特許第6128807号(P6128807)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6128807
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】導電性ファスナー
(51)【国際特許分類】
   A44B 19/18 20060101AFI20170508BHJP
   H01R 24/00 20110101ALI20170508BHJP
【FI】
   A44B19/18
   H01R24/00
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-249394(P2012-249394)
(22)【出願日】2012年11月13日
(65)【公開番号】特開2014-97110(P2014-97110A)
(43)【公開日】2014年5月29日
【審査請求日】2015年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006828
【氏名又は名称】YKK株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000116622
【氏名又は名称】愛知県
(73)【特許権者】
【識別番号】504253739
【氏名又は名称】田宮服飾株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100090343
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 百合子
(74)【代理人】
【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳
(74)【代理人】
【識別番号】100108589
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 利光
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 祐一
(72)【発明者】
【氏名】池口 達治
(72)【発明者】
【氏名】島上 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正敏
【審査官】 山本 杏子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−093140(JP,A)
【文献】 特開2007−151839(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/093678(WO,A1)
【文献】 特開平05−335045(JP,A)
【文献】 実開昭52−032404(JP,U)
【文献】 特開2005−347173(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44B 19/00−19/64
H01R 24/00−24/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のファスナーテープ(20)と、
前記一対のファスナーテープの対向するテープ側縁部(20a)を前記ファスナーテープの裏面側に向かって折り曲げることにより形成される折曲縁部(20b)にそれぞれ設けられ、複数のファスナーエレメント(31)を有する一対のファスナーエレメント列(30)と、を備え、
前記ファスナーエレメントは、前記折曲縁部の芯紐(20c)を抱持する断面C字形状の基部(32)と、前記基部の上側の先端から延設される平板状の第1テープ挟持部(33)と、前記基部の下側の先端から延設される平板状の第2テープ挟持部(34)と、前記第2テープ挟持部に形成される噛合部(35)と、を有し、
一方の前記ファスナーエレメントの前記第1テープ挟持部の先端面(33a)と他方の前記ファスナーエレメントの前記第1テープ挟持部の先端面(33a)との間に前記一対のファスナーテープが挟み込まれ、
前記一対のファスナーテープに、前記一対のファスナーテープが前記一対のファスナーエレメント列の噛合により結合された状態において、前記一対のファスナーテープの幅方向に延びる導電層(21)が少なくとも1つ設けられ
前記導電層は、前記一対のファスナーテープの前記挟み込み部分(20d)の表面にまで設けられ、
前記一対のファスナーエレメント列が噛合された状態において、噛合された前記ファスナーエレメント列間にある、一方の前記ファスナーテープの前記導電層と、他方の前記ファスナーテープの前記導電層と、が、前記第1テープ挟持部の前記先端面それぞれに挟持されて、互いに接触状態となることを特徴とするスライドファスナー。
【請求項2】
前記導電層(21)は、前記一対のファスナーテープ(20)の幅方向に亘って連続して設けられることを特徴とする請求項1に記載のスライドファスナー。
【請求項3】
前記一対のファスナーエレメント列(30)を噛合・分離させるスライダー(40)を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のスライドファスナー。
【請求項4】
前記一対のファスナーエレメント列(30)の下端部に開離嵌挿具(12)が設けられることを特徴とする請求項3に記載のスライドファスナー。
【請求項5】
前記ファスナーエレメント(31)は、樹脂の射出成形により前記ファスナーテープ(20)に一体的に成形されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のスライドファスナー。
【請求項6】
前記導電層(21)は、前記ファスナーテープ(20)の長手方向において、前記ファスナーエレメント列(30)の範囲内に設けられることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のスライドファスナー。
【請求項7】
前記導電層(21)は、前記ファスナーテープ(20)の長手方向において、少なくとも2つ以上の前記ファスナーエレメント(31)の間隔を空けて設けられており、前記導電層(21)間は電気的に非接触状態であることを特徴とする請求項に記載のスライドファスナー。
【請求項8】
前記導電層(21)は、前記ファスナーテープ(20)に固着されており、
前記ファスナーテープは、絶縁体であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のスライドファスナー。
【請求項9】
前記導電層(21)は、導電性塗料を前記ファスナーテープ(20)に塗布することにより形成されることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のスライドファスナー。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか1項に記載のスライドファスナーを使用したコネクタ部材であって、
前記一対のファスナーエレメント列(30)が噛合された状態では、前記一対のファスナーテープ(20)の前記導電層(21)が電気的に接続されて電気信号を伝達可能とし、
前記一対のファスナーエレメント列が分離された状態では、前記一対のファスナーテープ(20)の前記導電層(21)の電気的接続が切断されることを特徴とするコネクタ部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、導電性ファスナー、即ち、導電性を有するファスナーに関し、詳しくは、一方のファスナーテープから他方のファスナーテープに電気信号を流すことができるスライドファスナー及びコネクタ部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、一方のテープのエレメントを設けた側端部の上端部に第3の導電部を設け、第3の導電部と離隔して第4の導電部を設け、他方のテープのエレメントを設けた側端部に、少なくとも第3の導電部及び第4の導電部と対向する位置に渡って第5の導電部を設け、第3の導電部及び第5の導電部を設けた部位に設けられたエレメント、及び第4の導電部及び第5の導電部を設けた部位に設けられたエレメントが導電機能を有するスライドファスナーが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、従来では、複数の導電性係合部材をそれぞれ隣合う導電性係合部材との間に所定幅の開口スペースを介して一列に保持してなるコネクタであり、2つのコネクタを互いに対向させてジッパーを閉めるようにこれら2つのコネクタを係合させるもので、複数の導電性係合部材を、弾性材料によりインサート成形された絶縁性保持部材により一体的に保持するジッパー式コネクタが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−185480号公報
【特許文献2】特開平6−333648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に記載のスライドファスナーでは、噛合状態の左右のファスナーエレメント間にクリアランスが存在するため、電気信号の流れが不安定になる可能性があった。また、上記特許文献2に記載のジッパー式コネクタでは、各ファスナーエレメント(導電性係合部材)間に絶縁性保持部材をインサート成形するため、製造コストが増加してしまう可能性があった。
【0006】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、製造コストの増加を抑えつつ、一方のファスナーテープから他方のファスナーテープに電気信号を安定して流すことができるスライドファスナー及びコネクタ部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1)一対のファスナーテープと、一対のファスナーテープの対向するテープ側縁部をファスナーテープの裏面側に向かって折り曲げることにより形成される折曲縁部にそれぞれ設けられ、複数のファスナーエレメントを有する一対のファスナーエレメント列と、を備え、ファスナーエレメントは、折曲縁部の芯紐を抱持する断面C字形状の基部と、基部の上側の先端から延設される平板状の第1テープ挟持部と、基部の下側の先端から延設される平板状の第2テープ挟持部と、第2テープ挟持部に形成される噛合部と、を有し、一方のファスナーエレメントの第1テープ挟持部の先端面と他方のファスナーエレメントの第1テープ挟持部の先端面との間に一対のファスナーテープが挟み込まれ、一対のファスナーテープに、一対のファスナーテープが一対のファスナーエレメント列の噛合により結合された状態において、一対のファスナーテープの幅方向に延びる導電層が少なくとも1つ設けられ、導電層は、一対のファスナーテープの挟み込み部分の表面にまで設けられ、一対のファスナーエレメント列が噛合された状態において、噛合されたファスナーエレメント列間にある、一方のファスナーテープの導電層と、他方のファスナーテープの導電層と、が、第1テープ挟持部の先端面それぞれに挟持されて、互いに接触状態となることを特徴とするスライドファスナー。
(2)導電層は、一対のファスナーテープの幅方向に亘って連続して設けられることを特徴とする(1)に記載のスライドファスナー。
(3)一対のファスナーエレメント列を噛合・分離させるスライダーを更に備えることを特徴とする(1)又は(2)に記載のスライドファスナー。
(4)一対のファスナーエレメント列の下端部に開離嵌挿具が設けられることを特徴とする(3)に記載のスライドファスナー。
(5)ファスナーエレメントは、樹脂の射出成形によりファスナーテープに一体的に成形されることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1つに記載のスライドファスナー。
)導電層は、ファスナーテープの長手方向において、ファスナーエレメント列の範囲内に設けられることを特徴とする(1)〜()のいずれか1つに記載のスライドファスナー。
)導電層は、ファスナーテープの長手方向において、少なくとも2つ以上のファスナーエレメントの間隔を空けて設けられており、導電層間は電気的に非接触状態であることを特徴とする()に記載のスライドファスナー。
)導電層は、ファスナーテープに固着されており、ファスナーテープは、絶縁体であることを特徴とする(1)〜()のいずれか1つに記載のスライドファスナー。
)導電層は、導電性塗料をファスナーテープに塗布することにより形成されることを特徴とする(1)〜()のいずれか1つに記載のスライドファスナー。
10)(1)〜()のいずれか1つに記載のスライドファスナーを使用したコネクタ部材であって、一対のファスナーエレメント列が噛合された状態では、一対のファスナーテープの導電層が電気的に接続されて電気信号を伝達可能とし、一対のファスナーエレメント列が分離された状態では、一対のファスナーテープの導電層の電気的接続が切断されることを特徴とするコネクタ部材。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、一対のファスナーテープと、一対のファスナーテープの対向するテープ側縁部をファスナーテープの裏面側に向かって折り曲げることにより形成される折曲縁部にそれぞれ設けられ、複数のファスナーエレメントを有する一対のファスナーエレメント列と、を備え、ファスナーエレメントは、折曲縁部の芯紐を抱持する断面C字形状の基部と、基部の上側の先端から延設される平板状の第1テープ挟持部と、基部の下側の先端から延設される平板状の第2テープ挟持部と、第2テープ挟持部に形成される噛合部と、を有し、一方のファスナーエレメントの第1テープ挟持部の先端面と他方のファスナーエレメントの第1テープ挟持部の先端面との間に一対のファスナーテープが挟み込まれ、一対のファスナーテープに、一対のファスナーテープが一対のファスナーエレメント列の噛合により結合された状態において、一対のファスナーテープの幅方向に延びる導電層が少なくとも1つ設けられるため、製造コストの増加を抑えつつ、一方のファスナーテープから他方のファスナーテープに電気信号を安定して流すことができる。
また、本発明によれば、導電層は、一対のファスナーテープの挟み込み部分の表面にまで設けられ、一対のファスナーエレメント列が噛合された状態において、噛合されたファスナーエレメント列間にある、一方のファスナーテープの導電層と、他方のファスナーテープの導電層と、が、第1テープ挟持部の先端面それぞれに挟持されて、互いに接触状態となるため、一対のファスナーテープの導電層の端部を面接触させることができ、電気信号を更に安定して流すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係るスライドファスナーの一実施形態を説明する表面図である。
図2図1に示すスライドファスナーの裏面図である。
図3図1に示すスライドファスナーの左右のファスナーエレメントが噛合した状態の断面図である。
図4図1に示すスライドファスナーの左右のファスナーエレメントが分離した状態の断面図である。
図5図3に示すファスナーエレメントを説明する拡大斜視図である。
図6】スライダーの摺動動作によって左右のファスナーテープの導電層が電気的に接続される状態を示す表面図であり、(a)はスライダー摺動前の図であり、(b)はスライダー摺動後の図である。
図7】本発明に係るスライドファスナーの一実施形態の第1変形例を説明する断面図である。
図8】本発明に係るスライドファスナーの一実施形態の第2変形例を説明する断面図である。
図9】本発明に係るスライドファスナーの一実施形態の第3変形例を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る導電機能を有するスライドファスナーの一実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、以後の説明において、ファスナーテープに関しては、表側とは図1の紙面に対して手前側、裏側とは図1の紙面に対して奥側、上側とは図1の紙面に対して上側、下側とは図1の紙面に対して下側、左側とは図1の紙面に対して左側、右側とは図1の紙面に対して右側とする。また、ファスナーテープの左右方向は幅方向とも言う。また、ファスナーテープの上下方向は長さ方向とも言う。ファスナーエレメントに関しては、上側とは図3の紙面に対して上側、下側とは図3の紙面に対して下側、幅方向とは図3の紙面に対して左右方向とする。
【0011】
本実施形態のスライドファスナー10は、図1図3に示すように、非導電性材料(絶縁体)からなる左右一対のファスナーテープ20と、左右一対のファスナーテープ20の対向するテープ側縁部20aをファスナーテープ20の裏面側に向かって略U字状に折り曲げることにより形成される折曲縁部20bにそれぞれ設けられ、複数のファスナーエレメント31を有する左右一対のファスナーエレメント列30と、左右一対のファスナーエレメント列30を噛合・分離させるスライダー40と、左右のファスナーエレメント列30の上端部にそれぞれ隣接して設けられる一対の上止部11と、左右のファスナーエレメント列30の下端部に隣接して設けられる開離嵌挿具12と、を備える。
【0012】
開離嵌挿具12は、右側のファスナーテープ20のファスナーエレメント列30の下端部に隣接して設けられる箱棒12a及び箱体12bと、左側のファスナーテープ20のファスナーエレメント列30の下端部に隣接して設けられ、箱体12bに挿入可能な蝶棒12cと、を備える。なお、開離嵌挿具12は、一対の上止部11の同様の一対の下止部であってもよいし、左右のファスナーテープ20を一体的に連結した下止部であってもよい。
【0013】
また、右側のファスナーテープ20の表面には、箱棒12aを取り付けたファスナーテープ20の端部を補強するための補強部12dが、箱棒12aから幅方向外側に向かって一体に延設されている。また、左側のファスナーテープ20の表面には、蝶棒12cを取り付けたファスナーテープ20の端部を補強するための補強部12eが、蝶棒12cから幅方向外側に向かって一体に延設されている。
【0014】
左右のファスナーエレメント列30の各々は、複数のファスナーエレメント31から構成されており、このファスナーエレメント31は、例えば、ポリアミド、ポリアセタール、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレートなどの合成樹脂を用いて、ファスナーテープ20の折曲縁部20bに射出成形されている。
【0015】
ファスナーエレメント31は、図3図5に示すように、ファスナーテープ20の折曲縁部20b側の芯紐20cを抱持する断面C字形状の基部32と、基部32の上側の先端から延設される平板状の第1テープ挟持部33と、基部32の下側の先端から延設される平板状の第2テープ挟持部34と、第2テープ挟持部34に形成される噛合部35と、を有する。
【0016】
噛合部35は、第2テープ挟持部34のテープ挟持面と反対側の面において基部32から相手側のファスナーテープ20に向けて延設される噛合頭部35aと、基部32と噛合頭部35aとの間に形成され、噛合頭部35aよりも幅狭な首部35bと、を有する。また、図4に示すように、第2テープ挟持部34の先端面34aは、第1テープ挟持部33の先端面33aよりも僅かに相手側のファスナーテープ20に向けて突出するように構成されている。
【0017】
このように構成されたファスナーエレメント31では、左右のファスナーエレメント31が噛合することにより、一方のファスナーエレメント31の第1テープ挟持部33の先端面33aと他方のファスナーエレメント31の第1テープ挟持部33の先端面33aとの間に左右のファスナーテープ20が挟み込まれる。なお、左右のファスナーテープ20の左右の第1テープ挟持部33の先端面33a間に挟み込まれた部分を挟み込み部分20dと称する。また、挟み込み部分20dに配置される導電層21を備えるファスナーテープ20の厚さは、第1テープ狭持部33の先端面33aに対する第2テープ挟持部34の先端面34aの突出量よりも大きい。
【0018】
そして、図1に示すように、左右のファスナーテープ20の表面には、帯状の導電層21が設けられている。導電層21は、図3に示すように、上止部11と開離嵌挿具12の間に形成されたファスナーエレメント列30の間であって、ファスナーテープ20の一方の側縁から他方の側縁に向けて幅方向に亘って連続して延びている。また、導電層21は、ファスナーテープ20の長手方向に沿って複数設けられている。さらに、導電層21は、本実施形態では、図3に示すように、左右のファスナーテープ20の上記挟み込み部分20dの表面にまで延設されている。
【0019】
このような左右のファスナーテープ20には、その長手方向において、それぞれ同じ位置に導電層21が設けられており、左右のファスナーエレメント列30が噛合された状態では、噛合されたファスナーエレメント列30間にある導電層21の各々が互いに接触状態となり、電気的に接続される。また、左右のファスナーエレメント列30が分離された状態では、分離されたファスナーエレメント列30間にある導電層21の各々が互いに非接触状態となり、電気的接続が切断される。
【0020】
導電層21は、導電性塗料をファスナーテープ20に塗布することにより形成されている。なお、導電層21は、導電性塗料の塗布に限定されず、導電性フィルムの貼り付けや、ファスナーテープ20の緯糸に導電性糸を使用するなどにより形成されていてもよい。また、導電層21は、必ずしもファスナーテープ20の表面に設ける必要はなく、例えば、織成あるいは編成のファスナーテープの組織間に導電性塗料が浸漬した状態であってもよい。また、導電層21を2枚の絶縁性フィルムで挟み込んだファスナーテープとしてもよい。
【0021】
このように構成されたスライドファスナー10では、図6に示すように、スライダー40を摺動させることにより、左右のファスナーエレメント列30が噛合すると共に、左右のファスナーテープ20の導電層21が互いに接触して、電気的に接続される。このため、一方のファスナーテープ20の導電層21に流された電気信号は、他方のファスナーテープ20の導電層21に伝達される。
【0022】
次に、本実施形態のスライドファスナー10の使用例について説明する。
例えば、図1に示すように、医療用ベッドのシーツ50に使用することが考えられる。具体的には、シーツ50の側縁部51にスライドファスナー10の右側のファスナーテープ20を縫い付け、シーツ50内に設置される複数のセンサー52と右側のファスナーテープ20の複数の導電層21とをそれぞれ導電糸53で接続すると共に、左側のファスナーテープ20の複数の導電層21と外部の計測機器54とを複数のケーブル55で接続して使用する。このため、スライドファスナー10を左右に分離することにより、シーツ50側と計測機器54側とを容易に切り離すことができると共に、スライドファスナー10を結合することにより、シーツ50側と計測機器54側とを容易に接続することができる。また、スライドファスナー10は、通常のスライドファスナーと同様な取り扱いが可能なため、スライドファスナー10を左右に分離することにより、シーツ50を洗濯することができる。
【0023】
以上説明したように、本実施形態のスライドファスナー10によれば、左右一対のファスナーテープ20の表面に、左右一対のファスナーテープ20が左右一対のファスナーエレメント列30の噛合により結合された状態において、左右一対のファスナーテープ20の幅方向に亘って連続する帯状の導電層21が複数設けられるため、製造コストの増加を抑えつつ、一方のファスナーテープ20から他方のファスナーテープ20に電気信号を安定して流すことができる。
【0024】
また、本実施形態のスライドファスナー10によれば、導電層21が左右のファスナーテープ20の挟み込み部分20dの表面にまで設けられるため、左右のファスナーテープ20の導電層21の端部を面接触させることができ、電気信号を更に安定して流すことができる。特に好適には、挟み込み部分20dに配置される導電層21を備えるファスナーテープ20の厚さを、第2テープ狭持部34の突出量よりも大きくすることで、電気信号を更に安定して流すことができる。
【0025】
また、本実施形態のスライドファスナー10によれば、導電層21は、ファスナーテープ20の長手方向において、ファスナーエレメント列30の範囲内に設けられるため、スライダー40の操作により、導電層21を容易に接触状態又は非接触状態とすることができる。
【0026】
また、本実施形態のスライドファスナー10によれば、導電層21は、ファスナーテープ20の長手方向において、少なくとも2つ以上のファスナーエレメント31の間隔を空けて設けられており、導電層21間は電気的に非接触状態であるため、異なる情報をもつ電気信号の接続、切断を1つのスライドファスナー10の操作によって行うことができる。
【0027】
また、本実施形態のスライドファスナー10によれば、導電層21は、ファスナーテープ20に固着されており、ファスナーテープ20は絶縁体であるため、一方のファスナーテープ20から他方のファスナーテープ20に電気信号を容易に安定して流すことができる。
【0028】
なお、本発明は、スライドファスナー10の左右のファスナーエレメント列30が噛合された時に左右の導電層21の一部が互いに接触する構成であればよく、例えば、本実施形態の第1変形例として、図7に示すように、導電層21は、左右のファスナーテープ20の挟み込み部分20dの表面にまで設けられていなくてもよい。
【0029】
また、本実施形態の第2変形例として、図8に示すように、樹脂製のファスナーエレメント31の代わりに金属製のファスナーエレメント61を使用してもよい。このファスナーエレメント61は、ファスナーテープ20の折曲縁部20bの芯紐20cを抱持する断面C字形状の基部62と、基部62の上側の先端から延設される平板状の第1テープ挟持部63と、基部62の下側の先端から延設される平板状の第2テープ挟持部64と、第2テープ挟持部64に形成され、噛合頭部65aを有する噛合部65と、を有する。
【0030】
また、第1テープ挟持部63の先端部には、噛合状態において、相手側のファスナーエレメント61との間に左右のファスナーテープ20を挟み込む押圧部66が形成されている。従って、左右のファスナーエレメント61が噛合することにより、一方のファスナーエレメント61の押圧部66の押圧面66aと他方のファスナーエレメント61の押圧部66の押圧面66aとの間に左右のファスナーテープ20が挟み込まれる。
【0031】
また、本実施形態の第3変形例として、図9に示すように、樹脂製のファスナーエレメント31の代わりにコイル状のファスナーエレメント71を使用してもよい。このファスナーエレメント71は、噛合頭部71aと、噛合頭部71aの上端部から幅方向外側に延びる上脚部71bと、噛合頭部71aの下端部から幅方向外側に延びる下脚部71cと、上脚部71bの幅方向外端部と隣り合うファスナーエレメント71の下脚部71cの幅方向外端部とを連結する連結部71dと、を備える。そして、ファスナーエレメント71は、その内部に通される芯紐72と共に縫い糸73によってファスナーテープ20の折曲縁部20bに縫い付けられる。
【0032】
なお、本発明は上記実施形態に例示したものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、スライダーを使用して左右のスライドファスナーエレメント列を噛合したが、これに限定されず、スライダーを使用せずに手作業により左右のスライドファスナーエレメント列を噛合してもよい。
【0033】
また、本実施形態では、導電層21は、左右のファスナーテープ20の幅方向に亘って連続して設けられているが、これに限定されず、例えば、導電層21は、左右のファスナーテープ20の幅方向のみならず、部分的に上下方向に延びていてもよい。また、導電層21は、左右のファスナーテープ20の幅方向の端部まで延ばさずに途中から外部と電気的に接続されていてもよい。
【0034】
また、本実施形態の使用例に限定されず、スライドファスナー10の噛合・分離に合わせて、左右のファスナーテープ20に設けられた導電層21が電気信号を接続・切断する構成を利用して、スライドファスナー10をコネクタ部材に使用することができる。
【符号の説明】
【0035】
10 スライドファスナー
12 開離嵌挿具
20 ファスナーテープ
20a テープ側縁部
20b 折曲縁部
20c 芯紐
20d 挟み込み部分
21 導電層
30 ファスナーエレメント列
31 ファスナーエレメント
32 基部
33 第1テープ挟持部
33a 先端面
34 第2テープ挟持部
35 噛合部
40 スライダー
61 ファスナーエレメント
71 ファスナーエレメント
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9