(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6128772
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】化学分析装置の校正方法及び化学分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 27/26 20060101AFI20170508BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20170508BHJP
G01N 27/12 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
G01N27/26 381B
G01N27/416 371G
G01N27/416 311G
G01N27/12 A
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-167558(P2012-167558)
(22)【出願日】2012年7月27日
(65)【公開番号】特開2014-25854(P2014-25854A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】396017165
【氏名又は名称】株式会社アプリクス
(74)【代理人】
【識別番号】100081709
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴若 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 裕介
(72)【発明者】
【氏名】桧垣 賀千
(72)【発明者】
【氏名】左右田 清和
(72)【発明者】
【氏名】後藤 満
【審査官】
櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−002682(JP,A)
【文献】
再公表特許第2011/034170(JP,A1)
【文献】
特表2011−506966(JP,A)
【文献】
特開平10−311815(JP,A)
【文献】
特開2000−338075(JP,A)
【文献】
特開2009−047431(JP,A)
【文献】
特開2000−046779(JP,A)
【文献】
特開平04−191650(JP,A)
【文献】
特開昭57−075397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00−27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体の測定対象物質の濃度を測定する化学分析装置に交換可能な検出器を基準装置に接続する第1のステップと、
予め気体の複数の濃度が判明している基準対象物質に接触させ、基準対象物質の検出値と基準対象物質の濃度値から基準検量線を得て、この基準検量線の単位濃度当たりの基準勾配係数を求め、
前記求めた基準勾配係数を予め前記基準装置に記憶させてある理論検量線の単位濃度当たりの理論勾配係数と等しくなるように補正する補正係数を算出し、
この算出した補正係数を前記検出器に記録する第2のステップと、
前記補正係数が記録された前記検出器を化学分析装置に接続する第3のステップと、
前記化学分析装置に前記検出器に記録された補正係数を入力する第4のステップと、
前記第4のステップにおいて、
前記化学分析装置は、気体の測定対象物質を含まない大気中にてゼロ点校正を行った後、
前記化学分析装置に前記検出器に記録されている補正係数を入力することを特徴とする化学分析装置の校正方法。
【請求項2】
前記測定対象物質が、少なくとも酸素、水素、オゾン、硫化水素、アルシン、ホスフィンのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の化学分析装置の校正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、
気体の測定対象物質の濃度を検出する化学分析装置の校正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化学分析装置において、検出部によって測定対象物質の濃度の測定が行われているが、濃度を測定する検出部は取り付けた化学分析装置毎に測定精度にばらつきがあるために、装置の校正を行う必要がある。
【0003】
このような化学分析装置において装置の校正を行う場合には、実際に濃度の判明している測定対象物質を使用して濃度を測定して校正するか、または別の分析方法で測定対象物質の濃度を確認し装置の表示をその値に合わせるというのが一般的である。また、例えば、模擬電流を印加し等価入力で校正する残留塩素計が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−288083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、実際に濃度を測定して校正する方法では、測定対象物質の種類によっては不安定で、高圧容器詰めのガスが無かったり、また別の分析方法で濃度確認をするにしても、測定機材を現場に搬入するのは困難な場合が多い。また、模擬電流を印加し等価入力で校正するものでは、回路構成が複雑である。
【0006】
この発明は、かかる点に鑑みてなされたもので、使用開始にあたって、測定現場に測定対象の標準物質が無くても、簡単に校正が可能な化学分析装置の校正
方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決し、かつ目的を達成するために、この発明は、以下のように構成した。
【0008】
請求項1に記載の発明は、
気体の測定対象物質の濃度を
測定する化学分析装置に交換可能な検出器を基準装置に接続する第1のステップと、
予め
気体の複数の濃度が判明している基準対象物質に接触させ、基準対象物質の検出値と基準対象物質の濃度値から基準検量線を得て、この基準検量線の単位濃度当たりの基準勾配係数を求め、
前記求めた基準勾配係数を予め前記基準装置に記憶させてある理論検量線の単位濃度当たりの理論勾配係数と等しくなるように補正する補正係数を算出し、
この算出した補正係数を前記検出器に記録する第2のステップと、
前記補正係数が記録された前記検出器を化学分析装置に接続する第3のステップと、
前記化学分析装置に前記検出器に記録された補正係数を入力する第4のステップと、
前記第4のステップにおいて、
前記化学分析装置は、
気体の測定対象物質を含まない大気中にてゼロ点校正を行った後、
前記化学分析装置に前記検出器に記録されている補正係数を入力することを特徴とする化学分析装置の校正方法である。
【0011】
請求項
2に記載の発明は、前記測定対象物質が、少なくとも酸素、水素、オゾン、硫化水素、アルシン、ホスフィンのいずれかであることを特徴とする請求項
1に記載の化学分析装置の校正方法である。
【発明の効果】
【0015】
前記構成により、この発明は、以下のような効果を有する。
【0016】
請求項1及び請求項2に記載の発明では、
気体の測定対象物質の濃度を
測定する化学分析装置に交換可能な検出器を基準装置に接続し、予め
気体の複数の濃度が判明している基準対象物質の基準検量線の単位濃度当たりの基準勾配係数を求め、予め基準装置に記憶させてある理論検量線の単位濃度当たりの理論勾配係数と等しくなるように補正する補正係数を算出し、この算出した補正係数を検出器に記録することで、補正係数が記録された検出器を測定する化学分析装置に接続し、化学分析装置に検出器に記録された補正係数を入力することができ、測定対象物質の種類に関係なく安定で、測定機材を測定現場に搬入することなく、簡単に校正が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】化学分析装置の校正方法を説明する概略図である。
【
図3】化学分析装置の校正方法を説明する工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の化学分析装置の校正
方法の実施の形態について説明する。この発明の実施の形態は、発明の最も好ましい形態を示すものであり、この発明はこれに限定されない。
【0019】
[化学分析装置の校正方法]
この実施の形態の化学分析装置の校正方法を、
図1乃至
図4に基づいて説明する。
図1は化学分析装置の校正方法を説明する概略図、
図2は基準装置の概略構成図、
図3は化学分析装置の校正方法を説明する工程図、
図4は基準勾配係数を求める方法を示す図、
図5は補正係数を算出する方法を示す図、
図6は測定対象物質の検量線を示す図である。
【0020】
この化学分析装置の校正方法の概略構成を、
図1に基づき説明する。メーカー側にある基準装置10を用いる。この基準装置10は、基準オゾンガス発生装置11、検出器20を設置するチャンバー12、検出器20の検出出力を測定するデータロガー13、データロガー13からのデータに基づき補正係数を得る処理装置14を備える。この処理装置14は、データロガー13からのデータを直接得るようにしても、一旦記録して記録装置から得るようにしてもよい。
【0021】
ユーザー側に出荷する交換可能な検出器20をチャンバー12に設置して、基準オゾンガス発生装置11から発生する基準ガスを検出器20に接触させて各濃度での検出器20の検出出力をデータロガー13により記録する。処理装置14では、データロガー13により記録した検出器20の固有の出力と濃度の検量線により、理論検量線の単位濃度当たりの理論勾配係数と等しくなるように補正する補正係数を算出する。
【0022】
この処理装置14で得られた補正係数をシール20aなどにより検出器20に記録し、この補正係数が記録された検出器20をユーザー側に備えた化学分析装置30に接続し、この化学分析装置30に検出器20に記録された補正係数を入力する。このようにして、測定対象物質の種類に関係なく安定で、測定機材を測定現場に搬入することなく、簡単に校正を可能にする。
【0023】
この処理装置14の構成を、
図2に基づき説明する。この実施の形態の処理装置14は、検出情報入力手段A、基準検量線作成手段B、基準勾配係数算出手段C、理論勾配係数記憶手段D、補正係数算出手段Eを有し、マイクロコンピュータにより構成される。
【0024】
この化学分析装置の校正方法の工程を、
図3に基づき説明する。メーカー側において、交換可能な検出器20を基準装置10に接続し(S1)、この検出器20に予め気体又は液体の複数の濃度が判明している基準対象物質を接触させる(S2)。この検出器20の濃度検出情報が検出情報入力手段Aにより入力され、基準検量線作成手段Bにより基準対象物質の検出値と基準対象物質の濃度値から基準検量線を得て、基準勾配係数算出手段Cにより基準検量線の単位濃度当たりの基準勾配係数を求める(S3)。次に、予め理論勾配係数記憶手段Dに記憶させてある理論検量線の単位濃度当たりの理論勾配係数と等しくなるように、補正係数算出手段Eにより補正する補正係数を算出する(S4)。
【0025】
この基準勾配係数を求める方法を、
図4に基づいて説明する。この実施の形態では、交換可能な検出器20として電気化学センサを用い、基準装置10に検出器20接続し、予め気体又は液体の複数の濃度が判明している基準対象物質を接触させ、基準対象物質の濃度のフルスケールの約100%、80%、40%、0%で検出した電流を電圧に変換した出力電圧を測定する。得られた出力電圧と濃度による基準検量線を作成し、基準検量線の傾き即ち単位濃度当たりの基準勾配係数b(y=bX y:濃度 X:出力電圧)を求める。
【0026】
次に、補正係数を算出する方法を、
図5に基づいて説明する。予め理論勾配係数記憶手段Dに記憶させてある理論検量線の単位濃度当たりの理論勾配係数a(y=aX y:濃度 X:出力電圧)と等しくなるよう補整係数F(a=bF)を算出する。理論勾配係数は電気回路設計時に決めた係数である。この実施の形態では、回路の常数計算等によりaとしているが、回路設計時にa’なるように設計することも可能である。
図5においては、検出器1と検出器2として、予め理論勾配係数記憶手段Dに記憶させてある理論検量線の単位濃度当たりの理論勾配係数と等しくなるように補正する補正係数を算出する例を示している。
【0027】
この算出した補正係数を検出器20に記録する(S5)。この検出器20の方法としては、次の方法がある。例えば、シール20aに補正係数を記載し、このシール20aを検出器20に貼り付ける。また、検出器20に補正係数を直接印字する、または刻印するなどがある。また、検出器20の取扱書に記載する方法でもよい。
【0028】
この補正係数が記録された検出器20は、メーカー側からユーザー側へ出荷され、ユーザー側では補正係数が記録された検出器20を化学分析装置30に接続する(S6)。この化学分析装置30では、測定開始に当たっては、気体又は液体の測定対象物質を含まない大気中にてゼロ点校正を行った後(S7)、化学分析装置30に検出器20に記録されている補正係数を入力する(S8)。このようにして、測定場所に、濃度の判明したスパン校正物質がなくても、装置校正が可能である。
【0029】
この実施の形態の化学分析装置30は、測定対象物質が、少なくとも酸素、水素、オゾン、硫化水素、アルシン、ホスフィンのいずれかであり、
図6に酸素、水素、オゾンについての検出値と濃度値から検量線を示す。
【0030】
[化学分析装置]
この実施の形態の化学分析装置30を、
図7乃至
図9に基づいて説明する。
図7は化学分析装置の正面図、
図8は化学分析装置の側面図、
図9は化学分析装置の構成ブロック図である。
【0031】
この実施の形態の化学分析装置30は、装置本体31に、電源スイッチ32、操作部33、表示部34を備え、この装置本体31に検出器20が着脱可能になっている。この検出器20は、メーカー側から出荷されて補正係数が記録されたものであり、気体又は液体の測定対象物質の濃度に比例して検出値が変化するように構成される。この測定対象物質が、少なくとも酸素、水素、オゾン、硫化水素、アルシン、ホスフィンのいずれかである。
【0032】
操作部33には、ゼロダイヤル33a、スパンダイヤル33b、アラームダイヤル33c、テストダイヤル33d、モード切替スイッチ33dが設けられている。モード切替スイッチ33dは、「MES」表示に合わせ、測定が行われ、「ALM」表示に合わせ、アラームダイヤル33cを操作して濃度警報する数値が入力され、「FADJ」表示に合わせ、ゼロダイヤル33aを操作してゼロ点校正値が入力され、スパンダイヤル33bを操作して補正係数が入力される。
【0033】
表示部34には、測定対象物質の濃度値を表示する表示部34a、測定信号の出力示す表示部34b、測定の濃度を警報する表示部34cが設けられている。
【0034】
この装置本体31には、制御装置60が備えられ、この制御装置60はアナログ回路で構成され、演算部61と、ゼロ点校正部62と、補正係数記憶部63とを有し、電源スイッチ32により駆動電源が入り、操作部33からの信号に基づき検出器20により測定対象物質の濃度を測定し、表示部34に表示するように制御する。
【0035】
演算部61は、検出器20からの検出値に基づき測定対象物質の濃度値を得るように構成され、ゼロ点校正部62では、測定対象物質を含まない大気中にて検出器20のゼロ点校正を行い、補正係数記憶部63に化学分析装置の校正方法により得られる補正係数を記憶し、検出器20からの検出値を校正して測定対象物質の濃度値を得る。
【0036】
この実施の形態では、複数の濃度の判明しているオソンガスに電気化学センサを接触させ、その出力電圧を測定し、得られた出力電圧とオソンガスの濃度から基準検量線を作成し、この基準検量線の傾き即ち1ppmあたりの基準勾配係数b(y=bX y:濃度 X:出力電圧)が予め記憶されている理論勾配係数a(y=aX)と等しくなるよう補正係数F(a=Fb)値を算出し、電気化学センサに記録してある。
【0037】
測定開始にあたっては、化学分析装置に電気化学センサを接続し、測定対象物質を含まない雰囲気中にてゼロ点校正を行った後、化学分析装置に、電気化学センサに記録されている補正係数F値を電気的に入力することにより、測定現場に標準対象物質が無くても、校正が可能となる。
【0038】
オソンガスは、例えば食品工場での室内殺菌に使用されており、その濃度管理にオソンガスモニタが使用されるが、通常のオソンガスモニタであれば、校正時標準ガスを使用することとなるが、オゾンは不安定で濃度の安定なガスを長時間供給するのが難しく問題があったが、この発明では、スタートアップ時での校正にオソンガスを必要とせず、操作も簡単であることから特別に化学知識のある者でなくても容易に操作が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
この発明は、
気体の測定対象物質の濃度を検出する化学分析装置の校正方法に適用可能であり、使用開始にあたって、測定現場に測定対象の標準物質が無くても、簡単に校正が可能である。
【符号の説明】
【0040】
10 基準装置
11 基準オゾンガス発生装置
12 チャンバー
13 データロガー
14 処理装置
20 検出器
30 化学分析装置
A 検出情報入力手段
B 基準検量線作成手段
C 基準勾配係数算出手段
D 理論勾配係数記憶手段
E 補正係数算出手段