(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
長手方向に2本以上並列して連続走行する糸条を検査する検査工程、前記糸条を回収する回収工程、回収完了後に回収された糸条全てを予め定められた位置で切断して複数糸条を束とした束状製品を得る切断工程、を有する束状製品の製造方法において、前記検査工程で得られた検査結果に基づき、前記束状製品を構成する複数糸条の総本数、総重量、代表重量、総外径値、代表外径値、総表面積および代表表面積からなる群から選ばれる少なくともひとつの複数糸条の管理量が所定の値を超えるよう、前記回収工程における回収量を調整し、更に、前記複数糸条の管理量が、束状製品を構成する複数糸条の総表面積または代表表面積であり、前記検査工程において糸条の外径を計測し、得られた外径計測値から糸条の表面積を算出することを特徴とする束状製品の製造方法。
前記検査工程によって異常を含むと判定された糸条を複数糸条の束から排除する排除工程を更に有し、該排除工程によって異常を含む糸条を排除した後に束状製品を構成する複数糸条の総本数、総重量、代表重量、総外径値、代表外径値、総表面積および代表表面積からなる群から選ばれる少なくともひとつの複数糸条の管理量が所定の値を超えるよう、前記回収工程における回収量を調整することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の束状製品の製造方法。
長手方向に2本以上並列して連続走行する糸条を検査する検査ユニット、前記糸条を回収する回収ユニット、回収完了後に回収された糸条全てを予め定められた位置で切断して複数糸条を束とした束状製品を得る切断ユニット、を有する束状製品の製造装置において、前記検査ユニットで得られた検査結果に基づき、前記束状製品を構成する複数糸条の総本数、総重量、代表重量、総外径値、代表外径値、総表面積および代表表面積からなる群から選ばれる少なくともひとつの複数糸条の管理量が所定の値を超えるよう、前記回収ユニットにおける回収量を調整し得る回収量調整ユニットを更に有し、前記検査ユニットが糸条の外径を計測して得られた外径計測値から糸条の表面積を算出し得る手段を有することを特徴とする束状製品の製造装置。
前記検査ユニットによって異常を含むと判定された糸条が製品出荷前に複数糸条の束から排除されることを前提とし、異常を含む糸条が排除された後に束状製品を構成する複数糸条の総本数、総重量、代表重量、総外径値、代表外径値、総表面積および代表表面積からなる群から選ばれる少なくともひとつの複数糸条の管理量が所定の値を超えるよう、前記回収量調整ユニットが回収ユニットの回収量を調整することを特徴とする請求項7または8に記載の束状製品の製造装置。
【背景技術】
【0002】
繊維やファイバ、中空糸膜に代表される糸条など(以降、単に「糸条」と記す場合もある)は過去より糸条単独で糸条製品として、もしくは糸条を主要な構成部材として製造される最終製品として色々な分野や用途において利用、活用されてきた。とりわけ複数の糸条を束ねて得られる糸条束は糸条単独の場合に比べて製品としての性能を飛躍的に大きくできる場合が多く、糸条束自体を束状製品として、もしくは束状製品を主要な構成部材として製造される最終製品として広く利用されるようになってきた。
【0003】
ここで、高機能な束状製品を構成する糸条として注目を浴びているものとしては、高強度・低重量が特徴の炭素繊維や情報化社会を支える光ファイバ、各種フィルターに利用される中空糸膜などが上げられる。これらは、既に述べたように糸条単独よりも束状製品として用いられることで飛躍的に優れた性能を発揮できるものであるため、糸条単独ではなく複数本の糸条が組み合わされた束状製品トータルとして性能を保証されるべきものである。したがって、束状製品としての製造、およびその管理においてはより一層の注意を要するものである。
【0004】
具体的に下水処理や海水淡水化などの水処理に用いられる中空糸膜フィルター(以下、「モジュール」と記す場合もある。)の例を挙げて説明する。一般的な中空糸膜フィルターでは、ケースと呼ばれる樹脂製や金属製の容器の中に中空糸膜の糸束が格納されている。この容器の中に流入させた原水を中空糸膜の外側(もしくは内側)から内側(もしくは外側)へ通すことで原水に対して濾過効果が発揮され、ケースの外部へ不純物が除去された濾過水と不純物が濃縮された濃縮水を分離して流出させる仕組みとなっている。
【0005】
このモジュールの濾過性能を決定付ける要素は多々あるが、特に重要なものは中空糸膜束の量と不良中空糸膜(以下、単に「不良糸」と記す場合もある)の混入有無の二つである。
【0006】
中空糸膜束の量としては、最終製品たるモジュールの用途や顧客の要求性能によって以下に挙げる複数の物理量の中から少なくとも一つが選ばれることが一般的である。すなわち、モジュールに含まれる全ての中空糸膜を対象とした、本数、外径、表面積、重量などが挙げられる(以下、これらの一部、もしくは全てを含めて「管理量」と記す場合もある)。この管理量が所定の値を下回るとモジュールは充分な濾過性能を発揮することができない。
【0007】
一方、不良中空糸膜としては、その表面にキズ、欠損、異物、凹み、膨らみ、巨大穴等を含むものや、その形状が過太り(薄膜)、過細り(厚膜)、つぶれ・扁平、ねじれ、閉塞等が挙げられる(以下、これらの一部、もしくは全てを含めて「不良」と記す場合もある)。不良中空糸膜がモジュールを構成する中空糸膜束に含まれている場合も、モジュールは充分な性能を発揮することができないばかりか、少数の不良中空糸膜が混入していたことが原因でモジュール全体の製品寿命を縮めてしまう可能性がある(例えばモジュール使用中の不良部分の破損による原水の濾過水への混ざり込み等が例示される)。
【0008】
ここで中空糸膜束の製造方法としては、原料を口金によって中空形状の糸条に成形した後、様々な処理を施した後で、例えば回転カセによって糸条を巻き取り、巻き取られた糸条全てを予め定められた位置で切断する方式が一般的である。また製造コストを抑えるため、複数本の中空糸膜をひとつのラインで同時に成形し、同一の回転カセに巻き取ることもごく一般的であり、ひとつのラインで同時に製造できる本数が増せば増すほど効率的な製造工程となる(なお、中空糸膜束の回収方法は回転カセでの巻き取りに限定されるものではない)。
【0009】
なお、回転カセの巻き取り量は中空糸膜の外径、表面積、重量が常に設計値通りで、かつ中空糸膜には不良も生じないという理想状態を前提に、最終的にモジュールに組み込んだ際に所定の濾過能力が発揮できるように設定されていることが一般的である。その理由としては、刻一刻と変わる製造のコンディションの中で、中空糸膜の外径、表面積、重量がどのように変わるかを予測することは困難であるし、不良が中空糸膜のどこに生じるかも予測できないため、暫定的な目標として理想的な状態を前提とせざるを得ないからである。
【0010】
しかし実際には中空糸膜束を製造する過程において中空糸膜の外径、表面積、重量はばらつくし、不良が生じる可能性もある。
【0011】
このため従来の中空糸膜束の製造方法では、理想状態を前提とした設定回数で回転カセを駆動して得られた中空糸膜束をケースに組み込む前に、専門の作業員が中空糸膜束の量を調整する。具体的にはまず作業員は中空糸膜束に不良中空糸膜が含まれていないかどうかを検査し、不良中空糸膜を発見した際にはこれを中空糸膜束から取り除く。その後、中空糸膜束に残った中空糸膜から数本をランダムに選び出し、その一部の外径、もしくは表面積、もしくは重量を測定し、更にそれぞれの平均値を得る。その後、最終製品たるモジュールの品質を確保するために設定されている管理量の規格値を確認し、管理量がこの規格値を超えるまで、予め管理量の測定がなされ、かつ不良を含まないこともわかっている中空糸膜を束へ補充していく。
【0012】
しかし上記のような中空糸膜束の製造工程では、作業員が中空糸膜の量を調整する工程が明らかにボトルネックとなるため、効率的な製造を行うためには多くの作業員を雇用する必要があり、製造コストが大幅に増加する。また、人手ではひとつの中空糸膜束に含まれる全中空糸膜(数百本程度が一般的)の管理量を測定することは現実的に不可能であるため、抜き取り中空糸膜の測定値(代表値)のみを基準とした中空糸膜量の調整をせざるを得ない。しかし、このような方法では調整後の中空糸膜束の実際の性能が不十分となる可能性も捨てきれない。
【0013】
このような課題を解決する手段として特許文献1、2、3の構成が提案されている。
【0014】
まず特許文献1においては、製造工程における糸条の走行中に糸条に生じた欠陥を自動検出、また欠陥種別を判定し、その欠点種別に応じた長さを走行中に切断、除去し、途切れた部分を繋ぎ直すことが述べられている。
【0015】
次に特許文献2においては、巻出し側の糸条ボビンから巻き取り側の糸条チーズへの巻き返し時に糸径異常を自動検出した際、その程度によって切除する長さを算出し、チーズを逆転して切除分を巻きだして対象部分を切除することが述べられている。
【0016】
次に特許文献3においては、紙シートの生産(巻取り)中に目視作業員が欠点部を発見し、欠点部を切除した際、欠点部削除前後のロール径から自動で切除された長さを検出し、定尺巻取りを可能とするために削除された分を補うように巻取り量を制御することが述べられている。
【0017】
しかしながら、特許文献1、2の方法では測定、検査を糸条走行中に自動で実施することで専門の作業員を用いず、また不良部分を切除することは可能であるが、これらは一つのラインに1本の糸条が走行する場合を想定している。すなわち、ひとつのラインに2本以上の糸条が走行する場合、ある糸条の不良部分だけを切除するとその他の糸条との長さが変わるため、同一の回転カセに巻き取ることができない。仮にどうしても同一のカセに巻き取りたい場合はある糸条から不良部分を切除する際、同時に製造されている不良を含まない糸条からも同様の長さだけ正常部分を切除すれば良いが、この方法では製造収率が低下する。加えて特許文献1、2では不良部分を切除した後に中空糸膜束に生じる最終的な管理量を補正する方法については提案されていない。
【0018】
特許文献3は糸条ではなく紙シートを扱っているものの、不良部分の切除前後のロール径から切除部分の長さを求め、最終製品に含まれる紙シートの長さが規格通りとなるように巻き取り量の補正を行っている。しかし、やはり特許文献1、2と同様、ひとつのラインで同時に複数の製品を製造する場合には適用が困難な手法である。また特許文献3における管理量は紙シートの長さだけであるが、中空糸膜束のように高機能な最終製品を製造する際には前述のように外径や表面積、重量などの値も管理することが必須である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の束状製品の製造装置は、束状製品の検査ユニット、回収ユニット、切断ユニットおよび回収量調整ユニットを少なくとも含む。このうち回収ユニットおよび切断ユニットは、互いに独立したユニット、或いは回収機能および切断機能の両方を備えた切断回収ユニットとして構成することができる。さらにマーカーユニットを有することができる。
【0042】
検査ユニットは、計測・検査手段および検査制御機構を有し、長手方向に2本以上並列して連続走行する糸条に対して、総量(総本数、総重量、総外径、総表面積)および代表量(代表重量、代表外径、代表表面積)から選ばれる管理量を計測・検査するユニットであり、かつ糸条に生じた不良の有無を検査し得るユニットである。またマーカーユニットは、マーカーヘッドおよびマーカー制御機構を有し、検査ユニットと連携し異常と判定された糸条にマーキングを施すユニットである。
【0043】
回収ユニットは、連続走行する複数の糸条を合糸しながら、糸条を回収するユニットであり、検査ユニットおよび回収量調整ユニットと連携し束状製品ひとつ当たりに回収する量を調整することができる。独立した回収ユニットとしては、糸条を回転しながら回収する巻取回収装置、糸条を一定長に折り返しながら回収する折返し回収装置を例示することができる。切断ユニットは、回収ユニットにより回収された糸条全てを予め定められた位置で切断するユニットである。
【0044】
また切断回収ユニットは、複数の糸条の回収機能、回収量の調整機能および切断機能を備えたユニットであり、例えば糸条を一定長に切断しながら回収する切断回収装置を例示することができる。
【0045】
回収量調整ユニットは、検査ユニットにより計測された複数糸条の管理量が束状製品において所定の値を超えるように回収ユニットにおける回収量を調整し、さらに検査ユニットにより異常と判定され、束状製品から排除される糸条分の管理量を補うべく、回収ユニットの糸条回収量を調整する制御ユニットである。
【0046】
本発明の束状製品の製造方法は、検査工程、回収工程、切断工程を少なくとも含む。このうち回収工程および切断工程は、互いに独立した工程にすることができ、または両者の操作を行う切断回収工程にすることができる。
【0047】
検査工程は、長手方向に2本以上並列して連続走行する糸条に対して、総量(総本数、総重量、総外径、総表面積)および代表量(代表重量、代表外径、代表表面積)から選ばれる管理量を計測・検査する。
【0048】
回収工程は、連続走行する複数の糸条を合糸しながら、糸条を回収する。検査工程で計測された管理量に基づき、束状製品に対して定められた規格値を上回るかを判定し、糸条の回収量を調整することができる。また検査工程で異常な糸条(不良糸)が検出されたとき、束状製品から排除される不良糸分の管理量を補うように糸条の回収量を更に調整することができる。
【0049】
切断工程は、回収工程で回収された糸条全てを予め定められた位置で切断する。また切断回収工程は、複数の糸条の回収および切断をひとつの工程で行う。
【0050】
本発明の束状製品の製造方法は、上述した束状製品の製造装置を使用し、高品質の束状製品を安定的に製造することができる。
【0051】
束状製品としては、例えば、限外濾過膜、精密濾過膜、気体分離膜、パーベーパレーション膜、透析膜等として採用される中空糸膜束を例示することができる。中空糸膜束は、水処理や人工腎臓、あるいは様々な工業プロセスの中で有価物の濃縮などに用いられる。なお束状製品は、上記したような中空糸膜に限定されることはなく、衣料用繊維、炭素繊維、光ファイバ、鋼線、医療用カテーテル等、実質的に複数本の糸条を同時に並列で製造可能な構造の糸条製品であれば、いかなる束状製品でも対象にすることができる。
【0052】
以下、本発明の実施の形態について、中空糸膜束を一例に図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0053】
(実施の形態1)
本発明の束状製品の製造装置の第1の実施形態は、検査ユニット、巻取回収ユニット、切断ユニットおよび回収量調整ユニットを含む。
図1(a)(b)は検査ユニット、巻取回収ユニットおよび回収量調整ユニット、
図2(a)(b)(c)は切断ユニットの実施形態を例示するものである。
【0054】
図1(a)(b)において、10は中空糸膜の単糸、11は単糸が複数本あわさった合糸中空糸膜、12は回収された合糸中空糸膜束、20は計測・検査ヘッド、21は計測・検査制御機構、22は巻取回収装置、23はカセ、231、232、233はそれぞれカセ1番位置、カセ2番位置、カセ3番位置、24は巻取回収制御機構、25は合糸ガイド、26はロール、37は糸道ガイドである。検査ユニットは計測・検査ヘッド20、計測・検査制御機構21を少なくとも含む。回収ユニットは巻取回収装置22、カセ23、合糸ガイド25、ロール26、糸道ガイド37を少なくとも含む。回収量調整ユニットは巻取回収制御機構24により構成される。
【0055】
なお
図1(a)は側面図、
図1(b)は上視図であり、制御信号に関わりのある計測・検査ヘッド20、計測・検査制御機構21、巻取回収制御機構24は
図1(a)のみに記した。
【0056】
また更に切断ユニットを示す
図2(a)(b)(c)において、13は中空糸膜束、40はカッター、401は切断ポジションのカッター、41は結束具、42は吊り下げロープ、43はクレーンレール、44はクレーン、である。
【0057】
本発明において製造の対象となる中空糸膜は
図1(b)に示すように中空糸膜の単糸10をあわせて合糸中空糸膜11として回収することを基本とするが、単糸10のままで回収しても特に問題はない。また回収方法としても合糸中空糸膜11を、もしくは単糸10を複数の回収手段(例えば複数のカセ位置)で同時に、もしくは順次、回収しても良い。なお以降の説明はわかりやすさのため、合糸中空糸膜11を前提とした場合について行なう。
【0058】
ここで中空糸膜の材質としては、例えば、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリアミド系、ポリイミド系、セルロース系、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリメタクリル酸系、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリエーテルケトン系等の有機系高分子、およびアルミナ、ジルコニア、チタニア、シリコンカーバイト等のセラミックスが挙げられる。
【0059】
まず
図1(a)(b)に示すとおり、上流工程から搬送されてきた複数の中空糸膜の単糸10は糸道ガイド37によって走行位置を規定され、合糸ガイド25によって単糸同士があわさって合糸中空糸膜11となり、ロール26に押し付けられつつ、巻取回収装置22のカセ23によって巻き取られ、合糸中空糸膜束12となる(なお本発明の説明においては3本の中空糸膜の単糸10が合糸されている場合を例として挙げているが、合糸される中空糸膜の単糸10の本数は3本に限定されるものではない)。ここでカセ23は
図1(b)のカセ1番位置231、カセ2番位置232、カセ3番位置233に示すように複数の巻き取りポジションを持っていても良く、これらポジションに順次、また同時に合糸中空糸膜11を巻き取ることができる(合糸中空糸膜11のみならず中空糸膜の単糸10についても適用可能であることは既に上記した通りである)。またカセ23は回転軸と同方向に移動可能なように構成されており、当該移動によってカセ1番位置231(カセ2番位置232、カセ3番位置233)内に幅方向均一に合糸中空糸膜11を巻き取る、あるいは巻き取り完了後に引き続いて巻取りを継続するためにカセ位置を隣へ移動するものである。なお当該実施の形態についてはカセ位置が3つの例を示したが、カセ位置の数は必ずしも3つに限定されるものではない。またカセ23を回転軸と同方向に移動する例を示したが、カセ23が固定されており、合糸ガイド25を移動させる方式でも同様の効果が得られる。
【0060】
ここで巻取回収制御機構24は巻取回収装置22の回転開始・停止、回転速度、カセ23の回転軸と同方向の移動、巻き取り完了後のカセ位置移動、等の動作に加え、カセ23の回転数を制御しており、合糸中空糸膜束12が予め定められた量だけ得られるようカセ23の回転数を制御し、所定量が得られた後にはカセを停止させる、もしくはカセ位置を自動で移動する、等の完了動作を制御するものである。
【0061】
また更に本発明の検査ユニットは、中空糸膜の単糸を監視する計測・検査ヘッド20と、計測・検査ヘッド20が得た情報を処理して実際に糸外径の計測や不良の有無を検査する計測・検査制御機構21を備えている。これら計測・検査制御機構21と巻取回収制御機構24はお互いに情報通信が可能なように構成されている。なお計測・検査ヘッド20としては汎用のデジタルカメラやアナログカメラ、汎用カメラ用レンズ、LED照明やレーザー光を使用した形状計測センサ等が使用できる。また計測・検査制御機構21としては汎用PCに画像取込ボードや信号処理ボード、通信ボード、信号処理ソフトウェア、システム制御ソフトウェア等をインストールして構築したシステムや市販の画像検査システムを用いることができる。また巻取回収制御機構24と計測・検査制御機構21は一体型に構成されていてもかまわない。これら制御信号に関わりのある部分の動作については後に詳しく説明する。
【0062】
カセ23に所定量だけ合糸中空糸膜束12を巻き取った後、合糸中空糸膜束12は合糸中空糸膜11とつながっている部分を切断され、カセ23ごと次の工程へ搬出される。なお合糸中空糸膜11がこの後も連続して上流から搬送されてくる場合にはすぐに新たな空のカセ23をセットして合糸中空糸膜11の巻取りを開始し、製造を継続する。
【0063】
次に切断工程について
図2(a)〜(c)を参照して説明する。ここではわかりやすさのためにカセ位置が1つの場合についてのみ説明するが、カセ位置が複数の場合には以下の手順をカセ位置の数だけ増やせば良い。
図2(a)に示すとおり、まずはカッター40に対してカセ23を固定する。その後、カッター40近傍の回収工程では上流に当たる位置を結束具41で吊り上げロープ42と結束する。吊り上げロープ42はクレーンレール43に備えられたクレーン44で巻き上げられるように構成されている。その後、
図2(b)に示すとおりカッター40を切断ポジション401へ移動させることで合糸中空糸膜束12をまとめて切断し、中空糸膜束13を得る。中空糸膜束13はその端部を結束具41で吊り上げロープ42と結束されているため、クレーン44を巻き上げ動作させることでカセ23から徐々に取り外されていく。最終的には
図2(c)に示すとおり中空糸膜束13は完全にカセ23から取り外され、かつクレーン44がクレーンレール43に沿って移動することで次の排除工程へ搬送される。なお排除工程とは、検査工程によって異常を含むと判定された糸条(不良糸)を中空糸膜束13から排除する工程である。
【0064】
以上までに基本的な中空糸膜束13の製造方法を述べたが、次に本発明のポイントとなる回収工程の制御方法について説明する。
【0065】
すでに上記したとおり中空糸膜束13の管理量は最終製品たるモジュールの用途や顧客の要求性能によって定められており、この管理量としては、将来的にモジュールに組み込まれる中空糸膜束13に含まれる全ての中空糸膜を対象とした、総本数、総重量、代表重量、総外径値、代表外径値、総表面積および代表表面積などが挙げられる。
【0066】
仮に中空糸膜を製造するとき、中空糸膜が理想的に形状や重量のばらつきなく、不良糸も発生しない状態で製造され得るのであれば、品質規格値から回収工程の回収量は決定され、製造中に補正する必要もない。しかし実際には製造のばらつきは生じるし、また製造工程に生じる外乱によって不良糸が発生した場合には中空糸膜束13から不良糸を排除しなければならない。よって本発明においては、これら製造のばらつきや不良糸が発生してしまうことを前提とした上で、回収工程、排除工程を経た後に中空糸膜束13が所定の規格値を超えているよう、製造中に回収工程を制御することを特徴とするものである。なお中空糸膜束13の管理量は少なくとも規格値を超えている必要はあるが、規格値を超えた時点で回収工程を完了させるように制御することは無駄な製造を省くことになるため、より好ましい。
【0067】
中空糸膜の製造のばらつきや不良糸の有無は、
図1(a)に示すように計測・検査ヘッド20および計測・検査制御機構21によって監視する。ここでは計測・検査ヘッド20および計測・検査制御機構21に汎用のデジタルカメラ方式画像検査システムを用いた場合を例に挙げて説明する。
【0068】
計測・検査ヘッド20たるデジタルカメラは複数本、並列して搬送される中空糸膜の単糸10を、時間的に所定の間隔をあけつつ、中空糸膜を一部分でも撮り逃すことなく繰り返し撮像し、撮像した画像を計測・検査制御機構21に送信する。撮像、送信された画像の例を
図3(a)(b)、
図4(a)(b)(c)(d)に示す。
【0069】
図3(a)(b)において、50は画像、51、52、53、55は外径がβの中空糸膜の像、54は外径がαの中空糸膜の像、56は外径がγの中空糸膜の像であり、外径の関係はα<β<γかつ、βは製造の設計値通りの外径、αが外径の下限値、γが外径の上限値であるとする。なお中空糸膜単位長あたりの原料の量は一定と考えて差し支えないため、設計値よりも外径が太くなった場合には膜の肉厚は薄く、逆に細くなった場合には膜の肉厚は厚くなる。肉厚が薄い場合には中空糸膜を濾過膜として使用している最中に破裂しやすくなり、逆に肉厚が厚い場合には濾過のために過大な圧力が必要になったり、中空内部の流路が狭くなるため濾過に必要な流量を確保するのが難しく、かつ詰まりが発生しやすくなったりする。
【0070】
図4(a)(b)(c)(d)において、57は不良中空糸膜(キズ)の像、58は不良中空糸膜(欠損)の像、59は不良中空糸膜(異物)の像、60は不良中空糸膜(凹み)の像、61は不良中空糸膜(膨らみ)の像、62は不良中空糸膜(巨大穴)の像、63は不良中空糸膜(過細り;外径の下限値αを超過)の像、64は不良中空糸膜(過太り;外径の上限値γを超過)の像、65は不良中空糸膜(つぶれ)の像、66は不良中空糸膜(ねじれ)の像、67は不良中空糸膜(閉塞)の像、68は糸切れが発生して中空糸膜の像が撮像されていない様子、を示している。
【0071】
なおこれらの画像においては、画像の中空糸膜の幅方向(XD方向)の撮像分解能をXμm/pix、中空糸膜の長手方向(YD方向=中空糸膜の搬送方向)の撮像分解能をYμm/pixとする。撮像分解能とは、画像を構成する画素(pix)が現実の3次元世界の大きさに相当する量として定義され、単位は1画素(pix)あたりの大きさ(μm/pix)で定められる。
【0072】
さて中空糸膜の品質を製造中に管理しようとした場合、中空糸膜の管理量としては総量(総本数、総重量、総外径、総表面積)と代表量(代表重量、代表外径、代表表面積)を指標とする場合の2種類が考えられる。前者は中空糸膜の製造中の管理量の情報全てを踏まえつつ中空糸膜束の回収量を調整するものであり、品質管理面からはより理想的である。しかし計測・検査制御機構21には非常に大きな負担をかけるため、高速・高価な計算機を使用する必要性が生じたり、複数の計算機でシステムを分担させる等、設備化においてはデメリットも生じる。一方で後者は事前に定めた条件に伴って計測・検査制御機構21が製造中の中空糸膜の特定部分を一回、もしくは複数回計測し、これらを元に算出した代表量を指標に回収量を調整するものであり、シンプルな設備で構成できるが、充分な品質管理を実現するためには製造される中空糸膜の品質ばらつきが充分に小さいことが条件となる。つまり、製造される中空糸膜の品質ばらつきが大きいと予想される場合には前者を、小さいと予想される場合には後者を採用することが好ましい。
【0073】
以上を踏まえ、まずは
図5の処理フローを用い中空糸膜の管理量として総量を用いる場合について説明する。
【0074】
回収工程がスタートするとStep11でまず計測・検査制御機構21内のプログラムを初期化する。この時、予め設定されていた品質管理に用いる管理量の種類と規格値をプログラムに読み込む。次にStep12において計測・検査制御機構21は巻取回収制御機構24へカセ23の回転を指令し、カセ23は回転を開始する。次にStep13においてカセ23が1周する間、並列して搬送される複数の中空糸膜の単糸10についてそれぞれの管理量合計値を算出、また次いで不良糸判定結果に基づき管理量合計値を補正する(詳細は後述する)。次にStep14において現在の周回までの管理量合計値を全て足し合わせ、管理量の総量を求める。次にStep15において、管理量の総量が規格値を超えたかどうかを判定する。管理量の総量が規格値を上まっていなければStep12に戻り、上まっていればStep16へ移行する(上まっている場合は当該カセ位置において合糸中空糸膜束12の所定の巻取りを完了したことになる)。次にStep16において、別のカセ位置に中空糸膜の巻取りを移動するかどうかを判定する。移動する場合は巻取回収装置22を操作して中空糸膜を隣のカセ位置へ移動し、Step11へ戻り、移動しない場合はStep17へ移行する。次にStep17においてカセを停止し、全てのカセ位置における所定の合糸中空糸膜束12の巻取りを完了とする。
【0075】
Step13の詳細について説明する。まずStep13aにおいて、デジタルカメラで複数本、並列して搬送される中空糸膜の単糸10の画像50を、時間的に間隔をあけて撮像し、デジタルカメラ方式画像検査システムの信号処理部へ画像50を送信する。ここで中空糸膜の単糸10を、時間的な間隔をあけて撮像するタイミングは、搬送される中空糸膜の全てが撮像され、その一部分でも撮像漏れがないように、決定される。例えば1回の撮像でカバーされる画像の広さと、中空糸膜の搬送速度とを考慮して、撮像するタイミングを決定することができる。
【0076】
次にStep13bにおいて、信号処理部は画像50において複数の単糸中空糸膜の像51〜67を個別に認識する。なお糸切れが発生していた場合にも中空糸膜の像が撮像されるべき場所を確認することで糸切れの発生68を認識する。次にStep13cにおいて中空糸膜の単糸10ごとに管理量を算出する。なお管理量の算出方法については後述するが、糸切れについては全ての管理量を0(ゼロ)と算出する。
【0077】
次にStep13dにおいて、時間的な間隔をあけて送信される画像に基づいて行われる測定の現在までの管理量を全て足し合わせ、中空糸膜の単糸10ごとの管理量合計値を求める。なおこのステップ13dでの管理量の足し合わせは、カセ1周分の画像を複数回に分けて撮像することを前提としており、カセ1周分の画像を1回の撮像で済ませる場合にはこの限りではない。
【0078】
次にStep13eにおいて、当該画像において不良中空糸膜57〜67の存在有無を検査する。もし不良中空糸膜57〜67が存在していなければ次のStep13hへ直接、移行する。一方、不良中空糸膜57〜67が存在していれば次のStep13fへ移行する。Step13fにおいては、当該不良糸の情報に抜き取りフラグを発生させる。抜き取りフラグの利用方法については後述する。次にStep13gにおいては、Step13dで計算した管理量合計値を補正する。すなわち、異常が発見された不良糸は排除工程にて排除されるため、カセの当該周回の間は管理量合計値から当該管理量を除外しなければならない。次にStep13hにおいてはカセの1周が完了したかどうかを判定する。判定のためには巻取回収制御機構24から完了信号を受ければよい。カセ1周が完了していなければStep13aに戻り、完了していればStep14へ移行する。
【0079】
次に
図6の処理フローを用い中空糸膜の管理量として代表量を用いる場合について説明する。
【0080】
回収工程がスタートするとStep21でまず計測・検査制御機構21内のプログラムを初期化する。この時、予め設定されていた品質管理に用いる管理量の種類と規格値をプログラムに読み込み、かつカセ23の回転数の暫定値をセットする。次にStep22において計測・検査制御機構21は巻取回収制御機構24へカセ23の回転を指令し、カセ23は回転を開始する。次にStep23においては、並列して搬送される複数の中空糸膜の単糸10についてそれぞれの管理量合計値を算出し、代表量を求める条件に従って目標回転数を決定しつつ、また次いで不良糸判定結果に基づき目標回転数を補正する(詳細は後述する)。次にStep24においてカセ23が1周したことを受け、実績回転数をカウントアップする。次にStep25において、実績回転数が目標回転数を超えたかどうかを判定する。実績回転数が目標回転数を上まっていなければStep22に戻り、上まっていればStep26へ移行する(上まっている場合は当該カセ位置において合糸中空糸膜束12の所定の巻取りを完了したことになる)。次にStep26において、別のカセ位置に中空糸膜の巻取りを移動するかどうかを判定する。移動する場合は巻取回収装置22を操作して中空糸膜を隣のカセ位置へ移動し、Step21へ戻り、移動しない場合はStep27へ移行する。次にStep27においてカセを停止し、全てのカセ位置における所定の合糸中空糸膜束12の巻取りを完了とする。
【0081】
Step23の詳細について説明する。まずStep23aにおいて、デジタルカメラで複数本、並列して搬送される中空糸膜の単糸10の画像50を撮像、デジタルカメラ方式画像検査システムの信号処理部へ画像を送信する。次にStep23bにおいて、信号処理部は画像50において複数の単糸中空糸膜の像51〜67を個別に認識する。なお糸切れが発生していた場合にも中空糸膜の像が撮像されるべき場所を確認することで糸切れの発生68を認識する。次にStep23cにおいて、目標回転数の決定が成されているかどうかを確認する。成されている場合はStep23gへ移行するが、未だ成されていない場合はStep23dへ移行する。次にStep23dでは中空糸膜の単糸10ごとに管理量を算出し、数値バッファに値を格納する。なお管理量の算出方法については後述するが、糸切れについては全ての管理量を0(ゼロ)と算出する。次にStep23eにおいて、代表量を算出するに足る管理量データが揃ったかどうかを確認する。揃った場合はStep23fに移行するが、揃っていない場合はStep23gへ移行する。次にStep23fにおいて、代表量算出条件と規格値に従い、管理量データを処理、計算することで目標回転数を決定し、暫定回転数を目標回転数に書き換える。次にStep23gにおいて、当該画像において不良中空糸膜57〜67の存在有無を検査する。もし不良中空糸膜57〜67が存在していなければ次のStep23jへ直接、移行する。一方、不良中空糸膜57〜67が存在していれば次のStep23hへ移行する。Step23hにおいては、当該不良糸の情報に抜き取りフラグを発生させる。抜き取りフラグの利用方法については後述する。次にStep23iにおいては、Step23fで計算した目標回転数を補正する。すなわち、異常が発見された不良糸は排除工程にて排除されるため、現在の目標回転数では最終的に規格値をクリアできない場合が生じる可能性がある。よってそのような場合には目標回転数を増やす必要がある。次にStep23jにおいてはカセの1周が完了したかどうかを判定する。判定のためには巻取回収制御機構24から完了信号を受ければよい。カセ1周が完了していなければStep23aに戻り、完了していればStep24へ移行する。
【0082】
ここでStep23fを補足する。Step23に使用される代表量算出条件は製造工程に生じるばらつきの程度や製造する品種の品質管理の程度、もしくは顧客の品質要求から適正なものを設定すべきである。例として、カセ23の1周目の複数糸条全ての管理量の平均値、もしくは特定の単糸の平均値、またこれらの複数周回の平均値などが用いられることが好ましいが、代表量算出条件の決定の仕方はこれらに限定されるものではない。
【0083】
また中空糸膜の管理量として総量と代表量を指標とする場合の2手法の共通事項として、第一に管理量の求め方の特徴が挙げられる。すなわち、管理量は先に記載の撮像分解能(Xμm/pix、Yμm/pix)の限界まで細かい性能で求めることを基本とするが(1次管理量)、データから外乱要因を排除する目的で一般的な画像処理手法で補正し、複数の1次管理量から2次管理量を得ても良い。一般的な画像処理手法としては平均化や正規化、その他の手法が用いられる。
【0084】
第二に中空糸膜の不良の検出方法が挙げられる。すなわち不良中空糸膜の検査には一般的な画像処理技術を適用することが可能である。例えば
図3(a)(b)における正常な中空糸膜の像51〜56を正常状態のマスタパターンとして予め計測・検査制御機構のデータバッファに登録しておき、
図4(a)(b)(c)(d)に示される不良中空糸膜の像57〜67を得た後に両者を比較すれば良い。その結果、不良中空糸膜の像57、59、62、67であれば輝度の差分差異が検出できるし、不良中空糸膜の像58、60、61、63、64、65、66であれば平面領域の差分差異が検出できる。あるいは別の例として単純に、中空糸膜の像におけるXD方向の画素数をカウントして撮像分解能Xμm/pixをかけ合わせて外径値を計測することをYD方向に繰り返し、予め定めておいた外径許容値を超える部分を検出することで不良中空糸膜と判定しても良い。その結果、不良中空糸膜の像58、60、61、63、64、65、66を外径の許容値超過異常として検出できる。また新たに不良中空糸膜の種類が増えたとしても、その像の画像的特長を正常状態の中空糸膜像と区別できればプログラムを改造することで不良中空糸膜の検出は可能である。
【0085】
ここで具体的に管理量(本数、重量、外径値、表面積)を求める手法について説明する。
【0086】
まず本数であるが、本数は管理量としては総量でしか扱われず、
図5のStep13によって算出されるものである。特にStep13cにて、カセのある周回の最初に中空糸膜ごとに「1」として算出され、カセの同周回内では常にその数を保持することになる(2回目以降、Step13dは無視するようにプログラムを構成する)。
【0087】
次に重量であるが、重量は管理量として総量、代表量の両方で使用できる。なお中空糸膜の製造工程においては一般的に中空糸膜の原料は精度良く供給される。つまり原料を中空糸膜の形状に成形する際のばらつきで、外径値が設計値に対して太くなったり、細くなったりはするが、前者の場合は肉厚が薄く、後者の場合は肉厚が厚くなるだけで中空糸膜単位長あたりの原料の量は一定である。従って、中空糸膜束13に含まれる一本の中空糸膜の重量W(単位mg)は、単位長あたりに使用される原料の重量Wm(単位mg/mm)と中空糸膜束13の長さLmmより、式(1)によって精度良く算出される。
W = Wm × L ・・・式(1)
【0088】
次に外径であるが、外径Rμmは、中空糸膜搬送方向の計測最小単位(=YD方向に1画素分の領域)において、中空糸膜の像におけるXD方向に占める画素の数XnpixとXD方向の撮像分解能Xμm/pixから以下の式(2)によって算出される。
R = X × Xn ・・・式(2)
【0089】
上記式(2)で求めた管理量としての外径Rμmは処理フローにおけるStep13cやStep23dにて求められるものであり、当然、1つの画像で複数得られるものであるし、カセ1周においても複数得られるものである。
【0090】
次に表面積であるが、本件発明において表面積は計測最小単位における中空糸膜の外周を中空糸膜搬送方向に加算したものと考える。従って表面積Sμm
2は計測最小単位においては実質的に外周を求める一般公式を用い、外径Rμmと円周率πから以下の式(3)によって算出する。
S = π × R ・・・式(3)
【0091】
上記の式(3)で求めた管理量としての表面積Sμm
2は処理フローにおけるStep13cやStep23dにて計測最小単位としては外周として求められるものであり、当然、1つの画像で複数得られるものであるし、カセ1周においても複数得られるものであり、かつ搬送方向に情報を加算することで表面積としての意味を成すものである。
【0092】
本発明においては上記のような手法を用い、製造条件や品質管理条件に従って所定の管理量(本数、重量、外径値、表面積)を求め、かつ総量(=
図5のフロー)、もしくは代表量(=
図6のフロー)のどちらかによって製造工程を自動で制御するものである。
【0093】
なお以上までは計測・検査ヘッド20および計測・検査制御機構21に汎用のデジタルカメラ方式画像検査システムを用いた場合を例に挙げて説明したが、同様の効果を得られるデバイス、機器であれば何を用いても良い。とりわけ装置の仕様を最適化するため、製造工程の製造能力に合わせて計測・検査ヘッド20および計測・検査制御機構21を実現する各機器をそれぞれ選定し、システムを独自に組み上げることも好ましい。
【0094】
(実施の形態2)
本発明の束状製品の製造装置の第2の実施形態は、検査ユニット、切断回収ユニット、および回収量調整ユニットを含む。
図7(a)(b)は第2の実施形態を例示するものである。検査ユニットは、第1の実施例と同じく、計測・検査ヘッド20、計測・検査制御機構21で構成さる。また後述の通り、回収量調整ユニットは切断回収制御機構32で構成され、切断回収ユニットとして、糸条を一定長に切断しながら回収する切断回収手段が構成される。
【0095】
図7(a)(b)に示すとおり、回収手段としては第1の実施形態の巻取回収装置に代えて切断回収装置を使用することもできる。合糸中空糸膜11はカッター31によって所定の長さに切断されて切断回収装置27の回収トレー28に回収され、合糸中空糸膜束12′となる(合糸中空糸膜11のみならず中空糸膜の単糸10についても適用可能であることは既に上記した通りである)。切断にあたり合糸中空糸膜11はクリップ29によって固定される。
図7(b)に示すとおり、クリップ291〜296はクリップレール30上を特定の間隔を保ちながら合糸中空糸膜11と同じ速度で旋回しつつ、合糸中空糸膜11をクリップ292の位置で掴み、その状態を保持しつつ移動できるものである。その結果、
図7(b)の通り、3つのクリップ291、292、296で合糸中空糸膜11を保持したタイミングでカッター31により切断する。その直後、クリップ291、296を開放することで合糸中空糸膜束11を回収トレー28に収めるが、クリップ292は合糸中空糸膜11を掴んだまま移動を継続する。この動作を繰り返し、合糸中空糸膜束12′を継続回収する。
【0096】
ここで切断回収制御機構32は切断回収装置27の運転開始・停止、クリップ移動速度、カッティング動作、等に加え、カッター31のカッティング回数を制御しており、合糸中空糸膜束12′が予め定められた量だけ得られるようカッティング回数を制御し、所定量が得られた後にはカッティングおよびクリップを停止させる、もしくは回収トレー28と図示しない空の回収トレーとを交換させる、等の完了動作を行うものである。
【0097】
また更に実施の形態2においても実施の形態1と同様、計測・検査制御機構21と切断回収制御機構32はお互いに情報通信が可能なように構成されている。
【0098】
回収トレー28に所定量だけ合糸中空糸膜束12′を回収した後、合糸中空糸膜束12′は片側端部を図示しない結束具によって結束され、またクレーンに吊り下げられて排除工程へと搬出される。従って回収手段として切断回収を採用する際には切断工程における中空糸膜束を切断する段階は不要となる。
【0099】
なお、その他の構成は実施の形態1と同様にすることができる。
【0100】
(実施の形態3)
本発明の束状製品の製造装置の第3の実施形態は、検査ユニット、折返し回収ユニット、切断ユニットおよび回収量調整ユニットを含む。
図8(a)(b)は第3の実施形態を例示するものである。検査ユニットは、第1の実施例と同じく、計測・検査ヘッド20、計測・検査制御機構21で構成さる。また後述の通り、回収量調整ユニットは折返し回収制御機構36で構成され、折返し回収ユニットとして、糸条を一定長に折り返しながら回収する折返し回収手段が構成される。
【0101】
図8(a)(b)に示すとおり、回収手段としては第1の実施形態の巻取回収装置に代えて折返し回収装置を使用することもできる。合糸中空糸膜11は回転する折返し歯車34に移動ガイド35によって所定の長さで折り返しながら回収され、合糸中空糸膜束12″となる(合糸中空糸膜11のみならず中空糸膜の単糸10についても適用可能であることは既に上記した通りである)。
図8(b)に示すとおり折返し回収装置33は、支点合糸ガイド251を支点に移動ガイド35によって、合糸中空糸膜11をポジション351、352、353へ振り、移動ガイド35と同期して回転する折返し歯車341、342の所定の歯に合糸中空糸膜11を掛けつつ合糸中空糸膜束12″として継続回収する。
【0102】
ここで折返し回収制御機構36は折返し回収装置33の運転開始・停止、移動ガイド移動速度、折返し歯車回転速度、等に加え、折返し歯車34の折返し回数を制御し、所定量が得られた後には折返し動作および歯車回転動作を停止させる、もしくは折返し歯車34と図示しない空の折返し歯車とを交換させる、等の完了動作を行うものである。
【0103】
また更に実施の形態3においても実施の形態1、実施の形態2と同様、計測・検査制御機構21と折返し回収制御機構36はお互いに情報通信が可能なように構成されている。
【0104】
折返し歯車34に所定量だけ合糸中空糸膜束12″を回収した後、合糸中空糸膜束12″は片側端部を図示しない結束具によって結束され、かつ両端部を図示しない切断具で切断された状態でクレーンに吊り下げられて排除工程へと搬出される。
【0105】
なお、その他の構成は実施の形態1と同様にすることができる。
【0106】
(実施の形態4)
本発明の束状製品の製造装置の第4の実施形態は、検査ユニット、マーカーユニット、巻取回収ユニット、および回収量調整ユニットを含む。
図9(a)(b)は第4の実施形態を例示するものである。検査ユニット、巻取回収ユニットおよび回収量調整ユニットは、第1の実施例と同様に構成される。また後述の通り、マーカーユニットはマーカーヘッド70、マーカー制御機構71を少なくとも含む。
【0107】
図9に示すとおり、計測・検査ヘッド20の下流、巻取回収装置22の上流に中空糸の単糸10へマーキングを行うことができるマーカーヘッド70を備えていることも好ましい。マーカーヘッド70は計測・検査制御機構21と通信可能に構成されたマーカー制御機構71によって制御され、計測・検査制御機構21が不良として判定した中空糸膜の単糸10にマーキングを施す。不良糸にマーキングが施されていることで主に人手に頼る排除工程での不良糸の排除作業が効率化されるので好ましい。マーキング実施の指令としては
図5、
図6に示したStep13f、Step23hの抜き取りフラグを利用すればよい。なおマーキングの位置は欠点近傍でも良いが、中空糸膜束13を得た後に束の長手方向に対して長さ位置が実質的に同じ位置であるとより好ましい。なぜならば作業員は中空糸膜束13の長手方向に対して予め定められた位置のみを確認し、マーキングを発見した際には当該不良糸のみを中空糸膜束13から排除すれば良いからである。当然のごとく本発明によっては不良部分を含む不良糸が排除された後に、管理量が規格値を超えるように回収工程の回収量が制御されているものである。
【0108】
なお、その他の構成は実施の形態1と同様にすることができる。また実施の形態2、3の回収工程においても本形態のようにマーキングを実施することが可能である。
【実施例】
【0109】
<実施例1>
図1および
図2に示す構成で中空糸膜束の製造を行った。すなわち、回収ユニットとしては回転ユニットを採用した。また巻取の単糸合糸数は3本とし、中空糸膜束の品質の管理量としては表面積を採用して総量を管理することとした。またカセとしては1周が1.4mのものを使用した。なお検査ユニットとしては市販のLED照明、デジタルラインセンサカメラ、汎用カメラ用レンズ、画像取込ボード、信号処理ボード、汎用PCとC言語を用いて自作したシステム制御ソフトウェアを用い、回収量調整ユニットとしては市販のプログラマブルコントローラーとラダー言語を用いて自作した制御ソフトウェアを用いた。
【0110】
中空糸膜の製造条件としては外径の設計値を1425μmとした。すなわち、外周の設計値は0.0044745mであり、カセ1周分を考えると中空糸膜1本分の表面積の設計値は0.0062643m
2となる。なお、最終的にこの中空糸膜束は最終製品たる水処理のモジュールに組み込まれることになるが、そのモジュールの性能を保証するために該中空糸膜束に求められる総表面積の規格値は4.02m
2であり、理想的に設計値どおりの中空糸膜を製造できたと仮定する場合、642本の単糸で中空糸膜束を構成すれば総表面積は4.0216806m
2となるので規格値を満足することになる。すなわち合糸3本の製造条件においては、カセを214回転させれば良い。なお中空糸膜単体での外径異常の管理幅は、既に上記した通り顧客でのモジュール使用中の弊害を誘発しないため1350〜1500μmとした。
【0111】
このような条件の下で中空糸膜束の製造を実行した。すると、あるロットの製造状態においては中空糸膜の外径が設計値より細い側に振れてしまい(中央値が約1370μm)、カセが214回転した時点では未だ総表面積が3.87m
2と規格値の4.02m
2に達していなかった。よって回収量調整ユニットが回収ユニットを制御しつつ回収を続けたところ、223回まで回転させた時点で中空糸膜の総表面積が4.03m
2となり、規格値をクリアした(なお中空糸膜の本数は669本となった)。一方、別のロットの製造状態においては逆に中空糸膜の外径が設計値より太い側に振れてしまい(中央値が約1488μm)、205回転した時点で中空糸膜の総表面積が4.023m
2と規格値をクリアした(なお中空糸膜の本数は615本となった)。
【0112】
また更に別のロットの製造状態では中空糸の外径はほぼ設計値に近い状態で製造できたが(中央値が約1422μm)、カセの回転が186回を完了した直後に3本の単糸のうちの1本が切れてしまった。よってその後は2本の単糸のみを回収しつつ、カセを229回まで回転させた時点で中空糸膜の総表面積が4.026m
2と規格値をクリアした(なお中空糸膜の本数は644本となった)。
【0113】
以上までのケースにおいて製造された中空糸膜をそれぞれモジュールに組込み、モジュール出荷前の最終検査を実施したところ、これらモジュールの濾過性能は十分であった。
【0114】
<実施例2>
ある品種の中空糸膜束においては、製造状態が充分に安定して初期状態を保つことがわかっているため、管理量としての表面積は代表量を管理することとした。代表量算出条件としては、カセの回転が3回まで、3本の単糸それぞれについて1回ずつ外径を測定し、9つの外径データの平均値を基準にカセの回転数を求める方法を設定し、製造を実行した(なお他の条件は実施例1と同様とする)。
【0115】
その結果、1番目の単糸では、1452μm(1回転目)、1454μm(2回転目)、1452μm(3回転目)、2番目の単糸では、1451μm(1回転目)、1450μm(2回転目)、1452μm(3回転目)、3番目の単糸では、1454μm(1回転目)、1455μm(2回転目)、1453μm(3回転目)、という外径データが得られ、更にこれらの平均を求めたところ1452.56μmの平均外径が得られた。この平均外径をもとに表面積の規格値4.02 m
2を満足するため、カセの回転数を210回転とし、630本の単糸で中空糸膜束を構成した。この中空糸膜束を組み込んだモジュールに対してモジュール出荷前の最終検査を実施したところ、該モジュールの濾過性能は十分であった。
【0116】
また、本実施例においては管理量の常時監視を行う必要がなかったため、検査ユニットに採用した汎用PCにかかる処理負荷が大幅に減った。よって、過去の検査情報の閲覧やデータ整理、帳票の作成、各種電子データの外部メディアへのコピー等を中空糸膜束の製造と並行して実施することができ、作業全体の効率をあげることができた。
【0117】
<実施例3>
図1の構成に変えて
図9に示す構成を採用して中空糸膜束の製造を行った。
図9の構成では
図1の構成に加えてマーカーが備えられており、このマーカーは計測・検査ユニットによる検査結果に基づいて不良糸にマーキングを施すものである(なお他の条件は実施例2と同様とする)。なおマーカーとしては市販のレーザーマーカー(キーエンス社製)を使用した。
【0118】
その結果、中空糸膜束を製造している間、計測・検査ユニットは、切断工程によって最終的に得られる中空糸膜束に含まれてしまう不良中空糸膜(キズ)を6本、不良中空糸膜(異物)を17本、不良中空糸膜(膨らみ)を8本、検出した。この結果を受けて回収量調整ユニットはカセの回転数を不良中空糸膜がない場合の210回に対して11回増して221回転とした。
【0119】
またマーカーはこれらの不良中空糸膜に対し、切断工程で中空糸膜束を得た際に結束具の位置を基準として100〜250mm離れた範囲内にレーザー照射による焼成でマーキングを施した。
【0120】
製造完了時点では該中空糸膜束には663本の単糸が含まれていたが、排除工程によってオペレータがマーキングを確認し、計測・検査ユニットにおいて不良糸と判定された不良中空糸膜31本を排除したところ、最終的に中空糸膜の本数は632本となった。この中空糸膜束を組み込んだモジュールに対してモジュール出荷前の最終検査を実施したところ、該モジュールの濾過性能は十分であった。また、精度良く不良中空糸膜が排除されていたため、顧客での該モジュール使用中にも、該モジュールが異常をきたすことはなかった。
【0121】
<実施例4>
図1の構成に変えて
図7に示す構成を採用して中空糸膜束の製造を行った。すなわち回収ユニットとして切断回収ユニットを採用し、切断工程においては切断作業を排して中空糸膜束を吊り下げる作業のみとした。また中空糸膜束の品質の管理量としては外径を採用した。(なお他の条件は実施例1と同様とする)。
【0122】
実施例1で述べたとおり、中空糸膜の外径設計値は1425μmである。最終的にこの中空糸膜束が組み込まれたモジュールの性能を保証するために該中空糸膜束に求められる総外径の規格値は1.28mであるので、理想的に設計値どおりの中空糸膜を製造できたとして642本の単糸で中空糸膜束を構成すれば総外径は1.28079mとなり、規格値を満足することになる。すなわち合糸3本の製造条件においては、カセを214回転させれば良い。
【0123】
このような条件の下で中空糸膜束の製造を実行した。すると、あるロットの製造状態においては中空糸膜の外径が設計値より太い側に振れてしまい(中央値が約1467μm)、208回転した時点で中空糸膜の総外径が1.282mと規格値をクリアした(中空糸膜の本数は624本となった)。この中空糸膜束を組み込んだモジュールに対してモジュール出荷前の最終検査を実施したところ、該モジュールの濾過性能は十分であった。
【0124】
また、中空糸膜の回収と同時に切断を行ったため、中空糸膜束を製造する工程全体の時間短縮を実現できた。
【0125】
<比較例>
一方、実施例1と同様の製造状態において本発明を構成する中空糸膜の回収量調整を行うことなく中空糸膜束を製造し、本発明の効果を確認した。その結果、中空糸膜の製造状態によらず、カセの回転は設計値を基準とした214回で停止させたため、中空糸膜の外径が設計値より細い側に振れてしまった場合には中空糸膜束における総表面積が規格値を満たすことはできなかった。よってモジュール出荷前の最終検査においてモジュールの濾過性能が不十分であったため該モジュールは不良品として廃棄された。逆に中空糸膜の外径が設計値より太い側に振れてしまった場合には中空糸膜束における総表面積は規格値をクリアしたものの、中空糸膜束の嵩高が必要以上に大きくなり、モジュールに中空糸膜束を挿入できなかった。よって中空糸膜束をモジュールに挿入できる状態とするまで中空糸膜束から単糸を排除するという手間が生じてしまった。
【0126】
また途中で糸切れが生じた場合には、回収完了後に設計値を基準として足りない中空糸膜の本数をカウントし、必要な本数を中空糸膜束に加えるという手間が生じてしまった。