特許第6128574号(P6128574)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6128574
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】H型鋼柱の耐震補強構造
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20170508BHJP
【FI】
   E04G23/02 F
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-229992(P2016-229992)
(22)【出願日】2016年11月28日
【審査請求日】2016年11月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593179783
【氏名又は名称】株式会社フジモト
(74)【代理人】
【識別番号】100119220
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 武彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(72)【発明者】
【氏名】藤本 隆司
【審査官】 油原 博
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5999862(JP,B1)
【文献】 特開2002−070326(JP,A)
【文献】 特開2010−019072(JP,A)
【文献】 特開2009−235730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02
E01D 22/00
E04B 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する一対のフランジと、その対向間隔内に設けたウェブからなり、ウェブに高さ方向に所定間隔でタイロッド挿通孔を形成したH型鋼柱と、
H型鋼柱の高さ方向に連設されフランジ間に嵌入する中央部の両端にフランジ端部と係合する係合部を形成し、ウェブに形成したタイロッド挿通孔と対応する位置にタイロッド挿通孔を形成した型枠部材と、
型枠部材の外側に積層されウェブに形成したタイロッド挿通孔及び型枠部材に形成したタイロッド挿通孔と対応する位置にタイロッド挿通孔を形成し、高さ方向の長さを型枠部材の高さ方向の長さより長くし連接部の位置が型枠部材の連設部の位置と合致しないように連設される補強プレートと、
補強プレート、型枠部材、ウェブに形成したタイロッド挿通孔に挿入される両端に雄ネジを形成したタイロッドと、
タイロッドの両端雄ネジに螺着されるナットと、
H型鋼と型枠部材に囲まれた空間に配筋される補強筋と、
H型鋼と型枠部材に囲まれた空間に充填される固化材と、
からなることを特徴とするH型鋼柱の耐震補強構造。
【請求項2】
型枠部材の外表面及び少なくとも一方のフランジ外表面に配置される連続繊維シートを備えることを特徴とする請求項1に記載に記載のH型鋼柱の耐震補強構造。
【請求項3】
H型鋼柱のウェブを挟んだ両側を耐震補強することを特徴とする請求項1又は2に記載のH型鋼柱の耐震補強構造。
【請求項4】
H型鋼柱のウェブの一方の側のみを耐震補強することを特徴とする請求項1又は2に記載のH型鋼柱の耐震補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、H型鋼柱の耐震補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、既存のH型鋼柱を耐震補強するために、H型鋼柱の周囲を囲い鋼板で囲み、H型鋼柱と囲い鋼板間の空間に補強筋を配筋し、H型鋼柱と囲い鋼板間の空間にグラウト等の固化材を充填して固化させるH型鋼柱の耐震補強構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−203199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のH型鋼柱の耐震補強構造は、H型鋼柱の全周を囲い鋼板で囲う必要があるため、十分補強スペースが必要である。しかし、既存のH型鋼柱の周囲に壁等の構造物が隣接しているか、又は、壁等の構造物が連設されているケースが多く、H型鋼柱の全周を囲い鋼板で囲うスペースが確保できないという問題を有していた。
【0005】
本発明は、従来技術の持つ課題を解決する簡単な構成で耐震補強スペースを最小限として耐震性能を向上させることが可能なH型鋼柱の耐震補強構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のH型鋼柱の耐震補強構造は、前記課題を解決するために、対向する一対のフランジと、その対向間隔内に設けたウェブからなり、ウェブに高さ方向に所定間隔でタイロッド挿通孔を形成したH型鋼柱と、H型鋼柱の高さ方向に連設されフランジ間に嵌入する中央部の両端にフランジ端部と係合する係合部を形成し、ウェブに形成したタイロッド挿通孔と対応する位置にタイロッド挿通孔を形成した型枠部材と、型枠部材の外側に積層されウェブに形成したタイロッド挿通孔及び型枠部材に形成したタイロッド挿通孔と対応する位置にタイロッド挿通孔を形成し、高さ方向の長さを型枠部材の高さ方向の長さより長くし連接部の位置が型枠部材の連設部の位置と合致しないように連設される補強プレートと、補強プレート、型枠部材、ウェブに形成したタイロッド挿通孔に挿入される両端に雄ネジを形成したタイロッドと、タイロッドの両端雄ネジに螺着されるナットと、H型鋼と型枠部材に囲まれた空間に充填される固化材と、からなることを特徴とする。
【0008】
また、本発明のH型鋼柱の耐震補強構造は、型枠部材の外表面及び少なくとも一方のフランジの外表面に配置される連続繊維シートを備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明のH型鋼柱の耐震補強構造は、H型鋼柱のウェブを挟んだ両側を耐震補強することを特徴とする。
【0010】
また、本発明のH型鋼柱の耐震補強構造は、H型鋼柱のウェブの一方の側のみを耐震補強することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
対向する一対のフランジと、その対向間隔内に設けたウェブからなり、ウェブに高さ方向に所定間隔でタイロッド挿通孔を形成したH型鋼柱と、H型鋼柱の高さ方向に連設されフランジ間に嵌入する中央部の両端にフランジ端部と係合する係合部を形成し、ウェブに形成したタイロッド挿通孔と対応する位置にタイロッド挿通孔を形成した型枠部材と、型枠部材の外側に積層されウェブに形成したタイロッド挿通孔及び型枠部材に形成したタイロッド挿通孔と対応する位置にタイロッド挿通孔を形成し、高さ方向の長さを型枠部材の高さ方向の長さより長くし連接部の位置が型枠部材の連設部の位置と合致しないように連設される補強プレートと、補強プレート、型枠部材、ウェブに形成したタイロッド挿通孔に挿入される両端に雄ネジを形成したタイロッドと、タイロッドの両端雄ネジに螺着されるナットと、H型鋼と型枠部材に囲まれた空間に充填される固化材と、からなることで、耐震補強スペースを最小に抑えることができ、部品点数が少なくH型鋼柱への補強材の配置作業を容易に素早く実施でき、耐震性能の大きなH型鋼柱の耐震補強構造を提供することが可能となり、補強プレートの高さ方向の長さを型枠部材の高さ方向の長さより長くし、型枠部材の連設部と補強部材の連設部の位置が合致しないようにすることで、地震時の変位に対しての強度を向上させることが可能となる。
型枠部材の外表面及び少なくとも一方のフランジの外表面に配置される連続繊維シートを備えることで、引張強度と地震の減衰性を向上させることが可能となる。
H型鋼柱のウェブを挟んだ両側を耐震補強することで、強度の大きなH型鋼柱の耐震補強構造を提供することが可能となる。
H型鋼柱のウェブの一方の側のみを耐震補強することで、障害物の存在で片側だけの耐震補強でも十分な耐震性を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a)(b)本発明の実施形態を示す図である。
図2】(a)(b)本発明の実施形態を示す図である。
図3】(a)(b)本発明の実施形態を示す図である。
図4】本発明の実施形態を示す図である。
図5】本発明の実施形態を示す図である。
図6】本発明の実施形態を示す図である。
図7】本発明の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態を図により説明する。図1(a)(b)(c)は、耐震補強の対象の
H型鋼柱1を示す図である。
【0014】
耐震補強されるH型鋼柱1は、対向する一対のフランジ2、2と、その対向間隔内に設けたウェブ3からなる。H型鋼柱1の下端は床等の下部構造4に設置した基礎5に連結される。H型鋼柱1の上端は梁等の上部構造6に連結される。ウェブ3には、高さ方向に所定間隔毎にタイロッド挿通孔3aが形成される。H型鋼柱1のフランジ2、2の外側間の長さをL1、フランジ2、2間の内側間の長さをL2、フランジ2、2の厚みをL3とする。
【0015】
図2(a)(b)は、H型鋼柱1の高さ方向に連設される型枠部材7を示す図である。型枠部材7は、鋼等の金属や、強化樹脂等の樹脂で形成される。型枠部材7は、H型鋼柱1のフランジ2、2間に嵌入する中央部7aと中央部7aの両端にフランジ2、2の端面に係合する係合部7bからなる。型枠部材7の中央部7aには、H型鋼柱1のウェブ3に形成したタイロッド挿通孔3aと対応する位置にタイロッド挿通孔7cが形成される。型枠部材7の係合部7b外側間の長さをl1、中央部7aの長さをl2、係合部7bの長さをl3とし、L1=l1、L2=l2、L3=l3とする。型枠部材7の高さ方向の長さをT1とする。型枠部材7の中央部7aがフランジ2、2の間に嵌入に係合部7bがフランジ2、2の端面に係合するので設置の際の位置決めが容易に実施することができる。
【0016】
図3(a)(b)は、型枠部材7の外側に積層される補強プレート8を示す図である。補強プレート8は、鋼等の金属や、強化樹脂等の樹脂で形成される。補強プレート8の幅方向の長さは、型枠部材7の係合部7b外側間の長さをl1と同じにする。補強プレート8には、ウェブ3に形成したタイロッド挿入通孔3a、型枠部材7の中央部7aに形成したタイロッド挿通孔7cと対応する位置にタイロッド挿通孔8aを形成する。補強プレート8の高さ方向の長さt1を型枠部材7の高さ方向の長さT1より長くする。型枠部材7を高さ方向に連設して形成される連設部の位置と、型枠部材7の外側に積層されて高さ方向に連設される補強プレート8の連設部の位置が合致しないようにする。型枠部材の連設部と補強部材の連設部の位置が合致しないようにすることで、地震時の変位に対しての強度を向上させることが可能となる。
【0017】
図4は、ウェブ3に形成したタイロッド挿入通孔3a、型枠部材7の中央部7aに形成したタイロッド挿通孔7c、補強プレート8に形成したタイロッド挿通孔8aに挿入されるタイロッド9とタイロッド9の両端雄ネジ9aに螺着されるナット10を示す図である。
【0018】
図5は、H型鋼柱1のウェブ3を挟んだ両側を耐震補強する実施形態の水平断面図である。H型鋼柱1のフランジ2、2に型枠部材7をその中央部7aをフランジ2.2内に嵌入させ、係合部7bをフランジ2、2の端面に係合するように配置する。型枠部材7の外側に連続繊維シート11を接着剤により配置する。連続繊維シート11をフランジ表面に配置しても良い。連続繊維シートの材料としては、カーボン繊維などの無機系繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリアレート繊維などの有機系繊維である。これらの繊維で形成される1方向及び2方向の繊維シート3の引張強度は5〜180ton/mと大きい。連続繊維シート11を備えることで、引張強度と地震の減衰性を向上させることが可能となる。
【0019】
連続繊維シート11上に補強プレート8を積層する。H型鋼柱1の耐震補強対象の高さまで型枠部材7、連続繊維シート11、補強プレート8を連設して配置する。ウェブ3に形成したタイロッド挿入通孔3a、型枠部材7の中央部7aに形成したタイロッド挿通孔7c、補強プレート8に形成したタイロッド挿通孔8aにタイロッド9を挿入し、タイロッド9の両端雄ネジ9aにナット10を螺着して締め付け固定する。補強プレート8を配置することで耐震性が向上する。
【0020】
H型鋼柱1のウェブ3、フランジ2、2と型枠部材7に囲まれた空間に補強筋12を配筋する。その後、高強度グラウト等の固化材を充填して固化させて、H型鋼柱1と型枠部材7、連続繊維シート11及び補強プレート8を一体化し、最小限の補強スペースで耐震性能の大きなH型鋼柱1の耐震補強構造を提供することが可能となる。
【0021】
図6は、障害物等の存在によりウェブ3の一方側にのみ耐震補強する実施形態を示す図である。片側のみの耐震補強であっても十分な耐震性能を得ることが可能となる。
【0022】
図7は、下部構造4から上部構造6まで伸びるH型鋼柱1の耐震補強構造の縦断面図を示す図である。下部構造4の基礎5から梁等の上部構造6まで伸びるH型鋼柱1に外表面に連続繊維シート11を配置した型枠部材7を上方向に連設する。連続繊維シート11を配置した型枠部材7の外側に補強プレート8を配置する。補強プレート8の高さ方向の長さを型枠部材7の高さ方向の長さを長くし、型枠部材7の連設部と補強プレート8の連設部の位置が合致しないようにする。型枠部材7の連設部と補強プレート8の連設部の位置が合致していると地震時の変位に対する強度が弱くなるためである。
【0023】
ウェブ3に形成したタイロッド挿入通孔3a、型枠部材7の中央部7aに形成したタイロッド挿通孔7c、補強プレート8に形成したタイロッド挿通孔8aにタイロッド9を挿入し、タイロッド9の両端雄ネジ9aにナット10を螺着して締め付け固定する。H型鋼柱1のウェブ3、フランジ2、2と型枠部材7に囲まれた空間に補強筋12を配筋する。
【0024】
下部構造4と補強プレート8間に下部補強ブレース13を配置し、上部構造6と補強プレート8間に上部補強ブレース14を配置する。H型鋼柱1のウェブ3、フランジ2、2と型枠部材7に囲まれた空間に高強度グラウト等の固化材を充填して固化させて、H型鋼柱1と型枠部材7、連続繊維シート11及び補強プレート8を一体化する。下部補強ブレース13と上部補強ブレース14は固化材充填の際の圧力に対する補強部材として機能する。固化材の固化後に下部補強ブレース13と上部補強ブレース14をそのまま残しても良い。
【0025】
以上のように、本発明のH型鋼柱の耐震補強構造によれば、耐震補強スペースを最小に抑えることができ、部品点数が少なくH型鋼柱への補強材の配置作業を容易に素早く実施でき、耐震性能の大きなH型鋼柱の耐震補強構造を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0026】
1:H型鋼柱、2:フランジ、3:ウェブ、3a:タイロッド挿通孔、4:下部構造、5:基礎、6:上部構造、7:型枠部材、7a:中央部、7b:係合部、7c:タイロッド挿通孔、8:補強プレート、8a:タイロッド挿通孔、9:タイロッド、9a:雄ネジ、10:ナット、11:連続繊維シート、12:補強筋、13:下部補強ブレース、14:上部補強ブレース
【要約】      (修正有)
【課題】簡単な構成で耐震補強スペースを最小限として耐震性能を向上させることが可能なH型鋼柱の耐震補強構造を提供する。
【解決手段】ウェブ3に高さ方向に所定間隔でタイロッド挿通孔を形成したH型鋼柱と、H型鋼柱の高さ方向に連設されフランジ2,2間に嵌入する中央部の両端にフランジ端部と係合する係合部7bを形成し、ウェブ3のタイロッド挿通孔と対応する位置にタイロッド挿通孔を形成した型枠部材7と、型枠部材7の外側に積層されウェブ3及び型枠部材7のタイロッド挿通孔と対応する位置にタイロッド挿通孔を形成した補強プレート8と、補強プレート8、型枠部材7、ウェブ3に形成したタイロッド挿通孔に挿入される両端に雄ネジを形成したタイロッド9と、タイロッド9の両端雄ネジに螺着されるナット10と、H型鋼と型枠部材に囲まれた空間に配筋される補強筋と、H型鋼と型枠部材7に囲まれた空間に充填される固化材と、からなる。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7