(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に本発明を便座や便蓋等の開閉駆動用のギアードモータに適用した実施の形態について説明する。
図1は実施の形態の外観を示し、(a)は前方斜め上からの斜視図、(b)は前方斜め下からの斜視図、そして(c)は後方斜め下からの斜視図である。
すなわち、以下の実施の形態の説明においては、
図1の(a)における左手前側を前方、右奥側を後方、左奥側を右方、右手前側を左方、そして上側を上方とする。
ギアードモータ1は、それぞれ樹脂製のアッパカバー10、ミドルカバー30、アッパハウジング40、ロアハウジング70およびロアカバー110からなるケース7内に後述するDCモータ2と減速ギア列6と角度センサ180を収容して構成される。ケース7の平面形は前辺が丸みを帯びた略矩形である。
【0009】
アッパハウジング40はロアハウジング70上に重ねられ、アッパカバー10はアッパハウジング40の上に重ねられている。ミドルカバー30はアッパハウジング40の所定部位に重ねられている。
ロアハウジング70の底壁71には、便蓋等のヒンジ軸と接続する不図示の出力軸部材を挿通させる出力孔84が開口する。
ロアカバー110はロアハウジング70の底壁71の出力孔84まわりを除く一部を覆っている。
【0010】
アッパカバー10の下端には前壁12aの略中央、および右壁12c(
図4参照))と後壁12dとの角部に取り付け部14aが設けられ、左壁12bと後壁12dとの角部、および左壁12bの前部に取り付け部14bが設けられている。
取り付け部14a、14bは周壁(前壁12a、左壁12b、右壁12c、後壁12d)が形成する略矩形の輪郭内にフランジ状に設定されている。
アッパカバー10とアッパハウジング40(およびミドルカバー30)は取り付け部14a、14bにおいてネジ8a、8bにより共締めでロアハウジング70と結合される。
アッパカバー10の周壁における取り付け部14a、14bの上方部分は、ネジ8a、8bを締め付けるドライバの通過スペースとして、天壁11まで延びる凹部23となっている。
【0011】
ロアハウジング70の前壁72aの幅方向中央には底壁71の底面から直線溝73が1/2強の高さまで延びている。
ロアハウジング70の後壁72dは幅(左右)方向中間部が上下にわたって膨出した堤部74を有する。
ケース7内部のDCモータ2および角度センサ180からの外部配線107が堤部74の下端側部から引き出される。
【0012】
減速ギア列6は、後述するように、DCモータ2のピニオンギア120と噛み合う第1ギア121から順次連なる第2ギア126、第3ギア130、第4ギア150および出力ギア155で構成される。第3ギア130を除く各ギアは樹脂製で、とくに第1、第2および第4ギア121、126、150はそれぞれ大径歯車と小径歯車を一体に備えている。第3ギア130については別途説明する。
【0013】
図2はアッパカバー10を取り外して減速ギア列6の一部を右後方斜め上から見た斜視図である。
アッパハウジング40の後部には、ネジ29で下面側に取り付けられたDCモータ2のピニオンギア120が上面側に突出し、左寄りに配置され支持軸124に支持された第1ギア121の大径歯車121aがピニオンギア120と噛み合っている。
第1ギア121の小径歯車121bとアッパハウジング40の前部に配置され支持軸127に支持された第2ギア126の大径歯車126aが噛み合い、第2ギア126の小径歯車126bと右寄りに配置され支持軸149に支持された第3ギア130の大径歯車130aが噛み合っている。
【0014】
図3は第1ギア121の拡大断面図である。
第1ギア121は大径歯車121aから上方に小径歯車121bが延びて、大径歯車121aから小径歯車121bまでを軸孔122が貫通している。
大径歯車121aの下端面には軸孔122の開口を囲む細幅のリング突起123が形成され、小径歯車121bの上端面にも同様に軸孔122の開口を囲むリング突起123が形成されている。
とくに詳細図示はしないが、後述する第2ギア126の小径歯車126bの下端面、第3ギア130の小径歯車130bの下端面、そして第4ギア150の大径歯車150aの上端面および小径歯車150bの下端面にも、それぞれの軸孔の開口を囲む同様のリング突起が形成されている。
【0015】
図4はアッパカバー10の下面図である。
周壁下端の取り付け部14aにはネジ8aを貫通させる取付け孔15aが貫通し、取り付け部14bにはネジ8bを貫通させる取付け孔15bが貫通している。取付け孔15aの径は取付け孔15bよりも大きい。
アッパカバー10の天壁11には、第1ギア121の支持軸124を支持するための支持ボス16、第2ギア126の支持軸127を支持するための支持ボス18、および第3ギア130の支持軸149を支持するための支持ボス20が設けられている。
支持ボス16、18、20の下端面には支持軸124、127、149の上端が挿入される軸穴17、19、21が開口している。
支持ボス20の下部は第2ギア126の大径歯車126aとの干渉を避けるため、一部切り欠かれている。
【0016】
なお、上述した支持ボス16等はアッパカバー10の樹脂成型の際に一体に形成される。アッパハウジング40、ミドルカバー30およびロアハウジング70における後述の各支持ボスについても同様である。
また、ケース7を構成する各部材には、剛性確保のため、それぞれ複数のリブが形成されているが、これについては説明を省く。
【0017】
図5はミドルカバー30を取り付けたアッパハウジング40の上面図である。
ミドルカバー30はアッパハウジング40の左前部に重ねられている。
ミドルカバー30の前端部にはアッパカバー10の取付け孔15aに対応する取付け孔32aを有する取り付け部31aが設けられ、左端部にはアッパカバー10の取付け孔15bに対応する取付け孔32bを有する取り付け部31bが設けられている。
アッパハウジング40にはアッパカバー10の取付け孔15aに対応する取付け孔42aを有する取り付け部41aと、取付け孔15bに対応する取付け孔42bを有する取り付け部41bとが設けられている。
【0018】
アッパカバー10を重ねたときミドルカバー30の取り付け部31a、31bおよびアッパハウジング40の取り付け部41a、41bの各上面に、アッパカバー10の対応する取り付け部14a、14bが着座するように設定してある。
ミドルカバー30の取り付け部31aから取り付け部31bに至る区間の周縁は所定量切り欠かれ、これに対応するアッパハウジング40の周縁も同様に切り欠かれている。
ミドルカバー30の当該区間にはアッパカバー10の周壁下端が延び、アッパハウジング40の当該区間にはロアハウジング70の周壁上端が延びてカバーする。
【0019】
アッパハウジング40の後部には、モータ軸貫通孔44とこれを挟んだ点対称位置に取付け孔45が設けてある。DCモータ2の上端壁に設けられたネジ孔5(
図9参照)に取付け孔45を通してネジ29を締め付けることによりDCモータ2がアッパハウジング40の下面に固定される。
アッパハウジング40にはさらにモータ軸貫通孔44の前方左寄りに第1ギア121の支持軸124を支持するための支持ボス46が立ち上がり、支持ボス46の上端面には支持軸の下端が挿入される軸穴47が開口している。
アッパハウジング40の前後方向中央の右寄りには第3ギア130を貫通させるギア貫通孔48が設けられている。
【0020】
ミドルカバー30には第2ギア126の支持軸127を支持するための支持ボス33が立ち上がっている。支持ボス33の上端面には支持軸127の下端が挿入される軸穴34が開口している。
支持ボス46とギア貫通孔48の中間位置に位置決めピン49が形成され、ミドルカバー30の後端部にはこれに整合する位置決め孔35が形成されている。これにより、アッパハウジング40に形成された第1ギア121の支持ボス46(軸穴47)とミドルカバー30に形成された第2ギア126の支持ボス33(軸穴34)間の位置精度が確保される。
【0021】
図6はミドルカバー30を取り外したアッパハウジング40単体の上面を左前方斜め上から見た斜視図、
図7はアッパハウジング40の下面を左前方斜め下から見た斜視図、
図8はミドルカバー30を裏返してその下面を示す斜視図である。
図6に示すように、アッパハウジング40の上面側の前部には略円形の凹部50が形成され、凹部50の底壁51からは円筒部52が立ち上がっている。
円筒部52の略前後方向で対向する2箇所には、上端から底壁51近傍まで延びる所定幅の切込み53(53a、53b)が形成されている。
円筒部52は下方に延びて、アッパハウジング40の下面から所定長さ突出する。円筒部52における切込み53の下端より下部は上部よりも小径とされ、出力ギア155の上部軸受け部55となっている。
【0022】
アッパハウジング40におけるミドルカバー30が重なる部位には、アッパカバー10の取付け孔15aに対応する取付け孔42aを有する取り付け部41aと、取付け孔15bに対応する取付け孔42bを有する取り付け部41bとが設けられている。取付け孔42aと取付け孔42bはそれぞれミドルカバー30の取付け孔32aと取付け孔32bと整合する。
【0023】
図8に示すように、ミドルカバー30の下面にはアッパハウジング40の円筒部52の上端を収容するリング溝36が設けられている。
リング溝36には径方向にブリッジが横切っている。すなわち、円筒部52の一方の切込み53aに対応する位置に当該切込み53aに受入可能な小幅のブリッジ37aが設けられ、他方の切込み53bに対応する位置には当該切込み53bの幅よりも大きい大幅のブリッジ37bが設けられている。大幅のブリッジ37bは上面側の支持ボス33の下面に相当する位置に設定してある。
先の
図6に示すように、アッパハウジング40の円筒部52上端には切込み53bを中央にしてミドルカバー30の大幅のブリッジ37bを受け入れる幅の切り欠き54が形成されている。
アッパハウジング40の下面については後述する。
【0024】
図9はロアハウジング70内の減速ギア列6の配置を示す上面図、
図10はロアハウジング70を取り外してアッパハウジング40下の減速ギア列6を下方から見た下面図である。
図9にはアッパハウジング40のギア貫通孔48を上下に貫通した第3ギア130も示している。
アッパハウジング40の下側において、第3ギア130の小径歯車130bとケース7の前部右寄りに配置され支持軸151に支持された第4ギア150の大径歯車150aが噛み合い、第4ギア150の小径歯車150bと前部左寄りに配置された出力ギア155が噛み合っている。
【0025】
アッパハウジング40の下面からは、
図7に示すように、前部右寄りに第4ギア150の支持軸151の上端を支持する支持ボス58が設けられ、その下端面には軸穴59が開口している。また、前部左寄りには、出力ギア155に対する円筒状の上部軸受け部55が支持ボス58の下端面と略同レベルからさらに下方に延びている。上部軸受け部55の支持ボス58に対向する部位には根元から下端まで周方向所定幅の切り欠き56が形成されている。
アッパハウジング40下面の後部はDCモータ2を収容するモータ上部収容部60となっている。
【0026】
図11はロアハウジング70を前方斜め上から見た斜視図である。
ロアハウジング70の周壁には、その内面から内側に膨出してアッパカバー10の各取付け孔15a、15bに対応するネジ穴78a、78bを上端面に開口させた取り付け部77a、77bが設けられている。
なお、各取り付け部77a、77bの上端面は周壁の上端に位置し、アッパハウジング40を重ねたときアッパハウジング40の取り付け部41a、41bの下面が着座するように設定してある。
取り付け部77aのネジ穴78aの開口は突出リング79で囲まれており、アッパカバー10の取付け孔15a、ミドルカバー30の取付け孔32aおよびアッパハウジング40の取付け孔42aの各内径はこの突出リング79の外経と整合するように設定してあり、各取付け孔が突出リング79に嵌ることにより、アッパカバー10、ミドルカバー30、アッパハウジング40およびロアハウジング70が互いに位置決めされる。
【0027】
ロアハウジング70の底壁71の後部にはDCモータ2の外周を囲むモータ下部収容部80が設けられ、モータ下部収容部80は大経の貫通孔を呈している。
底壁71の前左寄りには出力ギア155に対する円形凹部状の下部軸受け部82が設けられ、下部軸受け部82の下端壁83の中央は出力孔84が貫通している。出力孔84は、出力ギア155の後述する連結穴161へ出力軸部材を挿入可能とするように、連結穴161よりわずかに大きい径を有している(
図16、
図19参照)。
下部軸受け部82に隣接して、底壁71の前右寄りには第4ギア150の支持軸151を支持する支持ボス90が設けられ、その上端面に軸穴91が開口している。
【0028】
さらに、支持ボス85の後方には第3ギア130の支持軸149を支持する支持ボス85が設けられ、その上端面に軸穴86が開口している。
支持ボス85が立ち上がっている第1領域S1は、下部軸受け部82が開口し支持ボス90が形成されている第2領域S2よりも上方にオフセットして、その下側に空間を形成している。このオフセットによる段差部は、支持ボス85と支持ボス90間に挟まれた所定範囲にわたって切り欠き窓88とされて、上下空間を連通させている。
なお、参考のため、
図11には切り欠き窓88に臨む後述のセンサ歯車187を示している。
第1領域S1の所定範囲に対応する下面側には回転センサの取付座92が設けられ、取付座92の角部がモータ下部収容部80の下端に突出している。
【0029】
図12はロアハウジング70を左方斜め下から見た斜視図である。
底壁71は、前部から左部にかけての出力孔84を含む所定範囲を除いた領域を、外面(底面)より上方にオフセットさせてロアカバー取り付け面97としている。ロアカバー取り付け面97にはアクセス窓98が開口し、ロアカバー取り付け面97より所定距離上方に位置する取付座92が覗かれる。
取付座92からはピン93a、93bが下方に延びている。ピン93aとピン93bとは径を異ならせてある。
また、取付座92には上方への凹部94が形成され、凹部94の天壁95は上面における第1領域S1の一部を形成し、この天壁95にセンサ歯車187の軸188a(
図18参照)を支持する軸穴96が設けられている。切り欠き窓88は凹部94の側壁から天壁95の軸穴96近傍に及んでいる。
【0030】
ロアカバー取り付け面97におけるアクセス窓98の周縁は所定量下方にオフセットさせたシール面97aとなっている。シール面97aにはシールリング119(
図19参照)が配置される。
ロアカバー取り付け面97の角部4箇所にはネジ穴99a、99bが開口している。そのうち、右前と左後のネジ穴99aは開口端に大径凹部100を有している。
ロアカバー取り付け面97には後壁72d(堤部74)に沿って外部配線107を案内するガイド溝102が形成され、その一端は左右方向略中間位置でシール面97aを横切ってアクセス窓98に連なり、他端が左後部のネジ穴99aの近傍で後壁72dの下端に設けた切り欠き103から外部に開口している。
【0031】
図13はロアカバー110の上面を示す斜視図である。
ロアカバー110はロアハウジング70のロアカバー取り付け面97の輪郭に合わせた外形を有して、角部にはロアハウジング70のネジ穴99a、99bに対応させて、ネジ25を貫通させる取付け孔112a、112bを有する取り付け部111a、111bが設けられている。
右前と左後の取付け孔112aは、その開口端に、ロアハウジング70のネジ穴99aの大径凹部100に対応する突出リング113を備えており、突出リング113と大径凹部100の嵌め合いにより、ロアカバー110がロアハウジング70に対して正確に位置決めされる。
【0032】
ロアカバー110の外周縁より内側には所定高さのフランジ114が形成され、フランジ114の外周面はロアハウジング70のアクセス窓98の穴縁に沿うように設定してあり、フランジ114に沿った外側をシール面118として、ロアハウジング70のシール面97aとの間にシールリング119が配置される。
フランジ114の内側には、ロアハウジング70のピン93a、93bに対応する位置に押さえボス115a、115bを設けてある。押さえボス115a、115bの高さは、ロアハウジング70の取付座92に角度センサ180の後述する基板181が取り付けられた状態で、ロアカバー110をロアカバー取り付け面97に取り付けたとき、上端面が基板181の下面に当接するように設定してある。押さえボス115a、115bの上端面にはピン93a、93bを受容する穴116a、116bが開口している。
なお、図中117はリブが角度センサ180のセンサ歯車187の軸188b(
図18参照)との干渉を避ける逃げ部である。
【0033】
図14は第3ギア130の詳細を示し、(a)は縦断面図、(b)は(a)におけるA−A部断面図、(b)は(a)におけるB−B部断面図である。
第3ギア130は、例えばポリアセタール樹脂製の大径歯車130aと、これとは別体の小径歯車130bとからなり、小径歯車130bはさらに大径歯車130aと同一樹脂製のラチェット部材137と焼結金属製のピニオン146からなっている。
大径歯車130aは、環状の端壁132と、端壁132の外周縁から下方に延びるドラム状の外筒131を備え、下方が開口したカップ状である。その外筒131の外周に歯を備えるとともに、端壁132の中央からは中心に軸孔134を有する軸受け部133が下方に延びて内筒133aを形成している。すなわち、軸孔134は端壁132の上端から内筒133aの下端まで連続して形成され、ラジアル方向の軸受として機能する。大径歯車130aは軸孔134に挿通される支持軸149に直接支持されて回転可能である。
端壁132の壁厚限りの軸孔と比較して、内筒133aの分だけ軸孔134が格段に長くなるので、軸心精度が高く、支持軸149に対して倒れ(傾き)が生じない。
【0034】
また、内筒133aは、後述するアーム139および爪140と径方向で重なるまで軸方向に延びているので、第3ギア130全体の軸方向サイズを大きくすることなく、軸孔134を長くすることができる。つまり、アーム139および爪140の内周側の一部を用いて内筒133aを配置している。なお、内筒133aをアーム139および爪140と径方向で重なるまで軸方向に延ばしたため、ラチェット部材137の上端面中央から下方に筒状の大経部142を有する凹部が設けられる。大経部142は内筒133aの軸方向長さより長いため、内筒133aの下端がラチェット部材137の大径部142で構成される凹部の底部に当接しない。
【0035】
なお、大経部142もアーム139および爪140と径方向で重なるまで軸方向に延びている。つまり、大径部142で構成される凹部は基部138の内周まで延びている。このため、基部138の上方部分の径方向の厚みが基部138の下方部分の径方向の厚みよりも小さい。しかし、大経部142がアーム139および爪140の内周側まで延びる長さはアーム139および爪140の軸方向厚みの半分未満であるとともに、大径部142で構成される凹部はアーム138を基準として後述する接続部143側(下方)と逆方向(上方)に位置するため、接続部143側からアーム138までの強度は確保され、アーム139および爪140の傾きを低減できる。
端壁132の上面は軸孔134の開口を囲む所定範囲がわずかに突出し、リング突起132aを構成している。なお、第2ギア126の大径歯車126aの径方向端部はリング突起132aの上方まで延びる。
外筒131の内面すなわち大径歯車130aの内周には開口端すなわち外筒131の下端から端壁132の下面までカム面135が形成されている。
【0036】
ラチェット部材137は、基部138と、基部138の下端から下方に延びて内面にピニオン146の歯と同断面形状のスプライン144(
図14の(c))を形成した筒状の接続部143とからなる。ピニオン146の歯およびスプライン144は軸方向に延びる。
基部138の外周からは、とくに
図14の(b)に示すように、それぞれ先端に大径歯車130aのカム面135と係合する爪140を備える3本のアーム139が周方向等間隔に同一の周方向に延びている。
アーム139の軸方向位置は基部138の上端と接続部143との間にそれぞれ所定の間隙をもつように設定してある。
【0037】
基部138の軸心には支持軸149を貫通させる貫通孔141が形成される貫通孔141の上方に位置する大経部142は、大径歯車130aの端壁132から突出する内筒133aの外周と隙間を有して対向する。本実施例では、大経部142と内筒133a間の間隙は後述するピニオン146の軸孔147と支持軸149間の間隙より2倍以上広くしている。
なお、大経部142を設けたにもかかわらず基部138の外周は端壁132に達するまで軸方向に延びているので、アーム139は爪140の軸方向の厚みと同じ厚みのまま基部138に連なっている。このため、爪140がカム面135から受ける径方向の力によってアーム139が傾くことによる、基部138に対する爪140の傾きを低減できる。
【0038】
こうして、内周側から、支持軸149、貫通孔141、基部138、アーム139、爪140が径方向に重なる。
大経部142の上端面と端壁132の下面が軸方向に対向して大径歯車130aと小径歯車130bの軸方向の位置を規制するスラスト軸受として機能する。
また、大径歯車130aのリング突起132aとアッパカバー10の支持ボス20が軸方向に対向して第3ギア130の軸方向上方への位置を規制するスラスト軸受として機能し、ピニオン146の下側のリング突起148とロアハウジング70の支持ボス85が軸方向に対向して第3ギア130の軸方向下方への位置を規制するスラスト軸受として機能する。
【0039】
大径歯車130aのリング突起132aとアッパカバー10の支持ボス20が軸方向に当接するとともに、ピニオン146の下側のリング突起148とロアハウジング70の支持ボス85が当接すると、大経部142の上端面と端壁132の下面は軸方向に隙間を有して対向する。この状態で、爪140の下端はカム面135の下端より上側に位置する。このため、大径歯車130aと小径歯車130bの軸方向の相対的位置がずれても、爪140は軸方向の厚み(上端から下端まで)の全域がカム面135と係合する。
大経部142の上端は爪140およびアーム139の上端より上方まで延びるため、大経部142の上端面が端壁132の下面に当接しても爪140およびアーム139の上端が端壁132の下面に接触しない。
【0040】
ピニオン146は外周に歯を備え、軸心が軸受として機能する。ピニオン146は軸心を貫通する筒状の軸孔147を有して、軸孔147に挿通される支持軸149に回転可能に支持される。ピニオン146の下端面には、軸孔147の開口を囲むリング突起148が形成されている。
ピニオン146はその上部をラチェット部材137の接続部143に圧入されて、スプライン結合により回り止め部を構成して一体回転可能となっており、小径歯車130bはこのピニオン146が第4ギア150の大径歯車150aと噛み合う。このとき、ピニオン146の歯面のみがスプライン144に圧入され、歯先と歯底はスプライン144と径方向に隙間を有している。
なお、ピニオン146の上端面にもリング突起148を形成し、軸方向対称形としてあるので、ラチェット部材137と結合する際にピニオン146の向きを確認する手間が不要となる。
【0041】
なお、ラチェット部材137とピニオン146が一体となった小径歯車130bは、ピニオン146の軸孔147において支持軸149に支持されるので、ラチェット部材137の貫通孔141が支持軸149に支持される(ラジアル軸受として機能する)必要はない。逆に貫通孔141と支持軸149間に間隙を設けて、貫通孔141と支持軸149が当接することにより、支持軸149に対して小径歯車130b(ラチェット部材137)が傾くことを避けている。本実施例では、貫通孔141と支持軸149間の間隙はピニオン146の軸孔147と支持軸149間の間隙より2倍以上広くしている。これは、基部138の外周からアーム139が延びるため樹脂成型による基部138のヒケが不均一になる場合があり、貫通孔141の真円度が低下するので貫通孔141と支持軸149が接触しない程度の大きな間隙が求められることによる。
【0042】
一方、ピニオン146は金属製のため、その軸孔147の内面は容易に高い精度が得られる。ピニオン146の軸孔147の内面と支持軸149間の隙間は、小径歯車130b(ラチェット部材137)の傾きを抑えるために、貫通孔141と支持軸149間の隙間より狭くしている。つまり、ラチェット部材137の貫通孔141の精度を高めることが困難な場合でも、支持軸149間との隙間が小さいピニオン146の軸孔147によってピニオン146の傾きが低減されるため、ピニオン146と一体に構成されるラチェット部材137の傾きも低減される。 ピニオン146は大径歯車150aと係合するラチェット部材137を上端に支持することになるので、全長が長いほど軸心精度が高くなる。また、ピニオン146は、歯が軸線から放射状に等間隔で構成された平歯車であるため、焼結成型による変形が生じにくく、寸法精度を高くすることができる。なお、ピニオン146を樹脂成型で構成した場合でも同様の効果が得られる。
【0043】
なお、ラチェット部材137とピニオン146を樹脂で一体成型して第3ギア130を構成した場合は、例えば基部138の外周からアーム139が構成されるなど、第3ギア130が複雑な形状であるため、支持軸149との当接部(軸受)などにヒケによる変形が生じやすい。
本実施例では、ラチェット部材137とピニオン146を別体としているので、ピニオン146の特に支持軸149との当接部(軸孔147)を精度よく形成できる。
【0044】
小径歯車130bは、ラチェット部材137の基部138の上端を大径歯車130aの端壁132の下面に当接させて軸方向の位置決めがなされ、アーム139をカム面135に対向させる。
これにより、通常はロック状態となって小径歯車130bと大径歯車130aが一体に回転するが、大径歯車130aと小径歯車130b間に所定以上の相対回転トルクが加わったときにはアーム139が弾性変形して爪140がカム面135を滑って相対回転するトルクリミッタTLが形成されている。
【0045】
なお、大径歯車130aのカム面135は、アーム139が基部138から延びる方向(
図14の(b)における時計方向)に小径歯車130bが回転した場合に爪140と係合する面の(小径歯車130bの回転中心を中心とする円周との)傾きが小さく、アーム139が基部138から延びる方向と逆の方向(
図14の(b)における反時計方向)に小径歯車130bが回転した場合に爪140と係合する面の傾きが大きい。これにより、アーム139が弾性変形して爪140がカム面135を滑り相対回転するトルクは小径歯車130bの回転方向によらず同じになっている。このため、便座や便蓋を急に開けた場合と急に閉めた場合のどちらでも、大径歯車130aと小径歯車130b間に所定以上の相対回転トルクが加わったときにはアーム139が弾性変形して爪140がカム面135を滑って相対回転する。
上記の所定以上の相対回転トルクとしては、便座や便蓋を持ち上げることが可能なトルクより大きなトルクに設定される。
【0046】
つぎに、出力ギア155の詳細について説明する。
出力ギア155は、それぞれ樹脂製の歯車本体156とアダプタ165とからなる。
図15は出力ギア155を示し、(a)は外観図、(b)は縦断面図、(c)は上面図、(d)は下面図、(e)はアダプタ165の斜視図である。
歯車本体156は外周に歯を備える基部157から軸心を一致させて軸方向上方に上部軸158を延ばし、軸方向下方に下部軸160を延ばしている。
上部軸158は筒状で、その内面にスプライン歯159を備えており、また外周の根元には当該上部軸158よりも大径の大径部158aが設けられている。
下部軸160の下端外周は段差を設けてシールリング175を保持するシール保持部160bとなっている。
下部軸160の下端中心には出力軸部材を挿し込むための連結穴161が開口している。とくに
図15の(d)に示すように、連結穴161は2面幅部162を有し、2面幅部162の中央には軸方向にキー溝163が形成されている。連結穴161は基部157内にまで延びている。
【0047】
とくに
図15の(b)、(e)に示すように、アダプタ165は、上部軸158と略同径のヘッド166から当該ヘッド166より小径の接続部167を軸方向下方に延ばして構成され、接続部167の外周に上部軸158のスプライン歯159に対応するスプライン歯168を備えている。
ヘッド166には、直径線上の外周面にそれぞれ軸方向に延びるピン保持溝169が形成されている。ピン保持溝169は半円断面を有している。
なお、アダプタ165は全長にわたって肉抜き孔170を有している。
アダプタ165は、ヘッド166の下端面が上部軸158の上端面に当接するまで、その接続部167を上部軸158に挿通して、スプライン結合により歯車本体156と一体になる。
【0048】
図16はケース7内に形成された減速ギア列6の展開図である。
DCモータ2は、その上端壁にモータ出力軸3と同軸の円形外周を有する突出部4を備え、突出部4をアッパハウジング40のモータ軸貫通孔44に嵌め込むことにより、モータ出力軸3に嵌め込んだピニオンギア120を位置決めする。
大径歯車121aがピニオンギア120と噛み合う第1ギア121は、アッパカバー10の支持ボス16とアッパハウジング40の支持ボス46とに上下両端を支持された支持軸124まわりに回転可能である。
【0049】
以下、第1ギア121に順次噛み合う第2ギア126は、アッパカバー10の支持ボス18とミドルカバー30の支持ボス33とに上下両端を支持された支持軸127まわりに回転可能、第3ギア130はアッパカバー10の支持ボス20とロアハウジング70の支持ボス85とに上下両端を支持された支持軸149まわりに回転可能である。
すなわち、第1、第2、第3ギアの支持軸124、127、149の各上端は共通のケース部材であるアッパカバー10に形成された支持ボスに支持されている。
第4ギア150はアッパハウジング40の支持ボス58とロアハウジング70の支持ボス90とに上下両端を支持された支持軸151まわりに回転可能となっている。
【0050】
支持ボス46の上端面と対向する第1ギア121の軸端(ここでは大径歯車121aの下端面)には、
図3に示したように、支持軸124が貫通する軸孔122の開口を囲む細幅のリング突起123が形成され、支持ボス16の下端面と対向する軸端(小径歯車121bの上端面)にも軸孔122の開口を囲むリング突起123が形成されているので、回転時の摩擦が低減する。
同様に、支持ボス33の上端面と対向する第2ギア126の小径歯車126bの下端面、支持ボス85の上端面と対向する第3ギア130の小径歯車130b(ピニオン146)の下端面、そして第4ギア150の支持ボス90の上端面と対向する小径歯車150bの下端面および支持ボス58の下端面と対向する大径歯車150aの上端面にも、それぞれリング突起が形成されているので、回転時の摩擦が低減する。
【0051】
そして、第1ギア121から第4ギア150は、それぞれの上下両軸端の一方が対応する支持ボスの端面に当接するとき他方の軸端が対応する支持ボスの端面に直近で対向するように設定され、これにより、それぞれの軸方向(上下方向)位置がその支持軸の上下を支持する支持ボスで規制されている。
すなわち、第3ギア130の場合には、小径歯車130bを構成するピニオン146の下端(リング突起148)がロアハウジング70の支持ボス85の上端面に対向し、大径歯車130aの上端がアッパカバー10の支持ボス20の下端面に対向して軸方向が位置決めされる。
【0052】
最後に、第4ギア150の小径歯車150bと噛み合う出力ギア155は、シール保持部160bに弾性体のシールリング175を保持して下部軸160をロアハウジング70の下部軸受け部82に支持され、上部軸158をアッパハウジング40の上部軸受け部55に支持されて回転可能となっている。
出力ギア155は、下部軸160の下端面が下部軸受け部82の下端壁83に着座し、上部軸158根元の大経部158aの上端面が上部軸受け部55を形成する円筒の下端面と直近で対向して、軸方向位置が規制されている。
出力ギア155の連結穴161には不図示の出力軸部材が挿入され、出力軸部材と出力ギア155は一体的に回転可能となる。
減速ギア列6の各ギアはその回転中心および各支持軸がすべて平行に構成されている。
なお、第1ギア121から第4ギア150を支持する各支持軸124、127、149、151はSUSなどの金属(鋼)製である。
【0053】
つぎに、出力ギア155のアダプタ165はそのヘッド166が上部軸受け部55を貫通してアッパハウジング40上面側の円筒部52内に延びて、出力ギア155の回動角度範囲を規制する回転規制機構RLの一部を構成している。
図17はミドルカバー30を外してアダプタ165(ヘッド166)まわりの回転規制機構RLを示す部分上面図である。
ヘッド166とアッパハウジング40の円筒部52間には所定幅Wのリング状間隙が設けられており、円筒部52の外周には金属製の円筒174が嵌め込まれている。
ヘッド166のピン保持溝169にはローラピン172が配置され、円筒部52の切込み53a、53bにもローラピン173が配置されている。半円断面のピン保持溝169に配置されたローラピン172は断面半部がヘッド166の外周面からリング状間隙内に張り出すが、リング状間隙の所定幅Wはローラピン172の略半径相当に設定されており、ローラピン172はピン保持溝169に保持されて脱落することなく出力ギア155の軸心まわりにヘッド166とともに回転する。
【0054】
円筒部52の壁厚はローラピン173の径より小さく設定されており、円筒174により外方への移動を規制されたローラピン133は円筒部52の内面からリング状間隙内に張り出している。これにより、出力ギア155は、ピン保持溝169に保持されたローラピン172が円筒部52の2つの切込み53a、53bの一方に配置されたローラピン173に当接した位置から他方に配置されたローラピン173に当接する位置までの180°弱の角度に、最大回転可能範囲が規制される。
ローラピン172と173は径および長さとも同サイズで、軸方向に対称な形状とすれば、管理も容易となり、組み付けミスの心配もない。
なお、
図16に示すように、アッパハウジング40の円筒部52はその上端がミドルカバー30下面のリング溝36に収容されて、薄肉でも倒れが生じないようになっている。
【0055】
以上の構成になる減速ギア列6により、DCモータ2の回転は減速して出力ギア155に伝達され、出力軸部材を介して出力ギア155に連結される便座または便蓋を、回転規制機構RLによる最大回転可能範囲内で、略水平位置から90°を越える所定角度位置まで駆動することができる。
また第3ギア130に所定以上のトルクが加わったとき大径歯車130aと小径歯車130b間が相対回転するトルクリミッタTLが形成されているので、DCモータ2の停止状態で便座等を急に開閉したり、DCモータ2による駆動方向と逆方向に便座等を開閉した場合でも、DCモータ2や各ギア、その支持軸あるいは支持ボス等に過大な力がかかることによる破損が防止される。
【0056】
角度センサ180は、第4ギア150に関連させて配置してある。
図18に示すように、角度センサ180は、配線をプリントした剛性の基板181の下にポテンショメータ185を備えるとともに、上下の軸188a、188bを有するセンサ歯車187を備え、下側の軸188bを上方から基板181とポテンショメータ185に貫通させている。
基板181にはロアハウジング70のピン93a、93bに対応するピン孔182a、182b(
図19参照)が設けられており、ピン93a、93bにピン孔182a、182bを嵌め込むことにより、第4ギア150に対して角度センサ180が位置決めされる。この際、ピン93aとピン93bは径が異なるので、誤組み付けされることはない。
また、ロアカバー110の押さえボス115a、115bがピン93a、93bを受容して基板181を取付座92に押し付けるので、上下方向にも角度センサ180が位置決めされる。
【0057】
センサ歯車187の上側の軸188aはロアハウジング70における凹部94の天壁95に形成された軸穴96に回転可能に支持されている。
ロアハウジング70に形成された切り欠き窓88に第4ギア150(小径歯車150b)の下端部が臨んでおり、これにセンサ歯車187が噛み合う。
センサ歯車187の回転中心および軸188a、188bは減速ギア列6の各ギアと平行である。
ポテンショメータ185は内部の不図示のロータリー部がセンサ歯車187の下側の軸188bと一体に回転するようになっており、その回転角度を検出、出力する。具体的にはポテンショメータ185は可変抵抗器であり、センサ歯車187の回転角度、つまり出力ギア155の回転角度に応じた抵抗値となる。
【0058】
なお、ポテンショメータ185は検出可能な絶対角度範囲が1回転(360°)内に限定されているので、出力ギア155がその最大回転可能範囲の角度まで回転したとき出力ギア155から第4ギア150を経てセンサ歯車187に至る間の増速比によるセンサ歯車187の回転角度が360°未満となるように、それぞれの歯数が設定される。
また、減速ギア列6はトルクリミッタTLを含んでいるが、このトルクリミッタTLはセンサ歯車187が噛み合う第4ギア150よりDCモータ2側の第3ギア130に形成されているので、出力ギア155と第4ギア150間に滑りを発生させることはなく、出力ギア155の回転位置を角度センサ180によって常に高精度で検出することができる。
【0059】
図19はロアカバー110を取り外して示すギアードモータ1の下面(底面)図である。
出力孔84には出力ギア155の下部軸160の連結穴161が臨んでいる。
アクセス窓98からは、モータ下部収容部80に保持されたDCモータ2の下端と、基板181をピン93a、93bに取り付けられた角度センサ180とが覗かれる。
なお、図中119はアクセス窓98の周縁に沿ってシール面97a(
図12参照)に配置されたシールリングである。
外部配線107は図示省略している。
【0060】
ギアードモータ1の組み立ては、まずロアハウジング70内に配置される出力ギア155(下部軸160)、支持軸151、支持軸149を下部軸受け部82、支持ボス90、支持ボス85に挿入して支持させる。
下部軸160のシール保持部160bにはシールリング175を嵌め込んでおく。
支持軸151、149は圧入でもよい。
そして、支持軸151に第4ギア150を挿通したあと、予めDCモータ2を取り付けたアッパハウジング40を重ねて、その下面側の上部軸受け部55と支持ボス58に出力ギア155の上部軸158と支持軸151の上端を挿入する。非視認作業となるので支持軸151の挿入は非圧入に設定するのが好ましい。支持軸149はアッパハウジング40の上面側に突き出る。
【0061】
アッパハウジング40の上面側では、円筒部52内にアダプタ165(ヘッド166)が臨んでいるので、そのピン保持溝169にローラピン172を差し込み、円筒部52の外周に円筒174を嵌めるとともに、円筒部52の切り込み53a、53bにローラピン173を差し込む。その後、ミドルカバー30をアッパハウジング40に重ねる。
支持軸127、支持軸124をミドルカバー30の支持ボス33、アッパハウジング40の支持ボス46に挿入して支持させる。支持軸124、127は圧入でもよい。
【0062】
そして、第3ギア130を支持軸149に挿通してその小径歯車130bをアッパハウジング40のギア貫通穴48からロアハウジング70内へ延ばして第4ギア150と噛み合わせる。また、モータ出力軸3にはピニオンギア120を圧入する。
それから、第1ギア121、第2ギア126を支持軸124、支持軸127に順次に挿通して互いに噛み合わせる。
【0063】
つぎに、アッパカバー10をアッパハウジング40(およびミドルカバー30)に重ねて、その支持ボス16、18、20の軸穴17、19、21に第1ギア121、第2ギア126、第3ギア130の支持軸124、127、149の上端を挿入して支持させる。この場合も非視認作業となるので支持軸124、127、149の上端の挿入は非圧入に設定するのが好ましい。
【0064】
アッパカバー10、ミドルカバー30、アッパハウジング40およびロアハウジング70は、互いに重ねられた状態において、ロアハウジング70のネジ穴78aの突出リング79がアッパカバー10、ミドルカバー30およびアッパハウジング40の各取付け孔15a、32a、42aと嵌合して位置決めされている。これにより、アッパカバー10の取付け孔15a、15bからロアハウジング70のネジ穴78a、78bにネジ8a、8bを締め込んで共締めすれば、精度良く結合される。
【0065】
このあとは、出力ギア155の連結穴161に出力軸部材を挿し込んで回転させ、出力ギア155を初期角度位置、例えばローラピン172と173が当接する最大回転可能範囲の一端に位置させた上で、ポテンショメータ185を初期位置とした角度センサ180をロアハウジング70底面のアクセス窓98から取付座92に取り付けて、切り欠き窓88から凹部94に臨んでいる第4ギア150の小径歯車150bにセンサ歯車187を噛み合わせる。
【0066】
最後に、角度センサ180およびDCモータ2からの外部配線107をガイド溝102を通して外部に引き出してから、フランジ114の外周にシールリング119を嵌めたロアカバー110をロアハウジング70のロアカバー取り付け面97にネジ25で取り付ける。
ロアカバー110はネジ25を貫通させる取付け孔112aの突出リング113がロアカバー取り付け面97のネジ穴99aの大径凹部100と嵌合して位置決めされる。これにより、押さえボス115a、115bが容易に取付座92のピン93a、93bを受容して、角度センサ180の基板181を押さえる。
【0067】
本実施の形態では、DCモータ2が発明におけるモータに該当し、第3ギア130が1のギアに、第2ギア126が前段のギアに、そして第4ギア150が後段のギアに該当する。
ピニオン146が歯部に該当し、支持軸149が共通の支持軸に該当する。
接続部143のスプライン144とピニオン146とで回り止め部を構成している。
【0068】
本実施例は以上のように構成され、ギアードモータ1の減速ギア列6内において、第3ギア130が前段の第2ギア126と噛み合う大径歯車130aと後段の第4ギア150と噛み合う小径歯車130bとを備え、
大径歯車130aは端壁132から外筒131を延ばしたドラム状をなして、外筒131の外周に歯を備えるとともに内周にカム面135を備え、端壁132の中央には軸孔134を有する軸受け部133を備え、
小径歯車130bは、基部138とピニオン146とを軸方向に並べるとともに軸孔147を有し、基部138からは先端に爪140を備える弾性のアーム139を周方向に延ばし、
アーム139を大径歯車130aの外筒131内に配置して爪140をカム135に係合させることにより、第3ギア130にラチェット式のトルクリミッタTLが形成され、
大径歯車130aと小径歯車130bはそれぞれの軸孔134、147において共通の支持軸149に直接支持されて、
ピニオン146の歯が第4ギア150と噛み合うものとした。
これにより、大径歯車130aも小径歯車130bもそれぞれ支持軸149に直接支持されているので、相互の傾きが低減される結果、ラチェット式の採用にもかかわらず、アーム139の爪140とカム面135の不整な係合による伝達トルクの変動が抑えられるとともに、前後の第2ギア126や第4ギア150との噛み合いも正常姿勢で滑らかに保持される。(請求項1に対応する効果)
【0069】
そしてとくに、大径歯車130aの軸受け部133が外筒131内に延びて内筒133aを形成して、支持軸149に支持される軸孔134を長くしている分だけ、大径歯車130a傾きの防止効果が大きい。(請求項2に対応する効果)
さらに、軸受け部133が、爪140と径方向で重なるまで軸方向に延ばして内筒133aを形成しているので、とくに第3ギア130(1のギア)の軸方向サイズを大きくすることなく軸孔134を長くすることができる。(請求項3に対応する効果)
また、アーム139は爪140の軸方向両端まで延びるので、基部138に対する爪140の傾きを小さくできる。(請求項4に対応する効果)
【0070】
とくに、大径歯車130aが樹脂製で、小径歯車130bは樹脂製のラチェット部材137と金属製のピニオン146とからなり、
ラチェット部材137は、アーム139を備えた基部138と、基部138から軸方向に延びて内面にピニオン146の歯に対応するスプライン144を形成した筒状の接続部143とからなり、基部138は支持軸149を貫通させる貫通孔141を有し、
ピニオン146は、軸孔147を有するとともに外周に歯を備え、ラチェット部材137と一体回転可能に回り止めされ、
ピニオン146の軸孔147が前述のように支持軸149に直接支持される構成となっているので、ラチェット部材137は容易に弾性のアーム139を実現できる一方、大径歯車130aよりも減速側(出力側)に位置するピニオン146は強度の高い歯を持たせることができるとともに、軸孔147の内面を高精度にできて支持軸149による支持剛性が高められる。このため、支持軸149と軸孔147の内面の間隔を小さくでき、支持軸149に対する小径歯車130bの傾きが低減される。よって、共通の支持軸149に直接支持された、支軸大径歯車130aと小径歯車130bの相互の傾きが低減される。(請求項5、6に対応する効果)
【0071】
接続部143とピニオン146は回り止め部で圧入固定され、ラチェット部材137の基部138の貫通孔141は支持軸149との間に所定の間隙を有しているので、支持軸149(共通の支持軸)とピニオン143の軸孔147の隙間を小さくしてピニオン146(小径歯車130b)の傾きを低減させた場合でも、支持軸149が基部138の貫通孔141と干渉することを防止できる。(請求項7に対応する効果)
【0072】
また、基部138とアーム139が径方向で重なり、基部138とアーム139を樹脂で一体成型すると、基部138にアーム139が構成される部分と基部138にアーム139が構成されない部分とで、樹脂が基部138の貫通孔141に及ぼすヒケの量が異なる。このような場合でも、ラチェット部材137の基部138の貫通孔141は支持軸149との間に所定の間隙を有しているので、支持軸149が基部138の貫通孔141と干渉することを防止できる。(請求項8に対応する効果)
【0073】
また、接続部143は内面にピニオン146の歯に対応するスプライン144を形成し、スプライン144にピニオン146が係合して回り止め部を構成することにより、ピニオン146とラチェット部材137の接続部143の多くの係合箇所が周方向の等間隔に構成されるため、ピニオン146に対するラチェット部材137の傾きを小さくできる。(請求項9に対応する効果)
またピニオン146は全長にわたる外周面に歯を有するとともに、両端にリング突起148を有して軸方向対称形とすることにより、ラチェット部材137に圧入する際にピニオン146の向きを確認する手間が不要となり、作業性が向上する。(請求項10に対応する効果)
【0074】
さらに出力ギア155の回転角度を検出する角度センサ180のセンサ歯車187は減速ギア列6におけるトルクリミッタTLが形成された第3ギア130よりも後段の第4ギア150と噛み合うように配置されているので、トルクリミッタTLが作動して第3ギア130の大径歯車130aと小径歯車130bの間に滑りが発生しても出力ギア155の回転角度を常に正確に検出することができる。(請求項11に対応する効果)
【0075】
なお、実施の形態ではモータをDCモータとしたが、これに限らず、制御目的に応じてステッピングモータやその他適宜に選択することができる。
また、減速ギア列6はDCモータ2のピニオンギア120と出力ギア155との間に第1ギア121から第4ギア150を備えて5段の減速機構を形成するものとしたが、これに限定されず、任意の段数を選択可能である。
トルクリミッタTLを第3ギア130内に形成したが、これも任意のギアに形成することができる。
【0076】
角度センサ180のセンサ歯車187は出力ギア155より1段前の第4ギア150と噛み合うものとしたが、トルクリミッタTLを形成したギアよりも出力ギア側であれば適宜のギアと噛み合わせてもよい。ただし、出力ギア155からセンサ歯車187までの累積バックラッシュがより小さい点で、出力ギア155と噛み合う最終段のギアと噛み合せるのが有利である。
【0077】
また、実施の形態では減速ギア列6の各ギアを支持する支持軸を固定軸として、ギアは支持軸に対して回転するものとしたが、支持軸は固定軸であるか回転軸であるかを問わない。したがって、ギアが支持軸に固定されたものでもよい。
また、第3ギア130のピニオン146は金属粉末を成型して焼結して形成したが、切削加工で形成することや樹脂で構成することもできる。
また、第3ギア130の小径歯車130bは、互いに別体のラチェット部材137とピニオン146とからなるものとしたが、必要に応じて例えば樹脂製の一体物とすることもできる。
【0078】
また、回転規制機構RLは、出力ギア155に結合したアダプタ165のヘッド166に保持させたローラピン172とケース7側の円筒部52に金属製の円筒174を嵌めて保持したローラピン173との当接により出力ギア155の最大回転可能範囲を規制するものとしたが、これに限定されず、例えば出力ギアに突起部を一体形成し、ケース側に突起部と当接可能なストッパを一体形成して部品点数の削減とコスト低減を図ることもできる。
【0079】
また、実施の形態では回り止め部をスプライン144にピニオン146を係合させて構成したが、回り止め部としてはこれに限定されず、ピニオン146とラチェット部材137を一体に回転されるものであれば他の構成でもよい。ただし、ピニオン146とラチェット部材137の接続部143の係合箇所が周方向の等間隔に構成されるスプライン継手を用いると、各係合箇所にかかる負荷が互いに打ち消し合うので、負荷によるピニオン146に対するラチェット部材137の傾きを小さくできる。
また、ピニオン146の上部をラチェット部材137の接続部143に圧入してラチェット部材137とピニオン146を一体回転可能としたが、ピニオン146とスプライン144間に微小な隙間が生じてもよい。ただし、ピニオン146とスプライン144を圧入で固定することでピニオン146に対するラチェット部材137の傾きを更に小さくできる。
【0080】
実施の形態は便座や便蓋等の開閉駆動用ギアードモータとして説明したが、本発明は洗濯機のカバーや冷蔵庫の扉、その他の用途のギアードモータにも適用可能である。