(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6128583
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】チロシナーゼ阻害作用を有するローヤルゼリーの製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 33/10 20160101AFI20170508BHJP
A23L 21/20 20160101ALI20170508BHJP
【FI】
A23L33/10
A23L21/20
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-285177(P2012-285177)
(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公開番号】特開2014-124163(P2014-124163A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年12月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】592207809
【氏名又は名称】森川健康堂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100152319
【弁理士】
【氏名又は名称】曽我 亜紀
(72)【発明者】
【氏名】永松 剛
【審査官】
長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−123119(JP,A)
【文献】
特開2006−219434(JP,A)
【文献】
特開平09−315928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 21/20
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/FSTA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バチルス サブチリス由来のタンパク質分解酵素およびパンクレアチンを作用させる工程により得られた酵素処理ローヤルゼリーであって生ローヤルゼリーと比較して増強されたチロシナーゼ阻害作用を有する酵素処理ローヤルゼリーを有効成分とするチロシナーゼ阻害用食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チロシナーゼ阻害作用を有するローヤルゼリーの製造方法、並びに、該方法によって得られるローヤルゼリーを含有するローヤルゼリー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ローヤルゼリーとは、若い働き蜂の咽頭腺により分泌される乳白色したペースト状物質であり、その成分は必須アミノ酸をはじめとするアミノ酸が豊富に含まれ良質なタンパク質などから構成されている。さらに、ビタミン類、ミネラル類、炭水化物などの微量成分を含んでいる。例えばビタミン類ではビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ナイアシン、成長促進や老化防止に効果のあるパントテン酸、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンEなどが挙げられる。ミネラル類ではカリウム、マグネシウム、カルシウム、銅、鉄、リンなどが挙げられる。炭水化物ではブドウ糖、果糖などが挙げられる。さらに、アセチルコリン様物質、有機酸(10−ヒドロキシデセン酸など)、脂肪、タンパク質性の抗菌物質であるロイアリシンなどが含まれている。
【0003】
このようにローヤルゼリーは様々な栄養成分を含んでおり、例えば、抗菌作用、免疫増強作用、抗炎症作用、老化防止作用、更年期障害の予防・治療作用、抗がん作用など数多くの効果が知られている。
【0004】
チロシナーゼは、メラニン合成に関わる酸化還元酵素であり、チロシンにヒドロキシル基を導入してドーパを生成する反応を触媒する。
【0005】
メラニンは肌に存在する色素であり、メラノサイトで紫外線などの刺激により生成され、シミやソバカスなどの原因となる。具体的には、紫外線によりフリーラジカル(活性酸素)が発生し、その刺激によって表皮のメラノサイト(色素細胞)が活性化される。活性化したメラノサイトでは、チロシナーゼが活性化され、その結果、メラノサイト内のチロシンがチロシナーゼによってドーパに変換され、さらなる反応によりメラニンが生成される。したがって、チロシナーゼ阻害作用を有する物質には、メラニン生成抑制効果、ひいては美白効果が期待される。
【0006】
食品に由来するチロシナーゼ阻害剤として、例えば、コウジ酸などが開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭61−10447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、特にチロシナーゼ阻害作用を有するローヤルゼリーを得ることのできる新しい技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討を行った結果、ローヤルゼリーにバチルス サブチリス(Bacillus subtilis)由来のタンパク質分解酵素およびパンクレアチンを作用させることにより、前記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち本発明は、
1.ローヤルゼリーにバチルス サブチリス由来のタンパク質分解酵素を作用させる工程およびパンクレアチンを作用させる工程を含むことを特徴とする、チロシナーゼ阻害作用を有するローヤルゼリーの製造方法、および、
2.前記製造方法によって得られるローヤルゼリーを含有するローヤルゼリー組成物、
からなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると安全で簡便な方法によりチロシナーゼ阻害作用を有するローヤルゼリーを製造することができ、このチロシナーゼ阻害作用を有するローヤルゼリーを利用して、ローヤルゼリー組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明において、チロシナーゼ阻害作用を有するローヤルゼリーは、バチルス サブチリス由来のタンパク質分解酵素およびパンクレアチンをローヤルゼリーに作用させることにより製造される。
【0013】
ローヤルゼリーの原産国は例えば日本、中国、台湾、タイ、ブラジル、ヨーロッパ諸国、オセアニア諸国、アメリカなどを挙げることができ、いずれの原産国のローヤルゼリーを用いてもよい。また、複数の原産国のローヤルゼリーを適宜混合して用いてもよい。ローヤルゼリーは液体であることが好ましく、凍結乾燥状態のローヤルゼリーを用いる場合は精製水、水道水または適当な緩衝液などで溶解して用いることができる。また、凍結状態のローヤルゼリーは融解して用いることができる。
【0014】
さらに、ローヤルゼリーは加熱、遠心分離、アルコール抽出、ろ過、フリーズドライまたは熱風乾燥などの加工並びに各種栄養素などが添加されたものであってもよい。
【0015】
ローヤルゼリーに作用させる、バチルス サブチリス由来のタンパク質分解酵素はバチルス サブチリスを培養することにより得られ、培養液、精製品であってもよい。また、バチルス スサブチリス由来のタンパク質分解酵素は遺伝子組換えにより得られたものであってもよく、さらに、例えば糖やポリエチレングリコールなどで修飾されたものであってもよい。
【0016】
バチルス サブチリス由来のタンパク質分解酵素と混合した後のローヤルゼリーの固形分濃度は、0.1〜30W/W%を挙げることができ、好ましくは3〜10W/W%を挙げることができる。ここで、例えば10W/W%は、100gのローヤルゼリーを凍結乾燥などにより乾燥させたとき10gの乾燥品が得られることを意味している。
【0017】
バチルス サブチリス由来のタンパク質分解酵素によるローヤルゼリーの処理条件、例えば処理時間、pH、および温度などの条件は、目的とするチロシナーゼ阻害物質が産生される条件であれば特に限定されず、ローヤルゼリーの安定性およびバチルス サブチリス由来のタンパク質分解酵素の安定性や反応性などを考慮して適宜設定することが可能である。
【0018】
バチルス サブチリス由来のタンパク質分解酵素をローヤルゼリーに作用させる時間は、目的とするチロシナーゼ阻害物質が産生される時間であれば特に限定されないが、数時間〜1日間、好ましくは3時間〜10時間が好ましい。長時間の反応でもチロシナーゼ阻害物質の産生にはほとんど影響がなかった。
【0019】
バチルス サブチリス由来のタンパク質分解酵素をローヤルゼリーに作用させる際のpHは、目的とするチロシナーゼ阻害物質が産生されるpHであれば特に限定されないが、pH3〜11、好ましくはpH5〜11が適当である。
【0020】
バチルス サブチリス由来のタンパク質分解酵素をローヤルゼリーに作用させる際の温度は、目的とするチロシナーゼ阻害物質が産生される温度であれば特に限定されないが、30℃〜80℃、好ましくは40℃〜60℃が適当である。
【0021】
バチルス サブチリス由来のタンパク質分解酵素をローヤルゼリーに反応させている間は静置であってもよくさらに、振とうや攪拌などを行ってもよい。
【0022】
ローヤルゼリーに作用させるパンクレアチンは動物とくに好ましくはブタの消化液より製造されたものが好ましい。パンクレアチンは、膵液に含まれる多種の酵素の混合物であり、主にブタの膵臓から製造したものが消化酵素剤として用いられている。本発明において、消化酵素剤として市販されているパンクレアチンを使用することもできる。
【0023】
パンクレアチンと混合した後のローヤルゼリーの固形分濃度は、0.1〜30W/W%を挙げることができ、好ましくは3〜10W/W%を挙げることができる。ここで、例えば10W/W%は、100gのローヤルゼリーを凍結乾燥などにより乾燥させたとき10gの乾燥品が得られることを意味している。
【0024】
パンクレアチンによるローヤルゼリーの処理条件、例えば処理時間、pH、および温度などの条件は、目的とするチロシナーゼ阻害物質が産生される条件であれば特に限定されず、ローヤルゼリーの安定性およびバチルス サブチリス由来のタンパク質分解酵素の安定性や反応性などを考慮して適宜設定することが可能である。
【0025】
パンクレアチンをローヤルゼリーに作用させる時間は、目的とするチロシナーゼ阻害物質が産生される時間であれば特に限定されないが、数時間〜1日間、好ましくは3時間〜20時間、より好ましくは6時間〜18時間が好ましい。長時間の反応でもチロシナーゼ阻害物質の産生にはほとんど影響がなかった。
【0026】
パンクレアチンをローヤルゼリーに作用させる際のpHは、目的とするチロシナーゼ阻害物質が産生されるpHであれば特に限定されないが、pH3〜11、好ましくはpH5〜11が適当である。
【0027】
パンクレアチンをローヤルゼリーに作用させる際の温度は、目的とするチロシナーゼ阻害物質が産生される温度であれば特に限定されないが、30℃〜80℃、好ましくは40℃〜60℃が適当である。
【0028】
パンクレアチンをローヤルゼリーに反応させている間は静置であってもよくさらに、振とうや攪拌などを行ってもよい。
【0029】
酵素によるローヤルゼリーの処理は、ローヤルゼリーにバチルス サブチリス由来のタンパク質分解酵素を作用させた後にパンクレアチンを作用させることにより実施してもよいし、ローヤルゼリーにパンクレアチンを作用させた後にバチルス サブチリス由来のタンパク質分解酵素を作用させることにより実施してもよい。好ましくは、ローヤルゼリーにバチルス サブチリス由来のタンパク質分解酵素を作用させた後に、パンクレアチンを作用させることにより実施する。すなわち、本発明に係るチロシナーゼ阻害作用を有するローヤルゼリーの製造方法は、ローヤルゼリーにバチルス サブチリス由来のタンパク質分解酵素を作用させる工程およびパンクレアチンを作用させる工程を含むことを特徴とし、好ましくはローヤルゼリーにバチルス サブチリス由来のタンパク質分解酵素を作用させる工程と、該工程の後にパンクレアチンを作用させる工程を含むことを特徴とする。
【0030】
本発明に係るチロシナーゼ阻害作用を有するローヤルゼリーの製造においては、一般に、バチルス サブチリス由来のタンパク質分解酵素およびパンクレアチンによるローヤルゼリーの処理の後に、これら酵素を失活させる工程を含む。バチルス サブチリス由来のタンパク質分解酵素およびパンクレアチンを失活させる方法は、食品として問題がない程度にバチルス サブチリス由来のタンパク質分解酵素およびパンクレアチンを失活させればよい。失活の方法としては、加熱により失活する方法、薬剤を用いて失活する方法、ろ過によりバチルス サブチリス由来のタンパク質分解酵素およびパンクレアチンを除く方法を例示でき、これら方法を単独で用いてもよいし、二種類以上を組み合わせてもよい。好ましくは、加熱によりバチルス サブチリス由来のタンパク質分解酵素およびパンクレアチンを失活させる。加熱温度は60℃以上、好ましくは80℃以上で加熱することが適当である。さらに、食品の殺菌工程が必要な場合は、バチルス サブチリス由来のタンパク質分解酵素およびパンクレアチンを失活させる工程と兼ねてもよい。
【0031】
さらにバチルス サブチリス由来のタンパク質分解酵素およびパンクレアチンをローヤルゼリーに作用させる際にバチルス サブチリス由来のタンパク質分解酵素およびパンクレアチンの安定化剤や反応促進剤などを添加してもよい。
【0032】
バチルス サブチリス由来のタンパク質分解酵素およびパンクレアチンを作用させることにより製造されるローヤルゼリーは、チロシナーゼ阻害作用を有するローヤルゼリーである。
【0033】
本発明に係るチロシナーゼ阻害作用を有するローヤルゼリーを各種クロマトグラフィーを用いて処理することによりチロシナーゼ阻害物質を精製してもよい。精製方法としてはゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、順相クロマトグラフィー、限外ろ過、電気泳動などを挙げることができる。これらは単独で若しくは組み合わせて精製に使用できる。
【0034】
ゲルろ過クロマトグラフィーは、種々な分子量のタンパク質を分離できるゲルろ過クロマトグラフィー用の担体があり、分子量が約1万以下のタンパク質を分離できるゲルろ過クロマトグラフィー用の担体が好ましい。イオン交換クロマトグラフィーに用いられているイオン交換基としては、陰イオン交換体、陽イオン交換体などがある。陰イオン交換体としては、ジエチルアミノエチル基(DEAE基)、四級アミノエチル基(QAE基)などを例示することができる。また、陽イオン交換体としては、カルボキシメチル基(CM基)、スルホプロピル基(SP基)を例示することができる。疎水クロマトグラフィーに用いられる担体としてはブチル基(Butyl基)、エチル基(Ethyl基)、フェニル基(Phenyl基)が結合した担体を例示することができる。逆相クロマトグラフィーに用いられる担体としてはオクタデシル基(C18)、オクタデシル基とはアルキル基の長さが異なるC30、C8、C4などが結合した担体が例示される。順相クロマトグラフィーに用いられる担体としてはシリカゲルのほか、シアノプロピル基、ジオール構造を有する官能基、アミノプロピル基、ポリアミンなどが結合した担体が例示される。
【0035】
本発明に係るチロシナーゼ阻害作用を有するローヤルゼリーまたはその精製品に各種成分を添加することによりローヤルゼリー組成物として供することができる。各種成分としては、例えば食品、糖、脂質、乳化剤、増粘剤、調味料、香料、酸味調整剤、保存料、果汁、香料、各種栄養成分などが挙げられ、本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。また、各種成分は単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。例えば糖としては、蔗糖、異性化糖、グルコース、フラクトース、パラチノース、トレハロース、ラクトース、キシロースなどを例示することができる。乳化剤としては、蔗糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、レシチンなどを例示することができる。増粘剤としてはカラギーナン、アラビアガム、キサンタンガム、グァーガム、ペクチン、ローカストビーンガム増粘剤澱粉、ジェランガムなどを例示することができる。酸味調整剤としては、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、フマル酸、グルコン酸、酒石酸などを例示することができる。保存料としては、安息香酸およびその塩、ソルビン酸およびその塩、パラベン、亜硫酸ナトリウム、ペクチン分解物、グリシンなどを例示することができる。果汁としては、トマト果汁、梅果汁、リンゴ果汁、レモン果汁、オレンジ果汁、ベリー系果汁などを例示することができる。香料としては、ハーブ、スパイスなどの香辛料、フルーツ系香料、バニラなどの香料などを例示することができる。この他、好ましい他の栄養成分として、ビタミンDなどのビタミン類やカルシウム、マグネシウム、鉄、マンガン、亜鉛などのミネラル類などが挙げられる。
【0036】
本発明に係るローヤルゼリー組成物は、食品として供することもできる。そのような食品の具体的形態としては、例えば、飲料類、菓子、キャンディ、ガム、パン、畜肉製品、乳製品、レトルト食品、即席食品、冷凍食品、ゼリー状食品、養蜂産品、漬物、調味料などを挙げることができる。これらの食品は、いわゆる健康食品、機能性食品、特定保健用食品、栄養機能食品、栄養補助食品、サプリメントなどとしても有用である。また、それらの食品としての形状としては、顆粒、粉末、タブレット、カプセル、チュアブル、ドリンク、ゼリー、ペースト、粒などを挙げることができる。
【0037】
また、本発明に係るチロシナーゼ阻害作用を有するローヤルゼリー、好ましくはその精製品は、必要に応じて医薬用に許容される担体(医薬用担体)を含む医薬組成物として製造できる。このような医薬組成物は美白剤として利用することができる。 医薬用担体は、製剤の使用形態に応じて通常使用される、充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤および賦形剤を例示できる。これらは得られる製剤の投与形態に応じて適宜選択して使用される。より具体的には、水、医薬的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトースを例示できる。これらは、目的とする薬剤の剤形に応じて適宜1種類または2種類以上を組み合わせて使用される。そのほか、安定化剤、殺菌剤、緩衝剤、等張化剤、キレート剤、界面活性剤、およびpH調整剤などを適宜使用することもできる。安定化剤は、例えばヒト血清アルブミンや通常のL−アミノ酸、糖類、セルロース誘導体を例示できる。L−アミノ酸は、特に限定はなく、例えばグリシン、システイン、グルタミン酸などのいずれでもよい。糖類も特に限定はなく、例えばグルコース、マンノース、ガラクトース、果糖などの単糖類、マンニトール、イノシトール、キシリトールなどの糖アルコール、ショ糖、マルトース、乳糖などの二糖類、デキストラン、ヒドロキシプロピルスターチ、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸などの多糖類などおよびそれらの誘導体などのいずれでもよい。セルロース誘導体も特に限定はなく、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのいずれでもよい。界面活性剤も特に限定はなく、イオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤のいずれも使用できる。界面活性剤には、例えばポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル系、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系、ソルビタンモノアシルエステル系、脂肪酸グリセリド系などが包含される。緩衝剤は、ホウ酸、リン酸、酢酸、クエン酸、ε−アミノカプロン酸、グルタミン酸および/またはそれらに対応する塩(例えばそれらのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩)を例示できる。等張化剤は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、糖類、グリセリンを例示できる。キレート剤は、例えばエデト酸ナトリウム、クエン酸を例示できる。
【0038】
本発明に係るチロシナーゼ阻害作用を有するローヤルゼリーは、その作用により、ヒトおよび非ヒト動物においてメラニン生成抑制作用、ひいては美白作用を示す。したがって、本発明に係るチロシナーゼ阻害作用を有するローヤルゼリーを含むローヤルゼリー組成物は、美白効果を期待できる化粧品、食品として有用である。
【0039】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0040】
生ローヤルゼリー100gを水に懸濁し、2N水酸化ナトリウム溶液を用いてpHを7.0に調整し、1Lにして、生ローヤルゼリー溶液を調製した。この溶液にバチルス サブチリス由来のタンパク質分解酵素を1g添加し、45℃で6時間酵素処理を行った。次にこの処理液を20%水酸化ナトリウム溶液を用いてpHを8に調整し、パンクレアチンを1g添加し、45℃で6時間酵素処理を行った。酵素処理の終了した溶液は、20%水酸化ナトリウム溶液または10%クエン酸溶液を用いてpHを5.5に調整し、80℃で10分間加熱することにより酵素を失活させ、さらにろ過を行って不溶性残渣を除き、酵素処理ローヤルゼリー溶液を得た。
【実施例2】
【0041】
実施例1で得られた酵素処理ローヤルゼリー溶液および生ローヤルゼリー溶液について、チロシナーゼ阻害活性の検討を行った。具体的には、試料溶液0.1mLと5mM L−ドーパ溶液1.7mLを混合して37℃で5分間インキュベートを行い、チロシナーゼ溶液0.2mLを添加したのち、37℃で5分間インキュベートし、475nmにおける吸光度を測定し、チロシナーゼ阻害活性を測定した。その結果、生ローヤルゼリー溶液2.5mg/mLのとき、チロシナーゼ活性の阻害率は9%であるのに対し、酵素処理ローヤルゼリー溶液2.5mg/mLのとき、チロシナーゼ活性の阻害率は28%であり、酵素処理ローヤルゼリー溶液のほうが、生ローヤルゼリーよりチロシナーゼ阻害活性が高いことが明らかになった。
【0042】
このように、バチルス サブチリス由来のタンパク質分解酵素およびパンクレアチンをローヤルゼリーに作用させることにより、チロシナーゼ阻害活性が高いローヤルゼリーを製造できることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明により製造されるチロシナーゼ阻害作用を有するローヤルゼリーは、ローヤルゼリー組成物として飲食物などに好適に使用することができ、特に健康食品や美容補助食品などに好適に使用することができる。