特許第6128296号(P6128296)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6128296最適メニュー決定システム、最適メニュー決定方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6128296
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】最適メニュー決定システム、最適メニュー決定方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20120101AFI20170508BHJP
【FI】
   G06Q50/06
【請求項の数】21
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2017-504444(P2017-504444)
(86)(22)【出願日】2016年7月20日
(86)【国際出願番号】JP2016071312
【審査請求日】2017年1月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】滝本 恭司
(72)【発明者】
【氏名】大江 隆二
【審査官】 宮地 匡人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−045560(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/088370(WO,A1)
【文献】 特開2013−196037(JP,A)
【文献】 特開2009−294969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信ネットワークを介して少なくとも一の顧客端末に接続され、該少なくとも一の顧客の各々について、当該顧客の月単位の電力使用量の予測値を使用して、複数の電力料金プランの各々を評価するシステムであって、
少なくとも1年の各月の各日ごとの気象データと、該少なくとも一の顧客の各々の顧客固有の暦データと、顧客固有の月単位の電力使用量データとを格納するデータベースと、
少なくとも、該各月の各日ごとの推計用の気象データと該顧客固有の推計用の暦データとを該データベースから取得し、少なくとも、該各月の各日ごとの推計用の気象データと該顧客固有の推計用の暦データとに基づいて、該顧客の月単位の電力使用量を予測する第1の予測モデルを生成する予測モデル生成部と、
少なくとも複数の年の各月の各日ごとの評価用の気象データと次の年の顧客固有の評価用の暦データとを該データベースから取得し、該評価用の気象データと該評価用の暦データとを使用して、該生成した第1の予測モデルにより、該評価用の気象データの該複数の年の数と等しい数の組を構成する、該顧客の月単位の電力使用量の予測値を予測分布として算出する料金プラン評価部とを含む、電気料金プラン評価システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電気料金プラン評価システムにおいて、
該予測モデル生成部は、さらに、少なくとも、該各月の各日ごとの推計用の気象データと該顧客固有の推計用の暦データとを該データベースから取得し、少なくとも、該各月の各日ごとの推計用の気象データと該顧客固有の推計用の暦データとに基づいて、該第1の予測モデルが算出した該顧客の月単位の電力使用量から、該顧客の各月の各時間帯ごとの予測電力使用量行列を算出する第2の予測モデルを生成し、
該料金プラン評価部は、さらに、少なくとも該複数の年の各月の各日ごとの該評価用の気象データと該次の年の顧客固有の該評価用の暦データとを該データベースから取得し、該評価用の気象データと該評価用の暦データとを使用して、該生成した第2の予測モデルにより、該第1の予測モデルによって予測分布として算出した該顧客の月単位の電力使用量の予測値から、該評価用の気象データの該複数の年の数と等しい数の組を構成する、該顧客の各月の各時間帯ごと電力使用量の予測値を表す予測電力使用量行列を予測分布として算出する、電気料金プラン評価システム。
【請求項3】
請求項2に記載の電気料金プラン評価システムにおいて、
該料金プラン評価部は、さらに、該第2の予測モデルによって予測分布として算出した該顧客の各月の各時間帯ごと電力使用量の予測値を表す該予測電力使用量行列に、該複数の電力料金プランの各料金プランの各時間帯ごとの電力料金単価を表す料金単価行列を適用することにより、各料金プランごとの電力料金を算出する、電気料金プラン評価システム。
【請求項4】
請求項1に記載の電気料金プラン評価システムにおいて、
該予測モデル生成部は、
該取得した各月の各日ごとの該推計用の気象データから各月ごとの冷房指数及び暖房指数を生成し、
該顧客固有の該推計用の暦データから該顧客の月ごとの営業日数と休日日数とを算出し、
該各月ごとの冷房指数及び暖房指数を含む推計用の気象データと各月の営業日数及び休日日数を含む該顧客固有の推計用の暦データとに基づいて、該顧客の月単位の電力使用量を予測する第1の予測モデルを生成する、電気料金プラン評価システム。
【請求項5】
請求項2に記載の電気料金プラン評価システムにおいて、
該予測モデル生成部は、
該取得した各月の各日ごとの該推計用の気象データから各日ごとの冷房指数及び暖房指数を生成し、
該顧客固有の該推計用の暦データから該顧客の月ごとの営業日数と休日日数とを算出し、
連続する少なくとも2日の該各日ごとの冷房指数及び暖房指数を含む推計用の気象データと各月の営業日数及び休日数を含む該顧客固有の推計用の暦データとに基づいて、該顧客の各月の各時間帯ごとの電力使用量の予測値を表す予測電力使用量行列を算出する第2の予測モデルを生成する、電気料金プラン評価システム。
【請求項6】
請求項1に記載の電気料金プラン評価システムにおいて、
該データベースに格納されている該顧客固有の月単位の電力使用量データは、生産等の事業サイクルやトレンド等の該顧客に固有の電力基準使用量を含み、
該予測モデル生成部が、該各月の各日ごとの推計用の気象データと該顧客固有の推計用の暦データと該顧客に固有の電力基準使用量とに基づいて、該顧客の月単位の電力使用量を予測する第1の予測モデルを生成し、
該料金プラン評価部が、該評価用の気象データと該評価用の暦データと該顧客に固有の電力基準使用量とを使用して、該生成した第1の予測モデルにより、該評価用の気象データの該複数の年の数と等しい数の組を構成する、該顧客の月単位の電力使用量の予測値を予測分布として算出する、電気料金プラン評価システム。
【請求項7】
請求項1に記載の電気料金プラン評価システムにおいて、
該第1の予測モデルは、回帰分析により推計された線形予測モデルである、電気料金プラン評価システム。
【請求項8】
請求項1に記載の電気料金プラン評価システムにおいて、
該第1の予測モデルは、ニューラルネットワークである、電気料金プラン評価システム。
【請求項9】
請求項1に記載の電気料金プラン評価システムにおいて、
該データベースは、該顧客のピーク率、夜間率、及びウィークエンド率を格納しており、
該料金プラン評価部は、
該データベースから該顧客のピーク率、夜間率、及びウィークエンド率を取得し、
該第1の予測モデルによって予測分布として算出した該顧客の月単位の電力使用量の予測値と、該ピーク率、該夜間率、及び該ウィークエンド率とから、該顧客のピーク使用電力、夜間使用電力、及びウィークエンド使用電力を算出する、電気料金プラン評価システム。
【請求項10】
請求項3に記載の電気料金プラン評価システムにおいて、
送受信部をさらに含み、
該少なくとも一の顧客の端末及び料金プラン評価部は、表示部を含み、
該料金プラン評価部は、各料金プランごとの電力料金に基づいて該複数の電力料金プランの各々の評価結果を生成し、
該送受信部は、該複数の電力料金プランの各々の評価結果を該顧客の端末に送信し、該顧客の端末は、該複数の電力料金プランの各々の評価結果を該表示部に表示する、電気料金プラン評価システム。
【請求項11】
通信ネットワークを介して少なくとも一の顧客の端末に接続され、少なくとも1年の各月の各日ごとの気象データと、該少なくとも一の顧客の各々の顧客固有の暦データと、顧客固有の月単位の電力使用量データとを格納するデータベースと、予測モデル生成部と、料金プラン評価部とを含む電力料金プラン評価システムにおいて、該少なくとも一の顧客の各々について、該顧客の月単位の電力使用量の予測値を使用して、複数の電力料金プランの各々を評価する方法であって、
予測モデル生成部が、該各月の各日ごとの気象データと該顧客固有の暦データとを該データベースから取得するステップと、
予測モデル生成部が、少なくとも、該各月の各日ごとの推計用の気象データと該顧客固有の推計用の暦データとを該データベースから取得し、少なくとも、該各月の各日ごとの推計用の気象データと該顧客固有の推計用の暦データとに基づいて、該顧客の月単位の電力使用量を予測する第1の予測モデルを生成するステップと、
料金プラン評価部が、少なくとも複数の年の各月の各日ごとの評価用の気象データと次の年の顧客固有の評価用の暦データとを該データベースから取得し、該評価用の気象データと該評価用の暦データとを使用して、該生成した第1の予測モデルにより、該評価用の気象データの該複数の年の数と等しい数の組を構成する、該顧客の月単位の電力使用量の予測値を予測分布として算出するステップとを含む、電気料金プラン評価方法。
【請求項12】
請求項11に記載の電気料金プラン評価方法において、
該予測モデル生成部が、少なくとも、該各月の各日ごとの推計用の気象データと該顧客固有の推計用の暦データとを該データベースから取得し、少なくとも、該各月の各日ごとの推計用の気象データと該顧客固有の推計用の暦データとに基づいて、該第1の予測モデルが算出した該顧客の月単位の電力使用量から、該顧客の各月の各時間帯ごとの予測電力使用量行列を算出する第2の予測モデルを生成するステップと、
該料金プラン評価部が、少なくとも該複数の年の各月の各日ごとの該評価用の気象データと該次の年の顧客固有の該評価用の暦データとを該データベースから取得し、該評価用の気象データと該評価用の暦データとを使用して、該生成した第2の予測モデルにより、該第1の予測モデルによって予測分布として算出した該顧客の月単位の電力使用量の予測値から、該評価用の気象データの該複数の年の数と等しい数の組を構成する、該顧客の各月の各時間帯ごと電力使用量の予測値を表す予測電力使用量行列を予測分布として算出するステップをさらに含む、電気料金プラン評価方法。
【請求項13】
請求項12に記載の電気料金プラン評価方法において、
該料金プラン評価部が、該第2の予測モデルによって予測分布として算出した該顧客の各月の各時間帯ごと電力使用量の予測値を表す該予測電力使用量行列に、該複数の電力料金プランの各料金プランの各時間帯ごとの電力料金単価を表す料金単価行列を適用することにより、各料金プランごとの電力料金を算出するステップをさらに含む、電気料金プラン評価方法。
【請求項14】
請求項11に記載の電気料金プラン評価方法において、
該予測モデル生成部が第1の予測モデルを生成するステップは、
該取得した各月の各日ごとの該推計用の気象データから各月ごとの冷房指数及び暖房指数を生成するステップと、
該顧客固有の該推計用の暦データから該顧客の月ごとの営業日数と休日日数とを算出するステップと、
該各月ごとの冷房指数及び暖房指数を含む推計用の気象データと各月の営業日数及び休日日数を含む該顧客固有の推計用の暦データとに基づいて、該顧客の月単位の電力使用量を予測する第1の予測モデルを生成するステップとを含む、電気料金プラン評価方法。
【請求項15】
請求項12に記載の電気料金プラン評価方法において、
該予測モデル生成部が第2の予測モデルを生成するステップは、
該取得した各月の各日ごとの該推計用の気象データから各日ごとの冷房指数及び暖房指数を生成するステップと、
該顧客固有の該推計用の暦データから該顧客の月ごとの営業日数と休日日数とを算出するステップと、
連続する少なくとも2日の該各日ごとの冷房指数及び暖房指数を含む推計用の気象データと各月の営業日数及び休日日数を含む該顧客固有の推計用の暦データとに基づいて、該顧客の各月の各時間帯ごとの電力使用量の予測値を表す予測電力使用量行列を算出する第2の予測モデルを生成するステップとを含む、電気料金プラン評価方法。
【請求項16】
請求項11に記載の電気料金プラン評価方法において、
該データベースに格納されている該顧客固有の月単位の電力使用量データは、生産等の事業サイクルやトレンド等の該顧客に固有の電力基準使用量を含み、
該予測モデル生成部は、該各月の各日ごとの推計用の気象データと該顧客固有の推計用の暦データと該顧客に固有の電力基準使用量とに基づいて、該顧客の月単位の電力使用量を予測する第1の予測モデルを生成し、
該料金プラン評価部が、該評価用の気象データと該評価用の暦データと該顧客に固有の電力基準使用量とを使用して、該生成した第1の予測モデルにより、該評価用の気象データの該複数の年の数と等しい数の組を構成する、該顧客の月単位の電力使用量の予測値を予測分布として算出する、電気料金プラン評価方法。
【請求項17】
請求項11に記載の電気料金プラン評価方法において、
該第1の予測モデルは、回帰分析により推計された線形予測モデルである、電気料金プラン評価方法。
【請求項18】
請求項11に記載の電気料金プラン評価方法において、
該第1の予測モデルは、ニューラルネットワークである、電気料金プラン評価方法。
【請求項19】
請求項11に記載の電気料金プラン評価方法において、
該データベースは、該顧客のピーク率、夜間率、及びウィークエンド率を格納しており、
該料金プラン評価部は、
該データベースから該顧客のピーク率、夜間率、及びウィークエンド率を取得し、
該第1の予測モデルによって予測分布として算出した該顧客の月単位の電力使用量の予測値と、該ピーク率、該夜間率、及び該ウィークエンド率とから、該顧客のピーク使用電力、夜間使用電力、及びウィークエンド使用電力を算出する、電気料金プラン評価方法。
【請求項20】
請求項13に記載の電気料金プラン評価方法において、
該電力料金プラン評価システムは、送受信部をさらに含み、
該少なくとも一の顧客の端末及び料金プラン評価部は、表示部を含み、
該料金プラン評価部は、各料金プランごとの電力料金に基づいて該複数の電力料金プランの各々の評価結果を生成し、
該送受信部は、該複数の電力料金プランの各々の評価結果を該顧客の端末に送信し、該顧客の端末は、該複数の電力料金プランの各々の評価結果を該表示部に表示する、電気料金プラン評価方法。
【請求項21】
通信ネットワークを介して少なくとも一の顧客端末に接続され、少なくとも1年の各月の各日ごとの気象データと、該少なくとも一の顧客の各々の顧客固有の暦データと、顧客固有の月単位の電力使用量データとを格納するデータベースと、予測モデル生成部と、料金プラン評価部とを含む電力料金プラン評価システムに、該少なくとも一の顧客の各々について、該顧客の月単位の電力使用量の予測値を使用して、複数の電力料金プランの各々を評価する方法を実行させるプログラムであって、該方法は、
予測モデル生成部が、該各月の各日ごとの気象データと該顧客固有の暦データとを該データベースから取得するステップと、
予測モデル生成部が、少なくとも、該各月の各日ごとの推計用の気象データと該顧客固有の推計用の暦データとを該データベースから取得し、少なくとも、該各月の各日ごとの推計用の気象データと該顧客固有の推計用の暦データとに基づいて、該顧客の月単位の電力使用量を予測する第1の予測モデルを生成するステップと、
料金プラン評価部が、少なくとも複数の年の各月の各日ごとの評価用の気象データと次の年の顧客固有の評価用の暦データとを該データベースから取得し、該評価用の気象データと該評価用の暦データとを使用して、該生成した第1の予測モデルにより、該評価用の気象データの該複数の年の数と等しい数の組を構成する、該顧客の月単位の電力使用量の予測値を予測分布として算出するステップとを含む、電気料金プラン評価プログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最適メニュー決定システム、最適メニュー決定方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電気事業者は、顧客の事業形態等に応じた多種多様な電力料金プランを提供する。近い将来、電気料金単価を数時間ごとに切り変える多段階電気料金プランや、電力の需給状況に応じて電気料金単価をリアルタイムに切り替えるような電気料金プランなども将来的には実現すると考えられる。
【0003】
一方、需要家(顧客)側の観点から、経済発展に伴う職種の多様化がもたらしたものとして、勤務時間等の多様化がある。現在、夜間勤務や交代制勤務など様々な勤務形態が生まれ、企業での業務に充てられる時間帯もまちまちとなってきている。
【0004】
ここで、顧客にとっては、何れの料金プランが最も自身に適しているのか、また現在契約している料金プランは自身にとって最適であるのかが最大の関心事である。しかしながら、各料金プランの比較検討には、上記のように料金プランが複雑多様化しているために各料金プランの熟知及び計算等の膨大な労力を必要とし、大変な困難を伴う。顧客の事業規模が大きくなればなるほど、その困難性は高くなる。
【0005】
さらに、従来、顧客の電気料金プランを試算する際に、前年度の電力使用量を用いて将来の電気料金の予測としていたが、このような方法では、電気料金の算定根拠となる電力使用量の予測において、多大な影響を与える気温等の要素を反映できておらず、気温等の不確実性を考慮した試算を行うことができなかった。
【0006】
例えば、特許文献1は、ユーザの端末からの入力に従って1日分の所定時間毎の仮想使用電力量データを取得し、この1日分の所定時間毎の仮想使用電力量データを、該所定時間で区分された各時間帯情報と少なくとも1月分の全日付情報のそれぞれに対応づけることで、少なくとも1月分各日及び各時間帯の使用電力量データを取得する電気料金試算システムを教示している。上記の電気料金試算システムにおいては、1月分各日及び各時間帯の使用電力量データと実際の月間使用電力量データとに基づいて各種料金プランの電気料金を計算する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012‐063814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の試算方法では、電気料金の算定根拠となる電力使用量の予測にお
いて、多大な影響を与える気温等の要素を予測の際に反映できておらず、気温等の不確実性を考慮した試算を行うことができない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、本発明は、通信ネットワークを介して少なくとも一の顧客端末に接続され、該少なくとも一の顧客の各々について、当該顧客の月単位の電力使用量の予測値を使用して、複数の電力料金プランの各々を評価するシステムであって、
少なくとも1年の各月の各日ごとの気象データと、該少なくとも一の顧客の各々の顧客固有の暦データと、顧客固有の月単位の電力使用量データとを格納するデータベースと、
少なくとも、該各月の各日ごとの推計用の気象データと該顧客固有の推計用の暦データとを該データベースから取得し、少なくとも、該各月の各日ごとの推計用の気象データと該顧客固有の推計用の暦データとに基づいて、該顧客の月単位の電力使用量を予測する第1の予測モデルを生成する予測モデル生成部と、
少なくとも複数の年の各月の各日ごとの評価用の気象データと次の年の顧客固有の評価用の暦データとを該データベースから取得し、該評価用の気象データと該評価用の暦データとを使用して、該生成した第1の予測モデルにより、該評価用の気象データの該複数の年の数と等しい数の組を構成する、該顧客の月単位の電力使用量の予測値を予測分布として算出する料金プラン評価部とを含む、電気料金プラン評価システムである。
【0010】
本発明の第2の態様によれば、本発明は、通信ネットワークを介して少なくとも一の顧客の端末に接続され、少なくとも1年の各月の各日ごとの気象データと、該少なくとも一の顧客の各々の顧客固有の暦データと、顧客固有の月単位の電力使用量データとを格納するデータベースと、予測モデル生成部と、料金プラン評価部とを含む電力料金プラン評価システムにおいて、該少なくとも一の顧客の各々について、該顧客の月単位の電力使用量の予測値を使用して、複数の電力料金プランの各々を評価する方法であって、
予測モデル生成部が、該各月の各日ごとの気象データと該顧客固有の暦データとを該データベースから取得するステップと、
予測モデル生成部が、少なくとも、該各月の各日ごとの推計用の気象データと該顧客固有の推計用の暦データとを該データベースから取得し、少なくとも、該各月の各日ごとの推計用の気象データと該顧客固有の推計用の暦データとに基づいて、該顧客の月単位の電力使用量を予測する第1の予測モデルを生成するステップと、
料金プラン評価部が、少なくとも複数の年の各月の各日ごとの評価用の気象データと次の年の顧客固有の評価用の暦データとを該データベースから取得し、該評価用の気象データと該評価用の暦データとを使用して、該生成した第1の予測モデルにより、該評価用の気象データの該複数の年の数と等しい数の組を構成する、該顧客の月単位の電力使用量の予測値を予測分布として算出するステップとを含む、電気料金プラン評価方法である。
【0011】
本発明の第3の態様によれば、本発明は、通信ネットワークを介して少なくとも一の顧客端末に接続され、少なくとも1年の各月の各日ごとの気象データと、該少なくとも一の顧客の各々の顧客固有の暦データと、顧客固有の月単位の電力使用量データとを格納するデータベースと、予測モデル生成部と、料金プラン評価部とを含む電力料金プラン評価システムに、該少なくとも一の顧客の各々について、該顧客の月単位の電力使用量の予測値を使用して、複数の電力料金プランの各々を評価する方法を実行させるプログラムであって、該方法は、
予測モデル生成部が、該各月の各日ごとの気象データと該顧客固有の暦データとを該データベースから取得するステップと、
予測モデル生成部が、少なくとも、該各月の各日ごとの推計用の気象データと該顧客固有の推計用の暦データとを該データベースから取得し、少なくとも、該各月の各日ごとの推計用の気象データと該顧客固有の推計用の暦データとに基づいて、該顧客の月単位の電力使用量を予測する第1の予測モデルを生成するステップと、
料金プラン評価部が、少なくとも複数の年の各月の各日ごとの評価用の気象データと次の年の顧客固有の評価用の暦データとを該データベースから取得し、該評価用の気象データと該評価用の暦データとを使用して、該生成した第1の予測モデルにより、該評価用の気象データの該複数の年の数と等しい数の組を構成する、該顧客の月単位の電力使用量の予測値を予測分布として算出するステップとを含む、電気料金プラン評価プログラムである。
【0012】
その他、本願が開示する課題、及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄の記載、及び図面の記載等により明らかにされる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に従ったシステム及び方法によれば、担当者が気温変動の不確実性を考慮したうえで、顧客に料金プランを提案することが可能である。
【0014】
また、使用量の要因分析を時系列で可視化したことで、顧客の設備変更や営業状態に関する情報を得ることができる。
【0015】
さらに、顧客との対話やトレンドを参考に、翌一年間の使用量の増加見込みなどのオプション変更できるので、予測に顧客や営業担当者の計画や主観的な予測等を考慮する柔軟性を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に従った最適メニューの決定方法を実装するための通信システムの構成を示す図である。
図2】顧客端末116−i、担当者端末118−j、及びオペレータ端末112のハードウェア構成を示す図である。
図3】ファイアウォール104及びWebサーバ106のハードウェア構成を示す図である。
図4】アプリケーションサーバ108のハードウェア構成を示す図である。
図5】データベースサーバ110のハードウェア構成を示す図である。
図6】線形回帰モデルとしての第1の予測モデルの生成手順を示す図である。
図7】構造型ニューラルネットワークを用いた第1の予測モデルの生成手順を示す図である。
図8】月ごとの電力使用量の予測値を用いて各料金プランを評価する処理を示す図である。
図9】回帰分析による第2の予測モデルの生成手順を示す図である。
図10】構造型ニューラルネットワークを用いた第2の予測モデルの生成手順を示す図である。
図11】料金単価行列M(o,t)と予測使用量行列P(i,k,t)と料金行列R(i,o,k)を示す図である。
図12】気温要因データ及び暦データに基づいてN個の各料金プランoを評価する際の本発明の方法のフローチャートである。
図13】料金メリット率に基づく各料金プランの順位、各料金プランのメリット価格、及びメリット率の表示画面である。
図14】顧客固有の生産等の事業サイクルやトレンド等に起因する電力基準使用量を要因分解して表示した図である。
図15】価格メリットを表示した図である。
図16】メリット率分布を表示した図である。
図17】各料金プランのメリット率とメリット金額の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は様々な変更形態及び代替形態が可能であるが、本発明の一例としての実施形態が実施例として図面に示されており、本明細書で詳細に説明される。しかし、一例としての実施形態の本明細書における説明は、開示された特定の形態に本発明を限定することを意図するものではなく、本発明は、特許請求の範囲によって規定された本発明の趣旨及び範囲に入る全ての変更形態、同等形態、及び代替形態を含む。
【0018】
以下では、一例として、電力使用量の予測値に基づく複数の電力料金プランの評価を例に挙げて、本発明の実施形態に係る電気料金最適メニューを決定するシステムを説明する。但し、本発明の最適メニュー決定システムは、電力料金プランの最適メニューの決定のみに限定されず、ガス料金プランの最適メニュー、水道料金プランの最適メニュー、原油料金プランの最適メニュー、鉄鉱石料金プランの最適メニュー、及びボーキサイト料金プランの最適メニューの決定、すなわち、エネルギー源としてあるいはある工業製品の原材料として使用される商品であって、需要と供給の関係の下で市場において取引され、例えば、パッケージプライス等の料金プランがある商品の料金プランの最適メニューの決定にも適用することが可能である。
【0019】
(1) ネットワークの全体構成
図1は、本発明に従った最適メニューの決定方法を実装するための通信システムの構成を示す図である。
【0020】
通信システム100は、電力会社102と、顧客114−i(i=1,…,Ncu)と、担当者端末118‐j(j=1,…,Nag)と、通信ネットワーク120と、イントラネット122とを含んでいる。電力会社102は、ファイアウォール104と、Webサーバ106と、アプリケーションサーバ108と、データベースサーバ110と、オペレータ端末112とを含む。顧客114−iは、それぞれ、顧客端末116−i(i=1,…,Ncu)を備えている。顧客端末116−iは、イントラネット122を介して電力会社102のファイアウォール104に接続されている。担当者端末118‐jは、通信ネットワーク120を介して電力会社102のファイアウォール104に接続されている。顧客端末116−iは、イントラネット122を介して、電力会社102のアプリケーションサーバ108及びデータベースサーバ110に、顧客iの電力使用量の元となる電力消費データ、ピーク率、ウィークエンド率等を送信する。また、顧客端末116−iは、イントラネット122を介して、電力会社102のアプリケーションサーバ108及びデータベースサーバ110からの、顧客iの電力使用量、電力料金、及び最適な料金プランを示すデータを受信する。ここで、顧客端末のインデックスi(i=1,…,Ncu)は、顧客idに対応している。担当者端末118−jは、営業担当者が所有し、アプリケーションサーバ108及びデータベースサーバ110からの、最適な料金プランを示すデータの受信のために使用されるものである。ここで、担当者端末のインデックスj(j=1,…,Nag)は、営業担当者の担当者idに対応している。
【0021】
通信ネットワーク120は、公衆交換電話ネットワーク(PSTN)等の回線交換ネットワーク又はインターネット等のパケット・ベース・ネットワークである。通信ネットワーク120は、少なくともその一部分に、無線信号を介してデータ通信を提供する任意のネットワークを含む。任意のネットワークは、例えば、WiFi/WiMax通信を使用する無線ローカル・エリア・ネットワーク(WLAN)を含む。通信ネットワーク120の内部ネットワーキングは、3GPPで説明されているIMSアーキテクチャ等の技術を使用しても良い。任意のネットワークは、会社又はキャンパスの企業ネットワークとして、又は空港、喫茶店、その他等の一般的な公共の場の「ホット・スポット」として実装されるものであっても良い。通信ネットワーク112は、通常、データ通信に対して使用されるが、VoIP呼等の音声通信を転送することができるネットワークであっても良い。通信ネットワーク112は、さらに、複数の担当者端末118−jへの無線接続を提供する1つ又は複数のアクセスポイントを含む。アクセスポイントには、基地局、基地局ルータ、アクセス・ネットワークが含まれる。
【0022】
イントラネット122は、インターネットの技術を用いることで利便性を高め、且つアクセスできる顧客端末116−iを制限する事で安全性を高めた企業内ネットワークである。イントラネット122は、MPLS(Multi Protocol Label Switching)アーキテクチャを用いて実装されたVPN(Virtual Private Network)とすることができる。
【0023】
顧客端末116−iは、通常は、一般的なデスクトップコンピュータであるが、スマートフォン、タブレット端末、セルラ電話、携帯情報端末、テキスト・メッセージング装置、ページャ、ネットワーク・インターフェイス・カード、ノートブックコンピュータ、及びパーソナル・ディジタル・アシスタント(PDA)であっても良い。顧客端末116−iは、トラフィック・チャネル、シグナリング・チャネル、ページング・チャネル等、いくつかのチャネルを含むエア・インターフェイス(又は無線通信リンク)を介して情報を交換することによって通信することができる。
【0024】
担当者端末118−jは、スマートフォン、タブレット端末、セルラ電話、携帯情報端末、テキスト・メッセージング装置、ページャ、ネットワーク・インターフェイス・カード、ノートブックコンピュータ、デスクトップコンピュータ、及びパーソナル・ディジタル・アシスタント(PDA)であっても良い。担当者端末118−jは、トラフィック・チャネル、シグナリング・チャネル、ページング・チャネル等、いくつかのチャネルを含むエア・インターフェイス(又は無線通信リンク)を介して情報を交換することによって通信することができる。
【0025】
エア・インターフェイスのチャネルは、通信システム100によって使用される1つ又は複数の無線通信プロトコルに従って定義される。例えば、符号分割多元接続(CDMA)に従って動作するエア・インターフェイスのチャネルは、情報を、エア・インターフェイスを介して送信するために使用される無線信号を変調する直交符号によって定義される。エア・インターフェイスのチャネルは、また、エア・インターフェイスを介して情報を送信するために使用される搬送波の周波数によって決定されてもよい。例えば、直交周波数分割多重接続(OFDMA)では、1つ又は複数の担当者端末118−jが複数の直交周波数、又はトーンを共用しても良い。
【0026】
電力会社102は、電力会社のサーバ室であっても良い。ファイアウォール104は、IPの上位プロトコルであるトランスポート層で動作し、Webの閲覧、メールの送受信、ファイル転送等のためのウィンドウ制御、再送制御、輻輳制御を行う信頼性を要求される通信に使用されるコネクション型プロトコルであるTCP(Transmission Control Protocol)と、同じく、IPの上位プロトコルであるトランスポート層で動作し、音声通話や、Videoストリーミング、マルチキャスト通信、ブロードキャスト通信、少量のデータ転送等のリアルタイムの通信に使用されるコネクションレス型プロトコルであるUDP(User Datagram Protocol)の条件に基づいて、通信の許可又は不許可を判断するように構成される。Webサーバ106は、顧客端末116−i及び担当者端末118−jのWebブラウザからHTTPリクエストを受信しその応答を返却する。アプリケーションサーバ108は、Webサーバ106からの処理要求に対して、ビジネスロジックを実行し、必要であればデータベースサーバ110に対してデータの参照や更新要求を行う。データベースサーバ110は、主にデータの管理を行い、アプリケーションサーバ108からのデータの参照や更新処理の要求を実行し結果を返却する。
【0027】
顧客端末116−i及び担当者端末118−jのブラウザから最初に要求を受けたとき、アプリケーションサーバ108は、そのブラウザを一意に識別するための識別子を生成し、Webサーバ106上のWebアプリケーションにその識別子を渡す。その後、アプリケーションサーバは、その識別子をキーとして、そのWebブラウザに関する情報を、データベースサーバ110との間で共有可能で永続性のある外部リソースに保持する。Webサーバ106は、アプリケーションサーバ108から受け取った識別子を、顧客端末116−i及び担当者端末118−jのブラウザに渡す。例えば、cookieを利用する場合、Webサーバ106とアプリケーションサーバ108の呼び出しにおいて、cookieを引数として渡すことによりアプリケーションサーバ108でcookieに識別子を設定できる。再度、顧客端末116−i及び担当者端末118−jのブラウザから要求を行った場合には、アプリケーションサーバ108で設定された識別子を元に外部リソースを参照し情報を取得することができる。
【0028】
(2) 顧客端末、担当者端末、オペレータ端末
図2は、顧客端末116−i、担当者端末118−j、及びオペレータ端末112のハードウェア構成を示す図である。
【0029】
例えば、顧客端末116−iは、CPU202、メモリ204、記憶装置206、入力部208、表示部210、及び送受信インターフェイス212を含む。CPU202は、記憶装置206に記憶されているプログラムをメモリ204に読み出して実行することにより各種の機能を実現する。メモリ204は、例えば、ランダム・アクセス・メモリ(RAM:random access memory)及び/又は読取り専用メモリ(ROM:read only memory)を含む。記憶装置206は、テープ・ドライブ、フロッピー(登録商標)・ドライブ、ハードディスク・ドライブ又はコンパクト・ディスク・ドライブを含む。入力部208は、データの入力を受け付ける、例えば、キーボードやマウス、トラックボール、タッチパネル、マイクロフォン等を含む。表示部210は、データを出力する、例えば、ディスプレイやスピーカ等を含む。顧客端末116−iは、送受信インターフェイス212を外部のプリンタ等に接続することにより、アプリケーションサーバ108及びデータベースサーバ110からの、顧客iの電力使用量、電力料金、及び最適な料金プランを示すデータをプリントアウトすることができる。
【0030】
送受信インターフェイス212は、通信ネットワーク120及びイントラネット122を介してWebサーバ106にアクセスし、Webサーバ106にHTTPリクエストを送信する。また、送受信インターフェイス212は、Webサーバ106からのHTTPリクエストに対する応答に対して、表示部210上に表示されたWebブラウザ上で入力された顧客id、担当者id、パスワード等の情報をWebサーバ106に送信する。これにより、顧客i及び担当者jによる最適メニューの決定システムへのログインが完了する。
【0031】
(3) ファイアウォール、Webサーバ
図3は、ファイアウォール104及びWebサーバ106のハードウェア構成を示す図である。
【0032】
ファイアウォール104及びWebサーバ106は、CPU302、メモリ304、記憶装置306、入力部308、出力部310、及び送受信インターフェイス312を含む。記憶装置306は、各種のデータやプログラムを記憶する、ハードディスク・ドライブやソリッドステート・ドライブ、フラッシュメモリ等であってもよい。CPU302は、記憶装置306に記憶されているプログラムをメモリ304に読み出して実行することにより各種の機能を実現する。送受信インターフェイス312は、通信ネットワーク120及びイントラネット122に接続するためのインターフェイスであり、イーサネット(登録商標)に接続するためのアダプタ、公衆電話回線網に接続するためのモデム等である。入力部308は、データの入力を受け付ける、キーボードやマウス、トラックボール、タッチパネル、マイクロフォン等であってもよい。出力部310は、データを出力する、ディスプレイやプリンタ、スピーカなどであってもよい。
【0033】
(4) アプリケーションサーバ
図4は、アプリケーションサーバ108のハードウェア構成を示す図である。
【0034】
アプリケーションサーバ108は、CPU402、メモリ404、記憶装置406、入力部408、出力部410、送受信インターフェイス412、モデル生成部414、及び料金プラン評価分416とからなる。CPU402、メモリ404、記憶装置406、入力部408、出力部410、及び送受信インターフェイス412は、上記のファイアウォール104及びWebサーバ106のものと同様である。
【0035】
モデル生成部414は、後述のデータベースサーバ110の予測モデル及び料金プランエリアの気象情報データベース510に格納されている気象データ、及びデータベースサーバ110の顧客エリアに、“顧客id”i(i=1,…,Ncu)ごとに格納され、顧客アカウントの一部を形成する電力使用量データベース502の月k(k=1,…,M)ごとの電力使用量の実績データP(i,k)、顧客iの営業日の電力基準使用量P(i)、顧客iの休日の基準電力使用量P(i)、その顧客i固有の電力基準使用量P(CSpe)(i,k)、顧客iの月kの営業日数D(i,k)及び休日数D(i,k)等に基づいて、顧客iの各々についての月ごとの電力使用量の予測値P(i,k)を算出することができる顧客iごとの第1の予測モデルを生成する。第1の予測モデルは、少なくとも、月kの冷房指数(Cooling Degree Days(CDD))“E(CDD)(k)”と、月kの暖房指数(Heating Degree Days(HDD))“E(HDD)(k)”と、顧客iのその月kの営業日数D(i,k)及び休日数D(i,k)を含む暦データを説明変数とする第1の線形予測モデルであってもよい。また、例えば、顧客iの冷暖房等の設備の規模等が大きく変更される等の特別の事情がある場合等には、必要に応じて、その顧客iの営業日の電力基準使用量P(i)、休日の基準電力使用量P(i)、その月kのその顧客i固有の電力基準使用量P(use)(CSpe)(i,k)を第1の線形予測モデルの説明変数として加えてもよい。この場合、モデル生成部414は、第1の線形予測モデルのパラメータを回帰分析によって推計することができる。また、第1の予測モデルは、少なくとも、冷房指数及び暖房指数を含む気象データと、営業日数D(i,k)及び休日日数D(i,k)を含む暦データとを入力として月ごとの電力使用量の予測値P(i,k)を出力とする構造化ニューラルネットワーク(NN)であってもよい。上記と同様に、この場合にも、顧客iの冷暖房等の設備の規模等が大きく変更される等の特別の事情に応じて、その顧客iの営業日の電力基準使用量P(i)、休日の基準電力使用量P(i)、その月kのその顧客i固有の電力基準使用量P(use)(CSpe)(i,k)を構造化NNの入力に加えてもよい。この場合には、モデル生成部414は、電力使用量の実績データP(i,k)を教師データとして、周知の忘却付き構造学習アルゴリズムや生成的構造学習アルゴリズムによって構造化NNを学習させることができる。
【0036】
また、モデル生成部414は、営業日数D(i,k)及び休日数D(i,k)を含む暦データと、第n−m(m=1,…,NEV)年の月kごとの日l(l=1,…,N(k))の平均気温θ(k)、及び温度閾値θから求めることができる日lのCDD“ΔT(CDD)(k,l)”及び日lのHDD“ΔT(HDD)(k,l)”、日l−1のCDD“ΔT(CDD)(k,l−1)”及び日l−1のHDD“ΔT(HDD)(k,l−1)”等を入力変数として使用して、第1の予測モデルによって予測された顧客iの各々についての月ごとの電力使用量の予測値P(i,k)に基づいて、顧客iの各々についての月kの各時間帯t(t=1,…,N)ごとの電力使用量の予測使用量行列P(i,k,t)を求める第2の予測モデルを生成することができる。予測使用量行列の各成分の各時間帯tについての和(予測使用量行列P(i,k,t)の列和)が、第1の予測モデルによって予測された月ごとの電力使用量の予測値P(i,k)に等しくなる。第2の予測モデルは、それぞれ、少なくとも、営業日数D(i,k)及び休日数D(i,k)を含む暦データと、日lのCDD“ΔT(CDD)(k,l)”及び日lのHDD“ΔT(HDD)(k,l)”、日l−1のCDD“ΔT(CDD)(k,l−1)”及び日l−1のHDD“ΔT(HDD)(k,l−1)”を説明変数として、予測使用量行列P(i,k,t)を予測するN個の第2の線形予測モデルとして実装されてもよい。また、第1の予測モデルと同様に、第2の予測モデルも、構造化NNとして実装されてもよい。例えば、第2の予測モデルは、30分ごとにN=48個の線形予測モデルによって実装されてもよい。
【0037】
料金プラン評価部416は、予測モデル生成部414が生成した第1の予測モデルを用いて、顧客iの各々についての月kごとの電力使用量の予測値P(i,k)を算出し、予測モデル生成部414が生成した第2の予測モデルを用いて、月kごとの電力使用量の予測値P(i,k)に基づいて、月kの各時間帯tごとの電力使用量の予測使用量行列P(i,k,t)を算出する。料金プラン評価部416は、各料金プランo(o=1,…,N)の各時間帯tごとの電力料金単価を表す料金単価行列M(o,t)を、データベースサーバ110から取得し、料金単価行列M(o,t)と予測使用量行列P(i,k,t)とに基づいて、各顧客iについて各料金プランoの各月kごとの電力料金を示す料金行列R(i,o,k)を求める。料金行列の各成分R(i,o,k)の月kについての和(料金行列R(i,o,k)の行和)をとると、顧客iの各料金プランoについての第n年の電力料金の予測値が得られる。
【0038】
また、料金プラン評価部416は、データベースサーバ110の料金プランデータベース514から、月kごとの夜間率R(Night)(i,k)及びウィークエンド率R(we)(i,k)を取得し、月kごとの電力使用量の予測値P(i,k)及び夜間率R(Night)(i,k)を用いて、月kごとの夜間使用量の予測値P(Night)(i,k)を、また、月kごとの電力使用量の予測値P(i,k)及びウィークエンド率R(we)(i,k)を用いて、月kごとのウィークエンド使用量の予測値P(we)(i,k)を求めることができる。料金プラン評価部416は、顧客iの月kのピーク率を用いて、同様の方法で、顧客iの月kごとのピーク時間の電力使用量を求めることができる。ピーク率は、電力使用量の1日の電力使用量のうち、ピーク時間、例えば、夏期の午後1時から午後4時までの間に使用する電力使用量の占める割合である。夜間率は、電力使用量の1日の電力使用量のうち、夜間、例えば、22時から翌朝8時までの間に使用する電力使用量の占める割合である。
【0039】
(5) データベースサーバ
図5は、データベースサーバ110のハードウェア構成を示す図である。
【0040】
データベースサーバ110は、顧客情報エリアと担当者エリアと予測モデル及び料金プランエリアとを含む。顧客情報エリアは、“電力使用量データベース502、暦データデータベース504、及び顧客固有の電力使用量データベース506を含み、顧客id”i(i=1,…,Ncu)と関連付けて各顧客のアカウントを格納する。担当者エリアは、担当者データベース508を含み、“担当者id”j(j=1,…,Nag)と関連付けて各担当者のアカウントを格納している。予測モデル及び料金プランエリアは、気象情報データベース510、暦データデータベース512、料金プランデータベース514、及び予測モデルデータベース516とを含む。
【0041】
電力使用量データベース502は、例えば、顧客iを識別する“顧客id”、顧客iの営業日の電力基準使用量P(i)、顧客iの休日の基準電力使用量P(i)、顧客iの第n年(n=1,…,NEV)の月k(k=1,…,M)ごとの電力使用量の実績データP(i,k)、顧客iのピーク率、夜間率R(Night)(i,k)、及びウィークエンド率R(we)(i,k)を格納している。暦データデータベース504は、第n年の月kごとに、顧客iの営業日数D(i,k)及び休日数D(i,k)、営業日及び休日の日付を格納している。これらのデータは、顧客iの固有の事情により、例えば、ゴールデンウィーク中の営業日及び休日、年末年始の営業日及び休日、会社の創立記念日等が異なっている場合がある。顧客固有の電力使用量データベース506は、生産等の事業サイクルやトレンド等のその顧客i固有の電力基準使用量P(use)(CSpe)(i,k)を格納している。また、顧客情報エリアは、他にも、顧客電話番号、顧客携帯電話番号、住所、メールアドレス、ホームページのURL、従業員数等を含むことができる。
【0042】
担当者データベースは、担当者jを識別する“担当者id”、その担当者jが担当する地域を識別するコード、担当者jが携帯している担当者端末の機器識別子等を格納している。
【0043】
気象データデータベース510は、温度閾値θ、第n−m(m=1,…,NEV)年の月kごとに、日lの平均気温θを格納している。気象データデータベース510は、他にも、第n−m年の月kごとに、日lの天候、湿度、気圧、風力、日照時間等を格納してもよい。暦データデータベース512は、顧客iによらない通常の暦を格納している。顧客iによらない通常の暦は、第n−m年及び第n年の月kの営業日数D(k)及び休日日数D(k)を含んでいる。料金プランデータベース514は、各料金プランo(o=1,…,N)の各時間帯tごとの電力料金単価を表す料金単価行列M(o,t)を格納している。各料金プランoは、家庭用として、例えば、「エコノミーナイト」プラン、「ファミリータイム(プラン1)」、「ファミリーナイト(プラン2)」、「電灯ピークシフト」プラン等を含むことができ、法人用として、例えば、「特別高圧電力A」、「特別高圧電力B」、「特別高圧Time of Use(TOU)A」、「特別高圧Time of Use(TOU)B」、「業務用高負荷率電力」「業務用高負荷率TOU」、「業務用ウィークエンド」等を含むことができる。予測モデルデータベースは、例えば、予測モデルが線形予測モデルの場合には、定数及び回帰係数を格納することができ、予測モデルが構造化ニューラルネットワークの場合には、各ユニット間の結合係数を格納することができる。
【0044】
(6) 予測モデルの生成
図6は、線形回帰モデルとしての予測モデルの生成手順を示す図である。
【0045】
本発明は、過去NTR年間の気象データ及び暦データに基づいて第1の予測モデルを作成し、作成された第1の予測モデルを用いて、過去のNEV年間の気象データを用いて、次の年の1年間の月kごとの電力使用量の予測値を、NEV年間の気象データに対応するNEV通りの電力使用量の予測値をNEV個のシナリオ(予測分布)として算出する。その後、第2の予測モデルを用いてNEV通りの1年間の電力使用量の予測値から各月kの時間帯tごとの電力使用量の予測値を算出し、NEV通りの電力使用量の予測値を電力料金プラン(メニュー)に適用することで、NEV通りの電力料金の予測値のシナリオを作成し、各シナリオの結果により電力料金プランを評価するものである。例えば、NTR=5、NEV=25とすることができる。
【0046】
図6を参照すると、アプリケーションサーバ108のモデル生成部414は、データベースサーバ110の気象データデータベース510から、第n−m(m=1,…,NTR)年の月kごとの日l(l=1,…,N(k))の平均気温θ(k)、及び温度閾値θを読みだす。ここで、N(k)は、月kの日数であり、N(k)=28又は30又は31である。温度閾値θは、例えば、18℃である。モデル生成部414は、月kの冷房指数(CDD)“E(CDD)(k)”を、式
に従って算出する(ブロック602)。CDDは、冷房需要を満たすために必要なエネルギーの大きさを表す指標である。ここで、max(θ(k)−θ,0)は、θ(k)−θと0のうちのいずれか大きいほうを選択することを示している。また、モデル生成部414は、月kの暖房指数(HDD)“E(HDD)(k)”を、式
に従って算出する(ブロック604)。HDDは、暖房需要を満たすために必要なエネルギーの大きさを表す指標である。
【0047】
モデル生成部414は、データベースサーバ110の顧客エリアにある暦データデータベース504から、第n−m年の月kの顧客iの営業日数D(i,k)及び休日数D(i,k)を読み出す(ブロック606及び608)。ここで、
である。
【0048】
a(i)を顧客i固有の定数項、b(i)、b(i)c(i)、及びc(i)を顧客i固有の回帰係数とすると、顧客iの各々についての月kの電力使用量の予測値P(i,k)は、
で表すことができ、両辺の自然対数をとると、
の関係が成り立つ。
【0049】
モデル生成部414は、顧客iの第n−m年から第n−1年の過去NTR年分の変量のセット[E(CDD)(k),E(HDD)(k),D(i,k),D(i,k)]の多数のサンプルを用いて、顧客i固有のパラメータの組[a(i),b(i),b(i),c(i),c(i)]の推計を行い、このパラメータの組によって表される第1の予測モデルを生成する(ブロック610)。推計処理は、一般的な回帰分析の手法により行われる。モデル生成部414は、第1の予測モデルを表すパラメータの組[a(i),b(i),b(i),c(i),c(i)]を、データベースサーバ110に送り、データベースサーバ110は、パラメータの組[a(i),b(i),b(i),c(i),c(i)]を予測モデルデータベース516に格納する。
【0050】
第1の予測モデルのパラメータの組[a(i),b(i),b(i),c(i),c(i)]の推計は、複数の顧客についてではなく、個々の顧客iについて行われる。これは、複数の顧客のプールデータでパラメータ推計を行った場合に、個別の顧客の使用状況に合致しないモデルを生ずるといったことを防ぐためである。パラメータの推計は、推計用のデータを確保するために、12×NTRヵ月分の変量のセットを使用して行われる。
【0051】
上記のパラメータの推計は、月kの冷房指数と、月kの暖房指数と、月kの暦データとを使用して行われたが、例えば、顧客iの冷暖房等の設備の規模等が大きく変更される等の特別の事情がある場合等には、その顧客iの営業日の電力基準使用量P(i)、休日の基準電力使用量P(i)、その月kのその顧客i固有の電力基準使用量P(use)(CSpe)(i,k)を第1の線形予測モデルの説明変数として加えてもよい。
【0052】
この場合には、モデル生成部414は、データベースサーバ110の顧客固有の電力使用量データベース506から、生産等の事業サイクルやトレンド等の顧客i固有の電力基準使用量P(use)(CSpe)(i,k)を読みだす。このとき、顧客iの月kの電力使用量の予測値P(i,k)の回帰式は、b(i)、b(i)、c(i)、c(i)、及びd(i)を顧客i固有の回帰係数とすると、
で表され、両辺の自然対数をとると、
の関係が成り立つ。
【0053】
また、モデル生成部414は、データベースサーバ110の電力使用量データベース502から、顧客iの営業日の1日当たりの電力基準使用量P(i)及び休日の1日当たりの基準電力使用量P(i)を読みだし、第n−m年の月kの電力基準使用量を、
に従って算出してもよい。b(i)、b(i)、b(i)、b(i)、及びd(i)を顧客i固有の回帰係数とすると、顧客iの各々についての月kの電力使用量の予測値P(i,k)は、
で表すことができ、両辺の自然対数をとると、
の関係が成り立つ。
【0054】
図7は、構造型ニューラルネットワークを用いた第1の予測モデルの生成手順を示す図である。
【0055】
電力や熱エネルギーの使用量は、工場等の操業予定に影響される負荷や、気象条件に影響される負荷、ほぼ毎日一定の傾向を示す負荷等によって様々な特性を有している。このような使用量は、線形モデルで精度よく予測できる場合もあれば、非線形モデルによる予測が必要な場合もあり、様々な負荷特性に対応した使用量予測ツールが必要となる。
【0056】
この点で、ニューラルネットワークは、非線形関数のモデル化の能力、及び学習能力を有しており、予測をはじめとする多くの分野で応用されている。また、ニューラルネットワークは、設計者の意図を反映しやすく、他の予測手法に比べ高精度な予測ができるメリットがある。しかしながら、最適なネットワーク構造に関する情報が事前に得られないため試行錯誤的に学習しなければならないこと、及び内部がブラックボックスのため、出力理由の説明が困難であること等の欠点を有する。
【0057】
図示の例では、入力層から中間層までの計算を入力因子グループごとに分割している。また、あらかじめ多くの中間ユニット数で学習を開始し、冗長なユニットを削除することで最適ネットワーク構造を探索する削除的構造学習の一種である忘却付き構造学習アルゴリズムや、あらかじめ少ない中間ユニット数から学習を開始し、必要ならユニットを追加する手法で、最低限のユニット追加で最適ネットワーク構造を探索する生成的構造学習アルゴリズムを採用することで、上記の問題を解決することができる。
【0058】
図7において、入力因子グループ714は、気象的要因(気温効果)の入力因子グループであり、気温効果は、顧客iにとって最も大きな不確実要因である。入力因子グループ716は、顧客i固有の暦データの入力因子グループである。
【0059】
図6の場合と同様に、アプリケーションサーバ108のモデル生成部414は、データベースサーバ110の気象データデータベース510から、第n−m年の月kごとの日lの平均気温θ、及び温度閾値θを読みだし、式(1)に従って月kの冷房指数(CDD)“E(CDD)(k)”を算出し(ブロック702)、“E(CDD)(k)”を入力ユニット718に入力する。モデル生成部414は、月kの暖房指数(HDD)“E(HDD)(k)”を、式(2)に従って算出し(ブロック704)、“E(HDD)(k)”を入力ユニット720に入力する。モデル生成部414は、入力因子グループ714の中の1つの入力ユニット722に“顧客id”iを入力する。“顧客id”iを入力する入力ユニット722は、顧客i固有のマッピングを実現するのに使用される。
【0060】
モデル生成部414は、データベースサーバ110の顧客エリアにある暦データデータベース504から、第n−m年の月kの顧客iの営業日数D(i,k)及び休日数D(i,k)を読みだし、D(i,k)及びD(i,k)を、それぞれ、入力ユニット724及び726に入力する。モデル生成部414は、入力因子グループ716の中の1つの入力ユニット728に“顧客id”iを入力する。“顧客id”iを入力する入力ユニット728は、顧客i固有のマッピングを実現するのに使用される。
【0061】
入力因子グループ714の入力ユニット718、720、及び722の出力は、結合係数によって重みづけされ、入力因子グループ714の中間ユニットのみに接続される。入力因子グループ716の入力ユニット724、726、及び728の出力は、結合係数によって重みづけされ、入力因子グループ716内の中間ユニットにのみ結合される。各中間ユニットの出力は、結合係数によって重みづけされ、出力ユニット730に接続される。出力ユニット730は、顧客iの月kの電力使用量の予測値P(i,k)を出力する。
【0062】
上記の予測モデルとしてのニューラルネットワークは、各顧客i(i=1,…,Ncu)のNTR年分の月kの電力使用量の予測値P(i,k)に対して、対応する顧客iのNTR年分の月kごとの電力使用量の実績データP(i,k)を教師データとして用いて、忘却付き構造学習アルゴリズムや生成的構造学習アルゴリズムを実行することにより、学習させることができる。モデル生成部414は、学習の結果得られたユニット間の結合係数を、データベースサーバ110に送り、データベースサーバ110は、結合係数を予測モデルデータベース516に格納する。
【0063】
(7) 各料金プランの評価
本実施形態においては、アプリケーションサーバ108の料金プラン評価部416は、過去NTR年間の気温データ、暦データ、及び、場合によっては、電力使用データに基づいて第1の予測モデルを作成し、作成された第1の予測モデルを用いて、過去のNEV年間の気象データ及び次の年の暦データを用いて、過去のNEV年間の気象データに対応するNEV通りの電力使用量の予測値を算出する。料金プラン評価部416は、上記のNEV通りの電力使用量の予測値を、次の年の1年間の月kごとの電力使用量の予測値をNEV通りのシナリオとして提示する。その後、料金プラン評価部416は、第2の予測モデルを用いてNEV通りの1年間の電力使用量の予測値から、各月kの時間帯tごとの電力使用量の予測値を算出し、NEV通りの時間帯tごとの電力使用量の予測値を電力料金プランに適用することで、NEV通りの電力料金の予測値のシナリオを作成し、各シナリオの結果により各料金プランを評価する。
【0064】
図8は、月ごとの電力使用量の予測値を用いて各料金プランを評価する処理を示す図である。
【0065】
各料金プランo(o=1,…,N)の評価は、過去NEV年分の各月kの各日の気温データを用いて、次の年の暦に基づいて行う。従って、各料金プランoについて、過去NEV年分の各n−m(m=1,…,NEV)年の気温効果に対応するNEV個のシナリオが生成される。例えば、NEVの値は、NEV=25である。
【0066】
アプリケーションサーバ108の料金プラン評価部416は、モデル生成部414が生成した第1の予測モデルを用いて、顧客iの第n−NEV年から第n−1年までの各n−m年(m=1,…,NEV)の各月kについての気温要因データに基づいて、翌第n年の各月kの電力使用量の予測値P(i,k)のNEV通りのシナリオを算出する。例えば、料金プラン評価部416は、第n−NEV年のE(CDD)(k)及びE(HDD)(k)と、第n年の暦データであるD(i,k)及びD(i,k)を用いて、図6に示されている第1の予測モデルによって、各月kの電力使用量の予測値であるP(i,k)を算出する。同様に、料金プラン評価部416は、第n−(NEV−1)年のE(CDD)(k)及びE(HDD)(k)と、第n年の暦データであるD(i,k)及びD(i,k)を用いて、図6に示されている第1の予測モデルによって、各月kの電力使用量の予測値であるP(i,k)を算出する。上記のようにして、料金プラン評価部416は、第n−NEV年から第n−1年までの各年のE(CDD)(k)及びE(HDD)(k)と、第n年の暦データであるD(i,k)及びD(i,k)を用いて、第1の予測モデルによって、NEV組のP(i,k)を算出し、月単位の電力使用量の予測分布を求める。
【0067】
再び、図8を参照すると、料金プラン評価部416は、第2の予測モデルを用いて、月kごとの電力使用量の予測値P(i,k)から、月kの各時間帯tごとの電力使用量の予測使用量行列P(i,k,t)を算出する。
【0068】
図9は、回帰分析による第2の予測モデルの生成手順を示す図である。
【0069】
モデル生成部414は、データベースサーバ110の気象データデータベース510から読み出した第n−m(m=1,…,NTR)年の月kごとの日l(l=1,…,N(k))の平均気温θ(k)及び温度閾値θ、第n−m年の月kの日l−1の平均気温θl−1(k)及び温度閾値θを用いて、式
に従って、第n−m年の月kの日lのCDD“ΔT(CDD)(k,l)”及びHDD“ΔT(HDD)(k,l)”、第n−m年の月kの日l−1のCDD“ΔT(CDD)(k,l−1)”及びHDD“ΔT(HDD)(k,l−1)”を算出する。モデル生成部414は、データベースサーバ110の暦データデータベース504から、第n−m年の月kの顧客iの営業日数D(i,k)及び休日数D(i,k)を読み出す。
【0070】
f(i,t)を顧客i固有の定数項、g(i,t)、g(i,t)、g(i,t)、g(i,t)、h(i,t)、h(i,t)、r(i,t)を顧客i固有の回帰係数とすると、顧客iの各時間帯tごとの予測使用量P(i,k,t)は、
で表すことができ、両辺の自然対数をとると、
の関係が成り立つ。
【0071】
モデル生成部414は、顧客iの第n−m年から第n−1年の過去NTR年分の変量のセット[ΔT(CDD)(k,l),ΔT(HDD)(k,l),ΔT(CDD)(k,l−1),ΔT(HDD)(k,l−1),D(i,k),D(i,k),P(i,k)]の多数のサンプルを用いて、顧客i固有のパラメータの組[f(i,t),g(i,t),g(i,t),g(i,t),g(i,t),h(i,t),h(i,t),r(i,t)]の推計を行い、このパラメータの組によって表される予測モデルを生成する。推計処理は、一般的な回帰分析の手法により行われる。モデル生成部414は、予測モデルを表すパラメータの組[f(i,t),g(i,t),g(i,t),g(i,t),g(i,t),h(i,t),h(i,t),r(i,t)]を、データベースサーバ110に送り、データベースサーバ110は、パラメータの組[f(i,t),g(i,t),g(i,t),g(i,t),g(i,t),h(i,t),h(i,t),r(i,t)]を予測モデルデータベース516に格納する。
【0072】
図10は、構造型ニューラルネットワークを用いた第2の予測モデルの生成手順を示す図である。
【0073】
図7の場合と同様に、図10の構造化ニューラルネットワークは、入力層から中間層までの計算が入力因子グループごとに分割されている。第2の予測モデルを実装する構造型ニューラルネットワークは、気象的要因(気温効果)の入力因子グループである入力因子グループ1018と、暦要因の入力因子グループである入力因子グループ1020と、月kごとの電力使用量の入力因子グループである入力因子グループ1022とを含む。
【0074】
アプリケーションサーバ108のモデル生成部414は、データベースサーバ110の気象データデータベース510から、第n−m年の月kごとの日l(l=1,…,N(k))の平均気温θ(k)及び温度閾値θを読みだし、式(6)に従って、日l=1からl=N(k)までのCCD“ΔT(CDD)(k,l)”及びHDD“ΔT(HDD)(k,l)”を算出し(ブロック1002及び1004)、“ΔT(CDD)(k,l)”を入力ユニット1024、1026に、“ΔT(HDD)(k,l)”を入力ユニット1028、1030に入力する。モデル生成部414は、入力因子グループ1018の中の1つの入力ユニット1032に“顧客id”iを入力する。“顧客id”iを入力する入力ユニット1032は、顧客i固有のマッピングを実現するのに使用される。
【0075】
モデル生成部414は、データベースサーバ110の顧客エリアにある暦データデータベース504から、第n−m年の月kの顧客iの営業日数D(i,k)及び休日数D(i,k)を読みだし(ブロック1008及び1010)、D(i,k)及びD(i,k)を、それぞれ、入力ユニット1034及び1036に入力する。モデル生成部414は、入力因子グループ1020の中の1つの入力ユニット1038に“顧客id”iを入力する。“顧客id”iを入力する入力ユニット1038は、顧客i固有のマッピングを実現するのに使用される。
【0076】
モデル生成部414は、図6及び7の第1の予測モデルによって算出した顧客iの月kの電力使用量の予測値P(i,k)を、入力ユニット1040に入力する。モデル生成部414は、入力因子グループ1022の中の1つの入力ユニット1042に“顧客id”iを入力する。“顧客id”iを入力する入力ユニット1042は、顧客i固有のマッピングを実現するのに使用される。
【0077】
入力因子グループ1018の入力ユニット1024、1026、1028、1030、及び1032の出力は、結合係数によって重みづけされ、入力因子グループ1018の中間ユニットのみに接続される。入力因子グループ1020の入力ユニット1034、1036、及び1038の出力は、結合係数によって重みづけされ、入力因子グループ1020内の中間ユニットにのみ結合される。入力因子グループ1022の入力ユニット1040及び1042の出力は、結合係数によって重みづけされ、入力因子グループ1022内の中間ユニットにのみ結合される。各中間ユニットの出力は、結合係数によって重みづけされ、出力ユニット1044、1046、1048に接続される。
【0078】
上記の第2の予測モデルとしてのニューラルネットワークは、第n−NTR年から第n−1年までの月kの各時間帯tごとの電力使用量の予測使用量行列P(i,k,t)に対して、第n−NTR年から第n−1年までの月kの各時間帯tごとの対応する電力使用量の実測値P(i,k,t)を教師データとして用いて、忘却付き構造学習アルゴリズムや生成的構造学習アルゴリズムを実行することにより、学習させることができる。モデル生成部414は、学習の結果得られたユニット間の結合係数を、データベースサーバ110に送り、データベースサーバ110は、結合係数を予測モデルデータベース516に格納する。
【0079】
料金プラン評価部416は、モデル生成部414が生成した第2の予測モデルとしての構造化ニューラルネットワークに過去NEV年のうちの特定の第n−m(m=1,…,NEV)年の第k月の気温推移パターンを入力する。すなわち、料金プラン評価部416は、データベースサーバ110の気象データデータベース510から、第n−m年の月kごとの日l(l=1,…,N(k))の平均気温θ(k)及び温度閾値θを、1月分ずつ読みだす。料金プラン評価部416は、式(6)に従って、第n−m年の月kの各日lについて冷房指数(CDD)、すなわち、ΔT(CDD)(k,1)=max(θ(k)―θ,0),…,ΔT(CDD)(k,N(k))=max(θN(k)(k)―θ,0)をN(k)日分計算する。また、料金プラン評価部416は、式(6)に従って、第n−m年の月kの各日lについての暖房指数(HDD)、すなわち、ΔT(HDD)(k,1)=max(θ―θ(k),0),…,ΔT(HDD)(k,N(k))=max(θ―θN(k)(k),0)をN(k)日分計算する。
【0080】
気象的要因(気温効果)の入力因子グループ1018は、冷房指数用の入力ユニットをN(k)ユニットと暖房指数用の入力ユニットをN(k)ユニット含んでいる。料金プラン評価部416は、max(θ(k)―θ,0),…,max(θN(k)(k)―θ,0)を1番目からN(k)番目の入力ユニットに入力し、max(θ―θ(k),0),…,max(θ―θN(k)(k),0)を(N(k)+1)番目のユニットから2N(k)番目のユニットに入力する。料金プラン評価部416は、入力因子グループ1022の中の1つの入力ユニット1042に“顧客id”iを入力する。入力因子グループ1018の入力ユニットの出力は、結合係数によって重みづけされ、入力因子グループ1018の中間ユニットのみに接続される。
【0081】
料金プラン評価部416は、モデル生成部414が生成した第2の予測モデルとしての構造化ニューラルネットワークに第n年(次の1年)の暦データを入力する(ブロック1008及び1010)。すなわち、料金プラン評価部416は、暦データデータベース504から、第n年の月kの顧客iの営業日数D(i,k)及び休日数D(i,k)を読みだし、入力因子グループ1020の2つの入力ユニット1034及び1036に入力する。料金プラン評価部416は、入力因子グループ1020の中の1つの入力ユニット1038に“顧客id”iを入力する。入力因子グループ1020の3つの入力ユニットの出力は、結合係数によって重みづけされ、入力因子グループ1020内の中間ユニットにのみ結合される。
【0082】
料金プラン評価部416は、構造化ニューラルネットワークに、図6及び7に示されている第1の予測モデルにより求めた月kごとの電力使用量の予測値P(i,k)を入力する(ブロック1014)。料金プラン評価部416は、入力因子グループ1022の中の1つの入力ユニット1042に“顧客id”iを入力する。入力因子グループ1022の入力ユニットの出力は、結合係数によって重みづけされ、入力因子グループ1022の中間ユニットのみに接続される。
【0083】
各中間ユニットの出力は、結合係数によって重みづけされ、出力層の出力ユニット1044、1046、1048に接続される。出力層には、時間帯の数に等しいN個の出力ユニットがあり、第n−NEV年から第n−1年までに対応するNEV組の月kの各時間帯tごとの電力使用量の予測使用量行列P(i,k,t)を出力する。
【0084】
料金プラン評価部416は、モデル生成部414が生成した図9に示されている第2の予測モデルを、月kについてN(t=1,…,N)個の線形予測モデルとして実装し、顧客iの月kの各時間帯tごとの電力使用量の予測使用量行列P(i,k,t)を求めてもよい。モデル生成部414及び料金プラン評価部416は、時間帯tを30分間隔で設定し、N=48としてもよい。
【0085】
アプリケーションサーバ108の料金プラン評価部416は、モデル生成部414が生成した第2の予測モデルにより、顧客iの第n−NEV年から第n−1年までの各n−m年の各月kについての気温要因データに基づいて、翌第n年の月kの暦データを用いて、第n−NEV年から第n−1年までの各年のNEV組の気温要因データに対応する、各月kの気温要因データ各時間帯tごとの電力使用量の予測使用量行列P(i,k,t)のNEV通りのシナリオを算出する。例えば、料金プラン評価部416は、第n−NEV年の月kの日l=1からl=N(k)までのCCD“ΔT(CDD)(k,l)”及びHDD“ΔT(HDD)(k,l)”と、第n年の月kの暦データであるD(i,k)及びD(i,k)を用いて、図9に示されている第2の予測モデルによって、各月kの時間帯tごとの電力使用量の予測値を算出し、この処理を月k=1から月k=Mまで繰り返すことで、予測使用量行列P(i,k,t)を算出する。同様に、料金プラン評価部416は、第n−(NEV−1)年の“ΔT(CDD)(k,l)”及び“ΔT(HDD)(k,l)”と、第n年の暦データであるD(i,k)及びD(i,k)を用いて、図9に示されている第2の予測モデルによって、月kの各時間帯tごとの電力使用量の予測使用量行列P(i,k,t)を算出する。上記のようにして、料金プラン評価部416は、第n−NEV年から第n−1年までの各年の各月のΔT(CDD)(k,l)”及び“ΔT(HDD)(k,l)”と、第n年の暦データであるD(i,k)及びD(i,k)を用いて、第2の予測モデルによって、NEV組のP(i,k,t)を算出し、各月の時間単位の電力使用量の予測分布を求める。
【0086】
図11は、料金単価行列M(o,t)と予測使用量行列P(i,k,t)と料金行列R(i,o,k)を示す図である。
【0087】
料金単価行列M(o,t)は、図11の上段に示されている。料金単価行列M(o,t)は、行が各メニューoを示しており、列が各時間帯を示している。料金単価行列M(o,t)は、N×Nの行列となる。例えば、成分M(1,1)は、料金プランo=1の時間帯t=1における電力単価を示しており、成分M(N,N)は、料金プランo=Nの時間帯t=Nにおける電力単価を示している。
【0088】
予測使用量行列P(i,k,t)は、図11の中段に示されている。予測使用量行列P(i,k,t)は、行が各時間帯を示しており、列が各月を示している。例えば、成分P(i,1,1)は、第n−m年の顧客iの月k=1の時間帯t=1における予測電力使用量を示しており、成分P(i,M,N)は、第n−m年の顧客iの月k=Mの時間帯t=Nにおける予測電力使用量を示している。料金行列の各成分R(i,o,k)の月kについての和(料金行列R(i,o,k)の行和)をとると、顧客iの各料金プランoについての第n年の電力料金の予測値が得られる。
【0089】
料金行列R(i,o,k)は、図11の下段に示されている。料金行列R(i,o,k)は、行が各料金プランを示しており、列が各月を示している。例えば、成分R(i,1,1)は、第n−m年の顧客iの料金プランo=1の時間帯t=1における電力料金を示しており、成分R(i,N,N)は、第n−m年の顧客iの月k=Mの時間帯t=Nにおける電力料金を示している。
【0090】
料金プラン評価部416は、顧客iの料金プランoについての各月kの電力料金の予測値を表す料金行列R(i,o,k)を、
に従って求めることができ、ここで、
である。
【0091】
図12は、気温要因データ及び暦データに基づいてN個の各料金プランoを評価する際の本発明の方法のフローチャートである。
【0092】
本実施形態の方法は、オペレータ端末112にインストールされたソフトウェアをオペレータ端末112のCPU202上で実行することにより、実装され得る。オペレータ端末112は、そのソフトウェアを実行することにより、アプリケーションサーバ108及びデータベースサーバ110を制御することができる。
【0093】
方法は、ステップS1202において開始される。
【0094】
アプリケーションサーバ108のモデル生成部414は、“顧客id”をi=1に設定する(ステップS1204)。モデル生成部414は、データベースサーバ110の気象データデータベース510から、温度閾値θ、第n−NTR年から第n−1年までの過去NTR年分の各年(n−m年(m=1,…,NTR))の月kごとの日lの平均気温θ(k)、暦データデータベース504から、第n−NTR年から第n−1年までの過去NTR年分の各年の月kごとの顧客iの営業日数D(i,k)及び休日日数D(i,k)、営業日及び休日の日付、過去NTR年分の顧客iの第n−m年の月kごとの電力使用量の実績データP(i,k)等を読み出してくる(ステップS1206)。モデル生成部414は、読み出した温度閾値θ及び月kごとの日lの平均気温θ(k)から、式(1)及び(2)に従って、第n−m年の月kの冷房指数E(CDD)(k)及び暖房指数E(HDD)(k)を算出する(ステップS1206)。NTRは、例えば、5である。
【0095】
モデル生成部414は、予測モデルが線形予測モデルである場合には、一般的な回帰分析の手法を用いて、式(5)で表される予測モデルを推計し(ステップS1208)、予測モデルが構造化ニューラルネットワークである場合には、過去NTR年分の顧客iの第n−m年の月kごとの電力使用量の実績データP(i,k)を教師データとして用いて、上記のNTR年分のデータを学習サンプルとして、忘却付き構造学習アルゴリズムや生成的構造学習アルゴリズムを実行することにより、第1の予測モデルを生成する(ステップS1208)。モデル生成部414は、第1の予測モデルを表すパラメータの組をデータベースサーバ110に送り、データベースサーバ110は、パラメータの組を予測モデルデータベース516に格納する。
【0096】
モデル生成部414は、よみだした温度閾値θ及び月kごとの日lの平均気温θ(k)から、式(6)に従って、第n−m年の月kの日lのCDD“ΔT(CDD)(k,l)”及びHDD“ΔT(HDD)(k,l)”、第n−m年の月kの日l−1のCDD“ΔT(CDD)(k,l−1)”及びHDD“ΔT(HDD)(k,l−1)”を算出する(ステップS1210)。モデル生成部414は、上記のCDD及びHDDと、第n−NTR年から第n−1年までの過去NTR年分の各年の月kごとの顧客iの営業日数D(i,k)及び休日日数D(i,k)と、第1の予測モデルで推定した顧客iの第n−m年の月kごとの電力使用量の予測値P(i,k)とを用いて、第2の予測モデルを生成する(ステップS1212)。モデル生成部414は、予測モデルが線形予測モデルである場合には、一般的な回帰分析の手法を用いて、式(8)で表される予測モデルを推計し(ステップS1212)、予測モデルが構造化ニューラルネットワークである場合には、第n−NTR年から第n−1年までの月kの各時間帯tごとの対応する電力使用量の実測値P(i,k,t)を教師データとして用いて、上記のNTR年分のデータを学習サンプルとして、忘却付き構造学習アルゴリズムや生成的構造学習アルゴリズムを実行することにより、第2の予測モデルを生成する(ステップS1212)。モデル生成部414は、第2の予測モデルを表すパラメータの組をデータベースサーバ110に送り、データベースサーバ110は、パラメータの組を予測モデルデータベース516に格納する。
【0097】
モデル生成部414は、“顧客id”iがNcuよりも小さいか否かを判定する(ステップS1214)。顧客id”iがNcuよりも小さい場合には、モデル生成部414は、i←i+1の処理(変数iにi+1の値を代入する処理を意味する。以下、同じ)を行い(ステップS1216)、処理は、ステップS1206に戻る。顧客id”iがNcu以上である場合には、処理は、料金プラン評価部416に引き継がれる。
【0098】
料金プラン評価部416は、 “顧客id”をi=1に設定する(ステップS1218)。料金プラン評価部416は、“年の指標”mをm=1に設定する(ステップS1220)。料金プラン評価部416は、温度閾値θ及び月kごとの日lの平均気温θ(k)から、式(1)及び(2)に従って、第n−m年の月kの冷房指数E(CDD)(k)及び暖房指数E(HDD)(k)を算出する(ステップS1222)。料金プラン評価部416は、第n−m年の月kの冷房指数E(CDD)(k)及び暖房指数E(HDD)(k)と、第n年(次の年)の暦データD(i,k)及びD(i,k)(評価用サンプル)を用いて、第1の予測モデルにより、月kごとの電力使用量の予測値P(i,k)を算出する(ステップS1224)。
【0099】
料金プラン評価部416は、温度閾値θ及び月kごとの日lの平均気温θ(k)から、式(6)に従って、第n−m年の月kの日lのCDD“ΔT(CDD)(k,l)”及びHDD“ΔT(HDD)(k,l)”、第n−m年の月kの日l−1のCDD“ΔT(CDD)(k,l−1)”及びHDD“ΔT(HDD)(k,l−1)”を算出する(ステップS1226)。料金プラン評価部416は、上記のCDD及びHDDと、第n年(次の年)の暦データD(i,k)及びD(i,k)と、第1の予測モデルで推定した顧客iの第n−m年の月kごとの電力使用量の予測値P(i,k)(評価用サンプル)とを用いて、顧客iの月kの時間帯tごとの電力使用量の予測使用量行列P(i,k,t)を算出する(ステップS1228)。料金プラン評価部416は、料金プランoの時間帯tごとの電力料金を示す料金単価行列M(o,t)と、算出した予測使用量行列P(i,k,t)とを用いて、顧客iの料金プランoごとの月kの電力使用量を示す料金行列R(i,o,k)を生成する(ステップS1230)。料金プラン評価部416は、生成した料金行列R(i,o,k)を格納する(ステップS1230)。
【0100】
料金プラン評価部416は、“年の指標”mがNEVよりも小さいか否かを判定する(ステップS1232)。“年の指標”mがNEVよりも小さい場合には、料金プラン評価部416は、m←m+1の処理(変数mにm+1の値を代入する処理)を行い(ステップS1234)、処理は、ステップS1222に戻る。“年の指標”mがNEV以上である場合には、料金プラン評価部416は、各料金プランoごとの順位を生成し(ステップS1236)、その順位を出力部410に表示する。料金プラン評価部416は、“顧客id”iがNcuよりも小さいか否かを判定する(ステップS1238)。“顧客id”iがNcuよりも小さい場合には、料金プラン評価部416は、i←i+1の処理(変数iにi+1の値を代入する処理)を行い(ステップS1240)、処理は、ステップS1220に戻る。“顧客id”iがNcu以上である場合には、処理は終了する(ステップS1242)。
【0101】
料金プラン評価部416は、さらに、データベースサーバ110の電力使用量データベース502から顧客iの夜間率R(Night)(i,k)及びウィークエンド率R(we)(i,k)を読み出し、夜間使用量の予測値PN(i,k)及びウィークエンド使用量の予測値PW(i,k)を、式
に従って算出する。
【0102】
また、料金プラン評価部416は、式
に従って、第n−NEV年から第n−1年までの各年(n−m年(m=1,…,NEV))の気温要因に対応するNEV個のシナリオの各々について、月kごとの日l=1からl=N(k)のCDDの最大値ΔT(CDD)(max)(k)及びHDDの最大値ΔT(HDD)(max)(k)を算出する。料金プラン評価部416は、顧客i固有の定数項をa´(i)、顧客i固有の回帰係数をb´(i)、b´(i)とすると、
として予測される顧客iの月kごとの最大電力の予測値P(max)(k)を算出する。月kごとの最大電力の予測値P(max)(k)は、基本料金を決定する際に考慮される。
【0103】
以上の処理が終了し、すべての顧客についてすべての電力料金プランの評価が終了すると、アプリケーションサーバ108は、オペレータ端末112に評価の結果を送り、オペレータ端末112の表示部210に評価の結果が表示される。また、顧客iについての評価の結果は、イントラネット122を介して顧客端末116−iに送られ、顧客端末116−iの表示部210に表示される。さらに、評価の結果は、通信ネットワーク120を介して担当者端末118‐jに送られ、担当者端末118‐jの表示部に表示される。
【0104】
代替的な実施形態において、すべての顧客のモデル生成についてバッチ処理をして結果を保存するステップS1204から始まるループ及びステップS1218から始まるループを用いることなく、顧客idを入力することによりオンデマンドによるモデル生成から料金プラン評価プロセスを実行するシステムを使用することもできる。すなわち、図12によって示される実施形態では、顧客iごとの予測モデルをすべての顧客について一括して推計し、保存することとなっているが、“顧客id”iの入力に応答してその都度、予測モデルを推計し、料金プランの評価を行ってもよい。
【0105】
(8) 評価結果の表示
図13は、料金メリット率に基づく各料金プランの順位、各料金プランのメリット価格、及びメリット率の表示画面である。
【0106】
図13の画面は、オペレータ端末112、顧客端末116−i、及び担当者端末118‐jの表示部210に表示される画面である。
【0107】
この顧客iは、現在「業務用電力」プランに加入している。この顧客iの場合には、「業務用高負荷率」プラン、「業務用ウィークエンド」プラン、「業務用高負荷率TOU」プランの順に、順位が高くなっている。1番目、つまり、最適とされる業務用高負荷率」プランの場合には、現在加入している「業務用電力」プランと比較して、すべてのシナリオの価格の平均価格が¥178,292‐安くなっている。従って、メリット率は、‐1.7%になっている。つまり、現在契約中の「業務用電力」プランと比較して1.7%安価になっている。2番目の「業務用ウィークエンド」プランは、現在加入している「業務用電力」プランと比較して、すべてのシナリオの価格の平均価格が¥140,777‐安くなっている。従って、メリット率は、‐1.3%となっている。3番目の「業務用高負荷率TOU」プランは、現在加入している「業務用電力」プランと比較して、25通りのすべてのシナリオの価格の平均価格が¥22,500‐安くなっている。従って、メリット率は、‐0.2%となっている。
【0108】
図14は、顧客固有の生産等の事業サイクルやトレンド等に起因する電力基準使用量を要因分解して表示した図である。
【0109】
図14の図において、折れ線1402は、月ごとの電力使用量の実測値P(i,k)を示している。1404の部分は、電力使用量の実測値P(i,k)のうち、気温効果成分P(Tem)(i,k)を示している。電力使用量の実測値“P(i,k)”1402から気温効果成分“P(Tem)(i,k)”1404を除いた部分が、1406で示されている部分である。1406の部分に移動平均をとった部分が、1408で示される部分であり、顧客i固有のトレンドP(Tre)(i,k)を表す部分である。顧客i固有のトレンド“P(Tre)(i,k)”1406と気温効果成分“P(Tem)(i,k)”1404とを加え合わせたものと、電力使用量の実測値1402との差が、1410で示される部分である。1410で示される部分が、顧客i固有の生産等の事業サイクルやトレンド等に起因する不規則変動成分である。
【0110】
電力使用量の実測値P(i,k)と式(5)に従って推定された電力使用量の予測値P(i,k)との間の残差を、ε(i,k)とすると、

である。料金プラン評価部416は、式(5)に従って推計した顧客i固有のパラメータの組[a(i),b(i),b(i),c(i),c(i)]を用いて、気温効果成分P(Tem)(i,k)を、式
に従って算出する。料金プラン評価部416は、上記の気温効果成分1404を除いた部分である顧客iの月kのベース電力使用量P(net)(i,k)を、式
に従って算出する。料金プラン評価部416は、P(net)(i,k)のM月の移動平均をとることにより、
に従って、顧客i固有のトレンドを表す傾向電力使用量P(Tre)(i,k)を算出する。料金プラン評価部416は、M=12としてもよい。傾向電力使用量P(Tre)(i,k)は、図14の1408で示される部分で表される。
【0111】
傾向電力使用量P(Tre)(i,k)は、気温効果成分P(Tem)(i,k)、M月サイクルの循環、及び不規則変動成分を除いた電力使用料の傾向を示している。従って、月kのベース電力使用量P(net)(i,k)のうちM月サイクルの循環と不規則変動成分との和をP(MR)(i,k)とすると、
となる。顧客iのM月サイクルの月kの成分は、各年のP(MR)(i,k)の平均をとったもので与えられ、これをP(cyc)(i,k)で表すと、料金プラン評価部416は、
に従って、顧客iの月kの不規則変動成分P(ir)(i,k)を算出する。
【0112】
上記の要因分解は、気温感応度を計算した回帰式とは異なる考え方で分解したもので、回帰式の残差と要因分解の不規則変動成分P(ir)(i,k)も異なるものである。これは、積型の回帰分析の残差の解釈は困難であり、顧客にとって有益な情報とは言えないと考えられるためである。
【0113】
図15は、価格メリットを表示した図である。
【0114】
3つのグラフは、NEV年間の気温変動によるメリット額をヒストグラムで表示している。ヒストグラムのセル(ヒストグラムの右側)に表示される値は、その階級に属するシナリオの数である。シナリオ数は、合計で25になるようになっている。つまり、図示の例では、NEV=25である。
【0115】
左側のヒストグラムは、顧客iが現在契約している料金プラン「業務用電力」についてのものである。表示される価格メリットは、現在契約している料金プランとの比較であるので、この場合の価格メリットは、すべて0となる。
【0116】
中央のヒストグラムは、顧客iが現在契約している料金プラン「業務用電力」と、料金プラン「業務用TOU」との比較を示したものであり、右側のヒストグラムは、顧客iが現在契約している料金プラン「業務用電力」と、料金プラン「業務用高付加率電力」との比較を示したものである。ヒストグラムの右側の“*”は、平均値が属している階級を示している。
【0117】
価格メリットが負の値で示されている場合、すなわち、顧客iが現在契約している料金プラン「業務用電力」よりも、料金プラン「業務用電力」及び料金プラン「業務用高付加率電力」の少なくとも一方が安価になる場合には、現在の料金プラン「業務用電力」から料金プラン「業務用電力」又は料金プラン「業務用高付加率電力」に乗り換えたほうがよい場合である。図示の例では、価格メリットは、すべて正の値であるので、現在の料金プラン「業務用電力」が最適であることを示している。
【0118】
図16は、メリット率分布を表示した図である。
【0119】
左側のヒストグラムは、顧客iが現在契約している料金プラン「業務用電力」についてのものである。表示されるメリット率は、現在契約している料金プランとの比較であるので、この場合の価格メリットは、すべて0となる。
【0120】
中央のヒストグラムは、顧客iが現在契約している料金プラン「業務用電力」と、料金プラン「業務用TOU」との比較を示したものであり、右側のヒストグラムは、顧客iが現在契約している料金プラン「業務用電力」と、料金プラン「業務用高付加率電力」との比較を示したものである。ヒストグラムの右側の“*”は、平均値が属している階級を示している。
【0121】
メリット率が負の値で示されている場合、すなわち、顧客iが現在契約している料金プラン「業務用電力」よりも、料金プラン「業務用電力」及び料金プラン「業務用高付加率電力」の少なくとも一方が安価になる場合には、現在の料金プラン「業務用電力」から料金プラン「業務用電力」又は料金プラン「業務用高付加率電力」に乗り換えたほうがよい場合である。図示の例では、価格メリットは、すべて正の値であるので、現在の料金プラン「業務用電力」が最適であることを示している。
【0122】
ヒストグラムのセル(ヒストグラムの右側)に表示される値は、その階級に属するシナリオの数である。料金のメリット率と料金のメリット額とは、それぞれの年について計算されるので、料金のメリット率と料金のメリット額とでヒストグラムの形状が一致しない場合がある。
【0123】
図17は、各料金プランのメリット率とメリット金額の表示例を示す図である。
【0124】
図17の上段は、顧客iが現在契約している料金プラン「業務用電力」と、3つの料金プラン「業務用高負荷率電力」、「業務用ウィークエンド」、及び「業務用高負荷率TOU」との比較を示す表であり、メリット率及びメリット価格は、割引平均値を表示してある。
【0125】
料金プラン「業務用電力」に対する料金プラン「業務用高負荷率電力」のメリット率は、“‐1.7%”で、平均の割引価格は、“‐178,292”である。この場合のメリットのあるシナリオは、25で、すべてのシナリオでメリットがあることを示している。料金プラン「業務用電力」に対する料金プラン「業務用ウィークエンド」のメリット率は、“‐1.3%”で、平均の割引価格は、“‐140,777”である。この場合のメリットのあるシナリオは、25で、すべてのシナリオでメリットがあることを示している。料金プラン「業務用電力」に対する料金プラン「業務用高負荷率TOU」のメリット率は、“‐0.2%”で、平均の割引価格は、“‐22,500”である。この場合のメリットのあるシナリオは、20である。この表では、料金プラン「業務用高負荷率電力」が、顧客iに最適であることがわかる。
【0126】
図17の下段は、料金プラン「業務用電力」に対する料金プラン「業務用高負荷率電力」の価格メリット及びメリット率を、各シナリオごとに表示したものである。ヒストグラムの右側の“*”は、平均値が属している階級を示している。
【0127】
本発明に従った上記の方法の各ステップは、CPUとメモリとを備えた、図示しないオペレータの端末によって行われてもよい。本発明の実施形態においては、上記の方法を実行するのに用いられるソフトウェアプログラムが、デジタル・データ・ストレージ媒体等のプログラム・ストレージ・デバイスに格納されていてもよく、これらのプログラム・ストレージ・デバイスは、機械読取り可能、又はコンピュータ読取り可能であり、また、これらのコンピュータ又は機械は、プログラム命令を機械実行可能プログラム、又はコンピュータ実行可能プログラムとしてエンコードし、エンコードされたプログラム命令は、本発明の方法のステップのうちの一部又は全部を実行する。プログラム・ストレージ・デバイスは、例えば、デジタル・メモリ、磁気ディスク及び磁気テープなどの磁気ストレージ媒体、ハード・ドライブ、又は光学的読取り可能デジタル・データ・ストレージ媒体とすることができる。
【0128】
本発明は、ソフトウェア、及び/又はソフトウェアとハードウェアの組合せで、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC:application specific integrated circuit)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA:field programmable gate array)と、汎用コンピュータ、又は他の任意のハードウェア等価物を使用して実装されてもよい。
【0129】
上記の実施形態では、一例として、電力使用量の予測値に基づく複数の電力料金プランの評価を例に挙げて、本発明の実施形態に係る電気料金最適メニューを決定するシステムを説明したが、本発明の最適メニュー決定システムは、電力料金プランの最適メニューの決定のみに限定されず、ガス料金プランの最適メニュー、水道料金プランの最適メニュー、原油料金プランの最適メニュー、鉄鉱石料金プランの最適メニュー、及びボーキサイト料金プランの最適メニューの決定、すなわち、エネルギー源としてあるいはある工業製品の原材料として使用される商品であって、需要と供給の関係の下で市場において取引され、例えば、パッケージプライス等の料金プランがある商品の料金プランの最適メニューの決定にも適用することが可能である。
【0130】
上記の説明は、単に、本発明の特定の実施形態の開示を提供しているにすぎず、本発明を上記の実施形態のみに限定するように意図されてはいない。従って、本発明は、上記で説明された実施形態だけに限定されるものではなく、むしろ、当業者が本発明の範囲内に含まれる代替の実施形態を考案し得ることが認識される。
【符号の説明】
【0131】
100 通信システム
102 電力会社
104 ファイアウォール
106 Webサーバ
108 アプリケーションサーバ
110 データベースサーバ
112 オペレータ端末
114 顧客
116 顧客端末
118 担当者端末
120 通信ネットワーク
122 イントラネット

【要約】
少なくとも1年の各月の各日ごとの気象データと、該少なくとも一の顧客の各々の顧客固有の暦データと、顧客固有の月単位の電力使用量データとを格納するデータベースと、少なくとも、該各月の各日ごとの推計用の気象データと該顧客固有の推計用の暦データとを該データベースから取得し、少なくとも、該各月の各日ごとの推計用の気象データと該顧客固有の推計用の暦データとに基づいて、該顧客の月単位の電力使用量を予測する第1の予測モデルを生成する予測モデル生成部と、少なくとも複数の年の各月の各日ごとの評価用の気象データと次の年の顧客固有の評価用の暦データとを該データベースから取得し、該評価用の気象データと該評価用の暦データとを使用して、該生成した第1の予測モデルにより、該評価用の気象データの該複数の年の数と等しい数の組を構成する、該顧客の月単位の電力使用量の予測値を予測分布として算出する料金プラン評価部とを含む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17