(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
畦形成箇所に沿って移動され、畦形成箇所に土を盛上げ状態に供給する盛土部と、盛土部の移動方向の後方に位置して、盛土部で盛土された土壌を押圧して畦に成形する成畦部とを有し、成畦部は、盛土部で土を盛上げ状態とした畦形成箇所上を回転しながら通過する上面ローラと、上面ローラの回転中心に向けた傾斜面を有する円錐状ディスクである畦成形機において、
盛土部は、回転軸に掘削爪を多数放射状に設けたローター軸を回転させ、旧畦の一部と圃場面の一部を掘削した土壌を畦側に跳ね上げて畦形成箇所に土を盛上げて後方に位置する成畦部のディスクによって押圧しながら畦を成形していく状態と、後方に位置する成畦部のディスクを使用せずに上昇させるとともに、旧畦の一部と圃場面の一部を掘削した土壌を畦から遠ざける方向に放出して畦削り作業する状態とにローター軸外周を覆っているローター軸カバーの一部を構成する切換カバーによって切換え可能であることを特徴とする畦成形機。
【背景技術】
【0002】
この種の畦成形機の従来技術として特開2000−041403号公報(従来技術1)や特開2012−060979号公報(従来技術2)が開示されている。
【0003】
従来技術1には、「走行機体の後部に装着され、該走行機体から動力を受け、元畦及び圃場を耕耘して畦状に盛り上げる前処理体、及びこの前処理体により耕耘された土壌を回転しながら畦に成形するドラム状の整畦体を備え、本体に対して前処理体及び整畦体を左右にオフセット可能に構成した畦塗り機」の開示がされている。
また、従来技術2には「畦の上面の土を削るとともに、削った土を第1方向に向けて搬送して除去する上面削り部と、畦の法面の土を削るとともに、削った土を第2方向に向けて搬送して除去する法面削り部と、を備え、」た畦削機の開示がされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
畦成形機は、一般に進行方向前方部に旧畦の一部と裾部を掘削するとともに旧畦側に掘削土を盛り上げるための回転軸に掘削爪を設けたロータリ耕耘部を有する盛土部が設けられ、その後方に畦側面を成形する円錐状の成形ディスクと畦上面を成形する円筒状の成形ローラが一体となって回転し、盛土部により旧畦に盛り上げられた盛土を圧縮して畦を成形する畦成形部が設けられ畦成形作業部を構成していて、畦成形作業部をトラクタの側方にオフセットさせ旧畦と平行に走行しながら畦成形作業を行う。この時、畦成形部の円錐状ディスクと円筒状ローラは土を圧縮すると共に走行速度より速い速度で回転して土を塗りつけて畦を成形して行く。しかし、年々これを繰り返していくと、畦成形時に盛土部により畦の一部が掘削されるが、掘削された土壌はそのまま戻され塗り直すためのもので、土壌を排出する等の機能は有していなく、盛土部により掻き揚げられた土壌により畦の幅が膨らんで圃場面積が減少していくという問題がある。このため、畦成形作業前に希望する畦の幅にした後、適正な畦成形作業を行ないたいというニーズがあった。
【0006】
従来技術1は従来の畦成形機であり、盛土部により掻き揚げられた土壌はそのまま塗り固められ、畦の幅が膨らむことを防止することに対応したものではない。従来技術2の畦削機の場合、畦の上面と法面を削り取るための専用の機械である。このため、使用者は畦成形機の他に畦を削る為の専用の機械が必要となり、購入費用の負担を強いることとなる他、作業時の付け替え等の煩わしい作業が必要となる。
【0007】
このため本発明の目的は、専用の機械等を使用せずに、畦成形機において容易に畦成形作業と畦の幅を調整するための畦削り作業が可能である畦成形機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、畦形成箇所に沿って移動され、畦形成箇所に土を盛上げ状態に供給する盛土部と、盛土部の移動方向の後方に位置して、盛土部で盛土された土壌を押圧して畦に成形する成畦部とを有し、成畦部は、盛土部で土を盛上げ状態とした畦形成箇所上を回転しながら通過する上面ローラと、上面ローラの回転中心に向けた傾斜面を有する円錐状ディスクである畦成形機において、盛土部は、
回転軸に掘削爪を多数放射状に設けたローター軸を回転させ、旧畦の一部と圃場面の一部を掘削した土壌を畦側に跳ね上げて畦形成箇所に土を盛上げ
て後方に位置する成畦部のディスクによって押圧しながら畦を成形していく状態と、
後方に位置する成畦部のディスクを使用せずに上昇させるとともに、旧畦の一部と圃場面の一部を掘削した土壌を畦から遠ざける方向に放出
して畦削り作業する状態とに
ローター軸外周を覆っているローター軸カバーの一部を構成する切換カバーによって切換え可能であることを特徴とする畦成形機を提案する。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、盛土部は、掘削した土壌を畦側に跳ね上げて畦形成箇所に土を盛上げる状態と、掘削した土壌を畦から遠ざける方向に放出する状態とに切換え可能であるため、幅が膨らんだ畦を削り取る場合に、掘削した土壌を畦から遠ざける方向に放出させることにより容易に畦を削り取ることが可能であり、畦成形時には掘削した土壌を畦側に跳ね上げて畦形成箇所に土を盛上げる状態とすることで通常の畦成形作業が可能となる。このように一台の機械により畦成形作業と畦削り作業が兼用できるため、複数の機械を必要とせず購入費用の負担を軽減できる。また、作業時のトラクタへの付け替えなどの作業が不要であり作業効率が良い。さらに、盛土部のローター部掘削深さと成畦部の円錐状ディスク回転中心の相対高さを変更可能であることにより、畦削り作業時に円錐状ディスク側を上昇させることで円錐状ディスクの位置に影響されずに畦の削り幅を任意に選択できるため作業効率が良い。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明の実施の一形態を、
図1乃至
図3に基づいて説明する。
図1は本発明の実施例を示した畦成形機の平面図、
図2は同じく本発明の実施例を示した畦成形機の左側面図、
図3は本発明の実施例の畦成形機の盛土部の畦成形作業時と畦削り作業時の正面説明図である。
【0013】
図2は、本発明を実施した畦成形機をトラクタへ装着した状態の側面図を示したもので、トラクタ1後部の左右一対のロアーリンク12と中央上方に設けたトップリンク10とからなる3点リンクヒッチ機構に、これらを定型化する連結枠2(クイックカプラー又はオートヒッチと称される)を前記ロアーリンク12に水平方向に設けたロアーリンクピン13と前記トップリンク10に同じく水平方向に設けたトップリンクピン11をそれぞれ挿入して取り付け、畦成形機の装着フレーム3前方に設けた左右一対のロアーピン20と該中央上方に設けたトップマスト30の前端部に設けたアッパーピン22に前記連結枠2の係合部を係合させ連結される。
【0014】
連結手順は、先ず連結枠2上方のフックを前記トップマスト30のアッパーピン22に係合させ、トラクタの3点リンク機構を上昇させこれに連結された連結枠2を上昇させると、前記畦成形機側のロアーピン20が連結枠2側に引き寄せられ連結枠2の下部の係合部と係合し連結される。下部の係合部は、連結枠2に設けたフック21をロアーピン20に引掛けて外れ防止をする。
【0015】
図1は連結枠2を外した状態の平面視の本発明の畦成形機を示したもので、トップマスト30やロアーピン20は、装着フレーム3の前方に突設されて設けられていて、装着フレーム3から後方へ延設され、装着フレーム3に対し第1水平回動軸51を回動中心に第1水平回動手段50、この実施形態では旋回シリンダ501によって後方側を水平回動自在に設けられた支持フレーム5と、支持フレーム5の後端側に設けられた第2水平回動軸53を中心に、第2水平回動手段の回動シリンダ521によって水平方向に回動可能である畦成形作業部4と、第1水平回動手段50と第2水平回動手段52とをそれぞれ制御する制御部(図示せず)とを有する。
【0016】
畦成形作業部4の駆動は、トラクタ1から装着フレーム3前方に突設された入力軸31にユニバーサルジョイント(図示せず)を連結して動力が伝達され、さらに装着フレーム3側と畦成形作業部4側との間に連結されたユニバーサルジョイント7により動力が伝達され駆動される。
【0017】
この発明の1つの実施形態である畦成形機は、畦成形作業部4をトラクタ1の側方にオフセットさせ、畦Rと平行にトラクタ1を走行させ畦成形作業を行うことが可能であるとともに、盛土部の土壌の放出方向を切替えることにより畦削り作業も行なうことが可能である。
【0018】
畦成形作業部4は、作業進行方向前方側に設けられる盛土部40と、盛土部40の後方側に設けられる成畦部41とからなる。盛土部40は、掘削爪401を多数放射状に設け回転軸を作業進行方向に向け設けたローター軸402を回転させ、畦成形作業時には旧畦の一部と圃場面の一部を掘削しながら旧畦上に土を盛上げ、盛上げられた土は後方に位置する成畦部41により新畦に成形される。成畦部41は畦斜面成形用の円錐面を有するディスク411と畦上面成形用の円筒面を有する上面ローラ413を有し、これをトラクタ1の進行速度より速い速度で進行方向に回転させ畦を成形する。ローター軸402は、畦成形作業部本体側から前方に向け突設されて設けられ、畦成形作業部本体側を基点に前方部を上下に回動可能である。回動することによりローター軸402掘削深さと成畦部41の円錐状ディスク411の回転中心との相対高さを変更できる。回動は、畦成形作業部本体側とローター軸402を保持しているフレームとに連結され端部のハンドルを回転させると内装された螺旋軸により伸縮する伸縮ロッド408を伸縮させ回動させる。
【0019】
また、畦削り作業時には、盛土部40のローター軸402外周を覆って掘削土壌を誘導するローター軸カバー403の掻き揚げ側の一部を構成する切換カバー404を開放することにより、掘削爪401により掘削された土壌は畦側に誘導されず開放された切換カバー404部より畦から遠ざかる方向に放出される。このとき、畦側には土壌が盛土されないため、後方に位置する成畦部41により畦は成形されない。ローター軸掘削深さと成畦部41の円錐状ディスク411回転中心の相対高さを変更可能な場合、ディスク411を上昇させると、ディスク411の位置に影響されずに畦削り位置を調整できる範囲がさらに大きくなる。
【0020】
図3の(a)は、畦成形作業時の盛土部40の状態を示した正面説明図である。ローター軸402は、畦の上方から下方に向け回転していて、掘削爪401で掘削され掻き揚げられた土壌は、ローター軸カバー403によってローター軸402上方を通過して誘導され畦側に盛土される。(b)は、畦削り作業時の盛土部40の状態を示した正面説明図である。ローター軸カバー403の掻き揚げ側に設けた切換カバー404を畦から遠ざける方向に開放することにより、掘削爪401で掘削した土壌は畦側に盛土されずに遠ざかる方向に放出され、畦を削ることができる。切換カバー404は、ローター軸402に沿って円弧状に構成されたローター軸カバー403の掻き揚げ側を分割してチョウバン405で連結し、下方端部を左右に回動可能に構成されている。カバー外周部に設けた固定ロッド406の移動固定により閉じた状態と開放した状態とに切換できる。
【0021】
装着フレーム3の後方には、垂直方向に設けた第1水平回動軸51が設けてあり、これを中心に水平回動可能に後方側に延設された支持フレーム5が設けられている。さらに支持フレーム5の回動外端側には垂直方向に設けた第2水平回動軸53が設けてあり、これを中心に畦成形作業部4が水平回動可能に設けられている。
【0022】
支持フレーム5の回動は、装着フレーム3と支持フレーム5とにそれぞれ端部を水平回動自在に連結された第1水平回動手段である旋回シリンダ501の伸縮により行われる。また、畦成形作業部4を水平回動させる第2水平回動手段は、一端を支持フレーム5に水平回動自在に設けられたプレート状の回動アーム522と、回動アーム522の回動外端側と支持フレーム5とにそれぞれ端部を水平回動自在に連結された回動シリンダ521と、プレート状の回動アーム522に設けた水平方向のガイド穴523に嵌合する畦成形作業部4側に保持された係合ピン524で構成されている。
【0023】
係合ピン524は、平面視において畦成形作業部4の回動中心である第2水平回動軸53と離間して設けられていて、回動シリンダ521を伸縮させると、これに連結された回動アーム522が第2水平回動軸近傍の第1水平回動軸寄りに設けられた回動軸を中心に水平回動を行い、回動アーム522に設けたガイド穴523に嵌合した係合ピン524が回動され、係合ピン524を保持している畦成形作業部4が第2水平回動軸53を中心に回動される。
【0024】
畦成形作業部4の成畦部41の内側には、略進行方向に回転自在の円板状の抵抗輪412が設けてあり、抵抗輪412の外周は作業時圃場面に刺さり込み、成畦部41の畦成形時の押し付け反力を受け止める役目を行う。
【0025】
制御部は、畦成形作業部4をトラクタ1の側方にオフセットさせ、畦Rと平行にトラクタ1を走行させ直線状の畦成形作業や畦削り作業を行う場合や被作業時トラクタ1後方に位置させる場合の畦成形作業部4の位置及び方向を旋回シリンダ501と回動シリンダ521を伸縮させて制御を行なう。この発明の実施形態である第1水平回動手段50及び第2水平回動手段52は、油圧ポンプや油圧バルブ等を介して行なわれるが、この作動の制御はトラクタ1の運転席から操作できる制御部(図示せず)によって自動操作又は遠隔操作する。尚、旋回シリンダ501及び回動シリンダ521は電動で作動するものでも良い。
【0026】
図4乃至
図7は本発明の別実施例を示したもので、
図4は本発明の別実施例の畦成形機の平面図、
図5は本発明の別実施例の畦成形機の右側面図、
図6は本発明の別実施例の盛土部の畦成形作業時の後面図、
図7は本発明の別実施例の盛土部の畦削り作業時の後面図である。前記実施例と異なり、畦成形作業部4aの盛土部40aのローター軸402aは畦に対し回転軸が直行する方向に設けられていて、畦成形作業用のローター軸402aと畦削り作業用のローター軸402bとが交換可能で、交換することにより掘削した土壌を畦側に跳ね上げて畦形成箇所に土を盛上げる状態と、掘削した土壌を畦から遠ざける方向に放出する状態とに切換え可能である。また、畦上面掘削部6を設けてあり、畦の上面を削り取ることも可能な構造となっている。
【0027】
装着フレーム3aの後方には、垂直方向に設けた第1水平回動軸51aが設けてあり、これを中心に水平回動可能に後方側に延設された支持フレーム5aが設けられている。さらに支持フレーム5aの回動外端側には垂直方向に設けた第2水平回動軸53aが設けてあり、これを中心に畦成形作業部4aが水平回動可能に設けられている。
【0028】
支持フレーム5aの回動は、装着フレーム3aと支持フレーム5aとにそれぞれ端部を水平回動自在に連結された旋回シリンダの伸縮により行われ、畦成形作業部4aの側方へのオフセット量が調整可能である。また、畦成形作業部4aは支持フレーム5aと畦成形作業部4a側とに連結された回動シリンダの伸縮によって回動され畦成形作業部4aの向きを調整可能である。
【0029】
図6は、畦成形作業時の盛土部40aと畦上面削土部6の後面視要部説明図である。ローター軸402aは、畦に対し回転軸が直行する方向に設けられていて、ローター軸402aには掘削用の掘削爪401aが放射状に設けられ、旧畦の斜面の一部と旧畦裾部を掘削するとともに、爪の捻り方向が畦側になっていて畦側に掘削土壌を跳ね上げて盛土する。盛土部40a後方には成畦部41aがあり、盛土された土壌を押圧して畦に成形する。成畦部41aのディスク411aは、畦成形作業部4aの中央部近傍から後方に延設されてディスク411aに動力を伝達するチェンケース414の後端側に位置し、チェンケース414の前方部が畦成形作業部4a本体に対し上下に回動可能に設けられている。チェンケース414と畦成形作業部4a本体とに連結された伸縮ロッド415を伸縮させてディスク411aの上下位置を調整できる。
【0030】
ローター軸402aは片持ち状に畦と反対側の一端が支持されていて、支持されている側の基部が分割されフランジ407が設けられ駆動部に取付取外し可能となっている。また、ローター軸402aより後方の成畦部41aのディスク411aより前方部に畦の上面を掘削する畦上面掘削部6が設けられていて、畦上面の表層部を掘削して上面の凹凸を均平にすることや雑草の根の部分の除去を行ない、掘削土は畦の斜面側に放擲される。使用しない時は、
図6の矢印Y方向に回動軸62を中心に上方に回動して収納可能である。畦上面掘削部6は畦と直行する方向の上面掘削軸60に複数の上面掘削爪61が放射状に取付けられ、回転することにより掘削するとともに掘削土を畦斜面側に放擲する。上面を掘削しない場合は、上面掘削軸60上方部に設けた作業進行方向と平行の回動軸62を回動支点として上面掘削軸60部分を上方に回動して被作業状態とすることが可能である。被作業状態ではクラッチ部63が切り離され動力が遮断される。
【0031】
図7は、畦削り作業時の盛土部40aと畦上面削土部6の後面視要部説明図である。ローター軸402bは、基部のフランジ407部分で取付取外し可能となっている部分から畦削り作業用のローター軸402bに交換したもので、ローター軸402bの畦側端部に畦の斜面部を掘削する為の掘削爪401bを放射状に設けている。掘削爪401bは畦斜面を掘削するとともに掘削土を畦から遠ざける方向に放擲する形状に形成されている。畦上面掘削部6は必要により作業状態及び被作業状態にして作業を行なう。
【0032】
畦塗り作業及び畦削り作業を行なう場合、トラクタ1後方の3点リンク機構に本発明の畦成形機を装着し、畦成形作業部4をトラクタ側方にオフセットさせ畦Rと平行に走行して作業を行なう。畦塗り作業の場合、盛土部40を畦側に掘削土を盛土する状態に切換えるとともにその後方に位置する成畦部41のディスク411によって押圧しながら畦を成形して行く。また、畦削り作業の場合、掘削土を畦Rから遠ざける状態に盛土部40を切換えて作業を行なう。このとき、成畦部41は上昇させて使用せずに作業を行なうと良い。