(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブを、3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結し、前記各リンク機構は、それぞれ前記基端側のリンクハブおよび先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材とでなり、前記各リンク機構は、このリンク機構を直線で表現した幾何学モデルが、前記中央リンク部材の中央部に対する基端側部分と先端側部分とが対称を成す形状であるパラレルリンク機構において、
前記端部リンク部材に対する前記中央リンク部材の揺動範囲は、前記基端側のリンクハブの中心軸と前記先端側のリンクハブの中心軸との成す角度である折れ角の可能な範囲内における最大値よりも大きく、
前記基端側のリンクハブと前記基端側の端部リンク部材の一端との回転対偶、前記先端側のリンクハブと前記先端側の端部リンク部材の一端との回転対偶、前記基端側および先端側の端部リンク部材の他端と前記中央リンク部材の両端との回転対偶にそれぞれ軸受を介在させ、これら軸受として、臨界揺動角が、前記折れ角の前記最大値よりも小さいものを使用したことを特徴とするパラレルリンク機構。
請求項1または請求項2において、前記軸受は深溝玉軸受であり、この深溝玉軸受の転動体の個数をZとした場合、前記臨界揺動角を2・180/(0.555・Z・π)[deg]としたパラレルリンク機構。
請求項1または請求項2において、前記軸受は円筒ころ軸受であり、この円筒ころ軸受の転動体の個数をZとした場合、前記臨界揺動角を2・180/(0.37・(Z+0.1)・π)[deg]としたパラレルリンク機構。
請求項1または請求項2において、前記軸受は針状ころ軸受であり、この針状ころ軸受の転動体の個数をZとした場合、前記臨界揺動角を2・180/(0.544・Z・π)[deg]としたパラレルリンク機構。
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のパラレルリンク機構を備え、このパラレルリンク機構の前記基端側のリンクハブに入力軸を設け、かつ前記先端側のリンクハブに出力軸を設けたことを特徴とする等速自在継手。
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のパラレルリンク機構を備え、このパラレルリンク機構の3組以上のリンク機構のうちの少なくとも2組に、前記基端側の端部リンク部材を回動させて、前記基端側のリンクハブに対する前記先端側のリンクハブの姿勢を変更させるアクチュエータを設けたことを特徴とするリンク作動装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のパラレルリンク機構は、各リンクの作動角が小さいため、トラベリングプレートの作動範囲を大きく設定するには、リンク長さを長くする必要がある。それにより、機構全体の寸法が大きくなって、装置が大型になってしまうという問題があった。また、リンク長さを長くすると、機構全体の剛性の低下を招く。そのため、トラベリングプレートに搭載されるツールの重量、つまりトラベリングプレートの可搬重量も小さいものに制限されるという問題もあった。これらの理由から、コンパクトな構成でありながら、精密で広範な作動範囲の動作が要求される医療機器等に用いるのは難しい。
【0005】
特許文献2の等速自在継手、および特許文献3のリンク作動装置は、3節連鎖のリンク機構を3組以上設けた構成としたことにより、コンパクトな構成でありながら、広範な作動範囲での動力伝達および精密な動作が可能となっている。しかし、上記構成は、リンク機構の回転対偶部が揺動運動するため、作動範囲によって回転対偶部に設けられた軸受の寿命が低下する恐れがある。
【0006】
この発明の目的は、コンパクトな構成でありながら、精密で広範な作動範囲の動作が可能で、かつ回転対偶部に設けられた軸受の長寿命化を実現できるパラレルリンク機構を提供することである。
この発明の他の目的は、コンパクトな構成でありながら、精密で広範な作動範囲の動作が可能で、かつ回転対偶部に設けられた軸受の長寿命化を実現でき、基端側のリンクハブの中心軸と先端側のリンクハブの中心軸の折れ角が変わっても、入力軸と出力軸とが等速回転する状態に維持される等速自在継手を提供することである。
この発明の他の目的は、コンパクトな構成でありながら、精密で広範な作動範囲の動作が可能で、かつ回転対偶部に設けられた軸受の長寿命化を実現でき、基端側のリンクハブに対して先端側のリンクハブを任意の姿勢に変更することができるリンク作動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のパラレルリンク機構は、基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブを、3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結し、前記各リンク機構は、それぞれ前記基端側のリンクハブおよび先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材とでなる。前記各リンク機構は、このリンク機構を直線で表現した幾何学モデルが、前記中央リンク部材の中央部に対する基端側部分と先端側部分とが対称を成す形状である。この発明のパラレルリンク機構は、上記構成において、
前記端部リンク部材に対する前記中央リンク部材の揺動範囲は、前記基端側のリンクハブの中心軸と前記先端側のリンクハブの中心軸との成す角度である折れ角の可能な範囲内における最大値よりも大きく、前記基端側のリンクハブと前記基端側の端部リンク部材の一端との回転対偶、前記先端側のリンクハブと前記先端側の端部リンク部材の一端との回転対偶、前記基端側および先端側の端部リンク部材の他端と前記中央リンク
部材の両端との回転対偶にそれぞれ軸受を介在させ、これら軸受として、臨界揺動角
が、折れ角の
前記最大値よりも小さいものを使用したことを特徴とする。なお、上記臨界揺動角は、軸受の実用可能な最小の揺動角であり、軸受諸元等で定まり定格寿命が得られる最小の揺動角を言う。
【0008】
この構成によると、基端側のリンクハブと、先端側のリンクハブと、3組以上のリンク機構とで、基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブが直交2軸方向に移動自在な2自由度機構が構成される。言い換えると、基端側のリンクハブに対して先端側のリンクハブを、回転が2自由度で姿勢変更自在な機構である。この2自由度機構は、コンパクトでありながら、基端側のリンクハブに対する先端側のリンクハブの可動範囲を広くとれる。例えば、基端側のリンクハブの中心軸と先端側のリンクハブの中心軸の折れ角は最大で約±90°であり、基端側のリンクハブに対する先端側のリンクハブの旋回角を0°〜360°の範囲に設定できる。
【0009】
また、上記各回転対偶に軸受を介在させたことにより、各回転対偶での摩擦抵抗を抑えて回転抵抗の軽減を図ることができ、滑らかな動力伝達を確保できると共に耐久性を向上できる。パラレルリンク機構の構造上、これら各回転対偶部の軸受は揺動運動を行う。その揺動角が小さければ揺動寿命は延びるが、ある程度以下の角度になると、フレッティングを生じて早期に寿命に達する。回転対偶部に設置する軸受として、前記臨界揺動角が、基端側のリンクハブの中心軸と先端側のリンクハブの中心軸の最大折れ角よりも小さいものを使用することで、軸受の長寿命化を図ることができる。その根拠を以下に記す。
【0010】
基端側のリンクハブに対する基端側の端部リンク部材の回転角をβn、基端側の端部リンク部材に回転自在に連結された中央リンク部材の連結端軸と、先端側の端部リンク部材に回転自在に連結された中央リンク部材の連結端軸とが成す角度をγ、基準となる基端側の端部リンク部材に対する各基端側の端部リンク部材の円周方向の離間角をδn、基端側のリンクハブの中心軸に対して先端側のリンクハブの中心軸が傾斜した垂直角度である折れ角をθ、基端側のリンクハブの中心軸に対して先端側のリンクハブの中心軸が傾斜した水平角度である旋回角をφとした場合、
cos(θ/2)sinβn−sin(θ/2)sin(φ+δn)cosβn+sin(γ/2)=0 ・・・(式1)
の関係が成り立つ。式1において、折れ角θの最大値をθ
maxとして旋回角φを変化させた場合の回転角βnの変化量から、基端側のリンクハブに対する基端側の端部リンク部材の揺動範囲、および先端側のリンクハブに対する先端側の端部リンク部材の揺動範囲が求められる。求められた揺動範囲はθ
maxとなる。一方、端部リンク部材に対する中央リンク部材の揺動範囲は、パラレルリンク機構の構造上、θ
maxよりも大きくなる。そのため、各回転対偶部の軸受について、臨界揺動角ηをθ
max以下に設定しておけば、どの軸受も臨界揺動角η以上で駆動することになり、長寿命化を実現できる。
【0011】
この発明において、前記臨界揺動角は、定められた作業動作における前記折れ角の最大値よりも小さいのが、より好ましい。上記の「定められた作業動作」とは、このパラレルリンク機構を設置した機器の構成上で必然的に決まる動作、例えば等速自在継手に使用される場合の動作や、このパラレルリンク機構を駆動させるアクチュエータを設けた場合に、そのアクチュエータを制御する制御装置によって定まる作業動作を言う。前記アクチュエータを設ける場合、アクチュエータの動作範囲等の機能上で定まる作業動作も、上記の作業動作に該当する。
臨界揺動角が、定められた作業動作における折れ角の最大値よりも小さい軸受を使用すると、定められた作業動作中にフレッティング等が起きることを防ぐことができ、より一層の長寿命化を実現することが可能となる。
【0012】
前記軸受が深溝玉軸受であり、この深溝玉軸受の転動体の個数をZとした場合、前記臨界揺動角を2・180/(0.555・Z・π)[deg]とするのが良い。このように定められた臨界揺動角の値は、実験データから得られる臨界揺動角の最適値とほぼ合致する。
【0013】
前記軸受が円筒ころ軸受であり、この円筒ころ軸受の転動体の個数をZとした場合、前記臨界揺動角を2・180/(0.37・(Z+0.1)・π)[deg]とするのが良い。このように定められた臨界揺動角の値は、実験データから得られる臨界揺動角の最適値とほぼ合致する。
【0014】
前記軸受が針状ころ軸受であり、この針状ころ軸受の転動体の個数をZとした場合、前記臨界揺動角を2・180/(0.544・Z・π)[deg]とするのが良い。このように定められた臨界揺動角の値は、実験データから得られる臨界揺動角の最適値とほぼ合致する。
【0015】
この発明の等速自在継手は、上記いずれかのパラレルリンク機構を備え、このパラレルリンク機構の前記基端側のリンクハブに入力軸を設け、かつ前記先端側のリンクハブに出力軸を設けたことを特徴とする。
パラレルリンク機構の各リンク機構は、このリンク機構を直線で表現した幾何学モデルが、中央リンク部材の中央部に対する基端側部分と先端側部分とが対称を成す形状であるため、幾何学的対称性から、基端側のリンクハブおよび基端側の端部リンク部材と、先端側のリンクハブおよび先端側の端部リンク部材とが同じに動き、基端側と先端側は同じ回転角になって等速で回転する。このため、基端側のリンクハブの中心軸と先端側のリンクハブの中心軸の折れ角が変わっても、入力軸と出力軸とが等速回転する状態に維持される。
【0016】
この発明のリンク作動装置は、上記いずれかのパラレルリンク機構を備え、このパラレルリンク機構の3組以上のリンク機構のうちの少なくとも2組に、前記基端側の端部リンク部材を回動させて、前記基端側のリンクハブに対する前記先端側のリンクハブの姿勢を変更させるアクチュエータを設けたことを特徴とする。
3組以上のリンク機構のうちの少なくとも2組について、基端側の端部リンク部材の回転角度が決まれば基端側のリンクハブに対する先端側のリンクハブの姿勢も決まる。よって、3組以上のリンク機構のうちの少なくとも2組にアクチュエータを設け、これらアクチュエータを適正に制御することで、基端側のリンクハブに対して先端側のリンクハブを任意の姿勢に変更することができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明のパラレルリンク機構は、基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブを、3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結し、前記各リンク機構は、それぞれ前記基端側のリンクハブおよび先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材とでなり、前記各リンク機構は、このリンク機構を直線で表現した幾何学モデルが、前記中央リンク部材の中央部に対する基端側部分と先端側部分とが対称を成す形状であり、
前記端部リンク部材に対する前記中央リンク部材の揺動範囲は、前記基端側のリンクハブの中心軸と前記先端側のリンクハブの中心軸との成す角度である折れ角の可能な範囲内における最大値よりも大きく、前記基端側のリンクハブと前記基端側の端部リンク部材の一端との回転対偶、前記先端側のリンクハブと前記先端側の端部リンク部材の一端との回転対偶、前記基端側および先端側の端部リンク部材の他端と前記中央リンク
部材の両端との回転対偶にそれぞれ軸受を介在させ、これら軸受として、臨界揺動角が、前
記折れ角の
前記最大値よりも小さいものを使用したため、コンパクトな構成でありながら、精密で広範な作動範囲の動作が可能で、かつ回転対偶部に設けられた軸受の長寿命化を実現できる。
【0018】
この発明の等速自在継手は、上記いずれかのパラレルリンク機構を備え、このパラレルリンク機構の前記基端側のリンクハブに入力軸を設け、かつ前記先端側のリンクハブに出力軸を設けたため、コンパクトな構成でありながら、精密で広範な作動範囲の動作が可能で、かつ回転対偶部に設けられた軸受の長寿命化を実現でき、基端側のリンクハブの中心軸と先端側のリンクハブの中心軸の折れ角が変わっても、入力軸と出力軸とが等速回転する状態に維持される。
【0019】
この発明のリンク作動装置は、上記いずれかのパラレルリンク機構を備え、このパラレルリンク機構の3組以上のリンク機構のうちの少なくとも2組に、前記基端側の端部リンク部材を回動させて、前記基端側のリンクハブに対する前記先端側のリンクハブの姿勢を変更させるアクチュエータを設けたため、コンパクトな構成でありながら、精密で広範な作動範囲の動作が可能で、かつ回転対偶部に設けられた軸受の長寿命化を実現でき、基端側のリンクハブに対して先端側のリンクハブを任意の姿勢に変更することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
この発明にかかるパラレルリンク機構の一実施形態を
図1〜
図5と共に説明する。
図1および
図2はそれぞれ異なる状態を示す正面図であり、このパラレルリンク機構1は、基端側のリンクハブ2に対し先端側のリンクハブ3を3組のリンク機構4を介して姿勢変更可能に連結したものである。
図1および
図2では、1組のリンク機構4のみが示されている。
【0022】
図3は、パラレルリンク機構1を次元的に表わした斜視図である。各リンク機構4は、基端側の端部リンク部材5、先端側の端部リンク部材6、および中央リンク部材7で構成され、4つの回転対偶からなる3節連鎖のリンク機構をなす。基端側および先端側の端部リンク部材5,6はL字状をなし、基端がそれぞれ基端側のリンクハブ2および先端側のリンクハブ3にそれぞれ回転自在に連結されている。中央リンク部材7は、両端に基端側および先端側の端部リンク部材5,6の先端がそれぞれ回転自在に連結されている。
【0023】
基端側および先端側の端部リンク部材5,6は球面リンク構造で、3組のリンク機構4における球面リンク中心PA,PB(
図1、
図2)は一致しており、また、その球面リンク中心PA,PBからの距離も同じである。端部リンク部材5,6と中央リンク部材7との各回転対偶の中心軸は、ある交差角をもっていてもよいし、平行であってもよい。
【0024】
つまり、3組のリンク機構4は、幾何学的に同一形状をなす。幾何学的に同一形状とは、各リンク部材5,6,7を直線で表現した幾何学モデル、すなわち各回転対偶と、これら回転対偶間を結ぶ直線とで表現したモデルが、中央リンク部材7の中央部に対する基端側部分と先端側部分が対称を成す形状であることを言う。
図4は、一組のリンク機構4を直線で表現した図である。
【0025】
この実施形態のリンク機構4は回転対称タイプで、基端側のリンクハブ2および基端側の端部リンク部材5と、先端側のリンクハブ3および先端側の端部リンク部材6との位置関係が、中央リンク部材7の中心線Cに対して回転対称となる位置構成になっている。
図1は、基端側のリンクハブ2の中心軸QAと先端側のリンクハブ3の中心軸QBとが同一線上にある状態を示し、
図2は、基端側のリンクハブ2の中心軸QAに対して先端側のリンクハブ3の中心軸QBが所定の作動角をとった状態を示す。各リンク機構4の姿勢が変化しても、基端側と先端側の球面リンク中心PA,PB間の距離Dは変化しない。
【0026】
基端側のリンクハブ2と先端側のリンクハブ3と3組のリンク機構4とで、基端側のリンクハブ2に対し先端側のリンクハブ3が直交2軸方向に移動自在な2自由度機構が構成される。言い換えると、基端側のリンクハブ2に対して先端側のリンクハブ3を、回転が2自由度で姿勢変更自在な機構である。この2自由度機構は、コンパクトでありながら、基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の可動範囲を広くとれる。例えば、基端側のリンクハブ2の中心軸QAと先端側のリンクハブ3の中心軸QBの折れ角θの最大値(最大折れ角)を約±90°とすることができる。また、基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の旋回角φを0°〜360°の範囲に設定できる。折れ角θは、基端側のリンクハブ2の中心軸QAに対して先端側のリンクハブ3の中心軸QBが傾斜した垂直角度のことであり、旋回角φは、基端側のリンクハブ2の中心軸QAに対して先端側のリンクハブ3が傾斜した水平角度のことである。
【0027】
基端側のリンクハブ2および先端側のリンクハブ3は、その中心部に貫通孔10が軸方向に沿って形成され、外形が球面状をしたドーナツ形状をしている。これら基端側のリンクハブ2および先端側のリンクハブ3の外周面の円周方向に等間隔の位置に、基端側の端部リンク部材5および先端側の端部リンク部材6がそれぞれ回転自在に連結されている。
【0028】
図5は、基端側のリンクハブ2と基端側の端部リンク部材5の回転対偶部、および基端側の端部リンク部材5と中央リンク部材7の回転対偶部を示す断面図である。基端側のリンクハブ2は、前記軸方向の貫通孔10と外周側とを連通する半径方向の連通孔11が円周方向3箇所に形成され、各連通孔11内に設けた複列の軸受12により軸部材13がそれぞれ回転自在に支持されている。軸部材13の外側端部は基端側のリンクハブ2から突出し、その突出ねじ部13aに基端側の端部リンク部材5が結合され、ナット14によって締付け固定されている。
【0029】
前記軸受12は、例えば深溝玉軸受等の転がり軸受であり、その外輪(図示せず)が前記連通孔11の内周に嵌合し、その内輪(図示せず)が前記軸部材13の外周に嵌合している。外輪は止め輪15によって抜け止めされている。また、内輪と基端側の端部リンク部材5の間には間座16が介在し、ナット14の締付力が基端側の端部リンク部材5および間座16を介して内輪に伝達されて、軸受12に所定の予圧を付与している。
【0030】
基端側の端部リンク部材5と中央リンク部材7の回転対偶部は、中央リンク部材7の両端に形成された連通孔18に複列の軸受19が設けられ、これら軸受19により、基端側の端部リンク部材5の先端の軸部20が回転自在に支持されている。軸受19は、間座21を介して、ナット22によって締付け固定されている。
【0031】
前記軸受19は、例えば深溝玉軸受等の転がり軸受であり、その外輪(図示せず)が前記連通孔18の内周に嵌合し、その内輪(図示せず)が前記軸部20の外周に嵌合している。外輪は止め輪23によって抜け止めされている。軸部20の先端ねじ部20aに螺着したナット22の締付力が間座21を介して内輪に伝達されて、軸受19に所定の予圧を付与している。
【0032】
以上、基端側のリンクハブ2と基端側の端部リンク部材5の回転対偶部、および基端側の端部リンク部材5と中央リンク部材7の回転対偶部について説明したが、先端側のリンクハブ3と先端側の端部リンク部材6の回転対偶部、および先端側の端部リンク部材6と中央リンク部材7の回転対偶部も同じ構成である(図示省略)。
【0033】
このように、各リンク機構4における4つの回転対偶部、つまり、基端側のリンクハブ2と基端側の端部リンク部材5の回転対偶部、先端側のリンクハブ3と先端側の端部リンク部材6の回転対偶部、基端側の端部リンク部材5と中央リンク部材7と回転対偶部、および先端側の端部リンク部材6と中央リンク部材7の回転対偶部に、軸受12,19を設けた構造とすることにより、各回転対偶での摩擦抵抗を抑えて回転抵抗の軽減を図ることができ、滑らかな動力伝達を確保できると共に耐久性を向上できる。
【0034】
この軸受12,19を設けた構造では、軸受12,19に予圧を付与することにより、ラジアル隙間とスラスト隙間をなくし、回転対偶のがたつきを抑えることができ、基端側のリンクハブ2側と先端側のリンクハブ3側間の回転位相差がなくなり等速性を維持できると共に振動や異音の発生を抑制できる。特に、前記軸受12,19の軸受隙間を負すきまとすることにより、入出力間に生じるバックラッシュを少なくすることができる。
【0035】
軸受12を基端側のリンクハブ2および先端側のリンクハブ3に埋設状態で設けたことにより、パラレルリンク機構1全体の外形を大きくすることなく、基端側のリンクハブ2および先端側のリンクハブ3の外形を拡大することができる。そのため、基端側のリンクハブ2および先端側のリンクハブ3を他の部材に取付けるための取付スペースの確保が容易である。
【0036】
パラレルリンク機構1の構造上、各回転対偶部の軸受12,19は揺動運動を行う。その揺動角が小さければ揺動寿命は延びるが、ある程度以下の角度になると、フレッティングを生じて早期に寿命に達する。そこで、各回転対偶部に設置する軸受12,19の長寿命化を図るために、
図6および
図7に示すように、これら軸受12,19として、軸受の実用可能な最小の揺動角である臨界揺動角ηが、基端側のリンクハブ2の中心軸QAと先端側のリンクハブ3の中心軸QBの折れ角θの最大値(最大折れ角)θ
maxよりも小さいものを使用している。この最大折れ角θ
maxは、パラレルリンク機構1の構造上で可能な範囲内における折れ角θの最大値であり、より好ましくは、定められた作業動作における折れ角θの最大値である。その根拠を以下に記す。
【0037】
基端側のリンクハブ2に対する基端側の端部リンク部材5の回転角をβn、基端側の端部リンク部材5に回転自在に連結された中央リンク部材7の連結端軸と、先端側の端部リンク部材6に回転自在に連結された中央リンク部材7の連結端軸とが成す角度をγ、基準となる基端側の端部リンク部材5に対する各基端側の端部リンク部材5の円周方向の離間角をδn、基端側のリンクハブ2の中心軸QAに対して先端側のリンクハブ3の中心軸QBが傾斜した垂直角度である折れ角をθ、基端側のリンクハブ2の中心軸QAに対して先端側のリンクハブ3の中心軸QBが傾斜した水平角度である旋回角をφとした場合、
cos(θ/2)sinβn−sin(θ/2)sin(φ+δn)cosβn+sin(γ/2)=0 ・・・(式1)
の関係が成り立つ。式1において、最大折れ角をθ
maxとして旋回角φを変化させた場合の回転角βnの変化量から、基端側のリンクハブ2に対する基端側の端部リンク部材5の揺動範囲、および先端側のリンクハブ3に対する先端側の端部リンク部材6の揺動範囲が求められる。求められた揺動範囲はθ
maxとなる(
図6)。一方、端部リンク部材5,6に対する中央リンク部材7の揺動範囲は、構造計算式の開示は省略するが、パラレルリンク機構1の構造上、θ
maxよりも大きくなる(
図7)。そのため、各回転対偶部の軸受12,19について、臨界揺動角ηをθ
max以下に設定しておけば、どの軸受12,19も臨界揺動角η以上で駆動することになり、長寿命化を実現できる。
臨界揺動角ηが、定められた作業動作における折れ角の最大値よりも小さい軸受12,19を使用する場合は、定められた作業動作中にフレッティング等が起きることを防ぐことができ、より一層の長寿命化を実現することが可能となる。
【0038】
臨界揺動角ηについて、補足的に説明する。軸受の揺動角が非常に小さい場合は、軌道輪と転動体との接触面に油膜が形成され難く、フレッティング(微動摩耗)を生じることがある。内輪揺動の場合の臨界揺動角ηは式2で表される。
η≧(360/Z)・{d
p/(d
p−D
p・cosα)}・・・(式2)
Z:転動体(1列)の数
d
p:転動体のピッチ円直径
D
p:転動体の直径
α:接触角
なお、外輪揺動の場合は、右辺分母が(d
p+D
p・cosα)となる。
【0039】
具体的には、
図8のように軸受12(19)が深溝玉軸受である場合は、この深溝玉軸受の転動体12a(19a)の個数をZとしたとき、臨界揺動角ηを2・180/(0.555・Z・π)[deg]とする。軸受12(19)が円筒ころ軸受である場合は(図示せず)、この円筒ころ軸受の転動体の個数をZとしたとき、臨界揺動角ηを2・180/(0.37・(Z+0.1)・π)[deg]とする。また、軸受12(19)が針状ころ軸受である場合は(図示せず)、この針状ころ軸受の転動体の個数をZとしたとき、臨界揺動角ηを2・180/(0.544・Z・π)[deg]とする。このように定められた臨界揺動角の値は、実験データから得られる臨界揺動角ηの最適値とほぼ合致する。
【0040】
図9および
図10は、この発明のパラレルリンク機構の異なる実施形態を示す。このパラレルリンク機構1は、基端側のリンクハブ2および先端側のリンクハブ3に対して端部リンク部材5,6をそれぞれ回転自在に支持する軸受12(
図10)を外輪回転タイプとしたものである。基端側のリンクハブ2と基端側の端部リンク部材5の回転対偶部を例にとって説明すると、
図10に示すように、基端側のリンクハブ2の円周方向の3箇所に軸部25が形成され、この軸部25の外周に複列で設けた軸受12の内輪(図示せず)が嵌合し、基端側の端部リンク部材5に形成された連通孔26の内周に軸受12の外輪(図示せず)が嵌合している。軸部25の先端ねじ部25aに螺着したナット27による締付けにより、間座28を介して軸受12に所定の予圧量が付与されている。先端側のリンクハブ3と先端側の端部リンク部材6の回転対偶部も、上記同様の構造である。
【0041】
また、図例では、基端側の端部リンク部材5に対して中央リンク部材7を支持する軸受19は、基端側の端部リンク部材5の先端に形成された連通孔30の内周に外輪(図示せず)が嵌合し、中央リンク部材7と一体の軸部31の外周に内輪(図示せず)が嵌合している。軸部31の先端ねじ部31aに螺着したナット32による締付けにより、間座33を介して軸受19に所定の予圧量が付与されている。先端側の端部リンク部材6と中央リンク部材7の回転対偶部も、上記同様の構造である。
このパラレルリンク機構1も、前記実施形態と同様に、軸受12,19として、臨界揺動角ηが最大折れ角θ
maxよりも小さいものを使用している。
【0042】
図11は、この発明のパラレルリンク機構を用いた等速自在継手を示す。この等速自在継手41は、
図1ないし
図5に示すパラレルリンク機構1の基端側のリンクハブ2に、取付板42を介して入力軸43を取付け、かつ先端側のリンクハブ3に、取付板44を介して出力軸45を取付けたものである。入力軸43および出力軸45の軸心は、基端側のリンクハブ2の中心軸QAおよび基端側のリンクハブ3の中心軸QBとそれぞれ一致している。
【0043】
パラレルリンク機構1において、基端側および出力側のリンクハブ2,3の軸部材13(
図5)の角度、および長さが等しく、かつ基端側の端部リンク部材5と先端側の端部リンク部材6の幾何学的形状が等しく、かつ中央リンク部材7についても基端側と先端側とで形状が等しいとき、中央リンク部材7の対称面に対して、中央リンク部材7と端部リンク部材5,6との角度位置関係を基端側と先端側とで同じにすれば、幾何学的対称性から基端側のリンクハブ2および基端側の端部リンク部材5と、先端側のリンクハブ3および先端側の端部リンク部材6とは同じに動く。この例のように、基端側と先端側のリンクハブ2,3にそれぞれ中心軸QA,QBと同軸に入力軸43および出力軸45を設け、基端側から先端側へ回転伝達を行う場合、入力軸43と出力軸45は同じ回転角になって等速で回転する。この等速回転するときの中央リンク部材7の対称面を等速二等分面という。
【0044】
このため、基端側のリンクハブ2および先端側のリンクハブ3を共有する同じ幾何学形状のリンク機構4を円周上に複数配置させることにより、複数のリンク機構4が矛盾なく動ける位置として中央リンク部材7が等速二等分面上のみの動きに限定される。これにより、基端側と先端側とが任意の作動角をとっても、入力軸43と出力軸45とが等速回転する。
【0045】
図12は、この発明のパラレルリンク機構を用いたリンク作動装置を示す。このリンク作動装置51は、
図1ないし
図5に示すパラレルリンク機構1と、このパラレルリンク機構1を支持する基台52と、パラレルリンク機構1を作動させる2つ以上のリンク用駆動源53と、これらリンク用駆動源53を操作するコントローラ54とを備える。
【0046】
基台52は縦長の部材であって、その上面にパラレルリンク機構1の基端側のリンクハブ2が固定されている。基台52の上部の外周にはつば状の駆動源取付台55が設けられ、この駆動源取付台55に前記リンク用駆動源53が垂下状態で取付けられている。リンク用駆動源53の数は、例えば2個である。リンク用駆動源53はロータリアクチュエータからなり、その出力軸に取付けたかさ歯車56と基端側のリンクハブ2の軸部材13(
図5)に取付けた扇形のかさ歯車57とが噛み合っている。
【0047】
このリンク作動装置51は、コントローラ54を操作してリンク用駆動源53を回転駆動することで、パラレルリンク機構1を作動させる。詳しくは、リンク用駆動源53が回転駆動すると、その回転が一対のかさ歯車56,57を介して軸部材13に伝達されて、基端側のリンクハブ2に対する基端側の端部リンク部材5の角度が変更する。それにより、先端側のリンクハブ3の位置および姿勢が定まる。リンク用駆動源53を設けるリンク機構4の数を2組以上としたのは、基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の位置および姿勢を確定するのに必要なためである。3組すべてのリンク機構4にリンク用駆動源53を設けてもよい。
【0048】
パラレルリンク機構1を作動させるためのリンク用駆動源53の回転駆動は、コントローラ54に設けた操作具(図示せず)により手動で行なってもよく、またはコントローラ54に設けた設定器(図示せず)によって定められた設定量となるように、制御手段58により自動制御で行ってもよい。制御手段58は、コントローラ54内に設けてもよく、またはコントローラ54の外部に設けてもよい。
【0049】
自動制御で行う場合、設定器により設定された先端側のリンクハブ3の姿勢に応じて、基端側の端部リンク部材5の回転角βnの制御目標値を計算する。上記回転角βnは、リンク用駆動源53の動作位置を意味する。回転角βnの計算は、前記式1を逆変換することで行われる。逆変換とは、折れ角θ(
図3)および回転角φ(
図3)から基端側の端部リンク部材5の回転角βnを算出する変換のことである。
【0050】
回転角βnの制御目標値を計算したなら、2つのリンク用駆動源53を、前記回転角βnが制御目標値となるように、先端側のリンクハブ3の姿勢を検出する姿勢検出手段59の信号を利用してフィードバック制御する。姿勢検出手段59は、例えば図示のように、基端側の端部リンク部材5の回転角βn(
図3におけるβ1,β2)を検出する。折れ角θおよび回転角φと、回転角βnとは相互関係があり、一方の値から他方の値を導くことができる。
【0051】
このように、2つのリンク用駆動源53の回転駆動を制御することにより、基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の位置および姿勢が決定される。3組あるリンク機構4のうち2組のリンク機構4だけにリンク用駆動源53を設けたため、2つのリンク用駆動源53だけを制御すればよい。3組すべてのリンク機構4にリンク用駆動源53を設けた場合と比べて、リンク用駆動源53のスムーズな動作が可能になり、動作速度が速い。
【0052】
図13ないし
図15は、この発明のパラレルリンク機構を用いた異なるリンク作動装置を示す。
図13において、このリンク作動装置61は、
図9ないし
図10に示すパラレルリンク機構1を介して、基台62に対して、各種器具等が取付けられる先端取付部材63を姿勢変更可能に連結したものである。基台62と、パラレルリンク機構1の基端側のリンクハブ2との間にはスペーサ64を介在させてある。
【0053】
図14およびその部分拡大図である
図15に示すように、パラレルリンク機構1の3組のリンク機構4のうちの少なくとも2組に、基端側の端部リンク部材5を回動させて基端側のリンクハブ2に対して先端側のリンクハブ3の姿勢を任意に変更させるアクチュエータ70と、このアクチュエータ70の動作量を基端側の端部リンク部材5に減速して伝達する減速機構71とが設けられている。図示例では、3組のリンク機構4のすべてに、アクチュエータ70および減速機構71が設けられている。
【0054】
アクチュエータ70はロータリアクチュエータ、より詳しくは減速機70a付きのサーボモータであって、モータ固定部材72により基台62に固定されている。減速機構71は、アクチュエータ70の減速機70aと、歯車式の減速部73とでなる。
【0055】
歯車式の減速部73は、アクチュエータ70の出力軸70bにカップリング75を介して回転伝達可能に連結された小歯車76と、基端側の端部リンク部材5に固定され前記小歯車76と噛み合う大歯車77とで構成されている。図示例では、小歯車76および大歯車77は平歯車であり、大歯車77は、扇形の周面にのみ歯が形成された扇形歯車である。大歯車77は小歯車76よりもピッチ円半径が大きく、アクチュエータ70の出力軸70bの回転が基端側の端部リンク部材5へ、基端側のリンクハブ2と基端側の端部リンク部材5との回転対偶の回転軸O1回りの回転に減速して伝達される。その減速比は10以上とされている。
【0056】
大歯車77のピッチ円半径は、基端側の端部リンク部材5のアーム長Lの1/2以上としてある。前記アーム長Lは、基端側のリンクハブ2と基端側の端部リンク部材5との回転対偶の中心軸O1の軸方向中心点P1から、基端側の端部リンク部材5と中央リンク部材7との回転対偶の中心軸O2の軸方向中心点P2を基端側のリンクハブ2と基端側の端部リンク部材5の回転対偶軸O1に直交してその軸方向中心点P1を通る平面に投影した点P3までの距離である。この実施形態の場合、大歯車77のピッチ円半径が前記アーム長L以上である。そのため、高い減速比を得るのに有利である。
【0057】
小歯車76は、大歯車77と噛み合う歯部76aの両側に突出する軸部76bを有し、これら両軸部76bが、基台62に設置された回転支持部材79に設けられた複列の軸受80によりそれぞれ回転自在に支持されている。軸受80は、例えば深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受等の玉軸受である。図示例のように玉軸受を複列で配列する以外に、ローラ軸受や滑り軸受を用いてもよい。複列の軸受80の各外輪(図示せず)間にはシム(図示せず)を設け、軸部76bに螺合したナット81を締め付けることにより、軸受80に予圧を付与する構成としてある。軸受80の外輪は、回転支持部材79に圧入されている。
【0058】
この実施形態の場合、大歯車77は、基端側の端部リンク部材5と別部材であり、基端側の端部リンク部材5に対してボルト等の結合具82により着脱可能に取付けられている。大歯車77は基端側の端部リンク部材5と一体であってもよい。
【0059】
アクチュエータ70の回転軸心O3および小歯車76の回転軸心O4は同軸上に位置する。これら回転軸心O3,O4は、基端側のリンクハブ24と基端側の端部リンク部材5の回転対偶軸O1と平行で、かつ基台62からの高さが同じとされている。
【0060】
図14に示すように、各アクチュエータ70は制御装置90で制御される。制御装置90は、コンピュータによる数値制御式のものであり、基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の姿勢を設定する姿勢設定手段91と、基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の姿勢を検出する姿勢検出手段92とからの信号に基づき、各アクチュエータ80に出力指令を与える。姿勢設定手段91は、例えば折れ角θ(
図3を参考)および旋回角φ(
図3を参考)を規定することで、先端側のリンクハブ3の姿勢を設定する。姿勢検出手段92は、例えばエンコーダ(図示せず)等により基端側の端部リンク部材5の回転角βn(
図3におけるβ1,β2)を検出する。あるいはアクチュエータ70のエンコーダ(図示せず)を先端側のリンクハブ3の姿勢検出に用いても良い。折れ角θおよび旋回角φと、各回転角βnとは相互関係があり、一方の値から他方の値を導くことができる。
【0061】
基端側のリンクハブ2に対し先端側のリンクハブ3を姿勢変更する場合、姿勢設定手段91により設定された先端側のリンクハブ3の姿勢に応じて、基端側の端部リンク部材5の回転角βnの制御目標値を計算する。上記回転角βnは、アクチュエータ70の動作位置を意味する。回転角βnの計算は、前記式1を逆変換することで行われる。逆変換とは、折れ角θおよび旋回角φから基端側の端部リンク部材5の回転角βnを算出する変換のことである。
【0062】
回転角βnの制御目標値を計算したなら、姿勢検出手段92の信号を利用したフィードバック制御により、実際の回転角βnが制御目標値となるように各アクチュエータ70の出力を制御する。それにより、すべてのリンク機構4の基端側の端部リンク部材5が定められた回転角βnだけ回転し、先端側のリンクハブ2が姿勢設定手段91により設定された姿勢に変更される。
【0063】
このリンク作動装置61は、コンパクトでありながら、基端側のリンクハブ2に対して先端側のリンクハブ3の可動範囲を広くとれるため、先端取付部材64に取付けられる医療用器具等の操作性が良い。3組のリンク機構4のすべてにアクチュエータ70および減速機構71を設けたことにより、基端側のリンクハブ2に対して先端側のリンクハブ3がどのような姿勢をとっていてもバランス良く駆動できる。つまり、駆動力のバランスが良い。これにより、各アクチュエータ70を小型化できる。また、3組のリンク機構4のすべてにアクチュエータ70および減速機構71を設けることで、パラレルリンク機構1や減速機構71のガタを詰めるように制御することが可能となり、先端側のリンクハブ3の位置決め精度が向上すると共に、リンク作動装置61自体の高剛性化を実現できる。
【0064】
減速機構71の歯車式の減速部73は、小歯車76と大歯車77の組合せからなり、10以上の高い減速比が得られる。減速比が高いと、エンコーダ等による位置決め分解能が高くなるため、先端側のリンクハブ3の位置決め分解能が向上する。また、低出力のアクチュエータ70を使用することができる。この実施形態では減速機70a付きのアクチュエータ70を使用しているが、歯車式の減速部73の減速比が高ければ、減速機無しのアクチュエータ70を使用することも可能となり、アクチュエータ70を小型化できる。
【0065】
大歯車77のピッチ円半径を、基端側の端部リンク部材5のアーム長Lの1/2以上としたことで、先端負荷による基端側の端部リンク部材5の曲げモーメントが小さくなる。そのため、リンク作動装置61全体の剛性を必要以上に高くしなくて済むと共に、基端側の端部リンク部材5の軽量化を図れる。例えば、基端側の端部リンク部材5をステンレス鋼(SUS)からアルミに変更できる。また、大歯車77のピッチ円半径が比較的大きいため、大歯車77の歯部の面圧が減少し、リンク作動装置61全体の剛性が高くなる。
また、大歯車77のピッチ円半径が前記アーム長の1/2以上であると、大歯車77が、基端側のリンクハブ2と基端側の端部リンク部材5の回転対偶部に設置する軸受12の外径よりも十分大きな径となるため、大歯車77の歯部と軸受12との間にスペースができ、大歯車77の設置が容易である。
【0066】
特にこの実施形態の場合、大歯車77のピッチ円半径が前記アーム長L以上であるため、大歯車77のピッチ円半径がさらに大きくなり、前記作用・効果がより一層顕著に現れる。加えて、小歯車76をリンク機構4よりも外径側に設置することが可能となる。その結果、小歯車76の設置スペースを容易に確保することができ、設計の自由度が増す。また、小歯車76と他の部材との干渉が起こり難くなり、リンク作動装置61の可動範囲が広くなる。
【0067】
小歯車76および大歯車77は、それぞれ平歯車であるため、製作が容易であり、しかも回転の伝達効率が高い。小歯車76は軸方向両側で軸受80により支持されているため、小歯車76の支持剛性が高い。それにより、先端負荷による基端側の端部リンク部材5の角度保持剛性が高くなり、リンク作動装置61の剛性や位置決め精度の向上に繋がる。また、アクチュエータ70の回転軸心O3、小歯車76の回転軸心O4、および基端側のリンクハブ2と基端側の端部リンク部材5との回転対偶の中心軸O1が同一平面上にあるため、全体的なバランスが良く、組立性が良い。
【0068】
大歯車77は、基端側の端部リンク部材5に対して着脱自在であるため、歯車式の減速部73の減速比や、基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の作動範囲等の仕様の変更が容易となり、リンク作動装置61の量産性が向上する。つまり、同じリンク作動装置61を、大歯車77を変えるだけで、様々な用途に適用することが可能である。また、メンテナンス性が良い。例えば、歯車式の減速部73に障害が生じた場合に、同減速部73のみを交換するだけで対処可能である。