(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6128522
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】回転中心の独立制御可能な回転パラレル機構
(51)【国際特許分類】
B25J 11/00 20060101AFI20170508BHJP
【FI】
B25J11/00 D
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-125871(P2013-125871)
(22)【出願日】2013年6月14日
(65)【公開番号】特開2015-448(P2015-448A)
(43)【公開日】2015年1月5日
【審査請求日】2016年5月9日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2013年度精密工学会春季大会 学術講演会 講演論文集(発行所:公益社団法人精密工学会、発行日:平成25年2月27日)[刊行物等] http://www.iri.upc.edu/ck2013/#program http://www.iri.upc.edu/ck2013/papers/28.pdf(掲載日:平成25年5月13日)
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100130133
【弁理士】
【氏名又は名称】曽根 太樹
(74)【代理人】
【識別番号】100171251
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】武田 行生
(72)【発明者】
【氏名】池田 剛
(72)【発明者】
【氏名】松浦 大輔
【審査官】
中田 善邦
(56)【参考文献】
【文献】
特表2012−525275(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/014720(WO,A1)
【文献】
特開平10−329078(JP,A)
【文献】
特表2008−506545(JP,A)
【文献】
特開2001−121460(JP,A)
【文献】
Masataka Tanabe, Yukio Takeda,Kinematic Design of a Translational Parallel Manipulator with Fine Adjustment of Platform Orientation,Advances in Mechanical Engineering,米国,Hindawi Publishing Corporation,2010年,Volume 2010, Article ID 485358, 9pages
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J1/00−21/02,
B23Q1/44,7/04,
A61B34/30,
F16H19/00−37/16,49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静止節と、
前記静止節に対して並進3自由度と回転3自由度を有した出力節と、
前記静止節と出力節との間に延設された第1の運動連鎖と、
前記静止節と出力節との間に延設された第2の運動連鎖と、
前記静止節と出力節との間に延設された第3の運動連鎖とを具備し、
前記第1の運動連鎖は、前記静止節に対する前記出力節の並進3自由度をアクチュエータにより制御し、回転1自由度を構造により拘束する5つの対偶要素から成る直列連鎖であり、
前記第2の運動連鎖は、前記静止節に対する前記出力節の回転3自由度のうち、前記第1の運動連鎖が拘束する回転1自由度とは異なる回転1自由度をアクチュエータにより拘束する6つの対偶要素から成る直列連鎖であり、
前記第3の運動連鎖は、前記静止節に対する前記出力節の回転3自由度のうち、前記第1と第2の運動連鎖が拘束する回転2自由度とは異なる回転1自由度をアクチュエータにより拘束する6つの対偶要素から成る直列連鎖であることを特徴とした回転パラレル機構。
【請求項2】
前記第1の運動連鎖が、異なる3軸方向に配向された3つの能動的直進対偶と、対偶軸が互いに交差するように配向された2つの受動的回転対偶とを具備する請求項1に記載の回転パラレル機構。
【請求項3】
前記第2と第3の運動連鎖の各々は、前記静止節に連結された1つの能動的回転対偶を具備する請求項1または2に記載の回転パラレル機構。
【請求項4】
前記第2の運動連鎖は、前記静止節に連結された能動的回転対偶の対偶軸とは異なる方向に互いに平行に延びる対偶軸を有した連続する3つの受動的回転対偶と、前記能動的回転対偶の対偶軸および3つの受動的回転対偶の対偶軸に対して非平行な方向に互いに平行に延びる対偶軸を有した連続する2つの受動的回転対偶とを更に具備し、
前記第3の運動連鎖は、前記静止節に連結された1つの能動的回転対偶の対偶軸とは異なる方向に互いに平行に延びる対偶軸を有した連続する3つの受動的回転対偶と、前記能動的回転対偶の対偶軸および3つの受動的回転対偶の対偶軸に対して非平行な方向に互いに平行に延びる対偶軸を有した連続する2つの受動的回転対偶とを更に具備し、
前記第2の運動連鎖の互いに平行な対偶軸を有した連続する3つの受動的回転対偶の対偶軸と、互いに平行な対偶軸を有した連続する2つの受動的回転対偶の対偶軸との双方に垂直な空間ベクトルによって定められる拘束軸は、前記第3の運動連鎖の互いに平行な対偶軸を有した連続する3つの受動的回転対偶の対偶軸と、互いに平行な対偶軸を有した連続する2つの受動的回転対偶の対偶軸との双方に垂直な空間ベクトルによって定められる拘束軸とが互いに非平行である請求項3に記載の回転パラレル機構。
【請求項5】
前記第1の運動連鎖の2つの受動的回転対偶の対偶軸に対して垂直な空間ベクトルは、前記第2と第3の運動連鎖の拘束軸を定める空間ベクトルに対して線形独立となっている請求項4に記載の回転パラレル機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転中心の独立制御可能な回転パラレル機構に関する。
【背景技術】
【0002】
腹腔鏡手術や眼科手術などのための低侵襲性手術、人工関節骨頭や光学部品の加工では、ごく狭い範囲内に限定された回転中心の周囲での精密かつ比較的大きな姿勢角度変化を伴う作業が必要とされている。そうした作業を可能とする装置、機構の開発がなされており、様々なマイクロ手術の支援装置や低侵襲性手術ロボットが提案されている。
【0003】
非特許文献1には、X軸、Y軸、Z軸方向の並進3自由度と、不動点周りの回転3自由度を有する脳外科および眼科手術支援用ロボットが開示されている。このロボットでは、Rガイドを用いて不動点を規定し、このRガイドを3次元空間内で移動させることによって、不動点を変更できるようになっている。
【0004】
非特許文献2、3には、処置具動作機構(アクティブ機構)と、位置調整機構(パッシブ機構)とから成る装置が開示されている。処置具動作機構は3本のアームで処置具を保持するパラレル機構に構成されており、不動点を中心とした2自由度、処置具軸方向の並進1自由度、処置具長軸周りの回転1自由度の4自由度を有している。位置調整機構は2本のパッシブアームにより構成されたパラレル機構であり、これを手動操作して各関節を固定することで、並進3自由度の位置決めが可能となっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Young Min Baek, Yasuhide Kozuka, Naohiko Sugita, Akio Morita, Shigeo Sora, Ryo Mochizuki, and Mamoru Mitsuishi, 「Highly Precise Master-Slave Robot System for Super Micro surgery」, Proceedings of the 2010 3rd IEEE RAS and EMBS
【非特許文献2】Jumpei Arata, Yasunori Tada, Hiroaki Kozuka, Tomohiro Wada, Yoshitaka Saito, Norio Ikeda, Yuichiro Hayashi, Masazumi Fuhii, Yasukazu Kajita, Masaaki Mizuno, Toshihiko Wakabayashi, Jun Yoshida, Hideo Fujimoto, 「Neurosugical robotic system for brain tumor removal」, Int J CARS, Vol. 6(3), pp. 375, 2011
【非特許文献3】荒田純平、和田朋広、池本純一、藤本英雄、「ニューロサージカル・モーションベースの開発」、ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集 2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1のロボットは、アクチュエータで駆動されるジョイントが直列に配置され可動部の重量が増大し、剛性が低く、大型のアクチュエータを必要とする。また、非特許文献1のロボットでは、可動部のジョイントの全てがアクチュエータを備えているため、例えば術野や加工領域にもアクチュエータが配置されることとなり、そうしたアクチュエータを保護することが困難である。
【0007】
非特許文献2、3の装置では、処置具動作機構は、位置調整機構上に搭載されており、位置調整機構によって不動点を変更できるようになっている。然しながら、非特許文献2、3の装置では、処置具動作機構と位置調整機構とを重畳配置して、回転中心の位置制御と回転中心周りの回転制御を行うようにしているため、構造が複雑で、更に、回転動作用のアクチュエータが可動部、特にベースおよびその近辺に限定せずに処置具の近辺にも配置されるため、非特許文献1と同様にその保護が困難で可動部の重量が比較的重くなる。
【0008】
本発明は、こうした従来技術の問題を解決することを技術課題としており、作業を行う部分の近くの可動部にアクチュエータを配設する必要がなく、構造が単純で、軽量、コンパクトな回転パラレル機構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するために、本発明の回転パラレル機構は、静止節と、前記静止節に対して並進3自由度と回転3自由度を有した出力節と、前記静止節と出力節との間に延設された第1の運動連鎖と、前記静止節と出力節との間に延設された第2の運動連鎖と、前記静止節と出力節との間に延設された第3の運動連鎖とを具備し、
前記第1の運動連鎖は、前記静止節に対する前記出力節の回転1自由度を構造的に拘束し、並進3自由度をアクチュエータにより拘束する5つの対偶要素から成る直列連鎖であり、前記第2の運動連鎖は、前記静止節に対する前記出力節の回転3自由度のうち、前記第1の運動連鎖が拘束する回転1自由度とは異なる回転1自由度をアクチュエータにより拘束する6つの対偶要素から成る直列連鎖であり、前記第3の運動連鎖は、前記静止節に対する前記出力節の回転3自由度のうち、前記第1の運動連鎖が拘束する回転1自由度と第2の運動連鎖のアクチュエータが拘束する回転1自由度とは異なる回転1自由度をアクチュエータが拘束する6つの対偶要素から成る直列連鎖であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、回転中心制御のための第1の運動連鎖と、回転運動制御のための第2と第3の運動連鎖とを有する5自由度の回転パラレル機構が提供される。該回転パラレル機構は、簡単な構成で高い制御性を有しており、回転運動制御用の第2と第3の運動連鎖内のアクチュエータを駆動することによって、出力節は、機構外の1つの回転中心周りの純粋な回転運動を行い、回転中心制御用の第1の運動連鎖内のアクチュエータを駆動すると、出力リンクは、その姿勢を変化させることなく並進運動を行う。
【0011】
本発明によれば、第1〜第3の連鎖の各々のアクチュエータを出力節から離れた静止節上または静止節の近傍に配置することができる。これにより、手術ロボットや加工機等において、アクチュエータを術野や加工領域から離して配置することによって、該アクチュエータを術野や加工領域内で飛散する液滴や組織片、加工屑から保護することが可能となる。
【0012】
また、本発明によれば、可動部を構成する受動的ジョイントまたは受動的対偶として弾性部材を用いることが可能で、低発塵性のロボットを構成することができる。
更に、本発明によれば、可動部にアクチュエータを配設する必要がないので、構造が単純で軽量、コンパクトなロボットを構成可能である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、
図1を参照して、本発明の1つの実施形態を説明する。
本発明では、静止節と出力節との間に、出力節の回転運動の中心の位置を制御する1つの連鎖(回転中心制御用連鎖)と、出力節の回転運動を制御する2つの連鎖(回転運動制御用連鎖)が配置される。回転中心制御用連鎖は、一例として、回転軸が交差する2つの回転ジョイントまたは回転対偶と、3軸方向に並進運動のみを行うアクチュエータとを備える。回転中心制御用連鎖は、上記3軸方向に直交する直進対偶を備えた構成に限定されず、並進パラレル機構によって構成してもよい。つまり、回転中心制御用連鎖は直列連鎖である必要はなく、また、全てのアクチュエータを静止節に配置してもよい。回転運動制御用連鎖は、6自由度の直列連鎖として、静止節上に配置された1つの能動的回転ジョイントまたは回転対偶と、5つの受動的ジョイントまたは受動的対偶とを備えている。
【0015】
図1を参照すると、回転パラレル機構10は、静止節としてのベース12、出力節としての出力リンク14、該出力リンク14のための回転中心制御用連鎖としての第1の運動連鎖16、出力リンク14のための回転運動制御用連鎖としての第2と第3の運動連鎖18、20を具備している。
【0016】
第1の運動連鎖16は、3つのアクチュエータとして能動的直進対偶16a、16b、16cと、2つの受動的回転対偶16d、16eを備えている。第1の運動連鎖16は、その一端において、3つの能動的直進対偶16a、16b、16cのうち1つの能動的直進対偶16aがベース12に連結されており、他端において、2つの受動的回転対偶16d、16eの一方の受動的回転対偶16eが出力リンク14に連結されている。
【0017】
3つの能動的直進対偶16a、16b、16cの対偶軸W11、W12、W13は異なる3軸の各々に沿って延びている。能動的直進対偶16a、16b、16cは、例えばエアシリンダー、リニアモーター、ボールねじとナット等によって構成することができる。2つの受動的回転対偶16d、16eは、転がり軸受やジャーナル軸受のような軸受、捻転可能な弾性手段、例えば板バネやコイルばね或いは円柱状のゴムまたはエラストマー部材から構成することができ、各々の対偶軸W14、W15が互いに交差するように配向されている。このように、2つの回転対偶軸W14、W15が互いに交差するように回転対偶16d、16eを配向することによって、対偶軸W14、W15の交点Opが出力リンク14の回転中心となる。また、出力リンク14は、対偶軸W14、W15の双方に垂直な空間ベクトルにより定められる軸線(拘束軸)周りの回転動作が拘束される。能動的直進対偶16a、16b、16cを各々の対偶軸W11、W12、W13方向に駆動することによって、交点Opが三軸方向に並進移動する。その間、出力リンク14は拘束軸周りに回転しない。
【0018】
回転パラレル機構10では、出力リンク14の運動は並進3自由度と、回転2自由度の5自由度となっている。第2と第3の運動連鎖18、20は、この出力リンク14の並進運動に対応しつつ、回転運動を創成するため、1つの能動対偶と5つの受動対偶から成る6自由度の連鎖となっている。すなわち、第2の運動連鎖18は、ベース12に固定された1つの能動的回転対偶18aと、5つの受動的回転対偶または直進対偶18b、18c、18d、18e、18fとを備えて、6自由度の直列連鎖を形成している。第3の運動連鎖20も第2の運動連鎖18と同様に、ベース12に固定された1つの能動的回転対偶20aと、5つの受動的回転対偶または直進対偶20b、20c、20d、20e、20fとを備えて、6自由度の直列連鎖を形成している。
【0019】
本発明では、2つの回転運動制御用連鎖の各々の能動的回転対偶を固定したときに、出力節の1軸周りの回転運動が拘束される。回転パラレル機構10では、ベース12と出力リンク14とを連結する第1の運動連鎖16は、各々その構造から出力リンク14の特定の方向の回転運動を拘束し、第1〜第3の運動連鎖内のアクチュエータ16a、16b、16c、18a、20aを固定したときに、出力リンク14の特定の方向の運動を拘束するようになっている。
【0020】
出力リンク14の並進の3自由度は第1の運動連鎖により完全に拘束(=制御)される、つまり、第1の連鎖の全ての能動的直進対偶16a、16b、16cを固定することによって、出力リンク14の並進3自由度が拘束される。一方、第1の運動連鎖16は、回転対偶16d、16eの対偶軸W14、W15の双方に垂直な方向に出力リンク14の回転運動を拘束する。既述したように、本発明では、2つの回転運動制御用連鎖の各々の能動的回転対偶を固定したときに、出力節の1軸周りの回転運動が拘束される。また、出力節の位置が変化しても、この条件が満足されるような対偶および方向が選択される。従って、第1の運動連鎖16の能動的直進対偶16a、16b、16cおよび第2と第3の運動連鎖18、20の能動的回転対偶18a、20aの変位を決定したときに、出力リンク14の位置および姿勢が一意に決定されるようにするためには、第2と第3の運動連鎖18、20の能動的回転対偶18a、20aを固定した時に、出力リンク14の回転の2自由度が拘束されるようにすればよい。そのように、第2と第3の運動連鎖18、20の受動的対偶18b〜18fおよび20b〜20fを決定することによって、5つの能動的対偶16a、16b、16c、18a、20aによって、出力リンク14の並進3自由度、回転2自由度の計5自由度の運動が制御可能となる。そのような、第2と第3の運動連鎖18、20を実現する対偶の組合せを表1に示す。
【表1】
【0021】
表1において、Rは回転対偶、Pは直進対偶を示し、最も左側の対偶がベース12に連結されている能動的回転対偶18a、20aを表し、最も右側の対偶が出力リンク14に連結されている対偶18f、20fを示している。また、「′」或いは「″」の記号が付されている複数の回転対偶Rは、同じ記号の付されている回転対偶同士(その対偶軸)が互いに平行となるように配向されていることを示している。また、「′」或いは「″」の記号が付されている回転対偶Rおよびこうした記号が付されていない回転対偶Rは、互いに非平行に配向されていることを示している。
【0022】
次に、
図2を参照して、本発明の回転パラレル機構の具体的な一例として、表1の組合せ1(RR′R′R′R″R″)による第2と第3の運動連鎖を有した回転パラレル機構100を説明する。
【0023】
図2において、回転パラレル機構100は、静止節としてのベース102、出力節としての出力リンク104、該出力リンク104の回転中心の位置制御用の第1の運動連鎖106、出力リンク104の回転運動を制御するための第2と第3の運動連鎖108、110を具備している。
【0024】
第1の運動連鎖106は、3つの能動的直進対偶106a、106b、106cと、2つの受動的回転対偶106d、106eを備えた直列連鎖を構成している。第1の運動連鎖106は、その一端において、3つの直進対偶106a、106b、106cのうち1つの直進対偶106aがベース102に連結されており、他端において、2つの回転対偶106d、106eの一方の回転対偶106eが出力リンク104に連結されている。
【0025】
3つの直進対偶106a、106b、106cの対偶軸W11、W12、W13は平行ではない異なる3軸(直交3軸を含む)の各々に沿って延びている。能動的直進対偶106a、106b、106cは、例えばエアシリンダー、リニアモーター、ボールねじとナット等によって構成することができる。2つの回転対偶106d、106eは、転がり軸受やジャーナル軸受のような軸受、捻転可能な弾性手段、例えば板バネやコイルばね或いは円柱状のゴムまたはエラストマー部材から構成することができ、各々の対偶軸W14、W15が互いに交差するように配向されている。このように、2つの回転対偶軸W14、W15が互いに交差するように回転対偶106d、106eを配向することによって、対偶軸W14、W15の交点Opが出力リンク104の回転中心となる。また、出力リンク104は、対偶軸W14、W15の双方に垂直な空間ベクトルにより定められる軸線(拘束軸)周りの回転動作が拘束される。能動的直進対偶106a、106b、106cを各々の対偶軸W11、W12、W13方向に駆動することによって、交点Opが三軸方向に並進移動する。その間、出力リンク104は拘束軸周りには回転しない。
【0026】
第2の運動連鎖108は、ベース102に固定された1つの能動的回転対偶108aと、5つの受動的回転対偶108b、108c、108d、108e、108fとを備えて、6自由度の直列連鎖を形成している。能動的回転対偶108aは、電動モーター、油圧モーター、エアモーター等から構成することができ、5つの受動的回転対偶108b、108c、108d、108e、108fは、転がり軸受やジャーナル軸受のような軸受、捻転可能な弾性手段、例えば板バネやコイルばね或いは円柱状のゴムまたはエラストマー部材から構成することができる。
【0027】
本実施形態では、ベース102側に配設されている3つの受動的回転対偶108b、108c、108dは、その対偶軸W22、W23、W24が互いに平行で、かつ、能動的回転対偶108aの対偶軸W21とは非平行となるように配向されている。出力リンク104側の2つの受動的回転対偶108e、108fは、その対偶軸W25、W26が互いに平行で、かつ、能動的回転対偶108aの対偶軸W21および受動的回転対偶108b、108c、108dの対偶軸W22、W23、W24とは非平行となるように配向されている。
【0028】
このように、対偶軸W22、W23、W24および対偶軸W25、W26を非平行とすることによって、出力リンク104は、能動的回転対偶108aを拘束したときに、対偶軸W22、W23、W24および対偶軸W25、W26の双方に垂直な空間ベクトルにより定められる軸線(拘束軸)周りの回転運動が拘束される。
【0029】
第3の運動連鎖110も第2の運動連鎖108と同様に、ベース102に固定された1つの能動的回転対偶110aと、5つの受動的回転対偶110b、110c、110d、110e、110fとを備えて、6自由度の連鎖を形成している。能動的回転対偶110aは、電動モーター、油圧モーター、エアモーター等から構成することができ、5つの受動的回転対偶110b、110c、110d、110e、110fは、転がり軸受やジャーナル軸受のような軸受、捻転可能な弾性手段、例えば板バネやコイルばね或いは円柱状のゴムまたはエラストマー部材から構成することができる。
【0030】
ベース102側に配設されている3つの受動的回転対偶110b、110c、110dは、その対偶軸W32、W33、W34が互いに平行で、かつ、能動的回転対偶110aの対偶軸W31とは非平行となるように配向されている。出力リンク104側の2つの受動的回転対偶110e、110fは、その対偶軸W35、W36が互いに平行で、かつ、能動的回転対偶110aの対偶軸W31および受動的回転対偶110b、110c、110dの対偶軸W32、W33、W34とは非平行となるように配向されている。
【0031】
このように、対偶軸W32、W33、W34および対偶軸W35、W36を非平行とすることによって、出力リンク104は、能動的回転対偶110aを拘束したときに、対偶軸W32、W33、W34および対偶軸W35、W36の双方に垂直な軸線(拘束軸)周りの回転運動が拘束される。
【0032】
図2において、第1の運動連鎖の拘束軸(対偶軸W14、W15の双方に垂直な軸線)、第2の運動連鎖108の拘束軸(対偶軸W22、W23、W24および対偶軸W25、W26の双方に垂直な軸線)および第3の運動連鎖110の拘束軸(対偶軸W32、W33、W34および対偶軸W35、W36の双方に垂直な軸線)を定める空間ベクトルは互いに線形独立であり、該3つの空間ベクトルの始点を同一点にしたときに、該3の空間ベクトルは同一平面内には存在しない。こうした条件下において、回転パラレル機構100は機能を発揮し、条件を満たさなくなると回転パラレル機構100は動作不能となる。従って、回転パラレル機構100の制御においては、上記の条件が満たされなくなる場合を除外するようなプログラムまたはインターロックを組むことが好ましい。
【符号の説明】
【0033】
10 回転パラレル機構
12 ベース
14 出力リンク
16 第1の運動連鎖
16a 能動的直進対偶
16b 能動的直進対偶
16c 能動的直進対偶
16d 受動的回転対偶
16e 受動的回転対偶
18 第2の運動連鎖
18a 能動的回転対偶
18b 受動的回転対偶または直進対偶
18c 受動的回転対偶または直進対偶
18d 受動的回転対偶または直進対偶
18e 受動的回転対偶または直進対偶
18f 受動的回転対偶または直進対偶
20 第3の運動連鎖
20a 能動的回転対偶
20b 受動的回転対偶または直進対偶
20c 受動的回転対偶または直進対偶
20d 受動的回転対偶または直進対偶
20e 受動的回転対偶または直進対偶
20f 受動的回転対偶または直進対偶
100 回転パラレル機構
102 ベース
104 出力リンク
106 第1の運動連鎖
106a 能動的直進対偶
106b 能動的直進対偶
106c 能動的直進対偶
106d 受動的回転対偶
106e 受動的回転対偶
108 第2の運動連鎖
108a 能動的回転対偶
108b 受動的回転対偶
108c 受動的回転対偶
108d 受動的回転対偶
108e 受動的回転対偶
108f 受動的回転対偶
110 第3の運動連鎖
110a 能動的回転対偶
110b 受動的回転対偶
110c 受動的回転対偶
110d 受動的回転対偶
110e 受動的回転対偶
110f 受動的回転対偶