(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の方法において、前記エンジン性能変数および第2のエンジン性能変数を含む複数のエンジン性能変数のそれぞれに対する値を確定するステップをさらに含む、方法。
請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法において、前記車両エンジンの前記1つまたは複数の検出された動作条件が、エンジン速度の検出値およびエンジン負荷の検出値を含む、方法。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
[0004]一実施形態では、本発明は、車両エンジンの性能を最適化するための方法を提供する。方法は、第1のエンジン制御パラメータに対する初期値を、車両エンジンの1つまたは複数の検出された動作条件に基づいて確定するステップと、エンジン性能変数の値を確定するステップと、エンジン性能変数の確定値を人為的に摂動させるステップとを含む。次いで、第1のエンジン制御パラメータに対する初期値が、摂動されたエンジン性能変数に基づいて調整され、エンジン性能変数が目標のエンジン性能変数に近づけられる。車両エンジンの動作が、第1のエンジン制御パラメータに対する調整された初期値に基づいて制御される。これらの活動(act)が、エンジン性能変数が目標のエンジン性能変数に接近するまで繰り返される。
【0005】
[0005]いくつかの実施形態では、車両エンジンの1つまたは複数の検出された動作条件が、エンジン速度の検出値およびエンジン負荷の検出値を含む。加えて、いくつかの実施形態では、第1のエンジン制御パラメータの初期値を確定する活動が、エンジン速度の検出値およびエンジン負荷の検出値に対応する初期値を、第1のエンジンマップ参照表で定義されるように同定するステップを含む。
【0006】
[0006]いくつかの実施形態では、エンジン性能変数の確定値を人為的に摂動させる活動が、エンジン性能変数を摂動させるために摂動信号を第1のエンジン制御パラメータに加えるステップを含む。いくつかのそのような実施形態では、摂動信号を加える活動が、正弦波励振を加えるステップまたは方形波励振を加えるステップを含む。加えて、いくつかの実施形態では、エンジン性能変数の確定値を人為的に摂動させる活動が、第1のエンジン制御パラメータが最適設定点に向かって収束したかどうかを検出するステップを含む。
【0007】
[0007]別の実施形態では、本発明は、プロセッサおよび命令を記憶するメモリを備えるエンジン制御器を提供する。命令がプロセッサで実行されると、エンジン制御器は、第1のエンジン制御パラメータおよび第2のエンジン制御パラメータを含む、複数のエンジン制御パラメータのそれぞれに対する初期値を、車両エンジンの1つまたは複数の検出された動作条件に基づいて確定する。さらに、プロセッサは、エンジン制御器に、車両エンジンの燃料効率の値を確定すること、車両エンジンの燃料効率の確定値を人為的に摂動させること、車両エンジンの燃料効率を目標のエンジン性能変数に接近させるために、第1のエンジン制御パラメータに対する初期値および第2のエンジン制御パラメータに対する初期値を、車両エンジンの摂動された燃料効率に基づいて調整すること、および車両エンジンの動作を、調整された、第1のエンジン制御パラメータに対する初期値および第2のエンジン制御パラメータに対する初期値に基づいて制御することを引き起こさせる。また、プロセッサは、エンジン制御器に、複数のエンジン制御パラメータのそれぞれに対する初期値を確定し、車両エンジンの燃料効率の値を確定し、車両エンジンの燃料効率の確定値を人為的に摂動させ、第1のエンジン制御パラメータおよび第2のエンジン制御パラメータに対する初期値を、車両エンジンの摂動された燃料効率に基づいて調整する活動を、車両エンジンの燃料効率が目標のエンジン性能変数に接近するまで繰り返すことを引き起こす。
【0008】
[0008]さらに別の実施形態では、本発明は、複数のエンジン性能変数を最適化するための方法を提供する。方法は、第1のエンジン制御パラメータに対する初期値を、車両エンジンの1つまたは複数の検出された動作条件に基づいて確定するステップと、燃料効率の示度となる値を含む複数のエンジン性能変数のそれぞれに対する値を確定するステップと、燃料効率の示度となる確定値を人為的に摂動させるステップとを含む。次いで、第1のエンジン制御パラメータに対する初期値が、摂動された、燃料効率の示度となる値に基づいて調整され、複数のエンジン性能変数が、エンジン性能変数の値の最適な組合せに近づけられる。車両エンジンの動作は、第1のエンジン制御パラメータに対する調整された初期値に基づいて制御される。これらの活動は、複数のエンジン性能変数が、エンジン性能変数の値の最適な組合せに接近するまで繰り返される。エンジン性能変数の最適な組合せは、最大の達成可能な燃料効率値より小さい、燃料効率の示度となる値を含む。
【0009】
[0009]一実施形態では、本発明は、実時間エンジン制御最適化のための方法を提供する。方法は、エンジン性能変数の値を確定するステップと、車両エンジンの第1の動作条件の値および第2の動作条件の値を検出するステップと、第1のエンジン制御パラメータに対する初期値および第2のエンジン制御パラメータに対する初期値を、検出された第1の動作条件および検出された第2の動作条件に基づいて確定するステップとを含む。第1のエンジン制御パラメータに対する初期値が、エンジン性能変数を目標のエンジン性能変数に接近させるために、エンジン性能変数の確定値に基づいて調整される。また、第2のエンジン制御パラメータに対する初期値が、エンジン性能変数を目標のエンジン性能変数に接近させるために、エンジン性能変数の確定値に基づいて調整される。次いで、車両エンジンの動作が、第1のエンジン制御パラメータに対する調整された初期値および第2のエンジン制御パラメータに対する調整された初期値に基づいて制御される。エンジン性能変数を目標のエンジン性能変数に接近させるために、第1のエンジン制御パラメータに対する初期値を調整する活動は、第2のエンジン制御パラメータに対する初期値の、対応する調整を必要とする。
【0010】
[0010]いくつかの実施形態では、第1のエンジン制御パラメータに対する初期値が、車両エンジンの、第1の動作条件の検出値および第2の動作条件の検出値に対応する初期値を、第1のエンジンマップ参照表で定義されるように同定することによって確定される。第1のエンジンマップ参照表は、第1の動作条件に対する値の範囲および第2の動作条件に対する値の範囲にそれぞれ対応する、複数の動作小領域(operating sub-region)を定義する。また、第1のエンジンマップ参照表は、動作小領域のそれぞれに対応する第1のエンジン制御パラメータ値を定義する。加えて、方法は、第1の動作条件および第2の動作条件が第1のエンジンマップの第1の動作小領域内にあるとき、エンジン最適化モードの終端において、エンジン性能変数を目標値に向かって収束させる、第1のエンジン制御パラメータの最適調整値を同定するステップをさらに含む。第1のエンジン制御パラメータの平均最適調整値が、エンジン最適化モードを複数回遂行することによる、第1のエンジン制御パラメータの最適調整値に基づいて、第1のエンジンマップの第1の動作小領域に対して計算される。次いで、第1のエンジンマップが、動作小領域のそれぞれに対応する第1のエンジン制御パラメータ値を、第1のエンジンマップの第1の動作小領域に対する、第1のエンジン制御パラメータの平均最適調整値で置き換えることによって更新される。
【0011】
[0011]別の実施形態では、本発明は、エンジン性能変数の値を確定し、車両エンジンの第1の動作条件の値および第2の動作条件の値を検出し、かつ第1のエンジン制御パラメータに対する初期値および第2のエンジン制御パラメータに対する初期値を、検出された第1の動作条件および検出された第2の動作条件に基づいて確定するように構成されたエンジン制御ユニット(「ECU」)を提供する。第1のエンジン制御パラメータに対する初期値が、エンジン性能変数を目標のエンジン性能変数に接近させるために、エンジン性能変数の確定値に基づいて調整される。また、第2のエンジン制御パラメータに対する初期値が、エンジン性能変数を目標のエンジン性能変数に接近させるために、エンジン性能変数の確定値に基づいて調整される。次いで、車両エンジンの動作が、第1のエンジン制御パラメータに対する調整された初期値および第2のエンジン制御パラメータに対する調整された初期値に基づいて制御される。エンジン性能変数を、目標のエンジン性能変数に接近させるために、第1のエンジン制御パラメータに対する初期値を調整する活動は、第2のエンジン制御パラメータに対する初期値の、対応する調整を必要とする。
【0012】
[0012]さらに別の実施形態では、本発明は、車両エンジンの燃料効率を確定し、車両エンジンのエンジン速度およびエンジン負荷を検出し、可変弁タイミング(variable valve timing)(「VVT」)に対する初期値および点火時期に対する初期値を、検出されたエンジン速度および検出されたエンジン負荷に基づいて確定するように構成されたエンジン制御ユニット(「ECU」)を提供する。VVTに対する初期値が、車両エンジンの燃料効率を最大値に接近させるために、確定された燃料効率に基づいて調整される。また、点火時期に対する初期値が、車両エンジンの燃料効率を最大値に接近させるために、確定された燃料効率に基づいて調整される。次いで、車両エンジンの動作が、調整された初期のVVTおよび調整された初期の点火時期に基づいて制御される。VVTに対する初期値を調整する活動は、車両エンジンの燃料効率を最大化するために、点火時期に対する初期値の、対応する調整を必要とする。
【0013】
[0013]一実施形態では、本発明は、エンジン制御最適化のための方法を提供する。車両エンジンの1つまたは複数の動作条件が、検出される。複数のエンジン制御パラメータのそれぞれに対する値が、車両エンジンの検出された1つまたは複数の動作条件に基づいて、第1のエンジン制御パラメータおよび第2のエンジン制御パラメータを含めて、確定される。車両エンジンの最も一般的に検出された動作条件の範囲が同定され、最適化の範囲が、車両エンジンの最も一般的に検出された動作条件の範囲に基づいて定義される。エンジン制御最適化ルーチンが、車両エンジンの1つまたは複数の動作条件が最適化の定義された範囲内にあるときに、開始される。エンジン制御最適化ルーチンは、エンジン性能変数の値を確定し、第1のエンジン制御パラメータに対する初期値および第2のエンジン制御パラメータに対する初期値を、車両エンジンの検出された1つまたは複数の動作条件に基づいて確定し、かつエンジン性能変数の確定値に基づいて、エンジン性能変数を目標のエンジン性能変数に接近させるために、第1のエンジン制御パラメータに対する初期値および第2のエンジン制御パラメータに対する初期値を調整する。
【0014】
[0014]いくつかの実施形態では、エンジン制御最適化ルーチンが、第1のエンジン制御パラメータに対する最適設定点および第2のエンジン制御パラメータに対する最適設定点を、エンジン性能変数の確定値に基づいて確定する。加えて、いくつかの実施形態では、第1のエンジン制御パラメータに対する最適設定点および第2のエンジン制御パラメータに対する最適設定点を確定する活動が、第1のエンジン制御パラメータがその最適設定点に向かって収束した時点、第2のエンジン制御パラメータがその最適設定点に向かって収束した時点、およびエンジン性能変数が目標のエンジン性能変数に接近した時点を検出するステップを含む。
【0015】
[0015]別の実施形態では、本発明は、プロセッサおよびメモリを備えるエンジン制御器を提供する。メモリは、プロセッサで実行されるときに、エンジン制御器に、エンジン速度およびエンジン負荷を検出させ、第1のエンジン制御パラメータおよび第2のエンジン制御パラメータを含む複数のエンジン制御パラメータのそれぞれに対する値を、検出されたエンジン速度および検出されたエンジン負荷に基づいて確定させ、最も一般的に検出されたエンジン速度の範囲および最も一般的に検出されたエンジン負荷の範囲を同定させ、かつ最適化の領域を、最も一般的に検出されたエンジン速度の範囲および最も一般的に検出されたエンジン負荷の範囲に基づいて定義させる命令を記憶する。エンジン制御器は、検出されたエンジン速度および検出されたエンジン負荷が、定義された最適化の領域内にあるときに、エンジン制御最適化ルーチンを開始する。エンジン制御最適化ルーチンは、車両エンジンの燃料効率の値を確定し、第1のエンジン制御パラメータに対する初期値および第2のエンジン制御パラメータに対する初期値を、検出されたエンジン速度および検出されたエンジン負荷に基づいて確定し、かつ車両エンジンの燃料効率の確定値に基づいて、車両エンジンの燃料効率を最大の燃料効率値に接近させるために、第1のエンジン制御パラメータに対する初期値および第2のエンジン制御パラメータに対する初期値を調整する。
【0016】
[0016]一実施形態では、本発明は、エンジン制御最適化のための方法を提供する。車両エンジンの複数の動作条件が、第1の動作条件および第2の動作条件を含めて検出される。初期値が、第1のエンジンマップ参照表内の、検出された第1の動作条件および検出された第2の動作条件の組合せに対応する第1のエンジン制御パラメータに対して同定される。第1のエンジンマップ参照表は、複数の動作小領域を定義する。動作小領域のそれぞれは、第1の動作条件に対する値の範囲および第2の動作条件に対する値の範囲に対応する。また、第1のエンジンマップ参照表が、動作小領域のそれぞれに対応する第1のエンジン制御パラメータ値を定義する。また、初期値が、第2のエンジンマップ参照表内の、検出された第1の動作条件および検出された第2の動作条件の組合せに対応する、第2のエンジン制御パラメータに対して同定される。第2のエンジンマップ参照表は、第1の動作条件に対する値の範囲および第2の動作条件に対する値の範囲にそれぞれ対応する、複数の動作小領域を定義する。また、第2のエンジンマップ参照表は、動作小領域のそれぞれに対応する第2のエンジン制御パラメータ値を定義する。第1のエンジン制御パラメータに対する初期値が、エンジン性能変数を目標値に接近させるために、検出されたエンジン性能変数に基づいて調整される。また、第2のエンジン制御パラメータに対する初期値が、エンジン性能変数を目標値に接近させるために、検出されたエンジン性能変数に基づいて調整される。検出された第1の動作条件および検出された第2の動作条件が、第1のエンジンマップ参照表の第1の動作小領域内にあるときに、エンジン性能変数の第1の感度が、第1のエンジン制御パラメータにおける変化に応答して確定される。また、第1の動作条件および第2の動作条件が、第2のエンジンマップ参照表の第1の動作小領域内にあるときに、エンジン性能変数の第2の感度が、第2のエンジン制御パラメータにおける変化に応答して確定される。次いで、第1のエンジンマップ参照表が、第1の感度が閾値より大きいときに、第1のエンジンマップ参照表の第1の動作小領域を、第1のエンジンマップ参照表の第1の動作小領域内の複数の新しい動作小領域に分割することによって調整される。また、第2のエンジンマップ参照表が、第2の感度が閾値より大きいときに、第2のエンジンマップ参照表の第1の動作小領域を、第2のエンジンマップ参照表の第1の動作小領域内の複数の新しい動作小領域に分割することによって調整される。
【0017】
[0017]いくつかの実施形態では、エンジン性能変数の第1の感度を確定する活動は、第1のエンジンマップ参照表の第1の動作小領域内の第1のエンジン制御パラメータを調整するステップが、エンジン性能変数にいかに速やかに影響を与えるかを確定するステップを含む。加えて、いくつかの実施形態では、エンジン性能変数の第1の感度を確定する活動は、車両エンジンが、第1のエンジンマップ参照表の第1の動作小領域内で動作しているときの、エンジン制御パラメータの値における変化に対応する、エンジン性能変数の振幅における変化を確定するステップを含む。
【0018】
[0018]別の実施形態では、本発明は、プロセッサおよび命令を記憶するメモリを備えるエンジン制御器を提供する。命令がプロセッサで実行されるとき、エンジン制御器は、エンジン速度およびエンジン負荷を含む、車両エンジンの複数の動作条件を検出する。さらに、プロセッサは、エンジン制御器に、第1のエンジンマップ参照表内の、検出されたエンジン速度および検出されたエンジン負荷の組合せに対応する、第1のエンジン制御パラメータに対する初期値を同定させる。第1のエンジンマップ参照表は、複数の動作小領域を定義する。動作小領域のそれぞれは、エンジン速度に対する値の範囲およびエンジン負荷に対する値の範囲に対応する。また、第1のエンジンマップ参照表は、動作小領域のそれぞれに対応する第1のエンジン制御パラメータ値を定義する。第1のエンジン制御パラメータに対する初期値は、車両エンジンの燃料効率の示度となる値を目標値に接近させるために、車両エンジンの燃料効率の示度となる検出値に基づいて調整される。また、プロセッサは、エンジン制御器に、第2のエンジンマップ参照表内の、検出されたエンジン速度および検出されたエンジン負荷の組合せに対応する、第2のエンジン制御パラメータに対する初期値を同定させる。また、第2のエンジンマップ参照表は、複数の動作小領域を定義する。動作小領域のそれぞれは、エンジン速度に対する値の範囲およびエンジン負荷に対する値の範囲に対応する。また、第2のエンジンマップ参照表は、動作小領域のそれぞれに対応する第2のエンジン制御パラメータ値を定義する。第2のエンジン制御パラメータに対する初期値が、車両エンジンの燃料効率の示度となる値を目標値に接近させるために、車両エンジンの燃料効率の示度となる検出値に基づいて調整される。車両エンジンの燃料効率の第1の感度が、検出されたエンジン速度および検出されたエンジン負荷が第1のエンジンマップ参照表の第1の動作小領域内にあるときに、第1のエンジン制御パラメータにおける変化に応答して確定される。次いで、第1のエンジンマップ参照表が、第1の感度が閾値より大きいときに、第1のエンジンマップ参照表の第1の動作小領域を、第1のエンジンマップ参照表の第1の動作小領域内の複数の新しい動作小領域に分割することによって調整される。エンジンの燃料効率の第2の感度が、検出されたエンジン速度および検出されたエンジン負荷が第2のエンジンマップ参照表の第1の動作小領域内にあるときに、第2のエンジン制御パラメータにおける変化に応答して確定される。次いで、第2のエンジンマップ参照表が、第2の感度が閾値より大きいときに、第2のエンジンマップ参照表の第1の動作小領域を、第2のエンジンマップ参照表の第1の動作小領域内の複数の新しい動作小領域に分割することによって調整される。
【0019】
[0019]
本発明の他の態様は、詳細な説明および添付の図面を考察することによって明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[0035]本発明の任意の実施形態が詳細に説明される前に、本発明は、その応用において、以下の記載で説明されるかまたは以下の図面に示される構成要素の構造および配置の細目に限定されるものではないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、種々の方法で実施可能であり、または遂行可能である。
【0022】
[0036]
図1は、車両に対する実時間エンジン制御最適化システム100を示す。システム100は車両上で実施され、例えば速度センサ110および圧力センサ115を含む複数のセンサを装備されたエンジン105を含む。電子制御ユニット(「ECU」)120は、エンジン105の種々のセンサおよびアクチュエータと通信している。ECU 120は、速度センサ110および圧力センサ115からデータを受信し、そのデータを処理してエンジン105の動作を制御する。ECU 120は、少なくとも1つのプロセッサ135および少なくとも1つのメモリ140を含む。メモリ140は、ECU 120の機能性をもたらすためにプロセッサ135で実行される命令を記憶する。動作の中でもとりわけ、ECU 120は、極値探索(「ES」)制御器125および負荷制御器130を実施する。
【0023】
[0037]いくつかの実施形態では、エンジン105は、フレックス燃料エンジンとしても知られる、ガソリンおよびエタノールの種々の混合で動作可能な、近代的な内燃機関である。いくつかの実施形態では、エンジン105は、直接噴射(「DI」)、ターボ過給(「TC」)および可変弁タイミング(「VVT」)など、先進技術で設計される。上で説明されるように、ECU 120は、速度センサ110、圧力センサ115、およびエンジン105の他のセンサによって捕捉されたデータを受信する。ECU 120は受信されたデータを処理し、その結果、目標のエンジン性能が以下でより詳細に説明されるように達成されるように、エンジン105を動作させる。とりわけ、ECU 120は、特定のエンジン制御パラメータ(例えば、点火時期、可変弁タイミング、他)が加えられるときに、特定の動作条件(例えば、エンジン速度、エンジン負荷、他)の下で、エンジン105がいかに機能するかを連続的に監視する、極値探索制御を提供する。ECU 120は、この情報を使用して、1つまたは複数のエンジン制御パラメータを調整し、エンジン105の性能を改良する。例えば、ECU 120は、エンジン105の点火時期と可変弁タイミングとを同時に調整して、エンジン105の最大燃料効率を達成する。
【0024】
[0038]
図2は、ECU 120が、エンジン105の動作を制御して、改良されたエンジン性能を達成する方法を示す。この方法によれば、ECU 120は、正常動作モードとES最適化モードとの間を切り替える。正常モードで動作するときは、ECU 120は、速度センサ110、圧力センサ115、およびエンジン105の他のセンサで捕捉されたエンジンデータを受信する(ステップ205)。ECU 120は、センサからのデータを処理し、センサデータに基づいて、エンジン速度およびエンジン負荷など、エンジン105の複数の動作条件のそれぞれに対する値を確定する(ステップ210)。次いで、ECU 120は、動作条件が最適化の領域内に収まるかどうかを確定する(ステップ215)。最適化の領域は、ECU 120がES最適化制御に切り替える、動作条件の範囲として定義される。動作条件の範囲が
図4および
図5に示され、以下により詳細に説明される。動作条件が最適化の領域内に収まらないならば、ECU 120は、正常動作モードで作動する(run)ことを継続する。ECU 120は、1つまたは複数の予め定義されたエンジンマップ参照表にアクセスし、確定された動作条件に基づいて、適切なエンジン制御パラメータ(例えば、点火時期および弁タイミング)を確定する(ステップ220)。次いで、ECU 120は、エンジン制御パラメータに対する確定値をエンジン105に加えることによって、エンジン105の動作を制御する(ステップ225)。これらのステップは、ECU 120が正常モードで動作している限り、規則的間隔で繰り返される。正常動作モードは、
図3を参照して、以下により詳細に説明される。しかし、車両の動作条件が最適化の領域内に収まることを、ECU 120が確定するならば(ステップ215)、ECU 120は、正常動作モードからES最適化モードに移行する。ES最適化モードの間、ECU 120は、複数のエンジン制御パラメータのそれぞれに対する初期値を、予め定義されたエンジンマップ参照表に基づいて確定する(ステップ230)。次いで、ECU 120は、エンジン105の動作を制御するためにエンジン制御パラメータに対する調整値を使用する(ステップ240)前に、エンジン制御パラメータに対する初期値を、極値探索最適化プロセスの結果に基づいて調整する(ステップ235)。ES最適化プロセスが、エンジン制御パラメータの初期値をいかに調整するかについての詳細が、
図6を参照して、以下により詳細に説明される。
【0025】
[0039]ECU 120は、エンジン性能が目標値に向かって収束したかどうか、およびいつ収束したかを確定するために、1つまたは複数のエンジン性能変数(例えば、燃料効率)を監視する(ステップ245)。いくつかの場合には、以下により詳細に説明されるように、目標値は、エンジン性能変数に対する最大または最小の達成可能な値である。複数のエンジン性能変数が監視される他の場合には、目標の変数は、最大または最小の達成可能な値ではなく、複数のエンジン性能変数のうちの一最適解によって定義される値である。
【0026】
[0040]エンジン性能変数が目標値に向かって収束しなかったならば(ステップ245)、ECU 120は、センサで捕捉される新しいエンジンデータを受信し(ステップ250)、動作条件値を、センサから受信されたデータに基づいて確定する(ステップ255)。次いで、ECU 120は、車両エンジン105の動作条件が、依然として最適化の領域内に収まることを確認する(ステップ260)。車両エンジン105の動作条件が最適化の領域内に留まる限り(ステップ260)、ECU 120は、エンジン性能変数が目標値に向かって収束するまで、ES最適化モード(ステップ230、235、240、245、250、255および260)内で動作することを継続する。しかし、エンジン105の動作条件が、もはや最適化の領域内に存在しないならば、ECU 120は、ES最適化モードから正常動作モードに移行する。
【0027】
[0041]エンジン性能変数が目標値に向かって収束したときに(ステップ245)、ECU 120は、ES最適化モードを終了し(ステップ265)、エンジン性能変数は目標値に向かって収束しているので、予め定義されたエンジンマップ参照表内の値を、エンジン105に加えられたエンジン制御パラメータの調整値に基づいて調整する(ステップ270)。エンジンマップ参照表を更新するプロセスが、
図11、
図12aおよび
図12bを参照して、以下により詳細に説明される。
【0028】
[0042]ECU 120が、最適化プロセスが完了する前にES最適化モードを出る場合は(ステップ260)、エンジン105の動作条件が最適化の領域に再び入ったときに(ステップ215)、ECU 120が、自体が離脱した場所から継続することができるように、ECU 120は、最適化プロセスによるデータを記憶する。さらに、以下に詳細に説明されるように、ES最適化モードは、車両の特定の動作条件に対応する最適制御パラメータを確定する。そのように、いくつかの実施形態では、エンジン105の動作条件が、ES最適化が完了する前に変化するけれども、なお最適化の領域内に留まるならば、ECU 120は、そのES最適化プロセスを終了し、新しいエンジン動作条件に対するES最適化プロセスを再始動する。いくつかの実施形態では、ECU 120は、エンジン動作条件がそれらの以前の値に戻るときに、その最適化プロセスが再開されうるように、未完了のES最適化に対するすべてのデータを再び記憶する。
【0029】
[0043]
図3は、正常動作モードで動作している実時間エンジン制御システム100の一例を、より詳細に示す。ECU 120は、点火時期のためのエンジンマップ参照表305、所望の燃焼位相のためのエンジンマップ参照表310、および可変弁タイミングのためのエンジンマップ参照表315を記憶し、使用する。ECU 120は、エンジンセンサから、エンジン速度(N)、エンジン負荷(M)、および気筒圧力(p)の示度となる値を受信する。ECU 120は、エンジンマップ参照表315を使用して、適切な可変弁タイミング(「VVT」)を、エンジン速度(N)およびエンジン負荷(M)に基づいて確定する。VVTは、吸気弁開口に対するタイミング(「IVO」)および排気弁閉止に対するタイミング(「EVC」)を含む。VVT 315に対するエンジンマップ参照表の一例が、
図4に示される。
【0030】
[0044]ECU 120は、エンジンマップ参照表305を使用して、点火時期に対する初期値(θ
Sm)を、エンジン速度(N)およびエンジン負荷(M)に基づいて確定する。点火時期に対するエンジンマップ参照表305の一例が、
図5に示される。この初期値が、点火時期(θ
S)がエンジン105の動作を制御するために加えられる前に、所望の燃焼位相に基づいて、確定値(Δθ
S)でオフセットされる。オフセット値(Δθ
S)を確定するために、ECU 120は、圧力センサ115からの気筒圧力測定値(p)を使用して、全放熱(total heat release)の50%が発生したクランク角(θ
CA50)を計算する(モジュール325)。次いで、この値(θ
CA50)が、所望の燃焼位相に対するエンジンマップ参照表310の出力と合算され、比例積分制御器320に供給される。点火時期に対する初期値(θ
Sm)が、PI制御器320の出力(Δθ
S)に基づいて調整され、結果として得られた点火時期(θ
S)が、エンジン105の動作を制御するために加えられる。
【0031】
[0045]
図4は、VVTに対するエンジンマップ参照表315のグラフ表示を提供する。VVTに対するエンジンマップ参照表315は、複数の動作小領域400を定義する。動作小領域のそれぞれは、エンジン速度(N)に対する値の範囲およびエンジン負荷(M)に対する値の範囲(すなわち、グラフ上の小さな正方形)に相当する。VVTに対するエンジンマップ参照表315は、動作小領域のそれぞれに対応するVVT値を定義する。ECU 120は、
図3を参照して上の段落で論じられたように、検出されたエンジン速度(N)および検出されたエンジン負荷(M)に対応するVVT値を、VVTに対するエンジンマップ参照表315で定義されるように同定することによって、VVTに対する値を確定する。
【0032】
[0046]また、
図4は、最適化の領域405を示す。最適化の領域405は、エンジン速度(N)値およびエンジン負荷(M)値の範囲を含む。最適化の領域405は、VVTに対するエンジンマップ参照表315内に、複数の動作小領域を含む。ECU 120は、最適化の領域405を、アイドルにおけるエンジン105の動作条件410および巡航速度におけるエンジン105の動作条件415を含む、最も一般的に検出されるエンジン速度および最も一般的に検出されるエンジン負荷の範囲に基づいて定義する。検出されたエンジン速度(N)および検出されたエンジン負荷(M)が、定義された最適化の領域405内にあるとき、ECU 120は、エンジン105が、最適化の領域405内で動作していることを認識し、ES最適化モードを開始する。
【0033】
[0047]以下により詳細に説明されるように、特定の動作小領域に対するES最適化の遂行をいくつか完了した後、ECU 120は、VVTの平均最適調整値に基づいて、対応する値をVVTに対するエンジンマップ参照表315内に上書きする。ES最適化プロセスは、最適化の領域405内の動作小領域のそれぞれにわたって複数回完了されるので、ECU 120は、当初定義された値(点線400で表される)が、車両に特定の、VVTに対する最適値(実線420で表される)に変更されるように、エンジンマップ参照表315を最終的に調整する。例えば、
図4に示されるように、アイドル条件で動作するエンジン105に対応するVVT値が、最終的に410から425に調整される。同様に、巡航条件下で動作するエンジン105に対応するVVT値が、415から430に調整される。
【0034】
[0048]
図5は、点火時期に対するエンジンマップ参照表305のグラフ表示を提供する。また、点火時期に対するエンジンマップ参照表305は、複数の動作小領域500を定義する。動作小領域のそれぞれは、エンジン速度(N)に対する値の範囲およびエンジン負荷(M)に対する値の範囲(すなわち、グラフ上の小さな正方形)に対応する。点火時期に対するエンジンマップ参照表305は、動作小領域のそれぞれに対応する点火時期の値を定義する。ECU 120は、
図3を参照して上の段落で論じられたように、検出されたエンジン速度(N)および検出されたエンジン負荷(M)に対応する点火時期の値を同定することによって、点火時期(θ
Sm)に対する値を、点火時期に対するエンジンマップ参照表305によって定義されるように確定する。
【0035】
[0049]また、
図5は、アイドル510において動作する車両の、最も一般的に検出されたエンジン速度の範囲および最も一般的に検出されたエンジン負荷の範囲に基づく最適化の領域505を示す。加えて、
図5は、巡航速度520において動作する車両の、最も一般的に検出されたエンジン速度の範囲および最も一般的に検出されたエンジン負荷の範囲に基づく、別の最適化の領域515を示す。図示のように、アイドル510において動作する車両に対する最適化の領域505は、巡航速度520において動作する車両に対する最適化の領域515とは異なる、エンジン速度(N)値およびエンジン負荷(M)値の範囲を含む。最適化の領域の両領域505および515は、点火時期に対するエンジンマップ参照表305内の複数の動作小領域を含む。検出されたエンジン速度(N)および検出されたエンジン負荷(M)が、定義された最適化の領域505内にあるとき、ECU 120は、エンジン105が、アイドル510において動作していることを認識し、第1組の動作小領域に対するES最適化を開始する。検出されたエンジン速度(N)および検出されたエンジン負荷(M)が、他の最適化の領域515内にあるならば、ECU 120は、エンジン105が巡航速度520において動作していることを認識し、第2組の動作小領域に対するES最適化を開始する。
【0036】
[0050]VVTに対するエンジンマップ参照表315と同様に、
図4を参照して上の段落で論じられたように、ECU 120はまた、アイドル条件に対する最適化の領域505および巡航条件に対する最適化の領域515の中の動作小領域のそれぞれに対して、ES最適化の複数の実行(run)が完了した後、点火時期に対するエンジンマップ参照表305を調整する。
図5に示されるように、当初定義された値(点線500で表される)が、車両に特定の、点火時期に対する最適値(実線で表される)に変更される。例えば、アイドル条件で動作するエンジン105に対応する点火時期の値が、最終的には、510から525に調整される。同様に、巡航条件下で動作するエンジン105に対応する点火時期の値が、520から530に調整される。
【0037】
[0051]
図6は、示された実施形態における、ECU 120のES最適化モードの間の実時間エンジン制御最適化システム100の動作を示す。ECU 120は、点火時期に対するエンジンマップ参照表305、可変弁タイミングに対するエンジンマップ参照表315、ES制御器125、負荷制御器130、および実時間計算モジュール325を使用して、エンジン制御パラメータ(例えば、点火時期(θ
S)およびVVT)を確定し、検出されたエンジン負荷(M)の検出された値を調整する。圧力センサ115からの気筒圧力測定値(p)、速度センサ110からのエンジン速度データ(N)、エンジン負荷データ(M)、および燃料量データ(m
f)を含むエンジン105の出力が、ECU 120で受信され、処理される。
【0038】
[0052]気筒圧力測定値(p)および燃料量(m
f)を使用して、ECU 120は、正味燃料消費率(「NSFC」)、ならびに全放熱の50%が発生したクランク角(θ
CA50)など、他の燃焼特性の実時間計算325を行う。センサからのエンジン速度データ(N)およびエンジン負荷データ(M)を使用して、ECU 120は、エンジン速度(N)およびエンジン負荷(M)を含むエンジン105の動作条件を確定する。また、ECU 120は、
図3または
図6に示されないメモリモジュール140を使用して、全放熱の50%が発生したクランク角(θ
CA50)の計算された値などのデータを記憶する。ES最適化モードの間にメモリモジュール140に記憶された、θ
CA50の計算された値が、ECU 120の正常動作モードの間に、
図3に示される、所望の燃焼位相に対するエンジンマップ参照表310を更新するために使用される。
【0039】
[0053]検出されたエンジン速度(N)および検出されたエンジン負荷(M)が、点火時期に対するエンジンマップ参照表305および可変弁タイミングに対するエンジンマップ参照表315への入力として使用される。ECU 120は、点火時期に対するエンジンマップ参照表305を使用して、点火時期に対する初期値(θ
Sm)を、検出されたエンジン速度(N)および検出されたエンジン負荷(M)に基づいて確定する。また、ECU 120は、VVTに対するエンジンマップ参照表315を使用して、VVTに対する初期値(VVT
m)を、検出されたエンジン速度(N)および検出されたエンジン負荷(M)に基づいて確定する。以下に詳細に説明されるように、ECU 120は、極値探索(ES)制御器125を使用して、点火時期オフセット値(Δθ
S)およびVVTオフセット値(ΔVVT)を確定する。点火時期オフセット値(Δθ
S)およびVVTオフセット値(ΔVVT)が、調整された点火時期の値(θ
S(k))および調整されたVVT値(VVT(k))をエンジン105に加える前に、点火時期およびVVTの初期値に、それぞれ加えられる。
【0040】
[0054]
図6に示されるように、ECU 120は、点火時期のエンジンマップ参照表305および可変弁タイミングのエンジンマップ参照表315を使用して、2つのエンジン制御変数を同時に調整する。いくつかの実施形態では、ECU 120は、異なる周期/周波数における各エンジン制御変数に対する調整値を確定する。また、ECU 120は、交互に、調整されたエンジン制御パラメータを確定し、加えることができる。例えば、ECU 120は、最初に、調整された点火時期を確定する。調整された点火時期をエンジン105に加えた後、ECU 120は、調整されたVVTを確定する。調整されたVVTをエンジン105に加えた後、ECU 120は、点火時期の値を再び調整する。
【0041】
[0055]上で説明されたように、ECU 120は、ES制御器125を使用して、各エンジン制御パラメータを、エンジン性能変数を目標値(例えば、最大または最小)に接近させる値に調整する。しかし、1つのエンジン制御パラメータ(例えば、点火時期)の値を変更することは、車両エンジン105の動作状態における変化をもたらす。その結果、他のエンジン制御パラメータ(例えば、VVT)もまた、車両の性能を最適化するために調整される必要がある。それゆえ、いくつかの実施形態では、ES最適化プロセスが、複数のエンジン制御パラメータを同時に調整して目標のエンジン性能変数を達成するように使用されるときには、1つのエンジン制御パラメータに対する初期値を調整することは、エンジン性能変数を目標値に接近させるために、第2のエンジン制御パラメータの、対応する調整を必要とする。
【0042】
[0056]ECU 120は、ES制御器125を、NSFC(k)などのエンジン性能変数の値に適用することによって、点火時期オフセット値(Δθ
S)およびVVTオフセット値(ΔVVT)を確定する。ES制御器125は、
図7aおよび
図7bを参照して以下にさらに説明されるように、エンジン性能変数の確定値を人為的に摂動させる。ES制御器125は、点火時期オフセット値(Δθ
S)およびVTTオフセット値(ΔVVT)を、エンジン性能変数の値に基づいて確定するので、性能変数の値を人的に摂動させることが、確定されたオフセット値の摂動を引き起こす。
【0043】
[0057]
図7aは、制御パラメータに励振を加え、制御パラメータに対する最適設定点を確定し、かつ性能変数を人為的に摂動させるために使用されるES制御器125の動作の一般形式の一例を示す。ES制御器125は、計算された性能変数を受信し、高域(「HP」)フィルタ705を適用する。1次のHPフィルタ705は、(z−1)/(z+h)で定義され、ここでhは、HPフィルタの遮断周波数である。次いで、人為的摂動(ε)信号が、フィルタにかけられた性能変数に加えられる(710)。摂動、ε、は、
ε(k)=α(−1)
k (1)
として選択され、ここでkは、振幅α、周波数π/T、および位相シフトπ/2を有する摂動に対応する繰り返し数である。次いで、低域(「LP」)フィルタ715が、人為的に摂動された性能変数に対して適用される。1次のLPフィルタ715は、(1−l)/(z−l)で定義され、ここでlは、LPフィルタの遮断周波数である。次いで、積分器720が、フィルタをかけられた性能変数に対して適用される。積分器720は、T/(z−1)で定義される。次いで、人為的摂動信号、ε(k)、が、積分された性能変数に加えられて(725)、エンジン制御パラメータのオフセット値が確定される。性能変数に加えられた(710)摂動信号は、例えば正弦波励振または方形波励振を含んでよい。いくつかの実施形態では、摂動信号ε(k)の振幅αは、最適化プロセスの単一の実行の過程の間に減衰し、エンジン制御パラメータ、およびそれゆえ性能変数が最適値に向かって収束するにつれて、ゼロに向かって減少する。
【0044】
[0058]
図7bは、特に点火時期オフセット値(Δθ
S)を確定するために適合された、ES制御器125の実施を示す。同様のES制御器のプロセスが、VVTオフセット値(ΔVVT)を同時に確定するために、
図6のES制御器125によって使用される。
図7bのES制御器125は、エンジン性能変数(すなわち、NSFC(k))に対する値を受信し、NSFC(k)を目標値に接近させるオフセット値を確定する。
【0045】
[0059]
図7bのES制御器125は、点火時期に励振を加え、エンジン性能変数を人為的に摂動させ、点火時期が最適設定点に向かって収束し、エンジン性能変数が目標のエンジン性能変数に接近するまで、点火時期が最適設定点に向かって収束したかどうかを検出する。ES最適化モードが終了した後のES制御器125の出力が、点線730で示され、予め定義された点火時期に対するエンジンマップ参照表305を更新する活動において使用される。
【0046】
[0060]点火時期などのエンジン制御変数を操作することによって、燃料効率などのエンジン性能変数を最大化するためのES制御器125の目的は、以下の
図9bに示され、
【0047】
【数1】
で定義される、正味燃料消費率(「NSFC」)を最小化することによって得られ、ここでm
iは、各エンジンサイクルに対して知られている注入された燃料量であり、W
nは、測定された気筒圧力(p)および知られている体積Vから計算される、1サイクル当たりの正味指示仕事(net indicated work per cycle)である。ES制御器125の目的は、
【0049】
【数3】
を見出すことであり、ここでn
cは気筒数であり、p
kは気筒k内の圧力を表示し、積分は、720°のエンジンサイクルにわたって行われる。正味仕事W
nは、
W
n=W
g−W
p=m
iq
lhvn−(p
em−p
im)V
d (4)
で概算される、総仕事(gross work)W
gとポンピング仕事(pumping work)W
pとの間の差であり、ここでq
lhvは燃料の低位発熱量(lower heating value)であり、nは指示総効率(indicated gross efficiency)であり、(p
em、p
im)は、それぞれ排気多岐管(intake manifold)および吸気多岐管の圧力であり、V
dは変位である。
【0050】
[0061]
図7aおよび
図7bを参照して上の段落で論じられた、摂動信号ε(k)の振幅(α)は、NSFCに対する良好な信号対雑音比とトルク変動の許容レベルとの間の歩み寄りとして、1.5度のクランク角度(cad)に対して選択される。Tで表示されるサンプル時間は30エンジンサイクルであり、したがって
【0051】
【数4】
であり、ここでNは、毎分回転数(「RPM」)におけるエンジン速度である。サンプル時間は、エンジン105および負荷制御器130が、点火時期(θ
S)の関数としてのNSFCに対する静的非線形性(static nonlinearity)として近似されうるように選択される。サンプル時間の値は、整定時間(settling time)が、指令された負荷(commanded load)において、典型的なステップに対して、30サイクル未満であることを示すシミュレーションに基づく。
【0052】
[0062]
図8の上のグラフは、エンジンマップ参照表305によってもたらされた点火時期(θ
S)の値、人為的に導かれた擾乱(または摂動)(Δ)、および実際にエンジン105に加えられる、点火時期(θ
S+Δ)の摂動された値のグラフ表示を示す。
図8の下のグラフは、ES最適化ルーチンの合計5つの異なる実行に対して、同じ時間間隔にわたって確定されたエンジン性能変数(例えば、NSFC)を示す。上で
図7bを参照して論じられたES制御器125は、交互に活性化され、非活性化される。
図8のグラフでは、ES制御器125は、灰色の領域で記された時間間隔の間、非活性化される。上で論じられたように、ES最適化ルーチンは、性能変数がある値に向かって収束するときに終了する。
図7bのES制御器125は、エンジン性能変数出力(例えば、NSFC)を監視することによって、エンジン
制御パラメータ(例えば、点火時期θ
S)が、その最適設定点
【0053】
【数5】
に向かって収束したかどうかを検出する。ES制御器125は、エンジン性能変数出力が、特定の長さの時間の間、一定の許容範囲内に留まった時点、または所定の最大値もしくは最小値を超えなかった時点で、収束が発生したことを検出する。
図8のグラフでは、性能変数は、最適点火時期から−12cadの初期擾乱(Δ)に対して、ほぼ20秒以内で収束する。それぞれの最適化の実行の間、点火時期(θ
S)はその最適設定点に向かって収束し、エンジン性能変数(NSFC)は目標値に向かって収束する。
【0054】
[0063]
図9aは、VVT(またはEVC−IVO)の位置およびθ
CA50の燃焼位相の種々の組合せに対して推測される正味平均有効圧(「NMEP」)など、エンジン性能変数のグラフ表示を示す。このグラフは、NMEPの最大値が、エンジン制御変数の最適な組合せを加えることによって達成されうることを示す。ECU 120は、
図7aおよび
図7bに示されるように、ES制御器125を使用して、最大のNMEP値をもたらす組合せが同定されるまで、エンジン制御パラメータを調整する。
【0055】
[0064]同様に、
図9bは、別のエンジン性能変数、すなわちVVT位置およびθ
CA50の燃焼位相の種々の組合せに対するNSFCのグラフ表示を示す。このグラフは、NSFCの最小値が、エンジン制御
パラメータの最適な組合せを加えることによって達成されうることを示す。ECU 120は、
図7aおよび
図7bに示されるように、ES制御器125を使用して、最小のNSFC値をもたらす組合せが同定されるまで、エンジン制御パラメータを調整する。
【0056】
[0065]
図9aおよび
図9bに示される例では、エンジン性能変数に対する目標値は、最大または最小の達成可能な値である。しかし、いくつかの状況では、エンジン性能変数に対する目標値は、必ずしも最大値または最小値である必要はない。いくつかの実施形態では、ECU 120は、ES制御器125を使用して、複数のエンジン性能変数を同時に最適化する。いくつかのそのような場合には、エンジン性能変数のすべてに対して、最大値または最小値を達成することは不可能である。例えば、ES制御器125は、燃料効率を高め、かつ車両の排出物を低減するために使用されてよい。しかし、最大の燃料効率を達成するために使用される制御パラメータは、最小の達成可能な車両の排出物をもたらすことはできない。そのような実施形態では、ECU 120は、エンジン性能変数のすべての値を最大化または最小化しようとする代わりに、最適化されるべき性能変数のすべてに対する値を均衡させて最適解を達成する費用関数を定義する。費用関数が定義され、ECU 120に記憶されて、車両の種類、車両の使用目的、または地方条例(例えば、車両の排出物規制法(vehicle emissions law))などの考慮に応じて調整されてよい。
【0057】
[0066]
図10は、エンジン制御パラメータの最適な組合せが実現されるまで、最適化プロセスが、エンジン制御パラメータ(すなわち、点火時期およびVVT)の初期の組合せをいかに調整するかのグラフ表示を示す。ES制御器125で遂行された最適化プロセスの追加の実行のそれぞれが、エンジン制御パラメータの組合せを、エンジン制御パラメータの最適な組合せにより近づける。確定された時点で、
図10に示されるように、エンジン制御パラメータの最適な組合せが、最適なエンジン性能を達成するために、エンジン105に加えられる。
【0058】
[0067]上で説明されたように、ECU 120は、エンジンマップ参照表を使用して、制御パラメータに対する初期値を、検出された動作条件に基づいて確定する。ES最適化モードで動作しているとき、ECU 120は、ES制御器125の機能性を使用して、エンジン性能変数の目標値(例えば、最大化された燃料効率)を達成するために、エンジンマップ参照表からの制御パラメータの値を調整する。次いで、ECU 120は、エンジン制御パラメータの最適値を使用して、エンジンマップ参照表を更新する。このようにして、後続のエンジン動作の間に参照表によってもたらされる制御パラメータは、最適値により近くなる。さらに、ECU 120は、エンジンマップ参照表の特異性を改良して、1つまたは複数の制御パラメータに対する小さな変化が、エンジン性能変数に比較的大きな変化を引き起こす領域において、より正確な最適化をもたらすことができる。
【0059】
[0068]
図11は、ES最適化プロセスが完了した後(ステップ1105)、ECU 120のメモリ140に記憶されたエンジンマップ参照表を更新する方法を示す。上で説明されたように、ECU 120は、動作小領域のそれぞれに対して別々のES最適化プロセスを遂行する。
図12aは、9つの動作小領域を含む、ECU 120によって記憶されたエンジンマップ参照表の一例を示す。動作小領域「I」は、70%と80%との間のエンジン負荷および2000〜2100RPMのエンジン速度に対応する。動作小領域「II」は、70%と80%との間のエンジン負荷および2100〜2200RPMのエンジン速度に対応する。動作小領域「III」〜「IX」が、エンジン速度およびエンジン負荷の範囲によって、同様に定義される。エンジン制御パラメータの値(例えば、VVTまたは点火時期)が、動作小領域のそれぞれに対して、エンジンマップ参照表によって記憶される。
【0060】
[0069]上で説明されたように、特定の動作小領域に対するES最適化プロセスを完了した後(ステップ1105)の最終結果が、特定の動作小領域に対応する1つまたは複数の制御パラメータに対する、最適化され、収束された値である。ECU 120は、ES最適化プロセスのそれぞれが完了した後、これらの収束された値をメモリ140に記憶する。次いで、ECU 120は、小領域に対してメモリ140に記憶された、定義された数の収束された値にアクセスし、平均収束値を計算する(ステップ1110)。例えば、一実施形態において、ES制御器125が、動作小領域に対する最適なVVT設定を確定するために使用されているならば、ECU 120は、特定の動作小領域に対して完了された、以前の最適化プロセスに対応する、メモリ140に記憶されている、以前の5つの収束されたVVT値にアクセスして平均を計算する。
【0061】
[0070]エンジンマップ参照表内の動作小領域に対して記憶された制御パラメータを上書きする前に、ECU 120は、動作小領域内の性能変数の感度を評価する(ステップ1115)。この例では、ECU 120は、VVT値における変化によってもたらされる、エンジン105の燃料効率(性能変数)における変化の大きさを確定する。大きさが、定義されている閾値より大きいならば、ECU 120は、以下に詳細に論じられるように、動作小領域におけるエンジンマップ参照表の特異性を調整する。他の実施形態では、ECU 120は、異なる方法を使用して、所与の動作小領域におけるエンジン性能変数の感度を評価する。例えば、感度は、エンジン性能変数(例えば、燃料効率)が制御パラメータ(VVT)における変化に、いかに速やかに応答するかに基づいて計算されてよく、または感度は、変化の速度と変化の大きさとの組合せに基づいて評価されてよい。
【0062】
[0071]性能変数の感度が閾値より小さいならば、ECU 120は、平均収束値をエンジンマップ参照表に記憶して、動作小領域に対応する値を上書きする。いくつかの実施形態では、ECU 120は、平滑化フィルタをエンジンマップ参照表内のデータに適用して、新しく最適化された動作小領域に隣接する動作小領域に対して、エンジンマップ参照表内に記憶されている制御パラメータ値を調整する。例えば、ECU 120が、動作小領域「V」に対するエンジンマップ参照表内に記憶されている制御パラメータ値を変えるならば、平滑化フィルタは、動作小領域I、II、III、IV、VI、VII、VIII、およびIXに対するエンジンマップ参照表内に記憶されている制御パラメータ値を、動作小領域「V」に対して記憶された新しい値に基づいて調整することができる。
【0063】
[0072]上で留意されたように、所与の動作小領域におけるエンジン性能変数の感度が、閾値より大きいならば、ECU 120は、動作小領域を、複数のより小さい動作小領域に分割する(ステップ1125)ことによって、その動作小領域に対するエンジンマップ参照表の特異性を増加させる。
図12bは、エンジンマップ参照表の感度を増加させるために、複数のより小さい動作小領域に分割されている動作小領域の一例を示す。
図12bでは、動作小領域「I」が、4つのより小さい動作小領域、すなわちIA、IB、ICおよびIDに分割されている。ECU 120は、以前の動作小領域「I」に対する平均収束値を、新しいより小さい小領域IA、IB、ICおよびIDのそれぞれに記憶する(ステップ1130)ことによって開始する。新しい動作小領域のそれぞれに対して記憶された値は、続いて、ES最適化プロセスが新しい動作小領域のそれぞれに対して遂行されるときに、さらに調整される。
【0064】
[0073]このように、本発明は、とりわけ、車両エンジンに加えられるエンジン制御パラメータを摂動させることによって、車両エンジンの性能を最適化するためのシステムおよび方法を提供する。本発明の種々の特徴および利点は、以下の特許請求の範囲の中で説明される。