(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、一実施形態について説明する。
【0012】
なお、以下で説明する実施形態に係るエンコーダは、回転型(ロータリタイプ)や直線型(リニアタイプ)など様々なタイプのエンコーダに適用可能である。以下では、エンコーダの理解が容易になるように、回転型のエンコーダを例に挙げて説明する。他のタイプのエンコーダに適用する場合には、被測定対象を回転型のディスクから直線型のリニアスケールに変更するなど適切な変更を加えることにより可能であるので、詳しい説明は省略する。
【0013】
<1.サーボシステム>
まず、
図1を参照しつつ、本実施形態に係るサーボシステムの構成について説明する。
図1に示すように、サーボシステムSは、サーボモータSMと、制御装置CTとを有する。サーボモータSMは、エンコーダ100と、モータMとを有する。
【0014】
モータMは、エンコーダ100を含まない動力発生源の一例である。モータMは、回転子(図示省略)が固定子(図示省略)に対して回転する回転型モータであり、回転子に固定されたシャフトSHを軸心AX周りに回転させることにより、回転力を出力する。
【0015】
なお、モータM単体をサーボモータという場合もあるが、本実施形態では、エンコーダ100を含む構成をサーボモータSMという。つまり、サーボモータSMはエンコーダ付きモータの一例に相当する。以下では、説明の便宜上、エンコーダ付きモータが、位置や速度等の目標値に追従するように制御されるサーボモータである場合について説明するが、必ずしもサーボモータに限定されるものではない。エンコーダ付きモータは、例えばエンコーダの出力を表示のみに用いる場合等、エンコーダが付設さえされていれば、サーボシステム以外に用いられるモータをも含むものである。
【0016】
また、モータMは、例えば位置データ等をエンコーダ100が検出可能なモータであれば、特に限定されるものではない。また、モータMは、動力源として電気を使用する電動式モータである場合に限定されるものではなく、例えば、油圧式モータ、エア式モータ、蒸気式モータ等の他の動力源を使用したモータであってもよい。但し、説明の便宜上、以下ではモータMが電動式モータである場合について説明する。
【0017】
エンコーダ100は、モータMのシャフトSHの回転力出力側とは反対側に連結される。但し、必ずしも反対側に限定されるものではなく、エンコーダ100はシャフトSHの回転力出力側に連結されてもよい。エンコーダ100は、シャフトSH(回転子)の位置を検出することにより、モータMの位置(回転角度ともいう。)を検出し、その位置を表す位置データを出力する。
【0018】
エンコーダ100は、モータMの位置に加えて又は代えて、モータMの速度(回転速度、角速度等ともいう。)及びモータMの加速度(回転加速度、角加速度等ともいう。)の少なくとも一方を検出してもよい。この場合、モータMの速度及び加速度は、例えば、位置を時間で1又は2階微分したり検出信号(例えば後述するインクリメンタル信号)を所定の時間カウントするなどの処理により検出することが可能である。説明の便宜上、以下ではエンコーダ100が検出する物理量は位置であるとして説明する。
【0019】
制御装置CTは、エンコーダ100から出力される位置データを取得して、当該位置データに基づいて、モータMの回転を制御する。従って、モータMとして電動式モータが使用される本実施形態では、制御装置CTは、位置データに基づいてモータMに印加する電流又は電圧等を制御することにより、モータMの回転を制御する。更に、制御装置CTは、上位制御装置(図示せず)から上位制御信号を取得して、当該上位制御信号に表された位置等を実現可能な回転力がモータMのシャフトSHから出力されるように、モータMを制御することも可能である。なお、モータMが、油圧式、エア式、蒸気式などの他の動力源を使用する場合には、制御装置CTは、それらの動力源の供給を制御することにより、モータMの回転を制御することが可能である。
【0020】
<2.エンコーダ>
次に、本実施形態に係るエンコーダ100について説明する。
図2に示すように、エンコーダ100は、ディスク110と、光学モジュール120と、位置データ生成部130とを有する。
【0021】
ここで、エンコーダ100の構造の説明の便宜上、上下等の方向を以下のように定め、適宜使用する。
図2において、ディスク110が光学モジュール120と面する方向、つまりZ軸正の方向を「上」とし、Z軸負の方向を「下」とする。但し、該方向はエンコーダ100の設置態様によって変動するものであり、エンコーダ100の各構成の位置関係を限定するものではない。
【0022】
(2−1.ディスク)
ディスク110は、
図3に示すように円板状に形成され、ディスク中心Oが軸心AXとほぼ一致するように配置される。ディスク110は、モータMのシャフトSHに連結され、シャフトSHの回転により回転する。なお、本実施形態では、モータMの回転を測定する被測定対象の例として、円板状のディスク110を例に挙げて説明するが、例えば、シャフトSHの端面などの他の部材を被測定対象として使用することも可能である。また、
図2に示す例では、ディスク110がシャフトSHに直接連結されているが、ハブ等の連結部材を介して連結されてもよい。
【0023】
図3に示すように、ディスク110は、複数のスリットトラックSA1,SA2,SI1,SI2を有する。ディスク110はモータMの駆動と共に回転するが、光学モジュール120は、ディスク110の一部に対向しつつ固定して配置される。従って、スリットトラックSA1,SA2,SI1,SI2と、光学モジュール120とは、モータMの駆動に伴い、互いに測定方向(
図3に示す矢印Cの方向。以下適宜「測定方向C」と記載する。)に相対移動する。
【0024】
ここで、「測定方向」とは、光学モジュール120でディスク110に形成された各スリットトラックを光学的に測定する際の測定方向である。本実施形態のように被測定対象がディスク110である回転型のエンコーダにおいては、測定方向はディスク110の中心軸を中心とした円周方向に一致するが、例えば被測定対象がリニアスケールであり、可動子が固定子に対して移動する直線型のエンコーダにおいては、測定方向はリニアスケールに沿った方向となる。なお、「中心軸」とはディスク110の回転軸心であり、ディスク110とシャフトSHが同軸に連結される場合にはシャフトSHの軸心AXと一致する。
【0025】
(2−2.光学検出機構)
光学検出機構は、スリットトラックSA1,SA2,SI1,SI2と光学モジュール120とを有する。各スリットトラックは、ディスク110の上面にディスク中心Oを中心としたリング状に配置されたトラックとして形成される。各スリットトラックは、トラックの全周にわたって、測定方向Cに沿って並べられた複数の反射スリット(
図4における斜線ハッチング部分)を有する。1つ1つの反射スリットは、光源121から照射された光を反射する。
【0026】
(2−2−1.ディスク)
ディスク110は、例えば金属等の光を反射する材質により形成される。そして、ディスク110の表面における光を反射させない部分に反射率の低い材質(例えば酸化クロム等)を塗布等により配置することで、配置されない部分に反射スリットが形成される。なお、光を反射させない部分をスパッタリング等により粗面として反射率を低下させることで、反射スリットが形成されてもよい。
【0027】
なお、ディスク110の材質や製造方法等については特に限定されるものではない。例えば、ディスク110をガラスや透明樹脂等の光を透過する材質で形成することも可能である。この場合、ディスク110の表面に光を反射する材質(例えばアルミニウム等)を蒸着等によって配置することにより、反射スリットが形成可能である。
【0028】
スリットトラックは、ディスク110の上面において幅方向(
図3に示す矢印Rの方向。以下適宜「幅方向R」と記載する。)に4本併設される。なお、「幅方向」とは、ディスク110の半径方向、すなわち測定方向Cと略垂直な方向であり、この幅方向Rに沿った各スリットトラックの長さが各スリットトラックの幅に相当する。4本のスリットトラックは、幅方向Rの内側から外側に向けて、SA1,SI1,SI2,SA2の順に同心円状に配置される。各スリットトラックについてより詳細に説明するために、ディスク110の光学モジュール120と対向する領域近傍の部分拡大図を
図4に示す。
【0029】
図4に示すように、スリットトラックSA1,SA2が有する複数の反射スリットは、測定方向Cでアブソリュートパターンを有するように、ディスク110の全周に配置される。
【0030】
なお、「アブソリュートパターン」とは、後述する光学モジュール120が有する受光アレイが対向する角度内における反射スリットの位置や割合等が、ディスク110の1回転内で一義に定まるようなパターンである。つまり、例えば、
図4に示すアブソリュートパターンの例の場合、モータMがある角度位置となっている場合に、対向した受光アレイの複数の受光素子それぞれの検出又は未検出によるビットパターンの組み合わせが、その角度位置の絶対位置を一義に表すことになる。なお、「絶対位置」とは、ディスク110の1回転内での原点に対する角度位置をいう。原点は、ディスク110の1回転内での適宜の角度位置に設定され、この原点を基準としてアブソリュートパターンが形成される。
【0031】
なお、このパターンの一例によれば、モータMの絶対位置を、受光アレイの受光素子数のビットにより、一次元的に表すようなパターンを生成できる。しかし、アブソリュートパターンは、この例に限定されるものではない。例えば、受光素子数のビットにより多次元的に表すパターンであってもよい。また、所定のビットパターン以外にも、受光素子で受光する光量や位相などの物理量が絶対位置を一義的に表すように変化するパターンや、アブソリュートパターンの符号系列が変調を施されたパターン等であってもよく、その他、様々なパターンであってもよい。
【0032】
なお、本実施形態では、同様のアブソリュートパターンが、測定方向Cで例えば1ビットの1/2の長さだけオフセットされて、2本のスリットトラックSA1,SA2として形成される。このオフセット量は、例えばスリットトラックSI1の反射スリットのピッチP1の半分に相当する。仮に、このようにスリットトラックSA1,SA2をオフセットさせた構成としない場合、次のような可能性がある。つまり、本実施形態のような一次元的なアブソリュートパターンにより絶対位置を表す場合、受光アレイPA1,PA2の各受光素子が反射スリットの端部近傍に対向して位置することによるビットパターンの変わり目の領域において、絶対位置の検出精度が低下する可能性がある。本実施形態では、スリットトラックSA1,SA2をオフセットさせるので、例えば、スリットトラックSA1による絶対位置がビットパターンの変わり目に相当する場合には、スリットトラックSA2からの検出信号を使用して絶対位置を算出したり、その逆を行うことにより、絶対位置の検出精度を向上できる。なお、このような構成とする場合、2つの受光アレイPA1,PA2における受光量を均一にする必要があるが、本実施形態では2つの受光アレイPA1,PA2を光源121からほぼ等距離に配置するので、上記構成を実現できる。
【0033】
なお、スリットトラックSA1,SA2の各アブソリュートパターン同士をオフセットさせる代わりに、例えば、アブソリュートパターン同士はオフセットさせずに、スリットトラックSA1,SA2それぞれに対応した受光アレイPA1,PA2同士を測定方向Cにオフセットさせてもよい。
【0034】
一方、スリットトラックSI1,SI2が有する複数の反射スリットは、測定方向Cでインクリメンタルパターンを有するように、ディスク110の全周に配置される。
【0035】
「インクリメンタルパターン」とは、
図4に示すように、所定のピッチで規則的に繰り返されるパターンである。ここで、「ピッチ」とはインクリメンタルパターンを有するスリットトラックSI1,SI2における各反射スリットの配置間隔をいう。
図4に示すように、スリットトラックSI1のピッチはP1であり、スリットトラックSI2のピッチはP2である。インクリメンタルパターンは、複数の受光素子による検出の有無それぞれをビットとして絶対位置を表すアブソリュートパターンと異なり、少なくとも1以上の受光素子による検出信号の和により、1ピッチ毎又は1ピッチ内のモータMの位置を表す。従って、インクリメンタルパターンは、モータMの絶対位置を表すものではないが、アブソリュートパターンに比べると非常に高精度に位置を表すことが可能である。
【0036】
本実施形態では、スリットトラックSI1のピッチP1は、スリットトラックSI2のピッチP2よりも長く設定される。本実施形態では、P1=2×P2となるように各ピッチが設定されている。すなわち、スリットトラックSI2の反射スリットの数はスリットトラックSI1の反射スリットの数の2倍となっている。しかしながら、このスリットピッチの関係は、この例に限定されるものではなく、例えば、3倍、4倍、5倍など様々な値を取り得る。
【0037】
なお、本実施形態では、スリットトラックSA1,SA2の反射スリットの測定方向Cにおける最小長さは、スリットトラックSI1の反射スリットのピッチP1と一致する。その結果、スリットトラックSA1,SA2に基づくアブソリュート信号の分解能は、スリットトラックSI1の反射スリットの数と一致する。しかしながら、最小長さは、この例に限定されるものではなく、スリットトラックSI1の反射スリットの数はアブソリュート信号の分解能と同じかそれよりも多く設定されることが望ましい。
【0038】
(2−2−2.光学モジュール)
光学モジュール120は、
図2及び
図5に示すように、ディスク110と平行な一枚の基板BAとして形成される。これにより、エンコーダ100を薄型化したり、光学モジュール120の製造を容易にすることが可能である。従って、ディスク110の回転に伴い、光学モジュール120は、スリットトラックSA1,SA2,SI1,SI2に対して測定方向Cで相対移動する。なお、光学モジュール120は必ずしも一枚の基板BAとして構成される必要はなく、各構成が複数の基板として構成されてもよい。この場合、それらの基板が集約して配置されていればよい。また、光学モジュール120は基板状でなくともよい。
【0039】
光学モジュール120は、
図2及び
図5に示すように、基板BAのディスク110と対向する面上に、光源121と、複数の受光アレイPA1,PA2,PI1,PI2とを有する。
【0040】
図3に示すように、光源121は、スリットトラックSI1とスリットトラックSI2との間に対向する位置に配置される。そして、光源121は、光学モジュール120の対向する位置を通過する4つのスリットトラックSA1,SA2,SI1,SI2の対向した部分に光を出射する。
【0041】
光源121としては、照射領域に光を照射可能な光源であれば特に限定されるものではないが、例えば、LED(Light Emitting Diode)が使用可能である。光源121は、特に光学レンズ等が配置されない点光源として構成され、発光部から拡散光を出射する。なお、「点光源」という場合、厳密な点である必要はなく、設計上や動作原理上、略点状の位置から拡散光が発せられるものとみなせる光源であれば、有限な出射面から光が発せられてもよい。また、「拡散光」は、点光源から全方位に向かって放たれる光に限定されず、有限の一定の方位に向かって拡散しつつ出射される光を含む。すなわち、ここでいう拡散光には、平行光よりも拡散性を有する光であれば含まれる。このように点光源を使用することにより、光源121は、対向した位置を通過する4つのスリットトラックSA1,SA2,SI1,SI2にほぼ均等に光を照射することが可能である。また、光学素子による集光・拡散を行わないので、光学素子による誤差等が生じにくく、スリットトラックへの光の直進性を高める事が可能である。
【0042】
複数の受光アレイPA1,PA2,PI1,PI2は、光源121の周囲に配置され、対応付けられたスリットトラックの反射スリットで反射された光を各々受光する複数の受光素子(
図5のドットハッチング部分)を有する。複数の受光素子は、
図5に示すように、測定方向Cに沿って並べられる。
【0043】
なお、光源121から出射される光は拡散光である。従って、光学モジュール120上に投影されるスリットトラックの像は、光路長に応じた所定の拡大率εだけ拡大されたものとなる。つまり、
図4及び
図5に示すように、スリットトラックSA1,SA2,SI1,SI2それぞれの幅方向Rの長さをWSA1,WSA2,WSI1,WSI2とし、それらの反射光が光学モジュール120に投影された形状の幅方向Rの長さをWPA1,WPA2,WPI1,WPI2とすると、WPA1,WPA2,WPI1,WPI2は、WSA1,WSA2,WSI1,WSI2のε倍の長さとなる。なお、本実施形態では、
図5に示すように、各受光アレイの受光素子の幅方向Rの長さは、各スリットが光学モジュール120に投影された形状とほぼ等しく設定されている例を示している。しかし、受光素子の幅方向Rの長さは、必ずしもこの例に限定されるものではない。例えば、受光アレイPA1,PA2について、各受光素子の幅方向Rの長さを異ならせてもよい。
【0044】
同様に、光学モジュール120における測定方向Cも、ディスク110における測定方向Cが光学モジュール120に投影された形状、つまり拡大率εの影響を受けた形状となる。理解が容易になるように、
図2に示すように光源121の位置における測定方向Cを例に挙げて、具体的に説明する。ディスク110における測定方向Cは、軸心AXを中心とした円状になる。これに対して、光学モジュール120に投影された測定方向Cの中心は、光源121が配置されたディスク110の面内位置である光学中心Opから距離εLだけ離隔した位置となる。距離εLは、軸心AXと光学中心Opとの間の距離Lが拡大率εで拡大された距離である。この位置を
図2では、概念的に測定中心Osとして示している。従って、光学モジュール120における測定方向Cは、光学中心Opから当該光学中心Opと軸心AXとが乗るライン上を軸心AX方向に距離εL離れた測定中心Osを中心とし、距離εLを半径とするライン上となる。
【0045】
図4及び
図5では、ディスク110及び光学モジュール120の各々における測定方向Cの対応関係を、円弧状のラインLcd,Lcpで表す。
図4に示すラインLcdは、ディスク110上の測定方向Cに沿った線を表す一方、
図5に示すラインLcpは、基板BA上の測定方向Cに沿った線(ラインLcdが光学モジュール120上に投影された線)を表す。
【0046】
図2に示すように、光学モジュール120とディスク110との間のギャップ長をGとし、光源121の基板BAからの突出量をΔdとした場合、拡大率εは、下記(式1)で示される。
ε=(2G−Δd)/(G−Δd) …(式1)
【0047】
1つ1つの受光素子としては、例えばフォトダイオードを使用することができる。但し、フォトダイオードに限定されるものではなく、光源121から出射された光を受光して電気信号に変換可能なものであれば、特に限定されるものではない。
【0048】
本実施形態における受光アレイは、4本のスリットトラックSA1,SA2,SI1,SI2に対応して配置される。受光アレイPA1は、スリットトラックSA1で反射した光を受光するように構成され、受光アレイPA2は、スリットトラックSA2で反射した光を受光するように構成される。また、受光アレイPI1は、スリットトラックSI1で反射した光を受光するように構成され、受光アレイPI2は、スリットトラックSI2で反射した光を受光するように構成される。
【0049】
光源121と、受光アレイPA1,PA2と、受光アレイPI1,PI2とは、
図5に示す位置関係に配置される。アブソリュートパターンに対応する受光アレイPA1,PA2は、幅方向Rにおいて光源121を間に挟んで配置される。この例では、受光アレイPA1は内周側、受光アレイPA2は外周側に配置される。本実施形態では、受光アレイPA1,PA2の各々と光源121との距離は略等しくなっている。つまり、受光アレイPA1,PA2は、(測定中心Osを中心とした湾曲した形状を除き)基本的には、光源121を通る幅方向R上の線および測定方向C上の線を対称軸とする、線対称形状に形成される。そして、受光アレイPA1,PA2が有する複数の受光素子は、それぞれ測定方向C(ラインLcp)に沿って一定のピッチで並べられる。受光アレイPA1,PA2では、それぞれスリットトラックSA1,SA2からの反射光が受光されることにより、受光素子数のビットパターンを有するアブソリュート信号が生成される。なお、受光アレイPA1,PA2は第1受光アレイの一例に相当する。
【0050】
インクリメンタルパターンに対応する受光アレイPI1は、受光アレイPA1(他方の第1受光アレイの一例)と光源121との間に配置される。また、インクリメンタルパターンに対応する受光アレイPI2は、受光アレイPA2(一方の第1受光アレイの一例)と光源121との間に配置される。受光アレイPI1は、受光アレイPI2よりも中心軸側に配置される。また、受光アレイPI1,PI2の各々と光源121との距離は略等しくなっている。つまり、受光アレイPI1,PI2は、(測定中心Osを中心とした湾曲した形状を除き)基本的には、光源121を通る幅方向R上の線および測定方向C上の線を対称軸とする、線対称形状に形成される。なお、受光アレイPI2は第2受光アレイの一例に相当し、受光アレイPI1は第3受光アレイの一例に相当する。
【0051】
本実施形態ではアブソリュートパターンとして一次元的なパターンを例示しているので、それに対応した受光アレイPA1,PA2は、対応付けられたスリットトラックSA1,SA2の反射スリットで反射された光を各々受光するように測定方向C(ラインLcp)に沿って並べられた複数(本実施形態では例えば9)の受光素子(第1受光素子の一例に相当)を有する。この複数の受光素子では、上述のとおり、1つ1つの受光又は非受光がビットとして扱われ、9ビットの絶対位置を表す。従って、複数の受光素子それぞれが受光する受光信号は、位置データ生成部130において相互に独立して取り扱われて、シリアルなビットパターンに暗号化(コード化)されていた絶対位置が、これらの受光信号の組み合わせから復号される。この受光アレイPA1,PA2の受光信号を、「アブソリュート信号」という。なお、本実施形態とは異なるアブソリュートパターンが使用される場合には、受光アレイPA1,PA2は、そのパターンに対応した構成となる。
【0052】
受光アレイPI1,PI2は、対応付けられたスリットトラックSI1,SI2の反射スリットで反射された光を各々受光するように測定方向C(ラインLcp)に沿って並べられた複数の受光素子を有する。まず、受光アレイPI1を例に挙げて説明する。
【0053】
本実施形態では、スリットトラックSI1のインクリメンタルパターンの1ピッチ(投影された像における1ピッチ。すなわちε×P1。)中に、合計4個の受光素子のセット(
図5に「SET1」で示す)が並べられ、かつ、4個の受光素子のセットが測定方向Cに沿って更に複数並べられる。そして、インクリメンタルパターンは、1ピッチ毎に反射スリットが繰り返し形成されるので、各受光素子は、ディスク110が回転する場合、1ピッチで1周期(電気角で360°という。)の周期信号を生成する。そして、1ピッチに相当する1セット中に4つの受光素子が配置されるので、1セット内の相隣接する受光素子同士は、相互に90°の位相差を有する周期信号を検出することになる。この各受光信号を、A相信号、B相信号(A相信号に対する位相差が90°)、Aバー相信号(A相信号に対する位相差が180°)、Bバー相信号(B相信号に対する位相差が180°)と呼ぶ。
【0054】
インクリメンタルパターンは1ピッチ中の位置を表すので、1セット中の各位相の信号と、それと対応した他のセット中の各位相の信号とは、同様に変化する値となる。従って、同一位相の信号は、複数のセットにわたって加算される。従って、
図5に示す受光アレイPI1の多数の受光素子からは、位相が90°ずつズレる4つの信号が検出されることとなる。
【0055】
一方、受光アレイPI2も、受光アレイPI1と同様に構成される。すなわち、スリットトラックSI2のインクリメンタルパターンの1ピッチ(投影された像における1ピッチ。すなわちε×P2。)中に、合計4個の受光素子のセット(
図5に「SET2」で示す)が並べられ、かつ、4個の受光素子のセットが測定方向Cに沿って複数並べられる。従って、受光アレイPI1,PI2から位相が90°ずつズレる4つの信号がそれぞれ生成される。この4信号を、「インクリメンタル信号」という。また、ピッチの短いスリットトラックSI2に対応する受光アレイPI2で生成されるインクリメンタル信号は、他のインクリメンタル信号に比べて高分解能であることから「高インクリメンタル信号」、ピッチの長いスリットトラックSI1に対応する受光アレイPI1で生成されるインクリメンタル信号は、他のインクリメンタル信号に比べて低分解能であることから「低インクリメンタル信号」という。
【0056】
なお、本実施形態では、インクリメンタルパターンの1ピッチに相当する1セットには受光素子が4つ含まれる場合を一例として説明するが、例えば1セットに2つの受光素子が含まれる等、1セット中の受光素子数は特に限定されるものではない。
【0057】
上述のように、受光アレイPA1,PA2では、複数の受光素子それぞれの検出又は未検出によるビットパターンが絶対位置を一義に表すことになる性質上、受光アレイPA1,PA2での受光量が変動すると絶対位置の誤検出が生じやすくなるので、受光量は均一であることが望ましい。しかし、光源121の光量は経年劣化等によって変動する場合がある。特に、光源121として例えばLEDを用いた場合には、光量が温度変化によって変動する性質がある。そこで、本実施形態では、
図5に示すように、光学モジュール120は、受光アレイPA1,PA2の受光量を調整するための2つの調整用受光素子PD(第2受光素子の一例に相当)を有する。この調整用受光素子PDの受光量(信号の振幅)に基づき、図示しない光源121の電流制御回路が、受光量が減少した場合には光源121への電流を増加し、受光量が増大した場合には光源121への電流を減少させることで、受光アレイPA1,PA2の受光量を略一定にすることが可能となる。
【0058】
2つの調整用受光素子PDは、測定方向Cにおいて受光アレイPI1の両側に配置される。つまり、調整用受光素子PDは、受光アレイPI1に対応したスリットトラックであるスリットトラックSI1で反射した光を受光するように構成される。そして、調整用受光素子PDは、測定方向Cの長さがスリットトラックSI1のインクリメンタルパターンの1ピッチ(投影された像における1ピッチ。すなわちε×P1。)の整数倍となるように形成される。これにより、各調整用受光素子PDにおける受光量が略一定となり、調整用受光素子PDの信号を受光量の調整に用いることが可能となる。なお、2つの調整用受光素子PDの各々について測定方向Cの長さを上記ピッチの整数倍としてもよいし、2つの調整用受光素子PDの測定方向Cの長さの合計が上記ピッチの整数倍となるようにしてもよい。
【0059】
なお、本実施形態では、2つの調整用受光素子PDを受光アレイPI1の両側に配置するようにしたが、調整用受光素子PDを1つとし、受光アレイPI1の片側に配置してもよい。また、調整用受光素子PDは必ずしも受光アレイPI1と同じトラックである必要はなく、受光アレイPI2と同じトラックとなるように配置してもよい。この場合、調整用受光素子PDは、測定方向Cの長さがスリットトラックSI2のインクリメンタルパターンの1ピッチ(投影された像における1ピッチ。すなわちε×P2。)の整数倍となるように形成される。
【0060】
(2−3.位置データ生成部)
位置データ生成部130は、モータMの絶対位置を測定するタイミングにおいて、光学モジュール120から、絶対位置を表すビットパターンをそれぞれ備えた2つのアブソリュート信号と、位相が90°ずつズレる4つの信号を含む高インクリメンタル信号及び低インクリメンタル信号とを取得する。そして、位置データ生成部130は、取得した信号に基づいて、これらの信号が表すモータMの絶対位置を算出し、算出した絶対位置を表す位置データを制御装置CTに出力する。
【0061】
なお、位置データ生成部130による位置データの生成方法は、様々な方法が使用可能であり、特に限定されるものではない。ここでは、高インクリメンタル信号及び低インクリメンタル信号とアブソリュート信号とから絶対位置を算出し位置データを生成する場合を例にとって説明する。
【0062】
図6に示すように、位置データ生成部130は、絶対位置特定部131と、第1位置特定部132と、第2位置特定部133と、位置データ算出部134とを有する。絶対位置特定部131は、受光アレイPA1,PA2からのアブソリュート信号のそれぞれを2値化し、絶対位置を表すビットデータに変換する。そして、予め定められたビットデータと絶対位置との対応関係に基づいて、絶対位置を特定する。
【0063】
一方、第1位置特定部132は、受光アレイPI1からの4つの位相それぞれの低インクリメンタル信号のうち、180°位相差の低インクリメンタル信号同士を相互に減算する。このように180°位相差のある信号を減算することで、1ピッチ内の反射スリットの製造誤差や測定誤差などを相殺可能である。上述のように減算された結果の信号を、ここでは「第1インクリメンタル信号」及び「第2インクリメンタル信号」という。この第1インクリメンタル信号及び第2インクリメンタル信号は相互に電気角で90°の位相差を有する(単に「A相信号」、「B相信号」などという。)。そこで、この2つの信号から、第1位置特定部132は、1ピッチ内の位置を特定する。この1ピッチ内の位置の特定方法は、特に限定されない。例えば、周期信号である低インクリメンタル信号が正弦波信号である場合には、上記特定方法の例として、A相及びB相の2つの正弦波信号の除算結果をarctan演算することにより電気角φを算出する方法がある。あるいは、トラッキング回路を用いて2つの正弦波信号を電気角φに変換する方法もある。あるいは、予め作成されたテーブルにおいてA相及びB相の信号の値に対応付けられた電気角φを特定する方法もある。なおこの際、第1位置特定部132は、好ましくは、A相及びB相の2つの正弦波信号を各検出信号毎にアナログ−デジタル変換する。
【0064】
位置データ算出部134は、絶対位置特定部131により特定された絶対位置に、第1位置特定部132により特定された1ピッチ内の位置を重畳する。これにより、アブソリュート信号に基づく絶対位置よりも高分解能な絶対位置を算出することができる。本実施形態では、この算出された絶対位置の分解能が、ピッチの短いスリットトラックSI2のスリット数と一致する。すなわち、この例では算出された絶対位置の分解能はアブソリュート信号に基づく絶対位置の分解能の2倍となる。
【0065】
一方、第2位置特定部133は、受光アレイPI2からの高インクリメンタル信号について、上述した第1位置特定部132と同様の処理を行い、2つの信号から1ピッチ内の高精度な位置を特定する。そして、位置データ算出部134は、上述の低インクリメンタル信号に基づいて算出された絶対位置に、第2位置特定部133により特定された1ピッチ内の位置を重畳する。これにより、低インクリメンタル信号に基づいて算出された絶対位置よりもさらに高分解能な絶対位置を算出することができる。
【0066】
位置データ算出部134は、このようにして算出した絶対位置を逓倍処理して分解能をさらに向上させた後、高精度な絶対位置を表す位置データとして制御装置CTに出力する。このように、分解能が相異なる複数の位置データから高分解能な絶対位置を特定する方法を、ここでは「積上げ方式」という。
【0067】
<3.本実施形態による効果の例>
本実施形態では、複数のスリットトラックが、一のインクリメンタルパターンを有するスリットトラックSI2と、他のインクリメンタルパターンよりもピッチの長いインクリメンタルパターンを有するスリットトラックSI1とを有し、受光アレイPI1は、そのピッチの長いスリットトラックSI1で反射した光を受光するように構成される。つまり、エンコーダ100は、ピッチの異なるインクリメンタルパターンを各々有する複数種類のスリットトラックSI1,SI2を有し、それらを受光するように構成された複数の受光アレイPI1,PI2を有する。これにより、受光アレイPI1の信号の逓倍処理と受光アレイPI2の信号の逓倍処理を積み上げる逓倍積上げ方式による高分解能な絶対位置を表す位置データを生成することが可能となるので、高い分解能を実現することができる。
【0068】
また、本実施形態では特に、次のような効果を得る。
図7に示すように、ディスク110の材質111の表面には微細な凹凸が多数存在し、これに起因して光源121から出射された光はディスク110での反射時に乱反射(散乱)を生じる。
【0069】
図8に、材質111の微細な凹凸における凸部112の形状の一例を概念的に示す。なお、
図8においては乱反射成分の各矢印の長さが強度の大きさを示している。
図8に示す例では、凸部112は、上面112aと、上面112aの周囲を取り囲む傾斜した側面112bとを有する。上面112aは比較的平坦な形状を有するので、斜め上方(この例ではY軸方向正側且つZ軸方向正側)からの入射光が照射される面積は大きいが、側面112bは傾斜しているので入射光が照射される面積は小さい。このため、入射光により生じる乱反射成分の強度は、
図8に示すように、上面112aにより散乱される前方散乱成分Lf、上方散乱成分Lu、及び後方散乱成分Lbは相対的に大きく、側面112bによって周囲方向に散乱する側方散乱成分Lsは相対的に小さくなる。また、前方散乱成分Lf、上方散乱成分Lu、後方散乱成分Lbのうち、正反射方向に散乱する前方散乱成分Lfの強度が最も大きくなり、上方へ散乱する上方散乱成分Lu及び入射光の進行方向に逆行して散乱する後方散乱成分Lbの強度は中程度(側方散乱成分Lsよりは大きい)となる。したがって、全体として乱反射成分の分布は、Y−Z平面に沿う方向が支配的となる。
【0070】
図9にX軸正方向から見た乱反射成分の強度分布を、
図10にZ軸正方向から見た乱反射成分の強度分布を示す。なお、
図9においては各矢印の長さが強度の大きさを示し、
図10においては点Eからの距離が強度の大きさを示している。上述した凸部112による乱反射により、多数の微細な凸部112が存在するディスク110の表面での乱反射成分の強度分布は、
図9及び
図10に示すように、光の進行方向を含む面(この例ではY−Z平面)に沿う方向に長い形状となり、全体としてY軸方向に指向性を有するものとなる。より詳細には、
図10に示すように、この乱反射成分の強度分布は、反射位置Eを中心として、光の進行方向に並べた2つの円を接続した略8の字状の分布となり、特に光の進行方向奥側の円が進行方向手前側の円よりも大きな分布形状となる。すなわち、光学モジュール120において光源121に対し同じ方向に2つの受光アレイを配置した場合、両受光アレイ間では、一方の受光アレイに到達すべき反射光における散乱光が他方の受光アレイに到達するなどクロストークが生じ、ノイズの原因となる。そして、光源121から離れた方の受光アレイは、光源121に近い方の受光アレイよりも互いの光の乱反射成分をより多く受光することになるので、より大きなノイズが生じることがある。
【0071】
一方、受光アレイPI2の信号は、エンコーダ100の分解能を最終的に決定するものであることから、受光アレイPI2へのノイズの乗り合いは極力小さくするのが好ましい。本実施形態では、受光アレイPI2が受光アレイPA1,PA2の一方(上記実施形態では受光アレイPA2)と光源121との間に配置される。これにより、上述の光の乱反射成分の強度分布に基づき、受光アレイPA2から受光アレイPI2への乱反射成分を低減し、受光アレイPI2に対してノイズが乗り合うことを抑制できる。
【0072】
また、本実施形態では、受光アレイPI2が受光アレイPA2と光源121との間に配置され、受光アレイPI1が受光アレイPA1,PA2の他方(上記実施形態では受光アレイPA1)と光源121との間に配置される。つまり、受光アレイPI1,PI2が、光源121を挟んで幅方向反対側にそれぞれ配置される。これにより、上述の光の乱反射成分の強度分布に基づき、受光アレイPI1から受光アレイPI2への乱反射成分を低減し、受光アレイPI2に対してノイズが乗り合うことを抑制できる。以上の結果、エンコーダ100の信頼性を向上することができる。
【0073】
また、本実施形態では、受光アレイPI2が受光アレイPA2と光源121との間に配置され、受光アレイPI1が受光アレイPA1と光源121との間に配置される。つまり、受光アレイPI1,PI2が、光源121を挟んで幅方向反対側にそれぞれ配置される。これにより、受光アレイPI1,PI2を、光源121を挟んで実質的に対称となるように配置することが可能となる。その結果、光学モジュール120が光源121を中心とする回転方向に位置ずれして配置されたり、ディスク110がシャフトSHに対して偏心して設置されたような場合に、受光アレイPI1,PI2の一方の信号は位相が進み、他方の信号は位相が遅れることとなる。これらの位相のずれ量は互いに等しくなることから、逓倍積み上げ処理を行う際に、両受光アレイPI1,PI2の信号の位相を補正することが可能となる。したがって、光学モジュール120が回転方向に位置ずれしたり、ディスク110が偏心して設置されたような場合でも、位置データの精度が低下するのを防止できる。
【0074】
また、本実施形態では特に、次のような効果を得る。上述のように、受光アレイPI1の信号の逓倍処理と受光アレイPI2の信号の逓倍処理を積み上げてエンコーダ100を高分解能化するには、両受光アレイPI1,PI2の信号の位相を一致させるために両受光アレイPI1,PI2を高精度に位置決めする必要がある。
【0075】
本実施形態では、受光アレイPI2が受光アレイPA2と光源121との間に配置され、受光アレイPI1が受光アレイPA1と光源121との間に配置される。つまり、受光アレイPI1,PI2が、2つの受光アレイPA1,PA2の内側に配置される。これにより、受光アレイPI1と受光アレイPI2とを近接して配置することが可能となるので、両受光アレイPI1,PI2を基板BAに形成する際や光学モジュール120をディスク110に対して位置決めする際の位置合わせがきわめて容易となり、エンコーダ100の製作性を大幅に向上できる。また、両受光アレイPI1,PI2を離して配置した場合に比べ、取付誤差(ディスク110の偏心等)、製造誤差による機械的な位置ずれによる影響を低減し、機械的な位置ずれに対するロバスト性を高めることができる。
【0076】
また、本実施形態では特に、次のような効果を得る。一般に受光アレイが光源121から離れて配置されるにつれ受光量は減少する。受光量を確保するために受光面積を大きくすると、各受光素子における接合容量が増大するので、信号の応答性が下がる。また、受光量が減少した場合に回路側でゲインを増大させたとしても、同様に信号の応答性が下がる。
【0077】
本実施形態のように、受光アレイPI1の信号の逓倍処理と受光アレイPI2の信号の逓倍処理を積み上げる場合、エンコーダ100の最終的な絶対位置の精度は、受光アレイPI2から出力される信号の応答性に比較的大きな影響を受ける。従って、受光アレイPI2の配置位置が精度向上において重要の要因となる。本実施形態では、受光アレイPI2が受光アレイPA2と光源121との間に配置される。これにより、比較的大きな影響を絶対位置の精度に与える受光アレイPI2を、光源121に近接させることが可能であるので、応答性を向上させることができる。また、精度が求められる受光アレイPI2の受光量を増大できるので、絶対位置の精度を向上できる。
【0078】
また、本実施形態では特に、次のような効果を得る。一般に、アブソリュートパターンを有するスリットトラックSA1,SA2に対応付けられた受光アレイPA1,PA2が出力するアブソリュート信号はインクリメンタル信号と異なり繰り返し信号(正弦波等)とはならないので、受光アレイPA1,PA2で受光すべき光の乱反射成分が受光アレイPI2又は受光アレイPI1で受光されることによるノイズは、フィルタによって低減することが難しい。このため、受光アレイPA1,PA2から受光アレイPI2又は受光アレイPI1にノイズが乗り合うことは極力回避されるのが好ましい。
【0079】
本実施形態では、受光アレイPI1,PI2が、アブソリュートパターンに対応した2つの受光アレイPA1,PA2の内側に配置される。これにより、上述の光の乱反射成分の強度分布に基づき、受光アレイPA1,PA2から受光アレイPI1,PI2に対してノイズが乗り合うことを抑制できる。特に、受光アレイPI2の信号は、エンコーダ100の分解能を最終的に決定するものであることから、当該受光アレイPI2へのノイズの乗り合いを抑制できることで、エンコーダ100の信頼性を向上することができる。
【0080】
また、本実施形態では特に、次のような効果を得る。光源121としてLED等を用いた場合、光源121は指向性が強い配光特性を有する場合がある。この場合、光源121の周囲における近傍領域では、反射光の光量(光強度)が比較的大きく変化するが、その外側の領域では、反射光の光量変化が比較的小さくなる。そして、アブソリュート信号を出力する2つの受光アレイPA1,PA2では、複数の受光素子それぞれの検出又は未検出によるビットパターンが絶対位置を一義に表すことになる。このような信号の性質上、各受光素子の受光量がばらつくと絶対位置の誤検出が生じやすくなるので、各受光素子の受光量は均一であることが望ましく、受光アレイPA1,PA2は光量変化が小さな領域に配置されるのが好ましい。
【0081】
本実施形態では、アブソリュートパターンに対応した2つの受光アレイPA1,PA2のそれぞれを、光源121との間に受光アレイPI1及び受光アレイPI2を挟んで配置する。これにより、受光アレイPA1,PA2を光源121より離隔させ、上述の光量変化が小さい領域に配置することが可能となる。その結果、受光アレイPA1,PA2が出力するアブソリュート信号の信頼性を向上できる。
【0082】
また、本実施形態では特に、次のような効果を得る。上述のように、2つの受光アレイPA1,PA2の各々が出力するアブソリュート信号は、複数の受光素子それぞれの検出又は未検出によるビットパターンが絶対位置を一義に表すことになる。一方、受光アレイPI1,PI2の各々が出力するインクリメンタル信号は、位相が対応する複数の受光素子による検出信号が加算されて1ピッチ内の位置を表す。このような信号の性質上、受光アレイPI1,PI2はノイズが平均化されることからノイズに対する耐性が比較的高くなるのに対し、受光アレイPA1,PA2はノイズに対する耐性が比較的低くなる。そして、光源121としてLED等を用いた場合、光源121近傍には時間的変動のない直流的ノイズ光が発生する。
【0083】
本実施形態では、アブソリュートパターンに対応した2つの受光アレイPA1,PA2のそれぞれを、光源121との間に受光アレイPI1及び受光アレイPI2を挟んで配置する。これにより、ノイズに対する耐性が高い受光アレイPI1,PI2を光源121に近接した位置に配置し、ノイズに対する耐性が低い受光アレイPA1,PA2を光源121から離れた位置に配置することができるので、上述の直流的ノイズ光によるノイズの影響を最低限に抑えることが可能となる。
【0084】
また、本実施形態では特に、次のような効果を得る。本実施形態では、受光アレイPA1,PA2から出力されるアブソリュート信号により特定された絶対位置を、受光アレイPI1の信号の逓倍処理と受光アレイPI2の信号の逓倍処理を積み上げることで、高分解能化する。このように、受光アレイPA1,PA2による絶対位置を受光アレイPI1の信号を用いて逓倍処理するには、アブソリュート信号を出力する受光アレイPA1,PA2と受光アレイPI1との信号の位相を一致させるために両受光アレイを高精度に位置決めする必要がある。
【0085】
本実施形態では、受光アレイPI1が受光アレイPA1と光源121との間に配置される。これにより、アブソリュート信号を出力する受光アレイPA1と受光アレイPI1とを近接して配置することが可能となるので、両受光アレイPA1,PI1を基板BAに形成する際や光学モジュール120をディスク110に対して位置決めする際の位置合わせがきわめて容易となり、エンコーダ100の製作性を大幅に向上できる。また、両受光アレイPA1,PI1を離して配置した場合に比べ、取付誤差(ディスク110の偏心等)、製造誤差による機械的な位置ずれによる影響を低減し、機械的な位置ずれに対するロバスト性を高めることができる。
【0086】
また、本実施形態では特に、次のような効果を得る。一般に、ディスク110の偏心による検出誤差はスリットトラックの半径に依存する性質があり、半径が小さいと誤差が大きくなり、半径が大きいと誤差が小さくなる。
【0087】
本実施形態では、受光アレイPI1が、受光アレイPI2よりも中心軸側に配置される。つまり、受光アレイPI2は受光アレイPI1よりも中心軸と反対側(つまり外周側)に配置され、ディスク110ではピッチが短い(つまりスリット数が多い)スリットトラックSI2が外周側に配置されることとなり、当該スリットトラックSI2の半径を大きくすることができる。その結果、受光アレイPI2の偏心による検出誤差を小さくでき、偏心に対するロバスト性を高めることができる。また、受光アレイPI2に対応したスリット数が多いスリットトラックSI2のピッチを大きく確保することが可能となる。
【0088】
また、本実施形態では特に、次のような効果を得る。上述のように、受光アレイPA1,PA2では、複数の受光素子それぞれの検出又は未検出によるビットパターンが絶対位置を一義に表すことになる性質上、受光量が変動すると絶対位置の誤検出が生じやすくなるので、受光量は均一であることが望ましい。しかし、光源121としてLED等を用いた場合、LEDの光量は温度変化等によって変動する性質がある。
【0089】
そこで、本実施形態では、受光アレイPA1,PA2の受光量を調整するための2つの調整用受光素子PDを設けている。この調整用受光素子PDの受光量(信号の振幅)に基づき、受光量が減少した場合には光源121の電流を増加し、受光量が増大した場合には光源121の電流を減少させることで、受光アレイPA1,PA2の受光量を略一定にすることが可能となる。したがって、受光アレイPA1,PA2の信号の信頼性を向上できる。
【0090】
また、本実施形態では、2つの調整用受光素子PDが測定方向Cにおいて受光アレイPI1の両側に配置される。つまり、調整用受光素子PDは、受光アレイPI1に対応したインクリメンタルパターンを有するスリットトラックSI1と同一のスリットトラックで反射した光を受光するように構成される。このようにしても、調整用受光素子PDの測定方向Cの幅を、受光アレイPI1の各受光素子の配置ピッチの整数倍とすることによって、調整用受光素子PDにおける受光量を略一定とすることができるので、調整用受光素子PDの信号を受光量の調整に用いることが可能である。これにより、受光量調整用のトラックをディスク110及び光学モジュール120に別途設けなくて済むので、エンコーダ100を小型化できる。
【0091】
また、本実施形態では、調整用受光素子PDを2つ設けることにより、1つの場合に比べて配置構成の自由度が高まるので、光学モジュール120の設計の自由度を向上できる。また、2つの調整用受光素子PDの位相を(例えば受光アレイPI1の各受光素子の1/2ピッチ。つまりε×P1×1/2)ずらすことにより、調整用受光素子PDでの受光量の変動をさらに低減することが可能となり、受光量の調整精度を向上できる。
【0092】
<4.変形例>
以上、添付図面を参照しながら一実施の形態について詳細に説明した。しかしながら、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲は、ここで説明した実施の形態に限定されるものではない。本実施形態の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、技術的思想の範囲内において、様々な変更や修正、組み合わせなどを行うことに想到できることは明らかである。従って、これらの変更や修正、組み合わせなどが行われた後の技術も、当然に技術的思想の範囲に属するものである。
【0093】
例えば、上記実施形態では、ディスク110にピッチの異なるインクリメンタルパターンを有する2つのスリットトラックSI1,SI2を設ける場合を説明したが、ピッチの異なるインクリメンタルパターンを有する3以上のスリットトラックを設けてもよい。この場合にも、積上げ方式により高い分解能を実現することができる。この際、例えば受光アレイPA1,PA2の少なくとも一方をインクリメンタル信号用に使用することも可能である。
【0094】
また、上記実施形態では、受光アレイPI1が光源121に対し中心軸側に配置される場合を一例として説明したが、例えば
図11に示すように、受光アレイPI1が光源121に対し中心軸と反対側(外周側)に配置されてもよい。図示は省略するが、この場合、ディスク110では、4本のスリットトラックが幅方向Rの内側から外側に向けて、SA1,SI2,SI1,SA2の順に配置されることになる。高インクリメンタル信号の偏心に対するロバスト性を高める場合には、上記実施形態の構成をとり、低インクリメンタル信号の偏心に対するロバスト性を高める場合には、当該構成をとることが望ましい。
【0095】
また、上記実施形態では、受光アレイPA1,PA2がそれぞれ9個の受光素子を有し、アブソリュート信号が9ビットの絶対位置を表す場合を説明したが、受光素子の数は9以外でもよく、アブソリュート信号のビット数も9に限定されない。また、受光アレイPI1,PI2の受光素子の数も、上記実施形態の数に特に限定されるものではない。
【0096】
また、上記実施形態では、エンコーダ100がモータMに直接連結される場合について説明したが、例えば減速機や回転方向変換機等の他の機構を介して連結されてもよい。
【0097】
また、上記実施形態では、受光アレイPA1,PA2がアブソリュート信号用の受光アレイである場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、受光アレイPA1,PA2は、各受光素子からの検出信号により原点位置を表す原点用の受光素子群であってもよい。この場合、ディスク110のスリットトラックSA1,SA2は、原点用のパターンを有して形成される。そして、受光アレイPA1,PA2からの受光信号のビットパターンや強度が原点位置を表すことになる。
【0098】
なお、以上の説明における「垂直」「平行」「等しい」とは、厳密な意味ではない。すなわち、「垂直」「平行」「等しい」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に垂直」「実質的に平行」「実質的に等しい」という意味である。