特許第6127959号(P6127959)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6127959フェライト組成物、フェライトプレート、アンテナ素子用部材、およびアンテナ素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6127959
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】フェライト組成物、フェライトプレート、アンテナ素子用部材、およびアンテナ素子
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/30 20060101AFI20170508BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20170508BHJP
   H01F 1/34 20060101ALI20170508BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   C04B35/30
   C01G53/00 A
   H01F1/34 140
   H01F17/04 F
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-263283(P2013-263283)
(22)【出願日】2013年12月20日
(65)【公開番号】特開2015-117173(P2015-117173A)
(43)【公開日】2015年6月25日
【審査請求日】2016年7月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石倉 友和
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼根 晋
(72)【発明者】
【氏名】浅野 悟了
(72)【発明者】
【氏名】國塚 光祐
【審査官】 末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−340759(JP,A)
【文献】 特開2006−262053(JP,A)
【文献】 特開2008−050191(JP,A)
【文献】 特開2013−133263(JP,A)
【文献】 特開2005−132715(JP,A)
【文献】 特開2005−022892(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/069440(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/26−35/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主成分が、酸化鉄をFe2O3換算で45.0〜49.5モル%、酸化銅をCuO換算で4〜16.0モル%、酸化亜鉛をZnO換算で19.0〜25.0モル%を含有し、残部が酸化ニッケルで構成されており、前記主成分に対して、不可避不純物を除き、副成分として、酸化チタンをTiO2換算で0.5〜2質量%、酸化コバルトをCoO換算で0.35〜2質量%含有することを特徴とするフェライト組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物からなるフェライトプレート。
【請求項3】
フェライトプレートの一方の表面に粘着材層、他方の表面に保護層が設けられており、この2層によって保持された状態で、フェライトプレートが多数個の面状小片に分割された、請求項2に記載のフェライトプレートを用いたアンテナ素子用部材。
【請求項4】
請求項2に記載のフェライトプレートを有するアンテナ素子。
【請求項5】
請求項3に記載のアンテナ素子用部材を有するアンテナ素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信距離が長いアンテナ素子に好適なフェライト組成物と、該組成物からなるフェライトプレート、該フェライトプレートからなるアンテナ素子用部材、およびこれらのいずれかを備えたアンテナ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
13.56MHz帯RFID(Radio Frequency IDentification)システム、或いはNFC(Near Field Communication)システムは、ICカードやICタグと、リーダ/ライタとの間で、非接触での近距離無線通信を行う技術である。このようなICカードやICタグは、ICチップおよびアンテナコイルを備えており、リーダ/ライタにもアンテナコイルが備えられている。
【0003】
ICカード等をリーダ/ライタに近づけることで、これらのアンテナコイルの間で生じる電磁誘導により磁束が発生する。この磁束をICカード等とリーダ/ライタとの間でやりとりすることにより、電力の供給およびICチップに書き込まれた情報のやりとりが可能となる。
【0004】
このとき、アンテナコイルの背面等に通信回路などの金属が筐体内に一体的に配置されていると、発生した磁束により金属に渦電流が生じ、この渦電流が、発生した磁束とは逆向きの磁界を発生させてしまう。その結果、発生した磁束が弱まり通信距離が短くなる、あるいは通信ができなくなるという不具合が生じる。また、渦電流が生じることにより、熱的な損失も発生する。
【0005】
このような問題を解決するために、アンテナコイルと金属との間に透磁率の高い材料から構成される磁性体を配置することが提案されている。一般的に透磁率μは、複素透磁率μ=μ‘−jμ”として表現される(jは虚数単位)。複素透磁率の実部μ‘は通常の透磁率成分を、虚部μ”は損失を表す材料定数である。これらの材料定数が、近距離無線通信における通信距離を支配する因子となる。通信距離を向上させるためには低μ”で熱的な損失を抑えつつ、高いμ‘で磁束を集束させることが重要となる。
【0006】
NiZn系のフェライト材料は、高い抵抗率を有することから高周波帯域での損失を抑制でき、高周波用の磁性体材料として用いられることが多い。特にCoOを含有させることで高周波特性を改善するための各種工夫がなされている。例えば特許文献1ではCoOを含有させることでアンテナモジュール用磁芯部材としての特性改善がなされている。また特許文献2では、Coの分散性向上のため、予めスピネル化させたコバルトフェライト(CoFe2O4)の添加が開示されている。特許文献3ではCo2O3・Fe2O3として添加することでCoOの選択的反応を制御している。しかしながら、このような高周波材料は複素透磁率の実部μ‘の低下を伴い、アンテナ素子として実装した場合、十分な通信距離が得られないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−340759号公報
【特許文献2】特許第5224495号公報
【特許文献3】特開2013−133263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、高周波帯域(たとえば13.56MHz)において通信距離が長いアンテナ素子に好適なフェライト組成物と、該フェライト組成物からなるフェライトプレート、該フェライトプレートからなるアンテナ素子用部材、あるいは該アンテナ素子用部材を有するアンテナ素子とを、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るフェライト組成物は、主成分が、酸化鉄をFe2O3換算で45.0〜49.5モル%、酸化銅をCuO換算で4〜16.0モル%、酸化亜鉛をZnO換算で19.0〜25.0モル%を含有し、残部が酸化ニッケルで構成されており、前記主成分に対して、不可避不純物を除き、副成分として、酸化チタンをTiO2換算で0.5〜2質量%、酸化コバルトをCoO換算で0.35〜2質量%含有することを特徴とする。特にTiO2を含有することにより、μ”の周波数依存性が急峻になるため、RFID、或いはNFCの通信周波数である13.56MHz付近において、高いμ‘を維持しながら、μ”を低減することが可能となる。また本発明に係るフェライト組成物からなるフェライトプレート、或いはアンテナ素子用部材をアンテナ素子に適用することで、通信距離の向上を実現することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、主成分を構成する酸化物の含有量を上記の範囲とし、さらに副成分として酸化チタン、酸化コバルトを上記の範囲で含有させることにより、アンテナコイルを備えたICカードやICタグと、リーダ/ライタとの間の非接触近距離無線通信において、通信距離が長いアンテナ素子に好適なフェライト組成物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は本発明の一実施形態に係るアンテナ素子の概略分解斜視図である。
図2図2は粘着材層、保護層によって保持され多数個の面状小片に分割された、アンテナ素子用部材の部分断面図である。
図3図3は面状小片に分割されたアンテナ素子用部材において、TiO2とCoOを共に含有する場合と、CoOのみ含有する場合と、TiO2とCoO共に含有しない場合との複素透磁率の周波数特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに以下に記載した構成要素は、適宜組み合わせることができる。
【0013】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るアンテナ素子1は、粘着材層18と、ループ形状のアンテナコイル14と、保護層16と、フェライトプレート12とを有している。なお、図1では、外部との接続端子、通信処理回路等の図示を省略している。
【0014】
本実施形態に係るフェライトプレートは、本実施形態に係るフェライト組成物から構成されている。本実施形態に係るフェライト組成物は、NiCuZn系フェライトであり、主成分として、酸化鉄、酸化銅、酸化亜鉛および酸化ニッケルを含有している。
【0015】
主成分100モル%中、酸化鉄の含有量は、Fe2O3換算で、45.0〜49.5モル%、好ましくは45.5〜48.5モル%、より好ましくは46.0〜48.0モル%である。酸化鉄の含有量が少なすぎると、高周波帯域の複素透磁率の実部μ‘が低下し、多すぎると、高周波帯域の複素透磁率の虚部μ”が増大する傾向がある。いずれもアンテナ素子として使用する場合、通信距離の低下を招く要因となる。
【0016】
主成分100モル%中、酸化銅の含有量は、CuO換算で、4.0〜16.0モル%、好ましくは5.6〜14.8モル%、より好ましくは6.8〜12.0モル%である。酸化銅の含有量が少なすぎると、高周波帯域の複素透磁率の実部μ‘が低下し、多すぎると、異常粒成長を引き起こし、複素透磁率の実部μ‘は向上するものの、虚部μ”が急激に悪化する傾向がある。いずれもアンテナ素子として使用する場合、通信距離の低下を招く要因となる。
【0017】
主成分100モル%中、酸化亜鉛の含有量は、ZnO換算で、19.0〜25.0モル%、好ましくは20.0〜24.5モル%、より好ましくは21.0〜24.0モル%である。酸化亜鉛の含有量が少なすぎると、高周波帯域の複素透磁率の実部μ‘が低下し、多すぎると、高周波帯域の複素透磁率の虚部μ”が増大する傾向がある。いずれもアンテナ素子として使用する場合、通信距離の低下を招く要因となる。
【0018】
主成分の残部は、酸化ニッケルのみから構成されていてもよいし、不可避的不純物である酸化マンガンなどを含有していてもよい。主成分の残部に、酸化ニッケルが含有される場合、Ni−Cu−Zn系フェライト焼結体の主成分100モル%中、酸化ニッケルの含有量は、NiO換算で、9.5〜32.0モル%、好ましくは15.0〜30.0モル%、より好ましくは17.0〜28.0モル%である。酸化ニッケルの含有量がNiO換算で9.5モル%未満であった場合、複素透磁率の共鳴周波数が低周波側へシフトし、高周波帯域の複素透磁率の虚部μ”が増大する傾向がある。一方、酸化ニッケルの含有量がNiO換算で32.0モル%より多かった場合、高周波帯域のみならず低周波帯域においても複素透磁率の実部μ‘が低くなる傾向がある。いずれもアンテナ素子として使用する場合、通信距離の低下を招く要因となる。
【0019】
本実施形態に係るフェライト組成物は、上記の主成分に加え、副成分として、酸化チタン、および酸化コバルトを含有している。
【0020】
酸化チタンの含有量は、主成分に対して、TiO2換算で、0.5〜2質量%、好ましくは0.6〜1.9質量%、より好ましくは0.7〜1.8質量%である。酸化チタンの含有量が少なすぎると、高周波帯域の複素透磁率の実部μ‘が低下し、多すぎると複素透磁率の共鳴周波数が著しく低周波側へシフトし、その結果、高周波帯域の複素透磁率の虚部μ”が増大する傾向がある。いずれもアンテナ素子として使用する場合、通信距離の低下を招く要因となる。
【0021】
酸化コバルトの含有量は、主成分に対して、CoO換算で、0.35〜2質量%、好ましくは0.4〜1.5質量%、より好ましくは0.5〜1質量%である。酸化コバルトの含有量が少なすぎると、高周波帯域の虚部μ”が急激に悪化する。多すぎると高周波帯域の実部μ‘が低下するため、いずれもアンテナ素子として使用する場合、通信距離の低下を招く要因となる。
【0022】
なお、酸化チタンが単独で含有されている場合には上記の効果は十分に得られない。すなわち、上記の効果は、酸化チタンおよび酸化コバルトの2種が含有され、さらに酸化チタンと酸化コバルトの含有量が本発明の範囲内に制御された場合に初めて得られる複合的な効果である。
【0023】
本実施形態に係るフェライト組成物においては、主成分の組成範囲が上記の範囲に制御されていることに加え、副成分として、酸化チタン、および酸化コバルトが特定量含有されている。特に酸化チタンを添加することで、複素透磁率の虚部μ”の周波数依存性が急峻な振る舞いを示し、RFID、或いはNFCの通信周波数13.56MHz近傍において、高μ‘を維持しながら低μ”化が可能となる。このようなフェライト組成物をアンテナ素子として使用した場合に、通信距離の向上が可能となる。
【0024】
次に、本実施形態に係るフェライト組成物から構成されるフェライトプレートの製造方法の一例を説明する。
【0025】
まず、出発原料(主成分の原料および副成分の原料)を、所定の組成比となるように秤量して混合し、原料混合物を得る。混合する方法としては、たとえば、ボールミルを用いて行う湿式混合や、乾式ミキサーを用いて行う乾式混合が挙げられる。なお、平均粒径が0.1〜3μmの出発原料を用いることが好ましい。
【0026】
主成分の原料としては、酸化鉄(α−Fe2O3 )、酸化銅(CuO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ニッケル(NiO)、あるいはこれらを含む複合酸化物などを用いることができる。さらに、その他、焼成により上記した酸化物や複合酸化物となる各種化合物等を用いることができる。焼成により上記した酸化物になるものとしては、たとえば、金属単体、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、水酸化物、ハロゲン化物、有機金属化合物等が挙げられる。
【0027】
副成分の原料としては、酸化チタン(TiO2)、および酸化コバルト(Co3O4)を用いることができる。酸化コバルトについては、CoO、コバルトフェライト(CoFe2O4)でもよいが、Co3O4は、保管や取り扱いが容易であること、空気中でも価数が安定していること、量産性に優れていることから酸化コバルトの原料として好ましい。
【0028】
次に、原料混合物の仮焼きを行い、仮焼き材料を得る。仮焼きは、原料の熱分解、成分の均質化、フェライトの生成、焼結による超微粉の消失と適度の粒子サイズへの粒成長を促し、原料混合物を後工程に適した形態に変換するために行われる。こうした仮焼きは、好ましくは800〜1100℃の温度で、通常1〜3時間程度行う。仮焼きは、大気(空気)中で行ってもよく、大気中よりも酸素分圧が高い雰囲気や純酸素雰囲気で行っても良い。なお、主成分の原料と副成分の原料との混合は、仮焼きの前に行なってもよく、仮焼き後に行なってもよい。
【0029】
次に、仮焼き材料の粉砕を行い、粉砕材料を得る。粉砕は、仮焼き材料の凝集をくずして適度の焼結性を有する粉体とするために行われる。仮焼き材料が大きい塊を形成しているときには、粗粉砕を行ってからボールミルやアトライターなどを用いて湿式粉砕を行う。湿式粉砕は、粉砕材料の平均粒径が、好ましくは0.5〜2μm程度となるまで行う。
【0030】
得られた粉砕材料を用いて、本実施形態に係るフェライトプレートを製造する。該フェライトプレートを製造する方法については制限されないが、以下では、シート法を用いる。
【0031】
まず、得られた粉砕材料を、溶媒、バインダ、分散剤、可塑剤等の添加剤とともにスラリー化し、ペーストを作製する。そして、このペーストを用いて50〜350μmの厚みを有するグリーンシートを形成する。なお、得られたグリーンシートを複数枚積層してもよい。次いで、形成されたグリーンシートを所定の形状に加工し、脱バインダ工程、焼成工程を経て、本実施形態に係る30〜300μmの厚みを有するフェライトプレートが得られる。焼成は、好ましくは900〜1300℃の温度で、通常2〜5時間程度行う。また、焼成は、大気(空気)中で行ってもよく、大気中よりも酸素分圧が高い雰囲気で行っても良い。このようにして本実施形態に係るフェライトプレートが得られる。
【0032】
上述した実施形態では、フェライトプレートをシート法により製造したが、例えば、フェライト粉末とバインダー樹脂を混合した後、粉末圧縮成形法、射出成形法、カレンダー法、押し出し法等の公知の方法により製造してもよい。
【0033】
次いで、得られたフェライトプレートの片面(一方の表面)に粘着材層18、例えば、両面粘着テープを設ける。そして、粘着材層が形成されている面と反対側の表面(他方の表面)には、フェライトプレートの脱落を防ぐための保護層16を設ける。保護層の形成は、保護層を構成する樹脂のフイルムまたはシートを、必要により接着剤を介して焼結フェライト板の表面に接着することにより、または、保護層を構成する樹脂を含有する塗料を焼結フェライト板の表面に塗布することにより行う。フェライトプレートの両面をこの2層(粘着材層18と保護層16)で保持した状態にして、これらを圧延装置のローラーに対し0度方向,90度方向に1回ずつ通すことにより、フェライトプレートが格子状に多数個の面状小片に分割されて空隙19が生ずる(図2参照)。このようにして本実施形態に係る、屈曲性および柔軟性を有するアンテナ素子用部材が得られる。
【0034】
次いで、得られたアンテナ素子用部材20の粘着材層18の面に対し、非接触通信用のアンテナコイル14を張り付ける。アンテナコイル14は、中央に開口部を備えたループ形状のループアンテナ構造となっており、ループ形状は円形または略矩形または多角形のいずれであってもよい。さらに、アンテナコイル14の材質としては、導電性の金属製線材、金属製板材、金属製箔材、または金属製筒材等から適宜選択することができ、例えば金属線、金属箔、導電体ペースト、めっき転写、スパッタ、蒸着、もしくはスクリーン印刷によりアンテナコイル14を形成することができる。このようにして本実施形態に係るアンテナ素子1が得られる。
【0035】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様で実施し得ることは勿論である
【実施例】
【0036】
以下、本発明をさらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0037】
まず、主成分の原料として、Fe2O3、NiO、CuO、ZnO、を、副成分の原料として、TiO2およびCo3O4を準備し、表1に示す所定の配合となるように秤取し、これに500mLのイオン交換水を溶媒として加えて鋼鉄製ボールミルにて16時間混合し原料混合物を得た。
【0038】
得られた原料混合物を加熱炉を用いて最高温度800℃で2時間仮焼した後、これを炉冷し仮焼き材料を得た。仮焼き材料を30メッシュのふるいで解砕した後、再び500mLのイオン交換水を溶媒として加え、鋼鉄製ボールミルにて16時間湿式粉砕を行い粉砕材料を得た。
【0039】
得られた粉砕材料のフェライト粉末100質量%に、アジビン酸ジオクチル3.5質量%、ブチラール樹脂8質量%、および溶媒としてキシレンとイソブチルアルコールの混合溶液(キシレン:イソブチルアルコール=6:4(質量比))72質量%をボールミルで混合、溶解、分散して混合物(ペースト)を得た。混合物を油ロータリー真空ポンプで減圧脱泡した後、ポリエチレンテレフタレート(PET)フイルムに、得られた混合物をドクターブレードで一定の厚さに塗布し、100℃熱風で30分間乾燥して、厚さ120μmのグリーンシートを得た。
【0040】
次いで、得られたグリーンシートを昇温速度1℃/分で室温から500℃まで昇温し、500℃で3時間保持して脱脂した後、1000℃に加熱して2時間焼結を行い、厚さ約100μmのフェライトプレートを得た。
【0041】
得られたフェライトプレートの一方の表面に粘着材層として市販のアクリル系両面テープ(30μm)を、他方の表面に保護層として、市販のアクリル系粘着剤を塗布した片面粘着シート(30μm)を貼って、粘着材層と保護層によって保持された状態のフェライトプレートをGAP量:150μmに調整した圧延装置のローラーに対し、0度方向と90度方向に1回ずつ通すことにより、フェライトプレートが格子状に多数個の面状小片に分割されたアンテナ素子用部材を得た。
【0042】
アンテナ素子用部材の片面粘着シートを剥離し、分割されたフェライトプレートの形状とサイズを確認したところ、2〜3mmの格子状に分割されていた。
【0043】
<磁気特性評価>
複素透磁率は、多数個の面状小片に分割された厚み160μmのアンテナ素子用部材(フェライトプレートの厚みは100μm)から、外径18mm、内径10mmのピナクル金型を用いてトロイダル形状を打ち抜き、打ち抜いたアンテナ素子用部材6枚を互いに張り合わせたものを用い、インピーダンスアナライザ(Agilent Technologies社製、商品名:RFインピーダンス/マテリアル・アナライザ、形式:E4991A)と磁性材料測定電極(Agilent Technologies社製、商品名:磁性材料テストフィクスチャ、形式:16454A)を用い、測定温度25℃で磁気特性評価を行った。
【0044】
<アンテナ通信距離>
多数個の面状小片に分割された厚み160μmのアンテナ素子用部材(フェライトプレートの厚みは100μm)から、ピナクル金型により、50mm×40mmの寸法を有する長方形を打ち抜いて通信距離測定用の試料とした。アンテナ素子用部材の保護層を有する面に筐体セル、電池パックなどの金属を模した銅版を配置し、そして粘着材層を有する面に50mm×40mmの寸法を有するNFCシステム用のアンテナコイル(ループアンテナ構造、パターン:略矩形)を貼り付けて測定用のタグとした。タグとNFC用リーダーライター(ID Tech社製、商品名:コンタクトレスリーダ、形式:ViVOpay5000)との間でアンテナモジュールを構成して、13.56MHzの共振周波数における25℃の通信距離を測定した。
【0045】
得られた測定評価結果を表1に示す。Ni−Cu−Zn系フェライト焼結体の参考例としてIBF10(シリーズ名 TDK社製)を記載した。本実施例では、通信距離がIBF10より良好(50.0mm以上)であることが望ましく、かつμ‘は165以上、μ”は7以下であることがさらに望ましい。
【0046】
【表1】
【0047】
表1より副成分であるTiO2及びCoOの2種が含有され、かつ含有量が本発明の範囲内である場合(実施例1〜38)、高いμ‘を維持しつつ低μ”化が可能となり、良好な通信距離が得られることが確認された。これに対し、副成分であるTiO2及びCoOの2種が共に含有されない場合(比較例13)、μ”の増大を招き、通信距離の低下が確認された。また、いずれか一種類しか含有されない場合(比較例1、3、11、12)、μ‘の低下、或いはμ”の増大を招き、通信距離の低下が確認された。特に、同等のμ‘が得られる実施例9と比較例12の複素透磁率周波数特性を示した図3より、TiO2を含有している実施例9のμ”プロファイルがより急峻になっていることが確認できる。
【0048】
またFe2O3、CuO、及びZnOいずれかの含有量が本発明の範囲外となる場合(比較例5〜10)、μ‘の低下、或いはμ”の増大を招き、通信距離の低下が確認された。
【0049】
これらの結果より、本発明による実施例のフェライト組成物は、比較例及び参考例のものに比して、高μ‘化、低μ”化で優位性が示され、アンテナ素子用として適用することで通信距離が格別に向上することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上のように、本発明に係るフェライト組成物を、アンテナ素子用部材に適用することで、通信距離を飛躍的に向上させることが確認できた。また一定の通信距離を維持したまま、アンテナの薄型化も可能になることから、省スペース化という意味でも有用である。
【符号の説明】
【0051】
1 ・・・アンテナ素子
12・・・フェライトプレート
14・・・アンテナコイル
16・・・保護層
18・・・粘着材層
19・・・空隙
20・・・アンテナ素子用部材
図1
図2
図3