(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6128454
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】手押し台車
(51)【国際特許分類】
B62B 5/00 20060101AFI20170508BHJP
【FI】
B62B5/00 J
B62B5/00 Z
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-180983(P2016-180983)
(22)【出願日】2016年8月30日
【審査請求日】2016年8月30日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391014125
【氏名又は名称】森田 壽郎
(72)【発明者】
【氏名】森田 壽郎
【審査官】
林 政道
(56)【参考文献】
【文献】
実開平02−017476(JP,U)
【文献】
実開昭56−083464(JP,U)
【文献】
実開昭53−137471(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 1/00− 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物積載用台板の下面に少なくとも4個の走行用車輪を設け、前記荷物積載用台板上に積んだ荷物を人間が押すか、あるいは前記荷物積載用台板上に設けた手押し用フレームを人間が押すことで荷物を搬送する手押し台車であって、前記走行用車輪のうち全部または一部が鉛直軸周りに回動可能なように構成してあることで、荷物搬送時の人間の左右の押し力の入れ方次第で意のままに手押し台車の走行方向を制御できるよう構成された手押し台車において、荷物積載用台板の進行方向前方の少なくとも2か所の角部に、各々水平面内で回動する車輪(以下「水平車輪」という)を設け、当該水平車輪の転動面が荷物積載用台板の角部よりも外側に突き出るように構成するとともに、当該水平車輪を設けたのとは反対側の前記荷物積載用台板の進行方向後方側縁部に、人間が握れる取っ手を設け、荷物なしで手押し台車のみを搬送する際には、スペースをとらないよう荷物積載用台板を縦にして前記「水平車輪」が下側に、前記取っ手が上側に来るようにすれば、当該取っ手を人間が持って前記「水平車輪」を走行輪として台車を少ない力で搬送可能なよう構成し、台板を縦にして取っ手を上にした状態において、水平車輪の片方あるいは両方を鉛直軸周りに回動自在な回動自在車輪として構成し、カーブを切る際に手押し台車をいちいち持ち上げなくても、搬送する人間の左右方向の曲がり方に倣って水平車輪がステアリングされるよう構成するとともに、荷物積載用台板を水平にした通常の搬送姿勢においては、水平車輪が水平の姿勢を保つよう前記回動自在車輪には、バネで回動の原点位置(回動自在車輪の車輪回転面が荷物積載用台板の平面と平行の位置)に復帰するよう構成したことを特徴とする手押し台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷物の搬送等に用いられる手押し台車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
引っ越し荷物搬送、工場・店舖・オフィスビルなどにおける荷物の搬送においては、トラック等の荷台と、荷物の保管場所との間の搬送手段などとして手押し台車が良く用いられる。
【0003】
特許文献1では、4つの車輪を具備した手押し台車の2つの前輪を傾動自在なプレートに取り付けることで走行中に車輪が路面から離れたり着地したりすることで発生する騒音を防止する手押し台車が開示されている。
【0004】
ところが、このような手押し台車は搬送中に荷物積載用台板の角部を、建物の壁、エレベータの内壁などに接触させてしまうことがあり、搬送する荷物の重量が大きいと慣性のため搬送作業者が台車の走行方向をコントロールするのが困難となって、荷物積載用台板の角部と壁面等の接触事故が生じやすく、壁面等との接触事故が生じてしまうと結構大きな慣性力がかかった状態で滑り接触するので、壁面を大きく損傷させてしまうことがある。とくに、手押し台車に体積の大きい荷物を載せていると搬送作業者の視線から荷物積載用台板の角部が死角に入って見えなくなり、荷物積載用台板の角部と壁面等の接触事故が生じやすい。
【0005】
また、荷物を積んでいない手押し台車を運搬する際に、空の手押し台車を広げたまま床の上を車輪で転がして搬送できれば楽であるが、人通りの多い通路を通る際や、混み合ったエレベータに乗るときは空の手押し台車を広げたままでは迷惑がられたり、他の通行人がつまずいたり、通行人と接触して怪我をさせるおそれもあるので、折りたたんで搬送作業者が手で提げて持ち歩く必要が生じる場合があるが、一般に普及している手押し台車の多くは概ね10キログラム内外の重量があるので、特に手提げで搬送する距離が長いと搬送作業者にかかる負担は大きい。今後、女性や高齢者の就労増加を考えた場合、このような負担はなるべく少ないことが望ましい。
【0006】
特許文献2は、手押し台車の台車本来の車輪の内側にも可動車輪を設けることで、手押し台車が搬送路からはみ出ても台車が傾いたりしないよう安全性を高めたものであるが、やはり荷物積載用台板の角部を建物やエレベータの壁面に接触させてこすってしまう問題がある。
【0007】
加えて、「可動車輪」を設けた分だけ手押し台車自体の重量が増大してしまうので、搬送作業者が手押し台車を手提げ搬送する上では不利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−208612号公報 手押し台車
【特許文献2】特開2015−85923号公報 セイフティー台車
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、荷物積載用台板の角部を建物やエレベータ等の壁面に接触させてしまっても、角部がこすれる(滑り接触する)ことによる壁面の損傷を防止するとともに、搬送作業者が手押し台車を手提げ搬送する際の負担を軽減しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、荷物積載用台板の下面に少なくとも4個の走行用車輪を設け、前記荷物積載用台板上に積んだ荷物を人間が押すか、あるいは前記荷物積載用台板上に設けた手押し用フレームを人間が押すことで荷物を搬送する手押し台車であって、前記走行用車輪のうち全部または一部が鉛直軸周りに回動可能なように構成してあることで、荷物搬送時の人間の左右の押し力の入れ方次第で意のままに手押し台車の走行方向を制御できるよう構成された手押し台車において、荷物積載用台板の進行方向前方の少なくとも2か所の角部に、各々水平面内で回動する車輪(以下「水平車輪」という)を設け、当該水平車輪の転動面が荷物積載用台板の角部よりも外側に突き出るように構成するとともに、当該水平車輪を設けたのとは反対側の荷物積載用台板の進行方向後方側縁部に、人間が握れる取っ手を設け、荷物なしで手押し台車のみを搬送する際には、スペースをとらないよう荷物積載用台板を縦にして前記「水平車輪」が下側に、前記取っ手が上側に来るようにすれば、当該取っ手を人間が持って前記「水平車輪」を走行輪として台車を少ない力で搬送可能なよう構成する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、荷物搬送中にうっかりと荷物積載用台板の角部が、建物やエレベータ等の壁面に接触したとしても、壁と接触するのは「水平車輪」であり、ころがり接触であるため、従来のような滑り接触による「こすれ傷」を発生させることがなくなる。
【0012】
また、荷物を積んでいない搬送台車を運搬する際に、空の台車を広げたまま搬送できれば楽であるが、人通りの多い通路を通る際や、混み合ったエレベータに乗るときは空の台車を広げたままでは迷惑がられたり、他の通行人がつまずいたり、通行人と接触して怪我をさせるおそれもあるので、折りたたんで搬送作業者が手で提げて持ち歩く必要が生じることがあるが、このような場合、スペースをとらないよう荷物積載用台板を縦にして前記「水平車輪」が下側に、前記取っ手が上側に来るようにすれば、当該取っ手を人間が持って前記「水平車輪」を走行輪として床に重量を預けて転がすことで台車を少ない力で搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の手押し台車の実施形態にかかる模式図
【
図2】本発明の手押し台車の実施形態にかかる平面図
【
図3】本発明の手押し台車の実施形態にかかる側面図
【
図6】本発明の手押し台車でドアを押し広げている模式図
【
図7】本発明の手押し台車の水平車輪部の別の実施形態にかかる模式図
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の手押し台車の実施形態にかかる模式図であって、荷物を搬送していない時に人間(搬送作業者)が手押し台車を運んでいる状態を示している。
図2は本発明の手押し台車の実施形態にかかる平面図、
図3は同じく側面図である。荷物搬送台板1の進行方向前方の2か所の角部に、各々水平面内で回動する水平車輪5を水平車輪5の転動面が荷物積載用台板1の角部よりも前方にも側面方向にも外側に突き出るように設け、当該水平車輪5とは反対側の進行方向後方側縁部に、人間が握れる取っ手6を設けてある。
【0015】
図2、
図3のように手押し台車を広げて荷物搬送台板1が水平の状態で荷物を搬送する場合、水平車輪5の転動面が荷物搬送台板1の角部よりも外側に突き出すようにしてあるので、万一建物やエレベータ等の壁と接触することがあっても、接触するのは水平車輪5であって、接触の形態は「転がり接触」であるので壁に「こすれ」による傷が発生することがほとんどない。
【0016】
また、荷物なしで手押し台車のみを搬送する際、
図1の模式図を示すように、スペースをとらないよう荷物積載用台板を縦にして水平車輪5が下側に、取っ手6が上側に来るようにし、取っ手6を人間7が持って水平車輪5を走行輪として床20の上を転がすようにすれば台車を少ない力で搬送することができる。(荷物積載用台板1を傾けて、水平車輪5のうち1個だけが床20に接している状態で搬送することもできる。)
【0017】
さらに、手押し台車で移動中にドアを広げて進むとき、手を放せばスプリング等の力で自動的に閉まるように構成したドアだと、予めドアを開け放っておくことができないので、荷物積載用台板とドアがこすれてドアを損傷しないよう搬送作業者が無理な姿勢で片手でドアを開けつつ、もう一方の片手で手押し台車を押すとか、搬送作業者以外の人間が介助してドアの開け役をするといったことが必要となるが、本願発明の手押し台車であれば、
図6に示すように水平車輪5でドア21を押し広げながら手押し台車を進めても、ドアに荷物積載用台板とのこすれ傷を生じにくいので、省人化や効率化を図ることができる。
【0018】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において下記の例のように種々変更しうるものであり、これらはいずれも本発明の範囲に属する。
(1)取っ手6は固定式ではなく、スライドさせて搬送台板1に収納できるようにする。
(2)荷物積載用台板1と取っ手6との係合部をヒンジ接合にして荷物搬送中は取っ手6は折り畳んで荷物積載用台板1の端部から飛び出さないようにする。
(3)取っ手6は脱着可能なものとし、必要な時以外は荷物積載用台板1から外しておけるようにする。
(4)また、手押し台車のみを搬送するため荷物積載用台板1を縦にした状態で搬送する際、
図7に示すように水平車輪5の片方あるいは両方を鉛直軸周りに回動自在なよう構成(
図7では、水平車輪5−1と回動自在水平車輪5−2を具備)し、カーブを切る際に手押し台車をいちいち持ち上げなくても、搬送する人間の左右方向の曲がり方に倣って水平車輪がステアリングされるよう構成する。ただし、荷物積載用台板1を水平にした通常の搬送姿勢においては、水平車輪が水平の姿勢を保つよう回動自在車輪5−2には、バネ等で回動の原点位置(回動自在車輪5−2の車輪回転面が荷物積載用台板1の平面と平行の位置)に復帰するよう構成しておくのが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、引っ越し荷物搬送、工場・店舗・オフィスビルなどにおける荷物の搬送においては、トラック等の荷台と、荷物の保管場所との間の搬送手段として手押し台車として好適である。
【符号の説明】
【0020】
1:荷物積載用台板、2:手押しフレーム、3:手押しフレーム係合部、4:手押しフレーム補強版、5:水平車輪、5−1:水平車輪、5−2:回動自在水平車輪、6:取っ手、7:人間、10:車輪、11:車輪、20:床、21:ドア、22:出入口、23:壁。
【要約】
【課題】 手押し台車で荷物を搬送中に、うっかりと建物やエレベータ等の壁に接触しても「こすれ傷」が発生しないようにする。また、荷物なしで手押し台車のみを搬送する際に、搬送台板を立てた状態でスペースをとらないで軽く運べるようにする。
【解決手段】 手押し台車おいて、荷物積載用台板の進行方向前方の少なくとも2か所の角部に、各々水平面内で回動する車輪(以下「水平車輪」という)を設け、当該水平車輪の転動面が荷物積載用台板の角部よりも外側に突き出るように構成するとともに、当該水平車輪したのとは反対側の進行方向後方側縁部に、人間が握れる取っ手を設け、荷物なしで手押し台車のみを搬送する際、スペースをとらないよう荷物積載用台板を縦にして前記「水平車輪」が下側に、前記取っ手が上側に来るようにすれば、当該取っ手を人間が持って前記「水平車輪」を走行輪として台車を少ない力で搬送可能なようにする。
【選択図】
図1