特許第6128977号(P6128977)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6128977板材の周縁加工装置並びに加工精度の計測及び補正方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6128977
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】板材の周縁加工装置並びに加工精度の計測及び補正方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/02 20060101AFI20170508BHJP
【FI】
   G01B11/02 H
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-125782(P2013-125782)
(22)【出願日】2013年6月14日
(65)【公開番号】特開2015-1432(P2015-1432A)
(43)【公開日】2015年1月5日
【審査請求日】2016年6月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000212566
【氏名又は名称】中村留精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078673
【弁理士】
【氏名又は名称】西 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】小幡 智昭
(72)【発明者】
【氏名】酒井 友基
【審査官】 八木 智規
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−251551(JP,A)
【文献】 特開2004−195647(JP,A)
【文献】 特開2002−207996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00−11/30
G01B 21/00−21/32
B24B 1/00− 1/04
B24B 9/00−19/28
B24B 41/00−51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機内にテーブル上のワークの周縁を撮影可能なカメラを備えた板材の周縁加工装置における加工精度の計測方法であって、
前記カメラで前記テーブル上に保持された加工済ワークの対向辺の一方について2箇所の画像を取得し、対向辺の他方について複数箇所の画像を取得し、それぞれの画像中の検出点の座標を取得し、前記2箇所の画像から取得した検出点を結ぶ直線に前記複数箇所の画像から取得した検出点の各点から下ろした垂線と前記直線に交わる交点を求めて、前記各点と当該各交点との間の寸法を演算し、演算された寸法と本来あるべき寸法との寸法差を計測する、板材の周縁加工装置における加工精度の計測方法。
【請求項2】
前記対向辺の一方についての2箇所と他方についての複数箇所が、前記テーブルの中心から等距離にある4箇所と、前記他方の辺上の当該等距離にある2箇所の中央部にある1箇所であることを特徴とする、請求項1記載の加工精度の計測方法。
【請求項3】
前記各箇所の画像中の外周線の画像又は面取面と板材表面との間に形成される稜線の画像上の予め定めた間隔の2点と、当該画像中の他方の線の画像上の1点の座標を取得し、前記2点を結ぶ直線に前記1点から下ろした垂線と前記直線との交点u’と当該1点との間の寸法を演算し、演算された寸法と本来あるべき面取幅との寸法差を演算することを特徴とする、請求項1又は2記載の加工精度の計測方法。
【請求項4】
ワークの連続加工中の予め定めたタイミングで制御器に請求項1、2又は3記載の方法で加工精度を計測させ、その計測値に基づいて、制御器に予め登録された演算式ないし演算表を用いて加工動作の各軸の指令値に対する補正値を当該制御器に演算させて設定させる、板材の周縁加工装置における加工精度の補正方法。
【請求項5】
テーブル上のワークの周縁を撮影可能なカメラと、複数の撮影箇所を設定する撮影箇所設定器と、当該カメラで撮影した画像上の予め定めた検出点の座標を検出する座標取得手段とを備えた板材の周縁加工装置において、
タイミング設定器と、複数箇所のワーク寸法を設定する寸法設定器と、
機械精度の計測手段とを備え、
機械精度の計測手段は、タイミング設定器に設定れたタイミングにおいて、撮影箇所設定器に設定された2箇所と他の箇所の前記カメラの画像からそれぞれの検出点の座標を取得し、前記2箇所の検出点を結ぶ直線に前記他の箇所の検出点から下ろした垂線の長さを求め、求めた垂線の長さと前記寸法設定器に設定された対応する寸法との差を演算する、板材の周縁加工装置。
【請求項6】
撮影箇所設定器に設定される前記2箇所と他の箇所が、加工されるワークの対向辺の一方と他方の辺上の前記テーブルの中心から等距離にある4箇所と、前記他方の辺上の当該等距離にある2箇所の中央部にある1箇所であることを特徴とする、請求項5記載の板材の周縁加工装置。
【請求項7】
前記カメラで撮影した画像上の予め定めた3個の検出点の座標を検出可能な前記座標取得手段を備え、前記機械精度の計測手段は、前記タイミングにおいて、撮影箇所設定器に設定された箇所の前記カメラの画像から前記3個の検出点の座標を取得し、そのうちの2箇所の検出点を結ぶ直線に他の検出点から下ろした垂線の長さを求め、求めた垂線の長さと前記寸法設定器に設定された対応する寸法との差を演算する、請求項5又は6記載の板材の周縁加工装置。
【請求項8】
前記寸法の差から制御器に予め登録された演算式ないし演算表を用いて加工動作の各軸の指令値に対する補正値を演算して当該制御器に設定する機械精度の補正手段を備えている、請求項5、6又は7記載の板材の周縁加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、携帯端末のディスプレイパネルに用いるガラス基板その他の板材の周縁を加工する装置並びにそのような装置における加工精度の計測方法及び当該方法で得られた計測値に基づいて加工誤差を補正する方法に関するもので、特にワークテーブル上へのワーク(板材)の搬入誤差を検出するためのカメラを備えた加工装置に好適な上記装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
板材の周縁加工装置には、ワークに対する工具の相対位置を直行する2軸方向(X−Y方向に移動して行うマシニングセンタ方式(直交座標系))の装置と、ワークを保持するテーブルの回転角と当該回転の半径方向に移動する工具の位置とを関連づけて制御することによって加工を行うコンタリング方式(極座標系)の装置とがある。直角座標系の装置は、テレビ受像器のディスプレイパネル用のガラス板のように、大型で矩形の板材の加工に適している。一方、極座標系の装置は、携帯端末のディスプレイパネルに用いるガラス板などの小型の板材の加工に適しており、直角座標系の装置に比べて加工形状の自由度が大きいこと及び装置を小型にできるという特徴がある。
【0003】
板材の周縁加工装置は、ワークの基準辺をテーブルに設けた突起に当接させて位置決めするなどの方法でテーブル上のワークの位置決めをすることができない。そのため、正しい位置からずれた(偏倚した)位置でテーブルに保持されたワークを正しい形状に加工するための補正値を制御器に設定して加工を行う必要がある。
【0004】
そこで、装置内にカメラを設け、ワークが加工装置に搬入されてテーブル上に固定される毎に、当該カメラでテーブル上のワークの角や位置決めマークを撮影し、その画像から当該角や位置決めマークのあるべき位置からの偏倚を検出し、検出された偏倚からテーブルの回転角や工具位置の補正値を演算し、当該補正値で制御器からの指令値を補正しながら加工を行っている。
【0005】
一方、機械の経年変化、熱変形、工具(砥石)の摩耗などにより、ワークの加工精度は低下する。このような経時的な加工精度の低下を防止するために、所定数のワーク加工毎に加工されたワークを抜き取って、ワーク寸法の計測を行い、その計測値から加工精度を補正するための補正値を演算して制御器に入力することにより、所望の加工精度を維持するようにしている。
【0006】
すなわち、板材の周縁加工装置では、機械の熱変形や砥石の摩耗に起因する加工精度の低下を補正するための補正値(機械精度の補正値)と、ワーク1枚毎に当該ワークのテーブル上での偏倚を補正する補正値(搬入誤差の補正値)との2種類の補正値でテーブルの回転角や工具位置の指令値を補正して加工を行っている。
【0007】
搬入誤差の補正値については、従来、機内に設けたカメラの画像から搬入誤差を検出して自動で補正値の設定を行っている。例えば特許文献3には、極座標系の周縁加工装置について、ワークテーブルの半径方向に移動する送り台に1個のカメラを搭載し、当該カメラでテーブル上のワークの搬入誤差を自動で検出する技術が示されている。
【0008】
一方、機械精度の補正について、特許文献1には、直角座標系の周縁加工装置において、搬入誤差を検出するために設けたカメラを用いて加工済ワークの周縁の位置と面取幅を計測して、機械精度の補正値を自動設定する手段が示されている。また、特許文献2には、そのようなカメラを用いて、加工済ワークの加工形状を計測して、機械精度(特許文献2では、回転主軸の上端に取り付けられたテーブルの取り付け誤差)を計測して補正する技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−125876号公報
【特許文献2】特開2012−121100号公報
【特許文献3】特開2013−35089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に示すような直角座標系の周縁加工装置では、工具がワークに対して直交する2方向(X方向とY方向)に移動して当該方向の寸法精度に関わる加工を行うので、工具を当該方向に送る送り台に搭載したカメラで加工済ワークの計測を行うことにより、機械精度の補正値の演算を比較的容易に行うことができる。特に、特許文献1に示すようなワークの対向辺を同時加工する2個の工具を備え、各工具の送り台にそれぞれカメラを搭載した構造では、加工済ワークの対向両辺を2個のカメラで同時に撮影してワークの加工寸法(加工する辺と直交する方向の差し渡し寸法)を計測することができるので、比較的短時間で加工済ワークの計測を行い、その計測値に基づいて機械精度の補正値を自動設定することも容易である。
【0011】
これに対して、極座標系の周縁加工装置では、カメラが1台しか設けられておらず、ワークや工具の動作方向が加工精度を計測する方向と一致していないため、加工精度の計測が非常に複雑かつ面倒になる。すなわち、特許文献2に示されているように、特殊な検出線を設けたワークを用いて多数の箇所の画像を取得しなければならないなど、ワークの連続加工中にワークの加工精度を自動でかつ短時間で計測することは困難であった。
【0012】
そのため、極座標系の周縁加工装置においては、加工済ワークを加工装置から取り出して手作業で計測し、その計測値から演算した補正値を手作業で入力するという方法で機械精度の補正値を設定していた。しかし、手作業での補正値の設定は、作業に時間と熟練を必要とすること、高価な計測器が必要であること、及び補正値の演算や入力時に計算ミスや入力ミスが生ずる危険があることなどの問題がある。
【0013】
この発明は、上記のような問題を解決して、極座標系の周縁加工装置においても、ワークの搬入誤差を検出するために設けられているカメラを用いて加工済ワークの計測及びその計測結果に基づく補正値の設定を少ない動作で効率よく行うことを可能にし、これによって熱変形や工具の摩耗などに起因する経時的な加工精度の低下を自動的に補正することができる周縁加工装置を得ることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明の方法では、ワークの連続加工中の予め定められたタイミングで、機械精度の計測手段55と補正手段57を呼び出してその手順を実行し、当該手順が実行された後、ワークの連続加工を継続する。上記機械精度の計測手段55は、搬入誤差を検出するために装置に設けられているカメラ4を使用して加工済ワーク1の外形寸法や面取幅を計測し、機械精度の補正手段57は、その計測値に基づいて機械精度の補正値を演算して、制御器5からの各軸の指令値に対する機械精度の補正値を自動設定する。
【0015】
上記機械精度の計測手段55は、1個のワークの加工が終了したとき、加工済ワーク1の対向辺の一方11について、その両端に近い2箇所P、Qの画像を取得し、対向辺の他方12についてその辺上の好ましくは複数箇所A、B、Cの画像を取得し、それらの画像中の検出点p、q及びa、b、cの座標(例えばテーブル中心を原点とする座標)を取得する。
【0016】
次に、前記2箇所P、Qの画像から取得した検出点p、qを結ぶ直線fに前記他方の辺12の箇所A、B、Cの画像から取得した検出点a、b、cの各点から垂線g、h、iを引き、各垂線が前記直線に交わる交点a’、b’、c’と当該各点a、b、cとの間の寸法La、Lb、Lcを演算し、演算された寸法と本来あるべき寸法と対比して、それらの寸法誤差から加工誤差を求める。
【0017】
機械精度の補正手段57は、機械精度の計測手段55が演算した加工誤差を補正するための補正値を演算して装置の制御器5に設定する。
【0018】
各箇所の画像を取得する際には、その画像の取得位置にカメラの光軸を一致させるようにテーブルと工具の送り台を位置決めする必要があるから、取得する画像の数が少ないほど短時間で機械精度の検出を行うことができる。極座標系の周縁加工装置では、テーブル中心からの距離が同一となる箇所を選べば、テーブル回転のみでカメラを複数箇所に移動できる。従って、上記の2箇所P、Qと3箇所の内の両端の2箇所B、Cは、テーブル中心から等距離にある箇所とするのが好ましい。
【0019】
また、極座標系の周縁加工装置では、工具のテーブル中心に対する半径方向の位置に誤差があると、直線辺が湾曲する形状の誤差が生ずる。この誤差を効果的に検出するには、前記対向辺の他方の辺12についての画像を取得する複数箇所を、テーブル中心からの距離が箇所P、Qのそれと同一距離にある2箇所B、Cと両者の中央にある1箇所Aとの3箇所とするのが良い。
【0020】
ワークの周縁に面取加工を行ったときは、取得した各箇所の画像から、当該箇所の面取幅dを計測して面取幅に対する補正値を演算して設定することができる。面取幅dの計測は、取得した画像中の外周線の画像41又は面取面16と板材の表面15との稜線17の画像47上の予め定めた間隔の2点s、tと、当該画像中の他方の線の画像47又は41上の1点uの座標を取得し、次に当該2点s、tを結ぶ直線(図では外周縁の画像41と一致している)に当該1点uから垂線jを引き、その垂線が前記直線に交わる交点u’と当該1点uとの間の寸法dを演算し、演算された寸法と本来あるべき面取幅と対比して、それらの寸法誤差から加工誤差を求め、この加工誤差を補正するための補正値を演算して装置の制御器5に設定する。
【0021】
上記の方法を実施するこの発明の板材の周縁加工装置は、テーブル2上のワーク1の周縁を撮影可能なカメラ4と、複数の撮影箇所P、Q、A、B、Cを設定する撮影箇所設定器51と、カメラ4で撮影した画像上の予め定めた検出点p、q、a、b、cの座標を取得する座標取得手段52と、機械精度の計測タイミングを設定するタイミング設定器53と、複数箇所のワーク寸法を設定する寸法設定器54と、撮影箇所設定器51に設定された2箇所P、Qと他の箇所A、B、Cのカメラ4の画像からそれぞれの検出点p、q、a、b、cの座標を取得して当該2箇所の検出点p、qを結ぶ直線に他の箇所の検出点a、b、cから下ろした垂線の長さLa、Lb、Lcを求めて寸法設定器54に設定された対応する寸法との差を演算する機械精度の計測手段55とを備えている。
【0022】
好ましいこの発明の板材の周縁加工装置は、更に、カメラ4で撮影した1個の画像上の予め定めた3個の検出点s、t、uの座標を取得可能な前記座標取得手段52を備え、機械精度の計測手段55は、座標取得手段52が取得した当該3個の検出点のうちの2箇の検出点s、tを結ぶ直線に他の検出点uから下ろした垂線の長さdを求めて求めた垂線の長さと前記寸法設定器54に設定された対応する寸法との差を演算する。
【0023】
更に好ましいこの発明の板材の周縁加工装置は、機械精度の計測手段55が演算した寸法の差から、制御器5に予め登録された演算式ないし演算表56を用いて、加工動作の各軸θ、xの指令値に対する補正値を演算して制御器5に設定する機械精度の補正手段57を備えている。
【発明の効果】
【0024】
この発明により、板材の周縁加工装置で加工された加工済ワークの外形寸法や面幅幅を自動で計測して補正するため、作業者が計測器を使用して計測する方法や、特許文献2に記載されたような方法に比べて計測時間が短縮され、外形寸法の誤差に対する補正値や面取幅に対する補正値を自動で設定することができ、計測に必要な時間が短いので、ワークの連続加工中の必要なタイミングで計測及び補正値の設定(更新)を行うことができ、高精度の連続加工を実現することができる。
【0025】
また、補正値が自動で演算及び設定されるため、手作業による計測誤差や入力ミスを避けることができる。
【0026】
更にこの発明によれば、従来、加工誤差の自動計測が困難であった極座標系の周縁加工装置において、加工精度を短時間で効率的に行うことができ、極座標系の周縁加工装置で発生しやすい加工誤差を効果的に計測して補正することができるので、高い加工精度を維持して連続加工を実現する省スペースの周縁加工装置が得られるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】この発明における加工済ワークの形状誤差の計測箇所を示す説明図
図2】面取加工されたワークの周縁の画像から検出点を検出する例を示した図
図3】板材の面取形状を示す側面図
図4】極座標系の周縁加工装置における加工済ワークの形状誤差を誇張して示す図
図5】極座標系周縁加工装置における実施例を示す側面図
図6】極座標系周縁加工装置のワークと工具とカメラの位置関係を示す平面図
図7】直角座標系周縁加工装置のワークと工具とカメラの位置関係を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、コンタリング方式の周縁加工装置を例にして、この発明の実施形態を説明する。図5はこの種の周縁加工装置の一例を示す図である。図において、ワーク軸28は、鉛直方向の中空の回転軸で、上端にテーブル2が設けられており、加工されるワーク(ガラス板)1は、テーブル2の上面に水平姿勢で保持される。テーブル2の上面には、ワーク軸28の中空孔を通して負圧が供給されており、ワーク1は、下面を真空吸着されてテーブル2に固定される。ワーク軸28の下端には、主軸モータ(サーボモータ)29が連結されており、当該主軸モータ29は、サーボアンプを介して制御器5に接続され、制御器5の指令によってワーク軸28の回転角θが制御されている。
【0029】
ワーク軸28の上方には、横送り台21が設けられている。横送り台21は、図示しない水平方向の横ガイドに移動自在に案内され、横送りモータ(サーボモータ)23で回転駆動される横送りねじ24に螺合している。横送りモータ23は、制御器5に接続されており、横送り台21の移動位置xが制御器5によって制御されている。
【0030】
横送り台21には、縦送り台25が設けられている。縦送り台25は、横送り台21に固定した鉛直方向の縦ガイドに移動自在に装着され、縦送りモータ26で回転駆動される縦送りねじ27に螺合している。
【0031】
縦送り台25には、鉛直方向の砥石軸31が軸支され、この砥石軸の下端に砥石3が装着されている。砥石軸31の上端は、歯付ベルト33を介して砥石駆動モータ34に連結されている。
【0032】
ワーク軸28の軸心O及び砥石軸31の軸心は、横送り台21の移動方向と平行な同一鉛直面s上に位置している。図6に示したように、コンタリング方式では、制御器5で横送り台21の移動量(=砥石3の移動量)xとワーク軸28の回転角θとを関連付けて制御することにより、所望の平面形状の周縁加工を行う。
【0033】
横送り台21の定位置には、テーブル2上に搬入されたワークの画像を取得するためのカメラ4が設けられている。このカメラ4は、図6に示すように、その光軸が前記鉛直面sを通る位置に設けられている。
【0034】
極座標系の周縁加工装置では、制御器5で、テーブル2の中心O回りの回転角θと、テーブル中心Oを通るテーブル半径方向の工具3の位置xとを関連づけて制御することにより、ワーク1の周縁の加工を行っている。制御器5には、撮影箇所設定器51と、座標取得手段52と、タイミング設定器53と、寸法設定器54と、機械精度の計測手段55と、補正値を演算する演算式ないし演算表56と、機械精度の補正手段57とが設けられている。撮影箇所設定器51には、ワーク1の周縁の一方の辺上の2箇所P、Qと他方の辺上の3箇所A、B、Cを設定する。タイミング設定器53には、機械精度の計測を行うタイミング、例えば経過運転時間や加工ワーク数が設定される。寸法設定器54には、精度の計測手段55が計測するワーク寸法に対応する箇所の正規の寸法が登録される。
【0035】
連続加工中においてタイミング設定器53に設定されたタイミングに達すると、ワーク加工中であればそのワークが加工された後、テーブル2の回転と工具3の前記半径方向の移動とにより、当該方向に工具3を移動させる送り台に搭載したカメラ4で加工済ワーク1の外周の5点p、q及びa、b、cを含む画像P、Q及びA、B、Cを撮影し、その画像から当該各点の座標(例えばワーク中心を原点としてワークの長手方向と幅方向とをXY方向とする直角座標系における座標)を求める。ここで点p、q及びb、cは、ワーク1の対向する2辺11、12上のテーブル中心Oから等距離にある点であり、点aは、点b、cの中央の点aである。
【0036】
カメラ4で撮影した画像からこれらの点の座標を求める方法としては、例えば図2に示すように、ワーク1が正確な製品形状に加工されているとしたときの上記の各点にカメラの画像中心eが位置するようにテーブル2とカメラ4を移動してワークの画像を取得し、当該画像に映っている外周縁の画像41に画像中心eから引いた垂線との交点e’を計測対象の点p、q、a、b、cとして、その点の座標(カメラの光軸の座標に光軸からの交点の偏倚を加えた座標)を各点の座標とすればよい。
【0037】
このようにして点p、q及び点a、b、cの座標を求め、制御器5に登録した演算式により、点p、qを通る直線f(図4)の式を求め、他方の辺の各点a、b、cから直線fに下ろした垂線g、h、iと当該直線fとの交点a’、b’、c’の座標を求め、対向辺の各点a、b、cとそれらの交点a’、b’、c’の間隔La、Lb、Lcを演算する。そして、これらの間隔と、その本来あるべき寸法との差を外周縁の加工形状の誤差とする。この誤差から、予め制御器5に登録した演算式や演算表56を用いて、当該誤差を補正するための補正値を演算して、制御器5に機械精度の補正値として設定する。
【0038】
特許文献2にも記載されているように、極座標系の周縁加工装置では、機械精度やワークの搬入精度に誤差があると、ワークは図4に誇張して示すように、斜めに潰れた扇形の形状になる。図4で曲率の大きな円弧となっている辺11、12の形状は、主として工具の位置誤差の影響を受け斜めになる辺13、14の角度が主としてテーブルの回転角の誤差の影響を受ける。機械の熱変形や砥石の摩耗による誤差は、テーブル中心に対する工具の位置に影響を与え、テーブルの回転角にはあまり影響しないので、上記の方法で演算した補正値を用いて機械精度の補正値を設定してやれば、経時的な原因による加工精度の低下をほぼ補正することができる。
【0039】
なお、加工済ワークは、自動搬入されたワークであり、テーブル上への搬入誤差が存在している。従って、画像を取得する際のカメラの位置決めや座標の演算については、ワークの搬入誤差を補正して位置決め及び演算されることは言うまでもない。
【0040】
ワークの周縁加工(周縁の寸法精度を出すための加工)と面取加工とを行っているときは、加工精度を計測するために取得した各画像には、図2に示すように、ワーク外周線の画像41と面取面16と板材表面15との間にできる稜線17の画像47とが映っている。そこでこの画像における2本の線の1本である外周線の画像41に予め定めた間隔で2点s、tをとり、その両者を結ぶ直線と稜線の画像47上にとった点uから当該直線に下ろした垂線jの交点u’を求めて、点uとその交点u’との間隔dを面取幅の計測値として求めることができ、この面取幅の計測値を要求されている面取幅の値と比較することで周縁形状の加工精度の計測と同時に面取幅の加工精度の計測も行うことができる。なお、図2の例は、画像中心eから前記直線(外周線の画像41と一致している直線)に下ろした垂線jと稜線の画像47との交点に点uを取っており、点u’と前述した点e’とが同一点となっている。
【0041】
なお、辺11、12が直線辺であるときは、上記のようにして計測した差し渡し寸法La、Lb、Lcとそれらが本来あるべき寸法との差ΔLa、ΔLb、ΔLcから補正値を演算する演算式は、幾何学的に求めて制御器5に登録することができるが、辺11、12が円弧などの曲線辺である場合には、上記寸法差と工具の景及び位置精度との関係を予めテスト加工により求め、計測寸法La、Lb、Lcとの関係を演算表として制御器5に登録しておくことにより、補正値を求めるようにすればよい。
【符号の説明】
【0042】
1 加工済ワーク
4 カメラ
11 対向辺
12 対向辺
15 板材の表面
16 面取面
17 稜線
41 外周線の画像
47 画像
A、B、C、P、Q 画像
a、b、c、p、q 検出点
a’、b’、c’ 交点
d 面取幅
g、h、i、j 垂線
La、Lb、Lc 計測寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7