(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のコネクタは、前記端子抜止部には、前記一対のコネクタハウジングを嵌合状態にロックするロック部が設けられているものとしてもよい。このような構成によれば、ロック部と端子抜止部とを別々に設ける場合に比して、コネクタの構造を簡素化することができる。
【0010】
本発明のコネクタは、前記キャビティおよび前記ランスは、前記一対のコネクタハウジングの両方に設けられ、前記端子抜止部は、前記一対のコネクタハウジングのそれぞれに挿入可能とされ、前記係止解除部は、前記一対のコネクタハウジングのそれぞれに設けられているものとしてもよい。このような構成によれば、一対のコネクタハウジングを嵌合状態に保持したまま各端子抜止部を退避位置に移動させることで、各コネクタハウジングから端子金具を抜き取ることができるから、メンテナンス作業の際にコネクタを離間する必要がなく、もってメンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0011】
<実施例>
以下、本発明を具体化した一実施例について、
図1〜
図16を参照しつつ詳細に説明する。
本実施例におけるコネクタCは、互いに嵌合可能な雄側コネクタハウジング10および雌側コネクタハウジング40(一対のコネクタハウジング)を備えて構成され、両コネクタハウジング10,40は、その前面(正面)同士を対向させた状態で接近させることで嵌合される。以下、各構成部材において、両コネクタハウジング10,40における嵌合面側をそれぞれ前方とし、また、
図1の上側を上方、下側を下方として説明する。
【0012】
雄側コネクタハウジング(一方のコネクタハウジング)10は合成樹脂製であって、全体として前後方向に細長い形状をなしている。雄側コネクタハウジング10の後側部分は、
図2に示すように、内部に雄側端子金具30が保持される端子保持部11とされ、前側部分は、雌側コネクタハウジング40が内側に嵌合可能なコネクタ嵌合部12とされている。
【0013】
端子保持部11の内部には、後方から雄側端子金具30が挿入される雄側キャビティ13が1室形成されている。雄側キャビティ13は、後方に開放されるとともに前方が前壁によって塞がれた形態とされている。前壁には、雄側端子金具30のタブ部31を前方に挿通可能なタブ挿通孔14が前後方向に貫通して設けられている。タブ挿通孔14は、略方形をなしている。
【0014】
端子保持部11には、雄側キャビティ13に挿入された雄側端子金具30に係止してその抜け止めを図る雄側ランス15が設けられている。雄側ランス15は、雄側キャビティ13の内壁のうち下側の壁に沿うようにして形成されている。雄側ランス15は、雄側キャビティ13の前側部分に位置するように設けられている。雄側ランス15は、前後両端が支持された両持ち状のアーム部16の上面に、雄側端子金具30の第1係止部35に対して係止可能な抜け止め突部17が突設された形態をなしている。
【0015】
アーム部16は、後端部が下壁に連結支持されるとともに、前端部が前壁に連結支持されており、前後の支持部分を支点として上下方向に撓み変形可能とされている。アーム部16は、変形時には、長さ方向中央部分を最下端とした略弓形となる(
図16参照)。
【0016】
抜け止め突部17は、アーム部16の幅方向略中央に、雄側キャビティ13内に突出する形態で設けられている。抜け止め突部17の前面は、雄側端子金具30に係止する雄端子係止面18とされている。
【0017】
アーム部16のうち抜け止め突部17よりも前側の部分は、後述する係止解除部90によって下方(係止解除方向)に押圧される被押圧部19とされている。被押圧部19の上面は、係止解除部90が当接する当接面21とされ、当接面21は略半円形状の曲面をなしている(
図14参照)。被押圧部19の前端には、係止解除部90を当接面21側に案内する傾斜をなす解除部案内面22が形成されている(
図11参照)。
【0018】
雄側ランス15の前方には、端子保持部11の前面(以下、雄側嵌合面23と称する)に開放された形態をなして、後述する係止解除部90が前方から挿入される解除部挿入孔24が設けられている。
【0019】
コネクタ嵌合部12は、雄側嵌合面23の外周縁から角筒状をなして前方へ突出する形態とされている。
雄側端子金具30は前後方向に細長く成形され、前側から順に、雌側端子金具60に接続されるタブ部31、雄側コネクタハウジング10に係止される係止手段を備えた端子本体部32、および雄側電線33に接続される電線接続部34を備えている(
図2参照)。タブ部31は、雄側端子金具30が雄側キャビティ13に収容された状態ではコネクタ嵌合部12内に突出して配される。
【0020】
端子本体部32には、雄側コネクタハウジング10との係止手段として、雄側ランス15が係止する第1係止部35と、後述する雄側端子抜止部70が係止する第2係止部36とが設けられている。第1係止部35は、端子本体部32の外面に突設された突起である。第2係止部36は、端子本体部32の後端面の一部であり、後方から雄側端子抜止部70が係止可能とされている。
【0021】
雌側コネクタハウジング40は合成樹脂製であり、全体として前後方向に細長い箱形状とされ、雄側コネクタハウジング10のコネクタ嵌合部12に内嵌可能とされている。
【0022】
雌側コネクタハウジング40には、雌側端子金具60が後方から挿入される雌側キャビティ41が1室設けられている。雌側キャビティ41は、後方に開放されるとともに前方が前壁によって塞がれた形態とされている。前壁には、雄側端子金具30のタブ部31を前方から雌側キャビティ41に挿入可能なタブ挿入孔42が前後方向に貫通して設けられている。タブ挿入孔42は略方形をなし、その前端側には雌側キャビティ41にタブ部31を案内するべく拡開したタブ案内部43が形成されている。
【0023】
雌側コネクタハウジング40には、雌側キャビティ41に挿入された雌側端子金具60に係止してその抜け止めを図る雌側ランス44が設けられている(
図2参照)。雌側ランス44は、雌側キャビティ41の内壁のうち上側の壁に沿うようにして形成されている。雌側ランス44は、雌側キャビティ41の前側部分に位置するように設けられている。雌側ランス44は、雄側ランス15とほぼ同様の構成をなし、前後両端が支持された両持ち状のアーム部45と、雌側端子金具60の第1係止部65に対して係止可能な抜け止め突部46とを備え、抜け止め突部46の前面は、雌側端子金具60に係止する雌端子係止面47とされている。
【0024】
また、雄側ランス15と同様、アーム部45のうち抜け止め突部46よりも前側の部分は、後述する係止解除部90によって上方(係止解除方向)に押圧される被押圧部48とされ、被押圧部48の下面は、係止解除部90が当接する当接面49とされている。被押圧部48の前端には、雄側ランス15と同様に、係止解除部90を当接面49側に案内する傾斜をなす解除部案内面51が形成されている。
【0025】
雌側ランス44の前方には、雌側コネクタハウジング40の前面(以下、雌側嵌合面52と称する)に開放された形態をなして、後述する係止解除部90が前方から挿入される解除部挿入孔53が設けられている。
【0026】
雌側端子金具60は前後方向に細長く成形され、前側には、雄側端子金具30のタブ部31が接続されるタブ接続部61、後側には、雌側電線62が接続される電線接続部63を備えている(
図2参照)。タブ接続部61は、前方からタブ部31が挿入可能な角筒状をなし、その内部にはタブ部31に対して弾性的に接触する弾性接触片64が収容されている。また、タブ接続部61には、雌側コネクタハウジング40との係止手段として、雌側ランス44が係止する第1係止部65と、後述する雌側端子抜止部80が係止する第2係止部66とが設けられている。第1係止部65は、タブ接続部61の外面に突設された突起である。第2係止部66は、タブ接続部61の後端面の一部であり、後方から雌側端子抜止部80が係止可能とされている。
【0027】
コネクタCには、雄側端子金具30を抜け止め可能な雄側端子抜止部70と、雌側端子金具60を抜け止め可能な雌側端子抜止部80とが設けられている。雄側端子抜止部70および雌側端子抜止部80はいずれも雄側コネクタハウジング10に一体に設けられている。なお、雄側端子抜止部70および雌側端子抜止部80は、ほぼ同形状をなしている。
【0028】
雄側端子抜止部70は、全体として、雄側コネクタハウジング10の下面に対して板面が略直角をなす向きで形成された板状をなしている。雄側端子抜止部70は、ヒンジ部71を介して雄側コネクタハウジング10の下面側に一体形成され、ヒンジ部71を略支点として、その大部分が雄側コネクタハウジング10内に収容された状態になる閉鎖位置(
図3参照)と、大部分が雄側コネクタハウジング10の外部下方へ突出した状態になる開放位置(
図10参照)との間で、上下方向に揺動し得るようになっている。
【0029】
雄側端子抜止部70は、端子保持部11に形成された雄側開口部25を通って閉鎖位置と開放位置との間を揺動する。雄側開口部25は、端子保持部11のうち雄側ランス15よりも後側の部分に形成されている(
図3参照)。雄側開口部25は、雄側コネクタハウジング10の幅方向の略中央において前後方向に細長い形状に形成され、雄側キャビティ13と端子保持部11の外部とを連通している。雄側開口部25の幅寸法は、雄側端子金具30の端子本体部32の幅寸法よりも若干小さくされ、雄側端子金具30が、雄側開口部25側に変位することを防止している(
図8参照)。
【0030】
雄側開口部25の両側には、一対の側壁部25Sが設けられている(
図11参照)。一対の側壁部25Sは、雄側開口部25の全長にわたり連続して設けられた壁状をなしている。一対の側壁部25Sの内側(対向する側)には、後述する雄側端子抜止部70に設けられた雄側係止突起73が係止可能な雄側係止受け部26が突設されている(
図14参照)。
【0031】
雄側係止受け部26は、各側壁部25Sの下端縁に沿って設けられている。雄側係止受け部26の下面側は、雄側端子抜止部70に設けられた雄側係止突起73を上側にスムーズに誘い込むべく傾斜する誘導面26Yとされ、上面側は雄側係止突起73が係止する係止受け面26Uとされている。係止受け面26Uは、上下方向に対して略垂直な水平面とされている。
【0032】
雄側端子抜止部70は、雄側コネクタハウジング10に対して、雄側キャビティ13内に進入し雄側端子金具30を抜け止めする進入位置(
図3参照)と、雄側キャビティ13から退避して雄側端子金具30の抜け止めを解除する退避位置(
図7参照)とに段階的に保持可能とされている。なお、雄側端子抜止部70の進入位置は閉鎖位置と同じ位置である。
【0033】
雄側端子抜止部70は、自然状態(力を加えていない状態)では開放位置に配され、雄側端子抜止部70に上向きの力を加えることで、開放位置から退避位置、退避位置から進入位置(閉鎖位置)に弾性変位するものとされている。
雄側端子抜止部70には、雄側コネクタハウジング10の係止受け面26Uに係止して雄側端子抜止部70を進入位置に保持する進入位置用係止突起73Sと、雄側コネクタハウジング10の係止受け面26Uに係止して雄側端子抜止部70を退避位置に保持する退避位置用係止突起73Tとがそれぞれ設けられている。
【0034】
進入位置用係止突起73Sおよび退避位置用係止突起73Tは、雄側端子抜止部70の両側面(両板面)に設けられている。いずれの雄側係止突起73S,73Tも、その上面側は雄側係止受け部26を容易に乗り越えるべく傾斜する傾斜面74、下面側は、雄側係止受け部26の係止受け面26Uに係止する係止面75とされている(
図8参照)。
【0035】
雄側端子抜止部70が進入位置に押し込まれたときには、
図5に示すように、進入位置用係止突起73Sの係止面75が雄側係止受け部26の係止受け面26Uに対して下向きに作用する弾性復元力により弾性的に当接し、雄側コネクタハウジング10に対して進入位置に組み付けられた状態に保持される。また、雄側端子抜止部70が退避位置に引き下げられたときには、
図8に示すように、退避位置用係止突起73Tの係止面75が雄側係止受け部26の係止受け面26Uに対して下向きに作用する弾性復元力により弾性的に当接し、雄側コネクタハウジング10に対して退避位置に組み付けられた状態に保持される。
【0036】
雄側端子抜止部70は、
図4に示すように、進入位置に保持された状態で、雄側端子金具30の第2係止部36の後側に位置して雄側端子金具30の抜け止めをする抜止面76を備えている。抜止面76は、雄側端子抜止部70が進入位置に保持されているときには、前後方向(雄側端子金具30の挿抜方向)に対して垂直をなしている。また、抜止面76は、
図7に示すように、雄側端子抜止部70が退避位置に保持された状態では、雄側キャビティ13から下側へ退避して雄側端子金具30の第2係止部36よりも下方(雄側ランス15および端子保持部11の下壁と同等の高さ位置)に配される。
【0037】
雄側端子抜止部70の前端部(ヒンジ部71とは反対側の端部)には、雄側端子抜止部70を進入位置から退避位置へ、また退避位置から開放位置へ揺動させる際に、指を引っ掛けることが可能な雄側指掛け部72が設けられている。雄側指掛け部72は、前方に向かって下がる(雄側コネクタハウジング10の下面から離れる)傾斜をなす面である。
【0038】
雌側端子抜止部80は、雄側端子抜止部70と同様、全体として、雄側コネクタハウジング10の上面に対して板面が略直角をなす向きで形成された板状をなしている。雌側端子抜止部80は、雄側端子抜止部70と同様、ヒンジ部81を介して雄側コネクタハウジング10の上面側に一体形成され、ヒンジ部81を略支点として、その大部分が雄側コネクタハウジング10のコネクタ嵌合部12に収容された状態になる閉鎖位置(
図4参照)と、大部分が雄側コネクタハウジング10の外部上方へ突出した状態になる開放位置(
図11参照)との間で、上下方向に揺動し得るようになっている。
【0039】
雌側端子抜止部80は、コネクタCの嵌合状態では、コネクタ嵌合部12に形成された雌側開口部27、および雌側コネクタハウジング40に形成された切欠部54を通って閉鎖位置と開放位置との間を揺動する。
【0040】
雌側開口部27は、コネクタ嵌合部12の前側部分に形成されている。雌側開口部27は、雄側コネクタハウジング10の幅方向の中央において前後方向に細長い形状に形成され、コネクタ嵌合部12の内部と外部とを連通している。
【0041】
雌側開口部27の両側には、一対の側壁部27Sが設けられている。一対の側壁部27Sは、雌側開口部27の全長にわたり連続して設けられた壁状をなしている。一対の側壁部27Sの内側(対向する側)には、雌側端子抜止部80に設けられた雌側係止突起83が係止可能な雌側係止受け部28が突設されている(
図9参照)。雌側係止受け部28は、各側壁部27Sの上端縁に沿って設けられている。雌側係止受け部28の上面側は、雌側端子抜止部80に設けられた雌側係止突起83を下側にスムーズに誘い込むべく傾斜する誘導面28Yとされ、下面側は雌側係止突起83が係止する係止受け面28Uとされている。係止受け面28Uは、上下方向に対して略垂直な水平面とされている。
【0042】
切欠部54は、雌側コネクタハウジング40のうち雌側ランス44よりも後側の部分に形成されている(
図2参照)。切欠部54は、雌側コネクタハウジング40の幅方向の中央において前後方向に細長い形状に形成され、雌側コネクタハウジング40の外部と雌側キャビティ41とを連通している。切欠部54は、雌側コネクタハウジング40の後端面および上面に開口している。切欠部54のうち下側(雌側キャビティ41側)の部分は、
図6に示すように、雌側開口部27よりも幅寸法が小さくされている。切欠部54の下側部分の幅寸法は、雌側端子抜止部80のうち後述する雌側係止突起83を除いた部分の幅寸法(板厚寸法)と同等とされている。切欠部54の下側部分の幅寸法は雌側端子金具60の幅寸法よりも小さく、雌側端子金具60が、切欠部54側に変位することを防止している。なお、切欠部54の上側部分は、上方に向かって拡開する形状とされ、上端においては雌側開口部27の幅寸法と同等の幅寸法を有している。
【0043】
雌側端子抜止部80は、雄側コネクタハウジング10に嵌合された雌側コネクタハウジング40に対し、雌側キャビティ41内に進入して雌側端子金具60を抜け止めする進入位置(
図4参照)と、雌側キャビティ41から退避して雌側端子金具60の抜け止めを解除するとともに雌側コネクタハウジング40のロック受け面(後面)55に係止して雌側コネクタハウジング40を嵌合状態にロックする退避位置(
図7参照)とに段階的に保持可能とされている。なお、雌側端子抜止部80の進入位置は閉鎖位置と同じ位置である。
【0044】
雌側端子抜止部80は、自然状態(力を加えていない状態)では開放位置に配され、雌側端子抜止部80に下向きの力を加えることで、開放位置から退避位置、退避位置から進入位置(閉鎖位置)に弾性変位するものとされている。
【0045】
雌側端子抜止部80には、雄側コネクタハウジング10の係止受け面28Uに係止して雌側端子抜止部80を進入位置に保持する進入位置用係止突起83Sと、雄側コネクタハウジング10の係止受け面28Uに係止して雌側端子抜止部80を退避位置に保持する退避位置用係止突起83Tとがそれぞれ設けられている。
【0046】
進入位置用係止突起83Sおよび退避位置用係止突起83Tは、雌側端子抜止部80の両側面(両板面)に設けられている。いずれの雌側係止突起83S,83Tも、その下面側は雌側係止受け部28を容易に乗り越えるために傾斜する傾斜面84、上面側は、雌側係止受け部28の係止受け面28Uと係止する係止面85とされている(
図9参照)。また、いずれの雌側係止突起83S,83Tも、雄側端子抜止部70に設けられた雄側係止突起73に比して突出高さが大きくされている。なお、必ずしも雌側係止突起83S,83Tは雄側係止突起73に比して突出高さが大きくなくてもよく、例えば雌側係止突起83S,83Tは雄側係止突起73と同等の突出高さを有するものとしてもよい。
【0047】
雌側端子抜止部80が進入位置に配されたときには、
図6に示すように、進入位置用係止突起83Sの係止面85が雌側係止受け部28の係止受け面28Uに対して上向きに作用する弾性復元力により弾性的に当接し、雌側コネクタハウジング40に対して進入位置に組み付けられた状態に保持される。また、雌側端子抜止部80が退避位置に配されたときには、
図9に示すように、退避位置用係止突起83Tの係止面85が雌側係止受け部28の係止受け面28Uに対して上向きに作用する弾性復元力により弾性的に当接し、雌側コネクタハウジング40に対して退避位置に組み付けられた状態に保持される。
【0048】
雌側端子抜止部80の後端部(ヒンジ部81とは反対側の端部)には、雌側端子抜止部80を進入位置から退避位置へ、また退避位置から開放位置へ揺動させる際に、指を引っ掛けることが可能な雌側指掛け部82が設けられている(
図7参照)。雌側指掛け部82は、後方に向かって上がる(雄側コネクタハウジング10の上面から離れる)傾斜をなす傾斜面である。
【0049】
なお、雄側係止受け部26と雄側係止突起73との係止、および雌側係止受け部28と雌側係止突起83との係止はいずれもセミロック構造であるから、各係止受け部26A,28Aと各係止突起73,83との係止力を上回る力を雄側端子抜止部70または雌側端子抜止部80に付与することで、係止状態を解除することができる。
【0050】
雌側端子抜止部80は、雄雌両コネクタハウジング10,40を嵌合状態にロックするためのロック機能と、雌側コネクタハウジング40内に挿入された雌側端子金具60を抜止めするための抜止め機能とを兼ね備えている。
【0051】
雌側端子抜止部80は、
図4に示すように、進入位置に保持された状態で、雌側端子金具60の第2係止部66および雌側コネクタハウジング40の切欠部54の後面(ロック受け面55)の後側に配され、雌側端子金具60の抜け出し、および雌側コネクタハウジング40の離脱を防ぐ抜止面(ロック部)86を備えている。抜止面86は、雌側端子抜止部80が進入位置にあるときには、前後方向(雄側端子金具30の挿抜方向および雌側コネクタハウジング40の離脱方向)に対して略垂直をなしている。
【0052】
抜止面86は、
図7に示すように、雌側端子抜止部80が退避位置に保持された状態では、雌側キャビティ41から上側へ退避して雌側端子金具60の第2係止部66よりも上方に至り、ロック受け面55のみの後側に配される。これにより、雌側端子金具60の抜き取りが可能になるとともに両コネクタハウジング10,40は嵌合状態にロックされたままの状態になる。
【0053】
さて、雄側コネクタハウジング10および雌側コネクタハウジング40には、両コネクタハウジング10,40の嵌合時に、相手側に進入して相手側のランス15、44を強制的に係止解除状態に移行させる係止解除部90が設けられている。なお、以下では、係止解除部90のうち雄側コネクタハウジング10に設けられたものを雄側係止解除部90M、雌側コネクタハウジング40に設けられたものを雌側係止解除部90Fと称する。
【0054】
雄雌係止解除部90M,90Fは、それぞれ雄側嵌合面23および雌側嵌合面52から片持ち状をなして前方に突出している。雄雌係止解除部90M,90Fは、雄側嵌合面23および雌側嵌合面52に対して略垂直をなしている。雄雌係止解除部90M,90Fはいずれも、前後方向に細長い(幅寸法よりも前後方向の寸法が大きい)棒状であるとともに薄い(幅寸法よりも上下方向の寸法が小さい)板状に形成されている。雄雌係止解除部90M,90Fは、上下方向に弾性変形可能とされている。
【0055】
雄側係止解除部90Mは、雌側コネクタハウジング40の解除部挿入孔53に対応する位置に設けられ、雌側係止解除部90Fは、雄側コネクタハウジング10の解除部挿入孔24に対応する位置に設けられている。雄側係止解除部90Mは、タブ挿通孔14の上側に設けられ、雌側係止解除部90Fは、タブ挿入孔42の下側に設けられている。
【0056】
雄雌係止解除部90M,90Fのうち雄側ランス15または雌側ランス44との接触面91(雄側係止解除部90Mにおいては上面、雌側係止解除部90Fにおいては下面)は雄側ランス15または雌側ランス44の当接面21,49に沿う曲面形状とされている(
図1および
図4参照)。なお、各係止解除部90M,90Fの接触面91の先端部には、テーパ部92が形成されている。
【0057】
また、各係止解除部90M,90Fのうち接触面91とは反対側の面は全体にわたって平坦な面とされ、その先端部には、相手側のランス15、44と相手側の端子金具30,60との間に各係止解除部90M,90Fの先端部がスムーズに差し込まれるべく傾斜した差込案内面93が形成されている。
【0058】
次に、コネクタCの嵌合作業の一例について説明する。
まず、雄側コネクタハウジング10に雄側端子金具30を、雌側コネクタハウジング40に雌側端子金具60をそれぞれ挿入して保持させる。
図7に示すように、雄側端子抜止部70を退避位置に保持した状態で、雄側キャビティ13に雄側端子金具30を挿入する。雄側端子金具30が正規の位置に挿入されると、雄側端子金具30の第1係止部35に雄側ランス15が係止して抜け止め状態に保持される。次いで、
図2に示すように、雄側端子抜止部70を進入位置に押し込むと、雄側端子抜止部70の抜止面76が雄側端子金具30の第2係止部36に係止し、雄側端子抜止部70は二重に抜け止めされた状態になる。なお、雄側端子金具30を雄側キャビティ13に挿入する際には、雄側端子抜止部70を開放位置にしておいてもよい。
【0059】
また、雌側コネクタハウジング40の雌側キャビティ41に雌側端子金具60を挿入する。雌側端子金具60が正規の位置に挿入されると、
図2に示すように、雌側端子金具60の第1係止部65に雌側ランス44が係止して抜け止め状態に保持される。このとき、雌側端子金具60の第2係止部66は、雌側コネクタハウジング40のロック受け面55と前後方向の位置がほぼ同じ位置に配置される。つまり、ロック受け面55と第2係止部66とが、上下にほぼ面一状に並ぶように配置される。
【0060】
次に、雄側コネクタハウジング10と雌側コネクタハウジング40とを嵌合する。
図2に示すように、雌側端子抜止部80を開放位置に配した状態で、コネクタ嵌合部12内に雌側コネクタハウジング40を嵌入する。すると、雌側コネクタハウジング40は、雌側端子抜止部80と干渉することなく、雄側コネクタハウジング10に対して前進し、やがて、雄側端子金具30のタブ部31が雌側端子金具60のタブ接続部61内への進入を開始する。その後、両コネクタハウジング10,40の嵌合面23,52にそれぞれ設けられた雄雌係止解除部90M,90Fが相手側の解除部挿入孔24,53への挿入を開始し、先端に設けられたテーパ部92が相手側ランス15,44の解除部案内面22,51に接触し、また先端に設けられた差込案内面93が相手側端子金具30,60に接触することで、相手側ランス15,44と相手側端子金具30,60との間にスムーズに案内される。そして、雄雌係止解除部90M,90Fは、相手側端子金具30,60の第2係止部36,66に沿って斜めに変形しながら、相手側ランス15,44の当接面21,49を係止解除方向に押圧し、相手側ランス15,44を強制的に係止解除方向に変位させる。両コネクタハウジング10,40が正規の嵌合状態に至ると、
図16に示すように、係止解除部90M,90Fによって、雄雌ランス15,44と雄雌端子金具30,60とが完全に係止解除された状態になる。このとき、雄側端子金具30のタブ部31は雌側端子金具60のタブ接続部61内に進入して弾性接触片64と接触し、両端子金具30,60が電気的に接続した状態になる。また、
図3に示すように、雌側コネクタハウジング40の切欠部54とコネクタ嵌合部12の雌側開口部27とが、上下方向に連通する位置に配される。
【0061】
次いで、雌側端子抜止部80を開放位置から進入位置へ揺動させる。雌側端子抜止部80を下方に押し込むと、
図4に示すように、雌側端子抜止部80の抜止面86が、雌側開口部27および切欠部54に突入して、雌側キャビティ41内に突出する。そして、抜止面86は、雌側コネクタハウジング40のロック受け面55および雌側端子金具60の第2係止部66の後方に接近して対向した状態になる。これにより、両コネクタハウジング10,40は正規の嵌合状態にロックされ、また雌側端子金具60は抜け止めされた状態になる。
以上により、両コネクタハウジング10,40の嵌合作業が完了する。
【0062】
次に、コネクタCのメンテナンス作業における雄側端子金具30および雌側端子金具60の抜き取り作業の一例を説明する。
雄側端子金具30を抜き取る場合には、雄側端子抜止部70を進入位置から退避位置に揺動させる。雄側指掛け部72に指を引っ掛けて下向きの力を加えると、進入位置用係止突起73Sが雄側係止受け部26から外れ、雄側端子抜止部70は弾性復元力によって揺動し退避位置に至る。すると、退避位置用係止突起73Tが雄側係止受け部26に係止し、雄側端子抜止部70は退避位置に保持される(
図7参照)。これにより、雄側端子抜止部70による雄側端子金具30の抜け止め状態は解除されるので、雄側端子金具30を抜き取ることができる。
【0063】
また、雌側端子金具60を抜き取る場合には、雌側端子抜止部80を進入位置から退避位置に揺動させる。雌側指掛け部82に指を引っ掛けて上向きの力を加えると、進入位置用係止突起83Sが雌側係止受け部28から外れ、雌側端子抜止部80は弾性復元力によって揺動し退避位置に至る。すると、退避位置用係止突起83Tが雌側係止受け部28に係止し、雌側端子抜止部80は退避位置に保持される。これにより、雌側端子抜止部80による雄側端子金具30の抜け止め状態が解除されるので、雌側端子金具60を抜き取ることができる。このとき、雌側端子抜止部80の抜止面86によって両コネクタハウジング10,40は嵌合状態にロックされている。
【0064】
以上のように、雄側端子抜止部70および雌側端子抜止部80の各指掛け部72,82に指を引っ掛けて、下向きまたは上向きの力を作用させるだけの簡単な動作で、両端子金具30,60の抜き取りが可能となるから、両端子金具30,60の抜き取り作業を容易に行うことができる。
【0065】
次に、上記のように構成された本実施例の作用および効果について説明する。
本実施例のコネクタCは、互いに嵌合可能な雄側コネクタハウジング10と雌側コネクタハウジング40とを有し、両コネクタハウジング10,40には、それぞれ雄側端子金具30または雌側端子金具60が挿入される雄側キャビティ13または雌側キャビティ41が設けられている。また、両コネクタハウジング10,40には、それぞれ雄側キャビティ13または雌側キャビティ41に挿入された雄側端子金具30または雌側端子金具60に係止してその抜け止めを図る雄側ランス15または雌側ランス44が設けられている。そして、両コネクタハウジング10,40には、雄側キャビティ13または雌側キャビティ41内に進入して雄側端子金具30または雌側端子金具60を抜け止めする進入位置と、雄側キャビティ13または雌側キャビティ41から退避して雄側端子金具30または雌側端子金具60の抜け止めを解除する退避位置とに移動可能である雄側端子抜止部70または雌側端子抜止部80が挿入可能とされている。また、両コネクタハウジング10,40には、両コネクタハウジング10,40の嵌合時に、相手側に進入して相手側ランス15,44をそれぞれ係止解除状態に移行させる係止解除部90M,90Fがそれぞれ設けられている。
【0066】
この構成によれば、両コネクタハウジング10,40を嵌合状態に保持したまま、雄側端子抜止部70および雌側端子抜止部80を退避位置に移動させることで雄側端子金具30および雌側端子金具60を抜き取ることができるから、メンテナンス作業の際に、コネクタCを離間する必要がなく、もってメンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0067】
また、雌側端子抜止部80には、両コネクタハウジング10,40を嵌合状態にロックするロック部が設けられている。この構成によれば、ロック部と端子抜止部とを別々に設ける場合に比して、コネクタCの構造を簡素化することができる。
【0068】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例では、本発明を、両コネクタハウジング10,40のいずれにもキャビティ13,41およびランス15,44が設けられた形態のコネクタCに適用した場合について説明したが、本発明は、いずれか一方のコネクタハウジングのみにキャビティおよびランスが設けられた形態のコネクタであっても適用することができ、そのような場合には、他方のコネクタハウジングは、例えば端子金具がコネクタハウジングに圧入等により保持された形態のものであってもよい。
(2)上記実施例では、雄側コネクタハウジング10および雌側コネクタハウジング40のいずれにも係止解除部90が設けられているが、これに限らず、一対のコネクタハウジングの一方のみに係止解除部を設けるものとしてもよい。
(3)上記実施例では、雄側端子抜止部70および雌側端子抜止部80がいずれも雄側コネクタハウジング10に一体に設けられているが、これに限らず、例えば、雄側端子抜止部は雄側コネクタハウジングに、雌側端子抜止部は雌側コネクタハウジングにそれぞれ一体に設けられたものとしてもよい。
(4)上記実施例では、雄側端子抜止部70および雌側端子抜止部80がいずれも雄側コネクタハウジング10に一体に設けられているが、これに限らず、例えば雄側端子抜止部および雌側端子抜止部は、ともに雄側コネクタハウジングおよび雌側コネクタハウジングとは別体であってもよい。
(5)上記実施例では、雄側端子抜止部70および雌側端子抜止部80は、それぞれヒンジ部71,81を支点として揺動するものとされているが、これに限らず、例えば雄側端子抜止部および雌側端子抜止部は、スライド移動するものであってもよい。
(6)上記実施例では、雌側端子抜止部80がロック機能を備えているが、これに限らず、雄側端子抜止部がロック機能を備えるものとしてもよい。
(7)上記実施例では、雌側端子抜止部80がロック機能を備えているが、これに限らず、雄側端子抜止部および雌側端子抜止部とは別に、ロック機構を設けるものとしてもよい。
(8)上記実施例では、極数(雄側端子金具と雌側端子金具とによる導電路の数)が1極である場合について説明したが、本発明は、極数が複数極である場合にも適用することができる。