(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6128670
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】旋回式ローラーヘッド
(51)【国際特許分類】
B21D 39/02 20060101AFI20170508BHJP
【FI】
B21D39/02 E
【請求項の数】18
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-557265(P2016-557265)
(86)(22)【出願日】2016年3月16日
(86)【国際出願番号】US2016022529
(87)【国際公開番号】WO2016153862
(87)【国際公開日】20160929
【審査請求日】2016年11月10日
(31)【優先権主張番号】62/136,668
(32)【優先日】2015年3月23日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15/070,159
(32)【優先日】2016年3月15日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516274276
【氏名又は名称】ヒロテック アメリカ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】HIROTEC AMERICA, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】000135999
【氏名又は名称】株式会社ヒロテック
(72)【発明者】
【氏名】アーカー、ジェラルド エフ
(72)【発明者】
【氏名】ヘスター、ジャスティン ティー
(72)【発明者】
【氏名】クルス、ゲイリー ティー
【審査官】
細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−528864(JP,A)
【文献】
特開2008−100272(JP,A)
【文献】
特開2008−264824(JP,A)
【文献】
米国特許第5228190(US,A)
【文献】
特開2010−194568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 39/00−39/02
B21D 19/04
B21D 19/08
B21D 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回式ローラーヘッドの長手方向軸を形成するハウジングと、
前記ハウジング内に搭載され、駆動軸を有するモーターと、
前記モーターと動作可能に連動するローラーパッケージとを備え、
前記駆動軸の回転は、前記旋回式ローラーヘッドの長手方向軸周りの前記ローラーパッケージの回転に作用することを特徴とする旋回式ローラーヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載の旋回式ローラーヘッドにおいて、前記ハウジングに動作可能に結合し、前記長手方向軸からオフセットする取り付けフランジを備えることを特徴とする旋回式ローラーヘッド。
【請求項3】
請求項2に記載の旋回式ローラーヘッドにおいて、前記取り付けフランジは、長手方向軸との間で取り付け角度を形成している取り付け平面を形成する取り付け面を有することを特徴とする旋回式ローラーヘッド。
【請求項4】
請求項3に記載の旋回式ローラーヘッドにおいて、前記取り付け角度は約30°から約60°の範囲であることを特徴とする旋回式ローラーヘッド。
【請求項5】
請求項2に記載の旋回式ローラーヘッドにおいて、前記取り付けフランジは前記長手方向軸から側方にオフセットすること特徴とする旋回式ローラーヘッド。
【請求項6】
請求項2に記載の旋回式ローラーヘッドにおいて、さらに前記取り付けフランジを取り付ける付勢ユニットを備え、かつ当該付勢ユニットは前記ハウジングに取り付けること特徴とする旋回式ローラーヘッド。
【請求項7】
請求項6に記載の旋回式ローラーヘッドにおいて、前記付勢ユニットが長手方向軸に沿って前記ローラーパッケージを前記ハウジングから離れる方向に付勢するよう構成されたプッシュ形式を有することを特徴とする旋回式ローラーヘッド、および、前記付勢ユニットが長手方向軸に沿って前記ローラーパッケージを前記ハウジングへ向かう方向に付勢するよう構成されたプル形式を有することを特徴とする旋回式ローラーヘッド。
【請求項8】
請求項7に記載の前記旋回式ローラーヘッドにおいて、前記付勢ユニットは長手状ガイドと長手状ガイドを収容するスライド可能なインサートを有し、前記インサートは前記ハウジングのトッププレートとベースプレートの間に配置されることを特徴とする旋回式ローラーヘッド。
【請求項9】
請求項8に記載の旋回式ローラーヘッドにおいて、前記付勢ユニットは前記トッププレートに当接する停止面を有し、プッシュ形式において長手方向軸と平行な付勢ユニットの動作を制限することを特徴とする旋回式ローラーヘッド。
【請求項10】
請求項8に記載の旋回式ローラーヘッドにおいて、前記付勢ユニットは前記ベースプレートに当接する停止面を有し、プル形式において長手方向軸と平行な付勢ユニットの動作を制限することを特徴とする旋回式ローラーヘッド。
【請求項11】
請求項8に記載の旋回式ローラーヘッドにおいて、前記付勢ユニットはスプリングを有し、プッシュ形式において前記インサートはインサートと前記ベースプレートの間にスプリングを配置するように構成され、プル形式において前記インサートはインサートと前記トッププレートの間にスプリングを配置するように構成されることを特徴とする旋回式ローラーヘッド。
【請求項12】
請求項8に記載の旋回式ローラーヘッドにおいて、前記インサートはスプリングを受ける孔を形成し、旋回式ローラーヘッドの形式を切り替えるために反転可能に構成されたことを特徴とする旋回式ローラーヘッド。
【請求項13】
請求項1に記載の旋回式ローラーヘッドにおいて、モーターの駆動軸から入力を受け取り、前記ローラーパッケージに回転可能に固定された出力軸を有し、かつ前記ハウジングに固定されたギアボックスを備えることを特徴とする旋回式ローラーヘッド。
【請求項14】
請求項13に記載の旋回式ローラーヘッドにおいて、前記ギアボックスはローラーヘミング加工時に前記ローラーパッケージが受ける軸方向および横方向の力に抵抗するように構成されることを特徴とする旋回式ローラーヘッド。
【請求項15】
ベースと、
前記ベースに動作可能に連結する第1リンクと、ツール結合器を有し前記第1リンクと動作可能に連結する第2リンクとを有するアームと、
ツール結合器に結合する旋回式ローラーヘッドと、を備えるローラーヘミング用ロボットにおいて、前記旋回式ローラーヘッドは
旋回式ローラーヘッドの長手方向軸を形成するハウジングと、
前記ハウジング内に搭載され駆動軸を有するモーターと、
前記モーターと動作可能に連動されたローラーパッケージとを備え、
前記駆動軸の回転は、前記旋回式ローラーヘッドの長手方向軸周りの前記ローラーパッケージの回転に作用することを特徴とするロボット。
【請求項16】
請求項15に記載のロボットにおいて、前記アームは6自由度で前記旋回式ローラーヘッドを動かすように構成され、前記モーターは7番目の自由度で前記ローラーパッケージを回転するように構成されたことを特徴とするロボット。
【請求項17】
請求項15に記載のロボットにおいて、前記アームの動作を制御するように構成されたロボット制御装置をさらに備え、前記モーターは前記ハウジングに対する前記ローラーパッケージの回転を制御するように構成されたモーター制御装置を有することを特徴とするロボット。
【請求項18】
請求項17に記載のロボットにおいて、前記モーター制御装置は前記ロボット制御装置と一体化したことを特徴とするロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2015年3月23日に出願された米国仮特許出願第62/136,668号に対して米国特許法第119条(e)に基づいて優先権を主張する。その全内容は、参考として本明細書に援用される。
【0002】
本開示はロボットローラーヘミング及びシーミングに関し、より具体的にはロボットローラーヘミングのための旋回式ローラーヘミングヘッドに関する。
【背景技術】
【0003】
ローラーヘミング加工は、2枚の金属板を接合してワークを成形するために用いることができる。例えば、2枚の金属板を接合して車両用ドアパネル等を成形することができる。典型的なローラーヘミング加工時には、2枚の金属板のうちアウターパネルの周縁がその外周全体に沿って垂直に折り曲げられ、そしてアウターパネルは金型に固定される。次に、インナーパネルはアウターパネル上に重ねられる。2枚の板が積み重ねられた状態で、アウターパネルの周縁に対してローラーヘッドで押圧することによって2枚の金属板が折り曲げられ、または縁曲げされて2枚の金属板は接合する。ローラーヘッドは、被ヘミング材に対しローラーヘッドを動かして金属板をヘミング加工するロボットアームに装着可能である。ローラーはロボットによって動かされるため、加工品質または被ヘミング材の折り曲げ形状は、ロボットマニピュレーターの位置決め精度に左右される。
【0004】
ロボットアームが動作範囲内で被ヘミング材に対してローラーヘッドを動かしている間は、他のロボットや自動化ツールは協調して動作したり、または被ヘミング材に対して加工を施すことが可能である(例えば、ローラーヘミング、ローラーフランジング、予備曲げ、予備コーナー曲げ、溶接、穴あけ、ミーリング、リベット締結、固定具の取り付け等)。ロボットと自動化ツールとの干渉を避けるため、動作範囲の大きさが、被ヘミング材への接近を制限することになる。
【0005】
ローラーヘミング加工の品質および/または速度を向上する改良されたローラーヘッドが継続して必要とされている。さらに、ローラーヘミング加工時において追加のロボットが被ヘミング材に接近できるよう動作範囲を縮小する改良されたローラーヘッドが継続して必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は一般に、金属板のヘミング加工およびシーミング加工のための旋回式ローラーヘッドに関する。旋回式ローラーヘッドは、ロボットアームに結合する取り付けフランジを備えている。取り付けフランジは、旋回式ローラーヘッドの長手方向軸からオフセットしており、これによりローラーヘミング加工時においてロボットアームの動作範囲を低減している。取り付けフランジは、長手方向軸から取り付け角度だけオフセットすることも可能で、これによりローラーヘミング加工時にはロボットアームの動作範囲をさらに縮小することができる。ロボットアームの動作範囲を縮小することにより、ローラーヘミング加工時において追加ロボットの被ヘミング材への接近が可能になる。加えて、ロボットアームの動作範囲を縮小すると、ローラーヘミング加工時に被ヘミング材への接近態様を改善することが可能になる。
【0007】
本開示の態様によると、旋回式ローラーヘッドはハウジングとモーターとローラーパッケージとを備えている。ハウジングは、旋回式ローラーヘッドの長手方向軸を形成する。モーターはハウジング内に搭載され、駆動軸を有する。駆動軸の回転が、旋回式ローラーヘッド長手方向軸周りのローラーパッケージの回転に作用するようローラーパッケージはモーターと動作可能に連動する。
【0008】
実施態様では、旋回式ローラーヘッドはハウジングに動作可能に結合する取り付けフランジを備える。取り付けフランジは、長手方向軸からオフセットすることができる。取り付けフランジは、取り付け平面を形成する取り付け面を備えることができる。取り付け平面は、長手方向軸との間で取り付け角度を形成することができる。取り付け角度は約30度から約60度の範囲とすることが可能である。取り付けフランジは長手方向軸から側方にオフセットすることができる。
【0009】
いくつかの実施態様では、旋回式ローラーヘッドは付勢ユニットを備える。取り付けフランジは付勢ユニットに取り付け可能であり、付勢ユニットはハウジングに取り付け可能で、ハウジングに対して取り付けフランジを動作可能に結合している。旋回式ローラーヘッドは、プッシュ形式を有することができ、この形式では付勢ユニットは長手方向軸に沿ってハウジングから離れる方向にローラーパッケージを付勢する。旋回式ローラーヘッドは、プル形式を有することができ、この形式では付勢ユニットは長手方向軸に沿ってハウジングへ向かう方向にローラーパッケージを付勢する。
【0010】
ある実施態様では、付勢ユニットは長手方向のガイドと、長手方向のガイドを収容するスライド可能なインサートを有する。インサートは、ハウジングのトッププレートとベースプレートの間に配置されている。付勢ユニットは停止面を備えることができ、停止面はプッシュ形式において長手方向軸に平行な付勢ユニットの動作を制限するトッププレートに隣接している。そして、プル形式においては、長手方向軸に平行な付勢ユニットの動作を制限するベースプレートに隣接している。付勢ユニットは、スプリングを備えることができる。プッシュ形式において、インサートはインサートとベースプレートとの間にスプリングを配置するように構成することができる。プル形式においては、インサートはインサートとトッププレートとの間にスプリングを配置するように構成することができる。インサートは、スプリングを受ける孔を形成し、旋回式ローラーヘッドの形式を切り替えることができるよう上下反転可能である。
【0011】
特定の態様では、旋回式ローラーヘッドはハウジングに固定されたギアボックスを備える。ギアボックスは、モーターの駆動軸からの入力を受けることが可能で、ローラーパッケージに回転可能に固定された出力軸を備える。ギアボックスは、ヘミング加工時にローラーパッケージによる軸方向および横方向の力に耐えるように構成することができる。
【0012】
実施態様では、ハウジングはガイド軸とギアボックスとホーミングガイドとモーターガード用に取り付け部を設けている。モーターガードは、ハウジングのトッププレートに取り付けることができる。モーターガードは、モーターと制御装置とを相互接続するケーブルに張力緩和のための遊びを設けることができる。
【0013】
本開示の別の態様では、ローラーヘミング用ロボットはベースとアームと旋回式ローラーヘッドを備えている。アームは、第1と第2のリンクを備えている。第1リンクは、ベースに動作可能に結合し、第2リンクは第1リンクと動作可能に連動する。第2リンクは、ツール結合器を備えている。旋回式ローラーヘッドはツール結合器に結合し、ハウジングとモーターとローラーパケッケージを備える。ハウジングは、旋回式ローラーヘッドの長手方向軸を形成する。モーターは、ハウジング内に取り付けられ、駆動軸を備える。ローラーパッケージは、モーターと動作可能に連動する。駆動軸が回転すると、旋回式ローラーヘッドの長手方向軸周りにローラーパッケージが回転する。
【0014】
実施態様では、ロボットは複数の関節を備える多軸ロボットであり、最後の結合部はツール結合器である。
【0015】
ある実施態様では、アームは6つの自由度で旋回式ローラーヘッドを動かすように構成されている。モーターは、7番目の自由度でローラーパッケージを回転するよう構成してもよい。ロボットはロボット制御装置を備え、アームの動きを制御するように構成してもよい。モーターはモーター制御装置を備え、ハウジングに対してローラーパッケージの回転を制御するよう構成してもよい。モーター制御装置は、ロボット制御装置と一体とすることができる。
【0016】
さらに、矛盾しない範囲で、本明細書に記載のどの態様も、本明細書に記載の他の態様のいずれかまたはすべてと組み合わせて使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本開示の様々な態様は、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する図面を参照して以下説明する。
【0018】
【
図1】ロボットアームに結合する従来技術のローラーヘッドの斜視図である。
【
図2】本開示に基づく旋回式ローラーヘッドを
図1のロボットアームに結合した場合の斜視図である。
【
図3】
図2の旋回式ローラーヘッドの斜視図である。
【
図4】
図3の旋回式ローラーヘッドの部品を分離した組立分解図である。
【
図5】プッシュ形式における
図3の旋回式ローラーヘッドの側面図である。
【
図7】プル形式における
図3の旋回式ローラーヘッドの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1について説明する。同図はロボットアーム10に結合する従来技術のローラーヘッド1000を示す。図に示すように、ロボットアーム10は6つの回転軸周りに動くことができるロボットベース12と、3つのリンク14、16、18とを備える。第1リンク14は、固定もしくは回動可能にロボットベース12に取り付けられている。第3リンク18は、ローラーヘッド1000に結合するツール結合器20を支持している。第2リンク16は、第1リンク14に対して第1端部16aに枢動可能に連結し、第3リンク18に対しては第2端部16bに枢動可能に連結している。第3リンク18は、第2リンク16の第2端部16bとツール結合器20を通るアーム軸A―Aを形成する。
【0020】
ローラーヘッド1000は、ハウジング1010とローラー1020を備える。ハウジング1010は、ツール結合器20に着脱自在に結合する第1端部1012と、ローラー1020を回転可能に支持するローラー取り付け部1016を含む第2端部1014を備える。ハウジング1010は、第1および第2端部1012、1014を通るH’−H’軸を形成している。ローラー取り付け部1016は、ローラー1020がH’−H’軸に対して直交するR―R軸周りに回転するように、ローラー1020を支持している。
【0021】
ロボットアーム10の第3リンク18のA−A軸と、ハウジング1010のH’−H’軸を合わせることにより、第3リンク18がA−A軸周りに回転すると、ハウジング1010とローラー1020はH’−H’軸周りに回転する。この軸合せには、ハウジング1010の第1端部1012上方にロボットアーム10の第3リンク18を配置する必要があるため、ヘミング加工時に被ヘミング材上方に必要なクリアランスを増大することになる。このクリアランスは、ローラーヘミング加工時にロボットアーム10の動作範囲を形成するものであり、ローラーヘミング加工時においては他のロボットが被ヘミング材WPへ接近するのを制限している。
【0022】
本明細書で詳細に述べるように、本開示に基づく旋回式ローラーヘッドは、旋回式ローラーヘッドの長手方向軸から側方にオフセットした取り付けフランジを有する。さらに、取り付けフランジは、長手方向軸から取り付け角度だけオフセットした取り付け平面を形成することができる。長手方向軸から取り付けフランジをオフセットすることで、ローラーヘミング時に旋回式ローラーヘッドを操作するロボットアームの動作範囲の高さや長さを縮小している。
【0023】
ローラーヘミング時には、ロボットアームが被ヘミング材に対して旋回式ローラーヘッドを動かすと、旋回式ローラーヘッドのモーターは、ローラーパッケージを旋回式ローラーヘッドの長手方向軸周りに回転する。従来技術のローラーヘッド1000と比較すると、モーターは旋回式ローラーヘッドのさらなる制御を可能にし、被ヘミング材のシームに追従するために必要なロボットアームの動きを減少させている。
【0024】
つぎに本開示の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図面では、各図において同一の参照番号は同一または対応する構成要素を示す。
【0025】
ここで
図2から
図5について説明する。本開示による旋回式ローラーヘッド100は、ロボットアーム10のツール結合器20に結合する。旋回式ローラーヘッド100は、取り付けフランジ110と、コンプライアンスユニットまたは付勢ユニット120と、ハウジング130と、モーター150と、ローラーパッケージ160とを備える。ハウジング130は、ローラーパッケージ160とモーター150を通る旋回式ローラーヘッド100の長手方向またはハウジング軸H―Hを形成している。ハウジングは、トッププレート132と、ベースプレート134と、サイドプレート138と、ガイド軸126aとを有する。
【0026】
図2について詳しく説明する。取り付けフランジ110は、取り付け面112を有する。ロボットアーム10のツール結合器20は、付勢ユニット120に取りけられた取り付けフランジ110を備える取り付け面112に着脱可能に結合されている。取り付けフランジ110は、ハウジング130のベースプレート134に近接して配置され、ロボットアーム10が旋回式ローラーヘッドの側方から延びるようハウジング軸H−Hからオフセットしている。
【0027】
図5を参照して詳しく説明する。取り付けフランジ110の取り付け面112は、ハウジング軸H−Hと取り付け角度θを形成する取り付け平面Pを形成している。図に示すように、ロボットアーム10のツール結合器(
図2)は、ハウジング130の上方、下方、もしくはベースプレート134に配置することができるように、取り付け角度θはハウジング軸H―Hとの間で鉛直面内に形成される。ロボットアーム10のツール結合器20は、旋回式ローラーヘッド100の前方または後方とすることができるように、取り付け角度θは、ハウジング軸H−Hとの間で水平面内に形成することができると考察される。ツール結合器20は旋回式ローラーヘッド100の上方と前方、または下方と後方、もしくは所望の用途に応じて上方、下方、前方、後方の異なる組み合わせに配置することができるように、取り付け平面Pは、垂直面内および水平面内に形成することができるとも考察される。図に示すように、取り付け角度θは、鉛直面内で約45度であるが、しかしながら、取り付け角度は、鉛直面内または水平面内のそれぞれで約0度から約90度の範囲であればよいとも考察される。
【0028】
少し
図1及び
図2に戻って説明する。ハウジング軸H−Hから取り付けフランジ110をオフセットし、取り付け平面Pとハウジング軸H−Hの間に取り付け角度θを形成して、従来技術の被ヘミング材WP上方のロボットアーム10とローラーヘッド1000の鉛直高さH’と比較すると、被ヘミング材WP上方のロボットアーム10とローラーヘッド100の鉛直高さHを低減している。この高さの低減は、ローラーヘミング加工時において、従来技術のローラーヘッド1000を操作する際のロボットアーム10によって形成される動作範囲と比較し、旋回式ローラーヘッド100を操作した場合のロボットアーム10によって形成される動作範囲とクリアランスの縮小をもたらす。ロボットアーム10の動作範囲を縮小すると、より高密度でのロボットの設置が可能になる。高さの低減は約40%から約60%の範囲で可能である。(例えば、約50%)
【0029】
ハウジング軸H―Hから取り付けフランジ110をオフセットすると、アーム軸A−A周りに第3リンクを回転しても、旋回式ローラーヘッド100はハウジング軸H−H周りに回転せず、ヘミング加工時に従来技術のローラーヘッド1000と同様に、被ヘミング材のシームを追従することは出来ないということが理解される。
【0030】
図3及び
図4について説明する。旋回式ローラーヘッド100は、ヘミング加工時に被ヘミング材のシームに追従するため、旋回式ローラーヘッド100のローラーパッケージ160と動作可能に連動するモーター150を備えており、ヘミング加工時にハウジング軸H―H周りにローラーパッケージ160を回転させると、被ヘミング材のシームに追従する。モーター150はロボットアーム10(
図2)が旋回式ローラーヘッド100の被ヘミング材に対する方向を維持することを可能にすると同時に、モーター150はロボットアーム10の被ヘミング材のシームに沿った動きに合わせてローラーパッケージ160をハウジング軸H―H周りに回転させる。
【0031】
モーター150は、制御装置152(
図2)と駆動軸154を備える。モーター150は、サイドプレート138の間に配置され、ハウジング130のベースプレート134の上面134aに取り付けられている。ハウジング130のトッププレート132は、サイドプレート138に固定されており、ローラーヘミング加工時に障害物(例えば、他のロボットアームや被ヘミング材)との偶発的な接触からモーター150を保護するガード133を備えてもよい。ガード133は、モーターを制御装置152に相互接続するケーブル153(
図2)の固定またはガイドとして機能することもできる。ガード133は、ケーブル153に張力緩和のための遊びを設けるために用いることができる。
【0032】
制御装置152は、旋回式ローラーヘッド100が被ヘミング材の周囲を移動する動きに合わせて、ローラーパッケージ160がハウジング軸H―H周りに回転させられるようにモーター150を制御する動作制御装置である。制御装置152は、ロボットアーム10のロボット制御装置11の一部とすることができ、もしくは
図2でロボット制御装置11と相互接続する制御装置152´によって示されるように独立の装置とすることができる。制御装置152をロボット制御装置11に統合することにより、コスト低減を図ることができると想定される。例えば、ロボットアーム10は動作について合計6自由度を持ち、各動作軸に対して1つの自由度が割り当てられるとすると、モーター150は7番目の自由度でローラーパッケージ160の回転を制御することができる(例えばロボット制御装置11)。その上、制御装置152をロボット制御装置11に統合すると、ロボットアーム10と旋回式ローラーヘッド100は協働して機能することが可能になる。さらに、制御装置152をロボット制御装置11へ統合すると、ロボットアーム10のサイクルタイムをより速くし、他のロボットとの干渉を減らし、そして他のロボットとの通信やハンドシェイクを改善することができる。
【0033】
旋回式ローラーヘッド100は、駆動軸154の回転をローラーパッケージ160の回転に変換するギアボックス156を備える。ギアボックス156は、駆動軸154から入力を受け取り、駆動軸154の回転を出力軸158を介して出力に変換する。出力軸158は、ローラー取り付け板136に回転可能に固定されている。取り付け軸159は、長手方向軸に沿ってハウジング130から離れる方向にローラー取り付け板136から延出している。出力軸158が回転するとローラーパッケージ160がハウジング軸H−H周りに回転するように、取り付け軸159はローラーパッケージ160に取り付けられている。駆動軸154からの入力角速度を減速しながら、ギアボックス156はトルクを増加して出力軸158を回転すると想定される。
【0034】
ギアボックス156は、ローラーヘミング加工時にローラーパッケージ160が受ける軸荷重(例えばハウジング軸H−Hに沿った荷重)及び/又は横荷重(例えばハウジング軸H−Hに垂直な荷重)に耐えるベアリングパッケージ(明確に図示せず)を備えることができる。ベアリングパッケージは、ギアボックス156内、ギアボックス156とモーター150の間、及び/又はギアボックス156とローラーパッケージ160の間に配置することができると考えられる。
【0035】
図に示すように、駆動軸154はハウジング軸H−H周りに配置されている。旋回式ローラーヘッド100がギアボックス156を備える場合には、モーター150の駆動軸154はハウジング軸H−Hからオフセットできると考えられる。例えば、ハウジング軸H−H周りに配置される出力軸158に、回転可能に固定されたリングギアの内表面に係合するギアボックス(例えばギアボックス156)内のピニオンに駆動軸154を結合することができ、これによりハウジング軸H−H周りにローラーパッケージ160を回転させることができる。
【0036】
図5及び
図6について説明する。ローラーパッケージ160は、本体162と第1ヘミングヘッド164と第2ヘミングヘッド166とを備える。本体162は、取り付け軸159を受ける溝部161を形成している。本体162は、取り付け軸159内を貫通する1以上のコネクター163を備え、取り付け軸159に本体162を固定する。アダプタ165は、取り付け軸159と本体162の溝部161との間で固定のための補助部材として使用することができる。第1及び第2ヘミングヘッド164、166は、溝部161とは反対側の本体162の端部に配置されている。第1ヘミングヘッド164はハウジング軸H−Hに対して直交するR−R軸周りに回転可能であり、第2ヘミングヘッドはハウジング軸H−Hに対して直交しR−R軸に対して垂直なT−T軸を形成する。第1ヘミングヘッド164は、第1及び第2ローラー164a、164bにより構成され、本体162の両側に配置されている。また第2ヘミングヘッド166は第1及び第2ローラー164a、164bの間に延出するように配置されている。第1ヘミングヘッド164は単一ローラー(例えば第1ローラー164a)のみを備えた構成も可能と考えられる。
【0037】
図5から
図8について説明する。旋回式ローラーヘッド100はプッシュローラーヘッド(
図5および
図6)もしくはプルローラーヘッド(
図7および
図8)として構成することができる。前述したとおり、付勢ユニット120は取り付けフランジ110とハウジング130との間に横並びに配置されている。付勢ユニット120は、トッププレート132とベースプレート134の間に垂直に配置されている。付勢ユニット120は、長手方向軸H−Hに平行なハウジング130の動きを止める上部停止面127aと下部停止面127bとを有するインサート127を備える。
図5と
図6について説明すると、旋回式ローラーヘッドがプッシュ形式の場合、インサート127の上部停止面127aはトッププレート132の底面132aに当接してハウジングの動きを止める。下部停止面127bは、ローラーヘミング加工時にハウジング130が圧縮される間、ローラーヘッド100の移動または追従方向のハウジング130の動作を制限する。自由状態の場合(ローラーヘッドの圧縮無い場合)は、インサート127の下部停止面127bがベースプレート134の上面134aに対して隙間を設けて配置されると同時に、インサート127の上部停止面127aはトッププレート132の底面132aと接している。インサート127は、ハウジング軸H−Hに平行な通路123を形成している。付勢ユニット120は、通路123内に配置されたリニアブッシュ126bを備え、これによりインサート127の移動をハウジング軸H−Hと平行にスライドする並進移動に制限している。ガイド軸126aは、トッププレート132とベースプレート134によって支持されることができる。ガイド軸126aとリニアブッシュ126bは、ハウジング軸H−Hに沿ってハウジング130の並進移動を可能にする。
【0038】
インサート127はさらに、ハウジング軸H−Hと平行に1以上の孔129を形成している。付勢ユニット120は、各孔129内に配置されるスプリング128を備え、スプリング129はハウジング軸H―Hに平行にハウジング130を付勢する。ベースプレート134は、スプリング128を受けるように対応する孔129aを形成している。プッシュ形式では、ローラー(例えばローラー164またはローラー166)は、ハウジング130に向けて付勢されるように、ベースプレート134と被ヘミング材との間に配置される。
【0039】
次に
図7と
図8について説明する。旋回式ローラーヘッド100は、プルローラーヘッドとして構成されるようにプル形式である。インサート127とガイド軸126aとリニアブッシュ126bとスプリング128により構成される付勢ユニット120は、旋回式ローラーヘッド100をプッシュ形式からプル形式に変更する複合アセンブリとしてハウジング130内で上下反転する。プル形式では、インサート127の上部停止面127aはトッププレート132の下面132aに対して隙間を有している。ローラーヘミング加工時に取り付けフランジ110からハウジングが離間しようとする間、上部停止面127aはローラーヘッド100の移動または追従方向(プッシュ形式の場合と反対)のハウジング130の動作を制限する。インサート127の下部停止面127bは、ハウジングの動きを止めるようベースプレート134の上面134aに当接している。自由状態の場合(ローラーヘッドの圧縮無し)、インサート127の下部停止面127bはベースプレート134の上面134aと接触する。ガイド軸126aとリニアブッシュ126bは、インサート127内でプッシュヘッド形式と同様に配列されている。ガイド軸126aとリニアブッシュ126bとスプリング128とを備えた完全な付勢ユニット120は、上下反転してプルローラーヘッドの付勢ユニットになるよう組み立てられる。インサート127は上下反転して配置されているため、スプリングはトッププレート132の孔129bに配置されている。プル形式では、ローラー(例えばローラー164またはローラー166)は、ハウジング130から離れる方向に付勢されるようベースプレート134と被ヘミング材との間に配置される。
【0040】
旋回式ローラーヘッド100は、付勢ユニットを分解し、インサートをスプリング128とガイド軸126aとともに回転し、そしてトッププレート132とベースプレート134の間の付勢ユニット120を組立直すことによってプッシュ形式からプル形式へ、もしくは逆の場合も同様に変換することができる。
【0041】
本開示のいくつかの実施形態について図を用いて説明してきたが、当技術分野が可能である範囲で広く解釈され、そして明細書も同様に解釈されるよう意図しているものであり、この開示を制限しようとするものではない。上述の実施形態のいずれの組み合わせも想定され、添付特許請求の範囲内である。したがって、上記説明は限定するものとして解釈されるべきではなく、単に特定の実施形態の例示にすぎない。当業者は、添付した特許請求の範囲内において他の変更形態を想定できる。
【要約】
金属板をヘミング加工またはシーミング加工するための旋回式ローラーヘッドは、ロボットアームに結合する取り付けフランジを有する。取り付けフランジは、旋回式ローラーヘッドの長手方向軸からオフセットしており、ローラーヘミング加工時にロボットアームの動作範囲を低減する。さらに取り付けフランジは、長手方向軸から取り付け角度だけオフセットしており、ローラーヘミング加工時にロボットアームの動作範囲をより縮小することができる。ロボットアームの動作範囲を縮小することで、ローラーヘミング加工時に追加のロボットや自動ツールが被ヘミング材に接近することが可能になる。その上、ロボットアームの動作範囲を縮小することでローラーヘミング加工時の被ヘミング材への接近を改善することができる。