(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記焼結助剤由来の金属酸化物が、Cu、Mn、Fe、Mo、Co、Zn、及びNiよりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む酸化物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の固体酸化物型燃料電池。
前記焼結助剤が、Cu、Mn、Fe、Mo、Co、Zn、及びNiよりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む金属であることを特徴とする請求項4又は5に記載の固体酸化物型燃料電池の製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料電池として、固体電解質を用いた固体電解質形燃料電池が知られている。固体電解質形燃料電池では、通常、固体電解質層の各面に燃料極と空気極とを備えた単セルが複数個使用される。つまり、単セルを多数積層してスタックを形成し、燃料極に燃料ガスを供給するとともに、空気極に酸化剤ガスを供給し、水素等の燃料と空気中の酸素とを固体電解質層を介して化学反応させることによって電力を発生させる。
【0003】
単セルを多数積層してスタックを形成するときに、単セルと単セルとの間に、インターコネクタとよばれる部材が設けられる。スタックの内側に設けられたインターコネクタは、一方のセルの燃料室と他方のセルの空気室とを仕切る隔壁として機能するほか、単セル間を電気的に直列に接続する機能を有する。また、スタックの両端に設けられたインターコネクタは、両電極から発生する電流を集め、外部回路へと電流を送る機能を有する。
【0004】
インターコネクタと空気極とを固着させる部材として、導電性接合剤が広く用いられている。導電性接合剤は、ペースト状の前駆体(以下、「接点ペースト」と称することがある。)を熱処理し、固化させることによって形成される。導電性接合剤には、さまざまなセラミック材料が用いられる。一般的には、導電性接合剤の導電性を確保するために、導電性酸化物が主成分として使用される。また、導電性接合剤の固着強度を高めるために、
金属酸化物や金属粉末を含む焼結助剤が副成分として接点ペーストに含有されることもある。
【0005】
例えば、特許文献1には、「セルスタックの作製時や燃料電池装置の作動時においても、導電性接合材にクラックが生じることを抑制することができる長期信頼性に優れたセルスタックおよびそれを具備する燃料電池モジュールならびに燃料電池装置を提供すること」を課題とし(特許文献1の段落番号0007欄参照)、「隣接する一方の前記燃料電池セルの前記空気極層と他方の前記燃料電池セルの前記インターコネクタとをそれぞれ導電性接合材を介して集電部材により電気的に直列に接続してなるセルスタックであって、前記導電性接合材が、平均粒径1μm以下のLaSrCoO
3系ペロブスカイト型酸化物からなる微粉および平均粒径3μm以上のLaSrAO
3系ペロブスカイト型酸化物(Aは、Mn、Co、AlおよびFeのうち少なくとも一種を含む)からなる粗粉の混合体からなり、前記粗粉の熱膨張係数が前記微粉の熱膨張係数よりも小さく、かつ前記粗粉が前記微粉よりも多く含有されていることを特徴とするセルスタック」が開示されている(特許文献1の請求項1参照)。特許文献1には、導電性接合材として、ペロブスカイト系化合物が用いられることが記載されているが、焼結助剤が接点ペーストに含まれることについて、記載も示唆もされていない。焼結助剤を含まない接点ペーストを用いると、ペロブスカイト系化合物の焼結が十分に進まず、インターコネクタと空気極との固着強度が弱いという問題がある。
【0006】
また、特許文献2には、「低い温度でも十分な焼結性を有する焼結材、これを用いた接合部材および接合方法、ならびにこの接合部材を有するSOFCを提供すること」を課題とし(特許文献2の段落番号0009欄参照)、「NiOおよびFe
2O
3からなるベース材料を含む接合材であって、前記ベース材料100重量部のうち、50重量部以上90重量部以下がNiOであり、10重量部以上50重量部以下がFe
2O
3であり、かつ
前記ベース材料100重量部のうち、5重量部以上30重量部以下が粒径0.1μm以上1μm以下の微粒である接合材」が開示されている(特許文献2の請求項1参照)。接合部材に焼結助剤由来の金属酸化物を含有させると、インターコネクタと空気極との固着強度を高めることができる。一方で、焼結助剤由来の金属酸化物の電気抵抗率は、一般にペロブスカイト系導電酸化物やスピネル系導電酸化物に代表される導電性酸化物の電気抵抗率に比べて大きいので、接合部材に焼結助剤由来の金属酸化物が含有されると、インターコネクタと空気極との導電性が低下するという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、空気極とインターコネクトとの結合が強固であり、しかも、空気極とインターコネクタとの間の導電性が良好である固体酸化物形燃料電池、及びその製造方法を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の前記課題を解決するための手段は、
(1)固体電解質層、この固体電解質層の一方の面に形成された燃料極、及び前記固体電解質層の他方の面に形成された空気極を有する単セルと、
前記空気極の前記固体電解質層と反対側に配置されたインターコネクタと、を有し、
前記空気極と前記インターコネクタとが導電性接合剤で接合された固体酸化物型燃料電池であって、
前記導電性接合剤が、
粗粒の導電性酸化物、微粒の導電性酸化物、及び焼結助剤由来の金属酸化物を含み、
前記粗粒の導電性酸化物の平均粒径Aと、前記焼結助剤由来の金属酸化物の平均粒径Bと、前記微粒の導電性酸化物の平均粒径Cとが、
A>B>Cの関係にあることを特徴とする固体酸化物型燃料電池であり、
(2)前記導電性酸化物が、ペロブスカイト型酸化物であることを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物型燃料電池であり、
(3)前記焼結助剤由来の金属酸化物が、Cu、Mn、Fe、Mo、Co、Zn、及びNiよりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む酸化物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の固体酸化物型燃料電池であり、
(4) 固体電解質層、この固体電解質層の一方の面に形成された燃料極、及び前記固体電解質層の他方の面に形成された空気極を有する単セルと、
前記空気極の前記固体電解質層と反対側に形成されたインターコネクタと、を有し、
前記空気極と前記インターコネクタとが導電性接合剤で接合された固体酸化物型燃料電池の製造方法であって、
粗粒の導電性酸化物の平均粒径A’と、焼結助剤の平均粒径B’と、微粒の導電性酸化物の平均粒径C’とが、
A’>B’>C’の関係になるように、
前記粗粒の導電性酸化物と、前記焼結助剤と、前記微粒の導電性酸化物とを含有する接点ペーストを調製する工程を含み、
前記接点ペーストを、前記空気極と前記インターコネクタとの間に介在させ、酸化性雰囲気600℃以上900℃以下の温度によって熱処理する工程を含むことを特徴とする固体酸化物型燃料電池の製造方法であり、
(5)前記導電性酸化物が、ペロブスカイト型酸化物であることを特徴とする請求項4に記載の固体酸化物型燃料電池の製造方法であり、
(6)前記焼結助剤が、Cu、Mn、Fe、Mo、Co、Zn、及びNiよりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む金属であることを特徴とする請求項4又は5に記載の固体酸化物型燃料電池の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
(1)前記(1)に記載の手段によれば、粗粒の導電性酸化物同士の間に存在する微粒の導電性酸化物によって、導電性接合剤において多くの電流が流れる流路(以下、「導電パス」と称することがある。)が形成される。多くの導電パスが形成される導電性接合剤を空気極とインターコネクタとの間に設けることによって、空気極とインターコネクタとの間における電気抵抗を小さくすることができるので、発電能力に優れた固体酸化物形燃料電池を提供することができる。
また、前記(1)に記載の手段によれば、粗粒の導電性酸化物よりも平均粒径の小さい焼結助剤由来の金属酸化物が、粗粒の導電性酸化物の粒子間に入り込み、粗粒の導電性酸化物同士、又は粗粒の導電性酸化物と他の構成粒子との結合を促すことによって、空気極とインターコネクタとが強固に結合した固体酸化物形燃料電池を提供することができる。
(2)前記(2)に記載の手段によれば、ペロブスカイト型酸化物は優れた導電性を有するので、導電性接合剤における電気抵抗を小さくすることができる。よって、発電能力に優れた固体酸化物形燃料電池を提供することができる。
(3)前記(3)に記載の手段によれば、Cu、Mn、Fe、Mo、Co、Zn、及びNiという金属元素粉末は、固体電解質形燃料電池の運転温度と同様の温度域において酸化してペロブスカイト型酸化物粒子間の結合を促すという機能を有するので、抵抗値の低い発電能力に優れた固体酸化物形燃料電池を提供することができる。
(4)前記(4)に記載の手段によれば、微粒の導電性酸化物を含有する接点ペーストが、熱処理によって、微粒の導電性酸化物を含有する導電性接合剤になる。微粒の導電性酸化物によって、導電性接合剤において多くの導電パスが形成されるので、空気極とインターコネクタとの間における電気抵抗を小さくすることができ、発電能力に優れた固体酸化物形燃料電池を製造することができる。
また、前記(4)に記載の手段によれば、焼結助剤が、熱処理によって酸化され、酸化熱を発生する。この酸化熱が、接点ペーストにおける粗粒の導電性酸化物同士、又は粗粒の導電性酸化物と他の構成粒子との焼結を促すことによって、空気極とインターコネクタとが強固に結合した固体酸化物形燃料電池を製造することができる。
(5)前記(5)に記載の手段によれば、接点ペーストに含有される導電性酸化物が、比較的優れた導電性を有するペロブスカイト型酸化物であると、熱処理後に形成される導電性接合剤がペロブスカイト型酸化物を導電性酸化物として含有するので、導電性接合剤における電気抵抗が小さい。よって、発電能力に優れた固体酸化物形燃料電池を製造することができる。
(6)前記(6)に記載の手段によれば、Cu、Mn、Fe、Mo、Co、Zn、及びNiという金属元素粉末は、固体電解質形燃料電池の運転温度と同様の温度域において酸化してペロブスカイト型酸化物粒子間の結合を促すという機能を有するので、抵抗値の低い発電能力に優れた固体酸化物形燃料電池を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示されるように、本発明に係る固体酸化物形燃料電池は、単セル1を有する。単セル1は、固体電解質層2と、固体電解質層2の一方の面に形成された燃料極層3と、固体電解質層2の他方の面に形成された空気極4とを有する。尚、単セルは、非特許文献1にも記載されているように、固体酸化物形燃料電池の基本構成単位のことであり、燃料電池セルとも称される。
【0014】
単セル1における燃料極3は陰極としての機能を有し、空気極4は陽極としての機能を有する。単セル1において、燃料極3と空気極4との間で電子の授受やイオンの移動が起こることによって、起電力が発生する。また、多数の単セル1が直列に接続されて、固体酸化物形燃料電池が形成される。直列に接続された単セル1同士の間には、それぞれインターコネクタ5が設けられる。
【0015】
固体電解質層2は、固体酸化物形燃料電池の運転時に、燃料極に導入される燃料ガスが電子を受け取ることによって発生したイオンを、空気極へと移動させるイオン電導性を有する。伝導することができるイオンの種類は特に限定されないが、代表例としては、燃料極において発生する酸素イオンが挙げられる。
【0016】
固体電解質層2は、電解質材料を有する。電解質材料としては、具体的には、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、スカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)、サマリウム添加セリア((CeSm)O
2)、ガドリウム添加セリア((CeGd)O
2)、及びカルシア安定化ジルコニア(CaSZ)を挙げることができ、好ましくはイットリア安定化ジルコニア(YSZ)を挙げることができる。
【0017】
なお、固体電解質層2の膜厚は、通常の場合、3〜20μmである。膜厚が3μmを下回ると、欠陥のない単セル1を再現性良く得ることが困難であり、膜厚が20μmを上回ると、固体電解質層の抵抗が上昇するので、固体酸化物形燃料電池の発電性能が低下することがある。
【0018】
燃料極3は、固体酸化物形燃料電池における陰極として機能し、外部から供給される燃料ガスの分子から電子を奪って酸化させ、陽イオンを発生させる。燃料ガスの分子から奪われた電子は、外部回路へ流れることにより、電流が発生する。具体的には、燃料極3で燃料ガス例えば水素ガスが酸化されて発生した陽イオン例えば水素イオンは、空気層4から固体電解質層2を通って燃料極3へと到達した陰イオン例えば酸素イオンと反応して水分子が発生し、燃料ガス例えば水素ガスから奪われた電子が外部回路に流れて電流が発生する。
【0019】
燃料極3へと供給される燃料ガスは、水素ガス、水素源となる炭化水素ガスを改質した改質ガス等を用いることができる。
【0020】
本発明における燃料極3は、例えば、固体電解質層2の表面に燃料極活性層6と燃料極基板層7とをこの順に積層して形成することができる。言い換えると、燃料極3は、燃料極活性層6と燃料極基板層7とを積層してなり、固体電解質層2と直接に面接着する層が燃料極活性層6であり、燃料極活性層6と直接に面接着する層が燃料極基板層7である。
【0021】
燃料極活性層6及び燃料極基板層7はいずれも、Niを含む金属と電解質材料とを有する。電解質材料としては、例えば、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)を挙げることができる。固体電解質層2と燃料極3とが著しく異なる熱膨張率を示すことによって、高温条件下において燃料極3が固体電解質層2から剥離することを防止するために、燃料極3と固体電解質層2とは共に同じ電解質材料、例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ)で形成されることが好ましい。
Niを含む金属としては、Ni単体、並びにNiとCu、Fe、Co、Ag、Pt、Pd、W、及びMoよりなる群から選択される少なくとも一種の金属との合金等を挙げることができる。
【0022】
空気極4は、固体電解質層2のうち、燃料極3が形成される一方の面とは反対側の、他方の面に形成されてなる。空気極4は、電池における陽極として機能し、外部から供給され酸素源となる酸化剤ガスの分子に電子を付与して還元させ、陰イオンを発生させる。酸化剤ガスの分子に付与される電子は、燃料極3において燃料ガスの分子から奪われ、外部回路を介して空気極4へと流入してきた電子である。空気極4で発生した陰イオンは、固体電解質層2中を移動し、燃料極3へと到る。
【0023】
空気極4の材料は、固体酸化物形燃料電池の使用条件等により適宜選択される。空気極4の材料として、例えば金属、金属の複合酸化物等が挙げられる。前記金属としては、例えば、Pt、Au、Ag、Pd、Ir、Ru、及びRu等から選ばれる1種の金属、又はこれらの群から選ばれる2種以上の金属を含有する合金が挙げられる。また、金属の複合酸化物としては、例えば、La、Pr、Sm、Sr、Ba、Co、Fe、及びMn等から選ばれる少なくとも1種の元素を含有するペロブスカイト型複合酸化物が挙げられる。この複合酸化物として、例えば、La
1−xSr
xCoO
3系複合酸化物、La
1−xSr
xFeO
3系複合酸化物、La
1−xSr
xCo
1−yFe
yO
3系複合酸化物、La
1−xSr
xMnO
3系複合酸化物、Pr
1−xBa
xCoO
3系複合酸化物、Sm
1−xSr
xCoO
3系複合酸化物等が挙げられる。
【0024】
インターコネクタ5は、直列に並べられた単セル1と単セル1との間に設けられる。言い換えると、固体酸化物形燃料電池では、単セル1とインターコネクタ5とが交互に積層される。インターコネクタ5は、縦断面形状において櫛形の構造を有しており、櫛形の凸部が、導電性接合剤8を介して、空気極4と接する。また、櫛形の凹部は、燃料極3に供給される燃料ガス又は、空気極4に供給される支燃性ガスの流通路として機能する。
インターコネクタ5は、電気導電性を有する金属によって形成され、通常は、ステンレス鋼によって形成される。より詳しくは、インターコネクタ5は、SUS430からなる板材を打ち抜いて形成することができる。
【0025】
インターコネクタ5は、燃料極3又は空気極4において発生する電流を集約する機能を有する。単セル1の積層体の中途に設けられたインターコネクタ5は、集約した電流を隣接する単セル1へと送出する機能を有する。また、単セル1の積層体の末端に設けられたインターコネクタ5は、単セル1の積層体で発生した電流を集約し、外部回路へと送出する機能を有する。
【0026】
インターコネクタ5のうち、燃料極3との接点には、燃料極集電体9が配される。燃料極集電体9は、通気性を有する柔軟な導電性物質であり、インターコネクタ5と燃料極3とを電気的に接続するとともに、インターコネクタ5の熱膨張等による変形を吸収し、単セル1を構成する各部材の負荷を抑える機能を有する。燃料極集電体9として、例えばニッケルを有する多孔質体を用いることができる。インターコネクタ5のうち、燃料極集電体9が設けられるのは、例えば、櫛形構造とは反対側の面における平面部である。
【0027】
導電性接合剤8は、空気極4とインターコネクタ5とを接合させる。言い換えると、導電性接合剤8は、空気極4とインターコネクタ5との間に介在して空気極4とインターコネクタ5とを電気的に接続させる。
導電性接合剤8は、導電性酸化物13と焼結助剤由来の金属酸化物10とを含む。
図2に示されるように、導電性酸化物13は、粗粒の導電性酸化物11と、微粒の導電性酸化物12とを有する。本発明においては、粗粒の導電性酸化物11の平均粒径A、焼結助剤由来の金属酸化物10の平均粒径B、及び微粒の導電性酸化物12の平均粒径Cが、A>B>Cの関係にある。導電性接合剤8においては、粗粒の導電性酸化物11が構成する三次元ネットワーク同士の間に、それより粒径の小さい焼結助剤由来の金属酸化物10と、微粒の導電性酸化物12とが存在することにより、微粒の導電性酸化物12により導電パスが形成される。言い換えると、粗粒の導電性酸化物11の粒子間や、粗粒の導電性酸化物11の粒子と焼結助剤由来の金属酸化物10との間に生じる空隙を埋めるように、微粒の導電性酸化物12が、その空隙に配される。そのため、粗粒の導電性酸化物の平均粒径Aは3〜7μmであることが好ましく、焼結助剤由来の金属酸化物10の平均粒径Bは0.8〜2μmであることが好ましく、微粒の導電性酸化物の12の平均粒径Cは0.3〜0.7μmであることが好ましい。導電性接合剤8が、焼結助剤由来の金属酸化物10の平均粒径Bよりも小さい平均粒径Cを有する微粒の導電性酸化物12を含んでいることによって、微粒の導電性酸化物12による導電パスが形成されることになり、この導電パスにより導電性接合剤8における導電率が向上する。
【0028】
導電性接合剤8は、固体酸化物形燃料電池の発電性能を高めることができるように、十分な導電性を有することが好ましい。具体的には、電流遮断法によって求められる単セル1の全IR抵抗値が、0.145Ωcm
2以下となるように、導電性接合剤8における導電性が確保されることが好ましい。単セル1の全IR抵抗値が、0.145Ωcm
2よりも大きいと、オーム損失によって単セル1が過度に発熱し、固体酸化物形燃料電池の劣化が早まってしまう。
また、導電性接合剤8は、固体酸化物形燃料電池の機械的強度を高めることができるように、十分な固着強度を有することが好ましい。具体的には、単セル1におけるインターコネクタ5と燃料極3との引張試験によって、4Nより大きい力を加えても、インターコネクタ5と空気極4とが乖離しない程度に、導電性接合剤8の接合強度が確保されることが好ましい。単セル1における引張試験によって、4N以下の力によってインターコネクタ5と空気極4とが乖離する程度の強度であると、この単セル1を用いた固体酸化物形燃料電池を運転させる際に、空気極4に加えられる酸化剤ガスの圧力変動によって、インターコネクタ5と空気極4とが乖離してしまう。
【0029】
導電性接合剤8に含有される導電性酸化物13は、空気極4とインターコネクタ5との間に十分な導電性を付与することができる限りにおいて、さまざまの化合物を採用することができ、好ましくは、ペロブスカイト型酸化物である。非特許文献2には、「ぺロブスカイト構造(ABO
3,
図14.6)および類似構造をとる一群の酸化物も、酸素空孔を生成しやすく、高い酸化物イオン導電性を示すものが多く知られている。」と開示されている。高い酸化物イオン導電性を示すペロブスカイト型酸化物を導電性酸化物13として用いることによって、導電性接合剤8は、空気極4とインターコネクタ5との間に十分な導電性を付与することができる。
【0030】
導電性接合剤8は、スラリー状の接点ペーストを高温条件下で固化させることによって得られる。より具体的には、インターコネクタ5の空気極4との接点部に接点ペーストが塗布された後、その接点ペーストの上にインターコネクタ5が接するように空気極4とインターコネクタ5とが積層され、最終的に得られる積層体が熱処理されることによって接点ペーストが固化し、導電性接合剤8が形成される。本来、導電性酸化物に代表されるセラミックス材料の焼結には900℃以上の高温が必要であるが、金属材料を構成部材として持つ中温型の固体酸化物形燃料電池においては、接点ペーストを熱処理によって固化させる温度としては、600℃以上900℃以下であることが好ましい。熱処理の温度が600℃より低いと、空気極4とインターコネクタ5との接合強度が不十分となることがあり、熱処理の温度が900℃より高いと、単セル1に用いられている金属部材やシール材などの部材を変質させてしまうことがある。熱処理を行うには、酸化性雰囲気下で行うことが好ましい。酸化性雰囲気下で熱処理を行うには、例えば、接点ペーストに還元性のガス例えば水素が接触しないようにするとともに、接点ペーストに酸化剤ガス例えば酸素を含むガス、好適には空気を流しながら、接点ペーストを600℃以上900℃以下の温度条件に曝すことが挙げられる。
【0031】
接点ペーストは、導電性酸化物と焼結助剤とを含有する。接点ペーストにおける導電性酸化物は、接点ペーストの熱処理後に、導電性接合剤8における導電性酸化物となる。接点ペーストにおける導電性酸化物は、ペロブスカイト型酸化物であることが好ましい。熱処理後の導電性接合剤8が、粗粒の導電性酸化物11と微粒の導電性酸化物12とを含有するように、接点ペーストにおいても粗粒の導電性酸化物と微粒の導電性酸化物とが含有される。熱処理の前後において導電性酸化物の粒径は殆ど変わらないので、接点ペーストにおいても、平均粒径が3〜7μmである粗粒の導電性酸化物と、平均粒径が0.3〜0.7μmである微粒の導電性酸化物とを含有することが好ましい。
【0032】
接点ペーストを熱処理すると、焼結助剤として用いた金属粉末は、粗粒の導電性酸化物同士の間隙において、酸化反応を起こし発熱することによって、焼結助剤の周囲に存在する導電性酸化物同士を接着させる機能を有する。
焼結助剤として用いる金属粉末とは、単体金属の粉末およびそれらの混合物、及び複数の種類の金属からなる合金の粉末を挙げることができる。金属の粉末は、600〜900℃という温度条件である熱処理の過程で酸化反応を起こし、この酸化反応における反応熱によって、より強固に導電性セラミックス粒子同士を接着させることができるからである。接点ペーストにおける焼結助剤は、熱処理後において、導電性接合剤における焼結助剤由来の金属酸化物となる。
【0033】
焼結助剤である金属は、600℃以上900℃以下の温度条件で酸化され、導電性の酸化物を生成する金属であることが望ましく、例えば、Cu、Mn、Fe、Mo、Co、Zn、及びNiよりなる群から選択される少なくとも1種の単体金属、又はこれらの元素を含有する合金を用いることができる。さらに、金属は、Cu、Mn、Co、及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種の単体金属、又はこれらの元素を含有する合金であることが好ましく、Cu及び/又はMnを有する単体金属又は合金であることがさらに好ましい。焼結助剤として前記元素を金属として含有する接点ペーストを熱処理すると、前記元素が酸化されることによって、前記元素を含んだ焼結助剤由来の金属酸化物を含有する導電性接合剤が形成される。
【0034】
接点ペーストにおける導電性酸化物と焼結助剤との含有率は、粗粒の導電性酸化物(a)が70質量%以上90質量%以下、好ましくは75質量%以上85質量%以下、焼結助剤としての金属粉末(b)が0.5質量%以上20質量%以下、好ましくは、5質量%以上15質量%以下、微粒の導電性酸化物(c)が5質量%以上25質量%以下、好ましくは10質量%以上20質量%以下であり、前記(a)と(b)と(c)との合計が100質量%となるように、調整することができる。導電性酸化物(a)、金属粉末焼結助剤(b)及び導電性酸化物(c)の含有率が前記範囲内にあると、
図2に示されるように、粗粒の導電性酸化物(a)の間隙に、焼結助剤由来の金属酸化物(b’)及び微粒の導電性酸化物(c)が多く偏在することとなり、しかも焼結助剤由来の金属酸化物(b’)の粒子間に微粒の導電性酸化物(c)が充填乃至密集するようになり、この微粒の導電性酸化物(c)によって導電パスが形成される。
【0035】
次に、
図3及び
図4を用いて、単セル1を多数積層してなる固体酸化物形燃料電池21の一例について説明する。
【0036】
固体酸化物形燃料電池21は、複数個の単セル1が上下に積層された固体酸化物形燃料電池スタック22を有し、ボルト23〜30によって一体化される。ボルト23によって、固体電解質形燃料電池21の上部に酸化剤ガスの入口が設けられ、ボルト24によって、固体電解質形燃料電池21の上部に酸化剤ガスの出口が設けられる。なお、この一例では、ボルト26によって、固体電解質形燃料電池21の上部に燃料ガスの入口が設けられ、ボルト25によって、固体電解質形燃料電池21の上部に燃料ガスの出口が設けられる。
【0037】
また、
図3における固体酸化物形燃料電池21の縦断面図を
図4に示す。各単セル1は、インターコネクタ5を挟んで、同図の上下方向に直列に多数積層される。燃料極3は、燃料極集電体9を介して、インターコネクタ5と接続される。各単セル1の空気極4は、導電性接合剤8を介してインターコネクタ5と接続される。
【0038】
ボルト23及びボルト24は、単セル1の積層方向に設けられ、内側に中空のガス流路31を備えて成る。ボルト23の上部から供給される酸化剤ガスは、ガス流路31を下向きに流れるとともに、ガス流路31の側面に設けられた連通路32を通って、空気極4側へと流れる。空気極4を通過した酸化剤ガスは、他方の連通路34を通って、他方のガス流路35を上向きに流れ、ボルト24の上部から排出される。また、燃料ガスの流路38と酸化剤ガスの流路37とを隔離するように、セパレータ36が設けられる。
【0039】
固体酸化物形燃料電池21は、高圧の出力が可能な電池として、各種用途に用いることができる。固体酸化物形燃料電池21は、通常、収納容器に収納されて用いられる。収納容器は、固体酸化物形燃料電池21の発電能力を損なわない限りにおいて、従来公知の方法、大きさの容器を用いることができる。本発明の固体酸化物形燃料電池21は、例えば、家庭用の小型コージェネレーションシステムにおける発電源として、又は業務用の大型コージェネレーションシステムにおける発電源として、用いることができる。
【0040】
次に、本発明における単セル1の製造方法について説明する。
【0041】
製造方法の一例として、例えば、燃料極基板層7を成形するグリーンシートを作製するために、まず、燃料極基板層7の構成成分を混合した粉末をボールミルによって分散混合させる。次に、樹脂を溶解させた溶媒を混合粉末と混ぜ合わせてスラリーを作製する。樹脂としては、例えばブチラール樹脂を使用することができ、溶媒としては、例えばトルエンとエタノールとの混合液を使用することができる。得られたスラリーは、プレス成形、シート成形等の公知の方法で成形でき、特にシート成形法が好ましい。シート成形法として、スラリーをドクターブレード法等によりPETフィルム等の支持体上に塗布し、その後、スラリー中の溶剤成分を蒸発させることでグリーンシートを作製する方法を挙げることができる。この方法によると、容易に均質なサンプルを得ることができる。
【0042】
燃料極基板層7の成形体の混合粉末の製造工程では、セラミックスより粉砕されにくい造孔材が用いられる。燃料極基板層7の成形過程において、導入された造孔材の体積分が気孔として残る。造孔材が粉砕されにくいと、粉末である造孔材の体積が著しく変化することがないので、焼成の過程で燃料極基板層7に形成される気孔の径を一定にすることができる。造孔材として、例えばポリメタクリル酸メチル及びポリスチレンなどの高分子より成る球状粒子を採用できる。また、造孔材として球状粒子を使用する場合の造孔材の最大直径が例えば5〜10μmの範囲内にあると、適度な寸法の気孔が燃料極基板層内に形成されることができる。
【0043】
燃料極活性層6、及び固体電解質層2についても、燃料極基板層7と同様にして、シート成形法によってグリーンシートが作製される。
【0044】
尚、各グリーンシートの製造に用いられる粉末の粒子径(平均粒子径)に関して、燃料極活性層6の粉末の粒子径としては、0.2〜0.8μm程度(例えば0.5μm)の粉末を使用できる。燃料極活性層6の粉末の粒子径としては、燃料極活性層5の粉末の粒子径と同等(例えば0.5μm)かそれより大きい粒子径を使用することができる。
【0045】
成形された各グリーンシートを、固体電解質層2と燃料極活性層6と燃料極基板層7とが、この順となるように積層し、この積層体を焼成して、焼成積層体を得る。この焼成積層体における固体電解質層側に、空気極形成用の導電性セラミック微粉末、例えばLSCF微粉末と有機バインダと溶媒とからなるスラリーを塗布して、空気極層用のコーティング層を形成する。このコーティング層を形成した積層体を焼成することによって、空気極4と固体電解質層2と燃料極活性層6と燃料極基板層7とを、この順に積層した単セル1が形成される。
【0046】
また、粗粒の導電性酸化物と、微粒の導電性酸化物と、焼結助剤とを有機溶媒によって混合し、接点ペーストを得る。接点ペーストを、インターコネクタ5のうち空気極4と接する部分に、スクリーン印刷を用いて印刷する。印刷後、例えば100℃で接点ペーストを乾燥させ、接点ペーストが塗布されたインターコネクタを得る。
【0047】
単セル1と、接点ペーストが塗布されたインターコネクタ5とを交互に積層し、更には最も外側には接点ペーストが塗布された外側コネクタを積層して一体としたものを、熱処理することによって、固体酸化物形燃料電池を製造する。熱処理の過程において、接点ペーストに含まれた焼結助剤が酸化され、酸化熱が発生する。発生した酸化熱が、接点ペーストにおける導電性酸化物13の焼結を促すので、600℃以上900℃以下の温度によって、接点ペーストから導電性接合剤が形成される。
【0048】
次に、本発明における固体酸化物形燃料電池21の作用について説明する。
【0049】
固体酸化物形燃料電池21の運転時に、空気極4には酸化剤ガスが供給され、空気極4においてガス分子が電子の授受を行うことによって、起電力が発生する。固体酸化物形燃料電池21の電極において発生した起電力は、インターコネクタ5によって集められ、外部回路へと電流が導出される。空気極4からインターコネクタ5へと電流が流れる時に、導電性接合剤8において、粗粒の導電性酸化物11によって形成される導電パスとともに、微粒の導電性酸化物12により形成される導電パスに沿って電流が流れることになる。よって、本発明における固体酸化物形燃料電池21においては、導電性接合剤8における導電性が良好であって、固体酸化物形燃料電池の発電能力が高い。
【0050】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、これら実施例によって本発明はなんら限定されるものではない。
【0051】
(実施例1)
(接点ペーストの作製)
平均粒径が5μmである導電性ペロブスカイト酸化物粗粒子を80重量部と、平均粒径が0.5μmの導電性ペロブスカイト酸化物微粒子を10質量部と、焼結助剤として平均粒径が1μmのCu粉末を10質量部とを、混合した混合粉末100gを作製した。導電性ペロブスカイト酸化物は、粗粒子、微粒子ともに、(La,Sr)(Co,Fe)O
3(以下、「LSCF」と称する。)を使用した。この混合粉末に、エトセル60gとブチルカルビトール20gとを混合したビヒクルを加え、接点ペーストを得た。尚、本発明における平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−750(HORIBA社製)を用いて、レーザ回折法によって測定した値を平均粒径とした。
【0052】
(固体電解質層用のグリーンシートの作製)
BET法による比表面積が5〜7m
2/gであるYSZ粉末に対して、ブチラール樹脂と、可塑剤であるジオクチルフタレート(DOP)と、分散剤と、トルエンとエタノールとの混合溶剤とを加え、ボールミルにて混合して、スラリーを調製した。得られたスラリーにドクターブレード法を用いることによって、厚さ10μmの固体電解質層用グリーンシートを得た。
【0053】
(燃料極基板層用グリーンシートの作製)
BET法による比表面積が3〜4m
2/gであるNiOの粉末を、Ni重量に換算して50質量部となるように秤量し、BET法による比表面積が5〜7m
2/gであるYSZの粉末50質量部と混合し、混合粉末を得た。この混合粉末に対して、造孔剤である有機ビーズ(混合粉末に対して10重量%)と、ブチラール樹脂と、可塑剤であるDOPと、分散剤と、トルエンとエタノールとの混合溶剤とを加え、ボールミルにて混合して、スラリーを調製した。得られたスラリーにドクターブレード法を用いることによって、厚さ250μmの燃料極基板層用グリーンシートを得た。
【0054】
(燃料極活性層用グリーンシートの作製)
BET法による比表面積が3〜4m
2/gであるNiOの粉末を、Ni重量に換算して55質量部となるように秤量し、BET法による比表面積が5〜7m
2/gであるYSZの粉末45質量部と混合し、混合粉末を得た。この混合粉末に対して、ブチラール樹脂と、可塑剤であるDOPと、分散剤と、トルエンとエタノールとの混合溶剤とを加え、ボールミルにて混合して、スラリーを調製した。得られたスラリーにドクターブレード法を用いることによって、厚さ10μmの燃料極活性層用グリーンシートを得た。
【0055】
(固体電解質層と燃料極層との積層)
固体電解質層用グリーンシートと、燃料極活性層用のグリーンシートと、燃料極基板層用のグリーンシートとを、この順に積層した。この積層体を1400℃にて焼成することによって、固体電解質層と燃料極層との積層体を得た。
【0056】
(空気極の形成)
平均粒径が2μmであるLa
0.6Sr
0.4Co
0.2Fe
0.8O
3粉末と、イソプロピルアルコールとを混合して得られたスラリーを、前記積層体における固体電解質層の表面にスクリーン印刷し、1100℃で焼成することによって空気極層を成形し、単セルを得た。
【0057】
(接点ペーストの塗布)
インターコネクタのうち、空気極と接する部分に、スクリーン印刷を用いて接点ペーストを印刷した。印刷後、100℃で30分間乾燥し、接点ペーストが塗布されたインターコネクタを得た。
【0058】
(導電性接合剤の導電率の測定、評価)
単セル1の空気極に、接点ペーストが塗布されたインターコネクタを積層し、SOFCスタックを得た。SOFCスタックを700℃まで昇温し、燃料極に水素2L/minを流して、酸化ニッケルをニッケルに還元した。また、このとき空気極に空気を流すことにより酸化性雰囲気とすることによって、接点ペーストが導電性接合剤となり、インターコネクタと空気極とが、導電性接合剤によって固着された。
次に、700℃の温度で、燃料極に3重量%の水を含む水素1L/min、空気極側に空気2L/minを送風して、電流遮断法によって、空気極集電体と燃料極集電体間の電圧変化を測定し、抵抗値を求めた。抵抗値を、有効電極面積100cm
2で除した値を、セルの全IR抵抗値とした。電流遮断法計測機は、KIKUSUI FC IMPEDANCE METER KFM2150を用いた。負荷を差し引くために、同じくKIKUSUI PLZ 1004Wの負荷器を用いた。負荷器で20Aの負荷をSOFCスタックから差し引きながら、電流遮断法によってIR抵抗を計測し、128点の測定値の平均をとってSOFCスタックの抵抗値とした。
【0059】
(空気極とインターコネクタとの固着力評価用サンプルの作製)
インターコネクタから、φ13mmのボタン状集電体を切りだした。ボタン状集電体に、作成した接点ペーストを印刷して、100℃で30分間乾燥した。単セルから2.0cm
2となるように切りだされた部材の空気極側に、接点ペーストを印刷したボタン状集電体をのせ、炉の中に入れた。炉の中に設置されたボタン状集電体の上に、5kgのアルミナ板を重石としてのせ、酸化性雰囲気700℃の条件下で3時間保持したのち、室温まで冷却し、固着力評価用サンプルを得た。
(空気極とインターコネクタとの固着力の測定)
固着力評価用サンプルの燃料極側に、引っかけ部のついた部品を樹脂接着材によって接着させた。また、固着力評価用サンプルのボタン状集電体にも、引っかけ部のついた部品を樹脂接着材によって接着させた。十分に接着材を乾燥させた後、引張圧縮試験機(型式:SV−52N−50L、今田製作所製)を用いて、引っ張り速度5mm/minにて、導電性接合剤の引張強度を計測した。空気極とインターコネクタ層とが乖離する直前に加えられた力を、最大固着力とした。
【0060】
(比較例1)
接点ペーストの作製において、焼結助剤を添加せず、平均粒径が5μmであるLSCF粗粒子を90質量部と、平均粒径が0.5μmのLSCF微粒子を10質量部とによって、混合粉末を作製したこと以外は、実施例1と同様に実施し、導電性接合剤の導電率と固着強度を測定した。
【0061】
(比較例2)
接点ペーストの作製において、LSCF微粒子を添加せず、平均粒径が5μmであるLSCF粗粒子を90質量部と、平均粒径が1μmの焼結助剤を10質量部とを、それぞれ混合した混合粉末を作製したこと以外は、実施例1と同様に実施し、導電性接合剤の導電率と固着強度を測定した。
【0062】
(比較例3)
接点ペーストの作製において、平均粒径が5μmであるLSCF粗粒子を80質量部と、平均粒径が2μmのLSCF微粒子を10質量部と、平均粒径が1μmの焼結助剤を10質量部とを、それぞれ混合した混合粉末を作製したこと以外は、実施例1と同様に実施し、導電性接合剤の導電率と固着強度を測定した。
【0063】
(比較例4)
接点ペーストの作製において、平均粒径が5μmであるLSCF粗粒子を80質量部と、平均粒径が0.5μmのLSCF微粒子を10質量部と、平均粒径が10μmの焼結助剤を10質量部とを、それぞれ混合した混合粉末を作製したこと以外は、実施例1と同様に実施し、導電性接合剤の導電率と固着強度を測定した。
【0064】
(実施例2)
接点ペーストの作製において、焼結助剤としてMn粉末を用いたこと以外は、実施例1と同様に実施し、導電性接合剤の導電率と固着強度を測定した。
【0065】
(比較例5)
接点ペーストの作製において、焼結助剤を添加せず、平均粒径が5μmであるLSCF粗粒子を90質量部と、平均粒径が0.5μmのLSCF微粒子を10質量部とによって、混合粉末を作製したこと以外は、実施例2と同様に実施し、導電性接合剤の導電率と固着強度を測定した。
【0066】
(比較例6)
接点ペーストの作製において、LSCF微粒子を添加せず、平均粒径が5μmであるLSCF粗粒子を90質量部と、平均粒径が1.5μmの焼結助剤を10質量部とを、それぞれ混合した混合粉末を作製したこと以外は、実施例2と同様に実施し、導電性接合剤の導電率と固着強度を測定した。
【0067】
(比較例7)
接点ペーストの作製において、平均粒径が5μmであるLSCF粗粒子を80質量部と、平均粒径が2μmのLSCF微粒子を10質量部と、平均粒径が1.5μmの焼結助剤を10質量部とを、それぞれ混合した混合粉末を作製したこと以外は、実施例2と同様に実施し、導電性接合剤の導電率と固着強度を測定した。
【0068】
(比較例8)
接点ペーストの作製において、平均粒径が5μmであるLSCF粗粒子を80質量部と、平均粒径が0.5μmのLSCF微粒子を10質量部と、平均粒径が8μmの焼結助剤を10質量部とを、それぞれ混合した混合粉末を作製したこと以外は、実施例2と同様に実施し、導電性接合剤の導電率と固着強度を測定した。
【0069】
以下に、実施例1及び比較例1〜4における、接点ペーストの作製に用いた物質の平均粒径と、重量混合比率とを表1に示す。
【0071】
以下に、実施例1及び比較例1〜4における、導電性接合剤の最大固着力と抵抗値とを表2に示す。
【0073】
焼結助剤を添加しなかった比較例1では、導電性接合剤が空気極とインターコネクタとを、完全に固着させることができなかった。微粒の導電性ペロブスカイトを添加しなかった比較例2、及び粗粒の導電性ペロブスカイトの平均粒径が焼結助剤の平均粒径よりも大きい比較例3では、導電性接合剤の抵抗値が比較的大きく、導電性が劣っていた。焼結助剤の平均粒径が粗粒の導電性ペロブスカイトの平均粒径よりも大きい比較例4では、導電性接合剤による固着力が劣っていた。よって、本発明における導電性接合剤が、空気極とインターコネクタとを強固に固着させ、導電性を良好にするという効果を奏することが分かった。
【0074】
以下に、実施例2及び比較例5〜8における、接点ペーストの作製に用いた物質の平均粒径と、重量混合比率とを表3に示す。
【0077】
焼結助剤を添加しなかった比較例5では、導電性接合剤が空気極とインターコネクタとを、完全に固着させることができなかった。導電性ペロブスカイト微粒子を添加しなかった比較例6、及び微粒の導電性ペロブスカイトの平均粒径が焼結助剤の平均粒径よりも大きい比較例7では、導電性接合剤の抵抗値が比較的大きく、導電性が劣っていた。焼結助剤の平均粒径が粗粒の導電性ペロブスカイトの平均粒径よりも大きい比較例8では、導電性接合剤による固着力が劣っていた。よって、本発明における導電性接合剤が、空気極とインターコネクタとを強固に固着させ、導電性を良好にするという効果を奏することが分かった。
【0078】
また、実施例1で作製した単セルにおける導電性接合剤を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。観察像を
図5に示す。
図5において、黒い粒子が、導電性酸化物であるLSCFの粒子であり、白い粒子が、焼結助剤由来の金属酸化物であるCuOである。また、
図5において丸で囲んだ領域A、領域B、及び領域Cにおいて、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)を用いて、そのEDSスペクトルを測定した。EDSスペクトルの測定結果は、
図6〜8で示される。
【0079】
図5における領域Aは、粗粒の導電性酸化物が存在する領域である。領域AにおけるEDSスペクトル測定の結果を、
図6において示す。
図6では、導電性酸化物であるLSCFの構成元素であるLa、Sr、Co、及びFeのピークが観察されたが、焼結助剤由来の金属酸化物に含有されるCuのピークは観察されなかった。
【0080】
図5における領域Bは、微粒の導電性酸化物と、焼結助剤由来の金属酸化物とが存在する領域である。領域BにおけるEDSスペクトル測定の結果を、
図7において示す。
図7では、導電性酸化物であるLSCFの構成元素であるLa、Sr、Co、及びFeのピークが観察されたほか、焼結助剤由来の金属酸化物に含有されるCuのピークが観察された。
【0081】
図5における領域Cは、微粒の導電性酸化物と、焼結助剤由来の金属酸化物とが存在する領域である。領域CにおけるEDSスペクトル測定の結果を、
図8において示す。
図8では、導電性酸化物であるLSCFの構成元素であるLa、Sr、Co、及びFeのピークが観察されたほか、焼結助剤由来の金属酸化物に含有されるCuのピークが観察された。