(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、車両において、信号系の電線をパワー系の電線から十分に離れた位置に配線することが難しい場合がある。この場合、パワー系の電線から信号系のアース線へのノイズの影響が大きくなりやすい。
【0007】
また、車両において、電装機器と接地に適した基準電位体とが離れている場合がある。例えば、車両のボディがカーボンボディを含む場合、金属フレームなどの接地に適した基準電位体が電装機器の近くに存在しないという状況が生じやすい。
【0008】
電装機器と基準電位体とが離れている場合、長いアース線が必要となる。この場合も、パワー系の電線から信号系の電線へのノイズの影響が大きくなりやすい。さらに、通常は細い信号系の電線においては、電気抵抗の抑制のために長いアース線を採用することはできない。
【0009】
本発明は、ワイヤハーネスの接続対象である電装機器と基準電位体とが離れている場合においても、種類の異なる複数の電線をそれら相互間のノイズの影響を小さくしつつ近くにまとめて配線できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1態様に係るワイヤハーネスは、複数の電線と、金属を主成分とし内側に空洞が形成されたシールド兼接地部材とを備える。上記シールド兼接地部材は、複数の上記電線を上記空洞に通された第一電線群と外側面に沿う第二電線群とに仕切っている。さらに、上記シールド兼接地部材は、本体部と第一被接続部と第二被接続部と接地部とを有する。上記本体部は、前記空洞を囲む部分である。上記第一被接続部は、上記第一電線群に含まれる第一アース線の端部が接続される部分である。上記第二被接続部は、上記第二電線群に含まれる第二アース線が接続される部分である。上記接地部は、直接もしくは他の導体を介して接地用の基準電位体に接続される部分である。
【0011】
第2態様は第1態様の一例である。第2態様に係るワイヤハーネスにおいて、上記シールド兼接地部材の上記本体部には、その全長に亘って上記空洞に通じる開口が形成されている。
【0012】
第3態様は第2態様の一例である。第3態様に係るワイヤハーネスの上記シールド兼接地部材において、上記第一被接続部は上記本体部の上記開口に対向する位置に形成されている。
【0013】
第4態様は第1態様の一例である。第4態様に係るワイヤハーネスにおいて、上記シールド兼接地部材の上記本体部は、金属の板材が上記第一電線群の周囲を囲む筒状に曲げられた構造を有する。
【0014】
第5態様は第1態様から第4態様のいずれか1つの一例である。第5態様に係るワイヤハーネスは、上記接地部に接続された柔軟な連結用導体によって連結された複数の上記シールド兼接地部材を備える。
【発明の効果】
【0015】
上記の各態様において、第一電線群および第二電線群のうちの一方は他方に対してノイズの影響を与える側の電線群である。また、上記の各態様において、金属を主成分とするシールド兼接地部材が、複数の電線群を第一電線群と第二電線群とに仕切っている。そのため、種類の異なる第一電線群および第二電線群を、それら相互間のノイズの影響を小さくしつつ近くにまとめて配線することができる。
【0016】
また、上記の各態様において、第一アース線および第二アース線は、シールド兼接地部材を介して基準電位体に対して電気的に接続される。そのため、シールド兼接地部材において、第一被接続部および第二被接続部をそれに対応する電装機器の近くに設けることができ、接地部を基準電位体の近くに設けることができる。
【0017】
従って、第一電線群および第二電線群の接続対象である電装機器と基準電位体とが離れている場合においても、比較的短いアース線を採用することができる。そのため、第一電線群および第二電線群の間において、アース線を通じた電磁ノイズの伝搬が生じにくい。即ち、電装機器と基準電位体とが離れている場合においても、第一電線群および第二電線群の間におけるノイズの影響を小さくすることができる。
【0018】
また、第2態様において、第一電線群は、シールド兼接地部材の本体部における開口から空洞へ挿入されれば、本体部の空洞を貫通した状態になる。この場合、本体部がパイプである場合とは異なり、第一電線群の先通しを必要としない。そのため、ワイヤハーネスの組み立てが容易となる。なお、電線の先通しは、電線の端末処理が行われる前に、電線をその端部からパイプの中空部に通すことを意味する。
【0019】
また、第3態様によれば、第一アース線におけるシールド兼接地部材の本体部の開口から第一被接続部までに亘る部分をごく短くすることができる。そのため、第一アース線の配線が容易であり、また、第一アース線を通じて生じるノイズをさらに抑制できる。
【0020】
また、第4態様において、シールド兼接地部材の本体部が筒状であり、本体部における内側の空洞へ通じる隙間が小さい。そのため、本体部のシールド性能をより高めることができる。さらに、金属の板材が第一電線群の周囲を囲む筒状に曲げられることにより、第一電線群の先通しを要することなく筒状の本体部を作ることができる。そのため、ワイヤハーネスの組み立てが容易となる。
【0021】
また、第5態様において、複数のシールド兼接地部材を、柔軟な連結用導体を曲げ部として曲がった経路に沿って配置することが容易となる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付の図面を参照しながら、実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。以下に示される各実施形態および応用例は、自動車などの車両に搭載されるワイヤハーネスおよびその部品についての実施形態およびその応用例である。
【0024】
<第1実施形態>
まず、
図1〜4を参照しつつ、第1実施形態に係るワイヤハーネス10について説明する。
図1,2が示すように、ワイヤハーネス10は、複数の電線1,2とシールド兼接地部材3とを備えている。さらに
図1,2が示す例では、ワイヤハーネス10は、結束材4および主アースケーブル5も備えている。
【0025】
<電線>
複数の電線1,2は、相対的に電磁ノイズの発生源となりやすい電線群と、相対的に他から電磁ノイズの影響を受けやすい電線群とを含む。本実施形態においては、後者を第一電線群1と称し、前者を第二電線群2と称する。
【0026】
例えば、第一電線群1は複数の信号系の電線であり、第二電線群2は複数のパワー系の電線である。電線1,2各々は、線状の導体とその導体の周囲を覆う絶縁被覆とを有する絶縁電線である。
【0027】
<シールド兼接地部材>
シールド兼接地部材3は、金属を主成分とし内側に空洞30が形成された部材である。例えば、シールド兼接地部材3が、アルミニウム、鉄または銅を主成分とする金属部材であることが考えられる。
【0028】
シールド兼接地部材3は、第一電線群1および第二電線群2の接続先の機器の準電位配線とそれらの機器から離れた位置に存在する基準電位体とを電気的に接続するための部材である。そのため、シールド兼接地部材3の材料および太さ(断面積)は、その長手方向の一端から他端までのインピーダンスが十分に小さくなるように設計されている。
【0029】
シールド兼接地部材3は、本体部31と第一被接続部32と第二被接続部33と接地部34とを有する。本体部31は、空洞30を囲む部分である。本体部31の空洞30は配線路である。第一被接続部32、第二被接続部33および接地部34は、本体部31に連なって形成されている。
【0030】
本実施形態では、第一電線群1が本体部31の空洞30に通されており、第二電線群2が本体部31の外側面に沿って配線されている。そのため、
図2,3が示すように、シールド兼接地部材3の本体部31は、複数の電線1,2を空洞30に通された第一電線群1と外側面に沿う第二電線群2とに仕切っている。なお、
図3において第一電線群1および第二電線群2が仮想線(二点鎖線)で示されている。
【0031】
第二電線群2は、本体部31の外側面に沿う状態で本体部31に留められている。本実施形態では、第二電線群2は、結束材4によって本体部31と結束されており、この結束材4が第二電線群2を本体部31に留めている。
【0032】
結束材4は、例えば粘着テープまたは結束ベルトなどである。なお、
図2において結束材4の図示は省略されている。
【0033】
第一電線群1は、第一主電線11と第一アース線12とを含む。第一アース線12は、第一主電線11の接続先の機器と接地用の基準電位体とを電気的に接続するための電線である。
【0034】
同様に、第二電線群2も第二主電線21と第二アース線22とを含む。第二アース線22は、第二主電線21の接続先の機器と接地用の基準電位体とを電気的に接続するための電線である。
【0035】
シールド兼接地部材3の本体部31には、その全長に亘って空洞30に通じる開口311が形成されている。即ち、本体部31の空洞30は溝状である。そのため、第一電線群1は、本体部31における開口311から空洞30へ挿入されれば、本体部31の空洞30を貫通した状態になる。
【0036】
第一アース線12は、本体部31の空洞30から開口311を経由して第一被接続部32まで配線される。即ち、開口311は、第一アース線12の引き出し口でもある。
【0037】
図3は、シールド兼接地部材3における第一被接続部32が形成された部分の断面図である。
図3が示す本体部31の断面形状はあくまで一例である。例えば、本体部31の断面形状が円弧に沿った形状であること、または矩形に沿った形状であることなども考えられる。
【0038】
シールド兼接地部材3において、第一被接続部32は、第一電線群1に含まれる第一アース線12の端部が接続される部分である。本実施形態では、第一アース線12の端部に第一アース端子121が接続されている。
【0039】
図1,2が示す例では、第一被接続部32はネジ孔が形成された端子座であり、第一アース端子121がネジ6によって第一被接続部32に固定されている。これにより、第一アース線12の端部は、第一アース端子121を介して第一被接続部32に接続されている。
【0040】
一方、シールド兼接地部材3の第二被接続部33は、第二電線群2に含まれる第二アース線22が接続される部分である。本実施形態では、第二アース線22の端部に第二アース端子221が接続されている。
【0041】
図1,2が示す例では、第二被接続部33はネジ孔が形成された端子座であり、第二アース端子221がネジ6によって第二被接続部33に固定されている。これにより、第二アース線22の端部は、第二アース端子221を介して第二被接続部33に接続されている。
【0042】
図4が示すように、シールド兼接地部材3において、第一被接続部32は、第一電線群1の接続先である制御系機器82に対して比較的近い位置に設けられる。同様に、第二被接続部33は、第二電線群2の接続先であるパワー系機器84に対して比較的近い位置に設けられる。
【0043】
図4が示す例では、第一電線群1は、制御系電源81と制御系機器82とを電気的に接続している。また、第二電線群2は、駆動系電源83とパワー系機器84とを電気的に接続している。
【0044】
なお、
図4において、車両9が仮想線(二点鎖線)で示されている。ワイヤハーネス10が搭載される車両9において、
図4が示す機器の配置はあくまで一例である。
【0045】
本実施形態において、第一被接続部32は本体部31の開口311に対向する位置に形成されている。より具体的には、第一被接続部32は、本体部31の開口311の縁から本体部31の側方へ張り出して形成されている。
【0046】
同様に、第二被接続部33も、本体部31の開口311の縁から本体部31の側方へ張り出して形成されている。従って、第一被接続部32および第二被接続部33は、本体部31から同じ側方へ張り出して形成されている。
【0047】
なお、
図1,2が示す例では、便宜上、1つの第一被接続部32および1つの第二被接続部33が近接した位置に設けられている。しかしながら、第一被接続部32および第二被接続部33の数および位置は、車両9における第一電線群1および第二電線群2各々の接続先の数および位置に応じて定められる。
【0048】
接地部34は、直接もしくは他の導体を介して接地用の基準電位体に接続される部分である。例えば、接地部34は、主アースケーブル5を介して基準電位体に接続される。
【0049】
主アースケーブル5は、その長手方向の一端から他端までのインピーダンスが十分に小さな導体とその導体の周囲を覆う絶縁被覆とを有する絶縁電線である。例えば、主アースケーブル5の導体のインピーダンスは、電線1,2各々の導体のインピーダンスよりも小さい。
【0050】
図1,2が示す例では、主アースケーブル5の両端部各々に第一主アース端子51および第二主アース端子52が接続されている。接地部34はネジ孔が形成された端子座であり、第一主アース端子51がネジ6によって接地部34に固定されている。そして、第二主アース端子52が基準電位体に接続される。これにより、接地部34は、主アースケーブル5を介して基準電位体に接続される。
【0051】
図4が示す例では、主アースケーブル5が接続される基準電位体は、バッテリ80のマイナス端子801である。
図4が示すように、接地部34は、基準電位体に対して比較的近い位置に設けられる。
【0052】
例えば、
図1,2が示す例において、接地部34は、本体部31の開口311の縁から本体部31の側方へ張り出して形成されている。従って、第一被接続部32、第二被接続部33および接地部34は、本体部31から同じ側方へ張り出して形成されている。
【0053】
<効果>
ワイヤハーネス10において、第二電線群2は第一電線群1に対してノイズの影響を与える側の電線群である。金属を主成分とするシールド兼接地部材3が、複数の電線1,2を第一電線群1と第二電線群2とに仕切っている。そのため、種類の異なる第一電線群1および第二電線群2を、それら相互間のノイズの影響を小さくしつつ近くにまとめて配線することができる。
【0054】
さらに、種類の異なる第一電線群1および第二電線群2がシールド兼接地部材3によって合体した状態にまとめられるため、ワイヤハーネス10を車両9に容易に取り付けることができる。
【0055】
また、ワイヤハーネス10において、第一アース線12および第二アース線22は、シールド兼接地部材3を介して基準電位体に対して電気的に接続される。基準電位体は、例えばバッテリ80のマイナス端子801である。そのため、シールド兼接地部材3において、第一被接続部32および第二被接続部33をそれに対応する電装機器(アース対象の機器)の近くに設けることができ、接地部34を基準電位体の近くに設けることができる。
【0056】
従って、第一電線群1および第二電線群2の接続対象である電装機器と基準電位体とが離れている場合においても、比較的短い第一アース線12および第二アース線22を採用することができる。そのため、第一電線群1および第二電線群2の間において、アース線を通じた電磁ノイズの伝搬が生じにくい。即ち、電装機器と基準電位体とが離れている場合においても、第一電線群1および第二電線群2の間におけるノイズの影響を小さくすることができる。
【0057】
なお、第一電線群1および第二電線群2の接続対象である電装機器と基準電位体とが離れている場合の例は、車両9のボディがカーボンボディを含む場合などである。
【0058】
また、第一電線群1は、シールド兼接地部材3の本体部31における開口311から空洞30へ挿入されれば、本体部31の空洞30を貫通した状態になる。この場合、本体部がパイプである場合とは異なり、第一電線群1の先通しを必要としない。そのため、ワイヤハーネス10の組み立てが容易となる。
【0059】
また、シールド兼接地部材3において、第一被接続部32が本体部31の開口311に対向する位置に形成されている。この場合、第一アース線12における本体部31の開口311から第一被接続部32までに亘る部分をごく短くすることができる。そのため、第一アース線12の配線が容易であり、また、第一アース線12を通じて生じるノイズをさらに抑制できる。
【0060】
<第1応用例>
次に、
図5,6を参照しつつ、ワイヤハーネス10に適用可能な第1応用例に係るシールド兼接地部材3Aについて説明する。
図5はシールド兼接地部材3Aにおける第一被接続部32の部分の断面図である。また、
図6はシールド兼接地部材3Aにおける第一被接続部32付近の側面図である。なお、
図5において第一電線群1および第二電線群2が仮想線で示されている。
【0061】
図5,6において、
図1〜4に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、シールド兼接地部材3Aにおけるシールド兼接地部材3と異なる点について説明する。
【0062】
シールド兼接地部材3Aも、シールド兼接地部材3と同様に、本体部31、第一被接続部32、第二被接続部33および接地部34を有している。シールド兼接地部材3Aにおいて、第一被接続部32、第二被接続部33および接地部34は、本体部31から同じ側方へ張り出して形成されている。なお、
図5,6には、第二被接続部33および接地部34は示されていない。
【0063】
さらに、シールド兼接地部材3Aの本体部31にも、その全長に亘って空洞30に通じる開口311が形成されている。
【0064】
しかしながら、
図5が示すように、シールド兼接地部材3Aにおいて、第一被接続部32は本体部31の開口311に対向しない位置に形成されている。さらに、シールド兼接地部材3Aの本体部31における第一被接続部32の近傍部分には、空洞30に通じる欠け部35が形成されている。
【0065】
欠け部35は、本体部31における開口311の縁から切れ込んで形成されている。第一アース線12は、本体部31の空洞30から欠け部35を経由して第一被接続部32まで配線される。即ち、欠け部35は、第一アース線12の引き出し口である。
【0066】
図5,6が示すようなシールド兼接地部材3Aが、シールド兼接地部材3の代わりにワイヤハーネス10に適用されてもよい。
【0067】
<第2応用例>
次に、
図7を参照しつつ、ワイヤハーネス10に適用可能な第2応用例に係るシールド兼接地部材3Bについて説明する。
図7はシールド兼接地部材3Bにおける第一被接続部32の部分の断面図である。なお、
図7において第一電線群1および第二電線群2が仮想線で示されている。
【0068】
図7において、
図1〜6に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、シールド兼接地部材3Bにおけるシールド兼接地部材3,3Aと異なる点について説明する。
【0069】
シールド兼接地部材3Bも、シールド兼接地部材3,3Aと同様に、本体部31、第一被接続部32、第二被接続部33および接地部34を有している。シールド兼接地部材3Aにおいて、第一被接続部32、第二被接続部33および接地部34は、本体部31から側方へ張り出して形成されている。なお、
図7には、接地部34は示されていない。
【0070】
シールド兼接地部材3Bの本体部31にも、その全長に亘って空洞30に通じる開口311が形成されている。さらに、シールド兼接地部材3Bにおいて、第一被接続部32および第二被接続部33は本体部31の開口311に対向しない位置に形成されている。
【0071】
なお、シールド兼接地部材3Bの本体部31における第一被接続部32の近傍部分には、第1応用例と同様に欠け部35が形成されているが、
図7にはその欠け部35は示されていない。
【0072】
図7が示すように、本応用例においては、第一被接続部32および第二被接続部33は、本体部31から相互に反対の側方へ張り出して形成されている。この点がシールド兼接地部材3Bにおけるシールド兼接地部材3Aと異なる点である。
図7が示すようなシールド兼接地部材3Bが、シールド兼接地部材3の代わりにワイヤハーネス10に適用されてもよい。
【0073】
<第3応用例>
次に、
図8〜10を参照しつつ、ワイヤハーネス10に適用可能な第3応用例に係るシールド兼接地部材3Cについて説明する。
図8はシールド兼接地部材3Cの断面図である。
図9はシールド兼接地部材3Cの斜視図である。
図10はシールド兼接地部材3Cの展開図(斜視図)である。
【0074】
なお、
図8,9において第一電線群1および第二電線群2が仮想線で示されている。同様に、
図10において、第一電線群1が仮想線で示されている。
【0075】
図8〜10において、
図1〜7に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、シールド兼接地部材3Cにおけるシールド兼接地部材3と異なる点について説明する。
【0076】
シールド兼接地部材3Cも、シールド兼接地部材3と同様に、本体部31c、第一被接続部32c、第二被接続部33cおよび接地部34cを有している。シールド兼接地部材3Cにおいて、第一被接続部32c、第二被接続部33cおよび接地部34cは、本体部31cから同じ側方へ張り出して形成されている。
【0077】
シールド兼接地部材3Cにおいて、本体部31cは、金属の板材300が第一電線群1の周囲を囲む筒状に曲げられた構造、即ち、空洞30を囲む筒状に曲げられた構造を有する。
【0078】
図10は、筒状に曲げられる前の金属の板材300を示している.
図10が示す例では、板材300には、平行に並ぶ複数の折り目312が形成されている。板材300は、これら折り目312に沿って曲げられることによって断面が多角形の筒状になる。
【0079】
図8〜10が示す例では、シールド兼接地部材3Cの本体部31cは断面が六角形の筒状に形成されている。このような本体部31cは、金属の板材300が5本の直線状の折り目312に沿って折り曲げられることによって得られる。
【0080】
また、板材300は、相互に反対側に位置する一対の縁部の一方に複数の張出部321,331,341を有し、一対の縁部の他方にも複数の張出部322,332,342を有している。
【0081】
板材300が筒状に曲げられた状態において、一対の第一張出部321,322が重ねられ、一対の第二張出部331,332が重ねられ、一対の第三張出部341,342が重ねられる。
【0082】
本応用例においては、重なった一対の第一張出部321,322が第一被接続部32cを成し、重なった一対の第二張出部331,332が第二被接続部33cを成し、重なった一対の第三張出部341,342が接地部34cを成す。
【0083】
例えば、重なった一対の第一張出部321,322、重なった一対の第二張出部331,332および重なった一対の第三張出部341,342は、それぞれ溶接またはネジ止めなどによって重なった状態に保持される。これにより、本体部31cが筒状に維持される。
【0084】
そして、第一電線群1の第一アース線12の端部が第一被接続部32cに接続され、第二電線群2の第二アース線22の端部が第二被接続部33cに接続される。さらに、接地部34cは、直接もしくは他の導体を介して接地用の基準電位体に接続される。例えば、接地部34cは、主アースケーブル5を介して基準電位体に接続される。
【0085】
さらに、板材300の縁部における第一張出部321の近傍部分には欠け部35が形成されている。この欠け部35は、板材300が筒状に曲げられた状態において、本体部31cの空洞30に通じる欠け部(開口)となる。
【0086】
第一アース線12は、本体部31cの空洞30から欠け部35を経由して第一被接続部32cまで配線される。即ち、欠け部35は、第一アース線12の引き出し口である。
【0087】
図8,9が示すようなシールド兼接地部材3Cが、シールド兼接地部材3の代わりにワイヤハーネス10に適用されてもよい。
【0088】
シールド兼接地部材3Cにおいて、本体部31cが筒状であり、本体部31cにおける内側の空洞30へ通じる隙間が小さい。そのため、本体部31cのシールド性能をより高めることができる。
【0089】
さらに、
図10が示すように、金属の板材300が第一電線群1の周囲を囲む筒状に曲げられることにより、第一電線群1の先通しを要することなく筒状の本体部31cを作ることができる。そのため、ワイヤハーネス10の組み立てが容易となる。
【0090】
<第2実施形態>
次に、
図11を参照しつつ、第2実施形態に係るワイヤハーネス10Xについて説明する。ワイヤハーネス10Xは、
図1〜4が示すワイヤハーネス10と比較して、複数のシールド兼接地部材3,3Xを備えている点が異なる。
【0091】
図11はワイヤハーネス10Xの概略平面図である。
図11において、
図1〜10に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、ワイヤハーネス10Xにおけるワイヤハーネス10と異なる点について説明する。
【0092】
ワイヤハーネス10Xは、シールド兼接地部材3と他のシールド兼接地部材3Xとを備えている。一方のシールド兼接地部材3は、例えば
図1〜3が示すシールド兼接地部材3と同じ構造を有している。他方のシールド兼接地部材3Xは、シールド兼接地部材3に連結部36が追加された構造を有している。
【0093】
シールド兼接地部材3Xにおいて、連結部36は本体部31に連なって形成された部分である。シールド兼接地部材3Xの連結部36は、連結用導体によってシールド兼接地部材3の接地部34と連結される。
【0094】
図11が示す例では、シールド兼接地部材3Xの連結部36とシールド兼接地部材3の接地部34とが連結ケーブル5Xによって連結されている。連結ケーブル5Xは、その長手方向の一端から他端までのインピーダンスが十分に小さな導体とその導体の周囲を覆う絶縁被覆とを有する絶縁電線である。例えば、連結ケーブル5Xの導体のインピーダンスは、電線1,2各々の導体のインピーダンスよりも小さい。
【0095】
シールド兼接地部材3Xの本体部31とシールド兼接地部材3の本体部31とは、連結ケーブル5Xを介して電気的に接続されている。
【0096】
連結ケーブル5Xは曲げ変形可能な柔軟性を有している。例えば、連結ケーブル5Xの導体は撚り線である。そのため、
図11が示すように、複数のシールド兼接地部材3,3Xを、柔軟な連結ケーブル5Xを曲げ部として曲がった経路に沿って配置することが容易となる。なお、連結ケーブル5Xの導体は柔軟な連結用導体の一例である。
図11が示すようなワイヤハーネス10Xがワイヤハーネス10の代わりに採用されてもよい。
【0097】
<他の応用例>
複数の電線1,2のうち、第一電線群1が相対的に電磁ノイズの発生源となりやすい電線群であり、第二電線群2が相対的に他から電磁ノイズの影響を受けやすい電線群であることも考えられる。例えば、第一電線群1がパワー系の電線群であり、第二電線群2が信号系の電線群であることも考えられる。
【0098】
図1〜7に示されるシールド兼接地部材3,3A,3Bの本体部31が、金属の板材が筒状に曲げられた構造を有することも考えられる。
【0099】
また、シールド兼接地部材3,3A,3Bの本体部31が、周方向において継ぎ目のない金属パイプであることも考えられる。この場合、第一被接続部32および第二被接続部33は、本体部31(金属パイプ)における端の開口の近傍に形成されることが考えられる。
【0100】
また、ワイヤハーネス10Xにおいて、シールド兼接地部材3,3Xの本体部31が、周方向において継ぎ目のない金属パイプであることも考えられる。
【0101】
シールド兼接地部材3,3A,3B,3Xの接地部34,34cが、ネジ6などによって例えば車両9の金属フレームなどの基準電位体に対して直接接続されることも考えられる。この場合、主アースケーブル5は不要である。
【0102】
なお、本発明に係るワイヤハーネスは、各請求項に記載された発明の範囲において、以上に示された各実施形態および各応用例を自由に組み合わせること、或いは各実施形態および各応用例を適宜、変形するまたは一部を省略することによって構成されることも可能である。