特許第6128835号(P6128835)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社不二工機の特許一覧

<>
  • 特許6128835-温度式膨張弁 図000002
  • 特許6128835-温度式膨張弁 図000003
  • 特許6128835-温度式膨張弁 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6128835
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】温度式膨張弁
(51)【国際特許分類】
   F25B 41/06 20060101AFI20170508BHJP
   F16K 31/68 20060101ALI20170508BHJP
   F16K 47/02 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   F25B41/06 M
   F25B41/06 R
   F16K31/68 S
   F16K47/02 D
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-283339(P2012-283339)
(22)【出願日】2012年12月26日
(65)【公開番号】特開2014-126280(P2014-126280A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡利 大介
(72)【発明者】
【氏名】山口 智也
【審査官】 柿沼 善一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−241812(JP,A)
【文献】 特開2003−065634(JP,A)
【文献】 特開平08−145505(JP,A)
【文献】 特開平09−222268(JP,A)
【文献】 特開2001−091106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 41/06
F16K 31/68
F16K 47/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エバポレータから戻ってくる冷媒の温度及び圧力に感応して冷媒の絞り・膨張を行う弁部材の弁リフトを制御するパワーエレメントを弁本体に備える温度式膨張弁であって、
前記弁本体は、コンプレッサ及びコンデンサを経て供給される高圧冷媒用の高圧入口側流路と、該高圧入口側流路に連通する弁室と、該弁室に連通するとともに弁座を有する弁孔と、該弁孔で膨張した冷媒をエバポレータに向けて導出する低圧出口側流路と、前記エバポレータから戻ってくる冷媒を通過させる戻り冷媒通路とを備え、
前記弁座に対向して前記弁室内に配置される前記弁部材を開閉させるべく前記戻り冷媒通路を貫通して前記パワーエレメントの作動に追従して進退する作動棒と、該作動棒の外周に嵌装されて該作動棒の貫通穴をシールするシール部材とが備わっており、
前記シール部材が挿入されるシール部材挿入穴の中心に対して前記貫通穴の中心を前記戻り冷媒通路を通過する冷媒の上流側に偏心させてある
ことを特徴とする温度式膨張弁。
【請求項2】
前記シール部材はOリングである請求項1記載の温度式膨張弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーエアコン等の空調装置に装備されて、冷媒の温度に応じて蒸発器(エバポレータ)へ供給される冷媒の流量を制御する温度式膨張弁に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の温度式膨張弁にあっては、蒸発器へ送られる冷媒の流量を制御する弁機構を備える冷媒の通路と、蒸発器から圧縮機側へ戻る冷媒の戻り通路を有する弁本体を備える。そして、弁本体の戻り通路の上部に装備される弁体の駆動装置であるパワーエレメントにより操作される作動棒が蒸発器へ向かう冷媒の通路と戻り通路を貫通して弁室内の弁体に当接して弁の開度を制御する。
【0003】
図1は、本発明を適用する冷凍サイクルの概要と温度式膨張弁の構成を示す説明図である。
コンプレッサ1で加圧された冷媒は、コンデンサ2で液化され、膨張弁3に送られる。膨張弁3で断熱膨張した冷媒はエバポレータ4に送り出され、エバポレータ4で熱交換される。エバポレータ4から戻る冷媒は膨張弁3を通ってコンプレッサ1側へ戻される。
【0004】
温度式膨張弁3は弁本体10を有し、コンデンサ2からの高圧の冷媒が供給される高圧冷媒入口側通路20に連通する弁室22を備える。
弁室22内には弁部材40が弁座24に対向して配置され、弁部材40はサポート42に支持され、サポート42はスプリング44を介して弁室22を封止するプラグ46で支持される。弁部材40と弁座24の間で流量を制御された冷媒は、弁孔26、低圧出口側通路28を通ってエバポレータ4へ送り出される。
【0005】
エバポレータ4から出た冷媒は、弁本体10の戻り冷媒通路30を通過してコンプレッサ1へ戻される。弁本体10の頂部にはパワーエレメント50が装備されている。
【0006】
パワーエレメント50はダイアフラム54で形成される作動ガス室52を有し、ダイアフラム54の下面は支持部材56で支持される。ダイアフラム54の下面には戻り冷媒通路30の冷媒が開口部32を介して作用する。
【0007】
ダイアフラム54の変位は支持部材56を介して作動棒60に伝達され、作動棒60は弁部材40を操作する。作動棒60は細い棒状の部材であって、弁本体10に形成した貫通穴70に挿入される。作動棒60は貫通穴70内で摺動するので、低圧出口側通路28と戻り冷媒通路30の間で冷媒が漏れるのを防止するため、シール部材挿入穴72が形成されてシール部材挿入部72内にOリング80が嵌装される。Oリング80を保持するために、スナップリング82が取り付けられる。
【0008】
図3は従来のOリング80とその取付状態を示す説明図である。
従来のOリング80はドーナツ状のゴム製の部材であって、作動棒挿入穴81の中心線HはOリング80の外径寸法Dの半分の位置に形成されている。
【0009】
そこで、このOリング80をシール部材挿入穴72内に配置して、作動棒60を挿入すると、作動棒60の中心Cは貫通穴70の中心位置と合致して作動棒60の外径部と貫通穴70の内径部との間には均一の間隙Gが形成される。
【0010】
作動棒60にはスナップリング受け溝62が形成されてスナップリング82が取り付けられてOリング80がシール部材挿入部72からの脱出を防止する。
【0011】
作動棒60は貫通穴70の内径部とは接触せずに摺動するので、作動棒60の摺動時の摩擦抵抗は作動棒60の外径部とOリング80の作動棒挿入穴81との間の摩擦抵抗のみとなる。この摩擦力では弁部材40と作動棒60に作用する振動を制御するには不十分であって、作動棒60の防振効果は低いものであった。
【0012】
下記の特許文献1、2は、作動棒に対して直交する方向に付勢するコイルバネを備えて作動棒の振動を防止するものを開示している。
また、特許文献3は、パワーエレメントのダイアフラムの支持部材を特殊な形状として作動棒に横方向に推力を与えて防振を図るものを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平8−145505号公報
【特許文献2】特開平9−222268号公報
【特許文献3】特開2001−91106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
この種の温度式膨張弁にあっては、作動棒は、本体に形成される貫通穴に挿入され、摺動するので、作動棒を貫通穴との間にシール部材を設けて冷媒の漏れをシールする場合がある。
本発明の目的は、シール部材が挿入される穴と作動棒の貫通穴の中心を偏心させることで、コイルバネ等の余分な部材を装備することなく作動棒の振動防止を図る温度式膨張弁を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明の温度式膨張弁は、エバポレータから戻ってくる冷媒の温度及び圧力に感応して冷媒の絞り・膨張を行う弁部材の弁リフトを制御するパワーエレメントを弁本体に備え、前記弁本体は、コンプレッサ及びコンデンサを経て供給される高圧冷媒用の高圧入口側流路と、該高圧入口側流路に連通する弁室と、該弁室に連通するとともに弁座を有する弁孔と、該弁孔で膨張した冷媒をエバポレータに向けて導出する低圧出口側流路と、前記エバポレータから戻ってくる冷媒を通過させる戻り冷媒通路とを備える。
【0016】
そして、前記弁座に対向して前記弁室内に配置される前記弁部材を開閉させるべく前記戻り冷媒通路を貫通して前記パワーエレメントの作動に追従して進退する作動棒と、該作動棒の外周に嵌装されて該作動棒の貫通穴をシールするシール部材とが備わっており、前記シール部材が挿入されるシール部材挿入穴の中心に対して前記貫通穴の中心を前記戻り冷媒通路を通過する冷媒の上流側に偏心させてあることを特徴とする。
【0017】
また、前記シール部材としては、Oリングが使用される。
【発明の効果】
【0018】
本発明の温度式膨張弁は以上の手段を備えることにより、作動棒の制振性能が向上して、振動を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明を適用する温度式膨張弁を含む冷凍サイクルの説明図。
図2】本発明のシール部の説明図。
図3】従来の温度式膨張弁のシール部の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図2は本発明の温度式膨張弁の要部の断面図である。
図2に示すように、シール部材挿入穴72の中心Cに対して貫通穴70aの中心Cを寸法Sだけ偏心するように貫通穴70aを形成してある。
【0021】
シール部材挿入穴72にOリング80を挿入して、このOリング80の作動棒挿入穴81に作動棒60を挿入し、さらに作動棒60を貫通穴70aに挿入すると、Oリング80は作動棒60を中心C上で保持するので、作動棒60は貫通穴70aの一方の内面側に押圧されて、他方の内面側に隙間Gが形成される。
【0022】
この作用により作動棒60と貫通穴70aの間に摺動摩擦抵抗が発生し、作動棒60とOリング80の間の摺動摩擦抵抗に付加される。
この増加した摺動摩擦抵抗により、作動棒60の防振性能が向上する。
【0023】
本発明の温度式膨張弁は以上のように、シール部材が挿入される穴に対して作動棒の貫通穴が偏心して設けてあるので、作動棒と貫通穴の間で摺動摩擦抵抗が発生し、他の部材を付加することなく、防振性能を向上することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 コンプレッサ
2 コンデンサ
3、3a、3b 温度式膨張弁
4 エバポレータ
10 弁本体
20 高圧冷媒入口側通路
22 弁室
24 弁座
26 弁孔
28 低圧出口側通路
30 戻り冷媒側通路
32 開口部
40 弁部材
42 サポート
44 スプリング
46 プラグ
50 パワーエレメント
52 作動ガス室
54 ダイアフラム
56 支持部材
60 作動棒
62 スナップリング受け溝
70、70a 貫通穴
72 シール部材挿入穴
80 Oリング
81 作動棒挿入穴
82 スナップリング
図1
図2
図3