特許第6128839号(P6128839)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6128839-軽油燃料組成物 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6128839
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】軽油燃料組成物
(51)【国際特許分類】
   C10L 1/08 20060101AFI20170508BHJP
   C10L 10/14 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   C10L1/08
   C10L10/14
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-285300(P2012-285300)
(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公開番号】特開2014-125605(P2014-125605A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000186913
【氏名又は名称】昭和シェル石油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134647
【弁理士】
【氏名又は名称】宮部 岳志
(74)【代理人】
【識別番号】100161492
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 栄斉
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 伸也
(72)【発明者】
【氏名】岡部 伸宏
(72)【発明者】
【氏名】小松 泰幸
【審査官】 吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−257364(JP,A)
【文献】 特開2009−292933(JP,A)
【文献】 特開2012−197456(JP,A)
【文献】 特開2009−040833(JP,A)
【文献】 特開2000−136394(JP,A)
【文献】 特開2010−116495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 1/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動点が−20.0℃以下、90%留出温度が330℃以下、引火点が45℃以上、炭素数19〜23のノルマルパラフィン分が6.5mass%以下、2環シクロパラフィン類が9.1mass%以上15.0mass%以下、芳香族分が18.0vol%以上30.0vol%以下、アルキルベンゼン類が17.0mass%以上、硫黄分が10massppm以下であり、EV系低温流動性向上剤を含むことを特徴とする軽油燃料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジン等に使用される軽油燃料組成物、特にJIS K 2204「軽油」に3号として規定されている要件を満たす軽油燃料組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等に使用される軽油燃料組成物は、寒冷地や冬季の使用を考慮し、曇り点や流動点等を指標とした低温性能の調整が行われている。そして、所望の低温流動性を得るための多くの手法が提案されている。
【0003】
例えば、特開2008−111082号公報には、炭素数10〜14の直鎖状パラフィン全含有量に対する炭素数15〜18の直鎖状パラフィン全含有量の重量比を0.5〜1.5とし、且つ、炭素数19〜25の直鎖状パラフィン全含有量に対する炭素数15〜18の直鎖状パラフィン全含有量の重量比を0.5〜1.5とし、徐冷時に析出する直鎖状パラフィンの量を減少させ、低温流動性の改善に用いる添加剤の効果を高める手法が開示されている。
【0004】
また、特開2005−220330号公報には、徐冷曇り点(X)を−30.0〜−15.0℃、軽油組成物中の炭素数18〜25のノルマルパラフィン含有量から求めた線形回帰直線の傾き(Y)を0.18以下、上記XとYを変数とする所定の式で表される指標(Z)を1.5以下、組成物中の炭素数が18以上のノルマルパラフィンの含有量を3.4質量%以下とすることで、硫黄分を50質量ppm以下に抑えながら、低温でのフィルタ閉塞を起こすことなく、かつ、実用性能や排出ガス浄化能を満足する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−111082号公報
【特許文献2】特開2005−220330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、社会情勢の変化に伴い、軽油燃料組成物の性状や製法において考慮すべき点も変化してきている。具体的には、硫黄の含有量や、重油需要減少に伴う軽油脱硫装置への分解軽油の混合比率増などが挙げられる。そして、これらの環境変化や燃料油の需要構造の変化に伴い、軽油の低温性能維持に従来技術が使用できない場合があり、たとえば分解系基材を多く含んだものには、これまで知られている低温流動性の改善に用いる添加剤(低温流動性向上剤:CFI)では十分な効果が得られない虞がある。そのため、環境の変化に応じた新たな指標が求められる。
【0007】
軽油の低温性能維持に従来技術が使用できない原因の一つとして、その殆どの技術がノルマルパラフィン(ワックス)の性状や析出量などに着目していることが挙げられる。これに対し、本発明者は、社会情勢の変化に十分対応しながら軽油燃料組成物の低温流動性の向上を図るためには、硫黄含有量の低下や分解軽油の混合比率の増加に伴い、ワックスの性状、析出量に加え、低温で析出したワックスの溶解量に寄与する物質、すなわち分解軽油に多く含まれる芳香族化合物や、脱硫装置内で芳香族化合物を水添処理することにより生成するナフテンの組成、含有量にも着目する必要があることを見出した。
【0008】
本発明は、硫黄の含有量の低下や、分解軽油の混合比率の増加に対応しながら、特に寒さの厳しい地域においても車両の燃料用として十分な低温流動性を備えた軽油燃料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、流動点が−20.0℃以下、90%留出温度が330℃以下、引火点が45℃以上、炭素数19〜23のノルマルパラフィン分が6.5mass%以下、2環シクロパラフィン類が9.1mass%以上15.0mass%以下、芳香族分が18.0vol%以上30.0vol%以下、アルキルベンゼン類が17.0mass%以上、硫黄分が10massppm以下であり、EV系低温流動性向上剤を含む軽油燃料組成物である。
【0011】
本発明において、EV系低温流動性向上剤とは、エチレン‐不飽和エステル共重合体を主成分とする燃料のための低温流動性を改善する添加剤である。エチレン‐酢酸ビニル系共重合体(EVA系)が代表例の一つである。例えばEVA系低温流動性向上剤のアセテート基のメチル基を適度な炭素数のアルキル基に置換した低温流動性向上剤も有効である。EV系低温流動性向上剤の添加量は50〜500massppmが好ましく、100〜500massppmであることが特に好ましい。なお、添加量が500massppmを超えると、フィルタの目詰まりを起こす場合がある。また、低温流動性向上剤として、一般に、界面活性剤系、ワックス分散剤系なども広く使用されているが、本発明の軽油燃料組成物を構成する基材が所定の性状を満たすものである場合は、EV系低温流動性向上剤を使用することにより、低温流動性を著しく向上させることができる。
【0012】
なお、本発明において、シクロパラフィン類とは脂環式炭化水素を意味し、1環、2環、3環のものを含み、さらにアルキル基で置換したものも含まれるものとする。1環としては、例えば、テトラエチルシクロヘキサン等のアルキルシクロヘキサンが挙げられ、2環としては、例えば、エチルプロピルデカリン等のアルキルデカリンが挙げられ、3環としては、例えば、ジエチルペルヒドロフルオレンなどのアルキルペルヒドロフルオレンや、エチルペルヒドロアントラセンなどのアルキルペルヒドロアントラセンが挙げられるがこれらに限定されるわけではない。
【0013】
また、本発明において、アルキルベンゼン類とは1環芳香族分をアルキル基で置換したものであり、ペンタメチルベンゼン、ヘキサメチルベンゼン、1−エチル−3−メチルベンゼン、トリメチルベンゼンの誘導体、1−エチル−3,5−ジメチルベンゼン、1−メチル−4−プロピルベンゼン、2−メチル−1,3−ジメチルベンゼンなどがあるが、これらに限定されるわけではない。
また本発明において芳香族分とは環状不飽和有機化合物であって、1環(ベンゼン)、2環(ナフタレン)、3環(アントラセン)および芳香環の水素がパラフィンなどの有機化合物に置換されたものや、ナフテンベンゼンのように芳香環とナフテン環の両方を含む化合物も含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、特に2環シクロパラフィン類を所定の含有量にし、更に、EV系低温流動性向上剤を使用することにより、硫黄の含有量の低下や、分解軽油の混合比率の増加に対応しながら、車両の燃料用として十分な低温流動性を備えた軽油燃料組成物を提供することができる。
【0015】
軽油燃料組成物の低温流動性には、ワックス分と称されるノルマルパラフィン分が大きく影響することは広く知られるところであるが、本発明者は、このノルマルパラフィンの中でも、ディーゼルエンジンの燃料供給系に設置されているフィルタに析出し目詰まりを生じさせるものに着目し、その組成に関する分析を行った。分析の結果を図1に示す。なお、分析対象としたワックスの採取にあたっては、まず、軽油燃料組成物を25℃の恒温槽に入れ、当該軽油燃料組成物について予め測定した曇り点より5.0℃高い温度まで急冷し、その後−12.0℃まで1.0℃/hで徐冷した。そして、析出したワックスを、吸引ろ過装置を使用して採取した。ワックス採取にはガラス繊維濾紙(GEヘルスケア・ジャパン株式会社製GFシリーズ:GF/A:1.6μm)を使用した。更に、採取されたワックス中に残った軽油燃料組成物は、2−ブタノンを使用して除去した。得られたワックス分は、ガスクロマトグラフ法により分析した。
【0016】
図1に示すように、軽油中のノルマルパラフィンは炭素数6から炭素数25まで幅広く分布し炭素数10から炭素数15にピークを持つ。一方、目詰まりを生じさせるワックスの炭素数分布は主に19〜23が大部分を占めており、本発明者は、この分析結果をふまえ、炭素数19〜23のノルマルパラフィン含有量を調整することで良好な低温流動性を確保できることを見出した。また、炭素数19〜23のノルマルパラフィンとその他軽油燃料組成物の組成および低温流動性との関係を調べたところ、炭素数19〜23のノルマルパラフィン分のみならず、芳香族分やアルキルベンゼン類及び2環シクロパラフィン類の含有量も低温流動性に影響を及ぼす事実を見出した。そして、特定の炭素数のワックス量と、特に2環シクロパラフィン類の含有量を適正にコントロールした基材と特定の添加剤を組み合わせることで、昨今の社会情勢にあった状況下でも、適正な低温流動性を確保できることを見出した。本発明は、本発明者によるこれら新たな知見に基づくものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】ワックス中のノルマルパラフィンの炭素数分布を、軽油燃料組成物中のノルマルパラフィンの炭素数分布との比較において示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の軽油燃料組成物は、最終的に得られる軽油燃料組成物が規定する特定の性状を有するように1種または2種以上の灯油基材及び1種または2種以上の軽油基材を混合して調製できる。
【0019】
灯油基材として、例えば、原油を常圧蒸留して得られる灯油留分およびそれを脱硫した脱硫灯油を用いることができる。また常圧蒸留装置から得られる灯油留分と分解灯油を適切な割合で混合、脱硫処理して得られた硫黄分10massppm以下の灯油基材も用いることができる。なお、分解灯油とは、流動接触分解装置から得られる灯油留分や熱分解装置から得られる灯油留分などの重油のアップグレーディングプロセスから留出する灯油留分をいい、近年の社会的要請に従えば、それの混合比率はできるだけ高くすることが好ましい。
【0020】
また、軽油基材として、例えば、原油を常圧蒸留して得られる軽油留分及びそれを脱硫した脱硫軽油を用いることができる。また常圧蒸留装置から得られる軽油留分と分解軽油を適切な割合で混合、脱硫処理して得られた硫黄分10massppm以下の軽油燃料組成物も用いることができる。なお、分解軽油とは、直接脱硫装置から得られる直脱軽油や、間接脱硫装置から得られる間脱軽油、或いは、流動接触分解装置から得られるライトサイクルオイルなど重油のアップグレーディングプロセスから留出する軽油留分をいい、近年の社会的要請に従えば、それの混合比率はできるだけ高くすることが好ましい。
【0021】
更に、これらを色相改善のために水素化処理した軽油も用いることができる。すなわち、脱硫装置処理後の脱硫軽油中に炭素数19〜23のノルマルパラフィン類、芳香族分、2環シクロパラフィン、アルキルベンゼン類が適正量になるように、脱硫装置原料種類や比率を調整したり、脱硫装置内の反応で消滅、生成するこれらの物質を最終製品で適正範囲内になるように種々の脱硫条件を調整して得られたものを使用することができる。
【0022】
更にまた、脱硫後の軽油が炭素数19〜23のノルマルパラフィン類、芳香族分、2環シクロパラフィン類、アルキルベンゼン類の適正量を満たす、満たさないに関わらず、石油精製2次装置から留出する灯油・軽油相当油や、水素化分解灯油・軽油、フィッシャートロプシュ合成油などを基材として用いて、上記適正量を満たすものにすることも可能である。
【0023】
炭素数19〜23のノルマルパラフィン分は6.5mass%以下である必要がある。それを超えると、低温下の始動時においてディーゼルエンジンへの燃料供給経路中のフィルタの目詰まりを起こしやすいものになるなど、低温流動性の悪化を招くため好ましくない。6.0mass%以下が好ましく、5.5mass%以下がより好ましく、5.2mass%以下が更に好ましく、5.0mass%以下が特に好ましい。ただし、この炭素数19〜23のノルマルパラフィン分は、低温流動性向上の観点からできるだけ少ないことが好ましい反面、セタン指数の観点から、例えば、3.0mass%以上とすることができる。
【0024】
シクロパラフィン類の含有量は特に制限されないが、例えば、20.0mass%以上、好ましくは25.0mass%以上、特に好ましくは30.0mass%以上とすることができる。また、1環シクロパラフィン類の含有量も特に制限されないが、例えば、15.0mass%以上、好ましくは18.0mass%以上とすることができる。2環シクロパラフィン類は9.1mass%以上であり、9.3mass%以上が好ましく、9.5mass%以上がより好ましく、9.7mass%以上が特に好ましい。3環シクロパラフィン類の含有量も特に制限されないが、例えば、0.1mass%以上、好ましくは0.5mass%以上とすることができる。これらシクロパラフィンは、含有量が多いほどEV系添加剤の効果を高め低温流動性を向上させるが、多すぎると芳香族分の水添反応を促進させることになり精製コストが上がるばかりか、燃料供給系統のシール材を収縮させ燃料にじみを発生させる場合があるので、シクロパラフィン類の含有量を43.0mass%以下、1環シクロパラフィン類の含有量を25.0mass%以下、2環シクロパラフィン類の含有量を15.0mass%以下、3環シクロパラフィン類の含有量を3.0mass%以下とすることができる。2環シクロパラフィン類については、一定以上の値にすることにより、特に低温流動性を改善することができる。
【0025】
芳香族分は18.0vol%以上であり、19.0vol%以上が好ましく、20.0vol%以上がより好ましく、21.0vol%以上が更に好ましく、22.0vol%以上が特に好ましい。ただし、芳香族分は、多すぎるとセタン価が低下し、自動車排ガス中の粒子状物質が増加するなどの不具合を生じることがあるため30.0vol%以下とする
1環芳香族分は17.0vol%以上であることが好ましく、18.0vol%以上であることがより好ましく、20.0vol%以上であることが更に好ましい。ただし、芳香族分は、多すぎるとセタン価が低下し、自動車排ガスの粒子状物質が増加するなどの不具合を生じることがあるため27.0vol%以下が好ましい。
2環芳香族分は1.0vol%以上であることが好ましく、1.5vol%以上であることがより好ましい。ただし、芳香族分は、多すぎるとセタン価が低下し、自動車排ガスの粒子状物質が増加するなどの不具合を生じることがあるため2.5vol%以下が好ましい。
【0026】
アルキルベンゼン類は17.0mass%以上であり、18.0mass%以上がより好ましく、20.0mass%以上が更に好ましく、21.0mass%以上が特に好ましい。アルキルベンゼン類の含有量を前記範囲に調整すると、車両の燃料用として十分な低温流動性を得ることができるので好ましい。ただしアルキルベンゼン類は、多すぎるとセタン価が低下し、自動車排ガス中の粒子状物質が増加するなどの不具合を生じることがあるため、25.0mass%以下が好ましい。
【0027】
ナフテンベンゼン類としては、例えば、インダン、アルキル置換インダン、テトラリン、アルキル置換テトラリンなどが挙げられる。1環ナフテンベンゼン類の含有量は特に制限されないが、例えば、10.0mass%以上、好ましくは11.0mass%以上、より好ましくは12.0mass%以上とすることができる。ただし、ナフテンベンゼン類は、多すぎるとセタン価が低下し、自動車排ガスの粒子状物質が増加するなどの不具合を生じることがあるため、1環ナフテンベンゼン類の含有量を、例えば、15.0mass%以下、2環ナフテンベンゼン類の含有量を、例えば、2.5mass%以下とすることができる。
【0028】
硫黄分は、環境への影響を考慮して取り決められたJIS K 2204規格を満たすもの、すなわち、10massppm以下とする必要がある。
引火点は、取り扱いの安全性から、45℃以上とする。
【0029】
本発明の軽油燃料組成物は、EV系低温流動性向上剤を添加することにより、基材の低温流動性を大きく改善することができる。なお、EV系低温流動性向上剤としては、たとえば、キャリオールKA−701(三洋化成工業株式会社製)、R570(インフィニアム ジャパン株式会社製)が好適である。また、必要に応じて、酸化防止剤、燃料供給ポンプ部品等の摩耗を防止するため潤滑性向上剤など、その他の添加剤を添加してもよい。
【0030】
本発明の軽油燃料組成物は、自動車排ガス中の粒子状物質を減少させるために密度は0.830g/cm以下が好ましく、0.825g/cm以下がより好ましいが、燃費の観点から0.802g/cm以上が好ましい。動粘度@30℃は、ポンプ摩耗防止の観点から1.7mm/s以上が好ましく、2.0mm/s以上がより好ましく、2.5mm/s以上が更に好ましい。排ガス中の粒子状物質が増加するので、4.0mm/s以下が好ましい。セタン指数は低温時の始動性の観点から45.0以上が好ましく、50.0以上がより好ましい。
【0031】
本発明の軽油燃料組成物の低温流動性向上の観点から10%留出温度は200℃以下が好ましく、190℃以下がより好ましく、185℃以下が更に好ましい。10%留出温度が低すぎると引火点が低くなるので、170℃以上が好ましい。50%留出温度が高くなると排ガス中の粒子状物質が増加するので、250℃以下が好ましく、245℃以下がより好ましく、240℃以下が更に好ましい。50%留出温度が低くなりすぎるとセタン指数が低下し始動性が悪化するので、210℃以上が好ましい。90%留出温度は低温流動性が良好となるので、330℃以下であり、325℃以下が好ましい。90%留出温度が低くなりすぎると燃費が悪化するので300℃以上が好ましい。
流動点は、低温流動性を考慮して、−20.0℃以下、特に−25.0℃以下、さらには−32.5℃以下とすることができる。
曇り点は、高すぎると低温時に析出するワックスによるフィルター目詰まりが起きやすくなるので、−2℃以下が好ましく、−5℃以下が更に好ましい。低すぎると精製コストが上昇するので、−15℃以上が好ましい。
本発明においては、上記のような構成とすることにより、寒冷地における気候や使用環境においても耐えうる高い低温流動性を得ることができる。例えば、目詰まり点が−14℃以下、特に−17℃以下とすることができる。
【実施例】
【0032】
「実施例1」
沸点範囲181〜371℃の直留軽油留分が85vol%、流動接触分解装置から留出する沸点範囲145〜372℃のライトサイクルオイルが10vol%および沸点範囲が170〜365℃の間接脱硫装置から留出する間脱軽油が5vol%の混合油を、市販の脱硫触媒を用い、液空間速度1.0h−1、水素分圧5MPa、水素オイル比150NL/Lの条件で硫黄分が10massppm以下となるまで脱硫処理して得た軽油に、沸点範囲150℃〜260℃の直留灯油留分を市販の脱硫触媒を用い、液空間速度2.9h−1、水素分圧3.4MPa、水素オイル比120NL/Lの条件で硫黄分が10massppm以下となるまで脱硫処理して得た灯油とを混合し、後述のEV系低温流動性向上剤(CFI1)を200massppm添加した軽油燃料組成物。
【0033】
「実施例2」
沸点範囲181〜362℃の直留軽油留分が90vol%、流動接触分解装置から留出する沸点範囲145〜374℃のライトサイクルオイルが10vol%の混合油を、市販の脱硫触媒を用い、液空間速度1.5h−1、水素分圧4MPa、水素オイル比150NL/Lの条件で硫黄分が10massppm以下となるまで脱硫処理して得た軽油に、沸点範囲150℃〜260℃の直留灯油留分を市販の脱硫触媒を用い、液空間速度2.9h−1、水素分圧3.4MPa、水素オイル比120NL/Lの条件で硫黄分が10massppm以下となるまで脱硫処理して得た灯油とを混合し、上記CFI1を200massppm添加した軽油燃料組成物。
【0034】
「比較例1」
沸点範囲181〜362℃の直留軽油留分が98vol%、流動接触分解装置から留出する沸点範囲145〜374℃のライトサイクルオイルが2vol%の混合油を、市販の脱硫触媒を用い、液空間速度1.5h−1、水素分圧4MPa、水素オイル比150NL/Lの条件で硫黄分が10massppm以下となるまで脱硫処理して得た軽油に、沸点範囲150℃〜260℃の直留灯油留分を市販の脱硫触媒を用い、液空間速度2.9h−1、水素分圧3.4MPa、水素オイル比120NL/Lの条件で硫黄分が10massppm以下となるまで脱硫処理して得た灯油とを混合し、上記CFI1を200massppm添加した軽油燃料組成物。
【0035】
「比較例2」
沸点範囲181〜376℃の直留軽油留分が95vol%、流動接触分解装置から留出する沸点範囲145〜372℃のライトサイクルオイルが5vol%の混合油を、市販の脱硫触媒を用い、液空間速度1.0h−1、水素分圧5MPa、水素オイル比150NL/Lの条件で硫黄分が10massppm以下となるまで脱硫処理して得た軽油に、沸点範囲150℃〜260℃の直留灯油留分を市販の脱硫触媒を用い、液空間速度2.9h−1、水素分圧3.4MPa、水素オイル比120NL/Lの条件で硫黄分が10massppm以下となるまで脱硫処理して得た灯油とを混合し、上記CFI1を200massppm添加した軽油燃料組成物。
【0036】
「比較例3」
実施例1のEV系低温流動性向上剤を後述の界面活性剤系低温流動性向上剤(CFI2)とした他は、実施例1と同じ軽油燃料組成物。
【0037】
「比較例4」
実施例1のEV系低温流動性向上剤を後述のWAX分散剤系低温流動性向上剤(CFI3)とした他は、実施例1と同じ軽油燃料組成物。
【0038】
「CFI1」
R570(インフィニアム社製)
「CFI2」
FPD−779N(東邦化学工業株式会社製)
「CFI3」
キャリオールFD−391(三洋化成工業株式会社製)
【0039】
【表1】
【0040】
なお、表1に示す各性状は以下に示すものである。
「密度(@15℃)」
JIS K 2249「原油及び石油製品−密度試験方法及び密度・質量・容量換算表」により測定される15℃における密度。
「動粘度(@30℃)」
JIS K 2283「原油及び石油製品−動粘度試験方法及び粘度指数算出方法」により測定される30℃における動粘度。
「硫黄分」
JIS K 2541−2「原油及び石油製品−硫黄分試験方法 第2部:微量電量滴定式酸化法」により得られる硫黄分。
【0041】
「引火点」
JIS K 2265−3「引火点の求め方−第3部:ペンスキーマルテンス密閉法」により得られる引火点。
「10%残油の残留炭素分」
JIS K 2270「原油及び石油製品−残留炭素分試験方法」により得られる10%残油の残留炭素分。
「セタン指数」
JIS K 2280「石油製品−燃料油−オクタン価及びセタン価試験方法並びにセタン指数算出方法 8. 4変数方程式を用いたセタン指数の算出方法」により測定されるセタン指数を意味する。
【0042】
「蒸留性状」
JIS K 2254「石油製品−蒸留試験方法」により得られる蒸留性状。
「飽和分合計」
JPI−5S−49−97「石油製品−炭化水素タイプ試験方法−高速液体クロマトグラフ法」により測定されるパラフィン分。
「芳香族分合計」
JPI−5S−49−97「石油製品−炭化水素タイプ試験方法−高速液体クロマトグラフ法」により測定される1環芳香族分と2環芳香族分と3環以上芳香族炭化水素分との総和。
【0043】
「C19−23ノルマルパラフィン分」
ASTM D 2887「Standard Test Method for Boiling Range Distribution of Petroleum Fraction by Gas Chromatography」に準拠したガスクロマトグラフ法を用い、得られたクロマトグラムから各炭素数毎の炭化水素含有量を算出することによって得た。すなわち、炭素数の異なるノルマルパラフィンの混合物を標準物としてリテンションタイムを調べておき、ノルマルパラフィンのピーク面積値からノルマルパラフィンの含有量を求め、炭素数N−1のノルマルパラフィンによるピーク〜炭素数Nのノルマルパラフィンによるピークの間にあるピークのクロマトグラム面積値の総和を炭素数Nのイソパラフィン含有量として求めた。ガスクロマトグラフィの検知器は水素炎イオン化型検出器(FID)であることから、測定感度はパラフィンの炭素数に比例する。そこで、この感度を考慮して面積値から含有モル比を求め、最終的に各質量比を求めた。
なお、ガスクロマトグラフ法におけるカラムの種類は、HP5(長さ:30m,内径:0.32mm,液層厚さ:0.25μm)であり、各分析条件は以下のとおりである。
カラム槽昇温条件:35℃(5分)→10℃/分(昇温)→320℃(11.5分)
試料気化室条件:320℃一定 スプリット比150:1
検出器部:320℃
【0044】
「流動点」
JIS K 2269「原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法」によって得られる流動点。
「曇り点」
JIS K 2269「原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法」によって得られる曇り点。
「目詰まり点」
JIS K 2288「石油製品−軽油−目詰まり点試験方法」によって得られる目詰まり点。
【0045】
「シクロパラフィン類、ナフテンベンゼン類、アルキルベンゼン類」
シクロパラフィン類、ナフテンベンゼン類、アルキルベンゼン類の分析には、Agilent Technology社製HP−6890N型FI−MS検出器付きガスクロマトグラムおよびJEOL社製JMS−T100GC飛行時間型質量分析計からなるGCシステムを用い、ノルマルパラフィン標準試料の分析強度にて補正グラフを作成し、測定したデータを補正グラフにて補正後、全体の強度を100mass%として各重量比を求めた。
なお、ガスクロマトグラム法におけるカラムの種類は、DB−5(長さ:30m、内径:0.25mm、液層厚さ:0.25μm)であり、各分析条件は以下の通りである。
カラム槽昇温条件:30℃(5分)→20℃/分(昇温)→300℃(27分)
試料気化室条件:300℃一定 スプリットレス
検出器部:250℃
溶媒:ヘキサン
溶媒待ち時間:6分
収集範囲:25.00m/zから600.00m/z
【0046】
表1において、実施例1と比較例3および4との対比から、同じ軽油の性状を有していても、添加剤が異なると、低温流動性の改善効果(実用性能で特に重視される目詰まり点)に違いがあることが分かる。また、実施例1および2と比較例2との対比から、EV系低温流動性向上剤を用いても、炭素数19〜23のノルマルパラフィン分の含有量が多く、かつ2環シクロパラフィン類の含有量が少ないと、低温流動性の改善効果が低いことが分かる。さらに、実施例1および2と比較例1との対比から、EV系低温流動性向上剤を用い、かつ炭素数19〜23のノルマルパラフィン分の含有量が同等でも、2環シクロパラフィン類の含有量が少ないと、目詰まり点が−14℃以下とならず、低温流動性能が劣ることが分かる。このような結果から、特に、炭素数19〜23のノルマルパラフィン分の含有量および2環シクロパラフィン類を所定の含有量にし、更に、EV系低温流動性向上剤を使用することにより、車両の燃料用として十分な低温流動性が得られることが分かる。
図1