(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、出願人が開示している測定装置には、以下の改善すべき課題が存在する。すなわち、出願人が開示している測定装置では、複数種類の測定レンジのうちからレンジ切り替えスイッチの操作によって任意の測定レンジを選択して測定対象の抵抗値を測定することができるように構成されている。この場合、この種の測定装置では、予め規定された測定確度範囲内の確度で測定値を測定(表示)できるように、各測定レンジ毎の測定値の誤差を補正するための補正値(校正値)を取得して記憶部に記憶させておき、測定処理に際しては、選択された測定レンジに対応して記憶部に記憶されている補正値を用いて測定値を補正する構成が採用されている。このような構成を採用した測定装置によれば、測定環境毎に生じる誤差や、測定装置の経年変化に起因する誤差を補正して所定の測定確度を維持することができる。
【0006】
この場合、この種の測定装置において補正値の生成処理(キャリブレーション処理)を実行する際には、各測定レンジ毎に予め規定された基準抵抗器を測定部に接続して基準の抵抗値(以下、「基準値」ともいう)を測定させ、測定された実測値と上記の基準値との差異を演算して補正値を取得する。具体的には、まず、操作部の操作スイッチを操作して生成処理の実行モードに移行させる。次いで、レンジ切り替えスイッチを操作することにより、一例として、10MΩレンジを選択すると共に、使用説明書等の記述に従い、両プローブを相互に接触させた状態(両プローブ間の抵抗値が0Ωとなる状態)においてメジャースイッチをオン操作する。これにより、基準値としての0Ωについての実測値が取得される。
【0007】
次いで、使用説明書等の記述に従い、両プローブを10MΩの基準抵抗器に接触させた状態(両プローブ間の抵抗値が使用説明書に記載されている基準値としての10MΩとなる状態)においてメジャースイッチをオン操作する。これにより、基準値としての10MΩについての実測値が取得される。また、制御部は、測定された両実測値と、0Ωとの基準値、および10MΩレンジ用の補正値の生成処理時に測定部に接続されるべき基準抵抗器の10MΩとの基準値(抵抗値)とに基づき、両基準値と両実測値との差異を演算して補正値とする。これにより、10MΩレンジ用の補正値の生成処理が完了する。この後、他の測定レンジについても、上記の10MΩレンジ用の補正値の生成処理時と同様の手順で一連の処理を実行させることにより、各測定レンジ毎の補正値の生成処理が完了する。
【0008】
しかしながら、この種の測定装置における上記の補正値の生成処理時(キャリブレーション処理)では、測定部に接続すべき基準抵抗器の種類(測定部に入力すべき基準信号の種類)を把握するために、操作説明書等の参照が必須となっている。このため、この種の装置の操作に不慣れな利用者にとっては、操作説明書を参照しながらの作業が煩雑となっているという現状がある。また、操作に熟練した利用者が生成処理を実行する場合であっても、例えば、測定装置を携行して任意の場所で測定処理を実行する際に使用説明書を参照する必要があることから、測定装置と共に使用説明書を携行する必要が生じている。したがって、補正値の取得が煩雑となっており、この点を改善するのが好ましい。
【0009】
本発明は、かかる改善すべき課題に鑑みてなされたものであり、各測定レンジ毎の補正データを容易に生成し得る測定装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成すべく、請求項1記載の測定装置は、複数種類の測定レンジのうちから指定された測定レンジで測定対象の電気的パラメータを測定して第1の測定データを出力する測定処理を実行する測定部と、前記各測定レンジ毎の補正データをそれぞれ記憶する記憶部と、前記測定レンジを指定して前記測定部に前記測定処理を実行させ、かつ当該測定部から出力される前記第1の測定データを、指定した当該測定レンジの前記補正データに基づいて補正して第2の測定データを生成すると共に、前記補正データの生成開始を指示されたときに前記測定レンジを指定して前記測定部に前記測定処理を実行させ、当該測定部から出力される前記第1の測定データに基づいて当該補正データを生成して前記記憶部に記憶させる生成処理を実行する処理部とを備えて構成された測定装置であって、
前記記憶部は、当該測定装置の製品出荷前に記憶させられる前記補正データ、および任意の前記補正データをそれぞれ記憶可能な少なくとも2つの補正データ記憶領域を備えて前記各測定レンジ毎に少なくとも2種類の当該補正データを記憶可能に構成され、前記処理部は、前記生成処理において、前記測定部に前記測定処理を実行させるのに先立ち、前記各測定レンジに対応して当該測定部に入力すべき基準信号の種類を特定可能に報知する報知処理を実行する
と共に、当該報知処理において、前記任意の補正データが前記記憶部に記憶されていないときに、当該任意の補正データを生成する前記生成処理が完了していない旨を示すメッセージを表示部に表示させる。
【0011】
また、請求項2記載の測定装置は、請求項1記載の測定装置において、前記処理部は、前記報知処理において、前記基準信号の種類を示す文字列を
前記表示部に表示させる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の測定装置によれば、処理部が、生成処理において、測定部に測定処理を実行させるのに先立ち、各測定レンジに対応して測定部に入力すべき基準信号の種類を特定可能に報知する報知処理を実行することにより、使用説明書等を参照することなく、測定部に入力すべき基準信号の種類を把握することができるため、この種の装置の操作に不慣れな利用者であっても、補正データを容易に生成させることができ、また、使用説明書等の参照が不要となるため、使用説明書等を携行していない測定現場においても補正データを確実かつ容易に生成することができる。
また、少なくとも2つの補正データ記憶領域を備えて各測定モード毎に少なくとも2種類の補正データを記憶可能に記憶部を構成したことにより、例えば、2つの補正データ記憶領域の一方に工場出荷時に生成した補正データ(測定装置の製品出荷前に記憶させられる補正データ)を記憶させておき、他の補正データ記憶領域に利用者が任意のタイミングで生成させた補正データ(任意の補正データ)を記憶させておくことで、利用者による補正データの生成が完了している場合にも、工場出荷時の補正データによって第1の測定データを補正する状態(工場出荷状態)に容易に復元させることができる。
【0014】
また、請求項2記載の測定装置によれば、処理部が、報知処理において、基準信号の種類を示す文字列を表示部に表示させることにより、補正データの生成に際して測定部に入力すべき基準信号の種類を確実かつ一層容易に把握することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、測定装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0018】
図1に示す測定装置1は、「測定装置」の一例であるデジタルマルチメータであって、測定部2、操作部3、表示部4、記憶部5,6および処理部7を備えて構成されている。
【0019】
測定部2は、「測定部」の一例であって、脱着自在な一対のテストリードを介して測定対象に接続可能に構成されると共に、処理部7の制御に従い、測定対象についての各種電気的パラメータ(一例として、直流電流値、交流電流値、直流電圧値、交流電圧値、抵抗値、および静電容量値など)を測定可能に構成されている。具体的には、
図2に示すように、測定部2は、直流電流測定モード、交流電流測定モード、直流電圧測定モード、交流電圧測定モード、抵抗測定モード、および静電容量測定モードなどの複数種類の測定モードを有すると共に、各測定モード毎に複数種類の測定レンジを有し、各測定モードのうちから指定された測定モードにおいて選択された測定レンジ(または、後述するオートレンジ機能によって自動的に指定された測定レンジ)で入力信号Siをデジタル変換して測定データD1a(「第1の測定データ」の一例)を生成し、生成した測定データD1aを処理部7に出力する「測定処理」を実行する。
【0020】
この場合、本例の測定装置1では、利用者によっていずれかの測定モードが選択された状態において利用者によって選択された(指定された)測定レンジで測定処理を実行させる形態と、利用者によって選択された測定モードでの測定処理時に処理部7が各測定レンジのうちから最適な測定レンジを自動的に選択して測定処理を実行させる形態とのいずれかを任意に選択することができるように構成されている。なお、本例の測定装置1では、一例として、抵抗測定モードについては、Ωレンジ、kΩレンジ、10kΩレンジ、100kΩレンジ、MΩレンジおよび10MΩレンジの6つの測定レンジのなかから測定レンジが指定されて切り換えられる。この場合、実際の測定装置1では、上記の6種類の測定モード以外の測定モードが存在すると共に、抵抗測定モード以外の測定モードにおいても複数の測定レンジが用意されているが、測定装置1の動作に関する理解を容易とするために、上記の各測定モード以外の測定モードについての説明や、抵抗測定モード以外の測定モードにおける測定レンジについての説明を省略する。
【0021】
操作部3は、測定モードを切り換えるための測定モード切換えスイッチ、測定レンジの切換え開始を指示するためのRANGEスイッチ、および測定開始を指示するメジャースイッチ等の各種操作スイッチを備え(図示せず)、スイッチ操作に応じた操作信号を処理部7に出力する。表示部4は、後述するように処理部7が測定データD1aおよび補正データD0u(または、補正データD0f(「補正データ」の一例))に基づいて生成する測定データD1b(「第2の測定データ」の一例)の値(すなわち、測定装置1による測定結果)や、補正データD0uの生成に際して測定部2に入力すべき基準信号の種類を報知する各種のメッセージ(一例として、
図4〜7に示す基準値特定用表示Mdおよび測定モード・測定レンジ特定用表示Ma)などを表示する。なお、測定結果やメッセージ等を表示する表示部を一体的に備えた測定装置1を例に挙げて説明するが、「測定装置」の構成はこれに限定されず、外部装置としての表示装置に測定結果やメッセージ等を表示する構成を採用することもできる。
【0022】
記憶部5は、「記憶部」の一例であって、
図1に示すように、一例として、補正データ記憶領域5a,5bの2つの記憶領域(「少なくとも2つの補正データ記憶領域」の一例)を備え、各測定モード毎にそれぞれ2種類の「補正データ」を記憶することができるように構成されている。この場合、本例の測定装置1では、予め規定された測定確度範囲内の確度で測定値を表示できるように、一例として、製造者が製品出荷前(例えば、製造時)に各測定モード毎に各測定レンジ毎の補正値を記録して補正データD0f
(「測定装置の製品出荷前に記憶させられる補正データ」の一例)を生成し、この補正データD0fを補正データ記憶領域5aに記憶させた状態で出荷することにより、補正データ記憶領域5aに補正データD0fが記憶された状態で利用者に供給される販売形態が採用されている。また、本例の測定装置1では、補正データ記憶領域5aに記憶されている補正データD0fの消去や上書きが規制されており、これにより、測定装置1を工場出荷時の状態(測定データD1bの生成に際して、補正データ記憶領域5a内の補正データD0fに基づいて測定データD1aを補正する状態)に復元することができるように構成されている。
【0023】
さらに、本例の測定装置1では、後述するように、例えば測定装置1の利用者が任意の測定モードの各測定レンジ用の補正データD0u
(「任意の補正データ」の一例)を任意のタイミングで生成させて補正データ記憶領域5bに記憶させることができるように構成されている。この場合、本例の測定装置1では、測定データD1bの生成に際して、補正データ記憶領域5bに補正データD0uが記憶されていない測定モードの各測定レンジでの測定処理に際しては、補正データ記憶領域5aに記憶されている補正データD0fの値を用いて測定データD1aを補正し、補正データ記憶領域5bに補正データD0uが記憶されている測定モードの各測定レンジでの測定処理に際しては、補正データ記憶領域5bに記憶されている補正データD0uの値を用いて測定データD1aを補正する構成が採用されている。記憶部6は、処理部7の制御下で測定データD1bを記憶する。なお、測定データD1bを記憶する記憶部6については、測定装置1に内蔵の記憶素子で構成された「記憶部」に限定されず、各種のリムーバブルメディアを採用して構成することもできる。
【0024】
処理部7は、「処理部」の一例であって、測定装置1を総括的に制御する。具体的には、処理部7は、操作部3の測定モード切換えスイッチの操作状態に応じて測定部を制御し、利用者によって選択された測定モードでの測定処理を実行させる。この場合、本例の測定装置1では、前述したように、各測定モードでの測定処理時に複数の測定レンジのうちから最適な測定レンジが選択されて自動的に切り換えられ形態を選択できるように構成されているが、この測定レンジの切換え処理(オートレンジ処理)についての説明を省略する。また、処理部7は、測定部2から出力される測定データD1aを補正データD0f、または、補正データD0uに基づいて補正して測定データD1bを生成し、生成した測定データD1bを記憶部6に記憶させる。
【0025】
さらに、処理部7は、一例として、RANGEスイッチが押圧された状態において電源スイッチの操作によって電源が投入されたときに、補正データD0uの生成処理を開始する。この場合、処理部7は、生成処理の開始時点において測定モード切換えスイッチによって選択されている測定モードの各測定レンジ毎の補正データD0uが存在しないとき(すなわち、選択されている測定モードの各測定レンジについての補正データD0uの生成処理が完了しておらず、補正データD0fだけしか存在しないとき)に、一例として、
図3に示すように、「AdJ FACt」との補正値取得状態特定用メッセージMb0と、選択されている測定モードおよび測定レンジを示す測定モード・測定レンジ特定用表示Ma(同図の例では、抵抗測定モードにおけるΩレンジを示す「Ω」との記号)とを表示部4に表示させることにより、その測定モードの各測定レンジに対応する補正データD0uの生成処理が完了していない旨を報知する(「報知処理」の一例)。
【0026】
また、処理部7は、生成処理の開始時点において測定モード切換えスイッチによって選択されている測定モードの各測定レンジについての補正データD0uが存在するとき(すなわち、選択されている測定モードの各測定レンジについての補正データD0uの生成処理が完了しているとき)に、一例として、
図8に示すように、「AdJ USEr」との補正値取得状態特定用メッセージMb1と、選択されている測定モードおよび測定レンジを示す測定モード・測定レンジ特定用表示Ma(この例では、抵抗測定モードにおけるΩレンジを示す「Ω」との記号)とを表示部4に表示させることにより、その測定モードの各測定レンジに対応する補正データD0uの生成処理が完了している旨を報知する(「報知処理」の他の一例)。
【0027】
さらに、処理部7は、一例として、生成処理の開始時点において押圧されたRANGEスイッチの押圧が解除されることなく(押圧された状態が維持されたまま)、測定モード切換えスイッチが操作されて他の測定モードが選択された際に、新たに選択された測定モードの各測定レンジについての補正データD0uが存在しないときには、「AdJ FACt」との補正値取得状態特定用メッセージMb0と、選択されている測定モードおよび測定レンジを示す測定モード・測定レンジ特定用表示Maとを表示部4に表示させ(図示せず)、新たに選択された測定モードの各測定レンジについての補正データD0uが存在するときには、「AdJ USEr」との補正値取得状態特定用メッセージMb1と、選択されている測定モードおよび測定レンジを示す測定モード・測定レンジ特定用表示Ma(一例として、交流電圧測定モードのVレンジを示す「〜」および「V」等の記号:図示せず)とを表示部4に表示させることにより、その測定モードの各測定レンジに対応する補正データD0uの生成処理が完了しているか否かを報知する(「報知処理」のさらに他の一例)。
【0028】
また、処理部7は、生成処理の開始時点において押圧されたRANGEスイッチの押圧が解除されたときに、その時点において測定モード切換えスイッチによって選択されている測定モードの各測定レンジについての補正データD0uを生成する処理を実行し、生成した補正データD0uを記憶部5の補正データ記憶領域5bに記憶させる。この場合、補正データ記憶領域5bに補正データD0uが既に記憶されているときには、処理部7は、その補正データD0uを新たに生成した補正データD0uで上書きする。さらに、処理部7は、上記の生成処理時に測定部2に測定処理を開始させるのに先立ち、選択されている測定モードの各測定レンジに対応して測定部2に入力すべき基準信号の種類を特定可能に報知する報知処理を実行する。なお、この報知処理については、後に図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0029】
この測定装置1によって入力信号Siについての測定処理を実行する際には、まず、操作部3の測定モード切換えスイッチを操作して任意の測定モードを選択する。この際には、一例として、抵抗測定モードを選択する。次いで、図示しない電源スイッチを操作して電源を投入した後に、両テストリードを測定対象に接触させる。この際に、処理部7は、測定部2を制御し、一例として、各測定レンジのうちの最下位のレンジ(この例では、Ωレンジ)を指定して抵抗測定処理を実行させ、測定部2は、処理部7の制御に従い、指定された測定レンジに対応する電流値の測定用定電流を図示しない定電流源から測定対象に供給すると共に、一例として、両テストリードの間の電圧値を示す測定データD1aを生成して処理部7に出力する。
【0030】
一方、処理部7は、測定部2から出力される測定データD1aの値(この例では、電圧値)を補正する。この際に、処理部7は、抵抗測定モード用の補正データD0uが記憶部5(補正データ記憶領域5b)に記憶されているときには、この補正データD0uに基づいて測定データD1aの値を補正する。また、処理部7は、抵抗測定モード用の補正データD0uが記憶部5(補正データ記憶領域5b)に記憶されていないときには、記憶部5(補正データ記憶領域5a)に記憶されている補正データD0fに基づいて測定データD1aの値を補正する。次いで、処理部7は、補正後の値と、測定部2から測定対象に供給させている測定用定電流の電流値とに基づいて測定対象の抵抗値を演算する。
【0031】
また、処理部7は、演算結果(抵抗値)に基づき、指定した測定レンジが適正であるか否かを判別する。この際に、指定した測定レンジが適正ではないとき(演算した抵抗値が、指定した測定レンジの測定範囲内の値ではないとき)に、処理部7は、測定部2を制御して1つ上位のレンジ(この例では、kΩレンジ)を指定して抵抗測定処理を実行させ、上記の一連の処理を再び実行する。一方、指定した測定レンジが適正であるときに、処理部7は、演算結果(抵抗値)を示す測定データD1bを生成して記憶部6に記憶させると共に、測定データD1bの値(抵抗値)を示す数値および記号を表示部4に表示させる(図示せず)。これにより、測定対象の抵抗値の測定が完了し、表示部4の表示を見た利用者が、測定対象の抵抗値を把握することが可能となる。
【0032】
この場合、この種の「測定装置」では、測定環境毎の測定誤差(例えば、測定場所が高温または低温であることで生じる測定誤差)や、装置の経年変化に起因する測定誤差に起因して、利用者が所望する測定確度範囲内の確度で測定結果を得るのが困難となることがある。したがって、測定環境の相違や、装置の経年変化に起因する確度の低下を回避する必要があるときには、工場出荷時に記憶部5(補正データ記憶領域5a)に記憶させられた汎用の補正データD0fに代えて、測定環境の相違や、装置の経年変化に応じた補正が可能な補正データD0uを用いて測定データD1aを補正するのが好ましい。
【0033】
具体的には、電源を遮断した状態から、RANGEスイッチを押圧したまま電源を投入する。この際に、処理部7は、補正データD0uの生成を開始する旨の操作が行われた(補正データの生成開始を指示された)と判別し、動作プログラムの記述に従って、生成処理を開始する。具体的には、処理部7は、まず、測定モード切換えスイッチの操作によって選択されている測定モードを特定する。この際に、一例として、測定モード切換えスイッチによって抵抗測定モードが選択されているときに、処理部7は、抵抗測定モード用の補正データD0uが記憶部5(補正データ記憶領域5b)に記憶されているか否かを判別し、判別結果に応じて補正値取得状態特定用メッセージMb0,Mb1のいずれかと、特定した測定モードの例えば最下位の測定レンジを示す測定モード・測定レンジ特定用表示Maとを表示部4に表示させる。
【0034】
具体的には、測定モード切換えスイッチによって抵抗測定モードが選択されている本例において、この抵抗測定モードの各測定レンジ毎の補正データD0uが記憶部5(補正データ記憶領域5b)に記憶されていないときに、処理部7は、対応する補正データD0uの生成処理が完了していないと判別し、
図3に示すように、工場出荷時の補正データD0fだけが記憶されている旨を示す補正値取得状態特定用メッセージMb0と、現時点において選択されている測定モードおよび測定レンジ(一例として、最下位の測定レンジであるΩレンジ)を示す測定モード・測定レンジ特定用表示Maとを表示部4に表示させる。これにより、補正値取得状態特定用メッセージMb0および測定モード・測定レンジ特定用表示Maを見た利用者は、抵抗測定モードの各測定レンジ毎の補正データD0uの生成処理が完了していない旨を認識する。
【0035】
したがって、抵抗測定モードの各測定レンジ毎の補正データD0uの生成を所望するときには、操作部3のRANGEスイッチの押圧を解除する(RANGEスイッチから手を離す)。この際に、処理部7は、動作プログラムの記述に従い、抵抗測定モードの6つの測定レンジの各々に関し、一例として、Ωレンジから、kΩレンジ、10kΩレンジ、100kΩレンジ、MΩレンジおよび10MΩレンジの順で測定環境や測定装置1の経年変化に応じた補正値を取得し、取得した補正値を、抵抗測定モードの各測定レンジ用の補正データD0uとして記憶部5(補正データ記憶領域5b)に記憶させる。
【0036】
具体的には、処理部7は、
図4に示すように、まず、生成処理モードに移行した旨を報知するために、HOLD表示Mcを表示部4内に表示させる。この場合、このHOLD表示Mcは、前述した測定処理に際して表示部4に表示させた測定結果を変化させずに維持させる(例えば測定対象から両テストリードを離したときに、両テストリードを離す直前に表示部4に表示されていた測定値を表示替えせずに表示させ続ける)測定値ホールド処理の実行中に表示部4に表示されるマークであるが、RANGEスイッチが押圧操作されたまま電源が投入され、その後に、RANGEスイッチの押圧が解除されたときには、生成処理モードに移行した旨を示すマークとして表示部4に表示される。
【0037】
また、処理部7は、一例として、抵抗測定モードにおける6つの測定レンジのうちの最下位のΩレンジについての補正値の取得を開始する旨を報知する測定モード・測定レンジ特定用表示Ma(この例では、「Ω」との文字列)と、Ωレンジの補正値の取得に際して測定部2に対して最初に接続すべき基準抵抗値(「測定部に入力すべき基準信号の種類を示す文字列」の一例)を報知する基準値特定用表示Md(この例では、「0.0」との文字列)とを表示部4に表示させる(「報知処理」の一例)。この基準値特定用表示Mdおよび測定モード・測定レンジ特定用表示Maを見た利用者は、両テストリード間の抵抗値を「0.0Ω」とすることを要求されていると認識し、両テストリードを相互に接触させた状態(両テストリード間の抵抗値が0.0Ωとなる状態)とした後にメジャースイッチをオン操作する。これにより、Ωレンジの基準値の1つとしての「0.0Ω」の実測値が取得される。
【0038】
次いで、処理部7は、
図5に示すように、HOLD表示Mcや、「Ω」との測定モード・測定レンジ特定用表示Maを表示させた状態を維持しつつ、上記の「0.0」との基準値特定用表示Mdに代えて、Ωレンジの補正値の取得に際して測定部2に対して2番目に接続すべき基準抵抗(「測定部に入力すべき基準信号の種類を示す文字列」の他の一例)を報知する基準値特定用表示Md(この例では、「600.0」との文字列)を表示部4に表示させる(「報知処理」の他の一例)。この基準値特定用表示Mdおよび測定モード・測定レンジ特定用表示Maを見た利用者は、両テストリード間の抵抗値を「600.0Ω」とすることを要求されていると認識し、図示しない600Ωの基準抵抗器に両テストリードを相互に接触させた後に(両テストリード間の抵抗値が600.0Ωとなる状態)、メジャースイッチをオン操作する。これにより、Ωレンジの基準値の他の1つとしての「600.0Ω」の実測値が取得される。
【0039】
続いて、処理部7は、
図4に示す基準値特定用表示Mdおよび測定モード・測定レンジ特定用表示Maを表示部4に表示させた報知処理の後に測定した(演算した)実測値と、0.0Ωとの基準値との差異、および
図5に示す基準値特定用表示Mdおよび測定モード・測定レンジ特定用表示Maを表示部4に表示させた報知処理の後に測定した(演算した)実測値と、600.0Ωとの基準値との差異をそれぞれ演算し、演算結果に基づいてΩレンジ用の補正データD0uを生成する。また、処理部7は、生成した補正データD0uを抵抗測定モードのΩレンジに対応付けて記憶部5の補正データ記憶領域5bに記憶させる。これにより、抵抗測定モードのΩレンジ用の補正値の生成処理が完了する。
【0040】
一方、Ωレンジ用の補正値の生成処理が完了したときに、処理部7は、
図6に示すように、HOLD表示Mcを表示させた状態を維持しつつ、1つ上位のkΩレンジについての補正値の取得を開始する旨を報知する測定モード・測定レンジ特定用表示Ma(この例では、「kΩ」との文字列)と、kΩレンジの補正値の取得に際して測定部2に対して最初に接続すべき基準抵抗値(「測定部に入力すべき基準信号の種類を示す文字列」のさらに他の一例)を報知する基準値特定用表示Md(この例では、「0.0」との文字列)とを表示部4に表示させる(「報知処理」のさらに他の一例)。この基準値特定用表示Mdおよび測定モード・測定レンジ特定用表示Maを見た利用者は、両テストリード間の抵抗値を「0.0kΩ」とすることを要求されていると認識し、両テストリードを相互に接触させた状態(両テストリード間の抵抗値が0.0kΩとなる状態)とした後にメジャースイッチをオン操作する。これにより、Ωレンジの基準値の1つとしての「0.0kΩ」の実測値が取得される。
【0041】
次いで、処理部7は、
図7に示すように、HOLD表示Mcや、「kΩ」との測定モード・測定レンジ特定用表示Maを表示させた状態を維持しつつ、上記の「0.0」との基準値特定用表示Mdに代えて、kΩレンジの補正値の取得に際して測定部2に対して2番目に接続すべき基準抵抗(「測定部に入力すべき基準信号の種類を示す文字列」のさらに他の一例)を報知する基準値特定用表示Md(この例では、「6.0」との文字列)を表示部4に表示させる(「報知処理」のさらに他の一例)。この基準値特定用表示Mdおよび測定モード・測定レンジ特定用表示Maを見た利用者は、両テストリード間の抵抗値を「6.0kΩ」とすることを要求されていると認識し、図示しない6kΩの基準抵抗器に両テストリードを相互に接触させた後に(両テストリード間の抵抗値が6.0kΩとなる状態)、メジャースイッチをオン操作する。これにより、kΩレンジの基準値の他の1つとしての「6.0kΩ」の実測値が取得される。
【0042】
続いて、処理部7は、
図6に示す基準値特定用表示Mdおよび測定モード・測定レンジ特定用表示Maを表示部4に表示させた報知処理の後に測定した(演算した)実測値と、0.0kΩとの基準値との差異、および
図7に示す基準値特定用表示Mdおよび測定モード・測定レンジ特定用表示Maを表示部4に表示させた報知処理の後に測定した(演算した)実測値と、6.0kΩとの基準値との差異をそれぞれ演算し、演算結果に基づいてkΩレンジ用の補正データD0uを生成する。また、処理部7は、生成した補正データD0uを抵抗測定モードのkΩレンジに対応付けて記憶部5の補正データ記憶領域5bに記憶させる。これにより、抵抗測定モードのkΩレンジ用の補正値の生成処理が完了する。この後、処理部7は、残りの4つの測定レンジについても、上記の両測定レンジについての生成処理と同様に補正データD0uを生成して補正データ記憶領域5bに記憶させる。これにより、抵抗測定モードの各測定レンジ毎の補正データD0uの生成処理が完了し、測定環境の相違や、装置の経年変化に起因する確度の低下を回避して高精度な抵抗測定処理を実行可能な状態となる。
【0043】
このように、この測定装置1によれば、処理部7が、補正データD0uの生成処理において、測定部2に測定処理を実行させるのに先立ち、各測定レンジに対応して測定部2に入力すべき基準信号の種類(例えば基準抵抗値)を特定可能に報知する報知処理を実行することにより、使用説明書等を参照することなく、測定部2に入力すべき基準信号の種類(上記の例では、両テストリードを接続すべき抵抗器の抵抗値等)を把握することができるため、この種の装置の操作に不慣れな利用者であっても、補正データD0uを容易に生成させることができ、また、使用説明書等の参照が不要となるため、使用説明書等を携行していない測定現場においても補正データD0uを確実かつ容易に生成することができる。
【0044】
また、この測定装置1によれば、処理部7が、報知処理において、基準信号の種類を示す文字列を表示部に表示させることにより、補正データD0uの生成に際して測定部2に入力すべき基準信号の種類(上記の例では、両テストリードを接続すべき抵抗器の抵抗値等)を確実かつ一層容易に把握することができる。
【0045】
さらに、この測定装置1によれば、2つの補正データ記憶領域5a,5bを備えて各測定モードの各測定レンジ毎に2種類の補正データD0f,D0uをそれぞれ記憶可能に記憶部5を構成したことにより、例えば、2つの「補正データ記憶領域」の一方(本例では、補正データ記憶領域5a)に工場出荷時の補正データD0fを記憶させておき、他の「補正データ記憶領域」(本例では、補正データ記憶領域5b)に利用者が任意のタイミングで生成させた補正データD0uを記憶させておくことで、利用者による補正データD0uの生成が完了している測定モードの測定レンジについても、工場出荷時の補正データD0fによって測定データD1aを補正する状態(工場出荷状態)に容易に復元させることができる。
【0046】
なお、「測定装置」の構成は、上記の測定装置1の構成に限定されない。例えば、「2つ以上の補正データ記憶領域」の一例として、補正データ記憶領域5a,5bの2つを記憶部5内に設けた構成を例に挙げて説明したが、「3つ以上の補正データ記憶領域」を記憶部5内に設けることもできる。この場合、例えば「3つの補正データ記憶領域」を記憶部5内に設けたときには、その1つに工場出荷時の補正データD0fを記憶させておき、他の2つの「補正データ記憶領域」に、利用者が任意のタイミングで生成させた補正データD0uをそれぞれ記憶させることで、測定環境等に応じて2種類の補正データD0uを使い分けることができると共に、工場出荷状態に復元させることもできる。
【0047】
また、「報知処理」の一例として、基準値特定用表示Mdおよび測定モード・測定レンジ特定用表示Maを表示部4に表示させる構成(文字列の表示によって報知する構成)を例に挙げて説明したが、このような構成に代えて(または、このような構成に加えて)、「測定部に入力すべき基準信号の種類」を音声によって報知する構成や、専用のインジケータの点灯状態によって報知する構成を採用することもできる。