特許第6128502号(P6128502)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6128502バッテリーセルのアクティブバランシング方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6128502
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】バッテリーセルのアクティブバランシング方法および装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20160101AFI20170508BHJP
【FI】
   H02J7/02 H
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-234702(P2016-234702)
(22)【出願日】2016年12月2日
【審査請求日】2016年12月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503324782
【氏名又は名称】有限会社尾張技研
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾張 昭
【審査官】 宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−021821(JP,A)
【文献】 特表2009−540793(JP,A)
【文献】 特開2013−005459(JP,A)
【文献】 特開平06−165416(JP,A)
【文献】 特開平04−017536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/42−10/48
H02J7/00−7/12、
7/34−7/36、
50/00−50/90
H02M3/00−3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列接続された複数のバッテリーセルのアクティブバランシングを行う装置であって、
前記複数のバッテリーセルにそれぞれ接続されたコイルを含む複数のチョッパ回路と、
前記複数のチョッパ回路のコイルにそれぞれ直列接続された複数の発光ダイオードと、
前記複数の発光ダイオードから発生する光を受ける光電変換部と、
前記光電変換部の出力を所定電圧に変換して前記複数のバッテリーセルを含みうる充電池にフィードバックするDC−DC変換部と、
直列接続された複数のバッテリーセルの各々の電圧を周期的に測定する電圧測定部と、
前記複数のチョッパ回路をそれぞれ制御する、所定のデューティー比のパルス信号を発生する複数のPWM駆動部と、
前記電圧測定部の出力に基づいて前記複数のPWM駆動部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記複数のバッテリーセルの測定された電圧の最大値と最小値の差分を求める機能と、
前記差分が第1の所定値以上となったとき、比較的高い電圧を有するバッテリーセルについて、当該コイルに直列接続された当該発光ダイオードに所定の電流を流すように、当該PWM駆動部を制御して、当該バッテリーセルの電圧を当該バッテリーセルに接続されたコイルに断続的に印加する機能と、
前記差分が前記第1の所定値より小さい第2の所定値以下となったとき、当該バッテリーセルの電圧の前記コイルへの断続的印加を停止する機能と
を有するバッテリーセルのアクティブバランシング装置。
【請求項2】
前記チョッパ回路は昇圧型であり、当該バッテリーセルの正端子と当該発光ダイオードのアノード端子との間に接続されたコイルと、前記コイルの前記アノード側の端子と当該バッテリーセルの負端子との間に接続されたスイッチング素子とを含む請求項1に記載のバッテリーセルのアクティブバランシング装置。
【請求項3】
前記発光ダイオードのアノード端子にカソード端子が接続され、前記コイルにアノード端子が接続されたダイオードとを含む請求項2に記載のバッテリーセルのアクティブバランシング装置。
【請求項4】
前記チョッパ回路は降圧型であり、当該バッテリーセルの正端子と当該発光ダイオードのアノード端子との間に直列接続されたスイッチング素子およびコイルと、前記コイルと前記スイッチング素子との接続点にカソード端子が接続され、当該バッテリーセルの負端子にアノード端子が接続されたダイオードとを含む請求項1に記載のバッテリーセルのアクティブバランシング装置。
【請求項5】
前記発光ダイオードとして、直列接続した複数の発光ダイオードを含む請求項1〜4のいずれかに記載のバッテリーセルのアクティブバランシング装置。
【請求項6】
前記チョッパ回路は前記発光ダイオードに並列に接続されたキャパシタをさらに含む請求項1〜5のいずれかに記載のバッテリーセルのアクティブバランシング装置。
【請求項7】
前記比較的高い電圧を有するバッテリーセルは、(1)前記複数のバッテリーセルの測定された電圧の最大値と最小値の中間の値より大きい電圧を有するバッテリーセル、(2)前記複数のバッテリーセルの測定された電圧の上位所定個のバッテリーセル、(3)予め設定された設定電圧レベルを超える電圧を有するバッテリーセル、のいずれか一つである請求項1〜6のいずれかに記載のバッテリーセルのアクティブバランシング装置。
【請求項8】
前記複数の発光ダイオードは、前記光電変換部の光電変換面に対向して配置され、前記発光ダイオードの全体をほぼ密封して被覆する光非透過性のカバーをさらに備えた請求項1〜7のいずれかに記載のバッテリーセルのアクティブバランシング装置。
【請求項9】
前記複数の発光ダイオードの各々から発する光を前記光電変換部の光電変換面に導く複数の光導電路をさらに備えた請求項1〜7のいずれかに記載のバッテリーセルのアクティブバランシング装置。
【請求項10】
直列接続された複数のバッテリーセルの各々に対して、発光ダイオードと、前記発光ダイオードと直列に接続されたコイルを用いたチョッパ回路とを設け、
前記複数のバッテリーセルのうち比較的高い電圧を有するバッテリーセルの電圧を当該チョッパ回路により昇圧または降圧し、
前記チョッパ回路の出力により当該発光ダイオードを発光制御し、
前記発光ダイオードから出力された光を光電変換部により電気エネルギーに変換し、
前記光電変換部により得られた電気エネルギーを、前記複数のバッテリーセルを含みうる充電池にフィードバックする
バッテリーセルのアクティブバランシング方法。
【請求項11】
直列接続された複数のバッテリーセルの各々の電圧を周期的に測定するステップと、
前記複数のバッテリーセルの測定された電圧の最大値と最小値の差分を求めるステップと、
前記差分が第1の所定値以上となったとき、比較的高い電圧を有するバッテリーセルについて、当該バッテリーセルに接続されたコイルに直列接続された発光ダイオードに所定の電流を流すように、当該バッテリーセルの電圧を当該バッテリーセルに接続された前記コイルに断続的に印加するステップと、
前記差分が前記第1の所定値より小さい第2の所定値以下となったとき、当該バッテリーセルの電圧の前記コイルへの断続的印加を停止するステップと、
前記発光ダイオードから出力する光を光電変換部により電気に変換するステップと、
前記光電変換部の出力を所定電圧に変換して、前記複数のバッテリーセルを含みうる充電池にフィードバックするステップと
を備えたバッテリーセルのアクティブバランシング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーセルのアクティブバランシングの方法および装置に関し、特に、光電力変換によるバッテリーセルのアクティブバランシングの方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大容量・高電圧のバッテリーを得るために、従来、セル(バッテリーセル)と呼ばれる最小単位の電池を直列に接続して用いることが行われている。例えば、電気自動車(EV)などでは通常80個以上ものセルが用いられている。
【0003】
リチウムイオンバッテリー等の複数のセルを使用したバッテリー装置において、各セルのバランス崩れが発生した場合にバッテリー装置全体の実効容量が低下する問題がある。通常、セルが新規の状態では複数のセルの容量のばらつきは小さいが、長期間、充放電を繰り返していくと、個々のセルの劣化速度が異なるため、セル毎の容量のばらつきが大きくなる。これによって、全セルの実効的な容量が低下してしまう。
【0004】
このため一般的には、複数のセルを使用したバッテリー装置においては、セルバランスの管理は重要な項目となつており、各セルの容量のばらつきを均等化するためのバッテリーバランシング回路が組み込まれている。「バランシング」とは、複数のバッテリーセルを直列接続したバッテリー装置において、各セル電圧の差を最小限となるよう操作すること、およびその機能をいう。
【0005】
バッテリーバランシングの方式としては、大別して次の2つがある。
1)電圧の高いセルの電圧を抵抗放電により下げるパッシブバランシング方式
2)各セルにスイッチング回路を構成し、比較的に電圧が高いセルの余計な電力を電源へ還元させ再利用するアクティブバランシング方式
【0006】
特許文献1は、アクティブバランシング方式の一種として、セルの容量を均等化するために各セルに並列に接続された放電部として、抵抗器と直列接続した発光素子を使用し、発光素子により放電電力の一部を光に変換する構成を開示している。また、発光素子から発せられた光を光電池により電力に変換し、この電力を基板上の回路の動作電力や充電量の少ないセルを補充電するための電力として使用することに言及している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−21821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記1)のパッシブバランシング方式は、抵抗により熱エネルギーとして電力を消費させるため効率が悪いという問題がある。また、バランシング速度を速めようとした場合、抵抗を流れる電流値を上げる必要があるが、発熱の観点から過度に高い電流値を設定することは現実的でない。このため従来の方式ではバランシングに時間が掛かる。
【0009】
通常、リチウムイオンバッテリーなどセル電圧は4V程度であるが、多数のセルを組み合わせるマルチセル構成とすると、バッテリー装置の出力電圧が数百Vにもなり、回路間の耐圧が問題となる。このため、上記2)のアクティブバランシング方式では、一般にすべてのセルに絶縁トランスが必要となり回路構成が複雑となるという問題がある。
【0010】
上記特許文献1に記載の従来技術では、各発光素子に抵抗器が直列接続されており、発光素子を流れる電流を発光素子の定格電流等に応じた値に制限できるよう、適宜の抵抗値が設定される。すなわち、この従来技術は基本的には上記1)の抵抗により熱エネルギーとして電力を消費するものと同類であり、効率の問題がある。また、容量の小さな発光素子しか使用できず、発光素子へ流れる電流も固定のためバッテリーセルの使用電圧範囲が狭い範囲に限定されてしまう。
【0011】
本発明はこのような背景においてなされたものであり、その目的は、直列接続された複数のバッテリーセルのバランシングの際にバッテリーセルの放電電力を効率よく回収することができるとともに、回路構成を簡素化することができるバッテリーセルのアクティブバランシング方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明によるバッテリーセルのアクティブバランシング装置は、直列接続された複数のバッテリーセルのアクティブバランシングを行う装置であって、前記複数のバッテリーセルにそれぞれ接続されたコイルを含む複数のチョッパ回路と、前記複数のチョッパ回路のコイルにそれぞれ直列接続された複数の発光ダイオードと、前記複数の発光ダイオードから発生する光を受ける光電変換部と、前記光電変換部の出力を所定電圧に変換して、複数のバッテリーセルを含みうる充電池にフィードバックするDC−DC変換部と、直列接続された複数のバッテリーセルの各々の電圧を周期的に測定する電圧測定部と、前記複数のチョッパ回路をそれぞれ制御する、所定のデューティー比のパルス信号を発生する複数のPWM駆動部と、前記電圧測定部の出力に基づいて前記複数のPWM駆動部を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記複数のバッテリーセルの測定された電圧の最大値と最小値の差分を求める機能と、前記差分が第1の所定値以上となったとき、比較的高い電圧を有するバッテリーセルについて、当該コイルに直列接続された当該発光ダイオードに所定の電流を流すように、当該PWM駆動部を制御して、当該バッテリーセルの電圧を当該バッテリーセルに接続されたコイルに断続的に印加する機能と、前記差分が前記第1の所定値より小さい第2の所定値以下となったとき、当該バッテリーセルの電圧の前記コイルへの断続的印加を停止する機能とを有する。
【0013】
本発明によるバッテリーセルのアクティブバランシング方法は、直列接続された複数のバッテリーセルの各々に対して、発光ダイオードと、前記発光ダイオードと直列に接続されたコイルを用いたチョッパ回路とを設け、前記複数のバッテリーセルのうち比較的高い電圧を有するバッテリーセルの電圧を当該チョッパ回路により昇圧または降圧し、前記チョッパ回路の出力により当該発光ダイオードを発光制御し、前記発光ダイオードから出力された光を光電変換部により電気エネルギーに変換し、前記光電変換部により得られた電気エネルギーを、前記複数のバッテリーセルを含みうる充電池にフィードバックするものである。
【0014】
このような本発明の装置および方法では、比較的高い電圧を有するバッテリーセルについて、抵抗素子による電力損失を発生させることなく、チョッパ回路により当該発光ダイオードに比較的大きな所定の電流を流すことができる。これにより当該バッテリーセルの電圧を迅速に低下させて複数のバッテリーセルの実効的な容量が均等化される。また、発光ダイオードから発生する光を光電変換部で電気エネルギーに変換して、複数のバッテリーセルを含みうる充電池にフィードバックすることにより、バランシングのために放電したバッテリーセルの電力の回生を図ることができる。
【0015】
本発明による他の構成および作用効果については、添付の図面を参照した以下の実施形態により説明される。
【発明の効果】
【0016】
本発明のアクティブバランシング方法および装置によれば、すべてのバッテリーセルに絶縁トランスを必要とする従来の回路構成に比べて各バッテリーセルに設けるチョッパ回路の構成は比較的簡単であり、発光ダイオードの光を受光する光電変換部は単一個あれば足りるので、装置構成が簡素化される。
【0017】
また、チョッパ回路により発光ダイオードを電流駆動しているので、PWMデューティー比を変えることにより発光ダイオードに流れる電流値を広範囲に変えることができる。その結果、バッテリーセル電圧に応じた、必要とされる任意の電流を流すことができる。
【0018】
従来の抵抗方式と比較し放出エネルギーを高くすることができるのでバランシング時間を短縮することができる。かつ、その放出エネルギーは回収して、電力の回生を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態による、バッテリーセルのアクティブバランシング装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】(a)(b)(c)は昇圧型の3つのチョッパ回路の構成例を示す図である。
図3】(a)(b)は降圧型のチョッパ回路の構成例を示す図である。
図4図1内の制御部の処理手順例を示すフローチャートである。
図5図1内の制御部の他の処理手順例を示すフローチャートである。
図6】(a)(b)(c)は、それぞれ、差分dの変化と、バランシングのON/OFFの変化と、PWM出力(パルス信号)の関係を表したタイミング図である。
図7】本発明の実施形態における発光ダイオードと光電変換部の間のインタフェースの2つの態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
(本実施形態のアクティブバランシング装置の動作原理)
本実施形態のアクティブバランシング装置では、複数のバッテリーセルを直列接続したバッテリー装置において、比較的高い電圧のバッテリーセルの電力を光エネルギーに変換して放出することにより、その電圧を低下させ全バッテリーセルの電圧を均等化させるとともに、光電変換部によるエネルギー回収を行い、電力の回生を図る。より具体的には、バッテリーセル毎に発光ダイオードと直列に接続されたコイル(インダクタ)を用いたチョッパ回路により、バッテリーセルの電圧を昇圧または降圧し、抵抗を用いることなく比較的高い電圧のバッテリーセルについてその電圧で当該発光ダイオードの発光制御を行う。各発光ダイオードに対して光電変換部を配置し、この光電変換部により生成された電力を、複数のバッテリーセルを含みうる充電池にフィードバックする。
【0022】
(アクティブバランシング装置の構成)
図1は、本実施形態による、バッテリーセルのアクティブバランシング装置の概略構成を示すブロック図である。本発明によるバッテリーセルのアクティブバランシング方法はこの装置により実現される。
【0023】
本実施形態によるアクティブバランシング装置は、一定の電圧の複数のバッテリーセル20が直列接続されたバッテリー装置のアクティブバランシングを行う装置であり、制御部10と、電圧測定部12と、マルチプレクサ14と、複数のPWM駆動部16と、複数のチョッパ回路30と、複数の発光ダイオード(発光素子)40と、光電変換部50と、DC/DC変換部60とにより構成される。DC/DC変換部60の出力は複数のバッテリーセル20の充電回路62に接続される。充電回路62はバッテリーセル20を充電するための回路であり、この充電回路62には外部の電源供給部から充電のための電力が供給される。電源供給部は本発明に直接関係する要素ではなく、その構成や充電のタイミング等の動作は、バッテリーセル20が利用される用途や装置によって異なり得る。
【0024】
電圧測定部12は、直列接続された複数のバッテリーセル20の各々の電圧を周期的に測定してその測定値を制御部10へ出力する。そのために、マルチプレクサ14は、制御部10の制御下で、周期的に複数のバッテリーセル20の両端の電圧を選択して電圧測定部12へ出力する。
【0025】
チョッパ回路30は、複数のバッテリーセル20にそれぞれ接続されたコイルを含み、制御部10の制御下で、必要に応じて、PWM駆動部16により所定のPWMデューティー比のパルス信号により駆動される。
【0026】
複数の発光ダイオード(LED)40は、複数のチョッパ回路30に対して1対1に設けられ、対応するチョッパ回路30に接続される。発光ダイオード40は、好ましくは、高電流で駆動される高輝度のLED(すなわちパワーLED)である。後述するように、各発光ダイオード40は、対応するチョッパ回路30のコイルにそれぞれ直列接続される。
【0027】
なお、本実施形態において使用する発光ダイオード40から発生する光は必ずしも可視光である必要はない。発光ダイオード40の発光から光電変換部50の変換に亘って、トータルでの良好な効率が得られる波長の光を選定することが好ましい。
【0028】
発光ダイオード40は定電圧素子であり、その端子電圧(順方向電圧)は狭い範囲での端子電圧となる。このためバッテリーセル20の電圧を直接発光ダイオード40に加えることはできないので、一定電圧での駆動は行わず定電流駆動を行う。定電流駆動の最も簡単な方法は抵抗で電流制限する方法である。しかし、この方法では上述のように、電力損失が発生するため効率が低下し、熱の発生により流せる電流に制限がありバランシングに時間が掛かる。このため容量の小さな発光ダイオードしか使用できず、発光ダイオードに流れる電流も固定のためバッテリーセルの使用電圧範囲が狭くなってしまい現実的ではない。そこで、本実施形態では、抵抗による電流制限を用いず、チョッパ回路による発光ダイオードの電流駆動を採用している。
【0029】
光電変換部50は、例えば光電池(ソーラーセル)等の光電変換素子により構成され、複数の発光ダイオード40から発生する光を受け、これらの光を電気信号に変換する。
【0030】
DC−DC変換部60は、光電変換部50の出力を所定電圧に変換して、充電回路62を介して、複数のバッテリーセル20にフィードバックする。フィードバックする相手は複数のバッテリーセル20に代えて、他の充電池(図示せず)であってもよい。充電回路62には、使用しているバッテリーセル20の充電仕様を満足する充電方式を採用する。
【0031】
制御部10は、電圧測定部12の出力に基づいて複数のPWM駆動部16を制御する。制御部10は、図示しないがCPUおよびメモリを含み、メモリ内のプログラムをCPUが実行することにより所望のソフトウェア制御を実現する。但し、制御部10による制御はソフトウェアに限るものではない。より具体的には、制御部10は、複数のバッテリーセル20の測定された電圧の最大値と最小値の差分を求める。この差分が第1の所定値以上となったとき、その時点で比較的高い電圧を有するバッテリーセル20について、当該コイル31に直列接続された発光ダイオード40に所定の電流を流すように、当該PWM駆動部16を制御して、当該バッテリーセル20の電圧を当該バッテリーセル20に接続されたコイル31に断続的に印加する。前記差分が第1の所定値より小さい第2の所定値以下となったとき、当該バッテリーセル20の電圧を当該コイル31への断続的に印加することを停止する。
【0032】
なお、図1の構成とは異なり、複数の電圧測定部12を設け、各バッテリーセルに対して1対1に電圧測定部12を常時接続してもよい。その場合には、マルチプレクサ14は不要であり、すべてのバッテリーセル20について迅速な電圧測定を行うことができる。一方、複数のバッテリーセル20に対して共通の電圧測定部12を用いることは、電圧測定部の測定精度のばらつきがなくなること、および、必要な部品数の低減において有意義である。
【0033】
アクティブバランシング装置は所定個数のバッテリーセル(例えば10セル)単位にモジュール化することができる。さらに多数のバッテリーセルを直列接続する場合には複数のモジュールを組み合わせて用いる。例えば、図1の構成において、10個のバッテリーセル単位に、10個のチョッパ回路30と、10個の発光ダイオード40と、1つのマルチプレクサ14と、1つの電圧測定部12と、制御部10とが1つのモジュールを構成する。但し、光電変換部50およびDC/DC変換部60は複数のモジュールに共用することができる。各モジュール内の制御部10の一部の機能は、別途共通の上位の制御部(図示せず)で実行するようにしてもよい。
【0034】
チョッパ回路30は、発光ダイオード40の順方向電圧Vfと、バッテリーセル20の電圧Vs(測定電圧)との大小関係に応じて、昇圧型と降圧型とを使い分ける。すなわち、Vf≧Vsの場合、昇圧型を用い、Vf<Vsの場合、降圧型を用いる。
【0035】
図2(a)(b)(c)に昇圧型のチョッパ回路30の構成例として、3つのチョッパ回路30a,30b,30cを示す。
【0036】
図2(a)に示したチョッパ回路30aは、バッテリーセル20の正端子に一端が接続されたコイル31と、このコイル31の他端にアノード端子が接続され、カソード端子が発光ダイオード40のアノード端子に接続されたダイオード33と、スイッチング素子37と、発光ダイオード40に並列に接続されたキャパシタ(コンデンサ)35とにより構成される。スイッチング素子37は、コイル31とダイオード33との接続点とバッテリーセル20の負端子との間に接続される。
【0037】
スイッチング素子37は、電界効果トランジスタ(FET)等により構成され、PWM駆動部16から与えられるパルス信号によりON/OFF制御される。PWM駆動部16の出力するパルス信号については、発光ダイオード40は電流駆動され、好ましくは高い効率が得られるPWMデューティー比が設定される。PWMデューティー比は予め定めた固定値であってもよいが、バランス崩れの大きさ(後述する差分d)に応じて変化させてもよい。例えば、バランス崩れが比較的大きいときにはPWMデューティー比を大きく設定し、バランス崩れが比較的小さいときにはPWMデューティー比を小さく設定するようにしてもよい。バランス崩れが大きいときにPWMデューティー比を大きく設定することはバランシング速度を高くし、バランシングに要する時間を短縮する効果がある。バランス崩れが小さいときにPWMデューティー比を小さく設定することは、バランス崩れが小さくなっても一部のバッテリーセルについて大きな放電を継続することによる過度の放電が却ってバランシングを不安定にすることを防止する効果がある。PWMデューティー比の可変制御は、予め定めた基準値に対して差分dに応じた係数を乗算したり、差分dの値に対応するPWMデューティー比の値を定めたデータテーブルを用意したりすることにより実現することができる。
【0038】
キャパシタ35は発光ダイオード40がそのパルス駆動可能最大電流を超えると破壊される可能性があるため平滑用として設けてあるもので、チョッパ回路の機能として必須の要素ではない。
【0039】
上記の通り、昇圧型の場合、発光ダイオード40の順方向電圧Vfがバッテリーセル20の電圧Vs以上である。チョッパ回路30aにおいてはスイッチング素子37がOFF状態にある初期状態では発光ダイオード40は非導通状態にある。チョッパ回路30aは、PWM駆動部16からのパルス信号を受けたとき、スイッチング素子37がON/OFF駆動される。スイッチング素子37がONされたとき、バッテリーセル20、コイル31、スイッチング素子37の閉回路が形成され、コイル31に電流が流れようとする。但し、コイルは電流の変化を妨げる素子なので、コイル31に流れる電流は初期的にはゼロであるが、スイッチング素子37がONの期間内に次第に増加していく。このとき、発光ダイオード40には電流は流れない。このON期間中、コイル31による電力の消費はなく、バッテリーセル20から所定の電気エネルギーがコイル31に保持される。
【0040】
ON期間の経過後にスイッチング素子37がOFFとなったとき、バッテリーセル20、コイル31、ダイオード33、スイッチング素子37と、発光ダイオード40およびキャパシタ35の並列回路とからなる閉回路が形成される。
【0041】
このとき、コイル31はその時点の電流の流れを維持しようとし、コイル31に逆起電力(バッテリーセル20側の端子に対してダイオード33側の端子が正)が発生する。このコイル31に発生した電圧はバッテリーセル20の電圧と加算されるため、昇圧が実現される。この昇圧された電圧がダイオード33の順方向電圧を超えれば、瞬時にキャパシタ35に電流が流入し、キャパシタ35の電圧が上昇していく。このキャパシタ35の電圧が発光ダイオード40の順方向電圧Vfに達すれば、発光ダイオード40が導通し、発光する。PWM駆動部16からの所定のPWMデューティー比のパルス信号が継続的にスイッチング素子37をON/OFF駆動している期間中、発光ダイオード40にはPWMデューティー比に応じたほぼ一定の電流が流れる。これによって、当該バッテリーセル20の電力が消費されるため、その電圧が低下する。
【0042】
図2(b)に示したチョッパ回路30bの構成は、ダイオード33を削除した以外、図2(a)のチョッパ回路30aと同様である。ダイオード33と同等の整流機能はこれと直列接続された発光ダイオード40によっても得られるので、ダイオード33は必須の要素ではない。チョッパ回路30bの動作はチョッパ回路30aとほぼ同様であるが、ダイオード33が存在しないので、ON期間の経過後にスイッチング素子37がOFFとなったとき、コイル31に発生した電圧とバッテリーセル20の電圧との加算により得られた昇圧電圧が発光ダイオード40の順方向電圧Vfに達すれば、発光ダイオード40が導通し、発光する。
【0043】
図2(c)に示したチョッパ回路30cの構成は、発光ダイオードとして、直列接続した複数の発光ダイオード40を含むこと以外、図2(a)のチョッパ回路30aと同様である。この例では2個の発光ダイオード40を直列接続した例を示しているが、3個以上を直列接続してもよい。チョッパ回路30cの動作は、その電圧Vfが、複数の発光ダイオード40の順方向電圧の合計であること以外は、チョッパ回路30aの動作と同様である。
【0044】
図示しないが、図2(c)の構成において、ダイオード33を削除することも可能である。
【0045】
図3(a)(b)に降圧型のチョッパ回路30d,30eの構成例を示す。
【0046】
図3(a)のチョッパ回路30dは、バッテリーセル20の正端子と発光ダイオード40のアノード端子との間に直列接続されたスイッチング素子39およびコイル31と、このコイル31とスイッチング素子39との接続点にカソード端子が接続され、バッテリーセル20の負端子にアノード端子が接続されたダイオード38と、発光ダイオード40に並列に接続されたキャパシタ35により構成される。
【0047】
このチョッパ回路においても、キャパシタ35は発光ダイオード40がそのパルス駆動可能最大電流を超えると破壊される可能性があるため平滑用として設けてあるもので、理論上はチョッパ回路の機能として必須の要素ではない。
【0048】
上記の通り、降圧型の場合、バッテリーセル20の電圧Vsが発光ダイオード40の順方向電圧Vfより大きい。チョッパ回路30dはスイッチング素子39がOFF状態にある初期状態では、バッテリーセル20からの導通経路が開放されているので、発光ダイオード40は非導通状態にある。チョッパ回路30dは、PWM駆動部16からのパルス信号を受けたとき、スイッチング素子39がON/OFF駆動される。スイッチング素子39がONされたとき、バッテリーセル20、スイッチング素子39、コイル31と、発光ダイオード40およびキャパシタ35の並列回路とからなる閉回路が形成され、コイル31に電流が流れようとする。但し、コイル31は電流の変化を妨げる素子なので、コイル31に流れる電流は初期的にはゼロであるが、スイッチング素子39がONの期間内に次第に増加していく。この電流はキャパシタ35を急速に充電し、キャパシタ35の電圧が急上昇する。この電圧が発光ダイオード40の順方向電圧Vfに達すれば、発光ダイオード40が導通し、発光する。この間、コイル31による電力の消費はなく、所定の電気エネルギーがコイル31に保持される。
【0049】
パルス信号のON期間の経過後にスイッチング素子39がOFFとなったとき、コイル31はその時点の電流の流れを維持しようとし、コイル31に逆起電力(コイル31のバッテリーセル20側の端子に対して発光ダイオード40側の端子が正)が発生する。この逆起電力の向きはダイオード38を導通させる方向なので、コイル31、発光ダイオード40およびダイオード38からなる閉回路が形成される。これにより、コイル31に蓄積されたエネルギーにより短時間であれば継続して発光ダイオード40に電流が流れる。このようにして、PWM駆動部16からの所定のPWMデューティー比のパルス信号が継続的にスイッチング素子39をON/OFF駆動している期間中、発光ダイオード40にはPWMデューティー比に応じたほぼ一定の電流が流れる。その結果、当該バッテリーセル20の電力が消費されるため、その電圧が低下していく。
【0050】
図3(b)のチョッパ回路30eは、発光ダイオードとして、直列接続した複数の発光ダイオード40を含むこと以外、図3(a)のチョッパ回路30dと同等である。この例では2個の発光ダイオード40を直列接続した例を示しているが、順方向電圧Vf(合計値)とバッテリーセル20の電圧Vsとの関係が許せば、3個以上であってもよい。チョッパ回路30eの動作は、その電圧Vfが、複数の発光ダイオード40の順方向電圧の合計であること以外は、チョッパ回路30dの動作と同様である。
【0051】
図1のアクティブバランシング装置の動作)
図4図5に示したフローチャートにより、図1に示したアクティブバランシング装置内の制御部10の動作について説明する。本実施形態では、このフローの処理は制御部10による制御プログラムの実行により実現される。ここに示の具体的な処理ステップは、本実施形態の動作を実現するための一例であり、その内容、手順等、必ずしも提示したものに限定されるものではない。
【0052】
図4のフローチャートは、制御部10が電圧測定部12およびマルチプレクサ14を制御することにより、すべてのバッテリーセル20の電圧を測定し、所定の処理を行う手順例を示している。この処理は、タイマー割り込みにより一定周期毎に実行される。この「一定周期」は10m秒程度で足りる。これより短時間としても問題はないが必要性は低い。場合によっては10m秒より長い時間であってもよい。なお、本バッテリー装置が激しく充放電を行っている最中は、電圧測定の精度が低下する。例えば、電気自動車の用途では、短時間での加速時には大電流の放電が発生し、減速時には回生による充電が発生する等、数秒から数分程度で充放電を繰り返すことにより、バッテリーセルの電圧が大きく変化する。また、CC(Constant Current)モードでの充電中も電流が大きいため電圧測定値はあまり正確ではなくなる。電圧測定値が信頼できるのは負荷電流がほぼ0に近いときか、CV(Constant Voltage)充電時の充電終了間際のときである。すなわち、バランシング動作が良好に行えるのは、バッテリー装置が無負荷に近く安定しているときである。そこで、図4の処理は、そのようなバッテリー装置の状態が安定した時点で実行するようにしてもよい。
【0053】
図4の処理では、まず、使用する変数n、Vmax、Vminの初期化を行う(S11)。具体的には、変数n、Vmaxは0にし、変数Vminは測定電圧の取りうる値より大きいダミーの固定値Xとする。変数nは複数のバッテリーセルを特定するためのカウンタ値であり、1から、バランシング対象のバッテリーセルの個数に相当する最大値nmaxまでの整数である。Vmaxは、バランシング対象のすべてのバッテリーセルの電圧の測定値のうちで最大の電圧を保持するための変数である。Vminは、当該すべてのバッテリーセルの電圧の測定値のうちで最小の電圧を保持するための変数である。
【0054】
ステップS11における変数の初期化後に、変数nを更新(1増分)し(S12)、セルnの電圧の測定値(Vn)を求める(S13)。
【0055】
次いで、現在の最大値Vmaxと測定値Vnとを比較し、大きい方の値を新たなVmaxとする(S14)。n=1のとき、測定値VnがVmaxとなる。その後、nの更新に伴って、最大値Vmaxが更新されていく。同様に、現在の最小値Vminと測定値Vnとを比較し、小さい方の値を新たなVminとする(S15)。n=1のとき、測定値VnがVminとなる。その後、カウンタ値nの更新に伴って、最小値Vminが更新されていく。
【0056】
さらに、現在のVmaxとVminの差分dを求める(S16)。
【0057】
その後、変数nが既知の最大値nmaxに達したかをチェックし(S17)、nmaxに達するまでステップS12へ戻り、すべてのバッテリーセルについて処理が終了するまで、ステップS13〜S16の処理を繰り返して実行する。
【0058】
図4の処理が完了したとき、その時点でのバッテリーセル20の電圧の最大値Vmaxと最小値Vminのばらつき(偏差)が差分dとして求まる。
【0059】
図5は、差分dを常時監視し、必要に応じて上述したバランシングを実行するための処理フローを示している。
【0060】
まず、制御部10は、現在の差分dが第1の所定値Dh以上となったかどうかを監視する(S21)。差分dが第1の所定値Dh以上となったとき、比較的高い電圧を有するバッテリーセルについて、バランシングを開始する(S22)。すなわち、上述のとおり、当該コイルに直列接続された発光ダイオードに所定の電流を流すように、当該PWM駆動部を制御して、当該バッテリーセルの電圧を当該バッテリーセルに接続されたコイルに断続的に印加する。
【0061】
その後、現在の差分dが第1の所定値Dhより小さい第2の所定値Dl以下となったとき、当該バッテリーセルのバランシングを停止する(S24)。すなわち、当該バッテリーセルの電圧をコイルへの断続的に印加することを停止する。このようなステップS21〜S24は繰り返して実行する。
【0062】
ここで、バランシングのための放電対象となる「比較的高い電圧を有するバッテリーセル」の選択の方法について説明する。
【0063】
このようなバッテリーセルの選択方法としては、つぎのようなものが考えられる。
(1)複数のバッテリーセルの測定された電圧の最大値と最小値の中間の値より大きい電圧を有するバッテリーセルを選択する。「中間の値」としては例えば、Vmin + d/2とすることができる。d/2はこれに限るものではなく、d/3、2d/3等、他の比率であってもよい。
(2)複数のバッテリーセルの測定された電圧の上位所定個のバッテリーセルを選択する。「所定個」としては例えば全セル数の半数である。半数に代えて、1/3、2/3等であってもよい。
(3)予め設定された設定電圧レベルを超える電圧を有するバッテリーセルを選択する。この「設定電圧レベル」は予測される最大値Vmaxと最小値Vminの中間の値である。
【0064】
いずれにせよ、数十個のバッテリーセルを直列接続したバッテリ装置においては、セルのバラツキにより数セルのみ放電すればよい場合と、数セルのみそのままで残り全セルを放電する場合とがある。あるいは、極端な場合、1セル以外の全セルの放電が同時に必要となる場合もありうる。
【0065】
図6(a)(b)(c)は、それぞれ、差分dの変化と、バランシングのON/OFFの変化と、PWM出力(パルス信号)の関係を表したタイミング図である。複数のバッテリーセルを組み合わせたバッテリ装置の使用開始時には差分dは第1の所定値Dhより小さく、バランシングはOFF状態にある。その後、時間tの経過とともに、差分dが増加していき、時点t1で差分dが第1の所定値Dhに達したとき、放電対象のバッテリーセルについてバランシングが開始される(ONとなる)。
【0066】
これにより、放電対象のバッテリーセルのPWM駆動部から当該チョッパ回路に対してPWM出力(パルス信号)が生成される。
【0067】
バランシングが開始された後、時点t1〜t2の期間中、差分dが減少していく。差分dが第2の所定値Dlまで低下したとき、バランシングが停止(OFF)される。これにより、当該PWM駆動部から当該チョッパ回路に対するPWM出力(パルス信号)が停止される。
【0068】
バッテリー装置を使用している間、このような差分dの変化が生じ、差分dの値に応じて自動的にバランシングのON/OFF遷移が発生する。
【0069】
次に、図7により、発光ダイオード40と光電変換部50の間のインタフェースの2つの態様について説明する。
【0070】
図7(a)は発光ダイオード40から発する光を、対向する光電変換部50の光電変換面に直接照射する態様である。バランシング対象の複数のバッテリーセルに対応する一群の発光ダイオード40は回路基板42上に隣接して配置されている。さらに、これらの発光ダイオード40全体をほぼ密封して被覆するように光非透過性のカバー45が回路基板42に対して配置されている。カバー45は発光ダイオード40からの光を遮断する材料で形成されている。カバー45の凹部には、発光ダイオード40に対向するよう、光電変換部50が配置されている。好ましくは、少なくともカバー45の内壁周縁表面に、発光ダイオード40から発せられた光を反射する反射体(例えば鏡面)が設けられる。このような構成により、発光ダイオード40から発せられた光の漏れを防止し、光電変換部50への入射効率を向上させることができる。
【0071】
図7(b)は発光ダイオード40から発する光を、光導通路としての光ファイバ46を介して光電変換部50の光電変換面に導く態様である。一群の発光ダイオード40の各々に対して、光ファイバ46の一端が連結されている。1つの発光ダイオード40と1つの光ファイバ46とが複合モジュール43を構成している。各光ファイバ46の他端は光電変換部50の光電変換面に対向して配置される。これにより、発光ダイオード40からの光を漏れなく光電変換部50へ導くことができる。
【0072】
なお、図7(b)の構成では、複数の群の発光ダイオードが存在する場合、単一の光電変換部50を当該複数の群に共用することができる。
【0073】
(実施形態の効果)
本実施形態のアクティブバランシング方法および装置によれば、すべてのバッテリーセルに絶縁トランスを必要とする従来の回路構成に比べて、各バッテリーセルに設けるチョッパ回路の構成は比較的簡単であり、発光ダイオードの光を受光する光電変換部は単一個あれば足りるので、装置構成が簡素化される。
【0074】
PWM駆動部によりON/OFF制御されるチョッパ回路により発光ダイオードを電流駆動しているので、PWMデューティー比を変えることにより発光ダイオードに流れる電流値を広範囲に変えることができる。その結果、バッテリーセル電圧に応じた、必要とされる任意の電流を流すことができる。
【0075】
さらに、抵抗方式と比較して放出エネルギーを高くすることができるのでバランシング時間を短縮することができる。すなわち、回路損失が小さいため容量の大きな発光ダイオードを使用することができ、電流を多く流すことによりバランシングに要する時間を短縮することができる。かつ、その放出エネルギーは回収して、電力の回生を図ることができる。
【0076】
電力変換が目的のため光電変換部を構成する光電変換素子の光波長は変換効率のみ追求すれば良く、発光素子としてレーザー素子を含め広範囲に素子を選べる可能性がある。
【0077】
また、バッテリー装置の出力電圧が数百Vにもなるマルチセル構成の場合、回路間の耐圧が問題となり、特に、従来のトランス方式などではコイル−コア間、コイル-コイル間などの絶縁確保が重要となる。これに対して、本実施形態の光を介在したアクティブバランシング装置では基本的に光による回路部分が絶縁されているので、この問題が解決される。
【0078】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、上記で言及した以外にも種々の変形、変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0079】
10:制御部 12:電圧測定部 14:マルチプレクサ 16:PWM駆動部 20:バッテリーセル 30,30a,30b,30c,30d,30e:チョッパ回路 31:コイル 33:ダイオード 35:キャパシタ(コンデンサ) 37:スイッチング素子 38:ダイオード 39:スイッチング素子 40:発光ダイオード(LED) 42:回路基板 43:複合モジュール 45:カバー 46:光ファイバ 50:光電変換部 60:DC/DC変換部 62: 充電回路 d:差分 Dh:第1の所定値 Dl:第2の所定値
【要約】      (修正有)
【課題】直列接続された複数のバッテリーセルのバランシングの際にバッテリーセルの放電電力を効率よく回収することができるとともに、回路構成を簡素化することができるバッテリーセルのアクティブバランシング方法および装置を提供する。
【解決手段】直列接続された複数のバッテリーセル20の各々に対して、発光ダイオード40と、この発光ダイオードと直列に接続されたコイルを用いたチョッパ回路30とを設ける。複数のバッテリーセル20のうち比較的高い電圧を有するバッテリーセル20の電圧を当該チョッパ回路30により昇圧または降圧する。このチョッパ回路30の出力により当該発光ダイオード40を発光制御する。発光ダイオード40から出力された光を光電変換部50により電気エネルギーに変換し、この電気エネルギーを複数のバッテリーセル20を含みうる充電池へフィードバックする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7