特許第6128275号(P6128275)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6128275
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】ダンパ装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/134 20060101AFI20170508BHJP
   F16H 45/02 20060101ALN20170508BHJP
【FI】
   F16F15/134 A
   F16F15/134 B
   F16F15/134 Z
   !F16H45/02 Y
【請求項の数】15
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2016-505337(P2016-505337)
(86)(22)【出願日】2015年2月27日
(86)【国際出願番号】JP2015055938
(87)【国際公開番号】WO2015129885
(87)【国際公開日】20150903
【審査請求日】2016年6月15日
(31)【優先権主張番号】特願2014-39655(P2014-39655)
(32)【優先日】2014年2月28日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-129301(P2014-129301)
(32)【優先日】2014年6月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 一能
(72)【発明者】
【氏名】荒木 敬造
(72)【発明者】
【氏名】上野 真
(72)【発明者】
【氏名】平井 悠一郎
(72)【発明者】
【氏名】輪嶋 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】勘山 裕司
(72)【発明者】
【氏名】津田 康太郎
【審査官】 長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−072539(JP,A)
【文献】 特開2006−118534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/134
F16F 15/14
F16H 45/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも入力要素および出力要素を含む複数の回転要素と、前記入力要素と前記出力要素との間で直列に作用してトルクを伝達する第1および第2弾性体を少なくとも含むトルク伝達弾性体と、質量体および前記質量体と前記複数の回転要素の何れかである第1回転要素との間に配置される吸振用弾性体を含むと共に前記第1回転要素に対して逆位相の振動を付与して振動を減衰するダイナミックダンパとを有するダンパ装置において、
前記入力要素と前記出力要素との相対回転を規制する回転規制ストッパと、
前記複数の回転要素のうちの前記ダイナミックダンパが連結されない第2回転要素に設けられており、前記回転規制ストッパにより前記入力要素と前記出力要素との相対回転が規制される前に前記吸振用弾性体の端部に連結されるように構成された付加連結部と、
前記回転規制ストッパにより前記入力要素と前記出力要素との相対回転が規制される前、かつ少なくとも前記付加連結部が前記吸振用弾性体の端部に連結される時点までに、前記第1および第2弾性体の一方の捩れを規制する弾性体ストッパとを備え、
前記付加連結部が前記吸振用弾性体の端部に連結された以降には、前記吸振用弾性体と前記第1および第2弾性体の他方とが、前記入力要素と前記出力要素との間で並列に作用してトルクを伝達することを特徴とするダンパ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のダンパ装置において、
前記付加連結部は、前記入力要素への入力トルクが予め定められた第1の値以上になると前記吸振用弾性体の端部に連結されることを特徴とするダンパ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のダンパ装置において、
前記回転規制ストッパは、前記入力要素への入力トルクが予め定められた第2の値に達すると前記入力要素と前記出力要素との相対回転を規制し、前記第1の値は、前記第2の値よりも小さいことを特徴とするダンパ装置。
【請求項4】
請求項3に記載のダンパ装置において、
前記弾性体ストッパは、前記入力要素への入力トルクが前記第1の値に達すると前記第1および第2弾性体の前記一方の捩れを規制することを特徴とするダンパ装置。
【請求項5】
請求項3に記載のダンパ装置において、
前記弾性体ストッパは、前記入力要素への入力トルクが予め定められた第3の値に達すると前記第1および第2弾性体の前記一方の捩れを規制し、前記第3の値は、前記第1の値よりも小さいことを特徴とするダンパ装置。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載のダンパ装置において、
前記付加連結部が前記吸振用弾性体の端部に連結されるまでの前記第2回転要素の前記第1回転要素に対する回転角度は、前記回転規制ストッパによって前記相対回転が規制されるまでの前記入力要素の前記出力要素に対する回転角度よりも小さいことを特徴とするダンパ装置。
【請求項7】
請求項1から6の何れか一項に記載のダンパ装置において、
前記回転規制ストッパは、前記第1および第2回転要素の相対回転を規制する要素間ストッパを含み、
前記付加連結部は、前記要素間ストッパにより前記第1および第2回転要素の相対回転が規制される前に前記吸振用弾性体の端部に連結されるように構成されることを特徴とするダンパ装置。
【請求項8】
請求項1から7の何れか一項に記載のダンパ装置において、
前記複数の回転要素は、前記トルク伝達弾性体を介して前記入力要素と前記出力要素との間に配置される少なくとも1つの中間要素を含み、
前記第1回転要素は、前記中間要素であり、前記第2回転要素は、前記入力要素、または前記トルク伝達弾性体を介して前記入力要素と前記第1回転要素との間に配置される回転要素であることを特徴とするダンパ装置。
【請求項9】
請求項1から8の何れか一項に記載のダンパ装置において、
前記複数の回転要素は、前記トルク伝達弾性体を介して前記入力要素と前記出力要素との間に配置される少なくとも1つの中間要素を含み、
前記第1回転要素は、前記中間要素であり、前記第2回転要素は、前記出力要素、または前記トルク伝達弾性体を介して前記第1回転要素と前記出力要素との間に配置される回転要素であることを特徴とするダンパ装置。
【請求項10】
請求項1から8の何れか一項に記載のダンパ装置において、
前記第1回転要素は、前記出力要素であり、前記第2回転要素は、前記入力要素、または前記トルク伝達弾性体を介して前記入力要素と前記出力要素との間に配置される回転要素であることを特徴とするダンパ装置。
【請求項11】
請求項1から8の何れか一項に記載のダンパ装置において、
前記第1回転要素は、前記入力要素であり、前記第2回転要素は、前記出力要素、または前記トルク伝達弾性体を介して前記入力要素と前記出力要素との間に配置される回転要素であることを特徴とするダンパ装置。
【請求項12】
請求項1から11の何れか一項に記載のダンパ装置において、
前記ダイナミックダンパの前記質量体は、ポンプインペラと共に流体伝動装置を構成するタービンランナを含むことを特徴とするダンパ装置。
【請求項13】
請求項4に記載のダンパ装置において、
前記複数の回転要素は、第1および第2中間要素を含み、
前記トルク伝達弾性体は、前記入力要素と前記第1中間要素との間でトルクを伝達する前記第1弾性体と、前記第1中間要素と前記第2中間要素との間でトルクを伝達する前記第2弾性体と、前記第2中間要素と前記出力要素との間でトルクを伝達する第3弾性体とを含み、
前記入力要素への入力トルクが予め定められた第4の値に達すると前記第3弾性体の捩れを規制する第2の弾性体ストッパを更に備え、前記第4の値は、前記第1の値よりも小さいことを特徴とするダンパ装置。
【請求項14】
請求項4に記載のダンパ装置において、
前記複数の回転要素は、第1および第2中間要素を含み、
前記トルク伝達弾性体は、前記入力要素と前記第1中間要素との間でトルクを伝達する前記第1弾性体と、前記第2中間要素と前記出力要素との間でトルクを伝達する前記第2弾性体と、前記第1中間要素と前記第2中間要素との間でトルクを伝達する第3弾性体とを含み、
前記入力要素への入力トルクが予め定められた第4の値に達すると前記第3弾性体の捩れを規制する第2の弾性体ストッパを更に備え、前記第4の値は、前記第1の値よりも大きいことを特徴とするダンパ装置。
【請求項15】
請求項13または14に記載のダンパ装置において、
前記第1回転要素は、前記第1中間要素であり、前記第2回転要素は、前記入力要素であることを特徴とするダンパ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも入力要素および出力要素を含む複数の回転要素と、当該複数の回転要素間でトルクを伝達するトルク伝達弾性体と、複数の回転要素の何れかに連結されるダイナミックダンパとを有するダンパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のダンパ装置として、入力要素と出力要素との間でトルクを伝達する第1弾性体と、第1弾性体の内側に配置されると共に入力要素と出力要素との間でトルクを伝達する第2弾性体と、当該ダンパ装置を構成する何れかの回転要素に連結される吸振用弾性体および当該吸振用弾性体に連結される質量体を有するダイナミックダンパとを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このダンパ装置において、ダイナミックダンパを構成する吸振用弾性体は、第1および第2弾性体の径方向における外側または内側、あるいは径方向における第1弾性体と第2弾性体との間に配置される。
【0003】
また、従来、入力部材に接続されたポンプインペラと、ポンプインペラと同軸に回転可能なタービンランナと、出力部材に接続されたダンパ機構と、入力部材とダンパ機構の入力要素とを係合させるロックアップクラッチと、タービンランナとダンパ機構を構成する複数の要素の何れか一つである第1要素との間に両者と当接するように配置された弾性体と、タービンランナとダンパ機構を構成する要素の中の第1要素以外の第2要素との間に配置されており、タービンランナと第2要素とを一体に回転するように係合させる係合機構とを備えた流体伝動装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。この流体伝動装置では、ロックアップクラッチにより入力部材とダンパ機構の入力要素とが係合されているときに、上記弾性体が入力部材と出力部材との間でのトルク伝達に寄与しないマスとなるタービンランナと共にダイナミックダンパを構成する。また、係合機構によりタービンランナと第2要素とが係合されて一体に回転すると、タービンランナと第1要素との間の弾性体は、入力部材と出力部材との間でトルクを吸収するダンパとして機能する。これにより、この流体伝動装置では、タービンランナと第1要素との間の弾性体をダイナミックダンパ用の弾性体および入力部材に入力される過大なトルクを吸収する弾性体として兼用することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2011/076168号
【特許文献2】特開2011−214635号公報
【発明の概要】
【0005】
上記特許文献1に記載された従来例のように、ダンパ装置に対してダイナミックダンパを組み込むことにより、ダンパ装置を構成する何れかの回転要素に対してダイナミックダンパにより逆位相の振動を付与して所定周波数の振動を減衰することが可能となる。しかしながら、ダンパ装置にダイナミックダンパを組み込んだとしても、それによってダンパ装置全体が低剛性化(ロングストローク化)されるわけではない。従って、ダイナミックダンパを有する従来のダンパ装置は、より一層の低剛性化を図るという面で、なお改善の余地を有している。また、上記特許文献2には、ダイナミックダンパ用の弾性体のばね定数を高くして入力部材に入力される過大なトルクを吸収する弾性体として兼用することが記載されてはいるが、ダンパ装置の低剛性化に関する記載は何ら認められない。
【0006】
そこで、本発明は、ダイナミックダンパを有するダンパ装置をより低剛性化することを主目的とする。
【0007】
本発明によるダンパ装置は、少なくとも入力要素および出力要素を含む複数の回転要素と、前記入力要素と前記出力要素との間で直列に作用してトルクを伝達する第1および第2弾性体を少なくとも含むトルク伝達弾性体と、質量体および前記質量体と前記複数の回転要素の何れかである第1回転要素との間に配置される吸振用弾性体を含むと共に前記第1回転要素に対して逆位相の振動を付与して振動を減衰するダイナミックダンパとを有するダンパ装置において、前記入力要素と前記出力要素との相対回転を規制する回転規制ストッパと、前記複数の回転要素のうちの前記ダイナミックダンパが連結されない第2回転要素に設けられており、前記回転規制ストッパにより前記入力要素と前記出力要素との相対回転が規制される前に前記吸振用弾性体の端部に連結されるように構成された付加連結部と、前記回転規制ストッパにより前記入力要素と前記出力要素との相対回転が規制される前、かつ少なくとも前記付加連結部が前記吸振用弾性体の端部に連結される時点までに、前記第1および第2弾性体の一方の捩れを規制する弾性体ストッパとを備え、前記付加連結部が前記吸振用弾性体の端部に連結された以降には、前記吸振用弾性体と前記第1および第2弾性体の他方とが、前記入力要素と前記出力要素との間で並列に作用してトルクを伝達することを特徴とする。
【0008】
このダンパ装置では、複数の回転要素の何れかである第1回転要素に対して、質量体および当該質量体と第1回転要素との間に配置される吸振用弾性体を含むダイナミックダンパが連結される。また、複数の回転要素のうちのダイナミックダンパが連結されない第2回転要素は、回転規制ストッパにより入力要素と出力要素との相対回転が規制される前に吸振用弾性体の端部に連結されるように構成された付加連結部を有する。更に、このダンパ装置は、回転規制ストッパにより入力要素と出力要素との相対回転が規制される前、かつ少なくとも付加連結部が吸振用弾性体の端部に連結される時点までに、第1および第2弾性体の一方の捩れを規制する弾性体ストッパを有する。そして、吸振用弾性体と第1および第2弾性体の他方とは、付加連結部が吸振用弾性体の端部に連結された以降に、入力要素と出力要素との間で並列に作用してトルクを伝達する。これにより、少なくとも付加連結部が吸振用弾性体の端部に連結された以降にトルクを伝達しなくなる第1および第2弾性体の一方をより低剛性化すると共に、吸振用弾性体と並列に作用する第1および第2弾性体の他方が受け持つべきトルク(分担トルク)を低減化して、当該第1および第2弾性体の他方の剛性をより低下させることができる。従って、本発明によれば、ダイナミックダンパを有するダンパ装置をより低剛性化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るダンパ装置を含む発進装置を示す概略構成図である。
図2図1の発進装置に含まれるダンパ装置を示す断面図である。
図3図1の発進装置に含まれるダンパ装置を示す正面図である。
図4図1の発進装置に含まれるダンパ装置を示す正面図である。
図5図1の発進装置の動作を説明するための模式図である。
図6図1の発進装置の動作を説明するための模式図である。
図7図1の発進装置に含まれるダンパ装置の捩れ特性を示す図表である。
図8】本発明の他の実施形態に係るダンパ装置を含む発進装置を示す概略構成図である。
図9】本発明の更に他の実施形態に係るダンパ装置を含む発進装置を示す概略構成図である。
図10】本発明の他の実施形態に係るダンパ装置を含む発進装置を示す概略構成図である。
図11】本発明の更に他の実施形態に係るダンパ装置を含む発進装置を示す概略構成図である。
図12】本発明の他の実施形態に係るダンパ装置を含む発進装置を示す概略構成図である。
図13】本発明の更に他の実施形態に係るダンパ装置を含む発進装置を示す概略構成図である。
図14図13の発進装置に含まれるダンパ装置の捩れ特性の一例を示す図表である。
図15図13の発進装置に含まれるダンパ装置の捩れ特性の他の一例を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係るダンパ装置10を含む発進装置1を示す概略構成図である。同図に示す発進装置1は、原動機としてのエンジン(内燃機関)を備えた車両に搭載されるものであり、ダンパ装置10に加えて、エンジンのクランクシャフトに連結される入力部材としてのフロントカバー3や、フロントカバー3に固定されるポンプインペラ(入力側流体伝動要素)4、ポンプインペラ4と同軸に回転可能なタービンランナ(出力側流体伝動要素)5、ダンパ装置10に連結されると共に自動変速機(AT)あるいは無段変速機(CVT)である変速機の入力軸ISに固定される出力部材としてのダンパハブ7、単板油圧式クラッチであるロックアップクラッチ8、ダンパ装置10に連結されるダイナミックダンパ20等を含む。
【0012】
ポンプインペラ4は、フロントカバー3に密に固定される図示しないポンプシェルと、ポンプシェルの内面に配設された複数のポンプブレード(図示省略)とを有する。タービンランナ5は、図示しないタービンシェルと、タービンシェルの内面に配設された複数のタービンブレード(図示省略)とを有する。本実施形態において、タービンランナ5のタービンシェルの内周部は、複数のリベットを介してダンパハブ7に固定される。ポンプインペラ4とタービンランナ5とは、互いに対向し合い、両者の間には、タービンランナ5からポンプインペラ4への作動油(作動流体)の流れを整流するステータ6が同軸に配置される。ステータ6は、複数のステータブレードを有し、ステータ6の回転方向は、ワンウェイクラッチ60により一方向のみに設定される。これらのポンプインペラ4、タービンランナ5およびステータ6は、作動油を循環させるトーラス(環状流路)を形成し、トルク増幅機能をもったトルクコンバータ(流体伝動装置)として機能する。ただし、発進装置1において、ステータ6やワンウェイクラッチ60を省略し、ポンプインペラ4およびタービンランナ5を流体継手として機能させてもよい。
【0013】
ロックアップクラッチ8は、ダンパ装置10を介してフロントカバー3とダンパハブ7とを連結するロックアップを実行すると共に当該ロックアップを解除するものである。ロックアップクラッチ8は、フロントカバー3の内部かつ当該フロントカバー3のエンジン側の内壁面近傍に配置されると共にダンパハブ7に対して軸方向に移動自在かつ回転自在に嵌合されるロックアップピストン80を有する。図2に示すように、ロックアップピストン80の外周側かつフロントカバー3側の面には、摩擦材81が貼着される。そして、ロックアップピストン80とフロントカバー3との間には、作動油供給孔や入力軸ISに形成された油路を介して図示しない油圧制御装置に接続される図示しないロックアップ室が画成される。
【0014】
ロックアップ室内には、油圧制御装置からポンプインペラ4およびタービンランナ5(トーラス)へと供給される作動油が流入可能である。従って、フロントカバー3とポンプインペラ4のポンプシェルとにより画成される流体伝動室9内とロックアップ室内とが等圧に保たれれば、ロックアップピストン80は、フロントカバー3側に移動せず、ロックアップピストン80がフロントカバー3と摩擦係合することはない。これに対して、図示しない油圧制御装置によりロックアップ室内を減圧すれば、ロックアップピストン80は、圧力差によりフロントカバー3に向けて移動してフロントカバー3と摩擦係合する。これにより、フロントカバー3は、ダンパ装置10を介してダンパハブ7に連結される。なお、ロックアップクラッチ8は、多板油圧式クラッチとして構成されてもよい。
【0015】
ダンパ装置10は、図1および図2に示すように、回転要素として、ドライブ部材(入力要素)11と、中間部材(中間要素)12と、ドリブン部材(出力要素)15とを含むと共に、トルク伝達要素(トルク伝達弾性体)として、ダンパ装置10の外周に近接して配置される複数(本実施形態では、2個)の外側スプリング(外側(第1)弾性体)SP1と、外側スプリングSP1よりも内側に配置される複数(本実施形態では、6個)の内側スプリング(内側(第2)弾性体)SP2とを含む。
【0016】
本実施形態において、外側スプリングSP1は、荷重が加えられてないときに円弧状に延びる軸心を有するように巻かれた金属材からなるアークコイルスプリングである。これにより、外側スプリングSP1をより低剛性化し(ばね定数を小さくし)、ダンパ装置10をより低剛性化(ロングストローク化)することができる。また、本実施形態において、内側スプリングSP2は、荷重が加えられてないときに真っ直ぐに延びる軸心を有するように螺旋状に巻かれた金属材からなる直線型コイルスプリングであり、外側スプリングSP1よりも高い剛性(大きいばね定数)を有する。ただし、外側スプリングSP1として、直線型コイルスプリングが採用されてもよく、内側スプリングSP2として、アークコイルスプリングが採用されてもよく、外側スプリングSP1よりも低い剛性(小さいばね定数)を有するものが採用されてもよい。
【0017】
ドライブ部材11は、環状に形成されており、複数のリベットを介してロックアップクラッチ8のロックアップピストン80に固定される環状の固定部111と、固定部111の外周部からポンプインペラ4やタービンランナ5に向けて軸方向に延びると共に複数の外側スプリングSP1の内周部を支持(ガイド)する複数(本実施形態では、2個)のスプリング支持部112と、固定部111の外周部から周方向に間隔をおいて径方向外側に延出されると共にスプリング支持部112よりも径方向外側でポンプインペラ4やタービンランナ5に向けて軸方向に延びる爪部113aを含む複数(本実施形態では、4個)のスプリング当接部(入力当接部)113とを有する。ドライブ部材11は、ロックアップピストン80に固定されて流体伝動室9内の外周側領域に配置される。
【0018】
また、本実施形態において、ロックアップピストン80は、複数の外側スプリングSP1の外周部やタービンランナ5側(変速機側)の側部(図2における左側の側部)を支持(ガイド)する環状のスプリング支持部80aを有する。そして、複数の外側スプリングSP1は、上述のドライブ部材11のスプリング支持部112と、ロックアップピストン80のスプリング支持部80aとにより支持され、ダンパ装置10の外周に近接するように流体伝動室9内の外周側領域に配置される。更に、ダンパ装置10の取付状態において、ドライブ部材11の各スプリング当接部113は、図3に示すように、それぞれ対応する外側スプリングSP1の端部と当接する。すなわち、互いに対をなす2個のスプリング当接部113は、例えば外側スプリングSP1の自然長に応じた間隔をおいて対向し、ダンパ装置10の取付状態において、各外側スプリングSP1の両端部は、ドライブ部材11の対応するスプリング当接部113と当接する。
【0019】
中間部材12は、ポンプインペラ4およびタービンランナ5側に配置される環状の第1中間プレート部材13と、ロックアップピストン80(フロントカバー3)側に配置されると共にリベットを介して第1中間プレート部材13に連結(固定)される環状の第2中間プレート部材14とを含む。
【0020】
中間部材12を構成する第1中間プレート部材13は、図2および図3に示すように、周方向に間隔をおいて並ぶと共にそれぞれ対応する内側スプリングSP2のポンプインペラ4およびタービンランナ5側の側部を外側から支持(ガイド)する複数(本実施形態では、6個)のスプリング支持部131と、複数のスプリング支持部131よりも第1中間プレート部材13の内周側で周方向に間隔をおいて並ぶと共にそれぞれ対応する内側スプリングSP2のポンプインペラ4およびタービンランナ5側の側部を内側から支持(ガイド)する複数(本実施形態では、6個)のスプリング支持部132とを有する。更に、第1中間プレート部材13は、スプリング支持部131から離間するように周方向に間隔をおいて径方向外側に延出されると共にロックアップピストン80に向けて軸方向に延びる爪部133aを含む複数(本実施形態では、4個)の第1外側スプリング当接部(第1当接部)133と、周方向に沿って互いに隣り合うスプリング支持部131,132の間に設けられた複数(本実施形態では、6個)の内側スプリング当接部134とを有する。
【0021】
中間部材12を構成する第2中間プレート部材14は、図2および図3に示すように、周方向に間隔をおいて並ぶと共にそれぞれ対応する内側スプリングSP2のロックアップピストン80側の側部を外側から支持(ガイド)する複数(本実施形態では、6個)のスプリング支持部141と、周方向に間隔をおいて並ぶと共にそれぞれ対応する内側スプリングSP2のロックアップピストン80側の側部を内側から支持(ガイド)する複数(本実施形態では、6個)のスプリング支持部142とを有する。更に、第2中間プレート部材14は、周方向に沿って互いに隣り合うスプリング支持部141,142の間に設けられた複数(本実施形態では、6個)の内側スプリング当接部144とを有する。
【0022】
第1および第2中間プレート部材13,14が互いに連結された際、第1中間プレート部材13の各スプリング支持部131は、第2中間プレート部材14の対応するスプリング支持部141と対向し、第1中間プレート部材13の各スプリング支持部132は、第2中間プレート部材14の対応するスプリング支持部142と対向する。そして、複数の内側スプリングSP2は、それぞれ互いに対向し合うスプリング支持部131,141およびスプリング支持部132,142により支持され、複数の外側スプリングSP1と径方向に並ぶ(径方向からみて重なる)と共に入力軸ISに近接するように当該複数の外側スプリングSP1よりも内側に配設される。
【0023】
また、ダンパ装置10の取付状態において、第1中間プレート部材13の各第1外側スプリング当接部133は、図3に示すように、対応する外側スプリングSP1の端部と当接する。すなわち、互いに対をなす2個の第1外側スプリング当接部133は、例えば外側スプリングSP1の自然長に応じた間隔をおいて対向し、ダンパ装置10の取付状態において、各外側スプリングSP1の両端部は、第1中間プレート部材13の対応する第1外側スプリング当接部133と当接する。本実施形態において、第1中間プレート部材13の第1外側スプリング当接部133の爪部133aと、ドライブ部材11のスプリング当接部113の爪部113aとは、図示するように、径方向に並び、第1外側スプリング当接部133の爪部133aは、スプリング当接部113の爪部113aよりも径方向内側で対応する外側スプリングSP1の端部と当接する。更に、第1中間プレート部材13の各内側スプリング当接部134は、互いに隣り合う内側スプリングSP2の間で両者の端部と当接し、第2中間プレート部材14の各内側スプリング当接部144は、互いに隣り合う内側スプリングSP2の間で両者の端部と当接する(図2参照)。すなわち、ダンパ装置10の取付状態において、各内側スプリングSP2の両端部は、第1および第2中間プレート部材13,14の対応する内側スプリング当接部134,144と当接する。
【0024】
ドリブン部材15は、図2に示すように、中間部材12の第1中間プレート部材13と第2中間プレート部材14との間に配置されると共に複数のリベットを介してダンパハブ7に固定される。また、ドリブン部材15は、周方向に間隔をおいて形成されて径方向外側に延びると共に、それぞれ互いに隣り合う内側スプリングSP2の間に配置されて両者の端部と当接する複数(本実施形態では、6個)のスプリング当接部154を有する。すなわち、ダンパ装置10の取付状態において、各内側スプリングSP2の両端部は、ドリブン部材15の対応するスプリング当接部154と当接する。これにより、ドリブン部材15は、複数の外側スプリングSP1、中間部材12および複数の内側スプリングSP2を介してドライブ部材11に連結される。
【0025】
更に、ダンパ装置10は、ドライブ部材11とドリブン部材15との相対回転を規制する回転規制ストッパとして、ドライブ部材11と中間部材12との相対回転を規制する第1要素間ストッパ16と、中間部材12とドリブン部材15との相対回転を規制する第2要素間ストッパ(弾性体ストッパ)17とを含む。第1要素間ストッパ16は、図2に示すように、スプリング支持部112の一部をポンプインペラ4やタービンランナ5に向けて更に軸方向に延出することによりドライブ部材11に形成されるストッパ部114と、第1中間プレート部材13の外側スプリングSP1を介して対向する一対の第1外側スプリング当接部133とにより構成される。本実施形態では、ドライブ部材11の各スプリング支持部112にストッパ部114が形成され、第1要素間ストッパ16は、2箇所に設けられる。
【0026】
ダンパ装置10の取付状態において、ドライブ部材11の各ストッパ部114は、図2に示すように、第1中間プレート部材13の外側スプリングSP1を介して対向する一対の第1外側スプリング当接部133の間に、各第1外側スプリング当接部133の側面と当接しないように配置される。そして、ドライブ部材11と中間部材12とが相対回転するのに伴ってドライブ部材11の各ストッパ部114が両側の一方の第1外側スプリング当接部133の側面と当接すると、各外側スプリングSP1の捩れ(伸縮)およびドライブ部材11と中間部材12との相対回転が規制されることになる。
【0027】
第2要素間ストッパ17は、第1中間プレート部材13の内周部から軸方向に延出されたストッパ部135と、ドリブン部材15に形成された円弧状の開口部155とにより構成される。本実施形態では、ストッパ部135が第1中間プレート部材13に複数設けられると共に開口部155がドリブン部材15にストッパ部135と同数設けられ、第2要素間ストッパ17は、複数箇所に設けられる。ダンパ装置10の取付状態において、第1中間プレート部材13の各ストッパ部135は、図3に示すように、ドリブン部材15の対応する開口部155内に当該開口部155を画成する両側の内壁面と当接しないように差し込まれる。そして、図4に示すように、中間部材12とドリブン部材15とが相対回転するのに伴って中間部材12側のストッパ部135が両側に位置する開口部155の一方の内壁面と当接すると、各内側スプリングSP2の捩れ(伸縮)および中間部材12とドリブン部材15との相対回転が規制されることになる。
【0028】
これにより、第1要素間ストッパ16により各外側スプリングSP1の捩れおよびドライブ部材11と中間部材12との相対回転が規制され、かつ第2要素間ストッパ17により各内側スプリングSP2の捩れおよび中間部材12とドリブン部材15との相対回転が規制されると、ドライブ部材11とドリブン部材15との相対回転が規制されることになる。また、本実施形態において、第1要素間ストッパ16(ドライブ部材11、中間部材12および外側スプリングSP1の諸元)および第2要素間ストッパ17(中間部材12ドリブン部材15および内側スプリングSP2の諸元)は、入力トルクの増加に伴って第1要素間ストッパ16により各外側スプリングSP1の捩れおよびドライブ部材11と中間部材12との相対回転が規制される前に、第2要素間ストッパ17により各内側スプリングSP2の捩れおよび中間部材12とドリブン部材15との相対回転が規制されるように構成(設定)される。
【0029】
ダイナミックダンパ20は、環状の質量体21と、当該質量体21とダンパ装置10の回転要素である中間部材(第1回転要素)12との間に配置される直線型コイルスプリングまたはアークコイルスプリングである複数(本実施形態では、2個の直線型コイルスプリング)の吸振用スプリング(吸振用弾性体)SP3とを含む。ここで、「ダイナミックダンパ」は、振動体の共振周波数に一致する周波数(エンジン回転数)で当該振動体に逆位相の振動を付加して振動を減衰する機構であり、振動体(本実施形態では、中間部材12)に対してトルクの伝達経路に含まれないようにスプリング(弾性体)と質量体とを連結することにより構成される。すなわち、吸振用スプリングSP3の剛性と質量体21の重さを調整することで、ダイナミックダンパ20により所望の周波数の振動を減衰することが可能となる。
【0030】
ダイナミックダンパ20の質量体21は、外周部から周方向に間隔をおいて軸方向に延出された複数(本実施形態では、4個)のスプリング当接部(弾性体当接部)21aを有する。複数のスプリング当接部21aは、2個(一対)ずつ近接するように質量体21の軸心に関して対称に形成され、互いに対をなす2個のスプリング当接部21aは、例えば吸振用スプリングSP3の自然長に応じた間隔をおいて対向する。また、ダイナミックダンパ20の連結対象である中間部材12の第1中間プレート部材13は、スプリング支持部131から離間するように周方向に間隔をおいて径方向外側に延出されると共にロックアップピストン80に向けて軸方向に延びる爪部136aを含む複数(本実施形態では、4個)の第2外側スプリング当接部(第2当接部)136を有する。複数の第2外側スプリング当接部136は、外側スプリングSP1を介すことなく互いに隣り合う第1外側スプリング当接部133の間で、2個(一対)ずつ近接するように第1中間プレート部材13の軸心に関して対称に形成され、互いに対をなす2個の第2外側スプリング当接部136は、例えば吸振用スプリングSP3の自然長に応じた間隔をおいて対向する。
【0031】
ダンパ装置10の取付状態において、各吸振用スプリングSP3は、一対のスプリング当接部21aにより支持され、外側スプリングSP1と周方向に並ぶように互いに隣り合う2個の外側スプリングSP1の間に1個ずつ配置される。すなわち、各吸振用スプリングSP3の両端部は、質量体21の対応するスプリング当接部21aと当接し、各吸振用スプリングSP3は、発進装置1やダンパ装置10の軸方向および周方向の双方において外側スプリングSP1とオーバーラップする。このように、ダイナミックダンパ20を構成する吸振用スプリングSP3を外側スプリングSP1と周方向に並ぶようにダンパ装置10の外周に近接して配置すれば、吸振用スプリングSP3を外側スプリングSP1や内側スプリングSP2の径方向における外側または内側、あるいは径方向における外側スプリングSP1と内側スプリングSP2との間に配置する場合に比べて、ダンパ装置10の外径の増加を抑制して装置全体をよりコンパクト化することができる。
【0032】
本実施形態において、複数の外側スプリングSP1と複数の吸振用スプリングSP3とは、同一円周上に配置され(図3参照)、発進装置1やダンパ装置10の軸心(回転軸)と各外側スプリングSP1の軸心との距離と、発進装置1やダンパ装置10の軸心と各吸振用スプリングSP3の軸心との距離とが等しくなっている。これにより、ダンパ装置10の外径の増加をより良好に抑制することが可能となる。また、本実施形態において、各外側スプリングSP1と各吸振用スプリングSP3とは、それぞれの軸心が発進装置1やダンパ装置10の軸心と直交する同一の平面内に含まれるように配置される。これにより、ダンパ装置10の軸長の増加をも抑制することができる。ただし、ダンパ装置10の軸心と外側スプリングSP1の軸心との距離と、ダンパ装置10の軸心と吸振用スプリングSP3の軸心との距離とは、完全に一致している必要はなく、設計公差等により若干相違してもよい。同様に、外側スプリングSP1の軸心と吸振用スプリングSP3の軸心とは、完全に同一の平面内に含まれなくてもよく、設計公差等により軸方向に若干ズレてもよい。
【0033】
更に、ダンパ装置10の取付状態において、各吸振用スプリングSP3の両端部は、第1中間プレート部材13の対応する第2外側スプリング当接部136と当接する。本実施形態において、第1中間プレート部材13の各第2外側スプリング当接部136の爪部136aと、質量体21のスプリング当接部21aとは、図3に示すように、径方向に並び、第2外側スプリング当接部136の爪部136aは、質量体21のスプリング当接部21aよりも径方向内側で対応する吸振用スプリングSP3の端部と当接する。これにより、各吸振用スプリングSP3、すなわちダイナミックダンパ20は、ダンパ装置10の中間部材12に連結されることになる。
【0034】
また、ダイナミックダンパ20(ダンパ装置10)は、質量体21と第1中間プレート部材13(中間部材12)との相対回転を規制する第3要素間ストッパ18を含む。第3要素間ストッパ18は、第1中間プレート部材13から質量体21に向けて延びるストッパ部137と、質量体21に形成された例えば円弧状の開口部21oとにより構成される。本実施形態では、ストッパ部137が第1中間プレート部材13に複数設けられると共に開口部21oが質量体21にストッパ部137と同数設けられ、第3要素間ストッパ18は、複数箇所に設けられる。ダンパ装置10の取付状態において、第1中間プレート部材13の各ストッパ部137は、質量体21の対応する開口部21o内に当該開口部21oを画成する両側の内壁面と当接しないように差し込まれる。そして、第1中間プレート部材13(中間部材12)と質量体21とが相対回転するのに伴って中間部材12のストッパ部137が両側に位置する開口部21oの一方の内壁面と当接すると、各吸振用スプリングSP3の捩れおよび質量体21と第1中間プレート部材13(中間部材12)との相対回転が規制されることになる。
【0035】
そして、上述のようなダイナミックダンパ20を含むダンパ装置10では、ダイナミックダンパ20が連結されない回転要素であるドライブ部材11(第2回転要素)に、第1および第2要素間ストッパ16,17によりドライブ部材11とドリブン部材15との相対回転が規制される前に吸振用スプリングSP3の端部と当接するように付加当接部(付加連結部)113xが設けられる。すなわち、ダンパ装置10のドライブ部材11では、当該ダンパ装置10の取付状態において当該ドライブ部材11がエンジンからの動力により回転する際(駆動時)の回転方向(図3における矢印方向。以下、「正転方向」という)における下流側(進行方向側)の外側スプリングSP1の端部(図3における左側の端部)と当接する複数(本実施形態では、2個)のスプリング当接部113(爪部113aを含む)が、強度面等から要求される周長よりも長い周長を有するように、正転方向下流側(進行方向側)に向けて周方向に延長されている。本実施形態では、このように周方向に延長されたスプリング当接部113の正転方向における下流側の端部が付加当接部113xとして用いられる。
【0036】
ダンパ装置10の取付状態において、各付加当接部113xは、図3に示すように、ダイナミックダンパ20の対応する吸振用スプリングSP3の端部と当接することはなく、ドライブ部材11が中間部材12に対して上記正転方向に回転することで、対応する吸振用スプリングSP3の端部と当接可能となる。そして、本実施形態では、各付加当接部113xが、第1要素間ストッパ16により各外側スプリングSP1の捩れおよびドライブ部材11と中間部材12との相対回転が規制される前であって、第2要素間ストッパ17により各内側スプリングSP2の捩れおよび中間部材12とドリブン部材15との相対回転が規制されるのと同時に対応する吸振用スプリングSP3の端部と当接するように(図4参照)、上記2個のスプリング当接部113の周長(当該周長を規定するダンパ装置10の軸心周りの角度)が定められる。すなわち、各付加当接部113xが対応する吸振用スプリングSP3の端部と当接するまでのドライブ部材11の中間部材12に対する回転角度は、第1および第2要素間ストッパ16,17によって相対回転が規制されるまでのドライブ部材11のドリブン部材15に対する回転角度よりも小さい。
【0037】
また、ダンパ装置10の取付状態において、付加当接部113xに含まれる爪部113aは、図3に示すように、質量体21のスプリング当接部21aの径方向外側で部分的に当該スプリング当接部21aと径方向に並ぶ(重なる)。これにより、ダンパ装置10の取付状態では、第1中間プレート部材13の第2外側スプリング当接部136の爪部136a、質量体21のスプリング当接部21a、および付加当接部113xに含まれる爪部113a(その端部)が、この順番で内側から外側に向けて並ぶことになる。加えて、ダンパ装置10では、上述のように、第1中間プレート部材13の第1外側スプリング当接部133の爪部133aと、ドライブ部材11のスプリング当接部113の爪部113aとが径方向に並び、第1外側スプリング当接部133の爪部133aは、スプリング当接部113の爪部113aよりも径方向内側で対応する外側スプリングSP1の端部と当接する。これにより、スプリング当接部113すなわち付加当接部113xの爪部113a、質量体21のスプリング当接部21a、および第1中間プレート部材13の第2外側スプリング当接部136の爪部136a同士の干渉をなくすと共に、ドライブ部材11のスプリング当接部113の爪部113aと第1中間プレート部材13の第1外側スプリング当接部133の爪部133aとの干渉をなくすことができる。この結果、周方向に並ぶ外側スプリングSP1および吸振用スプリングSP3のストロークを良好に確保することが可能となる。
【0038】
更に、ダンパ装置10では、中間部材12を構成する第1中間プレート部材13に対して、外側スプリングSP1の端部と当接する第1外側スプリング当接部133と、吸振用スプリングSP3の端部と当接する第2外側スプリング当接部136とが周方向に隣り合うように配置される。そして、第1外側スプリング当接部133は、質量体21のスプリング当接部21aよりも径方向内側で吸振用スプリングSP3の端部と当接する第2外側スプリング当接部136よりも径方向外側に延出される。すなわち、図3に示すように、第1外側スプリング当接部133の爪部133aは、第2外側スプリング当接部136の爪部136aよりも径方向外側に位置する。これにより、外側スプリングSP1の端部の中心と第1外側スプリング当接部133の爪部133aとが重なるように当該外側スプリングSP1の端部と第1外側スプリング当接部133(爪部133a)とを当接させ、第1外側スプリング当接部133により外側スプリングSP1の端部の中心付近を押すことが可能となる。
【0039】
次に、上述のように構成される発進装置1の動作について説明する。
【0040】
発進装置1のロックアップクラッチ8によりロックアップが解除されている際には、図1からわかるように、原動機としてのエンジンからフロントカバー3に伝達されたトルク(動力)が、ポンプインペラ4、タービンランナ5、ダンパハブ7という経路を介して変速機の入力軸ISへと伝達される。これに対して、発進装置1のロックアップクラッチ8によりロックアップが実行されると、図5に示すように、エンジンからのトルクが、フロントカバー3、ロックアップクラッチ8、ドライブ部材11、外側スプリングSP1、中間部材12、内側スプリングSP2、ドリブン部材15、ダンパハブ7という経路を介して変速装置の入力軸ISへと伝達される。この際、フロントカバー3に入力されるトルクの変動は、主に直列に作用するダンパ装置10の外側スプリングSP1と内側スプリングSP2とにより減衰(吸収)される。従って、発進装置1では、ロックアップクラッチ8によりロックアップが実行されている際に、フロントカバー3に入力されるトルクの変動をダンパ装置10により良好に減衰(吸収)することが可能となる。
【0041】
更に、ロックアップの実行時に、エンジンの回転に伴って当該エンジンからのトルクにより中間部材12が回転すると、第1中間プレート部材13の第2外側スプリング当接部136の何れか(何れか2個)が対応する吸振用スプリングSP3の一端を押圧し、各吸振用スプリングSP3の他端が質量体21の対応する一対のスプリング当接部21aの一方を押圧する。この結果、質量体21および複数の吸振用スプリングSP3を含むダイナミックダンパ20がダンパ装置10の中間部材12に連結されることになる。これにより、発進装置1では、ダイナミックダンパ20によっても、エンジンからの振動を減衰(吸収)すること、より詳しくは、振動のピークを2つに分けつつ全体の振動レベルを低下させることが可能となる。
【0042】
また、ダンパ装置10では、ロックアップの実行時にエンジンからフロントカバー3に伝達されるトルク、すなわちドライブ部材11への入力トルクの大きさに応じて、ドライブ部材11と中間部材12とが相対回転すると共に、中間部材12とドリブン部材15とが相対回転する。そして、本実施形態では、ドライブ部材11への入力トルクがダンパ装置10の最大捩れ角θmaxに対応したトルクT2(第2の値)よりも小さい所定値(第1の値)T1に達すると、第2要素間ストッパ17により各内側スプリングSP2の捩れおよび中間部材12とドリブン部材15との相対回転が規制され、これとほぼ同時に、ドライブ部材11の各付加当接部113xが対応する吸振用スプリングSP3の端部(上記正転方向における上流側(進行方向と反対側)の端部)と当接する(図4参照)。なお、取付状態かつドライブ部材11への入力トルクがゼロである状態から各付加当接部113xが吸振用スプリングSP3の端部と当接するまでのドライブ部材11の中間部材12に対する回転角度に対応した外側スプリングSP1の捩れ角を“θd”とし、取付状態かつドライブ部材11への入力トルクがゼロである状態から第2要素間ストッパ17によって相対回転が規制されるまでの中間部材12のドリブン部材15に対する回転角度に対応した内側スプリングSP2の捩れ角を“θ2”とし、ドライブ部材11と中間部材12との間で並列に作用する複数の外側スプリングSP1の合成ばね定数を“k1”とし、中間部材12とドリブン部材15との間で並列に作用する複数の内側スプリングSP2の合成ばね定数を“k2”とすれば、k1×θd=k2×θ2、すなわちθd=θ2×k2/k1という関係が成立する。
【0043】
こうしてドライブ部材11の各付加当接部113xが対応する吸振用スプリングSP3の端部と当接するようになると、各吸振用スプリングSP3は、対応する外側スプリングSP1と並列に作用してドライブ部材11と中間部材12との間でトルクを伝達する弾性体として機能する。これにより、第2要素間ストッパ17により各内側スプリングSP2の捩れおよび中間部材12とドリブン部材15との相対回転が規制された後には、原動機としてのエンジンからのトルクが、図6に示すように、フロントカバー3、ロックアップクラッチ8、ドライブ部材11、並列に作用する外側スプリングSP1および吸振用スプリングSP3、中間部材12、捩れが規制された内側スプリングSP2およびそれと並列に並ぶ第2要素間ストッパ17(ストッパ部135および開口部155)、ドリブン部材15、ダンパハブ7という経路を介して変速装置の入力軸ISへと伝達される。そして、この際には、フロントカバー3に入力されるトルクの変動が、並列に作用するダンパ装置10の外側スプリングSP1および吸振用スプリングSP3により減衰(吸収)される。
【0044】
この結果、ダンパ装置10は、図7に示すような捩れ特性を有することになる。すなわち、エンジンからのトルクがフロントカバー3に伝達され始めてから、ドライブ部材11への入力トルクが所定値T1に達してダンパ装置10の捩れ角(外側スプリングSP1および内側スプリングSP2のトータルの捩れ角)が所定角度(閾値)θrefになると共に第2要素間ストッパ17によりドライブ部材11とドリブン部材15との相対回転が規制されるまでの間(第1ステージ)、ダンパ装置10全体の合成ばね定数Kは、K=Kf=k1・k2/(k1+k2)となる。また、第2要素間ストッパ17によりドライブ部材11とドリブン部材15との相対回転が規制された後、ドライブ部材11への入力トルクが値T2に達してダンパ装置10の捩れ角(外側スプリングSP1、内側スプリングSP2並びに並列に作用する外側スプリングSP1および吸振用スプリングSP3のトータルの捩れ角)が予め定められた最大捩れ角θmaxになると共に第1要素間ストッパ16によりドライブ部材11と中間部材12との相対回転が規制されるまでの間(第2ステージ)、ダンパ装置10全体の合成ばね定数Kは、ドライブ部材11と中間部材12との間で並列に作用する複数の吸振用スプリングSP3の合成ばね定数を“k3”とすれば、K=Ks=k1+k3>Kfとなる。
【0045】
上述のように、第1回転要素としての中間部材12に連結されるダイナミックダンパ20を含むダンパ装置10において、第2回転要素としてのドライブ部材11の各付加当接部113xがダイナミックダンパ20の対応する吸振用スプリングSP3の端部と当接するようになると、吸振用スプリングSP3は、ドライブ部材11と中間部材12との間でトルクを伝達する弾性体として機能する。これにより、ダンパ装置10では、付加当接部113xが吸振用スプリングSP3に連結された以降にトルクを伝達しなくなる内側スプリングSP2をより低剛性化すると共に、吸振用スプリングSP3と並列に作用する外側スプリングSP1が受け持つべきトルク(分担トルク)を低減化して、当該外側スプリングSP1の剛性をより低下させることができる。従って、ダイナミックダンパ20を有するダンパ装置10をより低剛性化することが可能となる。
【0046】
また、ダンパ装置10は、ドライブ部材11と中間部材12との相対回転を規制する第1要素間ストッパ16を含み、ドライブ部材11の各付加当接部113xは、第1要素間ストッパ16によりドライブ部材11と中間部材12との相対回転が規制される前に対応する吸振用スプリングSP3の端部と当接する。これにより、ドライブ部材11と中間部材12との間の外側スプリングSP1と吸振用スプリングSP3とを並列に作用させることができるので、ダンパ装置10全体の低剛性化を図りつつ、各付加当接部113xが対応する吸振用スプリングSP3の端部と当接した後に、ドライブ部材11に対するより高いトルクの入力を許容することが可能となる。
【0047】
更に、ダンパ装置10において、各付加当接部113xが吸振用スプリングSP3の端部と当接するまでのドライブ部材11の中間部材12に対する回転角度は、回転規制ストッパによって相対回転が規制されるまでのドライブ部材11のドリブン部材15に対する回転角度よりも小さく定められる。これにより、回転規制ストッパとしての第1および第2要素間ストッパ16,17によりドライブ部材11とドリブン部材15との相対回転が規制される前に、ドライブ部材11の各付加当接部113xを吸振用スプリングSP3の端部に当接させることが可能となる。
【0048】
また、各付加当接部113xは、ドライブ部材11への入力トルクがダンパ装置10の最大捩れ角θmaxに対応したトルクT2よりも小さい所定値T1以上になると、対応する吸振用スプリングSP3の端部と当接する。このように、ドライブ部材11への入力トルクが高まった段階で吸振用スプリングSP3を中間部材12とドライブ部材11との間でトルクを伝達する弾性体として機能させることで、少なくとも内側スプリングSP2をより低剛性化することが可能となる。
【0049】
更に、ダンパ装置10は、回転規制ストッパとして、中間部材12と当該中間部材12に内側スプリングSP2を介して連結されるドリブン部材(第3回転要素)15との相対回転を規制する第2要素間ストッパ17を含み、各付加当接部113xは、第2要素間ストッパ17により中間部材12とドリブン部材15との相対回転が規制されるのと同時に対応する吸振用スプリングSP3の端部と当接する。これにより、ダンパ装置10全体の低剛性化を図りつつ、ダンパ装置10に2段階の捩れ特性をもたせることが可能となる。ただし、付加当接部113xや第2要素間ストッパ17は、各付加当接部113xが対応する吸振用スプリングSP3の端部と当接した後に、中間部材12とドリブン部材15との相対回転が規制されるように構成されてもよい。これにより、外側スプリングSP1、内側スプリングSP2および吸振用スプリングSP3の剛性(ばね定数)を調整することで、ダンパ装置10に3段階の捩れ特性をもたせることが可能となる。
【0050】
また、ダンパ装置10では、上述のように、付加当接部113xの爪部113a、質量体21のスプリング当接部21a、および第1中間プレート部材13の第2外側スプリング当接部136の爪部136a同士の干渉をなくすと共に、ドライブ部材11のスプリング当接部113の爪部113aと第1中間プレート部材13の第1外側スプリング当接部133の爪部133aとの干渉をなくすことができる。従って、周方向に並ぶ外側スプリングSP1および吸振用スプリングSP3のストロークをより良好に確保することが可能となる。更に、ダンパ装置10のように、外側スプリングSP1の端部と当接する第1外側スプリング当接部133を吸振用スプリングSP3の端部と当接する第2外側スプリング当接部136よりも径方向外側に延出すれば、外側スプリングSP1の端部の中心と第1外側スプリング当接部133(爪部133a)とが重なるように当該外側スプリングSP1の端部と第1外側スプリング当接部133(爪部133a)とを当接させ、第1外側スプリング当接部133により外側スプリングSP1の端部の中心付近を押すことができる。これにより、中間部材12の第1外側スプリング当接部133と当接する外側スプリングSP1を軸心に沿ってより適正に伸縮させてヒステリシス、すなわち減荷時に当該外側スプリングSP1に作用する摩擦力を低減化することが可能となる。加えて、ダンパ装置10では、ドライブ部材11(入力要素)と中間部材12(何れかの回転要素)との間の外側スプリングSP1の分担トルクをより低下させることができるので、外側スプリングSP1と当接する中間部材12の第1外側スプリング当接部133(爪部133a)や、ドライブ部材11のスプリング当接部113(爪部113a)の厚みを薄くし、径方向に並ぶ第1外側スプリング当接部133(爪部133a)やスプリング当接部113(爪部113a)の配置の自由度を向上させることが可能となる。
【0051】
なお、上記ダンパ装置10では、外側スプリングSP1の端部と当接するドライブ部材11のスプリング当接部113と付加当接部113xとが一体に形成されるが、付加当接部113xをスプリング当接部113から分離して、両者を周方向に並ぶように形成してもよい。また、外側スプリングSP1、内側スプリングSP2および吸振用スプリングSP3の剛性(ばね定数)によっては、第1要素間ストッパ16により各外側スプリングSP1の捩れおよびドライブ部材11と中間部材12との相対回転が規制された後に、第2要素間ストッパ17により各内側スプリングSP2の捩れおよび中間部材12とドリブン部材15との相対回転が規制されるようにし、第1要素間ストッパ16の作動後かつ第2要素間ストッパ17の作動前に内側スプリングSP2とトルクを伝達する弾性体としての吸振用スプリングSP3とを直列に作用させてもよい。更に、ダンパ装置10では、外側スプリングSP1の端部と当接する第1外側スプリング当接部133が吸振用スプリングSP3の端部と当接する第2外側スプリング当接部136よりも径方向外側に延出されるが、ドライブ部材11や中間部材12が上記正転方向に回転する際に外側スプリングSP1からのトルクを受ける第1外側スプリング当接部133のみを第2外側スプリング当接部136よりも径方向外側に延出させてもよい。
【0052】
なお、上記ダンパ装置10では、ドライブ部材11への入力トルクが所定値(第1の値)T1に達すると、第2要素間ストッパ17により各内側スプリングSP2の捩れおよび中間部材12とドリブン部材15との相対回転が規制され、これとほぼ同時に、ドライブ部材11の各付加当接部113xが対応する吸振用スプリングSP3の端部と当接するが、これに限られるものではない。すなわち、弾性体ストッパとしての第2要素間ストッパ17は、ドライブ部材11への入力トルクが所定値(第1の値)T1よりも小さいトルクT3(第3の値)に達してダンパ装置10の捩れ角が所定角度θrefよりも小さい角度θ3になった時点で各内側スプリングSP2の捩れおよび中間部材12とドリブン部材15との相対回転を規制するように構成されてもよい。これにより、図7において二点鎖線で示すように、ダンパ装置10に3段階の捩れ特性をもたせることが可能となる。
【0053】
この場合、エンジンからのトルクがフロントカバー3に伝達され始めてから、ドライブ部材11への入力トルクがトルクT3に達してダンパ装置10の捩れ角が角度θ3になると共に第2要素間ストッパ17により中間部材12とドリブン部材15との相対回転が規制されるまでの間(第1ステージS1)、ダンパ装置10全体の合成ばね定数Kは、K=Kf=k1・k2/(k1+k2)となる。また、第2要素間ストッパ17により中間部材12とドリブン部材15との相対回転が規制された後、ドライブ部材11への入力トルクが所定値T1に達してドライブ部材11の各付加当接部113xが対応する吸振用スプリングSP3の端部と当接するまでの間(第2ステージS2)、ダンパ装置10全体の合成ばね定数Kは、Ks=k1となる。更に、ドライブ部材11の各付加当接部113xが対応する吸振用スプリングSP3の端部と当接してから第1要素間ストッパ16によりドライブ部材11と中間部材12との相対回転が規制されるまでの間(第3ステージS3)、ダンパ装置10全体の合成ばね定数Kは、K=Kt=k1+k3>Kf,Ksとなる。
【0054】
これにより、外側スプリングSP1、内側スプリングSP2および吸振用スプリングSP3のばね定数を始めてとする各種諸元を調整することにより、ダンパ装置10をより低剛性化することが可能となる。また、ダンパ装置10を3ステージ化することで、第1および第2ステージS1,S2間のばね定数の差と、第2および第3ステージS2,S3間のばね定数の差とをそれぞれ小さくすることができる。これにより、閾値としてのトルクT1またはT3付近で入力トルクが変動(振動)しても、非線形性が小さくなり、図7における実線で示すような2段階の捩れ特性をもったダンパ装置に比べて、トルク変動(振動)を良好に減衰することが可能となる。
【0055】
図8は、本発明の他の実施形態に係るダンパ装置10Bを含む発進装置1Bを示す概略構成図である。なお、発進装置1Bの構成要素のうち、上述の発進装置1と同一の要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0056】
図8に示すダンパ装置10Bでは、中間部材12B(第1回転要素)にダイナミックダンパ20Bが連結されると共に、ドリブン部材15B(第2回転要素)に吸振用スプリングSP3と当接する付加当接部15xが設けられる。また、ダンパ装置10Bにおいて、第1および第2要素間ストッパ16,17は、入力トルクの増加に伴って第2要素間ストッパ17により各内側スプリングSP2の捩れおよび中間部材12Bとドリブン部材15Bとの相対回転が規制される前に、第1要素間ストッパ16により各外側スプリングSP1の捩れおよびドライブ部材11と中間部材12Bとの相対回転が規制されるように構成される。
【0057】
更に、ドリブン部材15Bの付加当接部15xは、第2要素間ストッパ17により各内側スプリングSP2の捩れおよび中間部材12Bとドリブン部材15Bとの相対回転が規制される前であって、第1要素間ストッパ16により各外側スプリングSP1の捩れおよびドライブ部材11と中間部材12Bとの相対回転が規制されるのと同時に対応する吸振用スプリングSP3の端部と当接するように構成される。従って、付加当接部15xが吸振用スプリングSP3の端部と当接するまでの中間部材12Bのドリブン部材15Bに対する回転角度に対応した内側スプリングSP2の捩れ角を“θd”とし、第1要素間ストッパ16によって相対回転が規制されるまでのドライブ部材11の中間部材12Bに対する回転角度に対応した外側スプリングSP1の捩れ角を“θ1”とすれば、k1×θ1=k2×θd、すなわちθd=θ1×k1/k2という関係が成立する。
【0058】
これにより、第1回転要素としての中間部材12Bに連結されるダイナミックダンパ20Bを含むダンパ装置10Bにおいて、第2回転要素としてのドリブン部材15Bの付加当接部15xがダイナミックダンパ20Bの対応する吸振用スプリングSP3の端部と当接するようになると、吸振用スプリングSP3は、中間部材12Bとドリブン部材15との間でトルクを伝達する弾性体として機能することになる。この結果、ダンパ装置10Bでは、付加当接部15xが吸振用スプリングSP3に連結された以降にトルクを伝達しなくなる外側スプリングSP1をより低剛性化すると共に、吸振用スプリングSP3と並列に作用する内側スプリングSP2が受け持つべきトルク(分担トルク)を低減化して、当該内側スプリングSP2の剛性をより低下させることができる。従って、ダイナミックダンパ20Bを有するダンパ装置10Bをより低剛性化することが可能となる。
【0059】
また、ドリブン部材15Bの付加当接部15xは、第2要素間ストッパ17により中間部材12Bとドリブン部材15Bとの相対回転が規制される前に吸振用スプリングSP3の端部と当接する。これにより、中間部材12Bとドリブン部材15Bとの間の内側スプリングSP2と、吸振用スプリングSP3とを並列に作用させることができるので、ダンパ装置10B全体の低剛性化を図りつつ、付加当接部15xが対応する吸振用スプリングSP3の端部と当接した後に、ドライブ部材11に対するより高いトルクの入力を許容することが可能となる。
【0060】
更に、ダンパ装置10Bにおいて、付加当接部15xが吸振用スプリングSP3の端部と当接するまでの中間部材12Bのドリブン部材15Bに対する回転角度は、第1および第2要素間ストッパ16,17によって相対回転が規制されるまでのドライブ部材11のドリブン部材15Bに対する回転角度よりも小さく定められる。これにより、回転規制ストッパとしての第1および第2要素間ストッパ16,17によりドライブ部材11とドリブン部材15Bとの相対回転が規制される前に、ドリブン部材15Bの付加当接部15xを吸振用スプリングSP3の端部に当接させることが可能となる。
【0061】
また、ドリブン部材15Bの付加当接部15xは、ドライブ部材11への入力トルクがダンパ装置10Bの最大捩れ角に対応したトルクよりも小さい所定値(第1の値)以上になると、対応する吸振用スプリングSP3の端部と当接する。このように、ドライブ部材11への入力トルクが高まった段階で吸振用スプリングSP3を中間部材12Bとドリブン部材15Bとの間でトルクを伝達する弾性体として機能させることで、外側スプリングSP1および内側スプリングSP2の少なくとも何れか一方をより低剛性化することが可能となる。
【0062】
更に、ドリブン部材15Bの付加当接部15xは、第1要素間ストッパ16によりドライブ部材11と中間部材12Bとの相対回転が規制されるのと同時に対応する吸振用スプリングSP3の端部と当接する。これにより、ダンパ装置10B全体の低剛性化を図りつつ、ダンパ装置10Bに2段階の捩れ特性をもたせることが可能となる。ただし、付加当接部15xや第1要素間ストッパ16は、付加当接部15xが対応する吸振用スプリングSP3の端部と当接した後に、ドライブ部材11と中間部材12Bとの相対回転が規制されるように構成されてもよい。これにより、外側スプリングSP1、内側スプリングSP2および吸振用スプリングSP3の剛性(ばね定数)を調整することで、ダンパ装置10Bに3段階の捩れ特性をもたせることが可能となる。
【0063】
また、ダンパ装置10Bでは、内側スプリングSP2と吸振用スプリングSP3とが周方向に並ぶように配置されてもよい。これにより、吸振用スプリングSP3と質量体としてのタービンランナ5とを連結部材により容易に連結すると共に、当該連結部材を配置するためのスペースを削減することが可能となる。従って、かかる構成は、ダンパ装置10Bにダイナミックダンパ20Bに加えて遠心振子式吸振装置を連結する場合に有利なものとなる。更に、ダンパ装置10Bは、吸振用スプリングSP3がトルクを伝達する弾性体として機能する際に外側スプリングSP1、あるいは外側スプリングSP1および内側スプリングSP2の双方と直列に作用するように構成されてもよい。
【0064】
図9は、本発明の他の実施形態に係るダンパ装置10Cを含む発進装置1Cを示す概略構成図である。なお、発進装置1Cの構成要素のうち、上述の発進装置1等と同一の要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0065】
図9に示すダンパ装置10Cでは、ドリブン部材15C(第1回転要素)にダイナミックダンパ20Cが連結されると共に、中間部材12C(第2回転要素)に吸振用スプリングSP3と当接する付加当接部12xが設けられる。また、ダンパ装置10Cにおいて、第1および第2要素間ストッパ16,17は、入力トルクの増加に伴って第2要素間ストッパ17により各内側スプリングSP2の捩れおよび中間部材12Cとドリブン部材15Cとの相対回転が規制される前に、第1要素間ストッパ16により各外側スプリングSP1の捩れおよびドライブ部材11と中間部材12Cとの相対回転が規制されるように構成される。
【0066】
更に、中間部材12Cの付加当接部12xは、第2要素間ストッパ17により各内側スプリングSP2の捩れおよび中間部材12Cとドリブン部材15Cとの相対回転が規制される前であって、第1要素間ストッパ16により各外側スプリングSP1の捩れおよびドライブ部材11と中間部材12Cとの相対回転が規制されるのと同時に対応する吸振用スプリングSP3の端部と当接するように構成される。従って、付加当接部12xが吸振用スプリングSP3の端部と当接するまでの中間部材12Cのドリブン部材15Cに対する回転角度に対応した内側スプリングSP2の捩れ角を“θd”とし、第1要素間ストッパ16によって相対回転が規制されるまでのドライブ部材11の中間部材12Cに対する回転角度に対応した外側スプリングSP1の捩れ角を“θ1”とすれば、k1×θ1=k2×θd、すなわちθd=θ1×k1/k2という関係が成立する。
【0067】
これにより、第1回転要素としてのドリブン部材15Cに連結されるダイナミックダンパ20Cを含むダンパ装置10Cにおいて、第2回転要素としての中間部材12Cの付加当接部12xがダイナミックダンパ20Cの対応する吸振用スプリングSP3の端部と当接するようになると、吸振用スプリングSP3は、中間部材12Cとドリブン部材15Cとの間でトルクを伝達する弾性体として機能することになる。この結果、ダンパ装置10Cでは、付加当接部12xが吸振用スプリングSP3に連結された以降にトルクを伝達しなくなる外側スプリングSP1をより低剛性化すると共に、吸振用スプリングSP3と並列に作用する内側スプリングSP2が受け持つべきトルク(分担トルク)を低減化して、当該内側スプリングSP2の剛性をより低下させることができる。従って、ダイナミックダンパ20Cを有するダンパ装置10Cをより低剛性化することが可能となる。
【0068】
また、中間部材12Cの付加当接部12xは、第2要素間ストッパ17により中間部材12Cとドリブン部材15Cとの相対回転が規制される前に吸振用スプリングSP3の端部と当接する。これにより、中間部材12Cとドリブン部材15Cとの間の内側スプリングSP2と、吸振用スプリングSP3とを並列に作用させることができるので、ダンパ装置10C全体の低剛性化を図りつつ、付加当接部12xが対応する吸振用スプリングSP3の端部と当接した後に、ドライブ部材11に対するより高いトルクの入力を許容することが可能となる。
【0069】
更に、ダンパ装置10Cにおいて、付加当接部12xが吸振用スプリングSP3の端部と当接するまでの中間部材12Cのドリブン部材15Cに対する回転角度は、第1および第2要素間ストッパ16,17によって相対回転が規制されるまでのドライブ部材11のドリブン部材15Cに対する回転角度よりも小さく定められる。これにより、回転規制ストッパとしての第1および第2要素間ストッパ16,17によりドライブ部材11とドリブン部材15Cとの相対回転が規制される前に、中間部材12Cの付加当接部12xを吸振用スプリングSP3の端部に当接させることが可能となる。
【0070】
また、中間部材12Cの付加当接部12xは、ドライブ部材11への入力トルクがダンパ装置10Cの最大捩れ角に対応したトルクよりも小さい所定値(第1の値)以上になると、対応する吸振用スプリングSP3の端部と当接する。このように、ドライブ部材11への入力トルクが高まった段階で吸振用スプリングSP3を中間部材12とドリブン部材15Cとの間でトルクを伝達する弾性体として機能させることで、外側スプリングSP1および内側スプリングSP2の少なくとも何れか一方をより低剛性化することが可能となる。
【0071】
更に、中間部材12Cの付加当接部12xは、第1要素間ストッパ16によりドライブ部材11と中間部材12Cとの相対回転が規制されるのと同時に対応する吸振用スプリングSP3の端部と当接する。これにより、ダンパ装置10C全体の低剛性化を図りつつ、ダンパ装置10Cに2段階の捩れ特性をもたせることが可能となる。ただし、付加当接部12xや第1要素間ストッパ16は、付加当接部12xが対応する吸振用スプリングSP3の端部と当接した後に、ドライブ部材11と中間部材12Cとの相対回転が規制されるように構成されてもよい。これにより、外側スプリングSP1、内側スプリングSP2および吸振用スプリングSP3の剛性(ばね定数)を調整することで、ダンパ装置10Cに3段階の捩れ特性をもたせることが可能となる。
【0072】
また、ダンパ装置10Cにおいても、内側スプリングSP2と吸振用スプリングSP3とが周方向に並ぶように配置されてもよい。これにより、吸振用スプリングSP3と質量体としてのタービンランナ5とを連結部材により容易に連結すると共に、当該連結部材を配置するためのスペースを削減することが可能となる。従って、かかる構成は、ダンパ装置10Cにダイナミックダンパ20Cに加えて遠心振子式吸振装置を連結する場合に有利なものとなる。更に、ダンパ装置10Cは、吸振用スプリングSP3がトルクを伝達する弾性体として機能する際に外側スプリングSP1、あるいは外側スプリングSP1および内側スプリングSP2の双方と直列に作用するように構成されてもよい。
【0073】
図10は、本発明の更に他の実施形態に係るダンパ装置10Dを含む発進装置1Dを示す概略構成図である。なお、発進装置1Dの構成要素のうち、上述の発進装置1等と同一の要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0074】
図10に示すダンパ装置10Dでは、ドリブン部材15D(第1回転要素)にダイナミックダンパ20Dが連結されると共に、ドライブ部材11D(第2回転要素)に吸振用スプリングSP3と当接する付加当接部11xが設けられる。また、ダンパ装置10Dにおいて、第1および第2要素間ストッパ16,17は、一方が他方に先行して対応する2つの回転要素の相対回転を規制するように構成される。更に、ドライブ部材11Dの付加当接部11xは、第1および第2要素間ストッパ16,17の他方により2つの回転要素の相対回転が規制される前であって、第1および第2要素間ストッパ16,17の一方により2つの回転要素の相対回転が規制されるのと同時に対応する吸振用スプリングSP3の端部と当接するように構成される。
【0075】
第1要素間ストッパ16が先行して2つの回転要素の相対回転を規制する場合、付加当接部11xが吸振用スプリングSP3の端部と当接するまでのドライブ部材11Dのドリブン部材15Dに対する回転角度に対応した捩れ角を“θd”とし、第1要素間ストッパ16によって相対回転が規制されるまでのドライブ部材11Dの中間部材12に対する回転角度に対応した外側スプリングSP1の捩れ角を“θ1”とすれば、θd=θ1+θ1×k1/k2、すなわちθd=θ1×(k1+k2)/k2という関係が成立する。また、第2要素間ストッパ17が先行して2つの回転要素の相対回転を規制する場合、付加当接部11xが吸振用スプリングSP3の端部と当接するまでのドライブ部材11Dのドリブン部材15Dに対する回転角度に対応した捩れ角を“θd”とし、第2要素間ストッパ17によって相対回転が規制されるまでの中間部材12のドリブン部材15Dに対する回転角度に対応した内側スプリングSP2の捩れ角を“θ2”とすれば、θd=θ2+θ2×k2/k1、すなわちθd=θ2×(k1+k2)/k1という関係が成立する。
【0076】
これにより、第1回転要素としてのドリブン部材15Dに連結されるダイナミックダンパ20Dを含むダンパ装置10Dにおいて、第2回転要素としてのドライブ部材11Dの付加当接部11xがダイナミックダンパ20Dの対応する吸振用スプリングSP3の端部と当接するようになると、吸振用スプリングSP3は、ドライブ部材11Dとドリブン部材15Dとの間でトルクを伝達する弾性体として機能することになる。この結果、ダンパ装置10Dでは、付加当接部11xが吸振用スプリングSP3に連結された以降にトルクを伝達しなくなる外側スプリングSP1および内側スプリングSP2の一方をより低剛性化すると共に、吸振用スプリングSP3と並列に作用する外側スプリングSP1および内側スプリングSP2の他方が受け持つべきトルク(分担トルク)を低減化して、当該外側スプリングSP1および内側スプリングSP2の他方の剛性をより低下させることができる。従って、ダイナミックダンパ20Dを有するダンパ装置10Dをより低剛性化することが可能となる。
【0077】
また、ドライブ部材11Dの付加当接部11xは、第1要素間ストッパ16によりドライブ部材11Dと中間部材12との相対回転が規制される前、あるいは第2要素間ストッパ17により中間部材12とドリブン部材15Dとの相対回転が規制される前に吸振用スプリングSP3の端部と当接する。これにより、吸振用スプリングSP3を外側スプリングSP1および内側スプリングSP2の何れか一方と並列に作用させることができるので、ダンパ装置10D全体の低剛性化を図りつつ、付加当接部11xが対応する吸振用スプリングSP3の端部と当接した後に、ドライブ部材11Dに対するより高いトルクの入力を許容することが可能となる。
【0078】
更に、ダンパ装置10Dにおいて、付加当接部11xが吸振用スプリングSP3の端部と当接するまでのドライブ部材11Dのドリブン部材15Dに対する回転角度は、第1および第2要素間ストッパ16,17によって相対回転が規制されるまでのドライブ部材11Dのドリブン部材15Dに対する回転角度よりも小さく定められる。これにより、回転規制ストッパとしての第1および第2要素間ストッパ16,17によりドライブ部材11Dとドリブン部材15Dとの相対回転が規制される前に、ドライブ部材11Dの付加当接部11xを吸振用スプリングSP3の端部に当接させることが可能となる。
【0079】
また、ドライブ部材11Dの付加当接部11xは、ドライブ部材11Dへの入力トルクがダンパ装置10Dの最大捩れ角に対応したトルクよりも小さい所定値(第1の値)以上になると、対応する吸振用スプリングSP3の端部と当接する。このように、ドライブ部材11Dへの入力トルクが高まった段階で吸振用スプリングSP3をドライブ部材11Dとドリブン部材15Dとの間でトルクを伝達する弾性体として機能させることで、外側スプリングSP1および内側スプリングSP2の少なくとも何れか一方をより低剛性化することが可能となる。
【0080】
更に、ドライブ部材11Dの付加当接部11xは、第1および第2要素間ストッパ16,17のうちの先行して作動する一方により2つの回転要素の相対回転が規制されるのと同時に対応する吸振用スプリングSP3の端部と当接する。これにより、ダンパ装置10D全体の低剛性化を図りつつ、ダンパ装置10Dに2段階の捩れ特性をもたせることが可能となる。ただし、付加当接部11xや第1または第2要素間ストッパ16,17は、付加当接部11xが対応する吸振用スプリングSP3の端部と当接した後に、第1および第2要素間ストッパ16,17のうちの先行して作動する一方により2つの回転要素の相対回転が規制されるように構成されてもよい。これにより、外側スプリングSP1、内側スプリングSP2および吸振用スプリングSP3の剛性(ばね定数)を調整することで、ダンパ装置10Dに3段階の捩れ特性をもたせることが可能となる。また、ダンパ装置10Dにおいて、吸振用スプリングSP3は、外側スプリングSP1および内側スプリングSP2の何れか一方と周方向に並ぶように配置されてもよい。
【0081】
図11は、本発明の更に他の実施形態に係るダンパ装置10Eを含む発進装置1Eを示す概略構成図である。なお、発進装置1Eの構成要素のうち、上述の発進装置1等と同一の要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0082】
図11に示すダンパ装置10Eでは、ドライブ部材11E(第1回転要素)にダイナミックダンパ20Eが連結されると共に、中間部材12E(第2回転要素)に吸振用スプリングSP3と当接する付加当接部12xが設けられる。また、ダンパ装置10Eにおいて、第1および第2要素間ストッパ16,17は、入力トルクの増加に伴って第1要素間ストッパ16により各外側スプリングSP1の捩れおよびドライブ部材11Eと中間部材12Eとの相対回転が規制される前に、第2要素間ストッパ17により各内側スプリングSP2の捩れおよび中間部材12Eとドリブン部材15との相対回転が規制されるように構成される。
【0083】
更に、中間部材12Eの付加当接部12xは、第1要素間ストッパ16により各外側スプリングSP1の捩れおよびドライブ部材11Eと中間部材12Eとの相対回転が規制される前であって、第2要素間ストッパ17により各内側スプリングSP2の捩れおよび中間部材12Eとドリブン部材15の相対回転が規制されるのと同時に対応する吸振用スプリングSP3の端部と当接するように構成される。従って、付加当接部12xが吸振用スプリングSP3の端部と当接するまでのドライブ部材11Eの中間部材12Eに対する回転角度に対応した外側スプリングSP1の捩れ角を“θd”とし、第2要素間ストッパ17によって相対回転が規制されるまでの中間部材12Eのドリブン部材15に対する回転角度に対応した内側スプリングSP2の捩れ角を“θ2”とすれば、k1×θd=k2×θ2、すなわちθd=θ2×k2/k1という関係が成立する。
【0084】
これにより、第1回転要素としてのドライブ部材11Eに連結されるダイナミックダンパ20Eを含むダンパ装置10Eにおいて、第2回転要素としての中間部材12Eの付加当接部12xがダイナミックダンパ20Eの対応する吸振用スプリングSP3の端部と当接するようになると、吸振用スプリングSP3は、ドライブ部材11Eと中間部材12Eとの間でトルクを伝達する弾性体として機能することになる。この結果、ダンパ装置10Eでは、付加当接部12xが吸振用スプリングSP3に連結された以降にトルクを伝達しなくなる内側スプリングSP2をより低剛性化すると共に、吸振用スプリングSP3と並列に作用する外側スプリングSP1が受け持つべきトルク(分担トルク)を低減化して、当該外側スプリングSP1の剛性をより低下させることができる。従って、ダイナミックダンパ20Eを有するダンパ装置10Eをより低剛性化することが可能となる。
【0085】
また、中間部材12Eの付加当接部12xは、第1要素間ストッパ16によりドライブ部材11Eと中間部材12Eとの相対回転が規制される前に吸振用スプリングSP3の端部と当接する。これにより、ドライブ部材11Eと中間部材12Eとの間の内側スプリングSP2と、吸振用スプリングSP3とを並列に作用させることができるので、ダンパ装置10E全体の低剛性化を図りつつ、付加当接部12xが対応する吸振用スプリングSP3の端部と当接した後に、ドライブ部材11に対するより高いトルクの入力を許容することが可能となる。
【0086】
更に、ダンパ装置10Eにおいて、付加当接部12xが吸振用スプリングSP3の端部と当接するまでのドライブ部材11Eの中間部材12Eに対する回転角度は、第1および第2要素間ストッパ16,17によって相対回転が規制されるまでのドライブ部材11Eのドリブン部材15に対する回転角度よりも小さく定められる。これにより、回転規制ストッパとしての第1および第2要素間ストッパ16,17によりドライブ部材11Eとドリブン部材15との相対回転が規制される前に、中間部材12Eの付加当接部12xを吸振用スプリングSP3の端部に当接させることが可能となる。
【0087】
また、中間部材12Eの付加当接部12xは、ドライブ部材11Eへの入力トルクがダンパ装置10Eの最大捩れ角に対応したトルクよりも小さい所定値(第1の値)以上になると、対応する吸振用スプリングSP3の端部と当接する。このように、ドライブ部材11Eへの入力トルクが高まった段階で吸振用スプリングSP3をドライブ部材11Eと中間部材12Eとの間でトルクを伝達する弾性体として機能させることで、外側スプリングSP1および内側スプリングSP2の少なくとも何れか一方をより低剛性化することが可能となる。
【0088】
更に、中間部材12Eの付加当接部12xは、第2要素間ストッパ17により中間部材12Eとドリブン部材15との相対回転が規制されるのと同時に対応する吸振用スプリングSP3の端部と当接する。これにより、ダンパ装置10E全体の低剛性化を図りつつ、ダンパ装置10Eに2段階の捩れ特性をもたせることが可能となる。ただし、付加当接部12xや第2要素間ストッパ17は、付加当接部12xが対応する吸振用スプリングSP3の端部と当接した後に、中間部材12Eとドリブン部材15との相対回転が規制されるように構成されてもよい。これにより、外側スプリングSP1、内側スプリングSP2および吸振用スプリングSP3の剛性(ばね定数)を調整することで、ダンパ装置10Eに3段階の捩れ特性をもたせることが可能となる。また、ダンパ装置10Eにおいても、外側スプリングSP1と吸振用スプリングSP3とが周方向に並ぶように配置されてもよい。更に、ダンパ装置10Eは、吸振用スプリングSP3がトルクを伝達する弾性体として機能する際に外側スプリングSP1、あるいは外側スプリングSP1および内側スプリングSP2の双方と直列に作用するように構成されてもよい。
【0089】
図12は、本発明の更に他の実施形態に係るダンパ装置10Fを含む発進装置1Fを示す概略構成図である。なお、発進装置1Fの構成要素のうち、上述の発進装置1等と同一の要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0090】
図12に示すダンパ装置10Fでは、ドライブ部材11F(第1回転要素)にダイナミックダンパ20Fが連結されると共に、ドリブン部材15F(第2回転要素)に吸振用スプリングSP3と当接する付加当接部15xが設けられる。また、ダンパ装置10Fにおいて、第1および第2要素間ストッパ16,17は、一方が他方に先行して対応する2つの回転要素の相対回転を規制するように構成される。更に、ドリブン部材15Fの付加当接部15xは、第1および第2要素間ストッパ16,17の他方により2つの回転要素の相対回転が規制される前であって、第1および第2要素間ストッパ16,17の一方により2つの回転要素の相対回転が規制されるのと同時に対応する吸振用スプリングSP3の端部と当接するように構成される。
【0091】
第1要素間ストッパ16が先行して2つの回転要素の相対回転を規制する場合、付加当接部15xが吸振用スプリングSP3の端部と当接するまでのドライブ部材11Fのドリブン部材15Fに対する回転角度に対応した捩れ角を“θd”とし、第1要素間ストッパ16によって相対回転が規制されるまでのドライブ部材11Fの中間部材12に対する回転角度に対応した外側スプリングSP1の捩れ角を“θ1”とすれば、θd=θ1+θ1×k1/k2、すなわちθd=θ1×(k1+k2)/k2という関係が成立する。また、第2要素間ストッパ17が先行して2つの回転要素の相対回転を規制する場合、付加当接部15xが吸振用スプリングSP3の端部と当接するまでのドライブ部材11Fのドリブン部材15Fに対する回転角度に対応した捩れ角を“θd”とし、第2要素間ストッパ17によって相対回転が規制されるまでの中間部材12のドリブン部材15Fに対する回転角度に対応した内側スプリングSP2の捩れ角を“θ2”とすれば、θd=θ2+θ2×k2/k1、すなわちθd=θ2×(k1+k2)/k1という関係が成立する。
【0092】
これにより、第1回転要素としてのドライブ部材11Fに連結されるダイナミックダンパ20Fを含むダンパ装置10Fにおいて、第2回転要素としてのドリブン部材15Fの付加当接部15xがダイナミックダンパ20Fの対応する吸振用スプリングSP3の端部と当接するようになると、吸振用スプリングSP3は、ドライブ部材11Fとドリブン部材15Fとの間でトルクを伝達する弾性体として機能することになる。この結果、ダンパ装置10Fでは、付加当接部15xが吸振用スプリングSP3に連結された以降にトルクを伝達しなくなる外側スプリングSP1および内側スプリングSP2の一方をより低剛性化すると共に、吸振用スプリングSP3と並列に作用する外側スプリングSP1および内側スプリングSP2の他方が受け持つべきトルク(分担トルク)を低減化して、当該外側スプリングSP1および内側スプリングSP2の他方の剛性をより低下させることができる。従って、ダイナミックダンパ20Fを有するダンパ装置10Fをより低剛性化することが可能となる。
【0093】
また、ドリブン部材15Fの付加当接部15xは、第1要素間ストッパ16によりドライブ部材11Fと中間部材12との相対回転が規制される前、あるいは第2要素間ストッパ17により中間部材12とドリブン部材15Fとの相対回転が規制される前に吸振用スプリングSP3の端部と当接する。これにより、吸振用スプリングSP3を外側スプリングSP1および内側スプリングSP2の何れか一方と並列に作用させることができるので、ダンパ装置10F全体の低剛性化を図りつつ、付加当接部15xが対応する吸振用スプリングSP3の端部と当接した後に、ドライブ部材11Fに対するより高いトルクの入力を許容することが可能となる。
【0094】
更に、ダンパ装置10Fにおいて、付加当接部15xが吸振用スプリングSP3の端部と当接するまでのドライブ部材11Fのドリブン部材15Fに対する回転角度は、第1および第2要素間ストッパ16,17によって相対回転が規制されるまでのドライブ部材11Fのドリブン部材15Fに対する回転角度よりも小さく定められる。これにより、回転規制ストッパとしての第1および第2要素間ストッパ16,17によりドライブ部材11Fとドリブン部材15Fとの相対回転が規制される前に、ドリブン部材15Fの付加当接部15xを吸振用スプリングSP3の端部に当接させることが可能となる。
【0095】
また、ドリブン部材15Fの付加当接部15xは、ドライブ部材11Fへの入力トルクがダンパ装置10Fの最大捩れ角に対応したトルクよりも小さい所定値(第1の値)以上になると、対応する吸振用スプリングSP3の端部と当接する。このように、ドライブ部材11Fへの入力トルクが高まった段階で吸振用スプリングSP3をドライブ部材11Fとドリブン部材15Fとの間でトルクを伝達する弾性体として機能させることで、外側スプリングSP1および内側スプリングSP2の少なくとも何れか一方をより低剛性化することが可能となる。
【0096】
更に、ドリブン部材15Fの付加当接部15xは、第1および第2要素間ストッパ16,17のうちの先行して作動する一方により2つの回転要素の相対回転が規制されるのと同時に対応する吸振用スプリングSP3の端部と当接する。これにより、ダンパ装置10F全体の低剛性化を図りつつ、ダンパ装置10Fに2段階の捩れ特性をもたせることが可能となる。ただし、付加当接部15xや第1または第2要素間ストッパ16,17は、付加当接部15xが対応する吸振用スプリングSP3の端部と当接した後に、第1および第2要素間ストッパ16,17のうちの先行して作動する一方により2つの回転要素の相対回転が規制されるように構成されてもよい。これにより、外側スプリングSP1、内側スプリングSP2および吸振用スプリングSP3の剛性(ばね定数)を調整することで、ダンパ装置10Fに3段階の捩れ特性をもたせることが可能となる。また、ダンパ装置10Fにおいて、吸振用スプリングSP3は、外側スプリングSP1および内側スプリングSP2の何れか一方と周方向に並ぶように配置されてもよい。
【0097】
図13は、本発明の更に他の実施形態に係るダンパ装置10Gを含む発進装置1Gを示す概略構成図である。なお、発進装置1Gの構成要素のうち、上述の発進装置1等と同一の要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0098】
図13に示すダンパ装置10Gは、回転要素として、ドライブ部材(入力要素)11G、第1中間部材(第1中間要素)121、第2中間部材(第2中間要素)122およびドリブン部材(出力要素)15Gを含む。更に、ダンパ装置10Gは、トルク伝達要素(トルク伝達弾性体)として、ダンパ装置10Gの外周に近接して配置される複数(本実施形態では、例えば2個)の外側スプリングSP10(第1弾性体)と、外側スプリングSP10よりも内側に配置されるそれぞれ複数かつ同数(本実施形態では、例えば3個ずつ)の第1内側スプリングSP21(第2弾性体)および第2内側スプリングSP22(第3弾性体)とを含む。
【0099】
ダンパ装置10Gの外側スプリングSP10は、荷重が加えられてないときに円弧状に延びる軸心を有するように巻かれた金属材からなるアークコイルスプリングである。これにより、外側スプリングSP10をより低剛性化し(バネ定数を小さくし)、ダンパ装置10Gをより低剛性化(ロングストローク化)することができる。また、ダンパ装置10Gの第1および第2内側スプリングSP21,SP22は、荷重が加えられてないときに真っ直ぐに延びる軸心を有するように螺旋状に巻かれた金属材からなる直線型コイルスプリングであり、それぞれ外側スプリングSP10よりも高い剛性(大きいバネ定数)を有する。図13の例では、第1および第2内側スプリングSP21,SP22として、互いに異なる諸元(剛性すなわちバネ定数等)を有するものが採用される。ただし、第1および第2内側スプリングSP21,SP22の諸元は、互いに同一であってもよい。
【0100】
更に、ダンパ装置10Gは、ドライブ部材11Gとドリブン部材15Gとの相対回転を規制する回転規制ストッパとして、ドライブ部材11Gと第1中間部材121との相対回転を規制する第1要素間ストッパ16Gと、第1中間部材121とドリブン部材15Gとの相対回転を規制する第2要素間ストッパ17G(弾性体ストッパ)と、第2中間部材122とドリブン部材15Gとの相対回転を規制する第3要素間ストッパ19(第2の弾性体ストッパ)とを含む。本実施形態において、第1要素間ストッパ16G(ドライブ部材11G、第1中間部材121および外側スプリングSP10等の諸元)、第2要素間ストッパ17G(第1中間部材121、ドリブン部材15G、および第1内側スプリングSP21等の諸元)および第3要素間ストッパ19(第2中間部材122、ドリブン部材15G、および第2内側スプリングSP22等の諸元)は、フロントカバー3に伝達されるトルク、すなわちドライブ部材11Gへの入力トルクが増加していく際に、第3要素間ストッパ19、第2要素間ストッパ17G、第1要素間ストッパ16Gという順番で作動するように構成(設定)される。
【0101】
すなわち、ダンパ装置10Gでは、ドライブ部材11Gへの入力トルクがダンパ装置10Gの最大捩れ角θmaxに対応したトルクT2(第2の値)よりも小さいトルク(第4の値)T4に達すると、第3要素間ストッパ19により第2内側スプリングSP22の捩れ(伸縮)および第2中間部材122とドリブン部材15Gとの相対回転が規制される。また、ドライブ部材11Gへの入力トルクがダンパ装置10Gの上記トルクT2よりも小さく、かつ上記トルクT4よりも大きい所定値T1(第1の値)に達すると、第2要素間ストッパ17Gにより第1内側スプリングSP21の捩れ(伸縮)および第1中間部材121とドリブン部材15Gとの相対回転が規制される。更に、ドライブ部材11Gへの入力トルクがトルクT2に達すると、第1要素間ストッパ16Gにより外側スプリングSP1の捩れ(伸縮)およびドライブ部材11Gと第1中間部材121との相対回転、すなわちドライブ部材11Gとドリブン部材15Gとの相対回転が規制される。これにより、ダンパ装置10Gは、図14に示すように、3段階(3ステージ)の捩れ特性を有する。
【0102】
ダイナミックダンパ20Gは、質量体として、上述の質量体21と同様に構成された連結部材210と、連結部材210に一体に回転するように連結されたタービンランナ5とを含む。また、当該連結部材210とダンパ装置10Gの回転要素である第1中間部材121(第1回転要素)との間には、直線型コイルスプリングまたはアークコイルスプリングである複数(図13の例では、例えば2個の直線型コイルスプリング)の吸振用スプリング(吸振用弾性体)SP3が配置される。更に、ダイナミックダンパ20G(ダンパ装置10G)は、連結部材210と第1中間部材121との相対回転を規制する要素間ストッパ18Gを含む。
【0103】
また、連結部材210は、複数(本実施形態では、例えば4個)のスプリング当接部(弾性体当接部)215を有する。ダンパ装置10Gの取付状態において、各吸振用スプリングSP3は、一対のスプリング当接部215により支持され、外側スプリングSP10と周方向に並ぶように互いに隣り合う2個の外側スプリングSP10の間に1個ずつ配置される。更に、第1中間部材121は、ダンパ装置10Gの取付状態において各吸振用スプリングSP3の両端部に当接する複数(本実施形態では、例えば4個)のスプリング当接部121xを有する。また、ダイナミックダンパ20Gが連結されない回転要素であるドライブ部材11G(第2回転要素)は、第1、第2および第3要素間ストッパ16G,17G,19によりドライブ部材11Gとドリブン部材15Gとの相対回転が規制される前に吸振用スプリングSP3の端部と当接するように付加当接部11xが設けられる。
【0104】
上述のように構成されるダンパ装置10Gでは、ロックアップクラッチ8によりロックアップが実行されると、エンジンからのトルクが、フロントカバー3、ロックアップクラッチ8、ドライブ部材11G、外側スプリングSP10、第1中間部材121、第1内側スプリングSP21、第2中間部材122、第2内側スプリングSP22、ドリブン部材15G、ダンパハブ7という経路を介して変速装置の入力軸ISへと伝達される。この際、フロントカバー3に入力されるトルクの変動は、主に直列に作用するダンパ装置10Gの外側スプリングSP10、第1および第2内側スプリングSP21,SP22により減衰(吸収)される。従って、発進装置1では、ロックアップクラッチ8によりロックアップが実行されている際に、フロントカバー3に入力されるトルクの変動をダンパ装置10Gにより良好に減衰(吸収)することが可能となる。
【0105】
ここで、ドライブ部材11Gと第1中間部材121との間で並列に作用する複数の外側スプリングSP10の合成バネ定数を“k10”とし、第1中間部材121と第2中間部材122との間で並列に作用する複数の第1内側スプリングSP21の合成バネ定数を“k21”とし、第2中間部材122とドリブン部材15Gとの間で並列に作用する複数の第2内側スプリングSP22の合成バネ定数を“k22”とする。この場合、エンジンからのトルクがフロントカバー3に伝達され始めてから、ドライブ部材11Gへの入力トルクがトルクT4に達してダンパ装置10Gの捩れ角が角度θ4になると共に第3要素間ストッパ19により第2中間部材122とドリブン部材15Gとの相対回転が規制されるまでの間(第1ステージS1)、ダンパ装置10G全体の合成バネ定数Kは、K=Kf=k10・k21・k22/(k10・k21+k10・k22+k21・k22)となる。更に、ダンパ装置10Gの捩れ角が角度θ4になった後に所定角度θref(θref<θ4)になって第2要素間ストッパ17Gにより第1中間部材121とドリブン部材15G(第2中間部材122)との相対回転が規制されるまでの間(第2ステージS2)、ダンパ装置10G全体の合成バネ定数Kは、K=Ks=k10・k21/(k10+k21)となる。
【0106】
また、ロックアップの実行時に、エンジンの回転に伴って当該エンジンからのトルクにより第1中間部材121が回転すると、スプリング当接部121xの何れか(何れか2個)が対応する吸振用スプリングSP3の一端を押圧し、各吸振用スプリングSP3の他端が連結部材210の対応する一対のスプリング当接部215の一方を押圧する。この結果、質量体としてのタービンランナ5および連結部材210と複数の吸振用スプリングSP3とを含むダイナミックダンパ20がダンパ装置10Gの第1中間部材121に連結されることになる。これにより、発進装置1では、ダイナミックダンパ20によっても、エンジンからの振動を減衰(吸収)すること、より詳しくは、振動のピークを2つに分けつつ全体の振動レベルを低下させることが可能となる。そして、連結部材210をタービンランナ5に一体回転するように連結することで、ロックアップの実行時にフロントカバー3と変速機の入力軸ISとの間でトルクの伝達に寄与しないタービンランナ5をダイナミックダンパ20の質量体として用いることができるので、発進装置1の大型化を抑制しつつ、ダイナミックダンパ20の質量体の重量を増加させて振動減衰性能をより一層向上させることが可能となる。
【0107】
更に、ダンパ装置10Gでは、ドライブ部材11Gへの入力トルクの大きさに応じて、ドライブ部材11Gと第1中間部材121とが相対回転すると共に、第1中間部材121とドリブン部材15Gとが相対回転する。そして、本実施形態では、ドライブ部材11Gへの入力トルクが上記所定値T1に達すると、第2要素間ストッパ17Gにより各第1および第2内側スプリングSP21,SP22の捩れおよび第1中間部材121とドリブン部材15Gとの相対回転が規制され、これとほぼ同時に、ドライブ部材11Gの各付加当接部11xが対応する吸振用スプリングSP3の端部と当接して当該ドライブ部材11Gが吸振用スプリングSP3に連結される。
【0108】
ドライブ部材11Gの各付加当接部11xが対応する吸振用スプリングSP3の端部と当接するようになると、各吸振用スプリングSP3は、対応する外側スプリングSP10と並列に作用してドライブ部材11Gと第1中間部材121との間でトルクを伝達する弾性体として機能する。これにより、第2要素間ストッパ17Gにより各第1および第2内側スプリングSP21,SP22の捩れおよび第1中間部材121とドリブン部材15Gとの相対回転が規制された後には、原動機としてのエンジンからのトルクが、フロントカバー3、ロックアップクラッチ8、ドライブ部材11G、並列に作用する外側スプリングSP10および吸振用スプリングSP3、第1中間部材121、捩れが規制された第1内側スプリングSP21、第2中間部材122、並びに捩れが規制された第2内側スプリングSP22および第3要素間ストッパ19、これらと並列に並ぶ第2要素間ストッパ17G、ドリブン部材15G、ダンパハブ7という経路を介して変速装置の入力軸ISへと伝達される。
【0109】
そして、この際には、フロントカバー3に入力されるトルクの変動が、並列に作用するダンパ装置10Gの外側スプリングSP10および吸振用スプリングSP3により減衰(吸収)される。すなわち、第2要素間ストッパ17Gにより第1中間部材121とドリブン部材15Gとの相対回転が規制された後、ドライブ部材11Gへの入力トルクが値T2に達してダンパ装置10Gの捩れ角が最大捩れ角θmaxになると共に第1要素間ストッパ16Gによりドライブ部材11Gと第1中間部材121との相対回転が規制されるまでの間(第3ステージS3)、ダンパ装置10G全体の合成バネ定数Kは、ドライブ部材11Gと第1中間部材121との間で並列に作用する複数の吸振用スプリングSP3の合成バネ定数を“k3”とすれば、K=Kt=k10+k3>Kf,Ksとなる。
【0110】
この結果、発進装置1のダンパ装置10Gにおいても、付加当接部11xが吸振用スプリングSP3に連結された以降にトルクを伝達しなくなる第1内側スプリングSP21をより低剛性化すると共に、吸振用スプリングSP3と並列に作用する外側スプリングSP10が受け持つべきトルク(分担トルク)を低減化して、当該外側スプリングSP10の剛性を低下させることができる。従って、ダイナミックダンパ20Gを有するダンパ装置10Gをより低剛性化することが可能となる。また、ダンパ装置10Gでは、ドライブ部材11Gの各付加当接部11xが、入力トルクの増加に伴って第1要素間ストッパ16Gによりドライブ部材11Gと第1中間部材121との相対回転が規制される前に対応する吸振用スプリングSP3の端部と当接する。これにより、ドライブ部材11Gと第1中間部材121との間の外側スプリングSP10と吸振用スプリングSP3とを並列に作用させることができるので、ダンパ装置10G全体の低剛性化を図りつつ、各付加当接部11xが対応する吸振用スプリングSP3の端部と当接した後に、ドライブ部材11Gに対するより高いトルクの入力を許容することが可能となる。更に、ダンパ装置10Gを3ステージ化することで、第1および第2ステージS1,S2間のばね定数の差と、第2および第3ステージS2,S3間のばね定数の差とをそれぞれ小さくすることができる。これにより、閾値としてのトルクT1またはT4付近で入力トルクが変動(振動)しても、非線形性が小さくなることで、ダンパ装置10Gによりトルク変動(振動)を良好に減衰することが可能となる。
【0111】
また、図13に示すダンパ装置10Gにおいて、第1内側スプリングSP21(この場合、「第3弾性体」に対応)の捩れを規制する第2要素間ストッパ17G(この場合、「第2の弾性体ストッパ」に対応)は、同図において二点鎖線で示すように、第1および第2中間部材121,122の相対回転を規制するように構成されてもよい。更に、この場合、上記所定値T1(第1の値)が上記トルクT4(第4の値)よりも小さく定められると共に(かつθref<θ4)、第3要素間ストッパ19(この場合、「弾性体ストッパ」に対応)は、入力トルクが所定値T1になって付加当接部11xが対応する吸振用スプリングSP3の端部と当接するのとほぼ同時に第2内側スプリングSP22(この場合、「第2弾性体」に対応)の捩れを規制するように構成されてもよい。このような構成を採用しても、図15に示すように、ダンパ装置10Gに3段階の捩れ特性を持たせることが可能となる。この場合、ダンパ装置10Gの捩れ角が所定角度θrefになった後に角度θ4になって第2要素間ストッパ17Gにより第1および第2中間部材121,122の相対回転が規制されるまでの間(第2ステージS2)、互いに並列に作用する外側スプリングSP10および吸振用スプリングSP3と、第1内側スプリングSP21とが直列に作用する。そして、第2ステージS2におけるダンパ装置10G全体の合成バネ定数Kは、K=Ks=[k21・(k10+k3)]/(k10+k21+k3)となる。
【0112】
なお、ダンパ装置10〜10Fのダイナミックダンパ20〜20Fは、タービンランナ5を質量体として含むように構成されてもよい。この場合、上述の質量体21を吸振用スプリングSP3とタービンランナ5とを連結する連結部材として機能するように改変してもよい。また、ダンパ装置10〜10Fは、複数の中間部材(中間要素)と、ドライブ部材と複数の中間部材の何れかとの間に配置されるトルク伝達弾性体と、当該トルク伝達弾性体と同一または異なる剛性を有すると共に複数の中間部材の間に配置されるトルク伝達弾性体とを更に含むように構成されてもよい。更に、ダンパ装置10〜10Fは、中間部材12等を含まないように構成されてもよい。また、ダンパ装置10〜10Gにおいて、付加当接部113x,11x,12x,15xは、何れも吸振用スプリングSP3の対応する端部に直接当接するように構成されるが、これに限られるものではない。すなわち、付加当接部113x,11x,12x,15xは、他のスプリング当接部(爪部、例えば連結部材210のスプリング当接部215)等を介して(間接的に)吸振用スプリングSP3の対応する端部に連結されるように構成されてもよい。更に、発進装置1〜1Gは、流体伝動装置を含まないように構成されてもよい。
【0113】
以上説明したように、上記ダンパ装置は、少なくとも入力要素および出力要素を含む複数の回転要素と、前記入力要素と前記出力要素との間で直列に作用してトルクを伝達する第1および第2弾性体を少なくとも含むトルク伝達弾性体と、質量体および前記質量体と前記複数の回転要素の何れかである第1回転要素との間に配置される吸振用弾性体を含むと共に前記第1回転要素に対して逆位相の振動を付与して振動を減衰するダイナミックダンパとを有するダンパ装置において、前記入力要素と前記出力要素との相対回転を規制する回転規制ストッパと、前記複数の回転要素のうちの前記ダイナミックダンパが連結されない第2回転要素に設けられており、前記回転規制ストッパにより前記入力要素と前記出力要素との相対回転が規制される前に前記吸振用弾性体の端部に連結されるように構成された付加連結部と、前記回転規制ストッパにより前記入力要素と前記出力要素との相対回転が規制される前、かつ少なくとも前記付加連結部が前記吸振用弾性体の端部に連結される時点までに、前記第1および第2弾性体の一方の捩れを規制する弾性体ストッパとを備え、前記付加連結部が前記吸振用弾性体の端部に連結された以降には、前記吸振用弾性体と前記第1および第2弾性体の他方とが、前記入力要素と前記出力要素との間で並列に作用してトルクを伝達することを特徴とする。
【0114】
すなわち、上記ダンパ装置では、複数の回転要素の何れかである第1回転要素に対して、質量体および当該質量体と第1回転要素との間に配置される吸振用弾性体を含むダイナミックダンパが連結される。また、複数の回転要素のうちのダイナミックダンパが連結されない第2回転要素は、回転規制ストッパにより入力要素と出力要素との相対回転が規制される前に吸振用弾性体の端部に連結されるように構成された付加連結部を有する。更に、上記ダンパ装置は、回転規制ストッパにより入力要素と出力要素との相対回転が規制される前、かつ少なくとも付加連結部が吸振用弾性体の端部に連結される時点までに、第1および第2弾性体の一方の捩れを規制する弾性体ストッパを有する。そして、吸振用弾性体と第1および第2弾性体の他方とは、付加連結部が吸振用弾性体の端部に連結された以降に、入力要素と出力要素との間で並列に作用してトルクを伝達する。これにより、少なくとも付加連結部が吸振用弾性体の端部に連結された以降にトルクを伝達しなくなる第1および第2弾性体の一方をより低剛性化すると共に、吸振用弾性体と並列に作用する第1および第2弾性体の他方が受け持つべきトルク(分担トルク)を低減化して、当該第1および第2弾性体の他方の剛性をより低下させることができる。従って、ダイナミックダンパを有するダンパ装置をより低剛性化することが可能となる。
【0115】
また、前記付加連結部は、前記入力要素への入力トルクが予め定められた第1の値以上になると前記吸振用弾性体の端部に連結されてもよい。このように、入力要素への入力トルクが高まった段階で吸振用弾性体を第1回転要素と第2回転要素との間でトルクを伝達する弾性体として機能させることで、トルク伝達弾性体をより低剛性化することが可能となる。
【0116】
この場合、前記回転規制ストッパは、前記入力要素への入力トルクが予め定められた第2の値に達すると前記入力要素と前記出力要素との相対回転を規制してもよく、前記第1の値は、前記第2の値よりも小さくてもよい。
【0117】
更に、前記弾性体ストッパは、前記入力要素への入力トルクが前記第1の値に達すると前記第1および第2弾性体の前記一方の捩れを規制してもよい。これにより、ダンパ装置全体の低剛性化を図りつつ、ダンパ装置に2段階以上の捩れ特性をもたせることが可能となる。
【0118】
また、前記弾性体ストッパは、前記入力要素への入力トルクが予め定められた第3の値に達すると前記第1および第2弾性体の前記一方の捩れを規制し、前記第3の値は、前記第1の値よりも小さくてもよい。これにより、トルク伝達弾性体として第1および第2弾性体のみを含むダンパ装置に3段階の捩れ特性をもたせることが可能となる。
【0119】
更に、前記付加連結部が前記吸振用弾性体の端部に連結されるまでの前記第2回転要素の前記第1回転要素に対する回転角度は、前記回転規制ストッパによって前記相対回転が規制されるまでの前記入力要素の前記出力要素に対する回転角度よりも小さくてもよい。これにより、回転規制ストッパにより入力要素と出力要素との相対回転が規制される前に、第2回転要素の付加連結部を吸振用弾性体の端部に連結することが可能となる。
【0120】
また、前記回転規制ストッパは、前記第1および第2回転要素の相対回転を規制する要素間ストッパを含んでもよく、前記付加連結部は、前記要素間ストッパにより前記第1および第2回転要素の相対回転が規制される前に前記吸振用弾性体の端部に連結されるように構成されてもよい。これにより、第1および第2回転要素間のトルク伝達弾性体と吸振用弾性体とを並列に作用させることができるので、ダンパ装置全体の低剛性化を図りつつ、入力要素に対するより高いトルクの入力を許容することが可能となる。
【0121】
更に、前記ダンパ装置は、前記複数の回転要素は、前記トルク伝達弾性体を介して前記入力要素と前記出力要素との間に配置される少なくとも1つの中間要素を含んでもよく、前記第1回転要素は、前記中間要素であり、前記第2回転要素は、前記入力要素または前記トルク伝達弾性体を介して前記入力要素と前記第1回転要素との間に配置される回転要素であってもよい。
【0122】
また、前記ダンパ装置は、前記複数の回転要素は、前記トルク伝達弾性体を介して前記入力要素と前記出力要素との間に配置される少なくとも1つの中間要素を含んでもよく、前記第1回転要素は、前記中間要素であり、前記第2回転要素は、前記出力要素または前記トルク伝達弾性体を介して前記第1回転要素と前記出力要素との間に配置される回転要素であってもよい。
【0123】
更に、前記第1回転要素は、前記出力要素であり、前記第2回転要素は、前記入力要素または前記トルク伝達弾性体を介して前記入力要素と前記出力要素との間に配置される回転要素であってもよい。
【0124】
また、前記第1回転要素は、前記入力要素であり、前記第2回転要素は、前記出力要素または前記トルク伝達弾性体を介して前記入力要素と前記出力要素との間に配置される回転要素であってもよい。
【0125】
更に、前記ダイナミックダンパの前記質量体は、ポンプインペラと共に流体伝動装置を構成するタービンランナを含んでもよい。
【0126】
また、前記複数の回転要素は、第1および第2中間要素を含んでもよく、前記トルク伝達弾性体は、前記入力要素と前記第1中間要素との間でトルクを伝達する前記第1弾性体と、前記第1中間要素と前記第2中間要素との間でトルクを伝達する前記第2弾性体と、前記第2中間要素と前記出力要素との間でトルクを伝達する第3弾性体とを含んでもよく、前記入力要素への入力トルクが予め定められた第4の値に達すると前記第3弾性体の捩れを規制する第2の弾性体ストッパを更に備えてもよく、前記第4の値は、前記第1の値よりも小さくてもよい。
【0127】
更に、前記複数の回転要素は、第1および第2中間要素を含んでもよく、前記トルク伝達弾性体は、前記入力要素と前記第1中間要素との間でトルクを伝達する前記第1弾性体と、前記第2中間要素と前記出力要素との間でトルクを伝達する前記第2弾性体と、前記第1中間要素と前記第2中間要素との間でトルクを伝達する第3弾性体とを含んでもよく、前記入力要素への入力トルクが予め定められた第4の値に達すると前記第3弾性体の捩れを規制する第2の弾性体ストッパを更に備えてもよく、前記第4の値は、前記第1の値よりも大きくてもよい。
【0128】
また、前記第1回転要素は、前記第1中間要素であり、前記第2回転要素は、前記入力要素であってもよい。
【0129】
そして、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記発明を実施するための形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明は、ダンパ装置の製造分野等において利用可能である。
図1
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