特許第6128516号(P6128516)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6128516
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】引金止軸を改善したスプレーガン
(51)【国際特許分類】
   B05B 7/02 20060101AFI20170508BHJP
   B05B 15/00 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   B05B7/02
   B05B15/00
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-81664(P2013-81664)
(22)【出願日】2013年4月9日
(65)【公開番号】特開2014-200776(P2014-200776A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2015年11月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】390028495
【氏名又は名称】アネスト岩田株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】小坂 正三
【審査官】 安藤 達也
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−020104(JP,A)
【文献】 実開平03−011818(JP,U)
【文献】 実開昭56−164050(JP,U)
【文献】 特表2003−525743(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0035759(US,A1)
【文献】 米国特許第03893621(US,A)
【文献】 国際公開第2011/062752(WO,A1)
【文献】 国際公開第1996/000130(WO,A1)
【文献】 米国特許第07694893(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B1/00〜B05B17/08
B05C1/00〜B05C21/00
A44C55/00〜A44C5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガン本体と、
前記ガン本体を貫通して配置される軸部の一端に係止される第1係止部と他端に係止される第2係止部とを有し、前記軸部を中心に回動操作される引金と、
を備え、
前記軸部は、
前記ガン本体を貫通する貫通孔内に移動できるように内蔵され、前記引金の前記第1係止部に回動可能に係止される第1止軸と、
前記貫通孔内に移動できるように内蔵され、前記引金の前記第2係止部に回動可能に係止される第2止軸と、
前記第1止軸と前記第2止軸との間に配置されるように前記貫通孔内に内蔵され、前記第1止軸と前記第2止軸とを互いに離間する方向に付勢させる弾性体と、から構成され
前記引金の前記第1係止部への前記第1止軸の係止は、前記第1係止部に形成された貫通する孔に前記第1止軸に形成された突起が挿入されることによってなされ、
前記引金の前記第2係止部への前記第2止軸の係止は、前記第2係止部に形成された貫通する孔に前記第2止軸に形成された突起が挿入されることによってなされていることを特徴とするスプレーガン。
【請求項2】
前記弾性体はスプリングバネによって構成されていることを特徴とする請求項1に記載のスプレーガン。
【請求項3】
前記スプリングバネは、前記第1止軸および前記第2止軸に係止されていることを特徴とする請求項2に記載のスプレーガン。
【請求項4】
前記貫通孔は、その長手方向に沿って両端側の径よりも中央部の径が小さいことを特徴とする請求項1に記載のスプレーガン。
【請求項5】
前記貫通孔は、その長手方向に沿って径が同じとなっていることを特徴とする請求項1に記載のスプレーガン。
【請求項6】
前記貫通孔は、前記第1止軸が配置される側の径と前記第2止軸が配置される側の径が異なって形成され、
前記第1止軸および前記第2止軸は、それぞれ、対応する貫通孔の径に応じた径を有することを特徴とする請求項1に記載のスプレーガン。
【請求項7】
ガン本体と、
前記ガン本体に形成される軸部の一端に係止される第1係止部と他端に係止される第2係止部とを有し、前記軸部を中心に回動操作される引金と、
を備え、
前記引金の前記第1係止部および第2係止部のうち少なくとも一方の係止部が係止される前記軸部は、
前記ガン本体に形成された有底孔内に移動できるように配置される止軸と、
前記有底孔の底部と前記止軸との間に配置され、前記止軸を前記底部から離間させる方向へ付勢させる弾性体と、から構成され
前記係止部への前記止軸の係止は、前記係止部に形成された貫通する孔に前記止軸に形成された突起が挿入されることによってなされていることを特徴とするスプレーガン。
【請求項8】
前記引金の前記第1係止部および第2係止部のうち他方の係止部が係止される前記軸部は、前記ガン本体に形成される突起体からなることを特徴とする請求項7に記載のスプレーガン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスプレーガンに係り、特に、その引金の取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
塗料を噴霧するスプレーガンは、たとえば下記特許文献1に示すように、塗料をニードル弁を介してガン本体の先端に取り付けられた噴射ノズルから噴射させるとともに、圧縮空気を該噴射ノズルの先端に噴射させて噴射塗料に衝突混合させるようになっている。
このように構成されたスプレーガンは、噴射塗料を、微粒化して噴霧できるようになっている。
この場合、噴射ノズルからの塗料の噴射および圧縮空気の該噴射ノズルの先端への噴射は、ガン本体に取り付けられた引金の回動操作によって、同時に行うことができるように構成されている。
【0003】
そして、該引金のガン本体への取付けは、たとえば図8(a)、(b)、(c)に示すようになされている。図8(a)は、スプレーガン1を一方の側から観た斜視図、図8(b)は、スプレーガン1を他方の側から観た斜視図、図8(c)は、スプレーガン1から引金を係止させる軸部を外した分解図である。
図8(a)、(b)、(c)に示すように、引金3は、ガン本体の銃身部2に貫通して配置される軸部30の一端が挿入される第1係止部3Aと他端が挿入される第2係止部3Bを有して構成され、該軸部30は、第1係止部3Aを挿入する側において頭部30Tを有し、第2係止部3Bを挿入する側において止輪30Fを嵌合させる溝30Mを有する軸体によって構成されている。
【0004】
これにより、引金3は、その第1係止部3Aがガン本体の銃身部2と軸体の頭部30Tの間に挟持され、第2係止部3Bがガン本体の銃身部2と軸体に嵌合された止輪30Fの間に挟持されて、ガン本体に対して該軸体を支点として回動操作できるように取り付けられるようになっている。
なお、図8(a)、(b)、(c)は、本発明の実施形態を示す図1(a)、(b)、(c)と対応して描かれたものであり、スプレーガン1の各部の構成は、本発明の実施形態の説明の際に、説明する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−253538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述したガン本体に対する引金の取付け構造は、たとえばメンテナンス時において、ガン本体から引金を取り外す場合、止輪を軸体から外すための特殊な工具を必要としたり、該止輪を紛失したりする不都合を有していた。止輪を軸体に取り付ける場合にも同様の不都合を有していた。
また、引金の第1係止部と第2係止部の離間距離に製造上のバラツキが生じることによって引金と本体又は引金と止軸、止輪の間に隙間が生じガタが生じるなどの問題を有していた。ガタを解消するため引金係止部の形状をハの字状にするなどして互いに一時的に接近させてガタを少なくすることが行われるが、製造上のバラツキを完全に解消、吸収するには不十分であり、スプレーガンの連続使用などによってガタが再発してしまうという問題があった。
【0007】
その他、異なる機種のスプレーガン本体の幅は同一寸法にすることが設計制約上難しいため、寸法がわずか数mm異なる場合であっても前述のガタ問題を回避するため引金や止軸などの引金関連部品は機種ごとに異なり、兼用化しにくいことがコスト上の課題であった。また止輪は凸凹した形状がむき出しになるため見た目が悪く、図8に示す従来例では止軸の左右が非対称となるため意匠的にも好ましいものではなかった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ガン本体に対して引金の取付けを信頼性よくできるとともに、該引金の取付けおよび取り外しを極めて容易に行うことができ、スプレーガン本体や引金の製造上のバラツキを吸収するとともに、本体幅が機種ごとにわずか異なる場合でも引金関連部品の兼用を可能にし、更には意匠的にも優れたスプレーガンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の構成によって把握される。
(1)本発明のスプレーガンは、ガン本体と、前記ガン本体を貫通して配置される軸部の一端に係止される第1係止部と他端に係止される第2係止部とを有し、前記軸部を中心に回動操作される引金と、を備え、前記軸部は、前記ガン本体を貫通する貫通孔に内蔵され、前記引金の前記第1係止部に回動可能に係止される第1止軸と、前記引金の前記第2係止部に回動可能に係止される第2止軸と、前記第1止軸と前記第2止軸との間に配置され、前記第1止軸と前記第2止軸とを互いに離間する方向に付勢させる弾性体と、から構成されることを特徴とする。
(2)本発明のスプレーガンは、(1)の構成において、前記引金の前記第1係止部への前記第1止軸の係止は、前記第1係止部に形成された孔に前記第1止軸に形成された突起が挿入されることによってなされ、前記引金の前記第2係止部への前記第2止軸の係止は、前記第2係止部に形成された孔に前記第2止軸に形成された突起が挿入されることによってなされていることを特徴とする。
(3)本発明のスプレーガンは、(1)の構成において、前記弾性体はスプリングバネによって構成されていることを特徴とする。
(4)本発明のスプレーガンは、(3)の構成において、前記スプリングバネは、前記第1止軸および前記第2止軸に係止されていることを特徴とする。
(5)本発明のスプレーガンは、(1)の構成において、前記貫通孔は、その長手方向に沿って両端側の径よりも中央部の径が小となっていることを特徴とする。
(6)本発明のスプレーガンは、(1)の構成において、前記貫通孔は、その長手方向に沿って径が同じとなっていることを特徴とする。
(7)本発明のスプレーガンは、(1)の構成において、前記貫通孔は、前記第1止軸が配置される側の径と前記第2止軸が配置される側の径が異なって形成され、前記第1止軸および前記第2止軸は、それぞれ、対応する貫通孔の径に応じた径を有することを特徴とする。
(8)本発明のスプレーガンは、ガン本体と、前記ガン本体に形成される軸部の一端に係止される第1係止部と他端に係止される第2係止部とを有し、前記軸部を中心に回動操作される引金と、を備え、前記引金の前記第1係止部および第2係止部のうち少なくとも一方の係止部が係止される前記軸部は、前記ガン本体に形成された有底孔内に配置される止軸と、前記有底孔の底部と前記止軸との間に配置され、前記止軸を前記底部から離間させる方向へ付勢させる弾性体と、から構成されることを特徴とする。
(9)本発明のスプレーガンは、(8)の構成において、前記引金の前記第1係止部および第2係止部のうち他方の係止部が係止される前記軸部は、前記ガン本体に形成される突起体からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
このように構成したスプレーガンによれば、ガン本体に対して引金の取付けを信頼性よくできるとともに、該引金の取付けおよび取り外しを極めて容易に行うことができ、スプレーガン本体や引金の製造上のバラツキを吸収するとともに、本体幅が機種ごとにわずか異なる場合でも引金関連部品の兼用を可能にし、更には意匠的にも優れたスプレーガンを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のスプレーガンの外観を示す構成図である。
図2】本発明のスプレーガンの断面を示す図である。
図3】本発明のスプレーガンの引金の取付け構造の実施形態1を示す断面図である。
図4】本発明のスプレーガンの引金の取付け構造の実施形態2を示す断面図である。
図5】本発明のスプレーガンの引金の取付け構造の実施形態3を示す断面図である。
図6】本発明のスプレーガンの引金の取付け構造の実施形態4を示す断面図である。
図7】本発明のスプレーガンの引金の取付け構造の実施形態5を示す断面図である。
図8】従来のスプレーガンの外観を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
(実施形態1)
図1(a)、(b)は、本発明のスプレーガンの外観を示す構成図である。図1(a)は、スプレーガン1を一方の側から観た斜視図であり、図1(b)は、スプレーガン1を他方の側から観た斜視図である。
【0013】
図1(a)、(b)に示すように、スプレーガン1は、銃身部2、引金3、および握り部4を備えて構成されている(この明細書では、銃身部2と握り部4をガン本体と称する場合がある)。スプレーガン1は、その引金3の操作によって、銃身部2の先端部(図中符号Aで示す)から塗料流と空気流が噴出され、互いに混合されて噴霧されるようになっている。ここで、スプレーガンの引金3の取付け構造の説明に先立って、スプレーガン1の全体の構成を概略的に説明する。
【0014】
図2は、図1(a)、(b)のII−II線における断面図である。
図2において、スプレーガン1の握り部4からは圧縮空気が空気ニップル5、空気通路6を介して空気弁部7に送り込まれ、さらに、空気通路6’を介して銃身部2の先端部(図中符号Aで示す)に送られるようになっている。また、握り部4の空気ニップル5に隣接する部分には圧縮空気の空気量調節装置8が設けられている。引金3は、支点α(後述する軸部30)を中心にして握り部4側へ引くことができ、該引金3によって押される空気弁棒9を介して空気弁部7を開き、空気通路6からの圧縮空気を空気通路6’に送るようになっている。
【0015】
また、空気弁棒9には、この空気弁棒9と同軸の延在部として形成されるニードル弁10が取り付けられている。ニードル弁10は、引金3が引かれていない状態では、ニードル弁バネ11によって銃身部2の先端部に取り付けられた噴射ノズル12の塗料噴出口12Pのシート部に押圧されてシールされるようになっている。
噴射ノズル12には、銃身部2に取り付けられたジョイント13が接続され、このジョイント13を通して塗料が供給されるようになっている。噴射ノズル12に供給された塗料は、噴射ノズル12のニードル弁10によるシールが解除された際に、塗料噴出口12Pから塗料流として噴出されるようになっている。
なお、銃身部2の後端部には塗料噴出量調節つまみ15が設けられ、塗料噴出量調節つまみ15の回転によって、噴射ノズル12の塗料噴出口12Pのシート部とニードル弁10の開度が調節され、塗料の噴出量を調節できるようになっている。
【0016】
また、噴射ノズル12の先端部には、この先端部を囲むようにして空気キャップ16が配置されている。この空気キャップ16はキャップカバー17を介して銃身部2に取り付けられている。空気キャップ16の内周面と噴射ノズル12の先端部の外周面との間には環状のスリットSが形成されるようになっている。前記空気通路6’からの圧縮空気は、空気弁部7が開かれた際に、スリットSから噴射ノズル12の先端部の周囲に沿って空気流を噴出するようになっている。
【0017】
空気キャップ16は、その先端側の面において、噴射ノズルを間にして一対の角(つの)部18が形成されている。空気キャップ16の角部18には、空気通路6’に連結される側面空気孔18Hが形成され、これら側面空気孔18Hからの空気流は、噴射ノズル12からの塗料流に交差するように噴射できるようになっている。これにより、噴射ノズル12からの塗料流は該空気流によって楕円形のスプレーパターンとして形成できるようになっている。
なお、銃身部2の後端部にはパターン開き調節つまみ20が設けられ、パターン開き調節つまみ20の回転によって、パターン開き調節弁21とシート部との開度が調節され、空気キャップ16の側面空気孔18Hへ送られる圧縮空気の流量調節がなされるようになっている。これにより、噴射ノズル12から噴出される塗料のスプレーパターンの扇状の広がりが調節できるようになっている。
【0018】
このように構成されたスプレーガン1において、塗料流と空気流を噴出させる操作を行う引金3は、図1(a)、(b)に示すように、その銃身部2との取付け側において、該銃身部2を間にするようにして第1係止部3Aと第2係止部3Bとが設けられた二股構造となっている。引金3は、その第1係止部3Aと第2係止部3Bが銃身部2を貫通して配置される軸部30の各端部に係止され、該軸部30を支点(図2に示すα)にして銃身部2に対して回動操作できるようになっている。
なお、図1(c)は、スプレーガン1から引金3を係止させる軸部30を外した分解図である。図1(c)から明らかなように、軸部30は、第1止軸331、スプリングバネ36、第2止軸332とから構成されている。
【0019】
図3(a)は、図1のIII−III線における断面を示す図である。なお、図3(a)の構成の理解を容易にするため、図3(b)には、引金3の押圧が解除された場合の軸部30の状態を示し、図3(c)には、引金3に係合される直前の軸部30の状態を示している。
【0020】
図3(a)において、ガン本体の銃身部2には、該銃身部2の中心軸と直交する方向に貫通孔31が設けられている。貫通孔31は、中心軸方向の中央部において径(d)が小さく、両端側において径(D)が大きく形成されている。小さな径(d)と大きな径(D)の間にはテーパ状の段差部32を有している。なお、以下の説明において、径の小さい貫通孔を小径の貫通孔31Pと称し、該貫通孔31の両端の形の大きな貫通孔をそれぞれ大径の第1貫通孔31Q1、第2の貫通孔31Q2と称する。
【0021】
図3(a)に示すように、大径の第1貫通孔31Q1には第1止軸331が配置され、大径の第2貫通孔31Q2には第2止軸332が配置されている。
第1止軸331は、大径の第1貫通孔31Q1内で、その軸方向に所定範囲内で移動ができるようになっている。第1止軸331は、その小径の貫通孔31P側の端面において、第1止軸331と同軸に突出軸341が形成されている。この突出軸341は小径の貫通孔31Pの内径よりも小さな外径を有している。この突出軸341は、第1止軸331の大径の第1貫通孔31Q1内を移動する範囲において、少なくとも先端が小径の貫通孔31P内に配置されるようになっている。第1止軸331の突出軸341と小径の貫通孔31Pの間には、後述のスプリングバネ36が挿入できる程度の隙間を有するようになっている。
【0022】
また、第1止軸331は、突出軸341が形成された側と反対側の端面において、第1止軸331と同軸に係止軸351が形成されている。この係止軸351は、引金3の第1係止部3Aに形成された孔3AHに緩やかに挿入できる程度の径を有している。
なお、係止軸351は、第1止軸331が大径の第1貫通孔31Q1内に充分に押し込まれた際に、該第1貫通孔31Q1から突出していない程度の長さで形成されている。引金3の第1係止部3Aが係止軸351に係合できるようにするためである(図3(c)参照)。
【0023】
第2止軸332は、大径の第2貫通孔31Q2内で、その軸方向に所定範囲内で移動ができるようになっている。第2止軸332は、その小径の貫通孔31P側の端面において、第2止軸332と同軸に突出軸342が形成されている。この突出軸342は小径の貫通孔31Pの内径よりも小さな外径を有している。この突出軸342は、第2止軸332の大径の第2貫通孔31Q2内を移動する範囲において、少なくとも先端が小径の貫通孔31P内に配置されるようになっている。第2止軸332の突出軸342と小径の貫通孔31Pの間には、後述のスプリングバネ36が挿入できる程度の隙間を有するようになっている。
【0024】
また、第2止軸332は、突出軸342が形成された側と反対側の端面において、第2止軸332と同軸に係止軸352が形成されている。この係止軸352は、引金3の第2係止部3Bに形成された孔3BHに緩やかに挿入できる程度の径を有している。
なお、係止軸352は、第2止軸332が大径の第2貫通孔31Q2内に充分に押し込まれた際に、該第2貫通孔31Q2から突出していない程度の長さで形成されている。引金3の第2係止部3Bが係止軸352に係合できるようにするためである(図3(c)参照)。
【0025】
さらに、貫通孔31には、小径の貫通孔31Pの内径とほぼ等しい外径を有するスプリングバネ36が挿入されている。このスプリングバネ36は、その一端側において第1止軸331の突出軸341を挿通させ、他端側において第2止軸332の突出軸342を挿通させるように配置されている。スプリングバネ36は、引金3の第1係止部3Aによって係止された第1止軸331と引金3の第2係止部3Bによって係止された第2止軸332の間に配置され、該スプリングバネ36によって第1止軸331と第2止軸332が互いに離間する方向に付勢されるようになっている。
【0026】
引金3の第1係止部3Aと第2係止部3Bの押圧が解除された場合、貫通孔31内の第1止軸331、スプリングバネ36、第2止軸332は、図3(b)に示すように、第1止軸331が大径の第1貫通孔31Q1内に位置づけられた状態では、スプリングバネ36は、第2止軸332を大径の第2貫通孔31Q2から飛び出させるほどの長さを有している。これにより、第2止軸332をも大径の第2貫通孔31Q2内に配置させようとした場合、スプリングバネ36は縮み、その際の圧縮力によって第1止軸331と第2止軸332を離間する方向に力が発生するようになる。
【0027】
なお、第1止軸331、スプリングバネ36、第2止軸332は、それぞれ、独立した別体のものとして構成されるが、図3(b)に示すように、銃身部2の貫通孔31に配置された場合には、スプリングバネ36の一端は、たとえば第1止軸331に形成された孔に挿入されることによって該第1止軸331に係止され、他端も第2止軸332に係止されるように構成することによって、それらが分離できないようにすることが好ましい。引金3を軸部30から外した場合に、これら第1止軸331、スプリングバネ36、第2止軸332が一体となって、貫通孔31から抜け落ちてしまうのを回避するためである。
【0028】
図1(a)のように構成した引金3の取付け構造によれば、第1止軸331、第2止軸332をスプリングバネ36の付勢力に抗して貫通孔31内に押し込むことができ、引金3を、その第1係止部3A、第2係止部3Bがそれぞれ第1止軸331、第2止軸332に容易に対向させるようにして、配置させることができるようになる。
その後は、スプリングバネ36の付勢力によって、第1止軸331の係止軸351、第2止軸332の係止軸352が、それぞれ引金3の第1係止部3Aの孔3AH、第2係止部3Bの孔3BHに挿入され、引金3は、第1止軸331、スプリングバネ36、第2軸部332によって構成される銃身部2の軸部30に係止されるようになり、該軸部30を支点として回動できるようになる。この場合、たとえば引金3の第1係止部3Aと第2係止部3Bの離間距離に製造上のバラツキがあっても、スプリングバネ36の付勢力によって第1係止部3Aに第1止軸331が密着され、第2係止部3Bに第2止軸332が密着されるため、該バラツキの不都合を解消できる効果を奏する。
【0029】
さらに、銃身部2の貫通孔31に配置された第1止軸331、スプリングバネ36、第2止軸332は、互いに分離できないように構成でき、貫通孔31から抜け落ちないように構成することができるようになる。
したがって、このように構成した引金3の取付け構造によれば、ガン本体に対して引金3の取付けを信頼性よくできるとともに、該引金3の取付けおよび取り外しを容易に行うことができるようになる。
また、軸部30にたとえば止輪等を必要としないことから、意匠的にも優れたものが得られる。
【0030】
(実施形態2)
図4(a)、(b)、(c)は、本発明の実施形態2の引金の取付け構造を示す図で、図3(a)、(b)、(c)と対応づけて描いている。
図4(a)、(b)、(c)において、図3(a)、(b)、(c)と比較して異なる構成は、図3(a)、(b)、(c)に示した大径の第2貫通孔31Q2にあり、この第2貫通孔31Q2は、図4(a)、(b)、(c)に示した小径の前記貫通孔31Pを銃身部2の表面側へ若干延在された延在部31PEと、この延在部31PEの端部から銃身部2の表面側へ末広がり状となるテーパ孔31QTとで構成するようになっている。
【0031】
このように構成された貫通孔31は、前記テーパ孔31QTをダイカストの中子で抜くことができ、実施形態1に示した形状の貫通孔31よりも簡単に構成できる効果を奏する。即ち実施形態1に示した形状の貫通孔は両側からの本体加工が必要になるが、実施形態2に示した貫通孔は図4に準ずれば第1止軸側からの一方向のみからの本体加工で済む。
第2止軸332の外径は小径の貫通孔31Pの内径とほぼ等しく形成され、係止軸352との境界部にはフランジ部355が形成されている。
フランジ部355は、その径を係止軸352の径より大きくすることにより、該係止軸352の引金3の第2係止部3Bとの係止を確実なものとしている。
また、フランジ部355は、第2止軸332を第2貫通孔31Q2内に充分に押し込めた場合にテーパ孔31QTの側面に当接するようになるが、その際のフランジ部355の径は、係止軸352が第2貫通孔31Q2から突出していない程度に設定されている(図4(c)参照)。引金3の第2係止部3Bが係止軸3Bに係合できるようにするためである。
このように構成した場合も、実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0032】
(実施形態3)
図5(a)、(b)は、本発明の実施形態3の引金の取付け構造を示す図で、それぞれ、図3(a)、(c)と対応づけて描いている。
図5(a)、(b)において、図3(a)、(c)と比較して異なる構成は、貫通孔31において大径の貫通孔31Q1、31Q2のみから構成され、小径の貫通孔31Pは形成されていない構成となっている。
【0033】
大径の貫通孔31Q1、31Q2内において、その一端側から他端側にかけて、第1止軸331、スプリングバネ36、第2止軸332が配置されていることは実施形態1と同様となっている。そして、スプリングバネ36は、その外径が貫通孔31の内径とほぼ等しく構成されている。
また、第1止軸331、第2止軸332は、それぞれ、係止軸351、352が形成されているが、突出軸(図3において符号341、342で示す)は形成されていない構成となっている。小径の貫通孔(図3において符号31Pで示す)を形成していないことによる。
このように構成した場合も、実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0034】
(実施形態4)
図6(a)、(b)は、本発明の実施形態4の引金の取付け構造を示す図で、図3(a)、(c)と対応づけて描いている。
図6(a)、(b)において、図3(a)、(c)と比較して異なる構成は、図3(a)、(c)の場合と同様に、貫通孔31において大径の貫通孔31Q1、31Q2のみから構成され、小径の貫通孔31Pは形成されていない構成となっている。
しかし、図3(a)、(c)の場合と異なる構成は、第1止軸331、第2止軸332に、それぞれ、突出軸341、342が形成され、第1止軸331、第2止軸332の間に配置されるスプリングバネ36は、その内径が突出軸341、342の外径とほぼ等しく形成され、第1止軸331の突出軸341、第2止軸332の突出軸342を挿通するようになっている。
このように構成した場合も、実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0035】
(実施形態5)
図7(a)は、本発明の実施形態5の引金の取付け構造を示す図で、図3(a)と対応づけて描いている。
図7(a)において、図3(a)と比較して異なる点は、まず、第1止軸331、第2止軸332が内蔵される孔は、それぞれ、有底孔31A、有底孔31Bとして構成されていることにある。このため、図3(a)に示すように貫通孔31は形成されていないものとなっている。
そして、第1止軸331が内蔵される有底孔31Aには、該第1止軸331を有底孔31Aの底部41Aから離間させる方向へ付勢させるスプリングバネ36Aが配置されている。また、第2止軸332が内蔵される有底孔31Bには、該第2止軸332を有底孔31Bの底部41Bから離間させる方向へ付勢させるスプリングバネ36Bが配置されている。
この場合において、有底孔31Aの底部41Aにはスプリングバネ36Aを位置決めするための突起部42Aが形成され、この突起部42Aはスプリングバネ36A内に挿入されている。同様に、有底孔31Bの底部41Bにはスプリングバネ36Bを位置決めするための突起部42Bが形成され、この突起部42Bはスプリングバネ36B内に挿入されている。
また、図7の(b)は、図7(a)の構成に対する改変例を示しており、たとえば、図7(a)に示した第1止軸331を、上述に示したような構成とせず、単に銃身部2に一体に形成した突起体50として構成するようにしたものである。このようにした場合、銃身部2に、上述したような有底孔31A、第1止軸331、スプリングバネ36Aを用いることはなく、簡単な構成とすることができる効果を奏する。
このように構成した場合も、実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0036】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0037】
1……スプレーガン、
2……銃身部、
3……引金、
3A……第1係止部、
3B……第2係止部、
4……握り部、
5……空気ニップル、
6、6’……空気通路、
7……空気弁部、
8……空気量調節装置、
9……空気弁棒、
10……ニードル弁、
11……ニードル弁バネ、
12……噴射ノズル、
12P……塗料噴出口、
13……ジョイント、
15……塗料噴出量調節つまみ、
16……空気キャップ、
17……キャップカバー、
18……角部、
18H……側面空気孔、
20……パターン開き調節つまみ、
21……パターン開き調節弁、
30……軸部、
31……貫通孔、
31A、31B……有底孔、
31P……小径の貫通孔
31Q1……大径の第1貫通孔、
31Q2……大径の第2貫通孔、
32……段差部、
331……第1止軸、
332……第2止軸、
341、342……突出軸、
351、352……係止軸、
355……フランジ部、
36、36A、36B……スプリングバネ、
50……突起体。
図1
図2
図3
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図8