特許第6128836号(P6128836)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6128836
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/12 20060101AFI20170508BHJP
   H02M 7/797 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   H02M7/12 NZHV
   H02M7/797
【請求項の数】6
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2012-283471(P2012-283471)
(22)【出願日】2012年12月26日
(65)【公開番号】特開2014-128126(P2014-128126A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年3月11日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(72)【発明者】
【氏名】居安 誠二
(72)【発明者】
【氏名】安藤 真司
(72)【発明者】
【氏名】大林 和良
【審査官】 松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−035957(JP,A)
【文献】 特開2006−014570(JP,A)
【文献】 特開2012−143097(JP,A)
【文献】 米国特許第05483142(US,A)
【文献】 特開2003−179482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/12
H02M 7/797
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイオードが逆並列接続された4つのスイッチング素子をブリッジ接続して構成され、前記スイッチング素子をオフすることで、前記ダイオードによって、交流端に接続された交流電源から供給される交流を直流に変換して直流端に接続された直流電源に供給、又は、前記スイッチング素子をスイッチングすることで、前記直流電源から供給される直流を交流に変換して前記交流電源に供給する電力変換回路(20)と、
前記電力変換回路の交流端に並列接続される第1コンデンサ(220b)と、
前記電力変換回路の直流端に並列接続される第2コンデンサ(230b)と、
前記電力変換回路に接続され、前記交流電源から供給される交流を直流に変換して前記直流電源に供給するときには、前記電力変換回路の前記スイッチング素子をオフし、前記直流電源から供給される直流を交流に変換して前記交流電源に供給するときには、前記電力変換回路の対角に配置された前記スイッチング素子からなるスイッチング素子対のうち、一方のスイッチング素子対を構成する前記スイッチング素子と、他方のスイッチング素子対を構成する前記スイッチング素子を、前記交流電源の電圧の極性が切り替わるタイミングに同期して相補的にスイッチングさせる制御回路(25)と、
を備えた電力変換装置において、
前記制御回路は、前記電力変換回路を構成する前記スイッチング素子のうち低電位側の前記スイッチング素子がオンすることで高電位側の前記スイッチング素子の駆動に必要な電圧を供給するブートストラップ回路(254f、254g)を有し、前記直流電源から供給される直流を交流に変換して前記交流電源に供給するとき、前記一方のスイッチング素子対を構成する前記スイッチング素子と、前記他方のスイッチング素子対を構成する前記スイッチング素子を、前記交流電源の電圧の極性が切り替わるタイミングに同期して相補的にスイッチングさせる直前であって、前記交流電源の電圧がピーク値を含む所定範囲内となるタイミングで、前記一方のスイッチング素子対を構成する前記スイッチング素子、又は、前記他方のスイッチング素子対を構成する前記スイッチング素子をオンさせるとともに、前記交流電源の電圧がピーク値を含む前記所定範囲内となるタイミングで、前記一方のスイッチング素子対を構成する前記スイッチング素子、又は、前記他方のスイッチング素子対を構成する前記スイッチング素子をオンさせる直前であって、前記交流電源の電圧の極性が切り替わるタイミング以前に、低電位側の前記スイッチング素子をオンさせるもので、前記交流電源の電圧がピーク値を含む前記所定範囲内となるタイミングで、前記一方のスイッチング素子対を構成する前記スイッチング素子をオンさせる場合は、前記交流電源の電圧がピーク値を含む前記所定範囲内となるタイミングで前記一方のスイッチング素子対を構成する前記スイッチング素子をオンさせる直前であって、前記一方のスイッチング素子対を構成する前記スイッチング素子と、前記他方のスイッチング素子対を構成する前記スイッチング素子を、前記交流電源の電圧の極性が切り替わるタイミングに同期して相補的にスイッチングを開始させるタイミングから交流の1/2周期前よりも以前、かつ、前記交流電源の電圧が相補的にスイッチングを開始させるタイミングから交流の1/2周期前までの極性とは逆極性のときに前記他方のスイッチング素子対の低電位側の前記スイッチング素子をオンさせ、前記交流電源の電圧がピーク値を含む前記所定範囲内となるタイミングで、前記他方のスイッチング素子対を構成する前記スイッチング素子をオンさせる場合は、前記交流電源の電圧がピーク値を含む前記所定範囲内となるタイミングで前記他方のスイッチング素子対を構成する前記スイッチング素子をオンさせる直前であって、前記一方のスイッチング素子対を構成する前記スイッチング素子と、前記他方のスイッチング素子対を構成する前記スイッチング素子を、前記交流電源の電圧の極性が切り替わるタイミングに同期して相補的にスイッチングを開始させるタイミングから交流の1/2周期前よりも以前、かつ、前記交流電源の電圧が相補的にスイッチングを開始させるタイミングから交流の1/2周期前までの極性とは逆極性のときに前記一方のスイッチング素子対の低電位側の前記スイッチング素子をオンさせることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記交流電源の電圧がピーク値を含む前記所定範囲内となるタイミングから、前記交流電源の電圧の極性が切り替わるタイミングまで、前記一方のスイッチング素子対を構成する前記スイッチング素子、又は、前記他方のスイッチング素子対を構成する前記スイッチング素子をオンさせることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記交流電源と前記電力変換回路の交流端の間に接続され、交流に含まれる所定の周波数成分を除去するフィルタ回路(22)を有し、
前記第1コンデンサ(220b)は、前記フィルタ回路を構成する素子であること特徴とする請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記電力変換回路の直流端に接続されるスナバ回路(23)を有し、
前記第2コンデンサ(230b)は、前記スナバ回路を構成する素子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記スナバ回路(23)は、前記第2コンデンサに直列接続される抵抗(230a)を有することを特徴とする請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記所定範囲は、ピーク値の95%〜100%の範囲であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイオードが逆並列接続された4つのスイッチング素子をブリッジ接続して構成される電力変換回路を備えた電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダイオードが逆並列接続された4つのスイッチング素子をブリッジ接続して構成される電力変換回路を備えた電力変換装置として、例えば以下に示す特許文献1に開示されている電力変換装置がある。
【0003】
この電力変換装置は、交流電源から供給される交流を直流に変換して2次電池に供給する装置である。また、逆に、2次電池から供給される直流を交流に変換して交流電源に供給する装置でもある。電力変換装置は、整流回路と、昇降圧コンバータ回路と、フィルタ回路と、制御装置とを備えている。
【0004】
整流回路は、交流端がフィルタ回路を介して交流電源に、直流端が昇降圧コンバータ回路にそれぞれ接続され、交流電源から供給される交流を直流に変換して昇降圧コンバータ回路に供給する回路である。また、逆に、昇降圧コンバータ回路から供給される直流を交流に変換して交流電源に供給する回路でもある。整流回路は、ダイオードが逆並列接続された4つのスイッチング素子を備えている。4つのスイッチング素子は、ブリッジ接続されている。整流回路は、スイッチング素子をオフすることで、ダイオードによって、交流電源から供給される交流を直流に変換して昇降圧コンバータ回路に供給する。また、スイッチング素子を所定のタイミングでスイッチングすることで、昇降圧コンバータ回路から供給される直流を交流に変換して交流電源に供給する。
【0005】
昇降圧コンバータ回路は、整流回路と2次電池にそれぞれ接続され、整流回路から供給される直流を昇圧又は降圧して2次電池に供給する回路である。また、逆に、2次電池から供給される直流を昇圧又は降圧して整流回路に供給する回路でもある。
【0006】
フィルタ回路は、交流電源と整流回路の間に接続され、交流電源から整流回路に供給される交流に含まれる所定の周波数成分を除去する回路である。フィルタ回路は、リアクトルと、コンデンサとを備えている。例えば、リアクトルは、交流電源と整流回路の交流端の間に接続されている。コンデンサは、整流回路の交流端に並列接続されている。
【0007】
制御装置は、整流回路と昇降圧コンバータ回路にそれぞれ接続され、整流回路と昇降圧コンバータ回路を制御する装置である。制御装置は、交流電源から供給される交流を直流に変換して2次電池に供給するとき、整流回路のスイッチング素子をオフさせるとともに、昇降圧コンバータ回路を制御する。整流回路は、ダイオードによって、交流電源から供給される交流を直流に変換して昇降圧コンバータ回路に供給する。昇降圧コンバータ回路は、整流回路から供給される直流を昇圧又は降圧して2次電池に供給する。制御装置は、2次電池から供給される直流を交流に変換して交流電源に供給するとき、昇降圧コンバータ回路を制御するとともに、整流回路の対角に配置されたスイッチング素子からなるスイッチング素子対のうち、一方のスイッチング素子対を構成するスイッチング素子と、他方のスイッチング素子対を構成するスイッチング素子を相補的にスイッチングさせる。例えば、交流電源の電圧の極性が切り替わるタイミングに同期して相補的にスイッチングさせる。昇降圧コンバータ回路は、2次電池から供給される直流を昇圧又は降圧して整流回路に供給する。整流回路は、昇降圧コンバータ回路から供給される直流を交流に変換して交流電源に供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012−085397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、配線の浮遊インダクタンス等の影響により、スイッチング素子のスイッチングに伴ってサージ電圧が発生する。そのため、サージ電圧を抑え、スイッチング素子を保護するため、スナバ回路が用いられる。スナバ回路は、例えば、抵抗と、コンデンサとによって構成されている。抵抗及びコンデンサは、直列接続され、整流回路の直流端に並列接続される。その結果、整流回路の交流端にはフィルタ回路のコンデンサが、整流回路の直流端にはスナバ回路のコンデンサがそれぞれ並列接続されることになる。
【0010】
電力変換装置が動作していない状態において、フィルタ回路のコンデンサには、交流電源から供給される交流電圧が印加されている。スナバ回路のコンデンサには、整流回路のダイオードによって変換された直流電圧が印加され、コンデンサが充電されている。そのため、整流回路の交流端には交流電圧が、整流回路の直流端には直流電圧がそれぞれ印加された状態となっている。
【0011】
2次電池から供給される直流を交流に変換して交流電源に供給する場合、制御装置は、整流回路の対角に配置されたスイッチング素子からなるスイッチング素子対のうち、一方のスイッチング素子対を構成するスイッチング素子と、他方のスイッチング素子対を構成するスイッチング素子を、交流電源の電圧の極性が切り替わるタイミングに同期して相補的にスイッチングさせる。前述したように、整流回路の交流端には交流電圧が、整流回路の直流端には直流電圧がそれぞれ印加されている。そのため、整流回路の直流端と交流端の電圧差によって、スイッチング開始直後に、スナバ回路のコンデンサから整流回路を経てフィルタ回路のコンデンサに至る経路に突入電流が流れてしまうという問題があった。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、電力変換回路のスイッチング開始直後に発生する突入電流を抑えることができる電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するためになされた本発明は、ダイオードが逆並列接続された4つのスイッチング素子をブリッジ接続して構成され、スイッチング素子をオフすることで、ダイオードによって、交流端に接続された交流電源から供給される交流を直流に変換して直流端に接続された直流電源に供給、又は、スイッチング素子をスイッチングすることで、直流電源から供給される直流を交流に変換して交流電源に供給する電力変換回路と、電力変換回路の交流端に並列接続される第1コンデンサと、電力変換回路の直流端に並列接続される第2コンデンサと、電力変換回路に接続され、交流電源から供給される交流を直流に変換して直流電源に供給するときには、電力変換回路のスイッチング素子をオフし、直流電源から供給される直流を交流に変換して交流電源に供給するときには、電力変換回路の対角に配置されたスイッチング素子からなるスイッチング素子対のうち、一方のスイッチング素子対を構成するスイッチング素子と、他方のスイッチング素子対を構成するスイッチング素子を、交流電源の電圧の極性が切り替わるタイミングに同期して相補的にスイッチングさせる制御回路と、を備えた電力変換装置において、制御回路は、電力変換回路を構成するスイッチング素子のうち低電位側のスイッチング素子がオンすることで高電位側のスイッチング素子の駆動に必要な電圧を供給するブートストラップ回路を有し、直流電源から供給される直流を交流に変換して交流電源に供給するとき、一方のスイッチング素子対を構成するスイッチング素子と、他方のスイッチング素子対を構成するスイッチング素子を、交流電源の電圧の極性が切り替わるタイミングに同期して相補的にスイッチングさせる直前であって、交流電源の電圧がピーク値を含む所定範囲内となるタイミングで、一方のスイッチング素子対を構成するスイッチング素子、又は、他方のスイッチング素子対を構成するスイッチング素子をオンさせるとともに、交流電源の電圧がピーク値を含む所定範囲内となるタイミングで、一方のスイッチング素子対を構成するスイッチング素子、又は、他方のスイッチング素子対を構成するスイッチング素子をオンさせる直前であって、交流電源の電圧の極性が切り替わるタイミング以前に、低電位側のスイッチング素子をオンさせるもので、交流電源の電圧がピーク値を含む所定範囲内となるタイミングで、一方のスイッチング素子対を構成するスイッチング素子をオンさせる場合は、交流電源の電圧がピーク値を含む所定範囲内となるタイミングで一方のスイッチング素子対を構成するスイッチング素子をオンさせる直前であって、一方のスイッチング素子対を構成するスイッチング素子と、他方のスイッチング素子対を構成するスイッチング素子を、交流電源の電圧の極性が切り替わるタイミングに同期して相補的にスイッチングを開始させるタイミングから交流の1/2周期前よりも以前、かつ、交流電源の電圧が相補的にスイッチングを開始させるタイミングから交流の1/2周期前までの極性とは逆極性のときに他方のスイッチング素子対の低電位側のスイッチング素子をオンさせ、交流電源の電圧がピーク値を含む所定範囲内となるタイミングで、他方のスイッチング素子対を構成するスイッチング素子をオンさせる場合は、交流電源の電圧がピーク値を含む所定範囲内となるタイミングで他方のスイッチング素子対を構成するスイッチング素子をオンさせる直前であって、一方のスイッチング素子対を構成するスイッチング素子と、他方のスイッチング素子対を構成するスイッチング素子を、交流電源の電圧の極性が切り替わるタイミングに同期して相補的にスイッチングを開始させるタイミングから交流の1/2周期前よりも以前、かつ、交流電源の電圧が相補的にスイッチングを開始させるタイミングから交流の1/2周期前までの極性とは逆極性のときに一方のスイッチング素子対の低電位側のスイッチング素子をオンさせることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、電力変換回路の直流端と交流端の電圧差を小さくした状態で、スイッチングを開始することができる。そのため、スイッチング開始直後に発生する突入電流を抑えることができる。また、交流電源の電圧がピーク値を含む所定範囲内となるタイミングで、一方のスイッチング素子対を構成するスイッチング素子、又は、他方のスイッチング素子対を構成するスイッチング素子をオンさせる直前であって、交流電源の電圧の極性が切り替わるタイミング以前に、低電位側のスイッチング素子をオンさせる。そのため、高電位側のスイッチング素子の駆動に必要な電圧を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1参考形態における電力変換装置の回路図である。
図2図1における制御回路の昇降圧コンバータ回路制御に関するブロック図である。
図3図1における制御回路の整流回路制御に関するブロック図である。
図4参考形態における電力変換装置の交流電源の電圧及び駆動信号の波形図である。
図5参考形態における電力変換装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
図6】従来の電力変換装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
図7実施形態における電力変換装置の回路図である。
図8図6における整流回路用の駆動回路の詳細な回路図である。
図9図6における制御回路の整流回路制御に関するブロック図である。
図10実施形態における電力変換装置の交流電源の電圧及び駆動信号の波形図である。
図11実施形態における電力変換装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、参考形態及び実施形態を挙げ、本発明をより詳しく説明する。参考形態及び実施形態では、本発明に係る電力変換装置を、家庭用の交流電源と、電気自動車やハイブリッド車に搭載された車載バッテリとの間で、双方向に電力を変換して供給する電力変換装置に適用した例を示す。
【0017】
参考形態
まず、図1を参照して参考形態の電力変換装置の構成について説明する。
【0018】
図1に示す電力変換装置1は、家庭用の交流電源AC1から供給される交流を直流に変換して車載バッテリB1に供給する装置である。また、逆に、車載バッテリB1から供給される直流を交流に変換して家庭用の交流電源AC1に供給する装置でもある。つまり、家庭用の交流電源AC1と車載バッテリB1の間で、双方向に電力を変換して供給する装置である。電力変換装置1は、整流回路10(電力変換回路)と、昇降圧コンバータ回路11(直流電源)と、フィルタ回路12と、スナバ回路13と、平滑コンデンサ14と、制御回路15とを備えている。
【0019】
整流回路10は、交流端がフィルタ回路12を介して交流電源AC1に、直流端が昇降圧コンバータ回路11にそれぞれ接続され、交流電源AC1から供給される交流を直流に変換して昇降圧コンバータ回路11に供給する回路である。また、逆に、昇降圧コンバータ回路11から供給される直流を交流に変換して交流電源AC1に供給する回路でもある。整流回路10は、IGBT100a〜100d(スイッチング素子)と、ダイオード100e〜100hとを備えている。
【0020】
IGBT100a、100b及びIGBT100c、100dは、それぞれ直列接続されている。具体的には、IGBT100a、100cのエミッタが、IGBT100b、100dのコレクタにそれぞれ接続されている。直列接続されたIGBT100a、100b及びIGBT100c、100dは、並列接続されている。具体的には、IGBT100a、100cのエミッタとIGBT100b、100dのコレクタがそれぞれ接続されている。つまり、IGBT100a〜100dは、ブリッジ接続されている。IGBT100a、100b及びIGBT100c、100dの接続点は、交流端を形成し、フィルタ回路12を介して交流電源AC1にそれぞれ接続されている。IGBT100a、100cのコレクタ及びIGBT100b、100dのエミッタは、直流端を形成し、昇降圧コンバータ回路11及びスナバ回路13にそれぞれ接続されている。IGBT100a〜100dのゲートは、制御回路15にそれぞれ接続されている。
【0021】
ダイオード100e〜100hのアノードはIGBT100a〜100dのエミッタに、カソードはIGBT100a〜100dのコレクタにそれぞれ接続されている。つまり、ダイオード100e〜100hは、IGBT100a〜100dに逆並列接続されている。
【0022】
整流回路10は、IGBT100a〜100dをオフすることで、ダイオード100e〜100hによって、交流電源AC1から供給される交流を直流に変換して昇降圧コンバータ回路11に供給する。また、IGBT100a〜100dを所定のタイミングでスイッチングすることで、昇降圧コンバータ回路11から供給される直流を交流に変換して交流電源AC1に供給する。
【0023】
昇降圧コンバータ回路11は、整流回路10と車載バッテリB1にそれぞれ接続され、整流回路10から供給される直流を昇圧又は降圧して車載バッテリB1に供給する回路である。また、逆に、車載バッテリB1から供給される直流を昇圧又は降圧して整流回路10に供給する回路でもある。昇降圧コンバータ回路11は、IGBT110a〜110dと、ダイオード110e〜110hと、リアクトル110iとを備えている。
【0024】
IGBT110a、110b及びIGBT110c、110dは、それぞれ直列接続されている。具体的には、IGBT110a、110cのエミッタが、IGBT110b、110dのコレクタにそれぞれ接続されている。IGBT110a、110bの接続点はリアクトル110iの一端に、IGBT110c、110dの接続点はリアクトル110iの他端にそれぞれ接続されている。IGBT110aのコレクタはIGBT100a、100cのコレクタに、IGBT110bのエミッタはIGBT100b、100dのエミッタにそれぞれ接続されている。IGBT110cのコレクタは車載バッテリB1の正極端に、IGBT110dのエミッタはIGBT110bのエミッタと車載バッテリB1の負極端にそれぞれ接続されている。IGBT110a〜110dのゲートは、制御回路15にそれぞれ接続されている。
【0025】
ダイオード110e〜110hのアノードはIGBT110a〜110dのエミッタに、カソードはIGBT110a〜110dのコレクタにそれぞれ接続されている。つまり、ダイオード110e〜110hは、IGBT110a〜110dに逆並列接続されている。
【0026】
昇降圧コンバータ回路11は、IGBT110a〜110dを所定のタイミングでスイッチングすることで、整流回路10から供給される直流を昇圧又は降圧して車載バッテリB1に供給する。また、IGBT110a〜110dを所定のタイミングでスイッチングすることで、車載バッテリB1から供給される直流を昇圧又は降圧して整流回路10に供給する。
【0027】
フィルタ回路12は、交流電源AC1と整流回路10の交流端の間に接続され、交流に含まれる所定の周波数成分を除去する回路である。具体的には、高周波成分を除去する回路である。フィルタ回路12は、リアクトル120aと、コンデンサ120b(第1コンデンサ)とを備えている。リアクトル120aの一端は交流電源AC1の一端に、他端はIGBT100a、100bの接続点にそれぞれ接続されている。コンデンサ120bの一端はリアクトル120aの他端に、他端は交流電源AC1の他端とIGBT100c、100dの接続点にそれぞれ接続されている。つまり、コンデンサ120bは、整流回路10の交流端に並列接続されている。
【0028】
スナバ回路13は、配線の浮遊インダクタンス等の影響によりIGBTのスイッチングに伴って発生するサージ電圧を抑え、IGBTを保護するための回路である。スナバ回路13は、抵抗130aと、コンデンサ130b(第2コンデンサ)とを備えている。抵抗130aとコンデンサ130bは、直列接続されている。具体的には、抵抗130aの一端が、コンデンサ130bの一端に接続されている。抵抗130aの他端はIGBT100a、100cのコレクタに、コンデンサ130bの他端はIGBT100b、100dのエミッタにそれぞれ接続されている。つまり、コンデンサ130bは、抵抗130aを介して整流回路10の交流端に並列接続されている。
【0029】
平滑コンデンサ14は、昇降圧コンバータ回路11と車載バッテリB1に接続され、直流を平滑化する素子である。平滑コンデンサ14の一端は、IGBT110cのコレクタと車載バッテリB1の正極端に、他端はIGBT110dのエミッタと車載バッテリB1の負極端にそれぞれ接続されている。
【0030】
制御回路15は、整流回路10と昇降圧コンバータ回路11にそれぞれ接続され、整流回路10と昇降圧コンバータ回路11を制御する装置である。
【0031】
制御回路15は、交流電源AC1から供給される交流を直流に変換して車載バッテリB1に供給するときには、IGBT100a〜100dをオフさせるとともに、IGBT110a〜110dを所定のタイミングでスイッチングさせる。
【0032】
一方、車載バッテリB1から供給される直流を交流に変換して交流電源AC1に供給するときには、IGBT110a〜110dを所定のタイミングでスイッチングさせるとともに、整流回路10の対角に配置されたIGBTからなるスイッチング素子対のうち、一方のスイッチング素子対を構成するIGBT100a、100dと、他方のスイッチング素子対を構成するIGBT100b、100cを、交流電源AC1の電圧の極性が切り替わるタイミングに同期して相補的にスイッチングさせる。
【0033】
その際、IGBT100a、100dとIGBT100b、100cを、交流電源AC1の電圧の極性が切り替わるタイミングに同期して相補的にスイッチングさせる直前であって、交流電源AC1の電圧がピーク値を含む所定範囲内となるタイミングで、IGBT100a、100d又はIGBT100b、100cをオンさせる。具体的には、交流電源AC1の電圧がピーク値を含む所定範囲内となるタイミングから、交流電源AC1の電圧の極性が切り替わるタイミングまで、IGBT100a、100d、又は、IGBT100b、100cをオンさせる。
【0034】
ここで、所定範囲とは、ピーク値の95%〜100%の範囲である。これは、突入電流が、実用上問題ない範囲内となるよう決定された値である。制御回路15は、電流センサ150、151と、電圧センサ152、153と、駆動回路154、155と、マイクロコンピュータ156とを備えている。
【0035】
電流センサ150は、交流電源AC1からフィルタ回路12を介して整流回路10に供給される交流電流、又は、整流回路10からフィルタ回路12を介して交流電源AC1に供給される交流電流を検出し、検出結果を出力する素子である。電流センサ150は、交流電源AC1とフィルタ回路12を接続する配線に、配線をクランプするように設けられている。電流センサ150の出力端は、マイクロコンピュータ156に接続されている。
【0036】
電流センサ151は、リアクトル110iに流れる電流を検出し、検出結果を出力する素子である。電流センサ151は、IGBT110a、110bの接続点とリアクトル110iを接続する配線に、配線をクランプするように設けられている。電流センサ151の出力端は、マイクロコンピュータ156に接続されている。
【0037】
電圧センサ152は、交流電源AC1からフィルタ回路12を介して整流回路10に供給される交流電圧、又は、整流回路10からフィルタ回路12を介して交流電源AC1に供給される交流電圧を検出し、検出結果を出力する素子である。電圧センサ152は、交流電源AC1の一端及び他端にそれぞれ接続されている。電圧センサ152の出力端は、マイクロコンピュータ156に接続されている。
【0038】
電圧センサ153は、昇降圧コンバータ回路11から車載バッテリB1に供給される直流電圧、又は、車載バッテリB1から昇降圧コンバータ回路11に供給される直流電圧を検出し、検出結果を出力する素子である。電圧センサ153は、車載バッテリB1の正極端及び負極端にそれぞれ接続されている。電圧センサ153の出力端は、マイクロコンピュータ156に接続されている。
【0039】
駆動回路154は、マイクロコンピュータ156から入力される駆動信号に基づいてIGBT100a〜100dのゲートに電圧を供給し、IGBT100a〜100dを駆動する回路である。具体的には、駆動信号がハイレベルのとき、IGBTをオンする回路である。駆動回路154は、マイクロコンピュータ156、IGBT100a〜100dのゲート及びエミッタにそれぞれ接続されている。
【0040】
駆動回路155は、マイクロコンピュータ156から入力される駆動信号に基づいてIGBT110a〜110dのゲートに電圧を供給し、IGBT110a〜110dを駆動する回路である。具体的には、駆動信号がハイレベルのとき、IGBTをオンする回路である。駆動回路155は、マイクロコンピュータ156、IGBT110a〜110dのゲート及びエミッタにそれぞれ接続されている。
【0041】
マイクロコンピュータ156は、電流センサ150、151及び電圧センサ152、153の検出結果に基づいて、IGBT100a〜100d、110a〜110dを駆動するための駆動信号を生成し出力する素子である。
【0042】
マイクロコンピュータ156は、交流電源AC1から供給される交流を直流に変換して車載バッテリB1に供給するときには、IGBT100a〜100dをオフさせる駆動信号PWM1H、PWM1L、PWM2H、PWM2Lを生成し出力するとともに、車載バッテリB1に供給される直流電圧が所定電圧となるように、電流センサ150、151及び電圧センサ152、153の検出結果に基づいて、IGBT110a〜110dを所定のタイミングでスイッチングさせる駆動信号PWM3H、PWM3L、PWM4H、PWM4Lを生成し出力する。
【0043】
一方、車載バッテリB1から供給される直流を交流に変換して交流電源AC1に供給するときには、整流回路10に供給される直流電圧が交流電源AC1の交流電圧の瞬時値に対応した電圧となるように、電流センサ150、151及び電圧センサ152、153の検出結果に基づいて、IGBT110a〜110dを所定のタイミングでスイッチングさせる駆動信号PWM3H、PWM3L、PWM4H、PWM4Lを生成し出力するとともに、IGBT100a、100dとIGBT100b、100cを、交流電源AC1の電圧の極性が切り替わるタイミングに同期して相補的にスイッチングさせる駆動信号PWM1H、PWM1L、PWM2H、PWM2Lを生成し出力する。
【0044】
その際、IGBT100a、100dとIGBT100b、100cを、交流電源AC1の電圧の極性が切り替わるタイミングに同期して相補的にスイッチングさせる直前であって、交流電源AC1の電圧がピーク値を含む所定範囲内となるタイミングから、交流電源AC1の電圧の極性が切り替わるタイミングまで、IGBT100a、100d又はIGBT100b、100cをオンさせる駆動信号PWM1H、PWM1L、PWM2H、PWM2Lを生成する。
【0045】
ここで、駆動信号PWM1H、PWM1L、PWM2H、PWM2Lが、IGBT100a〜100dに対する駆動信号である。また、駆動信号PWM3H、PWM3L、PWM4H、PWM4Lが、IGBT110a〜110dに対する駆動信号である。マイクロコンピュータ156は、電流センサ150、151及び電圧センサ152、153の出力端にそれぞれ接続されている。また、駆動回路154、155にそれぞれ接続されている。
【0046】
図2に示すように、マイクロコンピュータ156は、車載バッテリB1から供給される直流を交流に変換して交流電源AC1に供給するときに、IGBT110a、110bの駆動信号PWM3H、PWM3Lを生成するため、除算部156aと、乗算部156bと、駆動信号生成部156cと、NOT回路部156dとを備えている。また、IGBT110c、110dの駆動信号PWM4H、PWM4Lを生成するため、除算部156eと、偏差演算部156fと、PI演算部156gと、加算部156hと、除算部156iと、駆動信号生成部156jと、NOT回路部156kとを備えている。除算部156a、乗算部156b、駆動信号生成部156c、NOT回路部156d、除算部156e、偏差演算部156f、PI演算部156g、加算部156h、除算部156iと、駆動信号生成部156j及びNOT回路部156kは、ソフトウェアによって構成されている。
【0047】
除算部156aは、電圧センサ153の検出結果から求めた車載バッテリB1の電圧Vdcを、電圧センサ152の検出結果から求めた交流電源AC1の交流電圧の振幅Vac_ampで除算し、Vdc/Vac_ampを求め出力するブロックである。
【0048】
乗算部156bは、除算部156aの出力に係数kを乗算し、オンデューティ比(Vdc/Vac_amp)・kを求め出力するブロックである。ここで、係数kは0.9〜1.0の所定値に設定されている。
【0049】
駆動信号生成部156cは,乗算部156bの出力するオンデューティ比(Vdc/Vac_amp)・kに応じたパルス信号を、IGBT110aの駆動信号PWM3Hとして出力するブロックである。
【0050】
NOT回路部156dは、駆動信号生成部156cの出力するパルス信号を反転して、IGBT110bの駆動信号PWM3Lとして出力するブロックである。
【0051】
除算部156eは、整流回路10から交流電源AC1に供給される交流電流の絶対値の目標値|Iac|*を、駆動信号PWM3Hのオンデューティ比PWM3H_dutyで除算し、|Iac|*/PWM3H_dutyを、リアクトル110iに流れる電流の目標値IL*として出力するブロックである。
【0052】
偏差演算部156fは、除算部156eの出力するリアクトル110iに流れる電流の目標値IL*と、電流センサ151の検出結果から求めたリアクトル110iに流れる電流ILの偏差を演算し、偏差ΔILとして出力するブロックである。
【0053】
PI演算部156gは、偏差演算部156fの出力する偏差ΔILを比例、積分演算し、IGBT110c、110dの接続点の電圧の目標値として出力するブロックである。
【0054】
加算部156hは、PI演算部156gの出力に、電圧センサ152の検出結果から求めた交流電源AC1の交流電圧の絶対値|Vac|と、駆動信号PWM3Hのオンデューティ比PWM3H_dutyを乗算したものをフィードフォワード項として加算し、IGBT110c、110dの接続点の電圧の新たな目標値V*として出力するブロックである。
【0055】
除算部156iは、加算部156hの出力する電圧の目標値V*を、電圧センサ153の検出結果から求めた車載バッテリB1の電圧Vdcで除算し、オンデューティ比V*/Vdcを求め出力するブロックである。
【0056】
駆動信号生成部156jは、除算部156iの出力するオンデューティ比V*/Vdcに応じたパルス信号を、IGBT110cの駆動信号PWM4Hとして出力するブロックである。
【0057】
NOT回路部156kは、駆動信号生成部156jの出力するパルス信号を反転して、IGBT110dの駆動信号PWM4Lとして出力するブロックである。
【0058】
図3に示すように、マイクロコンピュータ156は、車載バッテリB1から供給される直流を交流に変換して交流電源AC1に供給するときに、IGBT100a〜100dの駆動信号PWM1H、PWM1L、PWM2H、PWM2Lを生成するため、極性判定部156lと、ピーク検出部156mと、NOT回路部156nと、AND回路部156o、156pとを備えている。極性判定部156l、ピーク検出部156m、NOT回路部156n及びAND回路部156o、156pは、ソフトウェアによって構成されている。
【0059】
極性判定部156lは、電圧センサ152の検出結果から交流電源AC1の電圧Vacの極性を判定し、交流電源AC1の電圧Vacが正のときにはハイレベルを、交流電源AC1の電圧が0又は負のときにはローレベルを出力するブロックである。
【0060】
ピーク検出部156mは、電圧センサ152の検出結果から、交流電源AC1の電圧Vacがピーク値を含む所定範囲内となるタイミングを検出し、検出して以降、ハイレベルを出力するブロックである。具体的には、交流電源AC1の電圧Vacがピーク値の95%〜100%の範囲内となったとき、ハイレベルとなり、以降、ハイレベルを出力するブロックである。
【0061】
NOT回路部156nは、極性判定部156lの出力を反転して出力するブロックである。つまり、極性判定部156lの出力がハイレベルのときにはローレベルを、極性判定部156lの出力がローレベルのときにはハイレベルを出力するブロックである。
【0062】
AND回路部156oは、ピーク検出部156mの出力がハイレベルのときに、極性判定部156lの出力するパルス信号を、IGBT100aの駆動信号PWM1H及びIGBT100dの駆動信号PWM2Lとして出力するブロックである。
【0063】
AND回路部156pは、ピーク検出部156mの出力がハイレベルのときに、極性判定部156lの出力を反転したNOT回路部156nの出力するパルス信号を、IGBT100bの駆動信号PWM1L及びIGBT100cの駆動信号PWM2Hとして出力するブロックである。
【0064】
次に、図1図6を参照して参考形態の電力変換装置の動作について説明する。
【0065】
交流電源AC1から供給される交流を直流に変換して車載バッテリB1に供給する場合、図1に示すマイクロコンピュータ156は、IGBT100a〜100dをオフさせる駆動信号PWM1H、PWM1L、PWM2H、PWM2Lを生成し出力する。
【0066】
駆動回路154は、マイクロコンピュータ156から入力される駆動信号PWM1H、PWM1L、PWM2H、PWM2Lに基づいてIGBT100a〜100dのゲートへの電圧供給を停止し、IGBT100a〜100dをオフする。
【0067】
整流回路10は、IGBT100a〜100dをオフすることで、ダイオード100e〜100hによって、交流電源AC1から供給される交流を直流に変換して昇降圧コンバータ回路11に供給する。
【0068】
また、マイクロコンピュータ156は、車載バッテリB1に供給される直流電圧が所定電圧となるように、電流センサ150、151及び電圧センサ152、153の検出結果に基づいて、IGBT110a〜110dを所定のタイミングでスイッチングさせる駆動信号PWM3H、PWM3L、PWM4H、PWM4Lを生成し出力する。
【0069】
駆動回路155は、マイクロコンピュータ156から入力される駆動信号PWM3H、PWM3L、PWM4H、PWM4Lに基づいてIGBT110a〜110dのゲートに電圧を供給し、IGBT110a〜110dを所定のタイミングでスイッチングさせる。
【0070】
昇降圧コンバータ回路11は、駆動信号PWM3H、PWM3L、PWM4H、PWM4Lに基づいてIGBT110a〜110dを所定のタイミングでスイッチングすることで、整流回路10から供給される直流を昇圧又は降圧して車載バッテリB1に供給する。これにより、交流電源AC1から供給される交流を直流に変換して車載バッテリB1に供給することができる。
【0071】
一方、車載バッテリB1から供給される直流を交流に変換して家庭用の交流電源AC1に供給する場合、マイクロコンピュータ156は、整流回路10に供給される直流電圧が交流電源AC1の交流電圧の瞬時値に対応した電圧となるように、電流センサ150、151及び電圧センサ152、153の検出結果に基づいて、IGBT110a〜110dを所定のタイミングでスイッチングさせる駆動信号PWM3H、PWM3L、PWM4H、PWM4Lを生成し出力する。
【0072】
図2に示す除算部156aは、電圧センサ153の検出結果から求めた車載バッテリB1の電圧Vdcを、電圧センサ152の検出結果から求めた交流電源AC1の交流電圧の振幅Vac_ampで除算し、Vdc/Vac_ampを求め出力する。乗算部156bは、除算部156aの出力に係数kを乗算し、オンデューティ比(Vdc/Vac_amp)・kを求め出力する。
【0073】
そして、駆動信号生成部156cは、乗算部156bの出力するオンデューティ比(Vdc/Vac_amp)・kに応じたパルス信号を、IGBT110aの駆動信号PWM3Hとして出力する。NOT回路部156dは、駆動信号生成部156cの出力するパルス信号を反転して、IGBT110bの駆動信号PWM3Lとして出力する。
【0074】
除算部156eは、整流回路10から交流電源AC1に供給される交流電流の絶対値の目標値|Iac|*を、駆動信号PWM3Hのオンデューティ比PWM3H_dutyで除算し、|Iac|*/PWM3H_dutyを、リアクトル110iに流れる電流の目標値IL*として出力する。偏差演算部156fは、除算部156eの出力するリアクトル110iに流れる電流の目標値IL*と、電流センサ151の検出結果から求めたリアクトル110iに流れる電流ILの偏差を演算し、偏差ΔILとして出力する。PI演算部156gは、偏差演算部156fの出力する偏差ΔILを比例、積分演算し、IGBT110c、110dの接続点の電圧の目標値として出力する。
【0075】
加算部156hは、PI演算部156gの出力に、電圧センサ152の検出結果から求めた交流電源AC1の交流電圧の絶対値|Vac|と、駆動信号PWM3Hのオンデューティ比PWM3H_dutyを乗算したものを、フィードフォワード項として加算し、IGBT110c、110dの接続点の電圧の新たな目標値V*として出力する。除算部156iは、加算部156hの出力する電圧の目標値V*を、電圧センサ153の検出結果から求めた車載バッテリB1の電圧Vdcで除算し、オンデューティ比V*/Vdcを求め出力する。
【0076】
そして、駆動信号生成部156jは、除算部156iの出力するオンデューティ比V*/Vdcに応じたパルス信号を、IGBT110cの駆動信号PWM4Hとして出力する。NOT回路部156kは、駆動信号生成部156jの出力するパルス信号を反転して、IGBT110dの駆動信号PWM4Lとして出力する。
【0077】
図1に示す駆動回路155は、マイクロコンピュータ156から入力される駆動信号PWM3H、PWM3L、PWM4H、PWM4Lに基づいてIGBT110a〜110dのゲートに電圧を供給し、IGBT110a〜110dを所定のタイミングでスイッチングさせる。
【0078】
昇降圧コンバータ回路11は、駆動信号PWM3H、PWM3L、PWM4H、PWM4Lに基づいてIGBT110a〜110dを所定のタイミングでスイッチングすることで、車載バッテリB1から供給される直流を昇圧又は降圧して整流回路10に供給する。これにより、交流電源AC1の交流電圧の瞬時値に対応した電圧が整流回路10に供給される。
【0079】
また、マイクロコンピュータ156は、IGBT100a、100dとIGBT100b、100cを、交流電源AC1の電圧の極性が切り替わるタイミングに同期して相補的にスイッチングさせる駆動信号PWM1H、PWM1L、PWM2H、PWM2Lを生成し出力する。その際、IGBT100a、100dとIGBT100b、100cを、交流電源AC1の電圧の極性が切り替わるタイミングに同期して相補的にスイッチングさせる直前であって、交流電源AC1の電圧がピーク値を含む所定範囲内となるタイミングから、交流電源AC1の電圧の極性が切り替わるタイミングまで、IGBT100a、100d又はIGBT100b、100cをオンさせる駆動信号PWM1H、PWM1L、PWM2H、PWM2Lを生成する。
【0080】
図3に示す極性判定部156lは、電圧センサ152の検出結果から交流電源AC1の電圧Vacの極性を判定し、交流電源AC1の電圧Vacが正のときにはハイレベルを、交流電源AC1の電圧が0又は負のときにはローレベルを出力する。その後、ピーク検出部156mは、所定のタイミングで動作を開始し、電圧センサ152の検出結果から、交流電源AC1の電圧Vacがピーク値の95%〜100%の範囲内となったとき、ハイレベルとなり、以降、ハイレベルを出力する。NOT回路部156nは、極性判定部156lの出力を反転して出力する。
【0081】
そして、AND回路部156oは、ピーク検出部156mの出力がハイレベルのときに、極性判定部156lの出力するパルス信号を、IGBT100aの駆動信号PWM1H及びIGBT100dの駆動信号PWM2Lとして出力する。AND回路部156pは、ピーク検出部156mの出力がハイレベルのときに、極性判定部156lの出力を反転したNOT回路部156nの出力するパルス信号を、IGBT100bの駆動信号PWM1L及びIGBT100cの駆動信号PWM2Hとして出力する。
【0082】
その結果、図4に示すように、交流電源AC1の電圧の極性が切り替わるタイミングである時刻t1以降、交流電源AC1の電圧の極性が切り替わるタイミングに同期して、駆動信号PWM1H、PWM2Lと駆動信号PWM1L、PWM2Hのレベルが相補的に切り替わる。その際、時刻t1の直前であって、交流電源AC1の電圧がピーク値を含む所定範囲内、具体的にはピーク値の95%〜100%の範囲内となるタイミングである時刻t2から時刻t1まで、駆動信号PWM1L、PWM2Hがハイレベルとなる。
【0083】
図1に示す駆動回路154は、マイクロコンピュータ156から入力される駆動信号PWM1H、PWM1L、PWM2H、PWM2Lに基づいてIGBT100a〜100dのゲートに電圧を供給し、IGBT100a〜100dを所定のタイミングでスイッチングさせる。
【0084】
整流回路10は、駆動信号PWM1H、PWM1L、PWM2H、PWM2Lに基づいてIGBT100a〜100dを所定のタイミングでスイッチングすることで、昇降圧コンバータ回路11から供給される直流を交流に変換して交流電源AC1に供給する。これにより、車載バッテリB1から供給される直流を交流に変換して家庭用の交流電源AC1に供給することができる。
【0085】
ところで、電力変換装置1が動作していない状態において、フィルタ回路12のコンデンサ120bには、交流電源AC1から供給される交流電圧が印加されている。スナバ回路13のコンデンサ130bには、整流回路10のダイオード100e〜100hによって変換された直流電圧が印加され、コンデンサ130bが充電されている。そのため、整流回路10の交流端には交流電圧が、整流回路10の直流端には直流電圧がそれぞれ印加された状態となっている。
【0086】
車載バッテリB1から供給される直流を交流に変換して家庭用の交流電源AC1に供給する場合、制御回路15は、図5に示すように、交流電源AC1の電圧の極性が切り替わるタイミングである時刻t1以降、交流電源AC1の電圧の極性が切り替わるタイミングに同期してIGBT100a、100dとIGBT100b、100cを相補的にスイッチングさせる。その際、時刻t1の直前であって、交流電源AC1の電圧がピーク値を含む所定範囲内、具体的にはピーク値の95%〜100%の範囲内となるタイミングである時刻t2から時刻t1まで、IGBT100a、100d又はIGBT100b、100cをオンさせる。この場合は、IGBT100b、100cをさせている。
【0087】
仮に、制御回路15が、図6に示すように、時刻t0から時刻t1までは何もせず、時刻t1以降、交流電源AC1の電圧の極性が切り替わるタイミングに同期してIGBT100a、100dとIGBT100b、100cを相補的にスイッチングさせるようにしていた場合、時刻t1において、整流回路10の交流端に接続されたコンデンサ120bの電圧と、整流回路10の直流端に接続されたコンデンサ130bの電圧に電圧差が発生する。この状態でIGBT100a、100dをオンすると、スイッチング開始直後に、コンデンサ130bから整流回路10を経てコンデンサ120bに至る経路に突入電流が流れてしまう。
【0088】
しかし、制御回路15は、図5に示すように、時刻t1の直前であって、交流電源AC1の電圧がピーク値を含む所定範囲内となるタイミングである時刻t2から時刻t1まで、IGBT100b、100cをオンさせている。そのため、整流回路10の交流端に接続されたコンデンサ120bの電圧と、整流回路10の直流端に接続されたコンデンサ130bの電圧の電圧差を小さくした状態で、スイッチングを開始することができる。そのため、スイッチング開始直後に発生する突入電流を抑えることができる。
【0089】
次に、参考形態の電力変換装置における効果について説明する。
【0090】
参考形態によれば、制御回路15は、車載バッテリB1から供給される直流を交流に変換して交流電源AC1に供給するとき、IGBT100a、100dとIGBT100b、100cを、交流電源AC1の電圧の極性が切り替わるタイミングである時刻t1に同期して相補的にスイッチングさせる直前であって、交流電源AC1の電圧がピーク値を含む所定範囲内となるタイミングである時刻t2で、IGBT100a、100d又はIGBT100b、100cをオンさせる。そのため、整流回路10の交流端に接続されたコンデンサ120bの電圧と、整流回路10の直流端に接続されたコンデンサ130bの電圧の電圧差を小さくした状態で、スイッチングを開始することができる。そのため、スイッチング開始直後に発生する突入電流を抑えることができる。
【0091】
参考形態によれば、制御回路15は、交流電源AC1の電圧がピーク値を含む所定範囲内となるタイミングである時刻t2から、交流電源AC1の電圧の極性が切り替わるタイミングである時刻t1まで、IGBT100a、100d又はIGBT100b、100cをオンさせる。そのため、整流回路10の交流端に接続されたコンデンサ120bの電圧と、整流回路10の直流端に接続されたコンデンサ130bの電圧の電圧差をより小さくした状態で、スイッチングを開始することができる。そのため、スイッチング開始直後に発生する突入電流を確実に抑えることができる。
【0092】
参考形態によれば、電力変換装置1は、交流電源AC1と整流回路10の交流端の間に接続され、交流に含まれる所定の周波数成分を除去するフィルタ回路12を有している。そして、フィルタ回路12を構成するコンデンサ120bが、整流回路10の交流端に並列接続されている。そのため、コンデンサ120bに起因して突入電流が発生する。しかし、突入電流を抑えることができる。そのため、コンデンサ120bを保護することができる。
【0093】
参考形態によれば、電力変換装置1は、整流回路10の直流端に接続されるスナバ回路13を有している。そして、スナバ回路13を構成するコンデンサ130bが、整流回路10の直流端に接続されている。そのため、コンデンサ130bに起因して突入電流が発生する。しかし、突入電流を抑えることができる。そのため、コンデンサ130bを保護することができる。
【0094】
参考形態によれば、スナバ回路13は、コンデンサ130bに直列接続される抵抗130aを有している。そのため、抵抗130aによって突入電流をより確実に抑えることができる。
【0095】
参考形態によれば、交流電源AC1の電圧がピーク値の95%〜100%の範囲内となるタイミングである時刻t2で、IGBT100a、100d又はIGBT100b、100cをオンさせる。そのため、整流回路10の交流端に接続されたコンデンサ120bの電圧と、整流回路10の直流端に接続されたコンデンサ130bの電圧の電圧差を実用上問題ない範囲まで小さくした状態で、スイッチングを開始することができる。そのため、スイッチング開始直後に発生する突入電流を実用上問題ない範囲内に抑えることができる。
【0096】
実施形態
次に、実施形態の電力変換装置について説明する。実施形態の電力変換装置は、参考形態の電力変換装置に対して、制御回路に、ブートストラップ回路を備えるとともに、それに伴って、制御回路の動作を一部変更したものである。
【0097】
まず、図7を参照して実施形態の電力変換装置の構成について説明する。
【0098】
図7に示す電力変換装置2は、家庭用の交流電源AC2から供給される交流を直流に変換して車載バッテリB2に供給する装置である。また、逆に、車載バッテリB2から供給される直流を交流に変換して家庭用の交流電源AC2に供給する装置でもある。電力変換装置2は、整流回路20(電力変換回路)と、昇降圧コンバータ回路21と、フィルタ回路22と、スナバ回路23と、平滑コンデンサ24と、制御回路25とを備えている。
【0099】
整流回路20(電力変換回路)は、IGBT200a〜200d(スイッチング素子)と、ダイオード200e〜200hとを備えている。昇降圧コンバータ回路21は、IGBT210a〜210dと、ダイオード210e〜210hと、リアクトル210iとを備えている。フィルタ回路22は、リアクトル220aと、コンデンサ220b(第1コンデンサ)とを備えている。スナバ回路23は、抵抗230aと、コンデンサ230b(第2コンデンサ)とを備えている。整流回路20、昇降圧コンバータ回路21、フィルタ回路22、スナバ回路23及び平滑コンデンサ24は、参考形態の整流回路10、昇降圧コンバータ回路11、フィルタ回路12、スナバ回路13及び平滑コンデンサ14と同一構成であるため説明を省略する。
【0100】
制御回路25は、電流センサ250、251と、電圧センサ252、253と、駆動回路254、255と、マイクロコンピュータ256とを備えている。電流センサ250、251、電圧センサ252、253及び駆動回路255は、参考形態の電流センサ150、151、電圧センサ152、153及び駆動回路と同一構成であるため説明を省略する。
【0101】
図8及び図9を参照して参考形態の電力変換装置と異なる駆動回路及びマイクロコンピュータの構成について説明する。
【0102】
図8に示すように、駆動回路254は、マイクロコンピュータ256から入力される駆動信号に基づいてIGBT200a〜200dのゲートに電圧を供給し、IGBT200a〜200dを駆動する回路である。駆動回路254は、ドライブ回路254a〜254dと、電源254eと、ブートストラップ回路254f、254gとを備えている。
【0103】
ドライブ回路254aは、マイクロコンピュータ256から入力される駆動信号に基づいてブートストラップ回路254fから供給される電圧をIGBT200aのゲートに供給し、IGBT200aを駆動する回路である。ドライブ回路254dは、ブートストラップ回路254fに接続されている。また、マイクロコンピュータ256及びIGBT200aのゲートにそれぞれ接続されている。
【0104】
ドライブ回路254bは、マイクロコンピュータ256から入力される駆動信号に基づいて電源254eから供給される電圧をIGBT200bのゲートに供給し、IGBT200bを駆動する回路である。ドライブ回路254bは、電源254eに接続されている。また、マイクロコンピュータ256及びIGBT200bのゲートにそれぞれ接続されている。
【0105】
ドライブ回路254cは、マイクロコンピュータ256から入力される駆動信号に基づいてブートストラップ回路254gから供給される電圧をIGBT200cのゲートに供給し、IGBT200cを駆動する回路である。ドライブ回路254cは、ブートストラップ回路254gに接続されている。また、マイクロコンピュータ256及びIGBT200cのゲートにそれぞれ接続されている。
【0106】
ドライブ回路254dは、マイクロコンピュータ256から入力される駆動信号に基づいて電源254eから供給される電圧をIGBT200dのゲートに供給し、IGBT200dを駆動する回路である。ドライブ回路254dは、電源254eに接続されている。また、マイクロコンピュータ256及びIGBT200dのゲートにそれぞれ接続されている。
【0107】
電源254eは、IGBT200b、200dの駆動に必要な電圧をドライブ回路254b、254dに供給する電源である。電源の254e正極端及び負極端は、ドライブ回路254b、254dにそれぞれ接続されている。電源254eの負極端は、IGBT200b、200dのエミッタに接続されている。
【0108】
ブートストラップ回路254fは、低電位側のIGBT200bがオンすることで電源254eによって充電され、高電位側のIGBT200aの駆動に必要な電圧をドライブ回路254aに供給する回路である。ブートストラップ回路254fは、ダイオード254hと、コンデンサ254iとを備えている。ダイオード254hのアノードは電源254eの正極端に接続されている。コンデンサ254iの一端はダイオード254hのカソードに、他端はIGBT200aのエミッタにそれぞれ接続されている。コンデンサ254iの一端及び他端はドライブ回路254aにそれぞれ接続されている。
【0109】
ブートストラップ回路254gは、低電位側のIGBT200dがオンすることで電源254eによって充電され、高電位側のIGBT200cの駆動に必要な電圧をドライブ回路254cに供給する回路である。ブートストラップ回路254gは、ダイオード254jと、コンデンサ254kとを備えている。ダイオード254jのアノードは電源254eの正極端に接続されている。コンデンサ254kの一端はダイオード254jのカソードに、他端はIGBT200cのエミッタにそれぞれ接続されている。コンデンサ254kの一端及び他端はドライブ回路254cにそれぞれ接続されている。
【0110】
マイクロコンピュータ256は、電流センサ250、251及び電圧センサ252、253の検出結果に基づいて、IGBT200a〜200d、210a〜210dを駆動するための駆動信号を生成し出力する素子である。
【0111】
マイクロコンピュータ256は、交流電源AC2から供給される交流を直流に変換して車載バッテリB2に供給するときには、IGBT200a〜200dをオフさせる駆動信号PWM1H、PWM1L、PWM2H、PWM2Lを生成し出力するとともに、車載バッテリB2に供給される直流電圧が所定電圧となるように、電流センサ250、251及び電圧センサ252、253の検出結果に基づいて、IGBT210a〜210dを所定のタイミングでスイッチングさせる駆動信号PWM3H、PWM3L、PWM4H、PWM4Lを生成し出力する。
【0112】
一方、車載バッテリB2から供給される直流を交流に変換して交流電源AC2に供給するときには、整流回路20に供給される直流電圧が交流電源AC2の交流電圧の瞬時値に対応した電圧となるように、電流センサ250、251及び電圧センサ252、253の検出結果に基づいて、IGBT210a〜210dを所定のタイミングでスイッチングさせる駆動信号PWM3H、PWM3L、PWM4H、PWM4Lを生成し出力するとともに、IGBT200a、200dとIGBT200b、200cを、交流電源AC2の電圧の極性が切り替わるタイミングに同期して相補的にスイッチングさせる駆動信号PWM1H、PWM1L、PWM2H、PWM2Lを生成し出力する。
【0113】
その際、IGBT200a、200dとIGBT200b、200cを、交流電源AC2の電圧の極性が切り替わるタイミングに同期して相補的にスイッチングさせる直前であって、交流電源AC2の電圧がピーク値を含む所定範囲内となるタイミングから、交流電源AC2の電圧の極性が切り替わるタイミングまで、IGBT200a、200d又はIGBT200b、200cをオンさせる駆動信号PWM1H、PWM1L、PWM2H、PWM2Lを生成する。
【0114】
さらに、交流電源AC2の電圧がピーク値を含む所定範囲内となるタイミングで、IGBT200a、200d又はIGBT200b、200cをオンさせる前に、低電位側のスイッチング素子であるIGBT200b又はIGBT200dをオンさせるように駆動信号PWM1H、PWM1L、PWM2H、PWM2Lを生成する。
【0115】
ここで、駆動信号PWM1H、PWM1L、PWM2H、PWM2Lが、IGBT200a〜200dに対する駆動信号である。また、駆動信号PWM3H、PWM3L、PWM4H、PWM4Lが、IGBT210a〜210dに対する駆動信号である。
【0116】
マイクロコンピュータ256は、電流センサ250、251及び電圧センサ252、253の出力端にそれぞれ接続されている。また、駆動回路254、255にそれぞれ接続されている。
【0117】
図9に示すように、マイクロコンピュータ256は、車載バッテリB2から供給される直流を交流に変換して交流電源AC2に供給するときに、IGBT200a〜200dの駆動信号PWM1H、PWM1L、PWM2H、PWM2Lを生成するため、極性判定部256lと、ピーク検出部256mと、NOT回路部256nと、AND回路部256o、256pとを備えている。極性判定部256l、ピーク検出部256m、NOT回路部256n及びAND回路部256o、256pは、ソフトウェアによって構成されている。
【0118】
極性判定部256l、ピーク検出部256m、NOT回路部256n及びAND回路部256o、256pのブロック構成は、参考形態の極性判定部156l、ピーク検出部156m、NOT回路部156n及びAND回路部156o、156pのブロック構成と同一である。しかし、AND回路部256oの出力するパルス信号ではなく、極性判定部256lの出力するパルス信号がIGBT200dの駆動信号PWM2Lとして用いられている。それ以外は、参考形態のマイクロコンピュータ156と同一のブロック構成であるため説明を省略する。
【0119】
次に、図7図11を参照して実施形態の電力変換装置の動作について説明する。
【0120】
交流電源AC2から供給される交流を直流に変換して車載バッテリB2に供給する場合の動作は、参考形態の電力変換装置1と同一であるため説明を省略する。また、車載バッテリB2から供給される直流を交流に変換して家庭用の交流電源AC2に供給する場合において、昇降圧コンバータ回路21の制御動作も、参考形態の電力変換装置1と同一であるため説明を省略する。車載バッテリB2から供給される直流を交流に変換して家庭用の交流電源AC2に供給する場合において、整流回路20の制御動作について説明する。
【0121】
車載バッテリB2から供給される直流を交流に変換して家庭用の交流電源AC2に供給する場合、図7に示すマイクロコンピュータ256は、IGBT200a、200dとIGBT200b、200cを、交流電源AC2の電圧の極性が切り替わるタイミングに同期して相補的にスイッチングさせる駆動信号PWM1H、PWM1L、PWM2H、PWM2Lを生成し出力する。その際、IGBT200a、200dとIGBT200b、200cを、交流電源AC2の電圧の極性が切り替わるタイミングに同期して相補的にスイッチングさせる直前であって、交流電源AC2の電圧がピーク値を含む所定範囲内となるタイミングから、交流電源AC2の電圧の極性が切り替わるタイミングまで、IGBT200a、200d又はIGBT200b、200cをオンさせるように駆動信号PWM1H、PWM1L、PWM2H、PWM2Lを生成する。さらに、交流電源AC2の電圧がピーク値を含む所定範囲内となるタイミングで、IGBT200a、200d又はIGBT200b、200cをオンさせる前に、低電位側のスイッチング素子であるIGBT200b又はIGBT200dをオンさせるように駆動信号PWM1H、PWM1L、PWM2H、PWM2Lを生成する。
【0122】
図9に示す極性判定部256lは、電圧センサ252の検出結果から交流電源AC2の電圧Vacの極性を判定し、交流電源AC2の電圧Vacが正のときにはハイレベルを、交流電源AC2の電圧が0又は負のときにはローレベルを出力する。また、その出力するパルス信号を、IGBT200dの駆動信号PWM2Lとして出力する。ピーク検出部256mは、電圧センサ252の検出結果から、交流電源AC2の電圧Vacがピーク値の95%〜100%の範囲内となったとき、ハイレベルとなり、以降、ハイレベルを出力する。NOT回路部256nは、極性判定部256lの出力を反転して出力する。
【0123】
そして、AND回路部256oは、ピーク検出部256mの出力がハイレベルのときに、極性判定部256lの出力するパルス信号を、IGBT200aの駆動信号PWM1Hとして出力する。AND回路部256pは、ピーク検出部256mの出力がハイレベルのときに、極性判定部256lの出力を反転したNOT回路部256nの出力するパルス信号を、IGBT200bの駆動信号PWM1L及びIGBT200cの駆動信号PWM2Hとして出力する。
【0124】
その結果、図10に示すように、交流電源AC2の電圧の極性が切り替わるタイミングである時刻t1以降、交流電源AC2の電圧の極性が切り替わるタイミングに同期して、駆動信号PWM1H、PWM2Lと駆動信号PWM1L、PWM2Hのレベルが相補的に切り替わる。その際、時刻t1の直前であって、交流電源AC2の電圧がピーク値を含む所定範囲内、具体的にはピーク値の95%〜100%の範囲内となるタイミングである時刻t2から時刻t1まで、駆動信号PWM1L、PWM2Hがハイレベルとなる。さらに、時刻t2以前の時刻t3から時刻t2まで、駆動信号PWM2Lのレベルが交流電源AC2の電圧の極性が切り替わるタイミングに同期して切り替わる。
【0125】
図7に示す駆動回路254は、マイクロコンピュータ256から入力される駆動信号PWM1H、PWM1L、PWM2H、PWM2Lに基づいてIGBT200a〜200dのゲートに電圧を供給し、IGBT200a〜200dを所定のタイミングでスイッチングさせる。
【0126】
整流回路20は、駆動信号PWM1H、PWM1L、PWM2H、PWM2Lに基づいてIGBT200a〜200dを所定のタイミングでスイッチングすることで、昇降圧コンバータ回路21から供給される直流を交流に変換して交流電源AC2に供給する。
【0127】
これにより、車載バッテリB2から供給される直流を交流に変換して家庭用の交流電源AC2に供給する場合、制御回路25は、図11に示すように、交流電源AC2の電圧の極性が切り替わるタイミングである時刻t1以降、交流電源AC2の電圧の極性が切り替わるタイミングに同期してIGBT200a、200dとIGBT200b、200cを相補的にスイッチングさせる。その際、時刻t1の直前であって、交流電源AC2の電圧がピーク値を含む所定範囲内、具体的にはピーク値の95%〜100%の範囲内となるタイミングである時刻t2から時刻t1まで、IGBT200a、200d又はIGBT200b、200cをオンさせる。さらに、時刻t2以前の時刻t3から時刻t2まで、低電位側のスイッチング素子であるIGBT200dをオンさせる。
【0128】
時刻t3から時刻t2まで低電位側のIGBT200dがオンすることで、図8に示すコンデンサ254kがダイオード254jを介して電源254eに接続される。その結果、コンデンサ254kが電源254eによって充電され、ブートストラップ回路254gは、高電位側のIGBT200cの駆動に必要な電圧をドライブ回路254cに供給することができる。
【0129】
その後、時刻t2から時刻t1まで低電位側のIGBT200bがオンすることで、コンデンサ254iがダイオード254hを介して電源254eに接続される。その結果、コンデンサ254iが電源254eによって充電され、ブートストラップ回路254fは、高電位側のIGBT200aの駆動に必要な電圧をドライブ回路254aに供給することができる。
【0130】
そのため、時刻t2以降は、参考形態の電力変換装置1と同様に動作させることができる。従って、ブートストラップ回路254f、254gを備えている場合においても、スイッチング開始直後に発生する突入電流を抑えることができる。
【0131】
次に、実施形態の電力変換装置における効果について説明する。
【0132】
実施形態によれば、参考形態と同一な構成を有することとにより、その同一構成に対応した参考形態と同様の効果を得ることができる。
【0133】
さらに、実施形態によれば、制御回路25は、整流回路20を構成するIGBTのうち低電位側のIGBTがオンすることで高電位側のIGBTの駆動に必要な電圧を供給するブートストラップ回路254f、254gを有している。そして、車載バッテリB2から供給される直流を交流に変換して家庭用の交流電源AC2に供給する場合、交流電源AC2の電圧がピーク値を含む所定範囲内となるタイミングである時刻t2で、IGBT200a、200d又はIGBT200b、200cをオンさせる前に、低電位側のスイッチング素子であるIGBT200dをオンさせる。そのため、高電位側のIGBT200cの駆動に必要な電圧をドライブ回路254cに供給することができる。従って、時刻t2以降、参考形態の電力変換装置1と同様に動作させることができ、ブートストラップ回路254f、254gを備えている場合においても、スイッチング開始直後に発生する突入電流を抑えることができる。
【符号の説明】
【0134】
1・・・電力変換装置、10・・・整流回路(電力変換回路)、100a〜100d・・・IGBT(スイッチング素子)、100e〜100h・・・ダイオード、11・・・昇降圧コンバータ回路(直流電源)、110a〜110d・・・IGBT、110e〜110h・・・ダイオード、110i・・・リアクトル、12・・・フィルタ回路、120a・・・リアクトル、120b・・・コンデンサ(第1コンデンサ)、13・・・スナバ回路、130a・・・抵抗、130b・・・コンデンサ(第2コンデンサ)、15・・・制御回路、AC1・・・交流電源、B1・・・車載バッテリ(直流電源)




































図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11