機時間(T+α)では
図5(D)の状況にならないことがあるので、(T+2α)、(T+3α)といった複数回の操作が必要になる。逆にαが大きすぎてピーク開始時間tsがベースライン安定時間t1から離れすぎた場合は、
図5(A)から(B)に示した操作と組み合わせる。
【0075】
以上に説明した操作を基にして待機時間Tを自動的に設定する動作を
図6に示す。予備実験用の試料を試料導入部3又は3Aに設置し、その開閉口を閉じる。制御部48は操作者の手動入力により、又はカバーセンサ18又は18Aが設けられているときは、その検出信号によりその開閉口を閉じられたことを検知して、計時を開始し、演算処理装置45から検出信号を取り込む。測定開始部72は、待機時間記憶部70から待機時間T(デフォルト値又はユーザによる設定値)を読み取り、その待機時間Tになると、表示部82に測定開始が可能であることを表示し、操作者が測定を開始する。駆動機構74が設けられている場合は、測定開始部72は、駆動機構74を介して測定を開始する。
【0076】
ベースライン安定時間判定部78がベースライン安定時間t1を検知(
図5(C)の状況ではt1は検知されない。)し、ピーク開始時間判定部79がピーク開始時間tsを検知する。t1とtsがともに検知された場合は、その差(ts−t1)がしきい値以下であれば、待機時間変更部80は待機時間記憶部70の待機時間Tをそのままにしておく。t1とtsがともに検知され、その差(ts−t1)がしきい値よりも大きい場合と、tsが検知されたがt1が検知されなかった場合は、
図5(A)から(D)で説明した操作を行ってその差(ts−t1)がしきい値以下になるように、待機時間変更部80は新たな待機時間Tを待機時間記憶部70に設定する。
【0077】
次に、実試料の測定について説明する。
【0078】
図7は、待機時間記憶部70に設定された待機時間Tに基づいて測定を行う場合を示している。実試料を試料導入部3又は3Aに設置し、その開閉口を閉じる。操作者が開閉口を閉じたことを手動で制御部48に入力するか、又は制御部48がカバーセンサ18又は18Aの検出信号によりその開閉口を閉じられたことを検知すると、計時を開始する。測定開始部72が待機時間記憶部70から待機時間T(デフォルト値又はユーザによる設定値)を読み取り、その待機時間Tになると、表示部82に測定開始が可能であることを表示して操作者が測定を開始するのを待つか、又は駆動機構74を介して測定を開始する。測定終了後、Tc、Ic又はTOCが測定される。
【0079】
図8は、連続測定を行う場合であって、測定結果に基づいて次の試料のための待機時間Tを最適なものに更新していく場合を示している。実試料を試料導入部3又は3Aに設置し、その開閉口を閉じる。操作者が開閉口を閉じたことを手動で制御部48に入力するか、又は制御部48がカバーセンサ18又は18Aの検出信号によりその開閉口を閉じられたことを検知すると、計時を開始する。測定開始部72が待機時間記憶部70から待機時間T(デフォルト値又はユーザによる設定値)を読み取り、その待機時間Tになると、表示部82に測定開始が可能であることを表示して操作者が測定を開始するのを待つか、又は駆動機構74を介して測定を開始する。測定終了後、Tc、Ic又はTOCが測定される。その際、
図6の待機時間自動設定の動作で示したように、ベースライン安定時間判定部78がベースライン安定時間t1を検知(
図5(C)の状況ではt1は検知されない。)し、ピーク開始時間判定部79がピーク開始時間tsを検知して、(ts−t1)がしきい値以下になるように、新たな待機時間Tを待機時間記憶部70に設定し、それを次の試料の待機時間Tとして、連続測定に供する。
【0080】
第2の実施形態では、実試料を試料導入部3又は3Aに設置し、その開閉口を閉じる。ベースライン安定時間判定部78がベースライン安定時間t1を検知する。そして、ベースライン安定時間t1を検知した後に、測定開始部72が表示部82に測定開始が可能であることを表示して操作者が測定を開始するのを待つか、又は駆動機構74を介して測定を開始する。測定終了後、Tc、Ic又はTOCが測定される。この実施形態は、ベースラインが安定した後に試料ピークが現れることが確保されるので測定精度は確保でき、また待機時間を予め設定しなくてもすむので、操作性の点で優れている。一方、
図5(A)で説明したように、ベースライン安定時間t1からピーク開始時間tsまでに遅れ時間が発生する。デフォルトの待機時間又は先に設定された待機時間がこの遅れ時間よりも長くなる場合には、この実施形態によっても測定時間を短縮する効果を得ることができる。第1の実施形態はこの遅れ時間よりも短くすることができるので、測定時間の短縮という観点からは第1の実施形態の方が優れている。
【0081】
以上の上の実施例では、遅延部42を設けているが、本発明は、遅延チューブなどの遅延部としての独立した部品が設けられていない炭素測定装置も含む。
【0082】
以上、本発明の実施例を説明したが、実施例における構成、配置、数値等は一例であり、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変更が可能である。