特許第6128229号(P6128229)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6128229車室環境制御システム、車室環境制御方法および車室環境制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6128229
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】車室環境制御システム、車室環境制御方法および車室環境制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20170508BHJP
   B60H 1/34 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   B60H1/00 103A
   B60H1/00 103U
   B60H1/00 101S
   B60H1/00 101R
   B60H1/34 671A
   B60H1/34 671B
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-543842(P2015-543842)
(86)(22)【出願日】2014年10月20日
(86)【国際出願番号】JP2014077829
(87)【国際公開番号】WO2015060244
(87)【国際公開日】20150430
【審査請求日】2016年2月15日
(31)【優先権主張番号】特願2013-220033(P2013-220033)
(32)【優先日】2013年10月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners 特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100117466
【弁理士】
【氏名又は名称】岩上 渉
(72)【発明者】
【氏名】立松 綾乃
(72)【発明者】
【氏名】窪田 智氣
【審査官】 田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−137216(JP,A)
【文献】 特開2013−076493(JP,A)
【文献】 特開2003−146055(JP,A)
【文献】 特開平10−217743(JP,A)
【文献】 特開2008−213763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00
B60H 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の空調機の空気流出口および窓の位置を示す車室画像をタッチパネルディスプレイに表示する車室画像表示手段と、
前記タッチパネルディスプレイに表示された前記車室画像上での接触による入力を受け付ける接触入力受付手段と、
前記接触の軌跡と、前記空調機の空気流出口および前記窓の位置との関係に基づいて前記車室内の風向を制御する車室環境制御手段であって、
領域を指示する前記接触に基づいて前記車室内の風を遮断すべき遮断領域を特定し、
前記接触の軌跡から前記遮断領域に含まれる軌跡を除外し、
除外された後の軌跡の開始点から終了点までの間における風向を取得し、前記車室内の風向を制御する前記車室環境制御手段と、
を備える車室環境制御システム。
【請求項2】
車室内の空調機の空気流出口および窓の位置を示す車室画像をタッチパネルディスプレイに表示する車室画像表示手段と、
前記タッチパネルディスプレイに表示された前記車室画像上での接触による入力を受け付ける接触入力受付手段と、
前記接触の軌跡と、前記空調機の空気流出口および前記窓の位置との関係に基づいて前記車室内の風向を制御する車室環境制御手段であって、
前記接触の面積に基づいて前記車室内の風量を取得する前記車室環境制御手段と、
を備える車室環境制御システム。
【請求項3】
前記車室環境制御手段は、
前記空調機からの空気流出量と窓の開閉量と車速との少なくとも1個の要素に基づいて前記車室内の風量を制御する、
請求項2に記載の車室環境制御システム。
【請求項4】
前記車室環境制御手段は、
連続的な前記接触の軌跡の開始点から終了点までの間における風向を取得し、前記車室内の風向を制御する、
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の車室環境制御システム。
【請求項5】
前記車室環境制御手段は、
連続的な前記接触の軌跡の開始点から終了点までの間の風向が前記接触の軌跡に平行になるように、前記空調機からの空気流出方向と窓の開閉量との少なくとも一方を制御する、
請求項4に記載の車室環境制御システム。
【請求項6】
車室内の空調機の空気流出口および窓の位置を示す車室画像をタッチパネルディスプレイに表示する車室画像表示工程と、
前記タッチパネルディスプレイに表示された前記車室画像上での接触による入力を受け付ける接触入力受付工程と、
前記接触の軌跡と、前記空調機の空気流出口および前記窓の位置との関係に基づいて前記車室内の風向を制御する車室環境制御工程であって、
領域を指示する前記接触に基づいて前記車室内の風を遮断すべき遮断領域を特定し、
前記接触の軌跡から前記遮断領域に含まれる軌跡を除外し、
除外された後の軌跡の開始点から終了点までの間における風向を取得し、前記車室内の風向を制御する前記車室環境制御工程と、
を含む車室環境制御方法。
【請求項7】
車室内の空調機の空気流出口および窓の位置を示す車室画像をタッチパネルディスプレイに表示する車室画像表示工程と、
前記タッチパネルディスプレイに表示された前記車室画像上での接触による入力を受け付ける接触入力受付工程と、
前記接触の軌跡と、前記空調機の空気流出口および前記窓の位置との関係に基づいて前記車室内の風向を制御する車室環境制御工程であって、
前記接触の面積に基づいて前記車室内の風量を取得する前記車室環境制御工程と、
を含む車室環境制御方法。
【請求項8】
車室内の空調機の空気流出口および窓の位置を示す車室画像をタッチパネルディスプレイに表示する車室画像表示機能と、
前記タッチパネルディスプレイに表示された前記車室画像上での接触による入力を受け付ける接触入力受付機能と、
前記接触の軌跡と、前記空調機の空気流出口および前記窓の位置との関係に基づいて前記車室内の風向を制御する車室環境制御機能であって、
領域を指示する前記接触に基づいて前記車室内の風を遮断すべき遮断領域を特定し、
前記接触の軌跡から前記遮断領域に含まれる軌跡を除外し、
除外された後の軌跡の開始点から終了点までの間における風向を取得し、前記車室内の風向を制御する前記車室環境制御機能と、
をコンピュータに実現させる車室環境制御プログラム。
【請求項9】
車室内の空調機の空気流出口および窓の位置を示す車室画像をタッチパネルディスプレイに表示する車室画像表示機能と、
前記タッチパネルディスプレイに表示された前記車室画像上での接触による入力を受け付ける接触入力受付機能と、
前記接触の軌跡と、前記空調機の空気流出口および前記窓の位置との関係に基づいて前記車室内の風向を制御する車室環境制御機能であって、
前記接触の面積に基づいて前記車室内の風量を取得する前記車室環境制御機能と、
をコンピュータに実現させる車室環境制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内の環境を制御する車室環境制御システム、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空調機等を利用して車室内の環境を整備する支援を行うため、種々の技術が開発されている。例えば、特許文献1には、空気の吹出し状態を立体的な空気の流れで示す吹出動画画像を表示する技術が開示されている。また、特許文献2には、車室内の温度分布を表示する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−276731号公報
【特許文献2】特開2003−146055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術においては、車室内の風向を意図通りに制御することが困難であった。すなわち、従来の技術を利用すれば環境を整備する支援を行うことができるものの、車室内の風向を意図通りに制御するための指針は示されない。従って、車室内の風向を意図通りに調整するためには利用者が実際に空調機等を調整する必要があった。
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、簡易な操作によって車室内の環境を利用者の意図通りに制御する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、車室環境制御システムは、車室を示す車室画像をタッチパネルディスプレイに表示する車室画像表示手段と、前記タッチパネルディスプレイに表示された前記車室画像上での接触による入力を受け付ける接触入力受付手段と、前記接触の軌跡に応じて前記車室内の風向を制御する車室環境制御手段と、を備える。
【0006】
また、上記の目的を達成するため、車室環境制御方法は、車室を示す車室画像をタッチパネルディスプレイに表示する車室画像表示工程と、前記タッチパネルディスプレイに表示された前記車室画像上での接触による入力を受け付ける接触入力受付工程と、前記接触の軌跡に応じて前記車室内の風向を制御する車室環境制御工程と、を含むように構成される。
【0007】
さらに、上記の目的を達成するため、車室環境制御プログラムは、車室を示す車室画像をタッチパネルディスプレイに表示する車室画像表示機能と、前記タッチパネルディスプレイに表示された前記車室画像上での接触による入力を受け付ける接触入力受付機能と、前記接触の軌跡に応じて前記車室内の風向を制御する車室環境制御機能と、をコンピュータに実現させる。
【0008】
以上のように、車室環境制御システム、方法、プログラムは、タッチパネルディスプレイに対する接触の軌跡によって入力された風向となるように風向を制御する。すなわち、タッチパネルディスプレイに指等を接触させて移動させると、その移動の軌跡を入力することが可能である。このような軌跡によれば、連続的な位置変化を容易に規定することができるため、タッチパネルディスプレイ上に車室画像を表示して軌跡によって風向を入力する構成とすれば、車室内での風向の連続的な位置変化を容易に入力することができる。従って、入力された風向となるように風向を制御すれば、簡易な操作によって車室内の環境を利用者の意図通りに制御することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】車室環境制御システムのブロック図である。
図2】車室環境制御処理のフローチャートである。
図3】(3A)は車室画像上で入力される接触の軌跡を示す図、(3B)は接触の軌跡に応じた制御対象の制御例を示す図である。
図4】遮断領域指定処理のフローチャートである。
図5】(5A)は車室画像上で入力される遮断領域を示す図、(5B)は遮断領域への風を遮断する場合の制御対象の制御例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)ナビゲーションシステムの構成:
(2)車室環境制御処理:
(2−1)指定領域における風の遮断:
(3)他の実施形態:
【0011】
(1)ナビゲーションシステムの構成:
図1は、本発明にかかる車室環境制御システム10の構成を示すブロック図である。本実施形態において車室環境制御システム10はCPU,RAM,ROM等を備える制御部20と記録媒体30とを備えており、車室内で利用される。また、車室環境制御システム10は、記録媒体30やROMに記憶されたプログラムを制御部20で実行することができる。本実施形態において制御部20は、このプログラムの一つとして車室環境制御プログラム21を実行可能である。むろん、制御部20においては、他のプログラム、例えば、音響機器の制御プログラムやナビゲーションプログラムが実行可能であっても良い。
【0012】
車室環境制御システム10が利用される車両には、複数の空調機40と窓41とユーザI/F部42とが備えられている。空調機40には、空気流出方向を上下方向(鉛直方向)に変化させるためのフィンと左右方向(水平方向)に変化させるためのフィンとが取り付けられている。本実施形態において空調機40は、空気流出方向を左右方向に変化させるためのフィンの角度を調整するためのアクチュエータ40aを備えている。すなわち、制御部20がアクチュエータ40aに対して制御信号を出力し、アクチュエータ40aを駆動することで空調機からの空気流出方向を左右方向に変化させることができる。また、制御部20は、空調機40に対して制御信号を出力し、空調機40からの風量を変化させることができる。
【0013】
窓41は、窓を開閉させるためのアクチュエータ41aを備えている。すなわち、制御部20がアクチュエータ41aに対して制御信号を出力し、アクチュエータ41aを駆動することで窓41の開閉量を変化させることができる。ユーザI/F部42は、利用者の指示を入力し、また利用者に各種の情報を提供するためのインタフェース部であり、図示しないタッチパネルディスプレイからなる入力部を兼ねた表示部やスピーカー等の出力音の出力部を備えている。
【0014】
記録媒体30には車室画像情報30aと制御対象情報30bとが予め記録されている。車室画像情報30aは、車両内の車室を示す模式図を表示部に表示するための画像データであり、本実施形態においては、図3Aに示すような車室の模式図を表示部に表示するためのデータである。すなわち、本実施形態においては、矩形によって空調機40の空気流出口と窓41と座席との位置を模式的に示す画像を表示する構成が採用されており、図3Aにおいては、空調機40をA/C1〜6、窓41をW1〜5、座席をS1〜4の符号で示している。すなわち、S1は前方左側の座席(助手席)、S2は前方右側の座席(運転席)、S3は後方左側の座席、S4は後方右側の座席を示している。A/C1〜4は車両の前方のインストルメンタルパネルに取り付けられた空調機40であり、左から順に1〜4の符号が割り当てられている。A/C5は後部座席の前方の左側、A/C6は後部座席の前方の右側に存在する空調機40である。W1は前方左側、W2は前方右側、W3は後方左側、W4は後方右側の窓41、W5は車室天井の窓41(サンルーフ)である。
【0015】
制御対象情報30bは、接触の軌跡と制御対象とを対応づけた情報である。すなわち、本実施形態においては、後述するタッチパネルディスプレイ上に表示された上述の車室画像上を指で接触した状態での指の移動操作で風向および風量を指定する構成が採用されており(詳細は後述)、制御対象情報30bにおいては、接触の軌跡の典型例が複数個格納されており、それぞれに対して制御対象となる空調機40および窓41とその制御量(空気流出方向および空気流出量、窓の開閉量)が対応づけられている。なお、接触の軌跡の各典型例に対応づけられる制御対象とその制御量は、接触の軌跡と空調機40の空気流出口および窓41の位置との関係に基づいて予め決められている。すなわち、制御対象情報30bが定義される際には、車室環境制御システム10が利用される車両における空調機40の空気流出口および窓41の位置が予め特定される。さらに、典型的な接触の軌跡に一致、または類似する風向を実現し得る空調機40の空気流出口および窓41の位置の候補が挙げられる(候補は複数であり、1個の候補に複数の空調機40の空気流出口および窓41が含まれてよい)。さらに、各候補における空調機40の空気流出口からの空気流出方向および空気流出量、41の開閉量が種々の状態になるように試行され、典型的な接触の軌跡に最も近い風向が選択される。この状態において、当該選択された風向を実現する空調機40の空気流出口および窓41の制御量が特定され、典型的な接触の軌跡に対応づけられる。本実施形態においては、以上のような試行が複数の接触の軌跡について行われ、複数の接触の軌跡について、制御対象となる空調機40および窓41とその制御量が対応づけられることにより、制御対象情報30bが定義されている。従って、制御部20は、接触の軌跡に最も近い典型例を制御対象情報30bから特定することにより、連続的な接触の軌跡の開始点から終了点までの間における風向を取得することができ、接触の軌跡に応じた風向になるように空調機および窓を制御することができる。すなわち、制御部20が、制御対象情報30bに基づいて、接触の軌跡に応じた制御対象と制御量とを選択すると、制御部20が、実質的に、接触の軌跡と、空調機の空気流出口および窓の位置との関係に基づいて風向を制御することができるように構成されている。


【0016】
なお、本実施形態においては、接触の軌跡の典型例の開始点が風上、終了点が風下となるように風向が定義される。すなわち、本実施形態においては、軌跡の開始点から終了点に向けた風向であって、開始点から終了点までの軌跡の接線が風向となるように典型的な軌跡毎の風向が定義される。そして、制御対象情報30bにおいては、連続的な接触の軌跡の典型例における開始点から終了点までの間の風向が接触の軌跡に平行になるように、空調機40と窓41との少なくとも一方の制御量(アクチュエータ40a,41aに対する指示値)が定義されている。
【0017】
具体的には、風上に存在する風の発生源と、軌跡の途中に存在する風の発生源と、風下に存在する風の流出口と、が制御対象となって当該風向を実現するように制御対象が予め定義され、各制御対象について制御量が定義される。この結果、制御部20が、接触の軌跡に最も近い典型例を制御対象情報30bから特定することにより、車室内の風向が接触の軌跡に平行または平行に類似するように風向を特定することができる。
【0018】
さらに、制御対象情報30bにおいては風量も定義されている。すなわち、本実施形態においてはタッチパネルディスプレイに対する接触の面積によって風量を特定するように構成されており、タッチパネルディスプレイに触れている指の数によって段階的に風量を切り替えられるように構成されている。具体的には、指の数が1本,2本,3本のそれぞれに対して風量小、中、大が対応づけられている。なお、風量小、中、大は、風速等によって風量の範囲を3段階を規定すること等により定義可能である。
【0019】
そして、制御対象情報30bにおいては、風量が小、中、大のそれぞれである場合における制御対象の制御量が車速毎に定義されている。具体的には、制御対象情報30bにおいては、制御対象に空調機40が含まれる場合、空調機40における空気流出量が風量小、中、大のそれぞれについて車速毎に定義され、制御対象に窓41が含まれる場合、窓41の開閉量が風量小、中、大のそれぞれについて車速毎に定義される。
【0020】
すなわち、窓41が開いている状態においては、一般的に窓が空いている量が多いほど風量が増加し、車速によって窓41から流入または流出する風量が変化し得る。そこで、本実施形態においては、窓41が制御対象に含まれている場合において、風量が小、中、大のいずれかになるように予め車速毎に窓41の開閉量および空調機40における空気流出量が規定され、制御対象情報30bとして定義される。従って、制御部20が、接触の面積に基づいて風量を特定し、車速を特定して制御対象情報30bを参照すれば、各制御対象における制御量(空気流出量や開閉量)を特定することができる。
【0021】
車室環境制御プログラム21は、ユーザI/F部42のタッチパネルディスプレイに表示された車室画像に対する接触によって風向および風量を受け付ける機能を制御部20に実現させる。このために、車室環境制御プログラム21は、車室画像表示部21aと接触入力受付部21bと車室環境制御部21cとを備えている。車室画像表示部21aは、車室を示す車室画像をタッチパネルディスプレイに表示する機能を制御部20に実現させるプログラムモジュールである。すなわち、制御部20は、車室画像表示部21aの処理により、車室画像情報30aを参照し、車室画像を所定位置に表示するための制御信号をユーザI/F部42に対して出力する。この結果、ユーザI/F部42のタッチパネルディスプレイの所定位置に図3Aに示すような車室画像が表示される。
【0022】
接触入力受付部21bは、タッチパネルディスプレイに表示された車室画像上での接触による入力を受け付ける機能を制御部20に実現させるプログラムモジュールである。すなわち、ユーザI/F部42は、タッチパネルディスプレイに対する接触が行われると、当該接触が行われた位置を示す信号を出力する。制御部20は、当該信号に基づいて接触が行われた車室画像上の位置を特定する。
【0023】
車室環境制御部21cは、タッチパネルディスプレイに対する接触の軌跡に応じて車室内の風向および風量を制御する機能を制御部20に実現させるプログラムモジュールである。すなわち、制御部20は、接触入力受付部21bの処理によって受け付けたタッチパネルディスプレイに対する接触の位置が連続的に変化した場合、当該接触の開始点から終了点までの間における接触の位置を特定することで、接触の軌跡を特定する。このように、タッチパネルディスプレイに対する接触を利用すれば、連続的な位置変化を容易に規定することができるため、タッチパネルディスプレイ上に車室画像を表示して軌跡によって風向を入力する構成とすることで、車室内での風向の連続的な位置変化を容易に入力することができる。
【0024】
制御部20は、当該軌跡の各位置の風向が当該軌跡によって示されていると見なし、各位置の風向が当該軌跡と一致、または類似するように車室内の風向を制御する。具体的には、制御部20は、制御対象情報30bを参照し、接触の軌跡に最も類似する典型例を制御対象情報30bから特定して制御対象(空調機40または窓41)を特定する。この結果、制御部20は、接触の軌跡と、空調機の空気流出口および窓の位置との関係に基づいて風向を制御することになる。
【0025】
さらに、制御部20は、車室環境制御部21cの処理により、タッチパネルディスプレイに対する接触の面積に基づいて車室内の風量を取得する。すなわち、タッチパネルディスプレイに対する接触位置は、通常、一点ではなく所定の面積を有する範囲にわたって存在する。そこで、制御部20は、接触入力受付部21bの処理によって受け付けたタッチパネルディスプレイ上の接触位置の存在範囲を特定し、その面積と2段階の閾値とを比較することにより、タッチパネルディスプレイに対する接触が指1本、2本、3本のいずれで行われたのかを特定する。また、制御部20は、指1本で接触が行われた場合に風量小、指2本で接触が行われた場合に風量中、指3本で接触が行われた場合に風量大と特定する。そして、制御部20は、制御対象情報30bを参照し、特定された風量に対応する各制御対象の制御量(空気流出量や開閉量)を特定する。
【0026】
以上のようにして制御対象と当該制御対象の制御量とが特定されると、制御部20は、制御対象に対して制御信号を出力し、当該制御量となるように制御対象を制御する。すなわち、空調機40において風向を制御する場合、制御部20は、アクチュエータ40aに対して制御信号を出力し、風量を制御する場合、制御部20は、空調機40に対して制御信号を出力する。また、窓41において風向や風量を制御する場合、制御部20は、アクチュエータ41aに対して制御信号を出力する。
【0027】
以上のように、本実施形態において制御部20は、ユーザI/F部42のタッチパネルディスプレイに対する接触の軌跡によって風向を特定し、特定された風向となるように風向を制御する。従って、簡易な操作によって車室内の環境を利用者の意図通りに制御することが可能になる。さらに、制御部20は、タッチパネルディスプレイに対する接触によって風量を特定する。従って、簡易な入力によって風量を特定することが可能である。さらに、制御部20は、タッチパネルディスプレイに対する接触の面積によって車室内の風量を取得するため、風向と風量とを同時に取得可能であり、極めて簡易な入力によって車室内の環境を設定することができる。
【0028】
(2)車室環境制御処理:
次に、車室環境制御プログラム21で実行される車室環境制御処理を詳細に説明する。図2は、車室環境制御処理を示すフローチャートである。本実施形態においては、利用者がユーザI/F部42によって車室環境制御処理の実行開始指示を行った場合に車室環境制御処理が実行される。当該車室環境制御処理において、制御部20は、車室画像表示部21aの処理により、車室画像を表示する(ステップS100)。すなわち、制御部20は、車室画像情報30aを参照し、車室画像を所定位置に表示するための制御信号をユーザI/F部42に対して出力し、ユーザI/F部42のタッチパネルディスプレイの所定位置に図3Aに示すような車室画像を表示させる。
【0029】
次に、制御部20は、接触入力受付部21bの処理により、タッチパネルディスプレイ上の車室画像に対する接触が開始されたと判定されるまで待機する(ステップS105)。すなわち、ユーザI/F部42からタッチパネルディスプレイ上での接触位置を示す信号であって、車室画像の表示位置に重なる位置を示す信号を制御部20が取得するまで待機する。
【0030】
ステップS105において、タッチパネルディスプレイ上の車室画像に対する接触が開始されたと判定された場合、制御部20は、接触入力受付部21bの処理により、ユーザI/F部42から出力される信号に基づいてタッチパネルディスプレイに対する接触位置および接触面積を取得する(ステップS110)。
【0031】
次に、制御部20は、接触入力受付部21bの処理により、タッチパネルディスプレイ上の車室画像に対する接触が終了したか否かを判定する(ステップS115)。すなわち、制御部20は、ユーザI/F部42からタッチパネルディスプレイ上での接触位置を示す信号が出力されない状態となったか否かを判定する。そして、制御部20は、ステップS115において、タッチパネルディスプレイ上の車室画像に対する接触が終了したと判定されるまでステップS110以降の処理を繰り返す。
【0032】
図3Aにおいては、ステップS105〜S115における接触の軌跡の入力例を示している。すなわち、図3Aにおいては、実線の矢印によって接触の軌跡を示しており、窓W2を開始点として窓W3まで至る曲線が風向を示す軌跡として入力された例を示している。なお、図3Aにおいては、矢印を2本示すことにより、指2本によって接触の軌跡が入力されたことを示している。
【0033】
ステップS115において、タッチパネルディスプレイ上の車室画像に対する接触が終了したと判定された場合、制御部20は、車室環境制御部21cの処理により、接触の軌跡を取得する(ステップS120)。すなわち、制御部20は、ステップS105〜S115において取得した接触の開始点から接触の終了点までの間における複数個の接触位置を接触の軌跡として取得する。
【0034】
次に、制御部20は、車室環境制御部21cの処理により、接触面積から風量を取得する(ステップS125)。すなわち、制御部20は、ステップS105〜S115において取得した各接触位置の存在範囲を特定して接触面積を取得し、当該接触面積と2段階の閾値との比較によって風量を小、中、大のいずれかとする。
【0035】
次に、制御部20は、車室環境制御部21cの処理により、車速を取得する(ステップS130)。すなわち、制御部20は、記録媒体30に記録された図示しない車両の走行履歴に基づいて車両における過去の平均車速を特定し、車速として取得する。むろん、車速の取得方法は、他にも種々の手法を採用可能であり、走行予定経路上での推定平均車速を取得する構成等であっても良い。
【0036】
次に、制御部20は、車室環境制御部21cの処理により、制御対象及び制御量を取得する(ステップS135)。すなわち、制御部20は、制御対象情報30bを参照し、ステップS120にて取得された接触の軌跡に最も類似する軌跡の典型例を取得する。例えば、ステップS120にて取得された接触の軌跡を示す曲線を特定し、当該曲線と制御対象情報30bが示す典型例との距離を複数箇所について取得し、距離の累計が最も短い典型例を接触の軌跡に最も類似する軌跡の典型例とする処理等によって、接触の軌跡に最も類似する軌跡の典型例を取得可能である。接触の軌跡に最も類似する軌跡の典型例が特定されると、制御部20は、制御対象情報30bに基づいて、当該典型例に対応づけられた制御対象(空調機40と窓41との少なくとも1個)を特定する。さらに、制御部20は、ステップS130にて取得された車速に対応づけられた制御対象情報30bからステップS125にて取得された風量とするための各制御対象の制御量を取得する。
【0037】
そして、制御部20は、車室環境制御部21cの処理により、制御対象を制御する(ステップS140)。すなわち、制御部20は、空調機40、アクチュエータ40a、アクチュエータ41aの少なくとも1個に制御信号を出力し、ステップS135において取得した制御対象がステップS135において取得した制御量で駆動するように制御を行う。
【0038】
図3Bは、図3Aに示す風向および風量が指定された場合における制御の例を示す図である。図3Aに示す接触の軌跡は、窓W2が開始点、窓W3が終了点であり、車室の中央を通っている。本実施形態においては、接触の軌跡の開始点が風上、終了点が風下となるように風向が定義され、風上に存在する風の発生源と、軌跡の途中に存在する風の発生源と、風下に存在する風の流出口と、が制御対象となる。図3Aに示す例においては、風上である窓W2の周囲に存在する風の発生源である空調機A/C3,4と窓W2が制御対象となり、軌跡の途中に存在する風の発生源であるA/C5が制御対象となり、風下に存在する風の流出口である窓W3が制御対象となる。図3Bにおいては、制御対象が太い実線で示されている。
【0039】
そして、風の発生源である空調機A/C3,4,5においては、接触の軌跡付近の風向が当該軌跡に平行になるように車速毎の制御量が制御対象情報30bにおいて決められている。さらに、窓W2,3においては、風が窓W2から流入し、窓W3から流出するように窓の開閉量が制御対象情報30bにおいて決められている。従って、制御部20が制御量を指示して制御を行うことにより、空調機A/C3,4,5から空気が流出する。また、制御部20が制御量を指示して制御を行うことにより、窓W2,3が開けられ、窓W2から空気が流入し、窓W3から空気が流出する。図3Bにおいては、空調機A/C3,4,5からの空気の流出方向を矢印の方向で示し、風量を矢印の個数で示している(2個は風量中である)。また、図3Bにおいては、窓W2,3が開けられていることを図3Aに示す窓W2,3より小さい矩形によって示している。このような制御の結果、ユーザI/F部42のタッチパネルディスプレイに対する接触の軌跡で指定された風向および風量となるように車室内の環境が制御される。
【0040】
(2−1)指定領域における風の遮断:
上述のように接触の軌跡によって風向を指定する構成に、他の機能を追加しても良い。例えば、風向をより詳細に指定したり、風向を決定した後に風向を修正したりすることを可能にする構成を追加しても良い。図4は、図2に示す車室環境制御処理によって風向を決定した後に、風を遮断することを望む遮断領域において風を遮断することを可能にする遮断領域指定処理を示すフローチャートである。
【0041】
当該遮断領域指定処理は、図2に示す処理の後に、利用者がユーザI/F部42によって遮断領域指定処理の実行開始指示を行った場合に実行される。遮断領域指定処理におけるステップS200〜S215の処理は、車室環境制御処理におけるステップS100〜S115の処理とほぼ同様である。ただし、ステップS210において、制御部20が接触面積を取得する必要はない。ステップS200〜S215の処理において利用者は、接触の軌跡によって風向ではなく遮断領域を指定するようになっており、本例において、利用者は、閉曲線(開始点と終了点が所定距離以下である開曲線であってもよい)で遮断領域を指定する。
【0042】
図5Aにおいては、ステップS205〜S215における接触の軌跡の入力例を示している。すなわち、図5Aにおいては、実線の矢印によって接触の軌跡を示しており、後方左側の座席S3が遮断領域として指定された例を示している。なお、図5Aにおいては、破線の矢印によって図3Aにて入力された風向を示しており、この風向では後方左側の座席S3が風の経路付近に存在するため、後方左側の座席S3に着座する利用者に風が吹き付ける場合がある。そして、当該利用者が自身に対する風の吹きつけを抑制したい場合に、後方左側の座席S3が遮断領域として指定されることになる。
【0043】
ステップS200〜S215の処理が行われ、ステップS215において、タッチパネルディスプレイ上の車室画像に対する接触が終了したと判定された場合、制御部20は、車室環境制御部21cの処理により、遮断領域を取得する(ステップS217)。すなわち、制御部20は、ステップS205〜S215において取得した接触の開始点から接触の終了点までの間における複数個の接触位置に囲まれた領域を遮断領域として取得する。
【0044】
次に、制御部20は、遮断領域を除外した接触の軌跡を取得する(ステップS220)。すなわち、制御部20は、ステップS120において取得した接触の軌跡から、ステップS217で取得した遮断領域を除外して新たな軌跡を取得する。例えば、図5Aにおいて破線の矢印で示す接触の軌跡から実線の矢印で示す遮断領域が除外された場合、図5Bに一点鎖線の矢印で示す軌跡が新たな軌跡として取得される。
【0045】
ステップS225〜S240における処理はステップS125〜S140における処理と同様である。すなわち、遮断領域指定処理において、制御部20は、領域を指示する接触に基づいて車室内の風を遮断すべき遮断領域を特定し、ステップS120において取得した接触の軌跡から遮断領域に含まれる軌跡を除外し、除外された後の軌跡の開始点から終了点までの間における風向を取得し、車室内の風向を制御する。
【0046】
図5Bに示す遮断領域が遮断された後の接触の軌跡は、窓W2が開始点、空調機A/C5が終了点であるため、窓W2が風上、空調機A/C5が風下となるように風向が定義される。そして、ここでも、風上に存在する風の発生源と、軌跡の途中に存在する風の発生源と、風下に存在する風の流出口と、が制御対象となる。このため、図5Bに示す例においては、風上である窓W2の周囲に存在する風の発生源である空調機A/C3,4と窓W2が制御対象となり、風下に存在する風の流出口である窓W5が制御対象となる。
【0047】
そして、風の発生源である空調機A/C3,4においては、接触の軌跡付近の風向が当該軌跡に平行になるように車速毎の制御量が制御対象情報30bにおいて決められている。さらに、窓W2,5においては、風が窓W2から流入し、窓W5から流出するように窓の開閉量が制御対象情報30bにおいて決められている。従って、制御部20が制御量を指示して制御を行うことにより、空調機A/C3,4から空気が流出し、窓W2,5が開けられることになる。なお、図5Bに示す接触の軌跡において空調機A/C5および窓W3は制御対象となっていないため、空調機A/C5は停止され、窓W3は閉じられる。図5Bにおいては、空調機A/C3,4からの空気の流出方向を矢印の方向で示し、風量を矢印の個数で示している(2個は風量中である)。また、図5Bにおいては、窓W2,5が開けられていることを図5Aに示す窓W2,5より小さい矩形によって示し、窓W3が閉じられていることを図5Aに示す窓W3と同じ大きさの矩形によって示している。このような制御の結果、遮断領域への風が遮断された状態となるように車室内の環境が制御される。この構成によれば、車室内に風が吹き付けることを好まない者が搭乗している場合などにおいて、当該者が快適になる車室環境を指定することが可能である。
【0048】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、車室画像上での接触の軌跡に応じて車室内の風向を制御する限りにおいて他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、車室環境制御システムは、車両の搭乗者が携帯するコンピュータ等によって実現されても良い。さらに、風向が水平面内の方向だけでなく上下方向に調整できるように構成されても良い。さらに、風向の制御をより容易にするため、接触の軌跡の開始点および終了点となり得る位置が特定の部分、例えば、制御対象である空調機や窓に限定されるように構成されていても良い。
【0049】
さらに、車室画像表示手段は、車室を示す車室画像をタッチパネルディスプレイに表示することができればよい。すなわち、タッチパネルディスプレイ上の車室画像に対する接触によって車室内の位置を指定しつつ、接触の軌跡(軌跡線の接線)によって各位置の風向を指定できるように接触対象となる車室画像を表示することができればよい。なお、車室画像は、例えば、車室の模式図によって構成可能であり、模式図としては種々の態様を想定可能である。むろん、車室の平面図であってもよいし側面図であっても良いし、双方であってもよい。
【0050】
接触入力受付手段は、タッチパネルディスプレイに表示された車室画像上での接触による入力を受け付けることができればよい。すなわち、タッチパネルディスプレイ上の車室画像に対する接触によって車室内の位置の指定を受け付けることができればよい。
【0051】
車室環境制御手段は、接触の軌跡に応じて車室内の風向を制御することができればよい。すなわち、タッチパネルディスプレイ上の車室画像に対する接触位置の変化から接触の軌跡を特定し、当該軌跡の各位置の風向が当該軌跡によって示されていると見なし、各位置の風向が当該軌跡と一致、または類似するように車室内の風向を制御することができればよい。風向を制御するための制御対象は種々の装置を想定可能であり、空調機や窓等を想定可能である。すなわち、空調機からの空気流出方向を調整すれば、流出した風の風向を調整可能である。また、窓の開閉量を調整すれば、窓から流入し、または流出する風の風向を調整可能である。むろん、窓は車両のドアに設置された窓以外にも種々の窓が想定可能であり、例えば、天井に設置された窓等を想定可能である。
【0052】
さらに、接触の軌跡から風向を取得するための構成として、車室環境制御手段が、連続的な接触の軌跡の開始点から終了点までの間における風向を取得し、車室内の風向を制御する構成を採用しても良い。すなわち、開始点および終了点が定義された有限の長さを持った軌跡によって風向が定義される構成とする。この構成によれば、例えば、開始点が風上、終了点が風下となるように風向を取得すれば良く、容易に風向を特定可能である。
【0053】
むろん、開始点から終了点までの間においては、開始点から終了点までの軌跡が風向を示すと見なすことが可能である。例えば、車室環境制御手段が、連続的な接触の軌跡の開始点から終了点までの間の風向が接触の軌跡に平行になるように、空調機からの空気流出方向と窓の開閉量との少なくとも一方を制御する構成としても良い。すなわち、空調機からの空気流出方向を制御すれば、空調機における空気流出口の周囲の風向を制御することができ、窓の開閉量を制御すれば空いている窓の周囲の風向を制御することができる。そこで、ここでは、連続的な接触の軌跡の開始点から終了点までの間の風向が接触の軌跡に平行になるように、空調機からの空気流出方向と窓の開閉量との少なくとも一方を制御すれば良い。むろん、ここでは、連続的な接触の軌跡の少なくとも一部において風向が接触の軌跡に平行になるように構成されればよい。また、軌跡と風向とが平行であるか否か厳密に定義される必要はなく、平行または平行に類似する風向となるように風向を制御すれば良い。
【0054】
さらに、車室環境制御手段が、領域を指示する接触に基づいて車室内の風を遮断すべき遮断領域を特定し、接触の軌跡から遮断領域に含まれる軌跡を除外し、除外された後の軌跡の開始点から終了点までの間における風向を取得し、車室内の風向を制御する構成としてもよい。すなわち、風が通る軌跡を接触によって指定する構成以外にも、風が通らない遮断領域を接触によって指定する構成を実現することも可能である。この構成によれば、車室内に風が吹き付けることを好まない者が搭乗している場合などにおいて、当該者が快適になる車室環境を指定することが可能である。
【0055】
接触の軌跡から前記遮断領域に含まれる軌跡を除外し、除外された後の軌跡の開始点から終了点までの間における風向を取得する場合、終了点以後の遮断領域には風が通らない状態となっていることが好ましい。このためには、終了点において遮断領域以外の方向に風を向けるなどの構成を想定可能であり、例えば、終了点または終了点の手前(開始点側)に風が多く抜ける部位(風が流出するように開けられた窓等)を形成する構成等を想定可能である。なお、遮断領域を特定するための接触の態様としては種々の態様を想定可能であり、タップ操作や接触の軌跡で領域を指定する操作(閉曲線等をなぞる操作)等を想定可能である。
【0056】
さらに、車室内の環境を制御するために風向以外の事項を制御しても良く、例えば、車室環境制御手段が、接触の面積に基づいて車室内の風量を取得する構成であっても良い。すなわち、風向の他、風量が異なると車室内の環境が大きく異なるため、風量も制御できる構成であることが好ましい。そして、タッチパネルディスプレイに対する接触によって風量を指定できるように構成すれば、簡易な入力によって風量を特定することが可能になる。さらに、接触の面積によって車室内の風量を取得する構成とすれば、風向と風量とを同時に取得可能であり、極めて簡易な入力によって車室内の環境を設定することができる。なお、接触の面積を調整する構成としては、例えば、タッチパネルディスプレイに対して同時に接触させる指の数を変化させる構成等を想定可能である。
【0057】
風量を変化させるための構成としては、種々の構成を採用可能であり、例えば、車室環境制御手段が、空調機からの空気流出量と窓の開閉量と車速との少なくとも1個の要素に基づいて車室内の風量を制御する構成としてもよい。すなわち、空調機からの空気流出量を制御すれば、風量を容易に制御することができる。また、一般的には、窓が空いている量が多いほど風量が増加するため、窓の開閉量で風量を制御しても良い。さらに、車両が特定の車速で走行していることを想定すれば、車速が大きいほど窓から流入する風量が多くなるため、車速に応じて風量が変化すると見なしても良い。むろん、窓の開閉量と車速との組み合わせによって風量が取得する構成であっても良い。
【0058】
さらに、車室画像上での接触の軌跡に応じて車室内の風向を制御する手法は、プログラムや方法としても適用可能である。また、以上のような車室環境制御システム、プログラム、方法は、単独の車室環境制御システムとして実現される場合もあれば、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。例えば、以上のような車室環境制御システムを備えたナビゲーションシステムや方法、プログラムを提供することが可能である。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、車室環境制御システムを制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【符号の説明】
【0059】
10…車室環境制御システム、20…制御部、21…車室環境制御プログラム、21a…車室画像表示部、21b…接触入力受付部、21c…車室環境制御部、30…記録媒体、30a…車室画像情報、30b…制御対象情報、40…空調機、40a,41a…アクチュエータ、41…窓、42…ユーザI/F部
図1
図2
図3
図4
図5