特許第6128630号(P6128630)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6128630
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】遊技機の不正電波検出装置
(51)【国際特許分類】
   A63F 7/02 20060101AFI20170508BHJP
【FI】
   A63F7/02 334
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-150062(P2012-150062)
(22)【出願日】2012年7月4日
(65)【公開番号】特開2014-12056(P2014-12056A)
(43)【公開日】2014年1月23日
【審査請求日】2015年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】592234791
【氏名又は名称】エム・エス・エー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092163
【弁理士】
【氏名又は名称】穴見 健策
(74)【代理人】
【識別番号】100136928
【弁理士】
【氏名又は名称】高宮 章
(72)【発明者】
【氏名】烏川 哲
【審査官】 藤澤 和浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−273017(JP,A)
【文献】 特開2001−162018(JP,A)
【文献】 特開2004−129754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F 7/02
A63F 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を受けるアンテナと、
アンテナで受ける電波から変換した検波信号を出力する検波回路と、
検波回路からの出力信号を受け、その信号と予め設定された判定条件に応じて不正電波か否かを判定する判定手段と、を備え、
判定手段は、検波回路からの出力信号を所定の閾値と比較してハイレベル部分とローレベル部分を検出する閾値比較部と、
ハイレベル部分とローレベル部分とが繰り返される一群のサイクル時間を計測するとともに、各周期のハイレベル部分の時間幅及びローレベル部分の時間幅をそれぞれ測定する計時部と、
検波回路からの出力信号のハイレベル部分とローレベル部分とが交互に繰り返される数を計測する周波数計測部と、
計時部で測定した各周期のハイレベル部分の時間幅及びローレベル部分の時間幅がそれぞれ所定の設定範囲内かどうかを比較するとともに、該一群のサイクル時間内におけるハイレベル部分とローレベル部分との繰り返し数と基準値とを比較し、該ハイレベル部分の時間幅及びローレベル部分の時間幅がそれぞれ所定の設定範囲内で、かつ該一群のサイクル時間内における該ハイレベル部分とローレベル部分との繰り返し数が基準値以上の場合に不正電波として判定する比較判定部と、を有することを特徴とする遊技機の不正電波検出装置。
【請求項2】
判定手段によって不正電波と判定された際に外部に知らせるための報知手段を有する請求項記載の遊技機の不正電波検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技機を不正に操作する不正電波を検出して不正操作を防止する不正電波検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パチンコ玉遊技機では球の通過を感知して入賞を検知する入賞センサ、出玉数をカウントする出球センサ等の様々なセンサが利用されている。これらのセンサは金属製の球がセンサを通過する際の磁気の変化等を感知して作動するものが多く使用されているが、不正な電波射出機で特定の周波数の電波を遊技機に向けて射出することにより遊技機の入賞センサや出玉センサ等を誤作動させて、出球を稼ぐ悪質な不正者、いわゆるゴト師の存在が問題となっている。ゴト師による不正行為は遊技場の経営に大きな打撃を与えることから、不正行為対策に関する技術が種々提案されている。例えば、特許文献1には、遊技機に対する不正操作防止装置が提案されており、磁石や不正電波によって遊技機に対する不正操作が行われた際に、回路で検波し、磁力の変化等により生じる誘起電圧が、基準電圧より小さいときにはオフのままであり、基準電圧以上となった場合に通報する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−186766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の遊技機の不正操作防止装置では、不正電波を検出する際には、不正電波によって生じる誘起電圧が基準電圧より大きいか小さいか、すなわち、電波の有無のみで判定する構成であるから、例えば、タクシーやトラックの無線、携帯電話の遊技機に対する不正電波ではない日常生活や経済活動で生じる電波、あるいは雷等の自然現象で生じる電波等をも区別なく検出してしまい、不正電波のみを確実に検出することができず実用に乏しい問題があった。
【0005】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その一つの目的は、遊技機を誤作動させる不正電波と、タクシー無線や携帯電話等のその他の電波と、を区別して電波を検出できる実用性が高い遊技機の不正電波検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、電波を受けるアンテナ12と、アンテナ12で受ける電波から変換した検波信号を出力する検波回路14と、検波回路14からの出力信号SGを受け、その信号SGと予め設定された判定条件に応じて不正電波か否かを判定する判定手段16と、を備え、判定手段16は、検波回路14からの出力信号SGを所定の閾値と比較してハイレベル部分HLとローレベル部分LLを検出する閾値比較部21と、ハイレベル部分HLとローレベル部分LLとが繰り返される一群のサイクル時間(T)を計測するとともに、各周期のハイレベル部分HLの時間幅T1及びローレベル部分LLの時間幅T2をそれぞれ測定する計時部22と、検波回路14からの出力信号SGのハイレベル部分とローレベル部分とが交互に繰り返される数Nを計測する周波数計測部24と、計時部22で測定した各周期のハイレベル部分HLの時間幅T1及びローレベル部分LLの時間幅T2がそれぞれ所定の設定範囲内かどうかを比較するとともに、該一群のサイクル時間(T)内におけるハイレベル部分HLとローレベル部分LLとの繰り返し数Nと基準値とを比較し、該ハイレベル部分の時間幅T1及びローレベル部分の時間幅T2がそれぞれ所定の設定範囲内で、かつ該一群のサイクル時間(T)内における該ハイレベル部分とローレベル部分との繰り返し数Nが基準値以上の場合に不正電波として判定する比較判定部26と、を有する遊技機の不正電波検出装置10から構成される。判定条件は、複数種類の不正電波に対応するように設定するとよい。
【0007】
また、判定手段16によって不正電波と判定された際に外部に知らせるための報知手段38を有することとしてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の遊技機の不正電波検出装置によれば、電波を受けるアンテナと、アンテナで受ける電波に対応してハイレベル部分とローレベル部分を含む信号を出力する検波回路と、検波回路からの出力信号を受け、その信号と予め設定された判定条件に応じて不正電波か否かを判定する判定手段と、を備え、判定手段は、検波回路からの出力信号についてハイレベル部分とローレベル部分とが交互に繰り返される時間を計測する計時部と、検波回路からの出力信号のハイレベル部分とローレベル部分とが交互に繰り返される数を計測する周波数計測部と、周波数計測部で計測した検波回路からの出力信号のハイレベル部分とローレベル部分とが交互に繰り返される数と基準値とを比較し、該ハイレベル部分とローレベル部分とが交互に繰り返される数が基準値以上の場合に不正電波として判定する比較判定部と、を有することから、遊技機に対する不正電波に特有のパターンを利用して、不正電波と、例えばタクシーやトラックの無線、携帯電話、モータのノイズ、雷等のその他の電波と、を区別して不正電波のみを確実に検出することができ、不正行為防止の実用性を向上できる。さらに、1台の不正電波検出装置だけで、複数種類の不正電波に対応して検出することができる。また、設計が簡単で低コストで製造できるとともに、高い検出精度を期待できる。
【0009】
また、計時部は、少なくとも検波回路からの出力信号のハイレベル部分の時間幅又はローレベル部分の時間幅を測定し、比較判定部は、計時部で測定した時間幅と所定の設定範囲とを比較し、該時間幅が設定範囲内で、かつ前記ハイレベル部分とローレベル部分とが交互に繰り返される数が基準値以上の場合に不正電波として判定する構成とすることにより、不正電波とタクシー無線や携帯電話等のその他の電波とを、より確実に区別して不正電波のみを検出することができ、不正電波の検出精度を向上できる。
【0010】
また、判定手段によって不正電波と判定された際に外部に知らせるための報知手段を有する構成とすることにより、不正電波を検出した際に従業員等に報知して不正行為に対する対処を早期に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る遊技機の不正電波検出装置のブロック図である。
図2図1の遊技機の不正電波検出装置の判定手段のブロック図である。
図3図1の遊技機の不正電波検出装置が取り付けられる遊技機の概略説明図である。
図4】遊技機に対する不正電波の一例である。
図5】判定手段の判定条件の一例である。
図6図1の遊技機の不正電波検出装置の作用を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下添付図面を参照しつつ本発明の遊技機の不正電波検出装置の実施形態について説明する。本発明に係る遊技機の不正電波検出装置は、例えば、パチンコ玉遊技機や回胴式遊技機等の遊技機内のセンサを故意に誤作動させて不正に出玉を獲得するような不正な電波を検出するために、遊技機に取り付けられるものである。本実施形態において、遊技機の不正電波検出装置10は、図1に示すように、アンテナ12と、検波回路14と、判定手段16と、を備えている。図3に示すように、本実施形態では、遊技機の不正電波検出装置10は、例えば、パチンコ遊技機100の本体内部の払い出し部102近傍に設置され、遊技機100の電源又はバッテリーで電源供給されて作動する。
【0013】
アンテナ12は、種々の周波数の電波を受ける部分であり、検波回路14に電気的に接続されている。本実施形態では、例えば、低周波数領域の電波に対応した第1アンテナ121と、高周波領域の電波に対応した第2アンテナ122と、の2つのアンテナを有している。第1アンテナ121は、例えば、コイルアンテナからなり2MHz〜300MHz程度の帯域の電波を検知する。第2アンテナは、例えば、ループアンテナからなり200MHz〜900MHz程度の帯域の電波を検知する。複数のアンテナを接続した構成であるから、広い範囲の周波数に対応して検出することができる。よって、1台の不正電波検出装置で、種々の遊技機に対してゴト師等の不正者が使用する様々な種類の周波数の不正電波の不正電波発生器にも対応して検出することができる。なお、アンテナの数や対応する周波数の態様などは、不正電波に対応して自由に設計してもよい。
【0014】
検波回路14は、アンテナ12で受けた電波を後述の判定手段16で判定するために所定の検波信号に変換して出力するための検波手段である。検波回路14は、例えば、ダイオード、コンデンサ、抵抗等を含む電子回路素子を組み合わせ設けられており、アンテナ121、122で受けた電波の磁場変化による誘導起電圧を取り出し整流、変換等して検波信号を生成する。検波回路14は、例えば、アンテナ12が電波を受けたときには、ハイレベル信号を出力し、電波を受けていないときにはローレベル信号を出力する。本実施形態では、図4に示すように、判定手段16の閾値比較部21で検波信号の出力レベルを上下2つの閾値UT、LTで比較しており、上閾値UTよりも大きいレベル部分を検波信号SGのハイレベル部分HLとし、下閾値LTよりも小さいレベル部分を検波信号SGのローレベル部分LLとしている。検波回路14には増幅回路18が電気的に接続されており、検波回路14から出力される検波信号SGは増幅されて判定手段16に出力される。なお、検波回路14は、例えば、上記とは逆に、電波を受けたときにローレベルとなり、電波を受けないときにハイレベルとなる検波信号を出力する回路であってもよい。
【0015】
判定手段16は、検波回路14から増幅回路18を介して出力された検波信号SGを受けて、その検波信号SGが予め設定された判定条件に応じて不正電波か否かを判定する判定手段である。判定手段16は、後述する不正電波特有の特性を利用して不正電波かどうかを判定する。なお、本実施形態では説明のために、遊技機に対する不正電波ではないその他の電波、例えば、タクシーやトラックの無線電波、携帯電話機の電波、遊技機内のモータのノイズ等の日常生活や経済活動で生じる電波や、雷等の自然に生じる電波等を正常電波ということとする。
【0016】
本実施形態では、判定手段16は、図2に示すように、例えば、増幅回路18からの検波信号SGが入力される入力部20と、入力部から入力された検波信号SGのレベルと上下2つの閾値UT、LTとを比較する閾値比較部21と、時間を計測する計時部22と、検波信号のハイレベル部分とローレベル部分とが繰返される数を計測する周波数計測部24と、比較判定部26と、比較判定部26の判定結果を出力する出力部28と、を有する。判定手段16は、例えば、中央演算処理装置(CPU)を有し、予め設定されたプログラムに沿って検波信号の判定を行うマイコン(マイクロコンピュータ)で実現される。
【0017】
閾値比較部21は、検波信号SGのレベルと、予め設定されて設定記憶部に記憶されている上閾値UT及び下閾値LTと、を常時比較しており、検波信号のレベルが上閾値UTよりも高い際にハイレベルとし、下閾値LTよりも低い際にハイレベルと判定する。
【0018】
計時部22は、判定手段16において、種々の時間を計時する計時手段である。本実施形態では、計時部22は、検波信号SGの各ハイレベル部分HLの時間幅T1、すなわち、検波信号のレベルが上閾値UTよりも高くなっている時間を計測する。計時部22は、検波信号SGの各ローレベル部分LLの時間幅T2、すなわち、検波信号のレベルが下閾値LTよりも低くなっている時間を計測する。さらに、計時部22は、ハイレベル部分HLとローレベル部分LLとが交互に繰り返される判定時間Tを計測する。すなわち、計時部22は、検波信号が入力されてから不正電波を判定するための一定の判定時間T(例えば、100ミリ秒間)を計測し、この判定時間Tを基準として周波数計測部24によってハイレベル部分HLとローレベル部分LLとが交互に繰り返される数が計測される。
【0019】
周波数計測部24は、計時部22で計時される判定時間T内に、検波信号のハイレベル部分HLとローレベル部分LLとが何回繰返したかの繰返し数Nを計測し、その繰り返し数Nを比較判定部26にわたす。この実施形態では、検波信号SGが判定時間T内にハイレベル部分HLとローレベル部分LLとが繰り返した数を検波信号SGの周波数としている。周波数計測部22は、例えば、検波信号SGのレベルが上閾値HTより高くなってハイレベルとなる際にカウントし、下閾値LTより低くなってローレベルとなる際にカウントし、1つのハイレベル部分と1つのローレベル部分とのセットを1回として判定時間内の繰返し数Nをカウントする。なお、周波数計測部24は、ハイレベル部分の数とローレベル部分LLの数の合計をカウントしてもよい。さらに、周波数計測部24は、後述するように比較判定部26でハイレベル部分の時間幅T1が設定範囲外となった場合、ローレベル部分の時間幅T2が設定範囲外となった場合には、繰返し数Nを0にリセットする。
【0020】
本実施形態では、比較判定部26は、例えば、検波信号SGにおいて、ハイレベル部分HLの時間幅T1と、ローレベル部分LLの時間幅T2と、判定時間T内でのハイレベル部分HLとローレベル部分LLの繰返し数Nと、をそれぞれ条件と比較して判定する。不正電波は、遊技機の入賞センサや球の計数センサ等のセンサに対応して誤作動させるために人工的に作り出された電波であり、例えば、ある一定時間内に電波の発射と停止が複数回繰り返される。したがって、アンテナ12で不正電波を受け、検波回路14から増幅回路18を介して出力される検波信号SGは、図4に示すように、上閾値UTよりも高いハイレベル部分HLと、下閾値LTよりも低いローレベル部分LLと、がある時間ごとに交互に繰り返された信号パターンとなる。さらに、不正電波の場合の検波信号では、繰り返されるハイレベル部分HL及びローレベル部分LLのそれぞれが、ある程度の時間幅で続いたパターンとなっている。従って、ハイレベル部分HLの時間幅T1、ローレベル部分LLの時間幅T2、判定時間T内での繰返し数Nを予め定めた条件と比較することで、不正電波と正常電波と区別して、確実に精度良く不正電波を検出することができる。
【0021】
実施形態では、比較判定部26は、例えば、ハイレベル部分の時間幅T1が所定の設定範囲内であるかどうかを比較するハイレベル時間比較部30と、検波信号のローレベル部分の時間幅T2が所定の設定範囲内であるかどうかを比較するローレベル時間比較部32と、検波信号のハイレベル部分とローレベル部分の繰り返し数Nが所定の基準値以上かどうかを比較する周波数比較部34と、比較する設定範囲及び繰返し数の基準値を記憶した設定記憶部36と、を含む。
【0022】
ハイレベル時間比較部30は、計時部22で計測した検波信号のハイレベル部分の時間幅T1が、第1の設定範囲内(例えば、10ミリ秒未満(0<T1<10ms))であるかどうかを比較し、第1の設定範囲内の場合には不正電波と判定し、第1の設定範囲外の場合には正常電波と判定する。ローレベル時間比較部32は、計時部22で計測した検波信号のローレベル部分の時間幅T2が、第2の設定範囲内(例えば、10ミリ秒未満(0<T2<10ms))であるかどうかを比較し、第2の設定範囲内の場合には不正電波と判定し、第2の設定範囲外の場合には正常電波と判定する。判定比較部26でのハイレベル時間比較部30とローレベル時間比較部32の結果は、それぞれ周波数計測部24にわたされる。周波数比較部34は、周波数計測部24で計測した繰返し数Nが、基準値(例えば、判定時間T内で25回)以上であるかどうかを比較し、基準値以上の場合には不正電波と判定し、基準値未満の場合には正常電波と判定する。上述のように周波数計測部24は、検波信号のそれぞれのハイレベル部分HL、ローレベル部分LLの時間幅T2が条件を満たしている場合に繰返し数Nをカウントしており、それらの時間幅T1、T2が条件を満たしていない場合には繰返し数Nをリセットすることから、判定比較部26は、ハイレベル時間比較部30、ローレベル時間比較部32、周波数比較部34の3つ全てで不正電波と判断される場合に、最終的に不正電波と判定している。
【0023】
設定記憶部36には、上記の判定条件となる、ハイレベル部分の時間幅T1と比較される第1の設定範囲、ローレベル部分の時間幅T2と比較される第2の設定範囲、繰返し数Nと比較される基準値、が記憶されている。例えば、図5に示すように、例えば、第1の設定範囲は、10ミリ秒未満に設定されている。第2の設定範囲は、例えば、10ミリ秒未満に設定されている。繰返し数の基準値は、例えば、判定時間Tである100ミリ秒以内に25回の値に設定されている。これらの判定条件は、例えば、複数の異なる種類の不正電波射出機から射出される不正電波のパターンを解析して、それらの複数パターンの不正電波を網羅して検出できるような第1、第2設定範囲や基準値が設定される。例えば、複数種類ある不正電波のパターンを個別に記憶しておき、受信した電波とそれぞれの不正電波のパターンとを比較する構成も考えられる。しかしながら、個別の不正電波と比較する構成では、設計が複雑化し、コストもかかる。それに対し、本実施形態では、上記のように判定条件がある程度の範囲で設定されているので、設計が簡単で低コストで製造できるとともに、高い検出精度を期待できる。なお、第1、第2設定範囲や繰返し数の基準値は任意に設定されるが、第1、第2の設定範囲を短い時間範囲としたり、繰返し数の基準値を小さくしすぎると、雷などの自然界で生じる正常電波を不正電波と誤検出してしまうおそれが高くなる。また、第1、第2の設定範囲を長い時間範囲としたり、繰返し数の基準値を大きくしすぎると、実際には不正電波であっても正常電波として判定するおそれがあり、種々のパターンがある不正電波が検出できにくくなる。新しいパターンの不正電波が出現した場合には、適宜判定条件を変更するようにしてもよい。第1、第2設定範囲は、所定の値未満(以下)としてもよいし、所定の値以上(例えば、100マイクロ秒)としてもよいし、所定の下限値から上限値までの範囲としてもよい。設定記憶部30に記憶されるこれらの判定条件は、不正電波検出装置10の外部から基準値や設定範囲を入力して、変更できるようになっている。
【0024】
さらに、比較手段16は、上記の判定条件とは異なる他の判定条件を有し、上記の判定条件と他の判定条件とを併用して判定することとしてもよい。例えば、判定手段16の比較判定部26では、ハイレベル部分の時間幅T1が、第1の設定範囲(例えば、10ミリ秒未満)とは異なる第3の設定範囲内(例えば、100ミリ秒以上)となった場合にも、不正電波として判定する。なお、この場合には、繰返し数の判定条件とは無関係に不正電波と判定する。また、例えば、ローレベル部分の時間幅T2が、第2の設定範囲(例えば、10ミリ秒未満)とは異なる第4の設定範囲内(例えば、100ミリ秒以上)となった場合にも、不正電波として判定することとしてもよい。
【0025】
判定手段16の出力部28には、判定手段16によって不正電波と判定された際に外部に報知する報知手段38が接続されている。報知手段38は、例えば、ランプ等の警告灯やブザー等の警報機からなり、判定手段からの不正電波検出信号を受けて作動し点灯又は鳴動する。なお、報知手段38は、例えば、遊技機又は管理用コンピュータの画面等に警告表示を表示する態様としてもよいし、その他任意の構成でもよい。
【0026】
次に、図6を参照しつつ本実施形態に係る遊技機の不正電波検出装置10の作用について説明する。遊技機100の近傍で電波が生じると、その電波を不正電波検出装置10のアンテナ12で受けて検波回路14で所定の信号を生成し、増幅回路18で増幅し判定手段16に出力する(ステップS10)。判定手段16では、判定時間Tを計時する(ステップS12)とともに、検波信号のハイレベル部分とローレベル部分の繰返し数のカウントを開始する。また、検波信号SGのハイレベル部分の時間幅T1、ローレベル部分の時間幅T2を計時する。ハイレベル部分からローレベル部分に変わる際に、判定手段16の判定比較部でハイレベル部分の時間幅T1が設定範囲(例えば、10ミリ秒未満)かどうかを比較し(ステップS14)、設定範囲内の場合には不正電波として次のステップS16に進む。なお該時間幅T1が設定範囲外の場合には正常電波と判定して(ステップS22)、次の電波を感知するまで待機する。次に、ステップS16では、ローレベル部分からハイレベル部分に変わる際に、判定手段16の判定比較部でローレベル部分の時間幅T2が設定範囲(例えば、10ミリ秒未満)かどうかを比較し、設定範囲内の場合には不正電波として、繰返し数Nをカウントし、次のステップ20に進む。なお、該時間幅T2が設定範囲外の場合には正常電波と判定して(ステップS22)、次の電波を感知するまで待機する。ステップS18では、比較判定部の判定比較部で、設定時間T内での繰返し数Nが基準値以上かどうかを比較する。繰返し数Nが基準値未満の場合には、判定時間T内であれば(ステップS20)、上記のステップに戻って、ステップS14、ステップS16、S18を繰り返す。ステップS20で判定時間を経過していれば、正常電波と判定する(ステップS22)。なお、これらのステップS14、S16、S18を繰り返す途中で、時間幅T1、T2のいずれかが設定範囲外となる場合には、正常電波と判定する(ステップS22)とともに、繰返し数N、判定時間Tがリセットされる。一方、ステップS18で、繰返し数Nが基準値以上となった場合には、判定手段16は判定対象となっている受信した電波が不正電波であると判定し、報知手段に不正電波検出信号をわたす。信号を受けた報知手段は、例えば、警告ランプやブザーを作動させて、不正行為が行われていることを報知する。このようにして、不正電波と正常電波と区別して、不正電波のみを確実に検出することができる。また、複数パターンの不正電波に対応して精度良く検出できる。なお、図示していないが、ステップS14で、検波信号のハイレベル部分の時間幅が第1の設定範囲外の場合に、第3の設定範囲と比較し、第3の設定範囲内(例えば、100ミリ秒以上)となる場合にも不正電波として検出するようにしてもよい。また、同様に、ステップS16で、検波信号のローレベル部分の時間幅T2が第2の設定範囲外の場合に、第4の設定範囲と比較し、第4の設定範囲内(例えば、100ミリ秒以上)となる場合にも不正電波として検出するようにしてもよい。また、例えば、判定手段は、検波信号のハイレベル部分とローレベル部分の繰返し数が基準値以上か否かの比較だけで、不正電波か否かを判定するようにしてもよい。
【0027】
以上説明した本発明の遊技機の不正電波検出装置は、上記した実施形態のみの構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の本質を逸脱しない範囲において、任意の改変を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の遊技機の不正電波検出装置は、例えば、パチンコ機、メダルスロット機等の種々の遊技機に取り付けて適用できる。
【符号の説明】
【0029】
10 遊技機の不正電波検出装置
12 アンテナ
14 検波装置
16 判定手段
22 計時部
24 周波数計測部
26 比較判定部
SG 検波信号
HL ハイレベル部分
LL ローレベル部分
T1 ハイレベル部分の時間幅
T2 ローレベル部分の時間幅
T 判定時間
UT 上閾値
LT 下閾値
図1
図2
図3
図4
図5
図6