特許第6128712号(P6128712)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6128712
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】多孔質ポリオレフィン繊維
(51)【国際特許分類】
   D01F 6/46 20060101AFI20170508BHJP
   D04H 3/007 20120101ALI20170508BHJP
【FI】
   D01F6/46 C
   D04H3/007
【請求項の数】41
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2015-563174(P2015-563174)
(86)(22)【出願日】2014年6月6日
(65)【公表番号】特表2016-530404(P2016-530404A)
(43)【公表日】2016年9月29日
(86)【国際出願番号】IB2014062016
(87)【国際公開番号】WO2014199269
(87)【国際公開日】20141218
【審査請求日】2015年12月11日
(31)【優先権主張番号】61/833,981
(32)【優先日】2013年6月12日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/907,580
(32)【優先日】2013年11月22日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】310007106
【氏名又は名称】キンバリー クラーク ワールドワイド インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴァジリー・エイ・トポルカラエフ
(72)【発明者】
【氏名】ライアン・ジェイ・マクニーニ
(72)【発明者】
【氏名】アントニオ・ジェイ・カリーリョ
(72)【発明者】
【氏名】マーク・エム・ムレジヴァ
【審査官】 平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−144039(JP,A)
【文献】 特開2000−226725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F1/00〜 6/96
D01D1/00〜13/02
D04H1/00〜18/04
D03D1/00〜27/18
CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性組成物によって形成されるポリオレフィン繊維であって、前記熱可塑性組成物が、ポリオレフィンマトリクスポリマーを含む連続相と、約1ナノメートル〜約1000ナノメートルの平均断面寸法を有するナノスケールの個別領域の形態で前記連続相内に分散されているポリマー製ナノ包含添加剤を含有し、
前記ナノ包含添加剤が、前記熱可塑性組成物の重量に基づいて、前記熱可塑性組成物の約0.05重量%〜約10重量%を構成し、
前記繊維中に形成された多孔質ネットワークが、約800ナノメートル以下の平均断面寸法と約1〜約30のアスペクト比とを有する複数のナノ細孔を含む、ポリオレフィン繊維。
【請求項2】
前記ナノ細孔が約5〜約700ナノメートルの平均断面寸法を持つ、請求項1に記載のポリオレフィン繊維。
【請求項3】
ナノ細孔が約100〜約5000ナノメートルの平均軸方向寸法を持つ、請求項1または2に記載のポリオレフィン繊維。
【請求項4】
前記ポリオレフィンマトリクスポリマーが、2160グラムの負荷および230°CでASTM D1238に従って測定された場合、約0.5〜約80グラム/10分のメルトフローレートを持つ、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリオレフィン繊維。
【請求項5】
前記ポリオレフィンマトリクスポリマーが、プロピレンホモポリマー、プロピレン/α−オレフィン共重合体、エチレン/α−オレフィン共重合体、またはそれらの組み合わせである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリオレフィン繊維。
【請求項6】
前記ポリオレフィンマトリクスポリマーが実質的にイソタクチックポリプロピレンホモポリマーまたは少なくとも約90重量%のプロピレンを含む共重合体である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリオレフィン繊維。
【請求項7】
前記連続相が、前記熱可塑性組成物の約60重量%〜約99重量%を構成する、請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリオレフィン繊維。
【請求項8】
前記ナノ包含添加剤が室温で液体または半固体である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリオレフィン繊維。
【請求項9】
前記ナノ包含添加剤が非極性成分を持つポリマーである、請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリオレフィン繊維。
【請求項10】
前記ポリマーが微結晶ポリオレフィンワックスである、請求項9に記載のポリオレフィン繊維。
【請求項11】
前記ポリマーが極性成分をさらに含む、請求項9に記載のポリオレフィン繊維。
【請求項12】
前記ポリマーが官能性ポリオレフィンである、請求項11に記載のポリオレフィン繊維。
【請求項13】
前記官能性ポリオレフィンがポリエポキシドである、請求項12に記載のポリオレフィン繊維。
【請求項14】
前記ナノ包含添加剤が、2160グラムの負荷および溶融温度より少なくとも40°C高い温度(例えば、約190°C)でASTM D1238に従って測定された場合、約0.1〜約100グラム/10分のメルトフローレートを持つ、請求項9に記載のポリオレフィン繊維。
【請求項15】
前記ナノ包含添加剤のメルトフローレートに対する前記ポリオレフィン繊維のメルトフローレートの比が約0.2〜約8である、請求項7に記載のポリオレフィン繊維。
【請求項16】
前記ナノ包含添加剤がナノスケール領域の形態であり、前記ナノスケール領域が約ナノメートル〜約800ナノメートルの平均断面寸法を持つ、請求項1〜15のいずれか一項に記載のポリオレフィン繊維。
【請求項17】
前記ナノ包含添加剤が、前記連続相の重量に基づいて、前記組成物の約0.1重量%〜約10重量%を構成する、請求項1〜16のいずれか一項に記載のポリオレフィン繊維。
【請求項18】
前記組成物が、前記連続相内に個別領域の形態で分散されたマイクロ包含添加剤をさらに含む、請求項1〜17のいずれかに記載のポリオレフィン繊維。
【請求項19】
前記マイクロ包含添加剤がポリマーである、請求項18に記載のポリオレフィン繊維。
【請求項20】
前記マイクロ包含添加剤の前記ポリマーがスチレン共重合体、フッ素ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、またはポリエステルである、請求項19に記載のポリオレフィン繊維。
【請求項21】
前記マイクロ包含添加剤の前記ポリマーが、ポリ乳酸である、請求項19に記載のポリオレフィン繊維。
【請求項22】
前記マイクロ包含添加剤の前記ポリマーが、約0°C以上のガラス転移温度を持つ、請求項19に記載のポリオレフィン繊維。
【請求項23】
前記マイクロ包含添加剤が、2160グラムの負荷および210°Cの温度で測定された場合、約5〜約200グラム/10分のメルトフローレートを持つ、請求項19に記載のポリオレフィン繊維。
【請求項24】
前記ポリオレフィンマトリクスポリマーのメルトフローレートに対する前記マイクロ包含添加剤のメルトフローレートの比が約0.5〜約10である、請求項19に記載のポリオレフィン繊維。
【請求項25】
前記マイクロ包含添加剤のヤング弾性係数に対する前記ポリオレフィンマトリクスポリマーのヤング弾性係数の比が約1〜約250である、請求項18に記載のポリオレフィン繊維。
【請求項26】
前記マイクロ包含添加剤が、約1マイクロメートル〜約400マイクロメートルの平均軸方向寸法を持つマイクロスケール領域の形態である、請求項18に記載のポリオレフィン繊維。
【請求項27】
前記マイクロ包含添加剤が、前記連続相の重量に基づいて、前記組成物の約1重量%〜約30重量%を構成する、請求項18に記載のポリオレフィン繊維。
【請求項28】
前記熱可塑性組成物が相間修飾剤をさらに含む、請求項1〜27のいずれか一項に記載のポリオレフィン繊維。
【請求項29】
前記多孔質ネットワークがマイクロ細孔をさらに含む、請求項1〜28のいずれか一項に記載のポリオレフィン繊維。
【請求項30】
前記多孔質ネットワークが、前記組成物の全体にわたって実質的に均一な形態で分配されている、請求項1〜29のいずれか一項に記載のポリオレフィン繊維。
【請求項31】
前記ナノ細孔が概して平行なカラムに分配されている、請求項1〜30のいずれか一項に記載のポリオレフィン繊維。
【請求項32】
前記ポリオレフィン繊維の合計細孔容量が立方センチメートル当たり約15%〜約80%である、請求項1〜31のいずれか一項に記載のポリオレフィン繊維。
【請求項33】
ナノ細孔が前記ポリオレフィン繊維の合計細孔容量の約20容量%以上を構成する、請求項1〜32のいずれか一項に記載のポリオレフィン繊維。
【請求項34】
前記熱可塑性組成物が約0.90g/cm3以下の密度を持つ、請求項1〜33のいずれか一項に記載のポリオレフィン繊維。
【請求項35】
前記熱可塑性組成物が一般的に発泡剤を含まない、請求項1〜34のいずれか一項に記載のポリオレフィン繊維。
【請求項36】
請求項1〜35のいずれか一項に記載の前記ポリオレフィン繊維を含む不織布ウェブ。
【請求項37】
請求項36に記載の前記不織布ウェブを含む吸収性物品であって、前記吸収性物品が実質的に液体不透過性の層、液体透過性の層、および吸収性コアを含む吸収性物品。
【請求項38】
前記実質的に液体不透過性の層が前記不織布ウェブを含む、請求項37に記載の吸収性物品。
【請求項39】
ポリオレフィン繊維を形成するための方法であって、前記方法が、
ポリオレフィンマトリクスポリマーを含む連続相および約1ナノメートル〜約1000ナノメートルの平均断面寸法を有するナノスケールの個別領域の形態で前記連続相内に分散されているポリマー製ナノ包含添加剤を含有する熱可塑性組成物を形成する工程であって、前記ナノ包含添加剤が、前記熱可塑性組成物の重量に基づいて、前記熱可塑性組成物の約0.05重量%〜約10重量%を構成する工程と、
前記組成物を金型を通して押し出して前記繊維を形成する工程と、
前記マトリクスポリマーの溶融温度より低い温度で前記繊維を延伸し、それによって約800ナノメートル以下の平均断面寸法と約1〜約30のアスペクト比とを有する複数のナノ細孔を含む多孔質ネットワークを形成する工程とを含む方法。
【請求項40】
前記熱可塑性組成物が約1.1〜約3.0の延伸比で伸張される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
不織布ウェブを形成するための方法であって、前記方法が、
ポリオレフィンマトリクスポリマーを含む連続相および約1ナノメートル〜約1000ナノメートルの平均断面寸法を有するナノスケールの個別領域の形態で前記連続相内に分散されているポリマー製ナノ包含添加剤を含有する熱可塑性組成物を形成する工程であって、前記ナノ包含添加剤が、前記熱可塑性組成物の重量に基づいて、前記熱可塑性組成物の約0.05重量%〜約10重量%を構成する工程と、
前記熱可塑性組成物を金型を通して押し出して複数の繊維を形成する工程と、
前記延伸繊維を表面上に無作為に堆積させて不織布ウェブを形成する工程と、
前記不織布ウェブが形成される前および/または後に前記マトリクスポリマーの溶融温度より低い温度で前記繊維を延伸し、それによって約800ナノメートル以下の平均断面寸法と約1〜約30のアスペクト比とを有する複数のナノ細孔を含む多孔質ネットワークを形成する工程とを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(優先権の主張)
本出願は米国仮出願番号第 61/833,981号(2013年6月12日出願)、および第61/907,580号(2013年11月22日)に対する優先権を主張し、同出願の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
天然資源の使用および最終製品の炭素排出量の低減を改善する低密度ポリオレフィン繊維を製造するためにかなりの努力が払われてきた。低密度ポリオレフィン繊維の製造に対する典型的なアプローチは、バルクを通したガスセルを作る、物理的または化学的発泡剤を使用してポリマーを発泡させることである。化学的発泡剤は、ポリマーのバルクを通したセル構造を作る気体を放散する化学反応を受ける化合物である。物理的発泡剤は典型的には、ポリマー中に分散され膨張してセルを作る圧縮ガスである。いずれにしても、セル形成はポリマーが溶融状態にある時に起こるため、典型的な発泡プロセスは低分子配向を誘発する。これはポリマーがひずみ硬化するのを防ぐが、ひずみ硬化は典型的には、ポリマーの溶融温度またはガラス転移温度よりはるかに高い温度で起こり、機械的強度が低い生成物を生じる。さらに、典型的な発泡プロセスは、100μmを超えるなど、大きなセルサイズを生じる。これは溶融強度を減少させ、従って、紡糸中の繊維の切断につながる。
【0003】
従って、より低い密度を持つことができるよう、ポリオレフィン繊維に多孔質構造を生成する改善された技術に対するニーズが現在存在する。
【発明の概要】
【0004】
本発明の一つの実施形態によると、ポリオレフィンマトリクスポリマーを含む連続相を含有する熱可塑性組成物によって形成されるポリオレフィン繊維が開示されており、ここでナノ包含添加剤は、個別領域の形態で連続相内に分散されている。約800ナノメートル以下の平均幅を持つ複数のナノ細孔を含む多孔質ネットワークが、組成物中に定義される。
【0005】
本発明の別の実施形態によると、ポリオレフィンマトリクスポリマーを含む連続相を含有する熱可塑性組成物、および個別領域の形態で連続相内に分散されているナノ包含添加剤を含むポリオレフィン繊維を形成する方法が開示されている。組成物は金型を通して押し出されて繊維を形成し、繊維はマトリクスポリマーの溶融温度よりも低い温度で延伸され、それによって約800ナノメートル以下の平均断面寸法を持つ複数のナノ細孔を含む多孔質ネットワークを形成する。
【0006】
本発明のその他の特徴および態様は、以下でより詳細に検討される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
当業者を対象とした、本発明の完全かつ実施可能な開示は、その最良の様式を含めて、本明細書の残りの部分でさらに具体的に記載されており、これは以下の添付図を参照する。
【0008】
図1】繊維を形成するために本発明の一つの実施形態で使用されうるプロセスの略図である。
図2】液体窒素中凍結破壊した後の、実施例1の繊維(ポリプロピレン、ポリ乳酸およびポリエポキシド)のSEM顕微鏡写真(1,000X)である。
図3】液体窒素中凍結破壊した後の、実施例1の繊維(ポリプロピレン、ポリ乳酸およびポリエポキシド)のSEM顕微鏡写真(5,000X)である。
図4】実施例1の繊維表面(ポリプロピレン、ポリ乳酸およびポリエポキシド)のSEM顕微鏡写真(10,000X)である。
図5】液体窒素中凍結破壊した後の、実施例2の繊維(ポリプロピレン、ポリ乳酸およびポリエポキシド)の軸方向寸法に沿ったSEM顕微鏡写真(1,000X)である。
図6】液体窒素中凍結破壊した後の、実施例2の繊維(ポリプロピレン、ポリ乳酸およびポリエポキシド)の軸方向寸法に沿ったSEM顕微鏡写真(5,000X)である。
図7】液体窒素中凍結破壊した後の、実施例3の繊維(ポリプロピレン、ポリ乳酸、ポリエポキシド、および界面修飾剤)の軸方向寸法に沿ったSEM顕微鏡写真(1,000X)である。
図8】液体窒素中凍結破壊した後の、実施例2の繊維(ポリプロピレン、ポリ乳酸、ポリエポキシド、および界面修飾剤)の軸方向寸法に沿ったSEM顕微鏡写真(5,000X)である。
図9】液体窒素中凍結破壊した後の、実施例5の繊維のSEM顕微鏡写真(4,270X)である。
図10】液体窒素中凍結破壊した後の、実施例5の繊維のSEM顕微鏡写真(9,170X)である。
図11】液体窒素中凍結破壊した後の、実施例6の繊維のSEM顕微鏡写真である。
図12】液体窒素中凍結破壊した後の、実施例6の繊維のSEM顕微鏡写真である。
図13】液体窒素中凍結破壊した後の、実施例7の繊維のSEM顕微鏡写真である。
図14】実施例7のボンデッドウェブのSEM顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで、本発明のさまざまな実施形態を詳細に参照するが、その一つ以上の例を以下で説明する。各例は、本発明の説明方法として提供されており、本発明を限定するものではない。実際に、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、本発明に様々な改造および変形をしうることは、当業者にとって明らかであろう。例えば、一つの実施形態の一部として図示または記述された特徴は、別の実施形態で使用して、なおさらなる実施形態を生じうる。従って、本発明が、添付した請求項の範囲およびそれらの均等物の範囲内に収まるような改造や変形を網羅することが意図される。
【0010】
一般的に、本発明は、ポリオレフィンマトリクスポリマーを含む連続相を含有する熱可塑性組成物から形成されるポリオレフィン繊維を対象とする。組成物は、連続相内に個別ナノスケール相領域として分散されるように、ポリオレフィンマトリクスポリマーと少なくとも部分的に不適合なナノ包含添加剤も含む。繊維の延伸中、組成物が変形および伸長ひずみを受ける時、これらのナノスケール相領域はユニークな方法で相互作用して細孔のネットワークを作ることができることを本発明者らは発見した。すなわち、材料の不適合性から生じる応力集中の結果として、伸長ひずみは、個別相領域の近くに強い局所的せん断ゾーンおよび/または応力強度ゾーン(例えば、垂直応力)を開始することができる。これらのせん断および/または応力強度ゾーンは、領域に隣接するポリオレフィンマトリクスにいくらかの初期剥離を生じさせる。初期細孔が形成されると、領域の間に配置されたマトリクスは、塑性的に変形して、局所的に狭く(または首)ひずみ硬化した内部の伸張エリアを作ることができる。このプロセスは、伸張方向に成長する組成物の塊を通した細孔の形成を可能にし、それにより多孔質ネットワークの形成をもたらす一方、分子配向は機械的強度を強化するひずみ硬化を引き起こす。
【0011】
上述の技術を通して、繊維の一定単位容量内にマイクロ細孔およびナノ細孔によって占められる平均容量パーセントが、繊維の約15%〜約80%/cm、一部の実施形態では約20%〜約70%、また一部の実施形態では約30%〜約60%/立方センチメートルであるように、ユニークな多孔質ネットワークをポリオレフィン繊維中に形成しうる。このような細孔容量では、組成物は、約0.90グラム/立方センチメートル(「g/cm」)以下、一部の実施形態では約0.85g/cm以下、一部の実施形態では約0.80g/cm以下、一部の実施形態では約0.10g/cm〜約0.75g/cm、および一部の実施形態では約0.20g/cm〜約0.70g/cmなど、比較的低い密度を持ちうる。多孔質ネットワークの細孔のかなりの部分は、約800ナノメートル以下、一部の実施形態では約5〜700ナノメートル、および一部の実施形態では約10〜約500ナノメートルの平均断面寸法を持つものなど、「ナノスケール」サイズ(「ナノ細孔」)でもある。「断面寸法」という用語は、細孔の特性寸法(例えば、幅または直径)を一般的に指し、これはその主軸(例えば、長さ)に実質的に直交し、また延伸中に加えられる応力の方向に一般的には実質的に直交する。ナノ細孔は、約100〜約5000ナノメートル、一部の実施形態では約50〜約2000ナノメートル、および一部の実施形態では約約100〜1000ナノメートルの範囲内の平均軸方向寸法も持ちうる。「軸方向寸法」とは、主軸(例えが、長さ)の方向の寸法であり、これは一般的には延伸の方向である。例えば、このようなナノ細孔は、ポリオレフィン繊維の合計細孔容量の約15容量%以上、一部の実施形態では約20容量%以上、一部の実施形態では約30容量%〜100容量%、一部の実施形態では、約40容量%〜約90容量%を構成しうる。
【0012】
本発明のさまざまな実施形態をこれから詳細に説明する。
【0013】
I. 熱可塑性組成物
A. ポリオレフィンマトリクス
ポリオレフィンマトリクスは、一般的に、熱可塑性組成物の約60重量%〜約99重量%、一部の実施形態では約60重量%〜約98重量%、および一部の実施形態では約80重量%〜約95重量%を占める。ポリオレフィンは、約100°C〜約220°C、一部の実施形態では約120°C〜約200°C、および一部の実施形態では約140°C〜約180°Cの溶融温度を持ちうる。溶融温度は、ASTM D−3417に従い、示差走査熱量測定(「DSC」)を使用して決定されうる。適切なポリオレフィンには、例えば、エチレンポリマー(例えば、低密度ポリエチレン(「LDPE」)、高密度ポリエチレン(「HDPE」)、直鎖低密度ポリエチレン(「LLDPE」など)、プロピレンホモポリマー(例えば、シンジオタクチック、アタクチック、イソタクチックなど)、プロピレン共重合体などを含みうる。一つの特定実施形態では、ポリマーは、ホモポリプロピレンまたはプロピレンの共重合体など、プロピレンポリマーである。プロピレンポリマーは、例えば、実質的にイソタクチックポリプロピレン・ホモポリマーまたはその他のモノマーを約10重量%以下(すなわち、プロピレンの少なくとも約90重量%)含む共重合体から形成されうる。このようなホモポリマーは、約140°C〜約170°Cの融点を持ちうる。
【0014】
当然、その他のポリオレフィンも本発明の組成物に用いられうる。一つの実施形態では、例えば、ポリオレフィンは、エチレンまたはプロピレンと別のα−オレフィン(C−C20α−オレフィンまたはC−C12α−オレフィンなど)の共重合体でありうる。適切なα−オレフィンの具体例には、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−ペンテン、一つ以上のメチル、エチルまたはプロピル置換基を持つ1−ペンテン、一つ以上のメチル、エチルまたはプロピル置換基を持つ1−ヘキセン、一つ以上のメチル、エチルまたはプロピル置換基を持つ1−ヘプテン、一つ以上のメチル、エチルまたはプロピル置換基を持つ1−オクテン、一つ以上のメチル、エチルまたはプロピル置換基を持つ1−ノネン、エチル、メチルまたはジメチル置換1−デセン、1−ドデセン、およびスチレンを含む。特に望ましいα−オレフィンは、1−ブテン、1−ヘキセンおよび1−オクテンである。このような表重合体のエチレンまたはプロピレン含量は、約60モル%〜約99モル%、一部の実施形態では約80モル%〜約98.5%、および一部の実施形態では約87モル%〜約97.5モル%でありうる。α−オレフィン含量は、同様に約1モル%〜約40モル%、一部の実施形態では約1.5モル%〜約15モル%、および一部の実施形態では約2.5モル%〜約13モル%の範囲でありうる。
【0015】
本発明で使用するための模範的オレフィン共重合体には、テキサス州ヒューストンのExxonMobil Chemical CompanyからEXACT(商標)という名称で市販されているエチレンベースの共重合体を含む。その他の適切なエチレン共重合体は、ミシガン州ミッドランドのDow Chemical CompanyからENGAGE(商標)、AFFINITY(商標)、DOWLEX(商標)(LLDPE)およびATTANE(商標)(ULDPE)という名称で市販されている。その他の適切なエチレンポリマーは、Ewenらの米国特許第4,937,299号、Tsutsuiらの第5,218,071号、Laiらの第5,272,236号、およびLaiらの第5,278,272号に記述されている。適切なプロピレン共重合体も、ExxonMobil Chemical Co.(テキサス州ヒューストン)のVISTAMAXX(商標)、Atofina Chemicals(ベルギー、フェルイ)のFINA(商標)(例えば、8573)、三井石油化学工業のTAFMER(商標)、およびDow Chemical Co.(ミシガン州ミッドランド)のVERSIFY(商標)という名称で市販されている。適切なポリプロピレンホモポリマーには、Exxon Mobil 3155ポリプロピレン、Exxon Mobil Achieve(商標)樹脂およびTotal M3661 PP樹脂を含みうる。プロピレンポリマーのその他の例は、Dattaらの米国特許第6,500,563号、Yangらの第5,539,056号、およびResconiらの第5,596,052号に記述されている。
【0016】
さまざまな既知の技術のいずれでも、オレフィン共重合体を形成するために一般的に使用されうる。例えば、オレフィンポリマーは、フリーラジカルまたは配位触媒(例えば、チーグラー・ナッタ)を使用して形成されうる。好ましくは、オレフィンポリマーは、メタロセン触媒などの、単一部位配位触媒から形成される。このような触媒系は、コモノマーが、分子鎖内に無作為に分布され、異なる分子量分画にわたって均一に分布されたエチレン共重合体を生成する。メタロセン触媒によるポリオレフィンは、例えば、McAlpinらの米国特許第5,571,619号、Davisらの第5,322,728号、Obijeskiらの第5,472,775号、Laiらの第5,272,236号、およびWheatらの第6,090,325号に記述されている。メタロセン触媒の例には、ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)チタニウム・ジクロリド、ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウム・ジクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)スカンジウム・クロリド、ビス(インデニル)ジルコニウム・ジクロリド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)チタニウム・ジクロリド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウム・ジクロリド、コバルトセン、シクロペンタジエニルチタニウム・トリクロリド、フェロセン、ハフノセン・ジクロリド、イソプロピル(シクロペンタジエニル,−1−フルオレニル)ジルコニウム・ジクロリド、二塩化モリブドセン、ニッケロセン、二塩化ニオボセン、ルテノセン、二塩化チタノセン、ジルコノセンクロリドヒドリド、二塩化ジルコノセンなどを含む。メタロセン触媒を使用して作ったポリマーは、一般的に狭い分子量範囲を持つ。例えば、メタロセン触媒によるポリマーは、4より小さい多分散数(M/M)、制御された短鎖分岐分布、および制御されたイソタクシチシーを持ちうる。
【0017】
B. ナノ包含添加剤
本明細書で使用される場合、「ナノ包含添加剤」という用語は、ポリマーマトリクス内にナノスケールサイズの個別領域の形態で分散されることのできる材料を一般的に指す。例えば、延伸前に、領域は、約1〜約1000ナノメートル、一部の実施形態では約5〜約800ナノメートル、一部の実施形態では約10〜約500ナノメートル、および一部の実施形態では約20〜約200ナノメートルの平均断面寸法を持ちうる。領域は、楕円形、球形、円筒形、プレート状、管状などのさまざまな異なる形状を持ちうる。一つの実施形態では、領域は実質的に楕円の形状を持つ。ナノ包含添加剤は一般的に、連続相ポリオレフィンマトリクスの重量に基づいて、熱可塑性組成物の約0.05重量%〜約20重量%、一部の実施形態では、約0.1重量%〜約10重量%、および一部の実施形態では約0.5重量%〜約5重量%の量で使用される。熱可塑性組成物全体のナノ包含添加剤の濃度は、同様に、約0.01重量%〜約15重量%、一部の実施形態では約0.05重量%〜約10重量%、および一部の実施形態では約0.3重量%〜約6重量%でありうる。
【0018】
ナノ包含添加剤は、ポリオレフィンマトリクス内に実質的に均一ではあるが、個別領域の形態で分配されうるという意味では、ポリオレフィンと部分的に不適合である。このような部分的不適合性は、さまざまな方法で達成できる。例えば特定の実施形態では、ナノ包含添加剤は、ポリオレフィンマトリクスと適合する非極性成分(例えば、オレフィン)を有する場合があり、それが不均一に分配されることを可能にする。それでもなお、添加剤は、ポリオレフィンマトリクスと不適合の極性成分を含む場合があり、それによって個別領域へと合体または分離することを可能にする。このような成分には、低分子または高分子極性分子セグメントまたはブロック、イオン基、荷電または非荷電極性領域、および/または極性分子群を含みうる。代替的に、添加剤は完全に非極性の性質でありうるが、それでも個別領域が形成されることを許す特定の物理的特性を有する。例えば、特定の実施形態では、ナノ包含添加剤は、特定温度よりも上でポリオレフィンと適合性または混和性であるが、臨界共溶温度より低い温度で相分離しうる。このようにして、ナノ包含添加剤が相分離、合体し、別のナノスケール領域を形成できるように、ナノ包含添加剤は、溶融相でポリオレフィンと安定混合物を形成するが、温度が低下するにつれて、連続相が結晶化して分離しうる。
【0019】
望ましい領域が形成できる限り、ナノ包含添加剤の特定の状態または形態は重要でない。例えば、一部の実施形態では、ナノ包含添加剤は、室温(例えば、25°C)で液体または半固体の形態でありうる。このような液体は、マトリクス中に容易に分散されて、準安定分散を形成し、その後クエンチされて、混合物の温度を低下させることによって領域サイズを保存できる。液体または半固体材料などの動粘度は、40°Cで決定される時、典型的には約0.7〜約200センチストーク(「cs」)、一部の実施形態では約1〜100cs、および一部の実施形態では約1.5〜約80csである。適切な液体または半固体には、例えば、シリコン、シリコン−ポリエステル共重合体、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル、アルキレングリコール(例えば、エチエングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなど)、アルカンジオール(例えば、1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、 2,2,4−トリメチル−1,6ヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4,−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオールなど)、アミンオキシド(例えば、オクチルジメチルアミン・オキシド)、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド(例えば、オレアミド、エルカミド、ステアラミド、エチレンビス(ステアラミド)など)、鉱物、および植物油などを含みうる。一つの特に適切な液体または半固体は、BASF Corpの商標PLURIOL(登録商標) WIで市販されているものなどのポリエーテルポリオールである。
【0020】
またその他の実施形態では、ナノ包含添加剤は固体の形態であり、これは非晶質、結晶、または半結晶でありうる。例えば、ナノ包含添加剤は高分子の性質であり、比較的高い分子量を持ち、熱可塑性組成物の溶融強度および安定性の改善に役立つ。上述のように、ナノ包含添加剤は、ポリオレフィンマトリクスと部分的に不適合である。このような添加剤の一つの例は微結晶ポリオレフィンワックスであり、これは典型的にはエチレンおよび/または、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、および1−デセンなど、C−C10−アルク−1−エンから派生する。微結晶ワックスは典型的には、約30°C〜150°C、一部の実施形態では約50°C〜約140°C、および一部の実施形態では約80°C〜約130°Cなど、比較的低い溶融温度を持つ。このような低い溶融温度では、ワックスは、溶融相にある時ポリオレフィンと混和混合物を形成しうるが、温度が低下して高分子が結晶化または固化するにつれて、ワックスは分離および合体して別のナノスケール領域を形成する。
【0021】
高分子ナノ包含添加剤の別の例は、極性および非極性成分を含む官能性ポリオレフィンである。例えば、極性成分は一つ以上の官能基によって提供され、非極性成分はオレフィンによって提供されうる。ナノ包含添加剤のオレフィン成分は、概して、上述のようなオレフィンモノマーから由来する任意の直鎖または分岐α−オレフィンモノマー、オリゴマー、またはポリマー(共重合体を含む)から形成されうる。ナノ包含添加剤の官能基は、分子に極性成分を提供し、ポリオレフィンマトリクスポリマーと適合しない任意の基、分子セグメントおよび/またはブロックでありうる。ポリオレフィンと適合しない分子セグメントおよび/またはブロックの例には、アクリレート、スチレン、ポリエステル、ポリアミドなどが含まれうる。官能基は、イオン性質を持ち、荷電金属イオンを含みうる。特に適切な官能基は、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、マレイミド、マレイン酸ヒドラジド、無水マレイン酸とジアミンの反応生成物、メチルナド酸無水物、ジクロロマレイン酸無水物、マレイン酸アミドなどである。無水マレイン酸修飾ポリオレフィンは、本発明の使用に特に適している。このような修飾ポリオレフィンは、ポリマー骨格材料に無水マレイン酸をグラフトすることによって一般的に形成される。このようなマレイン酸化ポリオレフィンは、E. I. du Pont de Nemours and CompanyからFusabond(登録商標)という名前で市販されており、Pシリーズ(化学修飾ポリプロピレン)、Eシリーズ(化学修飾ポリエチレン)、Cシリーズ(化学修飾エチレン酢酸ビニル)、Aシリーズ(化学修飾エチレンアクリレート共重合体またはターポリマー)、またはNシリーズ(化学修飾エチレン−プロピレン、エチレン−プロピレンジエンモノマー(「EPDM」)またはエチレン−オクタン)などがある。代替的に、マレイン酸化ポリオレフィンは、Polybond(登録商標)という名称でChemtura Corp.から、Eastman Gシリーズという名称でEastman Chemical Companyから、およびOrevac(登録商標)という商標でArkemaからも市販されている。
【0022】
特定の実施形態では、高分子ナノ包含添加剤も反応性でありうる。このような反応性のナノ包含添加剤の一例は、分子あたり平均して少なくとも二つのオキシレン環を含むポリエポキシドである。理論に制限されるものではないが、このようなポリエポキシド分子は、組成物の特定の成分とともに反応を受けて(例えば、鎖延長、側鎖分岐、グラフト、共重合体形成など)、ガラス転移温度を大幅に減少させることなく、溶融強度を改善しうると考えられる。反応性添加剤は、ポリオレフィンとその他のより極性添加剤(マイクロ包含添加剤など)の間に適合性を提供することもでき、分散の均一性を改善し、マイクロ包含添加剤のサイズを減少させることができる。例えば、下記により詳細に記述されるように、本発明の特定の実施形態は、マイクロ包含添加剤としてポリエステルを用いうる。このような実施形態では、反応性ナノ包含添加剤は、ポリエステルのカルボニル末端基を通して(エステル化)またはヒドロキシル基を通して(エーテル化)、求核的開環反応を可能にしうる。オキザロリン副反応が同様に起こって、エステルアミド部分を形成しうる。このような反応を通して、ポリエステルマイクロ包含添加剤の分子量を増加させて、溶融処理中によく見られる分解に対抗しうる。本発明者らは、過剰な反応はポリマー骨格間の架橋につながりうることを発見した。このような架橋がかなりの程度まで進むと、結果生じるポリマー混合物が脆くなって望ましい強度および伸長特性を持つ繊維に処理することが困難になりうる。
【0023】
この点で、本発明者は、比較的低いエポキシ官能性を持つポリエポキシドが特に効果的である場合があり、これはその「エポキシ当量」によって定量化しうることを発見した。エポキシ当量は、エポキシ基の1分子を含む樹脂の量を反映し、これは、修飾剤の数平均分子量を分子中のエポキシ基の数で割ることによって計算されうる。本発明のポリエポキシドは、一般的に、約7,500〜約250,000グラム/モル、一部の実施形態では約15,000〜約150,000グラム/モル、および一部の実施形態では約20,000〜約100,000グラム/モルの範囲の数平均分子量を持ち、多分散指数は一般的に2.5〜7の範囲である。ポリエポキシドは、50個未満、一部の実施形態では5〜45個、および一部の実施形態では15〜40個のエポキシ基を含みうる。同じく、エポキシ当量は、約15,000/モル未満、一部の実施形態では約200〜約10,000グラム/モル、および一部の実施形態では約500〜約7,000グラム/モルでありうる。
【0024】
ポリエポキシドは、末端エポキシ基、骨格オキシラン単位、および/またはペンダントエポキシ基を含む直鎖または分岐の、ホモポリマーまたは共重合体(例えば、ランダム、グラフト、ブロックなど)でありうる。このようなポリエポキシドを形成するために使用されるモノマーは異なりうる。一つの特定の実施形態では、例えば、ポリエポキシドは、少なくとも一つのエポキシ官能性(メタ)アクリルモノマー成分を含む。本書で使用される時、「(メタ)アクリル」という用語は、アクリルおよびメタクリルモノマー、並びにアクリレートおよびメタクリレートモノマーなど、その塩またはエステルを含む。例えば、適切なエポキシ官能性(メタ)アクリルモノマーには、アクリル酸グリシジルおよびメタクリル酸グリシジルなどの、1,2−エポキシ基を含むものが含まれうるがこれに限定されない。その他の適切なエポキシ官能性モノマーには、アリルグリシジルエーテル、エタクリル酸グリシジル、およびイタコン酸グリシジルが含まれる。
【0025】
ポリエポキシドは、鎖延長をもたらすだけでなく、望ましい混合形態を達成するのに役立つように、上述のように比較的高い分子量を一般的に持つ。こうして、ポリマーの結果生じるメルトフローレートは、2160グラムの負荷および190°Cで測定された場合、約10〜約200グラム/10分、一部の実施形態では約40〜約150グラム/10分、および一部の実施形態では約60〜約120グラム/10分でありうる。
【0026】
ポリエポキシドは典型的には、2〜20個の炭素原子、好ましくは2〜8個の炭素原子を持つものなどの、少なくとも一つの直鎖または分岐α−オレフィンモノマーも含む。具体例には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−ペンテン、一つ以上のメチル、エチルまたはプロピル置換基を持つ1−ペンテン、一つ以上のメチル、エチルまたはプロピル置換基を持つ1−ヘキセン、一つ以上のメチル、エチルまたはプロピル置換基を持つ1−ヘプテン、一つ以上のメチル、エチルまたはプロピル置換基を持つ1−オクテン、一つ以上のメチル、エチルまたはプロピル置換基を持つ1−ノネン、エチル、メチルまたはジメチル置換1−デセン、1−ドデセン、およびスチレンを含む。特に望ましいα−オレフィンコモノマーは、エチレンおよびプロピレンである。別の適切なモノマーには、エポキシ官能性でない(メタ)アクリルモノマーを含みうる。このような、(メタ)アクリルモノマーの例には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸s−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−アミル、アクリル酸i−アミル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸n−デシル、アクリル酸メチルシクロヘキシル、アクリル酸シクロペンチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸n−アミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸i−アミル、メタクリル酸s−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルブチル、メタクリル酸メチルシクロヘキシル、メタクリル酸シンナミル、メタクリル酸クロチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸2−エトキシエチル、メタクリル酸イソボルニルなど、並びにその組み合わせを含みうる。
【0027】
本発明の特に望ましい一つの実施形態では、ポリエポキシドは、エポキシ官能性の(メタ)アクリル単量体成分、α−オレフィン単量体成分、および非エポキシ官能性の(メタ)アクリル単量体成分である。例えば、ポリエポキシドは、ポリ(エチレン−コ−メチルアクリレート−コ−グリシジルメタクリレート)であることがあり、これは以下の構造を持つ:
【0028】
【化1】
【0029】
ここで、x、y、およびzは1以上である。
【0030】
さまざまな既知の技術を使用して、エポキシ官能性モノマーをポリマーにしうる。例えば、極性官能基を含むモノマーは、ポリマー骨格にグラフトされてグラフト共重合体を形成しうる。このようなグラフト技術は、当技術分野でよく知られており、例えば、米国特許第5,179,164号に記述されている。その他の実施形態では、エポキシ官能基を含むモノマーは、高圧反応、チーグラー・ナッタ触媒反応系、単一部位触媒(例えば、メタロセン)反応系などの、既知のフリーラジカル重合技術を使用して、モノマーと共重合されてブロックまたはランダム共重合体を形成しうる。
【0031】
単量体成分の相対的部分は、エポキシ反応性とメルトフローレートの間のバランスを達成するように選択されうる。より具体的には、高いエポキシモノマー含量は、良好な反応性をもたらしうるが、含量が高すぎると、ポリエポキシドがポリマー混合物の溶融強度に悪影響を与えるほど、メルトフローレートを減少させうる。従って、ほとんどの実施形態では、エポキシ官能性(メタ)アクリルモノマーは、共重合体の約1重量%〜約25重量%、一部の実施形態では約2重量%〜約20重量%、および一部の実施形態では約4重量%〜約15重量%を占める。同様にα−オレフィンモノマーは、共重合体の約55重量%〜約95重量%、一部の実施形態では約60重量%〜約90重量%、および一部の実施形態では約65重量%〜約85重量%を占めうる。使用される場合、その他の単量体成分(例えば、非エポキシ官能性(メタ)アクリルモノマー)は、共重合体の約5重量%〜約35重量%、一部の実施形態では約8重量%〜約30重量%、および一部の実施形態では約10重量%〜約25重量%を占めうる。本発明で使用されうる、適切なポリエポキシドの一つの具体例は、LOTADER(登録商標) AX8950または AX8900という名前でArkemaから市販されている。例えば、LOTADER(登録商標) AX8950は、70〜100g/10分のメルトフローレートを持ち、7重量%〜11重量%のメタクリル酸グリシジルモノマー含量、13重量%〜17重量%の酢酸メチルモノマー含量、および72重量%〜80重量%のエチレンモノマー含量を持つ。別の適切なポリエポキシドは、ELVALOY(登録商標) PTWという名称でDuPontから市販されており、これはエチレン、ブチルアクリレート、およびグリシジルメタクリレートのターポリマーであり、12g/10分のメルトフローレートを持つ。
【0032】
ポリエポキシドを形成するために使用するモノマーのタイプおよび相対的含量を制御することに加えて、望ましい利益を達成するために全体的重量パーセントも制御されうる。例えば、修飾レベルが低すぎると、溶融強度および機械的特性の望ましい増加が達成されないことがある。しかし本発明者は、修飾レベルが高すぎると、エポキシ官能基による強い分子間相互作用(例えば、架橋)および物理的ネットワーク形成のために、プロセスが制限されうることも発見した。従って、ポリエポキシドは、一般的に、組成物に使用されるポリオレフィンの重量に基づいて、約0.05重量%〜約10重量%、一部の実施形態では、約0.1重量%〜約8重量%、一部の実施形態では約0.5重量%〜約5重量%、および一部の実施形態では約1重量%〜約3重量%の量で使用される。またポリエポキシドは、組成物の総重量に基づいて、約0.05重量%〜約10重量%、一部の実施形態では約0.05重量%〜約8重量%、一部の実施形態では約0.1重量%〜約5重量%、および一部の実施形態では約0.5重量%〜約3重量%を占めうる。
【0033】
オキサゾリン官能性化ポリマー、シアニド官能性化ポリマーなど、その他の反応性のナノ包含添加剤も本発明で使用しうる。使用された場合、このような反応性のナノ包含添加剤は、ポリエポキシドに対して上述の濃度内で使用されうる。一つの特定実施形態では、オキサゾリン環を含むモノマーでグラフトされたポリオレフィンである、オキサゾリングラフト化ポリオレフィンが使用されうる。オキサゾリンには、2−ビニル−2−オキサゾリン(例えば、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン)、2−脂肪−アルキル−2−オキサゾリン(例えば、オレイン酸、リノレン酸、パルミトオレイン酸、ガドレイン酸、エルカ酸および/またはアラキドン酸のエタノールアミドから取得可能)およびその組み合わせなどの、2−オキザロリンを含みうる。別の実施形態では、オキサゾリンは、例えば、マレイン酸リシノールオキサゾリン、ウンデシル−2−オキサゾリン、ソヤ−2−オキサゾリン、リシヌス−2−オキサゾリンおよびその組み合わせから選択されうる。また別の実施形態では、オキサゾリンは、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4,4−ジメチル−2−オキサゾリンおよびその組み合わせから選択される。
【0034】
本発明の特定の実施形態では、複数のナノ包含添加剤を組み合わせて使用しうる。例えば、第一のナノ包含添加剤(例:ポリエポキシド)は、約50〜約500ナノメートル、一部の実施形態では約60〜約400ナノメートル、および一部の実施形態では約80〜約300ナノメートルの平均断面寸法を持つ領域の形態で分散されうる。第二のナノ包含添加剤は、約1〜約50ナノメートル、一部の実施形態では約2〜約45ナノメートル、および一部の実施形態では約5〜約40ナノメートルの平均断面寸法を持つものなど、第一のナノ包含添加剤より小さい領域の形態でも分散されうる。用いられる時、第一および/または第二のナノ包含添加剤は一般的に、連続相(マトリクスポリマー)の重量に基づいて、熱可塑性組成物の約0.05重量%〜約20重量%、一部の実施形態では、約0.1重量%〜約10重量%、および一部の実施形態では約0.5重量%〜約5重量%の量を占める。熱可塑性組成物全体の第一および/または第二のナノ包含添加剤の濃度は、同様に、熱可塑性組成物の約0.01重量%〜約15重量%、一部の実施形態では約0.05重量%〜約10重量%、および一部の実施形態では約0.1重量%〜約8重量%でありうる。
【0035】
第二のナノ包含添加剤にナノフィラーを随意に用いることができ、この例にはカーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノ繊維、ナノクレイ、金属ナノ粒子、ナノシリカ、ナノアルミナなどを含みうる。ナノクレイが特に適している。「ナノクレイ」という用語は、クレイ材料(天然鉱物、有機修飾された鉱物、または合成名の材料)のナノ粒子を一般的に指し、これは典型的には板状構造を持つ。ナノクレイの例には、例えば、モンモリロナイト(2:1層状スメクタイト粘土構造)、ベントナイト(モンモリロナイトで主に形成されたフィロケイ酸アルミニウム)、カオリナイト(1:1板状構造およびAlSi(OH))の経験式を持つ)アルミノケイ酸塩)、ハロイサイト(1:1管状構造およびAlSi(OH))を持つアルミノケイ酸塩などが含まれる。適切なナノクレイの一例はCloisite(登録商標)で、これは、モンモリロナイトナノクレイであり、Southern Clay Products, Inc.から市販されている。合成ナノクレイのその他の例には、混合金属水酸化ナノクレイ、層状二重水酸化ナノクレイ(例えば、セピオサイト)、ラポナイト、ヘクトライト、サポナイト、インドナイトなどが含まれるがこれらに限定されない。
【0036】
望ましい場合、ナノクレイは、マトリクスポリマー(例えば、ポリエステル)との適合性を改善するのを助ける表面処理剤を含みうる。表面処理剤は有機または無機でありうる。一つの実施形態では、有機カチオンとクレイの反応によって得られる有機表面処理剤が用いられる。適切な有機カチオンには、例えば、ジメチルビス[水素化獣脂]塩化アンモニウム(2M2HT)、メチルベンジルビス[水素化獣脂]塩化アンモニウム(MB2HT)、メチルトリス[水素化獣脂アルキル]クロリド(M3HT)など、クレイとカチオンを交換することのできる有機第四級アンモニウム化合物を含みうる。市販されている有機ナノクレイの例には、例えば、ジメチルベンジル水素化獣脂アンモニウム塩で修飾されたモンモリロナイトクレイであるDellite(登録商標)43B(イタリア、リボルノのLaviosa Chimica)が含まれうる。その他の例には、Cloisite(登録商標)25AおよびCloisite(登録商標)30B(Southern Clay Products)およびNanofil 919(Svd Chemie)が含まれる。望ましい場合、ナノフィラーを担体樹脂と混合して、添加剤と組成物のその他のポリマーとの適合性を向上させるマスターバッチを形成できる。特に適切な担体樹脂には、上記にさらに記述されるように、例えば、ポリエステル(例えば、ポリ乳酸、ポリエチレンテレフタル酸など)、ポリオレフィン(例えば、エチレンポリマー、プロピレンポリマーなど)などが含まれる。
【0037】
用いられる材料に関わらず、ナノ包含添加剤は典型的には、個別領域および結果得られる細孔が適正に維持されることを確実にするために特定の粘度(またはメルトフローレート)を持つように選択される。例えば、ナノ包含添加剤の粘度が低すぎる(またはメルトフローレートが高すぎる)場合には、流れて連続相を通して制御されないで分散する傾向がある。これは、維持が難しく、また時期尚早に砕ける可能性の高い層状のプレート様領域または共連続相構造を生じる。反対に、粘度が高すぎる(メルトフローレートが低すぎる)場合、凝集して非常に大きな楕円形領域を形成する傾向があり、これは混合中に分散させることが困難である。これは、連続相の全体を通して、ナノ包含添加剤の不均一な分布を生じうる。例えば、ポリオレフィンのメルトフローレートの高分子ナノ包含添加剤のメルトフローレートに対する比率は、例えば、約0.2〜約8、一部の実施形態では約0.5〜約6、一部の実施形態では約1〜約5でありうる。例えば、ナノ包含添加剤は、2160グラムの負荷および溶融温度より少なくとも40°C高い温度(例えば、約190°C)でASTM D1238に従って測定された場合、約0.1〜約100グラム/10分、一部の実施形態では約0.5〜約50グラム/10分、および一部の実施形態では約5〜約15グラム/10分のメルトフローレート(ドライベース)を持ちうる。ポリオレフィンは同様に、2160グラムの負荷でASTM D1238に従って測定された場合、溶融温度より少なくとも40°C高い温度(例えば、約230°C)で約0.5〜約80グラム/10分、一部の実施形態では約1〜約40グラム/10分、および一部の実施形態では約5〜約20グラム/10分のメルトフローレート(ドライベース)を持ちうる。
【0038】
C. マイクロ包含添加剤
必要ではないが、本発明の組成物は、マイクロ包含添加剤も用いうる。本明細書で使用される場合、「マイクロ包含添加剤」という用語は、ポリマーマトリクス内にマイクロスケールサイズの個別領域の形態で分散されることのできる任意の材料を一般的に指す。例えば、延伸前に、領域は約0.1μm〜約25μm、一部の実施形態では約0.5μm〜約20μm、および一部の実施形態では約1μm〜約10μmの平均断面寸法を持ちうる。使用された場合、変形および伸長ひずみ(例えば、延伸)を受ける時、マイクロスケールおよびナノスケール相領域はユニークな方法で相互作用して細孔のネットワークを作ることができることを本発明者らは発見した。すなわち、材料の不適合性から生じる応力集中の結果として、伸長ひずみは、マイクロスケールの個別相領域の近くに強い局所的せん断ゾーンおよび/または応力強度ゾーン(例えば、垂直応力)を開始することができる。これらのせん断および/または応力強度ゾーンは、マイクロスケール領域に隣接するポリオレフィンマトリクスにいくらかの初期剥離を生じる。しかし特に、ナノスケール個別相領域の近くに生成された局所的せん断および/または応力強度ゾーンはマイクロスケールゾーンと重複して、ポリマーマトリクスにさらなる剥離を起こし、それによって、ナノスケール領域および/またはマイクロスケール領域に隣接してかなりの数のナノ細孔を生成する。
【0039】
マイクロ包含添加剤の特定の性質は重要でなく、液体、半固体、または固体(例えば、非晶質、結晶または半結晶)を含みうる。特定の実施形態では、マイクロ包含添加剤は高分子の性質であり、比較的高い分子量を持ち、熱可塑性組成物の溶融強度および安定性の改善に役立つ。典型的には、マイクロ包含添加剤ポリマーは、一般的にマトリクスポリマーと不適合でありうる。このように、添加剤は、マトリクスポリエステルの連続相内に個別層領域として、より良く分散しうる。個別領域は、外部力から生じるエネルギーを吸収することができ、結果として生じる繊維の全体的靱性および強度を増加させる。領域は、楕円形、球形、円筒形、プレート状、管状などのさまざまな異なる形状を持ちうる。一つの実施形態では、領域は実質的に楕円の形状を持つ。個々の領域の物理的寸法は、一般的に、外部応力が加わった時、繊維を通した割れ目の伝播を最小化するためには十分小さいが、プラスチックの微小な変形を開始させ、粒子含有物およびその周りのせん断ゾーンを可能にするためには十分大きい。
【0040】
マイクロ包含添加剤は、個別領域および結果生じる細孔が適切に維持されることを確実にするために一定のメルトフローレート(または粘度)を持ちうる。例えば、添加剤のメルトフローレートが高すぎると、流れて、連続相を通して制御されないで分散する傾向がある。これは、維持が難しく、また時期尚早に砕ける可能性の高い層状のプレート様領域または共連続相構造を生じる。反対に、添加剤のメルトフローレートが低すぎると、凝集して非常に大きな楕円形領域を形成する傾向があり、これは混合中に分散させることが困難である。これは、連続相の全体を通して、添加剤の不均一な分布を生じうる。この点で、本発明者は、マトリクスポリマーのメルトフローレートに対するマイクロ包含添加剤のメルトフローレートの比は、一般的に約0.5〜約10、一部の実施形態では約1〜約8、および一部の実施形態では約2〜約6であることを発見した。例えば、マイクロ包含添加剤のメルトフローレートは、2160グラムの負荷およびその溶融温度より少なくとも40°C(例えば、210°C)で測定された場合、約5〜約200グラム/10分、一部の実施形態では約20〜約150グラム/10分、および一部の実施形態では約40〜約100グラム/10分でありうる。
【0041】
上述の特性に加えて、マイクロ包含化添加剤の機械的特性も、望ましい多孔質ネットワークを達成するために選択されうる。例えば、外部力とともに加えられる時、添加剤とマトリクスポリマーの弾性係数の差から生じる応力集中の結果として、応力集中(例えば、垂直またはせん断応力を含む)およびせん断および/またはプラスチック降伏域が、個別相領域およびその周りで開始されることがありうる。応力集中が大きいほど、領域でのより強い局所的プラスチックの流れを促進し、これによって、応力が伝えられた時、領域が大きく伸長することが可能になる。これらの伸長領域は、組成物がよりしなやかで柔軟な挙動を示すことを可能にする。応力集中を高めるために、マイクロ包含添加剤は、ポリオレフィンマトリクスと比べて比較的高いヤング弾性係数を持つように選択されうる。例えば、ポリオレフィンマトリクスの弾性係数に対する添加剤の弾性係数の比は、一般的に約1〜約250、一部の実施形態では約2〜約100、および一部の実施形態では約2〜約50である。マイクロ包含添加剤の弾性係数は、例えば、約200〜約3,500メガパスカル(MPa)、一部の実施形態では約300〜約2,000MPa、および一部の実施形態では約400〜約1,500MPaの範囲でありうる。対照的に、ポリオレフィンの弾性係数は、例えば、約100〜約1,500MPa、および一部の実施形態では約200〜1000MPaの範囲でありうる。代替的に、マイクロ包含添加剤の弾性係数はポリオレフィンマトリクスの弾性係数よりも低い場合がある。弾性係数は、例えば、約10MPa〜約100MPa、および随意に約20MPa〜約80MPaでありうる。
【0042】
上記で特定された特性を持つ幅広いさまざまなマイクロ包含添加剤を使用しうるが、このような添加剤の特に適切な例には、スチレン共重合体(例えば、スチレン−ブタジエン−スチレン、スチレン−イソプレン−スチレン、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンなど)、塩化ポリビニル(PVC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン (PCTFE)などのフッ素重合体、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリ乳酸(PLA)およびその共重合)、ポリグリコール酸、ポリアルキレンカーボネート(例えば、ポリエチレンカーボネート)、ポリ−3−ヒドロキシブチレート(PHB)、ポリ−3−ヒドロキシ吉草酸(PHV)、ポリ−3−ヒドロキシブチレート−コ−4−ヒドロキシブチレート、ポリ−3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシ吉草酸共重合体(PHBV)、ポリ−3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート、ポリ−3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシオクタノエート、ポリ−3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシデカノエート、ポリ−3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシオクタデカノエート、およびコハク酸ベースの脂肪族ポリマー(例えば、コハク酸ポリブチレン、コハク酸アジピン酸ポリブチレン、コハク酸ポリエチレンなど)などの脂肪族ポリエステル、脂肪族−芳香族共重合体(例えば、アジピン酸テレフタル酸ポリブチレン、アジピン酸テレフタル酸ポリエチレン、アジピン酸イソフタル酸ポリエチレン、アジピン酸イソフタル酸ポリブチレンなど)、芳香族ポリエステル(例えば、テレフタル酸ポリエチレン、ポリブチレンテレフタル酸など)などのポリエステルなどを含みうる。
【0043】
特に適切なのは、比較的高いガラス転移温度を持つほど、一般的に硬い性質であるマイクロ包含添加剤である。例えば、ガラス転移温度(「T」)は、約0°C以上、一部の実施形態では約5°C〜約100°C、一部の実施形態では約30°C〜約80°C、および一部の実施形態では約50°C〜約75°Cでありうる。ガラス転移温度は、ASTM E1640−09に従って、動的機械分析で決定されうる。
【0044】
一つの特に適切な硬質ポリエステルはポリ乳酸であり、これは、左旋性乳酸(「L−乳酸」)、右旋性乳酸(「D−乳酸」)、メソ乳酸、またはその混合物など、乳酸の任意のアイソマーのモノマー単位から一般的に由来しうる。モノマー単位も、L−ラクチド、D−ラクチド、メソ−ラクチド、またはその混合物を含む、乳酸の任意のアイソマーの無水物から形成されうる。このような乳酸の環状二量体および/またはラクチドも使用しうる。重縮合または開環重合など、既知の任意の重合方法を、乳酸の重合のために使用しうる。少量の鎖延長剤(例えば、ジイソシアン酸化合物、エポキシ化合物または酸無水物)も使用しうる。ポリ乳酸は、L−乳酸から由来するモノマー単位およびD−乳酸から由来するモノマー単位を含むものなど、ホモポリマーまたは共重合体でありうる。必須ではないが、L−乳酸から由来するモノマー単位およびD−乳酸から由来するモノマー単位のうち一つの含有率は、約85モル%以上、一部の実施形態では約90モル%以上、および一部の実施形態では約95モル%以上であることが好ましい。それぞれがL−乳酸から由来するモノマー単位とD−乳酸から由来するモノマー単位の間の異なる比率を持つ複数のポリ乳酸を、任意のパーセントで混合しうる。当然、ポリ乳酸は、その他のタイプのポリマー(例えば、ポリオレフィン、ポリエステルなど)と混合することもできる。
【0045】
一つの特定の実施形態では、ポリ乳酸は以下の一般的構造を持つ:
【0046】
【化2】
【0047】
本発明に使用されうる適切なポリ乳酸ポリマーの一つの具体例は、BIOMER(商標) L9000という名前でBiomer, Inc.(ドイツ、クレイリング)から市販されている。その他の適切なポリ乳酸ポリマーは、ミネソタ州ミネトンカのNatureworks LLC(NATUREWORKS(登録商標))または三井化学株式会社(LACEA(商標))から市販されている。また他の適切なポリ乳酸類は、米国特許第4,797,468号、第5,470,944号、第5,770,682号、第5,821,327号、第 5,880,254号、および第6,326,458号に記述されていることがあり、これらはすべての目的に対してその全体を参照により本書に組み込む。
【0048】
ポリ乳酸は、一般的に、約40,000〜約180,000グラム/モル、一部の実施形態では約50,000〜約160,000グラム/モル、および一部の実施形態では約80,000〜約120,000グラム/モルの範囲の数平均分子量(「M」)を持つ。同様に、ポリマーも、一般的に、約80,000〜約250,000グラム/モル、一部の実施形態では約100,000〜約200,000グラム/モル、および一部の実施形態では約110,000〜約160,000グラム/モルの範囲の重量平均分子量(「M」)を持つ。数平均分子量に対する重量平均分子量の比(「M/M」)、すなわち「多分散指数」も比較的低い。例えば、多分散指数は、一般的に約1.0〜3.0の範囲で、一部の実施形態では約1.1〜約2.0、および一部の実施形態では約1.2〜約1.8である。重量および数平均分子量は、当業者に知られている方法で決定されうる。
【0049】
一部のタイプの純のポリエステル(例えば、ポリ乳酸)は、開始ポリ乳酸の乾燥重量に基づいて約500〜600百万分率(「ppm」)またはそれ以上の水分含量を持つように、周囲環境から水を吸収することができる。水分含量は、下記のように、ASTM D 7191−05に従ってなど、当技術分野で知られているさまざまな方法で決定されうる。溶融処理中の水の存在は、ポリエステルを加水分解的に分解しその分子量を減少させる可能性があるので、混合前にポリエステルを乾燥させることが望ましいことがある。ほとんどの実施形態では、例えば、マイクロ包含添加剤を混合する前に、再生可能ポリエステルが、約300百万分率(「ppm」)以下、一部の実施形態では約200ppm以下、一部の実施形態では約1〜100ppmの水分含量を持つことが望ましい。ポリエステルの乾燥は、例えば、約50°C〜約100°C、一部の実施形態では約70°C〜約80°Cの温度で起こりうる。
【0050】
使用する材料に関わらず、熱可塑性組成物中のマイクロ包含添加剤の相対的パーセントは、結果得られる組成物に大きく影響することなく、望ましい特性を達成するように選択される。例えば、マイクロ包含添加剤は、一般的に、組成物に使用されるポリオレフィンマトリクスの重量に基づいて、熱可塑性組成物の約1重量%〜約30重量%、一部の実施形態では、約2重量%〜約25重量%、および一部の実施形態では約5重量%〜約20重量%の量で使用される。熱可塑性組成物全体のマイクロ包含添加剤の濃度は、同様に、約0.1重量%〜約30重量%、一部の実施形態では約0.5重量%〜約25重量%、および一部の実施形態では約1重量%〜約20重量%を占めうる。
【0051】
D. その他の成分
さまざまな異なる理由で、組成物には多種多様な原料を使用しうる。例えば、一つの特定の実施形態では、熱可塑性組成物に相間修飾剤を使用して、ナノ包含添加剤および/またはマイクロ包含添加剤とポリオレフィンマトリクスの間の摩擦および結合性の程度を減らすのを助け、それにより剥離の程度および均一性を向上させうる。このように、細孔は、組成物全体に渡って実質的に均一な様式で分配されうる。修飾剤は、比較的低い粘度を持ち、熱可塑性組成物により容易に組み込むことができ、ポリマー表面に簡単に移動できるよう、室温(例えば、25°C)で液体または半固体の形態でありうる。ポリオレフィンマトリクスと添加剤との間の界面での物理的力を減らすことによって、修飾剤の低粘度、疎水性の性質が剥離の促進を助けることができると考えられる。本書で使用されるとき、「疎水性」という用語は、一般的に、空気中の水の接触角が約40°以上、一部の場合は約60°以上の材料を指す。対照的に、「親水性」という用語は、一般的に、空気中の水の接触角が約40°未満の材料を指す。接触角の測定のための一つの適切な試験はASTM D5725−99(2008年)である。
【0052】
必要ではないが、界面修飾剤は、マイクロ包含添加剤が使用される実施形態およびナノ包含添加剤が固体(例えば、高分子材料)である実施形態で特に適切でありうる。適切な疎水性、低粘度界面修飾剤には、例えば、上記で参照された液体および/または半固体が含まれうる。一つの特に適切な界面修飾剤はポリエーテルポリオールであり、BASF Corp.からPLURIOL(登録商標) WIという商標名で市販されているものなどがある。別の適切な修飾剤は、部分的に再生可能なエステルであり、HallstarからHALLGREEN(登録商標) IMという名称で市販されているものなどがある。
【0053】
用いられる時、相間修飾剤は、連続相のポリオレフィンマトリクスの重量に基づいて、熱可塑性組成物の約0.1重量%〜約20重量%、一部の実施形態では、約0.5重量%〜約15重量%、および一部の実施形態では約1重量%〜約10重量%の量を占めうる。熱可塑性組成物全体の相間修飾剤の濃度も、同様に、約0.05重量%〜約20重量%、一部の実施形態では約0.1重量%〜約15重量%、および一部の実施形態では約0.5重量%〜約10重量%を占めうる。上述の量では、相間修飾剤は、熱可塑性組成物の全体的溶解特性を妨げることなく、ポリマーの界面に容易に移動し、剥離を促進することを可能にする特徴を持つ。例えば、熱可塑性組成物のメルトフローレートも、ポリオレフィンマトリクスのメルトフローレートと同様でありうる。例えば、組成物のメルトフローレート(ドライベース)は、2160グラムの負荷および190°CでASTM D1238に従って測定された場合、約0.1〜約250グラム/10分、一部の実施形態では約0.5〜約200グラム/10分、および一部の実施形態では約5〜約150グラム/10分でありうる。
【0054】
界面接着を改善し、領域とマトリクスの間の界面張力を減らして、それによって混合中のより小さな領域の形成を可能にする相溶化剤も用いうる。適切な相溶化剤の例には、例えば、エポキシまたは無水マレイン酸化学部分で官能基化された共重合体が含まれる。無水マレイン酸相溶化剤の例は、ポリプロピレン−グラフト化−無水マレイン酸で、これはOrevac(商標)18750およびOrevac(商標)CA 100の商標でArkemaから市販されている。用いられる時、相溶化剤は、連続相マトリクスの重量に基づいて、熱可塑性組成物の約0.05重量%〜約10重量%、一部の実施形態では、約0.1重量%〜約8重量%、および一部の実施形態では約0.5重量%〜約5重量%の量を占めうる。
【0055】
熱可塑性組成物に使用されうるその他の適切な材料には、触媒、抗酸化剤、安定剤、界面活性剤、ワックス、固体溶剤、核形成剤、微粒子、ナノフィラールシウム、ならびに熱可塑性組成物の処理可能性および機械的特性を高めるために追加されるその他の材料が含まれうる。いずれにしても、本発明の一つの有益な側面は、発泡剤(例えば、クロロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、炭化水素、二酸化炭素、超臨界二酸化炭素、窒素など)および細孔開始フィラー(例えば、炭酸カルシウム)。実際、熱可塑性組成物は、一般的に発泡剤および/または細孔開始フィラーを含まない場合がある。例えば、このような発泡剤および/またはフィラーは、熱可塑性組成物の約1重量%以下、一部の実施形態では約0.5重量%以下、および一部の実施形態では約0.001重量%〜約0.2重量%の量で存在しうる。さらに、以下で詳述されるその応力白化特性のために、結果として生じる組成物は、二酸化チタンなどの従来的色素を必要とすることなく、不透明色(例えば、白色)を達成しうる。特定の実施形態では、例えば、色素は、熱可塑性組成物の約1重量%以下、一部の実施形態では約0.5重量%以下、および一部の実施形態では約0.001重量%〜約0.2重量%の量で存在しうる。
【0056】
II. 混合
熱可塑性組成物を形成するために、成分は典型的には、さまざまな既知の技術のいずれかを使用して混合される。一つの実施形態では、例えば、組成物は別々に、または組み合わせて供給されうる。例えば、組成物は、まず乾燥混合されて基本的に均一な乾燥混合物を形成し、同様に、分散的に材料を混合する溶融処理装置に同時または順番に供給されうる。バッチおよび/または連続溶融処理技術を用いうる。例えば、ミキサー/混練機、バンバリーミキサー、ファレル連続ミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、ロールミルなどを使用して、材料を混合し溶融処理しうる。特に適切な溶融処理装置は、共回転、二軸スクリュー押出機(例えば、Werner & Pfleiderer Corporation(ニュージャージー州、ラムジー)から入手可能なZSK−30押出機またはThermo Electron Corp.(イギリス、ストーン)から入手可能なThermo Prism(商標) USALAB 16押出機でありうる。このような押出機は、供給ポートおよび換気ポートを含み、強力な分配・分散混合をもたらす。例えば、成分は二軸スクリュー押出機の同じまたは異なる供給ポートに供給され溶融混合されて、実質的に均一な溶融混合物を形成しうる。必要に応じて、その他の添加剤も、ポリマー溶解物に注入および/または押出機の長さに沿った異なる点で押出機に別々に供給されうる。
【0057】
選択される特定の処理技術に関わらず、結果得られる溶融混合された組成物は一般的に、ナノ包含添加剤のナノスケール領域およびマイクロ包含添加剤のマイクロスケール領域を含む。せん断/圧力および熱の程度は、十分な分散を確実にするが、望ましい特性を達成できないほど領域のサイズを不利に減少させないように制御されうる。例えば、混合は一般的に、約180°C〜約300°C、一部の実施形態では約185°C〜約250°C、および一部の実施形態では約190°C〜約240°Cの温度で起こる。同様に、溶融処理中の見かけのせん断速度は、約10秒−1〜約3000秒−1、一部の実施形態では約50秒−1〜約2000秒−1、および一部の実施形態では約100秒−1〜約1200秒−1の範囲でありうる。見かけのせん断速度は、4Q/πRと等しい場合があり、ここでQはポリマー溶融物の体積流量(「m/秒」)であり、Rは溶融ポリマーの流れが通るキャピラリー(例えは、押出機金型)の半径(「m」)である。もちろん、押出し量に反比例する溶融処理中の滞留時間など、その他の変数も、均一の望ましい程度を達成するために制御されうる。
【0058】
望ましいせん断条件(例えば、速度、滞留時間、せん断速度、溶融処理温度など)を達成するために、押出機スクリュー速度を、特定の範囲に選択しうる。一般的に、システムへの追加的な機械エネルギーの投入のために、スクリュー速度の増加と共に、製品温度の上昇が見られる。例えば、スクリュー速度は、約50〜約600回転/分(「rpm」)、一部の実施形態では約70〜500rpm、および一部の実施形態では約100〜約300rpmの範囲であることがありうる。これは、結果として生じる領域のサイズに悪影響を与えることなく、ナノ包含添加剤を分散するために十分高い温度をもたらしうる。溶融せん断速度、および同様に添加剤が分散される程度も、押出機の混合セクション内での一つ以上の分配および/または分散混合成分の使用を通して増加させうる。単軸スクリュー押出機のための適切な分配ミキサーには、例えば、Saxon、Dulmage、Cavity Transferミキサーなどが含まれうる。同様に、適切な分散混合機にはBlisterリング、Leroy/Maddock、CRD混合機などが含まれうる。当技術分野でよく知られているように、Buss Kneader押出機、Cavity Transferミキサー、およびVortex Intermeshing Pin(VIP)ミキサーで使用されるものなど、混合は、ポリマー溶融物の折り畳みおよび再配列を生成するバレルのピンの使用によって、さらに改善されうる。
【0059】
III. 繊維の形成
本書で使用される場合、「繊維」という用語は、金型などの成形口を通してポリマーを通過させることによって形成される細長い押出し物を一般的に指す。特に断りのない限り、「繊維」という用語は、明確な長さを持つ不連続繊維および実質的に連続するフィラメントの両方を含む。例えば、実質的にフィラメントは、長さと直径の比(「アスペクト比」)が約15,000対1よりも大きく、一部の場合は約50,000対1よりも大きいなど、直径よりもはるかに大きな長さを持ちうる。
【0060】
熱可塑性組成物から形成された繊維は、一般的に、単一成分および多成分(例えば、シース・コア構成、横並び構成、分割されたパイの構成、海中の島の構成など)を含む、任意の望ましい構成を持ちうる。米国特許第6,642,429号(Carterら)に記述されているものなど、中空繊維(単一成分および/または複数成分)も使用しうる。一部の実施形態では、繊維は、強度、処理可能性および/またはその他の特性をさらに高めるために、成分(例えば、2成分)または構成成分(例えば、2構成成分)として一つ以上の追加的ポリマーを含みうる。例えば、熱可塑性組成物は、シース/コア複合繊維のコア成分を形成する一方、追加的ポリマーはシース成分を形成するか、またはその反対でありうる。追加的ポリマーは、ポリエステル(例えば、ポリ乳酸、テレフタル酸ポリエチレンなど)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンなど)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル−酢酸、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂(例えば、ポリアクリル酸塩、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチルなど)、ポリアミド(例えば、ナイロン)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、およびポリウレタンなど、望ましい任意のポリマーでありうる。
【0061】
さまざまなプロセスのいずれも、本発明による繊維を形成するために使用されうる。例えば、上述の熱可塑性組成物は、紡糸口金を通して押出されて冷却されうる。例えば図1を参照すると、繊維形成方法の一つの実施形態がより詳細に示されている。この特定の実施形態では、本発明の熱可塑性組成物は、ホッパー14から押出機12に供給されうる。混合物は、任意の従来技術を使用してホッパー14に提供されうる。押出機12は、溶融ポリマーを押し出すのに十分な温度に加熱されうる。押出された組成物は、次にポリマー導管16を通って紡糸口金18へと進む。例えば、紡糸口金18は、互いに重ねられた複数のプレートを持ち、ポリマー成分を方向付けるための流れ経路を作るように配置された開口部のパターンを持つスピンパックを含むハウジングを含みうる。紡糸口金18も、一つ以上の列に配置された開口部を持つ。開口部は、ポリマーがそれを通って押し出される時、フィラメントの下向きの押出しカーテンを形成する。プロセス10は、紡糸口金18から延長する繊維のカーテンに隣接して位置付けられる冷却送風機20も用いる。冷却空気送風機20からの空気は、紡糸口金18から延長している繊維を冷却する。冷却空気は、図1に示されるように繊維カーテンの片側から、または繊維カーテンの両側から方向付けられうる。
【0062】
望ましい長さの繊維を形成するには、冷却された繊維は一般的に、例えば図1に示される繊維延伸ユニット22を使用して、溶融延伸される。溶融紡糸ポリマーで使用される繊維延伸ユニットまたは吸引器は、当技術分野ではよく知られている。本発明のプロセスに使用するのに適切な繊維延伸ユニットには、米国特許第3,802,817号および第3,423,255号に示されるタイプの直線繊維吸引器が含まれる。繊維延伸ユニット22は一般的に細長い垂直経路を含み、これを通って繊維は、経路の側部から入り、経路を通って下向きに流れる吸引空気によって引き出される。ヒーターまたは送風機24は、繊維延伸ユニット22に吸引空気を提供する。吸引空気は、繊維延伸ユニット22を通して繊維および周囲空気を溶融延伸する。ガスの流れは、繊維の溶融延伸または減衰を起こし、これは繊維を形成するポリマーの分子配向または結晶度を増加させる。繊維延伸ユニットを使用する場合、望ましい繊維長を達成するのを助けるために「ドローダウン」比を選択しうる。「ドロー−ダウン」比は、延伸後の繊維の線速度である(例えば、ゴデットロール42または小孔表面(非表示)の直線速度を押出し後の繊維の線速度で割ったもの)。例えば、溶融延伸中のドローダウン比は以下のように計算されうる:
【0063】
【数1】
【0064】
ここで、
Aは、溶融延伸後の繊維の線速度(例えば、ゴデット速度)であり直接測定され、
Bは、押し出された繊維の線速度であり以下のように計算できる:
【0065】
【数2】
【0066】
ここで、
Cは、一つの穴を通した押出し(グラム/分)であり、
Dはポリマーの溶融密度(グラム/立方センチメートル)であり、
Eは、繊維がそれを通して押し出される穴の直径(センチメートル)である。特定の実施形態では、ドローダウン比は約20:1〜約4000:1、一部の実施形態では、約25:1〜約2000:1、一部の辞し形態では約50:1〜約1000:1、および一部の実施形態では約75:1〜約800:1でありうる。
【0067】
一旦形成されると、繊維は、繊維延伸ユニット22の出口開口部を通ってゴデットロール42上に堆積されうる。必要に応じて、当業者には理解されるように、ゴデットロール42上に集められた繊維は、追加的インライン処理および/または変換ステップ(非表示)を随意に施しうる。例えば、繊維は集められてその後、けん縮、組織化、および/または約3〜約80ミリメートル、一部の実施形態では約4〜約65ミリメートル、および一部の実施形態では約5〜約50ミリメートルの範囲の平均繊維長に切断されうる。次に、ボンデッドカーデッドウェブ、通気接着ボンデッドウェブなど、当技術分野で知られている不織布ウェブにステープル繊維が組み込まれうる。繊維は、小孔表面上に堆積されて、下記にさらに詳細に記述されるものなどの不織布ウェブも形成しうる。
【0068】
形成される特定の方法に関わらず、組成物を縦方向(例えば、流れ方向)、横方向(例えば、幅方向)など、およびそれらの組み合わせに延伸して、多孔質ネットワークを形成しうる。必要に応じて、組成物は繊維へと形成される時に一直線に延伸されうる。代替的に、組成物は、繊維へと形成された後、任意の選択的材料に積層される前および/または後に、固体状態で延伸されうる。「固体状態」延伸により、組成物は、ポリオレフィンマトリクスポリマーの溶融温度より低い温度に保たれることが一般的に意図されている。とりわけ、これは、多孔質ネットワークが不安定になる程度までポリマー鎖が変えられないことを確実にするのに役に立つ。例えば、組成物は、約−50°C〜約150°C、一部の実施形態では約−40°C〜約140°C、一部の実施形態では約−20°C〜約100°C、および一部の実施形態では約0°C〜約50°Cの温度で延伸されうる。特定の場合、延伸温度は随意に、最も高いガラス転移温度を持つ構成要素(例えば、マイクロ包含添加剤)のガラス転移温度よりも少なくとも約10°C、一部の実施形態では少なくとも約20°C、および一部の実施形態では少なくとも約30°C低い場合がある。このような実施形態では、組成物は約0°C〜約50°C、一部の実施形態では約15°C〜約40°C、および一部の実施形態では約20°C〜約30°Cの温度で延伸されうる。
【0069】
繊維の延伸は、一つ以上の段階で起こりうる。一つの実施形態では、例えば、延伸は、別の処理のためにそれを取り出す必要なく、インラインで完了される。例えば図1では、繊維は繊維延伸ユニット22によって初めに溶融延伸され、ニップ(非表示)に移送されてマトリクスポリマーが溶融温度以下に冷却され、その後繊維はゴデットロール42上に堆積される前に追加的延伸ステップを受ける。しかしその他の場合、繊維は、繊維形成機械から取り出されて、追加的延伸ステップを受ける。いずれにしても、吸引(例えば、繊維延伸ユニット)、引張フレーム延伸、二軸延伸、複数軸延伸、プロファイル延伸、真空延伸など、さまざまな延伸技術を用いうる。組成物は典型的には、約1.1〜約3.5、一部の実施形態では約1.2〜約3.0、および一部の実施形態では約1.3〜約2.5の延伸比まで固体状態に(例:流れ方向に)延伸される。固体状態の「延伸比」は、延伸繊維の長さを延伸前のその長さで割ることによって決定されうる。延伸率も、望ましい特性の達成を助けるために、例えば約5%〜1500%/変形分、一部の実施形態では約20%〜約1000%/変形分、および一部の実施形態では約25%〜約850%/変形分の範囲内で変化しうる。組成物は一般的には外部熱(例えば、加熱ロール)の適用なしに延伸されるが、このような熱を随意に用いて、処理可能性を改善し、延伸力を低下させ、延伸速度を増加させ、繊維の均一性を改善しうる。
【0070】
上述の方法での延伸は、約800ナノメートル以下、一部の実施形態では、約5〜約700ナノメートル、および一部の実施形態では約10〜約500ナノメートルの平均断面寸法など、「ナノスケール」寸法を持つ細孔(「ナノ細孔」)の形成をもたらしうる。ナノ細孔は、約100〜約5000ナノメートル、一部の実施形態では約50〜約2000ナノメートル、および一部の実施形態では約約100〜1000ナノメートルの平均軸方向寸法(例えば、長さ)も持ちうる。約0.2マイクロメートル以上、一部の実施形態では約0.5マイクロメートル以上、および一部の実施形態では約0.5マイクロメートル〜約5マイクロメートルの平均断面寸法を持つマイクロ細孔も、延伸中に形成されうる。特定の場合、アスペクト比(断面寸法に対する軸寸法の比)が約1〜約30、一部の実施形態では約1.1〜約15、および一部の実施形態では約1.2〜約5であるように、マイクロ細孔および/またはナノ細孔の軸方向寸法は断面寸法よりも大きい場合がある。例えば、マイクロ細孔の軸方向寸法は、1マイクロメートル以上、一部の実施形態では約1.5マイクロメートル以上、および一部の実施形態では約2〜約30マイクロメートルでありうる。
【0071】
特定のサイズに関わらず、本発明者は、細孔(例えば、ナノ細孔、マイクロ細孔、または両方)は組成物全体に渡って実質的に均一な様式で分配されうることを発見した。例えば、細孔は、応力が加えられる方向に対して概して垂直方向に方向付けられたカラム中に分配されうる。これらのカラムは、組成物の幅を横切って互いに概して平行でありうる。理論に束縛されることを意図するものではないが、このような均一に分配された多孔質ネットワークは、良好な機械的特性(例えば、荷重下のエネルギー散逸および衝撃強度)をもたらすことができると考えられている。これは、発泡剤の使用を伴い、制御されていない孔分布および機械的特性の低下を生じる傾向のある、細孔形成の従来的技術とは全く対照的である。
【0072】
多孔質ネットワークの形成に加えて、延伸は、特定の個別領域の軸方向寸法も大幅に増加させて、一般的に直線的で細長い形状を持つようにしうる。例えば、細長いマイクロスケール領域は、延伸前の領域の軸方向寸法よりも約10%以上、一部の実施形態では約20%〜約500%、および一部の実施形態では約50%〜約250%大きな軸方向寸法を持ちうる。延伸後の軸方向寸法(例えば、長さ)は、例えば、約1 μm〜400 μm、一部の実施形態では約5 μm〜約200 μm、および一部の実施形態では約10 μm〜約150 μmの範囲でありうる。マイクロスケール領域は比較的薄いこともあり、従って、約0.02〜約20マイクロメートル、一部の実施形態では約0.1〜約10マイクロメートル、および一部の実施形態では0.4〜約5マイクロメートルなど、小さな断面寸法を持ちうる。これは、約2〜約150、一部の実施形態では約3〜100、および一部の実施形態では約4〜約50の領域のアスペクト比(軸方向寸法に垂直な寸法に対する軸方向寸法の比)をもたらしうる。その小さなサイズのために、ナノスケール領域は典型的には、マイクロスケール領域と同じようには細長くない。例えば、ナノスケール領域は、約1〜約1000ナノメートル、一部の実施形態では約5〜約800ナノメートル、一部の実施形態では約10〜約500ナノメートル、および一部の実施形態では約20〜約200ナノメートルの平均軸方向寸法(例えば、長さ)を保持しうる。
【0073】
固体状態延伸は、非ネック領域の間に配置された繊維の縦軸に沿って、一つ以上の局在的なネック領域も生成しうる。ネック繊維は、その縦軸に沿って不均一な断面直径も持つことがあり、これは表面積の増加など、さまざまな異なる利益を提供しうる。ネック領域の数は、一般的に変化し、選択された伸張比に基づいて制御されうる。しかし一般的に、ネック領域の数は、約1〜約400個/センチメートル、一部の実施形態では約2〜約200個/センチメートル、および一部の実施形態では約5〜約50個/センチメートルの範囲でありうる。ネック領域の数は、以下の方程式から決定されうる:
【0074】
【数3】
【0075】
ここで、Nはネック領域の数、Lはネック領域の平均長さ、Lは非ネック領域の平均長さ(ネック領域から非ネック領域への移行を含む)である。
【0076】
本発明によって達成される非常に低い密度であっても、結果として生じる繊維は脆くなく、そのためひずみが加えられた時に砕けずに変形できる。このため、繊維がかなりの伸長を示した後でも、繊維は耐荷重部材として引き続き機能しうる。この点で、本発明の繊維は、「最大伸長特性」すなわち、最大負荷での繊維の伸長パーセントの改善を示すことができる。例えば、本発明の繊維は、ASTM D638−10に従って23°Cで測定された時、約50%以上、一部の実施形態では約100%以上、一部の実施形態では約200%〜約1500%、および一部の実施形態では約400%〜約800%の最大伸長を呈しうる。このような伸長は、例えば、約0.1〜約50マイクロメートル、一部の実施形態では約1〜約40マイクロメートル、一部の実施形態では約2〜約25マイクロメートル、および一部の実施形態では約5〜約15マイクロメートルの範囲のものなど、幅広い平均直径を持つ繊維に対して達成しうる。
【0077】
ひずみ下で延長できる能力を持つ一方、本発明の繊維は比較的強いままでいることができる。例えば、繊維は、ASTM D638−10に従って23°Cで測定された時、約25〜約600メガパスカル(「MPa」)、一部の実施形態では約50〜450MPa、および一部の実施形態では約60〜350MPaの最大引張応力を呈しうる。本発明の繊維の相対的強度の指標となる別のパラメータは「引張り強さ」であり、これは単位線密度あたりの力で表した繊維の引張強度を示す。例えば、本発明の繊維は、約0.75〜約7.0グラム−力(「g」)/デニール、一部の実施形態では約1.0〜約6.0g/デニール、および一部の実施形態では約1.5〜約5.0g/デニールの引張り強さを持ちうる。繊維のデニールは、望まれる用途によって変化しうる。一般的に、繊維は、約15未満、一部の実施形態では約12未満、および一部の実施形態では約0.5〜約6のフィラメントあたりのデニールを持つように形成される(すなわち、線密度の単位は、繊維の9000メートルあたりのグラム質量に等しい)。
【0078】
望ましい場合、結果得られる繊維は、織布、編布、不織布ウェブなど、繊維状材料にも組み込まれうる。例えば、(随意に真空の助けを借りて)形成表面に繊維を無作為に堆積させた後、任意の既知技術を使用して結果として乗じるウェブを接着させることによって、繊維を不織布ウェブに形成しうる。不織布ウェブは、繊維を延伸する前または後に形成しうる。特定の実施形態では、例えば、複数の繊維からの不織布ウェブを形成し、その後に、多孔質ネットワークを形成するのに望ましい程度まで不織布ウェブを引き伸ばすことによって繊維を延伸することが望ましい場合がある。代替的な実施形態では、ウェブが形成される前に、繊維を望ましい程度まで延伸する繊維吸引ユニットの下に、無限の形成表面を単に位置付けうる。
【0079】
一旦形成されると、不織布ウェブは、次に接着剤で、または自発的に(例えば、外部接着剤を適用しない繊維の融合および/または自己接着)など、従来技術を使用して接着されうる。例えば、自己接着は、繊維が半溶融または粘着性の間に繊維を接触させることにより、または粘着付与樹脂および/または溶剤と繊維を形成するために使用されるポリマーを単に混合することによって達成されうる。適切な自己接着技術には、超音波接着、熱接着、通気接着、カレンダー接着などが含まれうる。例えば、ウェブは、ウェブが加熱された滑らかなアンビルロールと加熱されたパターンロールの間を通過する熱機械的プロセスによってさらに接着またはパターンでエンボス加工されうる。パターンロールは、ノゾマシウェブ特性または外観を提供する任意の隆起パターンを持ちうる。望ましくは、パターンロールは、ロールの総面積の約2%〜30%の接着面積を定義する複数の接着場所を定義する隆起パターンを定義する。模範的接着パターンには、例えば、Hansenらの米国特許第3,855,046号、Levyらの米国特許第5,620,779号、Haynesらの米国特許第5,962,112号、Sayovitzらの米国特許第6,093,665号、並びにRomanoらの米国意匠特許第428,267号、Brownの第390,708号、Zanderらの第418,305号、Zanderらの第384,508号、Zanderらの第384,819号、Zanderらの第358,035号、およびBlenkeらの第315,990号に記述されたものが含まれる。ロール間の圧力は、約5〜約2000ポンド/線インチでありうる。ロールの間の圧力およびロールの温度は、布様の特性を維持しながら望ましいウェブ特性または外観を得るためにバランスが取られる。当業者にはよく知られているように、必要とされる温度および圧力は、パターン接着面積、パリマー特性、繊維特性および不織布特性を含むがこれに限定されない多くの要因によって変化しうる。
【0080】
スパンボンドウェブに加えて、メルトブローンウェブ、ボンデッドカーデッドウェブ、湿式ウェブ、エアレイドウェブ、コフォームウェブ、水圧交絡ウェブなど、その他のさまざまな不織布ウェブも、本発明による熱可塑性組成物から形成されうる。例えば、熱可塑性組成物は、直径を小さくするために複数の細いダイキャピラリーを通して繊維を減衰させる、収束する高速ガス(例えば、空気)流に押し出されうる。その後、メルトブローン繊維は高速ガス流によって運ばれ、回収表面上に堆積されて無作為に分散されたメルトブローン繊維のウェブまたは布を形成する。代替的に、ポリマーは、熱可塑性組成物から形成される繊維の俵を、繊維を分離するピッカーに入れることによってカーデッドウェブに形成されうる。次に、繊維は、流れ方向に配向された繊維不織布ウェブを形成するように、繊維をさらにバラバラにして縦方向に整列させる、組み合わせまたはカードユニットに通される。一旦形成されると、不織布ウェブは、一つ以上の既知の接着技術によって一般的に安定化される。
【0081】
必要に応じて、不織布ウェブは、熱可塑性組成物およびその他のタイプの繊維(例えば、ステープル繊維、フィラメントなど)の組み合わせを含む複合材料でもありうる。例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンなど)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレートなど)、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル−酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂(例えば、ポリアクリル酸塩、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチルなど)、ポリアミド(例えば、ナイロン)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、およびポリウレタン、ポリ乳酸などから形成されるものなどの、追加的合成繊維も使用されうる。望ましい場合、再生可能ポリマーも使用しうる。既知の合成繊維の一部の例には、T−255およびT−256という名前でKoSa Inc.(ノースカロライナ州シャーロット)から市販されているシース・コア2成分複合繊維を含むが、これらは両方とも、低温溶融コポリエステルシースを持つポリオレフィンシースまたはT−254を使用する。使用されうるさらに他の既知の2成分複合繊維には、チッソ株式会社(日本、守山市)またはFibervisions LLC(デラウェア州ウィルミントン)から市販されているものが含まれる。Far Eastern Textile, Ltd.(台湾)から市販されているものなどの、ポリ乳酸ステープル繊維も使用されうる。
【0082】
複合材料は、高平均繊維長パルプ、低平均繊維長パルプ、またはその混合物などの、パルプ繊維も含みうる。高平均長毛羽立ちパルプ繊維の一例には、針葉樹クラフトパルプ繊維が含まれる。針葉樹クラフトパルプ繊維は、針葉樹から由来し、レッドウッド、エンピツビャクシ、アメリカツガ、ダグラスファー、松(例えば、南部松)、トウヒ(例えば、クロトウヒ)、竹、その組合せなどを含む、北部、西部、および南部針葉樹種を含むがこれに限定されないパルプ繊維を含む。北部針葉樹クラフトパルプ繊維を、本発明に使用しうる。本発明に使用するために適切な市販されている南部針葉樹クラフトパルプ繊維の例には、「NF−405」という商標でWeyerhaeuser Company(ワシントン州フェデラルウェイ)から市販されているものが含まれる。本発明の使用に適した別のパルプは、CoosAbsorb Sパルプという商標でBowater Corp.(サウスカロライナ州グリーンビル)から入手可能な、針葉樹繊維を主に含むさらし硫酸塩木材パルプである。低平均長繊維も本発明で使用されうる。適切な低平均長パルプ繊維の例は、広葉樹クラフトパルプ繊維である。広葉樹クラフトパルプ繊維は、落葉樹から由来し、ユーカリ、カエデ、カバノキ、アスペンなどであるがこれに限定されないパルプ繊維を含む。ユーカリクラフトパルプは、柔らかさを増加させ、輝きを増強し、不透明性を増し、シートの細孔構造を変化させてそのウィッキング能力を増加させるために特に望ましい場合がある。竹または綿繊維も使用されうる。
【0083】
不織布複合材料は、さまざまな既知の技術を使用して形成されうる。例えば、不織布複合材料は、熱可塑性組成物の安定化基質および吸収材料の混合物を含む「コフォーム材料」でありうる。一例として、コフォーム材料は、形成中にそれを通して吸収材料が追加されるシュートの近くに、少なくとも一つのメルトブローン金型ヘッドが配置されるプロセスによって作られうる。このような吸収材料には、パルプ繊維、超吸収粒子、無機および/または有機吸収材料、処理済み高分子ステープル繊維などを含みうるがこれに限定されない。吸収材料の相対的パーセントは、不織布複合材料の望ましい特徴によって大きく変化しうる。例えば、不織布複合材料は、熱可塑性組成物繊維の約1重量%〜約60重量%、一部の実施形態では約5重量%〜約50重量%、および一部の実施形態では約10重量%〜約40重量%を含みうる。同様に不織布複合材料は、約40重量%〜約99重量%、一部の実施形態では50重量%〜約95重量%、および一部の実施形態では約60重量%〜約90重量%の吸収材料を含みうる。このようなコフォーム材料の一部の例は、Andersonらの米国特許第4,100,324号、Everhartらの第5,284,703号、およびGeorgerらの第5,350,624号に記述されている。
【0084】
不織布ラミネートも本発明で形成でき、ここでは一つ以上の層が熱可塑性組成物から形成される。例えば、一層の不織布ウェブは、熱可塑性組成物を含むスパンボンドでありうる一方、別の層の不織布ウェブは、熱可塑性組成物、その他の再生可能ポリマー、および/またはその他の任意のポリマー(例えば、ポリオレフィン)を含む。一つの実施形態では、不織布ラミネートは、二つのスパンボンド層の間に位置付けられてスパンボンド/メルトブローン/スパンボンド(「SMS」)ラミネートを形成するメルトブローン層を含む。必要な場合、スパンボンド層は、熱可塑性組成物から形成されうる。メルトブローン層は、熱可塑性組成物、その他の再生可能ポリマー、および/またはその他の任意のポリマー(例えば、ポリオレフィン)から形成されうる。SMSラミネートを形成するためのさまざまな技術が、Brockらの米国特許第4,041,203号、Timmonsらの第5,213,881号、Timmonsらの第5,464,688号、Bornslaegerの第4,374,888号、Collierらの第5,169,706号、およびBrockらの第4,766,029号、並びにFittingらの米国特許出願公開第2004/0002273号に記述されている。当然、不織布ラミネートは、その他の構成を持ち、スパンボンド/メルトブローン/メルトブローン/スパンボンドラミネート(「SMMS」)、スパンボンド/メルトブローンラミネート(「SM」)など、任意の望ましい数のメルトブローンおよびスパンボンド層を持ちうる。不織布ラミネートの基本重量は、望ましい用途に対して合わせることができるが、一般的に、約10〜約300グラム/平方メートル(「gsm」)、一部の実施形態では約25〜約200gsm、および一部の実施形態では約40〜約150gsmの範囲である。
【0085】
必要に応じて、繊維、不織布ウェブなども、望ましい形状を保つことを確実にするのを助けるために焼きなましうる。焼きなましは、約40°C〜約120°C、一部の実施形態では約50°C〜約110°C、および一部の実施形態では約80°C〜約100°Cの温度で一般的に起こる。繊維は、その特性を改善するために、さまざまな既知の技術のいずれかを使用して表面処理もされうる。例えば、高エネルギービーム(例えば、プラズマ、X線、電子ビームなど)を 使用して、繊維上に形成する任意の皮膚層を除去または低減したり、表面極性を変化させたり、表面層を砕けやすくするなどしうる。望ましい場合、このような表面処理は、ウェブ形成の前および/または後、ならびに繊維の低温延伸の前および/または後に使用されうる。
【0086】
密度の低下に加えて、ナノ細孔構造は、本発明のポリオレフィン繊維を含む繊維状材料にさまざまに異なる追加的利益も提供しうる。例えば、このようなナノ細孔構造は、材料を通した流体の流れを制限するのを助け、流体(例えば、液体の水)に対して一般的に不透過性である可能性があり、それによって繊維状材料は水の貫通から表面を防護できる。この点で、繊維状材料は、ATTCC 127−2008に従って決定される時、約50センチメートル(「cm」)以上、一部の実施形態では約100cm以上、一部の実施形態では約150cm以上、および一部の実施形態では約200cm〜約1000cmの比較的高い水頭値を持ちうる。その他の有益な特性も達成されうる。例えば、結果得られる繊維状材料は、水蒸気に対して一般的に透過性でありうる。繊維状材料の水蒸気に対する透過性は、その比較的高い水蒸気透過速度(「WVTR」)によって特徴付けられる場合があるが、これはグラム/平方メートル/24時間(g/m/24時間)の単位で測定された時、材料を通して水蒸気が透過する速度である。例えば、繊維状材料は、ASTM E96/96M−12、手順BまたはINDA試験手順IST−70.4(01)などで決定された時、約300 g/m−24時間以上、一部の実施形態では約500 g/m−24時間以上、一部の実施形態では約1,000 g/m−24以上、および一部の実施形態では約3,000〜約15,000 g/m−24時間のWVTRを示しうる。
【0087】
繊維状材料は、約0.40ワット/メートル−ケルビン(「W/m−K])以下、一部の実施形態では約0.20W/m−K以下、一部の実施形態では約0.15W/m−K以下、一部の実施形態では約0.01〜0.12W/m−K、および一部の実施形態では約0.02〜約0.10W/m−Kなど、比較的低い熱伝導率を示す熱バリアとしての役割も果たすことができる。特に、材料は、比較的薄い厚さでこのように低い熱伝導率値を達成でき、物品中でそれが占める空間を減少させることができる。このため、繊維状材料は、比較的低い「熱特性」も示しうるが、これは材料の熱伝導率をその厚さで割ったものに等しく、ワット/平方メートル−ケルビン(「W/mK」)の単位で提供される。例えば、材料は、約1000W/mK以下、一部の実施形態では約10〜約800W/mK、一部の実施形態では約20〜約500W/mK、および一部の実施形態では約約40〜200W/mKの熱特性を示しうる。繊維の実際の厚さは、その特定の形状に依存しうるが、典型的には、約5マイクロメートル〜約100ミリメートル、一部の実施形態では約10マイクロメートル〜約50ミリメートル、一部の実施形態では約200マイクロメートル〜約25ミリメートルの範囲である。
【0088】
IV. 物品
そのユニークで有益な特性のために、本発明の結果得られるポリオレフィン繊維は、吸収性物品、包装フィルム、バリアフィルム、医療製品(例えば、ガウン、外科用ドレープ、フェイスマスク、ヘッドカバー、手術帽、靴カバー、滅菌ラップ、保温毛布、加熱パッドなど)など、さまざまに異なるタイプの物品での使用に非常に適している。例えば、ポリオレフィン繊維は、水またはその他の流体を吸収できる「吸収性物品」に組み込まれうる。一部の吸収物品の例には、おむつ、トレーニングパンツ、吸収性下着、失禁物品、女性用衛生用品(例えば、生理用ナプキン)、水着、おしり拭き、ミットワイプなどのパーソナルケア吸収物品、衣類、穿孔材料、アンダーパッド、ベッドパッド、包帯、吸収性ドレープ、および医療用ワイプなどの医療用吸収性物品、食品サービスタオル、衣料物品、パウチなどを含むがこれに限定されない。このような物品の形成に適した材料およびプロセスは、当業者にはよく知られている。例えば吸収性物品は、一般的に、実質的に液体透過性の層(例えば、外側カバー)、液体透過性層(例えば、体側のライナー、サージ層など)、および吸収性コアを含む。一つの実施形態では、例えば、ポリオレフィン繊維は繊維状材料(例えば、不織布ウェブ)の形態の場合があり、吸収性物品の外側カバーを形成するために使用されうる。必要に応じて、不織布ウェブは、蒸気透過性または蒸気不透過性の液体不透過性フィルムへと積層されうる。同様にポリオレフィン繊維は、蒸気透過性または蒸気不透過性のいずれかである外側カバーの液体不透過性フィルムなど、吸収性物品に使用されるフィルムの形態でありうる。
【0089】
この点で、本発明のポリオレフィン繊維を用いうる吸収性物品の一つの特定実施形態が、これからより詳細に記述される。例えば、吸収性物品は、トップシート、外側カバーまたはバックシート、バックシートとトップシートの間に位置付けられた吸収性コア、および本体部分の各縦側部から延長する一対のフラップを含む本体部分を含みうる。トップシートは吸収性物品の身体に面する面を定義する。吸収性コアは、吸収性物品の外周から内向きに位置付けられ、トップシートに隣接して位置付けられた体に面する面および、バックシートに隣接して位置付けられた衣服に面する面を含む。望ましい場合、本発明のポリオレフィン繊維は、トップシート、バックシート、および/または吸収性コアを形成するために使用されうる。一つの特定実施形態では、例えば、バックシートは不織布ウェブおよび通気性フィルムから形成された積層板である。不織布ウェブは、本発明に従って形成された複数のポリオレフィン繊維から形成されうる。
【0090】
トップシートは、使用者の身体に接触するように一般的に設計され、液体透過性である。トップシートは、吸収性物品を完全に包み込むように、吸収性コアを取り囲みうる。代替的に、トップシートおよびバックシートは、吸収性コアを超えて延長し、既知の技術を使用して全体的または部分的に、互いに周辺で接合されうる。典型的には、トップシートおよびバックシートは、接着剤結合、超音波結合、または当技術分野で知られているその他任意の適切な接合方法によって接合される。トップシートは衛生的で清潔な外観であり、収集され、吸収性コアによって吸収された排泄物を隠すためにある程度不透明である。トップシートは良好な浸透および再度濡れ特性をさらに示し、排泄物をトップシートを通して吸収性コアに素早く浸透させるが、体液がトップシートを通って着用者の皮膚に逆流することは許さない。例えば、トップシートに使用されうる一部の適切な材料には、不織布材料、孔あき熱可塑性フィルム、またはそれらの組み合わせが含まれる。本発明のポリオレフィン繊維から作られた不織布ウェブ(例えば、スパンボンドウェブ)は、この目的に使用しうる。
【0091】
トップシートは、体液をより簡単に吸収性コア内に通すように、それを通して形成された複数の開口部も含みうる。開口部は、トップシート全体にわたって無作為にまたは均一に配置されるか、または吸収性物品の縦軸に沿って配置された狭い縦方向バンドまたはストリップ中にのみ位置付けられうる。開口部は、吸収性コアへの体液の素早い浸透を可能にする。開口部のサイズ、形状、直径および数は、特定のニーズに適合するように変化しうる。
【0092】
吸収性物品は、トップシートとバックシートの間に位置付けられた吸収性コアも含みうる。吸収性コアは、単一の吸収性部材から形成されるか、または別の異なる吸収性部材を含む複合材でありうる。しかし当然のことながら、本発明には任意の数の吸収性部材を使用しうる。例えば、一つの実施形態では、吸収性コアは、トップシートと移動遅延部材の間に位置付けらた取込み部材を含みうる。取込み部材は、トップシートに送達された体液をz方向に素早く移動することができる材料から作られうる。取込み部材は一般的に任意の望ましい形状および/またはサイズを持ちうる。一つの実施形態では、取込み部材は長方形であり、長さは吸収性物品の全体的長さ以下であり、幅は吸収性物品の幅よりも小さい。例えば、約150mm〜約300mmの長さおよび約10mm〜約60mmの幅を使用しうる。
【0093】
さまざまに異なる材料の任意のものを、取込み部材のために使用して上述の機能を達成しうる。材料は合成材料、セルロース材料、または合成材料およびセルロース材料の組み合わせでありうる。例えば、エアレイドセルロース薄織物が取込み部材での使用に適切でありうる。エアレイドセルロース薄織物は、約10グラム/平方メートル(gsm)〜約300gsm、一部の実施形態では約100gsm〜約250gsmの範囲の基本重量を持ちうる。一つの実施形態では、エアレイドセルロース薄織物は約200gsmの基本重量を持つ。エアレイド薄織物は、硬材および/または軟材繊維から形成されうる。エアレイド薄織物は、細かい細孔構造を持ち、特に生理に対して優れたウィッキング能力を提供する。
【0094】
望ましい場合は、移動遅延部材を取込み部材の真下に位置付けうる。移動遅延部材は、その他の吸収性部材よりも親水性の小さい材料を含む場合があり、実質的に疎水性であると一般的に特徴付けられうる。例えば、移動遅延部材は、本発明のポリオレフィン繊維から構成される不織布ウェブ(例えば、スパンボンドウェブ)でありうる。繊維は、丸、三葉または多葉の断面形状である場合があり、中空または中身の詰まった構造でありうる。典型的にウェブは、ウェブ面積の約3%〜約30%が熱接着などによって接着されている。移動遅延部材に使用されうる適切な材料のその他の例は、米国特許第4,798,603号(Meyerら)および第5,248,309号(Serbiakら)に記述されている。本発明の性能を調節するために、移動遅延部材は、選択された量の界面活性剤で処理してその初期濡れ性を増加させることもできる。
【0095】
移動遅延部材は一般的に、約150mm〜約300mmの長さなど、任意のサイズを持ちうる。典型的には、移動遅延部材の長さは、吸収性物品の長さとほぼ等しい。また移動遅延部材の幅は、取込み部材と同じでありうるが典型的にはより幅広い。例えば、移動遅延部材の幅は、約50mm〜約75mmの間、および具体的には約48mmでありうる。移動遅延部材は典型的には、その他の吸収性部材の基本重量よりも小さな基本重量を持つ。例えば、移動遅延部材の基本重量は典型的には、約150グラム/平方メートル(gsm)、および一部の実施形態では約10gsm〜約100gsmの間である。一つの特定実施形態では、移動遅延部材は約30gsmの基本重量を持つスパンボンドウェブから形成される。
【0096】
上述の部材以外に、吸収性コアは、コフォーム材料など、複合吸収性部材も含みうる。この例では、流体は移動遅延部材から複合吸収性部材へと引き込まれうる。複合吸収性部材は、取込み部材および/または移動遅延部材から別々に形成されるか、またはそれとともに同時に形成されうる。一つの実施形態では、例えば、複合吸収性部材は、移動遅延部材または取込み部材上に形成される場合があり、これは上述のコフォームプロセス中に担体として働く。
【0097】
ポリオレフィン繊維は、その他さまざまなタイプの物品にも使用されうる。例えば非限定的例には、冷却ユニット(例えば、冷蔵庫、冷凍庫、自動販売機など)の断熱材料、自動車部品(例えば、前後の座席、ヘッドレスト、アームレスト、ドアパネル、後部棚/パッケージトレー、ハンドルおよび内部トリム、ダッシュボードなど)、建物パネルおよびセクション(例えば、屋根、壁穴、床下など)、衣料品(例えば、コート、シャツ、パンツ、手袋、エプロン、カバーオール、靴、ブーツ、帽子、靴下ライナーなど)、家具および寝具(例えば、寝袋、掛布団など)、流体保管/移送システム(例えば、液体/ガス炭化水素、液体窒素、酸素、水素、または原油用パイプまたはタンカー)、極端な環境(例えば、地下水または空間)、食品および飲料製品(例えば、カップ、カップホルダー、皿など)、容器およびビンなどが含まれる。ポリオレフィン繊維は、「衣服」にも使用される場合があり、これは一般的に、身体の一部にフィットするように成形されている任意の物品を含むことが意図される。このような物品の例には、衣服(例えば、シャツ、パンツ、ジーンズ、スラックス、スカート、コート、アクティブウェア、アスレチック、エアロビクスおよび運動衣類、水着、サイクリングジャージまたはショーツ、水着、レース用衣服、ウェットスーツ、ボディースーツなど)、履物(例えば、靴、靴下、ブーツなど)、保護衣服(例えば、消防士のコート)、衣服付属品(例えば、ベルト、ブラストラップ、サイドパネル、手袋、靴下、レギンス、整形外科用装具など)、肌着(例えば、下着、Tシャツなど)、圧迫衣類、ドレープ衣類(例えば、キルト腰巻、トーガ、ポンチョ、マント、ショールなど)などが含まれるがこれらに限定されない。
【0098】
ポリオレフィン繊維は、任意の特定用途内の幅広いさまざまな物品で使用されうる。例えば、自動車用途を考える時、ポリオレフィン繊維は、車両の快適性および/または美観を向上させることのできる物品(例えば、サンバイザーのカバーおよび/またはパッド、スピーカーのハウジングおよびカバー、座席カバー、シールスリップ剤、および座席カバーの裏張り、カーペットおよびカーペットの裏張りを含むカーペットの強化、車マットおよび車マットの裏張り、シートベルトおよびシートベルトアンカーのカバー、トランクのフロアカバーおよびライナー、後部棚パネル、ヘッドライナーの表張りおよび裏張り、内装の裏張り、一般装飾布など)、一般的な温度および/または雑音遮断を提供できる材料(例えば、カラムパッド、ドアトリムパッド、ボンネットライナー、防音および断熱材料、マフラーラップ、車体部品、窓、サルーンルーフ、およびサンルーフ、タイヤ強化など)、およびろ過/エンジン材料(例えば、燃料フィルター、オイルフィルター、バッテリーセパレータ、客室エアフィルター、変速機用トンネル、燃料タンクなど)に、一般的に有益に使用されうる。
【0099】
ポリオレフィン繊維のこのような広範囲にわたる用途は、幅広い輸送分野に適用でき、自動車産業に限定されることを決して意図していない。例えば、ポリオレフィン繊維は、航空・宇宙用途(例えば、飛行機、ヘリコプター、宇宙輸送、軍事航空宇宙装置など)、海洋用途(ボート、船、レクリエーショナルビークル)、列車などを含むがこれらに限定されない任意の適切な用途に使用されうる。ポリオレフィン繊維は、審美的用途、温度および/または騒音遮断のため、ろ過および/またはエンジン部品、安全部品など、任意の望ましい形態で輸送用途に使用されうる。
【0100】
本発明は、以下の例を参照してより良く理解されうる。
【0101】
試験方法
メルトフローレート:
メルトフローレート(「MFR」)は、一般的に190°C、210°C,または230°Cで、2160グラム/10分の負荷をかけた時、押出レオメーター口(直径0.0825インチ)を通して押出されるポリマーの重量(グラム)である。別段の指示がない限り、メルトフローレートは、Tinius Olsen Extrusion PlastometerでASTM試験方法D1238に従って測定される。
【0102】
熱特性:
ガラス転移温度(T)は、ASTM E1640−09に従って、動的機械分析(DMA)で決定されうる。TA Instruments社のA Q800機器を使用しうる。実験は、張力/張力形状で、−120°C〜150°Cの温度掃引モード、3°C/分の加熱率で実行されうる。歪振動振幅周波数は、試験中、一定(2Hz)に保ちうる。3つの独立サンプルを試験して、平均ガラス転移温度を得るが、これはtan δ曲線の最大値によって定義され、ここでδは、貯蔵弾性率に対する損失弾性率の比(tan δ = E”/E’)として定義される。
【0103】
溶融温度は、示差走査熱量測定(DSC)によって決定されうる。示差走査熱量測定計は、DSC Q100示差走査熱量計とすることができ、これには液体窒素冷却付属品およびUNIVERSAL ANALYSIS 2000(バージョン4.6.6)分析ソフトウェアプログラムが取り付けられており、これらは両方とT.A. Instruments Inc.(デラウェア州ニューキャッスル)から入手可能である。サンプルを直接取り扱うことを避けるために、ピンセットまたはその他のツールが使用される。サンプルはアルミニウム皿に入れて、化学てんびんで0.01ミリグラムの精度まで秤量する。材料サンプルの皿の上にふたを圧着させる。一般的に、樹脂ペレットは秤量皿に直接置かれる。
【0104】
示差走査熱量計は、示差走査熱量計の操作マニュアルに記述されるように、インジウム金属標準を使用して較正され、基準線補正が実施される。材料サンプルは、試験のために示差走査熱量計の試験チャンバーに配置され、空の皿が対照として使用される。すべての試験は、試験チャンバーへの55立方センチメートル/分の窒素(産業グレード)パージで実行される。樹脂ペレットサンプルについては、加熱および冷却プログラムは2サイクル試験であり、−30°Cへのチャンバーの平衡化で始まり、次に10°C/分の加熱速度での温度200°Cへの第一の加熱期間、続いて200°Cで3分間のサンプルの平衡化、その後10°C/分の冷却速度での温度−30°Cへの第一の冷却期間、次に−30°Cへの3分間のサンプルの平衡化、そして温度200°Cへの10°C/分の加熱速度での第二の加熱期間が続く。すべての試験は、試験チャンバーへの55立方センチメートル/分の窒素(産業グレード)パージで実行される。
【0105】
結果は、変曲点のガラス転移温度(T)、吸熱ピークと発熱ピーク、およびDSCプロットのピーク下面積を特定・定量するUNIVERSAL ANALYSIS 2000分析ソフトウェアプログラムを使用して評価される。ガラス転移温度は、傾きの明らかな変化が起こるプロットライン上の領域として特定され、溶融温度は、自動変曲点計算を使用して決定される。
【0106】
引張特性:
引張特性は、ASTM 638−10に従って23°Cで測定されうる。例えば、個別の繊維標本は、初めに38ミリメートルの長さまで短くされ(例えば、はさみで切断)、黒いベルベット布の上に別々に配置されうる。10〜15の標本がこのようにして集められる。繊維標本は次に、51ミリメートル×51ミリメートルの外側寸法および25ミリメートル×25ミリメートルの内側寸法を持つ長方形の紙フレーム上に実質的に真っ直ぐな状態で取り付けられうる。各繊維標本の端部は、接着テープでフレームの側部に繊維端部を固定することにより、操作可能なようにフレームに取り付けられうる。各繊維標本は、適正に較正され倍率40Xに設定されうる従来的な実験室顕微鏡を使用して、その外部の比較的短い繊維断面寸法を測定しうる。この繊維断面寸法は、個々の繊維標本の直径として記録されうる。フレームは、繊維標本への過剰な損傷を避ける方法で、サンプル繊維標本の端部を、一定割合延長タイプ引張試験機の上部および下部グリップに取り付けるのに役立つ。
【0107】
一定割合延長タイプの引張試験機および適切なロードセルを試験に使用しうる。ロードセルは、フルスケール負荷の10〜90%内に試験値が来るように選択されうる(例えば、10N)。引張試験機(すなわち、MTS SYNERGY 200)およびロードセルは、MTS Systems Corporation(ミシガン州、エデンプレーリー)から入手されうる。次に、フレーム組立品中の繊維標本は、繊維の端部が引張試験機のグリップによって操作可能なように保持されるように、引張試験機のグリップの間に取り付けられる。その後、引張試験機が繊維にのみ試験力を加えるように、繊維の長さに平行に延長する紙フレームの側部は、切断されるかまたは分離されうる。繊維は、12インチ/分の引き上げ速度とグリップ速度で引き上げ試験を行いうる。結果として生じるデータは、以下の試験設定で、MTS Corporation製のTESTWORKS 4ソフトウェアプログラムを使用して分析しうる:
【0108】
【表1】
【0109】
引張り強さ値は、グラム・力/デニールで表される。最大伸長(破壊歪み%)および最大応力も測定されうる。
【0110】
ウェブのピーク負荷は、長さ(MD)および幅方向(CD)に沿って切断された2インチ×6インチのストリップを使用して決定されうる。試験は、1インチ×3インチのゴムコートグリップ付きの汎用引張試験機で実施されうる。ゲージ長さは76 ± 1mm(3 ± 0.04インチ)でありうる。
【0111】
密度および空隙容量パーセント
密度および空隙容量パーセントを決定するために、延伸の前に、標本の幅(W)および厚さ(T)が最初に測定されうる。延伸前の長さ(L)も、標本の表面上の二つのマークの間の距離を測定することによって決定された。その後、標本を延伸して細孔形成を開始しうる。次に、Digimatic Caliper(株式会社ミツトヨ)を使用して、標本の幅(W)、厚さ(T)、および長さ(L)が直近の0.01mmまで測定された。延伸の前の体積(V)は、WxTxL=Vで計算されうる。延伸後の体積(V)も、WxTxL=Vで計算されうる。密度(P)は、Ρ=P/Φで計算され、ここでは、Pは前駆材料の密度であり、空隙容量パーセント(%V)は、%V=(1-1/Φ)x100で計算されうる。
【0112】
静水圧試験(「水頭」):
静水圧試験は、静圧下の液体水による貫通に対する材料の抵抗の尺度であり、AATCC試験方法127−2008に従って実施される。各標本に対する結果は、平均されセンチメートル(cm)で記録される。高い値は水の貫通に対する抵抗がより高いことを示す。
【0113】
水蒸気透過速度(「WVTR」)
材料のWVTRを決定するために使用される試験は、材料の性質に基づいて変わりうる。WVTR値を測定するための一つの技術は、ASTM E96/96M−12、手順Bである。別の方法にはINDA試験手順IST−70.4(01)の使用を伴う。INDA試験手順は以下のように要約される。恒久的ガードフィルムおよび試験されるサンプル材料によって、ドライチャンバーが既知の温度と湿度でウェットチャンバーから分離される。ガードフィルムの目的は、明確な空隙を定義し、空隙が特徴化される間に空隙の空気を静めるまたは鎮静化することである。乾燥チャンバー、ガードフィルム、および湿潤チャンバーは、その中に試験フィルムが密封される拡散セルを構成する。サンプルホルダーは、Mocon/Modem Controls, Inc.(ミネソタ州、ミネアポリス)社製のPermatran−Wモデル100Kとして知られている。第一の試験は、ガードフィルムおよび100%相対的湿度を生成する蒸発器組立品の間の空隙のWVTRから成る。水蒸気は空隙およびガードフィルムを通して拡散し、水蒸気濃度に比例する乾燥ガスの流れと混ざり合う。電気信号が処理のためにコンピュータに送られる。コンピュータは、空隙およびガードフィルムの透過速度を計算し、その値を将来使用するために保存する。
【0114】
ガードフィルムおよび空隙の透過速度はCalCとしてコンピュータに保存される。次にサンプル材料は試験セル中に密封される。再び、水蒸気は空隙を通してガードフィルムおよび試験材料へと拡散し、試験材料を運び去る乾燥ガスと混ざり合う。そして再び、この混合物は蒸気センサーに運ばれる。その後コンピュータは、空隙、ガードフィルムおよび試験材料の組み合わせの透過速度を計算する。そしてこの情報は、次の方程式に従って、水分が試験材料を通して透過する透過率を計算するために使用される:
【0115】
【数3】
【0116】
その後、水蒸気透過速度(「WVTR」)は以下のように計算される:
【0117】
【数4】
【0118】
ここで、
F = 水蒸気の流れ(cm/分)、
ρsat(T) = 温度Tでの飽和空気中の水の密度、
RH = セルの特定場所での相対湿度、
A = セルの断面積、および
sat(T) = 温度Tでの水蒸気の飽和蒸気圧。
【0119】
伝導特性:
熱伝導率(W/mK)および熱抵抗(mK/W)は、ASTM E−1530−11(「保護熱流量技術による材料の熱貫流に対する抵抗」)に従い、Anter Unithermモデル2022試験機を使用して決定されうる。目標試験温度は25°C、適用負荷は0.17 MPaとしうる。試験前に、サンプルは温度23°C(±2°C)、相対湿度50%(±10%)で40+時間の間調整しうる。熱特性(W/mK)も、1を熱抵抗で割ることで計算されうる。
【0120】
フレーザー空隙率:
フレーザー空隙率は、8インチストリップのサンプルを切り(流れ方向に沿って測定)、サンプルを(幅方向に)アコーディオンスタイルに折り畳んで6つの層を得て、Frazier(登録商標)低差圧透気度試験機(FAP−LP)で測定された。
【実施例1】
【0121】
最初に、91.8重量%のイソタクチックプロピレンホモポリマー(M3661、230°Cで14g/10のメルトフローレート、および150°Cの溶融温度、Total Petrochemicals)、7.4重量%のポリ乳酸(PLA 6252、210°Cで70〜85g/10分のメルトフローレート、Natureworks(登録商標))、および0.7重量%のポリエポキシドから前駆混合物が形成された。ポリエポキシドは、6g/10分(190°C/2160g)のメルトフローレート、8重量%のメタクリル酸グリシジル含量、24重量%のアクリル酸メチル含量、および68重量%のエチレン含量を持つ、ポリ(エチレン−コ−アクリル酸メチル−コ−メタクリル酸グリシジル)(LOTADER(登録商標) AX8900、Arkema)であった。成分は、共回転2軸スクリュー押出機(直径30mmおよびL/D=44のWerner and Pfleiderer ZSK−30)で混ぜ合わされた。押出機は7つの加熱ゾーンを持っていた。押出機の温度は180°C〜220°Cの範囲であった。ポリマーはホッパーの所で押出機に重力測定法で15ポンド/時間で供給され、液体は蠕動ポンプを使用してたるの中に注入された。押出機は200回転/分(「RPM」)で作動させた。たるの最後のセクション(前)で、直径6mmの3穴ダイスを使用して押出物を形成した。押出物はコンベーヤーベルトで空冷され、Conair Pelletizerを使用してペレット化された。
【0122】
次に、0.75インチ単軸スクリュー押出機および直径0.6mmの16穴紡糸口金を備えたDavis標準紡糸ラインを使用して、前駆混合物から繊維が製造された。繊維は異なるドローダウン比で収集された。巻き取り速度は1〜1000m/分の範囲であった。押出機の温度は175°C〜220°Cの範囲であった。繊維は引張試験機で25°C、300mm/分で400%伸長まで引き延ばされた。材料形態を分析するために、繊維を液体窒素中凍結破断し、高真空の走査型電子顕微鏡Jeol 6490LVで分析した。結果が図2〜4に示されている。示されるように、伸張方向に非常に細長い回転楕円細孔が形成される。ナノ細孔(〜50ナノメートルの幅、〜500ナノメートルの長さ)およびマイクロ細孔(〜0.5マイクロメートルの幅、〜4マイクロメートルの長さ)の両方が形成された。
【実施例2】
【0123】
93重量%のポリプロピレン(Total M3661)および7重量%のLotader(登録商標) AX8900の混合物が、共回転二軸スクリュー押出機(直径30mmおよびL/D=44のWerner and Pfleiderer ZSK−30)で混ぜ合わされた。押出機は7つの加熱ゾーンを持っていた。押出機の温度は180°C〜220°Cの範囲であった。ポリマーはホッパーの所で押出機に重力測定法で15ポンド/時間で供給された。押出機は200回転/分(「RPM」)で作動させた。たるの最後のセクション(前)で、直径6mmの3穴ダイスを使用して押出物を形成した。押出物はコンベーヤーベルトで空冷され、Conair Pelletizerを使用してペレット化された。次に、0.75インチ単軸スクリュー押出機および直径0.6mmの16穴紡糸口金を備えたDavis標準紡糸ラインを使用して、前駆混合物から繊維が製造された。繊維は異なるドローダウン比で収集された。巻き取り速度は1〜1000m/分の範囲であった。押出機の温度は175°C〜220°Cの範囲であった。繊維は引張試験機で25°C、300mm/分で400%伸長まで引き延ばされた。材料形態を分析するために、繊維を液体窒素中凍結破断し、高真空の走査型電子顕微鏡Jeol 6490LVで分析した。結果が図5〜6に示されている。
【実施例3】
【0124】
91.1重量%のポリプロピレン(Total M3661)、7.4重量%ポリ乳酸(NatureWorks 6251)、および1.5% Lotader(登録商標) AX8900の混合物が、押出機内で混ぜ合わされ、条件は実施例2に記述されている。この場合、次に蠕動ポンプを使用して、5%のPluriol(登録商標) WI 285がバレルに注入される。次に、0.75インチ単軸スクリュー押出機および直径0.6mmの16穴紡糸口金を備えたDavis標準紡糸ラインを使用して、前駆混合物から繊維が製造された。繊維は異なるドローダウン比で収集された。巻き取り速度は1〜1000m/分の範囲であった。押出機の温度は175°C〜220°Cの範囲であった。繊維は引張試験機で25°C、300mm/分で400%伸長まで引き延ばされた。材料形態を分析するために、繊維を液体窒素中凍結破断し、高真空の走査型電子顕微鏡Jeol 6490LVで分析した。結果が図7〜8に示されている。
【実施例4】
【0125】
91.8重量%のイソタクチックポリプロピレン(M3661、230°Cで14g/10分のメルトフローレート、および150°Cの溶融温度、Total Petrochemicals)、7.45重量%のポリ乳酸(PLA)( Ingeo 6251D、210°Cで70〜85g/10分のメルトフローレート、Natureworks(登録商標))、および0.75重量%のポリエポキシド相溶化剤(Arkema Lotader(登録商標) AX8900)を含む前駆混合物が作られた。ポリエポキシド修飾剤は、5〜6g/10分(190°C /2160 g)のメルトフローレート、7〜11重量%のメタクリル酸グリシジル含量、13〜17重量%のアクリル酸メチル含量、および72〜80重量%のエチレン含量を持つ、ポリ(エチレン−コ−アクリル酸メチル−コ−メタクリル酸グリシジル)(Lotader(登録商標) AX8900、Arkema)であった。成分は、共回転2軸スクリュー押出機(直径30mmおよびL/D=44のWerner and Pfleiderer ZSK−30)で混ぜ合わされた。押出機は7つの加熱ゾーンを持っていた。押出機の温度は180°C〜220°Cの範囲であった。ポリマーはホッパーの所で押出機に重力測定法で6.8キログラム/時間(15ポンド/時間)で供給された。押出機は200回転/分(「RPM」)で作動させた。たるの最後のセクション(前)で、直径6mmの3穴ダイスを使用して押出物を形成した。押出物はコンベーヤーベルトで空冷され、Conair Pelletizerを使用してペレット化された。
【実施例5】
【0126】
二成分繊維は、2つの単軸スクリュー押出機(直径1.25インチ)を装備した二成分繊維ラインで製造された。二成分繊維は30/70のシース/コア構成を持っており、ここではシースは100重量%のポリプロピレン(M3661、Total Petrochemicals)から成形され、コアは実施例4の混合物から形成された。押出機は、シースおよびコアポリマー組成物を、直径0.5mmおよび長さ/直径比(L/D)4:1の288個のキャピラリーの一つの紡糸口金に供給した。繊維は8kg/時間の速度、660メートル/分の紡糸速度で紡がれ、伸長後プロセスのためにスプールに集められた。
【0127】
シースおよびコア両方に対する押出温度ファイルは以下の通りであった:ゾーン1 = 220°C、ゾーン2= 225°C、ゾーン3 = 230°C、ゾーン4 = 240°C、および紡糸ビーム = 240°C。次に溶融紡糸繊維は、室温(25°C)で、二つのゴデットロール(単一ステップ延伸)の間を1200メートル/分の速度で200%まで伸長された。その後、繊維はひだを付けられ(1インチ当たり19のひだ)、38mmの長さに切られた。繊維は次に、液体窒素中カミソリの刃で切断され、走査電子顕微鏡法で分析された。破砕面は、Denton Vacuum Desk Vシステム中、75 sに対して15mAを使用して、金・パラジウムでスパッタコーティングされ、Field Emission Quanta 650でSEM分析された。結果が図 9〜10に記載されている。
【0128】
以下の表に示されるように、繊維のさまざまな特性も試験された。
【0129】
【表2】
【0130】
100−gsmの通気ボンデッドカーデッドウェブ(TABCW)も、実施例5の繊維(70重量%)および二成分シース/コアPE/PP繊維(30重量%)の混合物を使用して形成された。ウェブは、Asselin Profile 415−FDクロスラッパーおよびFleissner Oven(ノースカロライナ州立大学)を装備したTruetzschler High−Speed Card EWK 413で形成された。カーデッドウェブは260°Fで通気接着され、最終的な厚さは5.5mmであった。
【実施例6】
【0131】
93重量%のポリプロピレンマトリクス(M3661、Total Petrochemicals)および7重量%のLotader(登録商標) AX8900を含む前駆体ポリマー混合物は、実施例4に記述されたように作られた。中空の二成分繊維は、2つの単軸スクリュー押出機(直径1.25インチ)を装備した二成分繊維ラインで製造された。二成分繊維は50/50のシース/コア構成を持っており、ここではシースは100重量%のポリプロピレン(Achieve 3854)から成形され、コアは上述の混合物から形成された。押出機は、シースおよびコアポリマー組成物を、4Cセグメントキャピラリーデザインの72個のキャピラリーの一つの紡糸口金内に供給した。繊維は2kg/時間の速度、198メートル/分の紡糸速度で紡がれ、伸長後プロセスのためにスプールに集められた。シースおよびコア両方に対する押出温度ファイルは以下の通りであった:ゾーン1 = 220°C、ゾーン2= 225°C、ゾーン3 = 230°C、ゾーン4 = 240°C、および紡糸ビーム = 240°C。繊維は、紡糸口金の35cm下に位置する水浴中で冷却された。冷却された繊維は次に、室温(25°C)で、2つのゴデットロールの間を1200メートル/分の速度で200%まで伸張された。繊維は次に、液体窒素中カミソリの刃で切断され、走査電子顕微鏡法で分析された。破砕面は、Denton Vacuum Desk Vシステム中、75 sに対して15mAを使用して、金・パラジウムでスパッタコーティングされ、Field Emission Quanta 650でSEM分析された。結果が図 11〜12に記載されている。以下の表に示されるように、繊維のさまざまな特性も試験された。
【0132】
【表3】
【実施例7】
【0133】
前駆体混合物は実施例4に記載されたように形成されたが、材料が64mm共回転二軸スクリュー押出機を使用して、270キログラム/時間(600ポンド/時間)の生産速度および220°Cの温度で製造された点は異なっていた。溶融ポリマー混合物は複数フィラメント金型を通して押し出され、水で冷却されて、水中ペレット化システム(バージニア州イグルロックのGala Industriesから入手可能なものなど)でペレットに切断された。単一成分繊維は、二つの紡糸口金を持ち、各口金が0.35mmの直径および4:1のL/D比の675個の円形キャピラリー(合計1,350)を持つ1.25単一スクリュー押出機24 L/Dを装備した単一成分繊維紡糸ライン(FiberVisions)で、22.5キログラム/時間の速度で混合物から形成された。紡糸速度は435メートル/分であった。7つの押出機加熱ゾーンおよび紡糸ビーム温度プロファイルは220°Cに保たれた。紡糸ラインは片面気流冷却ボックスを備えており、空気温度は21°Cであった。溶融延伸繊維は低温延伸なしで5ポンドのスプールに集められた。溶融配向繊維は10.7デニール/フィラメントのデニールを有していた。
【0134】
繊維は、5つのロール(クインテット)の3つの塊から成る伸張ユニット中、50メートル/分の速度で100%まで伸張された。第一のクインテットの温度は50°Cに維持され、第二および第三のクインテットは25°Cの温度に維持された。繊維はひだを付けられて1.5インチに切断された。スピン仕上げは、切断ユニットの前で0.5%に調節された。繊維は次に、液体窒素中カミソリの刃で切断され、走査電子顕微鏡法で分析された。破砕面は、Denton Vacuum Desk Vシステム中、75 sに対して15mAを使用して、金・パラジウムでスパッタコーティングされ、Field Emission Quanta 650でSEM分析された。結果が図13に記載されている。以下の表に示されるように、繊維のさまざまな特性も試験された。
【0135】
【表4】
【0136】
熱ボンデッドカーデッドウェブ(30gsm)もカーディングライン上で製造された。ウェブを熱接着するために、図14に示されるようにダイアモンド接着パターンが使用された。カレンダー温度は150°Cであり、カーディング速度は250フィート/分であった。次に、以下に示されるように、ウェブのさまざまな特性が試験された。
【0137】
【表5】
【0138】
本発明は、その特定の実施形態に関して詳細に記述されているが、当然のことながら、当業者であれば、上記の理解を得ることで、これらの実施形態に対する改造、その変形、およびそれとの等価物をすぐに思いつくことができる。従って、本発明の範囲は、添付した請求項およびその任意の等価物の範囲として評価されるべきである。
【0139】
特許請求の範囲に記載の数値限定に「約」が記載されているか否かにかかわらず、本発明の技術思想に鑑みて、実質的に同一の範囲を含むものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14