【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「微生物触媒による創電型廃水処理基盤技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の電極セルは、前記処理槽の第1の側面から前記処理槽の内部に向かって延び、前記第2の電極セルは、前記処理槽の前記第1の側面に対向する第2の側面から前記処理槽の内部に向かって延びており、
前記処理槽における前記流路は、水平な面内において蛇行している請求項10に記載の燃料電池システム。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明者が、ガス拡散電極を用いた複数の電池ユニットを接続したシステム構成について検討し、得られた知見を説明する。
【0015】
ガス拡散電極を正極とする各電池ユニットでは、ガス拡散電極の表面が気体相(例えば大気)と接し、負極の表面が被処理液と接するように配置されている。本発明者は、このような電池ユニットを、重力方向(鉛直方向)に配置し、被処理液が上方から順に電池ユニット内を流通する構成について検討した。この結果、下方に位置する電池ユニットにおいて水圧が上昇し、被処理液が多孔性のガス拡散電極へ侵入する可能性があることを見出した。また、被処理液がガス拡散電極内を通過して、外部(気体相側)へリークすることもある。これらの現象は、例えば、ガス拡散電極にかかる被処理液の水圧が、ガス拡散電極と接する気体相の圧力(例えば大気圧)よりも大きくなる場合に生じ得る。
【0016】
被処理液のガス拡散電極(正極)への浸入や被処理液のリークが生じると、正極と気体相(酸素)との界面、すなわち酸素還元反応点が減少するため、燃料電池の出力が低下するおそれがある。このように、ガス拡散電極を用いても、気体相中の酸素との反応が抑えられると、高い処理効率や発電効率が得られない可能性がある。
【0017】
なお、このような問題は、微生物の代謝機構を利用した燃料電池システムに限定されない。負極が液体と接し、かつ、正極にガス拡散電極を用いた燃料電池システムであれば同様の問題が生じ得る。
【0018】
本発明者は、上記の知見に基づいてさらに検討を重ねた。この結果、鉛直方向に上下に配置された2つの電池ユニットの間で、被処理液の水圧の上昇を抑制し得る新規な構成を見出した。これにより、水圧による被処理液のガス拡散電極内への侵入や外部へのリークを抑制できるので、処理効率や発電効率を高めることが可能になる。
【0019】
本発明の一態様の概要は以下のとおりである。
【0020】
本発明の一態様である燃料電池システムは、第1の電池ユニットと、前記第1の電池ユニットよりも鉛直方向において下方に位置する第2の電池ユニットとを含む、複数の電池ユニットと、前記第1の電池ユニットと第2の電池ユニットとを接続する第1の接続部を含む、少なくとも1つの接続部とを備えた燃料電池システムであって、前記複数の電池ユニットは、それぞれ、被処理液を流通させる流路を有する処理槽と、前記流路に前記被処理液を供給する液体供給口および前記流路から前記被処理液を排出する液体排出口と、負極と、少なくとも一部が多孔体である正極と、前記正極と前記負極との間に配置された非導電性のイオン透過膜とを備える、少なくとも1つの電極セルとを有し、前記少なくとも1つの電極セルは、前記負極が前記流路を流通する前記被処理液と接し、前記正極は気体相に露出するように配置されており、前記第1の接続部は、前記第1の電池ユニットにおける前記液体排出口から排出された前記被処理液を、前記第2の電池ユニットにおける前記液体供給口に流通させる接続路と、前記接続路における前記被処理液の移動に伴う気圧変動を抑制する気圧調整部とを有する。
【0021】
前記気圧調整部は、例えば、前記接続路を、前記接続路の内部空間の体積以上の体積を有する外部空間に連通させる開口部を含んでもよい。
【0022】
前記気圧調整部は例えば、前記接続路の内部空間に連通するように設けられた、膨張および収縮可能な袋状体を含んでもよい。
【0023】
前記気圧調整部は、例えば、前記接続路に配置された圧力調整弁を含んでもよい。
【0024】
前記外部空間の酸素分圧は、例えば0.2atm以下に設定されていてもよい。
【0025】
前記外部空間の窒素分圧は、例えば0.8atm以上に設定されていてもよい。
【0026】
前記第1の接続部は、例えば、前記接続路に供給される前記被処理液の量を制御する流通制御部をさらに備えていてもよい。
【0027】
前記流通制御部は、例えば、前記接続路を開閉可能な開閉部を含んでもよい。
【0028】
前記処理槽内の前記流路の水平方向の寸法は、例えば、前記流路の鉛直方向の寸法以上であってもよい。
【0029】
前記少なくとも1つの電極セルは、例えば、第1の電極セルおよび第2の電極セルを含み、前記第1の電極セルの前記負極と前記第2の電極セルの前記負極とは、前記流路を介して対向するように配置されていてもよい。
【0030】
前記第1の電極セルは、例えば、前記処理槽の第1の側面から前記処理槽の内部に向かって延び、前記第2の電極セルは、例えば、前記処理槽の前記第1の側面に対向する第2の側面から前記処理槽の内部に向かって延びており、前記処理槽における前記流路は、水平な面内において蛇行していていてもよい。
【0031】
前記複数の電池ユニットは、例えば、前記第2の電池ユニットよりも下方に配置された、前記被処理液を流通させる流路を有する他の電池ユニットをさらに含み、前記少なくとも1つの接続部は、例えば、前記他の電池ユニットの前記流路に接続された接続路を有する他の接続部をさらに含み、前記燃料電池システムは、例えば、前記第1の接続部における前記接続路と、前記他の電池ユニットにおける前記流路または前記他の接続部における前記接続路とを、前記第2の電池ユニットを介さずに連通させるバイパス流路と、前記第1の接続部における前記接続路を流通する前記被処理液の経路を、前記第2の電池ユニットの前記流路と前記バイパス流路との間で切り換える経路切り換え部とをさらに備えていてもよい。
【0032】
前記負極には、例えば、嫌気性微生物群が保持されていてもよい。
【0033】
本発明の一態様である燃料電池システム用モジュールは、電池ユニットと、前記電池ユニットに接続可能な接続部とを備え、前記電池ユニットは、被処理液を流通させる流路を有する処理槽と、前記流路に前記被処理液を供給する液体供給口および前記流路から前記被処理液を排出する液体排出口と、負極と、少なくとも一部が多孔体である正極と、前記正極と前記負極との間に配置された非導電性のイオン透過膜とを備える、少なくとも1つの電極セルとを有し、前記少なくとも1つの電極セルは、前記負極が前記流路を流通する前記被処理液と接し、前記正極は前記処理槽の外部に露出するように配置されており、前記接続部は、前記被処理液を流通させる接続路と、前記接続路における前記被処理液の移動に伴う気圧変動を抑制する気圧調整部とを有し、前記電池ユニットにおける前記液体供給口および前記液体排出口の少なくとも一方は、前記接続部における前記接続路と接続可能である。
【0034】
以下、本発明による燃料電池システムの実施形態を、図面を参照しながらより具体的に説明する。
【0035】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1の燃料電池システム100を示す模式図である。
【0036】
本実施の形態に係る燃料電池システム100は、第1の電池ユニット10Aと第1の電池ユニット10Aよりも鉛直方向(重力方向)において下方に位置する第2の電池ユニット10Bとを含む複数の電池ユニット、および、第1の電池ユニット10Aと第2の電池ユニット10Bとを接続する第1の接続部20Aを備えている。
【0037】
各電池ユニット10A、10Bは、処理槽3と電極セル2とを有している。
【0038】
処理槽3は、被処理液を流通させる流路8を内部に有している。また、処理槽3には、流路8に被処理液を供給する液体供給口11A、11Bと、流路8から被処理液を排出する液体排出口13A、13Bとが設けられている。
【0039】
電極セル2は、正極5と、負極6と、正極5と負極6との間に配置された非導電性のイオン透過膜7とを有している。正極5は、少なくとも一部が多孔体であり、多孔体の表面は、処理槽3の外部に露出し、気体相(例えば大気)と接している。一方、負極6は、流路8を流通する被処理液と接するように配置されている。正極5および負極6は、外部回路4に接続されている。
【0040】
第1の接続部20Aは、第1の電池ユニット10Aにおける液体排出口13Aから排出された被処理液を、第2の電池ユニット10Bにおける液体供給口11Bに流通させる接続路9を有している。従って、被処理液は、第1の電池ユニット10Aの流路8から排出された後、第1の接続部20Aの接続路9を通って、第2の電池ユニット10B内の流路8に供給される。
【0041】
第1の接続部20Aには、接続路9において被処理液の移動に伴う接続路9の気圧変動を抑制する気圧調整部が設けられている。これにより、接続路9に被処理液が流入する際に、接続路9に生じる気体相Gの気圧上昇を抑制することが可能になる。具体的には、この例では、気圧調整部として、接続路9を、接続路9の内部空間の体積以上の体積を有する外部空間に連通させる開口部15が設けられている。ここでいう外部は、大気空間であってもよい。気圧調整部の構成については後述する。
【0042】
なお、燃料電池システム100は、少なくとも2つの電池ユニット10A、10Bとそれらを接続する接続部20Aとを備えていればよく、さらに他の電池ユニットや接続部を有していてもよい。後述するように、例えば、鉛直方向に配置された3個以上の電池ユニットを含んでいてもよい。これらの電池ユニットのうち鉛直方向に上下に配置された2つの電池ユニット間に、それぞれ、接続部が設けられていてもよい。
【0043】
負極6のうち被処理液と接する表面(すなわち、流路8の内部空間と接する面)は嫌気性微生物を担持していてもよい。嫌気性微生物は、処理槽3の流路8を流通する被処理液に浮遊していてもよい。あるいは、負極6の表面は、嫌気性微生物の代わりに触媒材料を担持していてもよい。
【0044】
負極6は、導電性材料で構成される。具体的には、炭素材料を使用することができる。例えば、カーボンペーパー、カーボンフェルト、カーボンクロス、または活性炭シートであってもよい。また、負極6の材料は、導電性のよい金属であってもよい。例えば、アルミニウム、銅、ステンレス、ニッケル、又は、チタンであってもよい。
【0045】
また、負極6における被処理液と接する表面には、メディエーター分子が担持されていてもよい。被処理液の処理に嫌気性微生物による代謝機構を利用する場合、微生物の細胞内または最終電子受容体との間で電子の授受が行われる。メディエーター分子を負極6の表面に導入すると、メディエーターが最終電子受容体として作用し、かつ、電子を負極6へと受け渡す。このため、有機性物質の酸化分解速度を向上させることができる。なお、メディエーター分子は、処理槽3の流路8を通る被処理液に浮遊していてもよい。
【0046】
正極5は、導電性材料で構成され、少なくとも一部が多孔体である。正極5は、例えば、多孔質または織布状の材料からなり、電極全体が多孔性を有していてもよい。正極5の材料は、カーボンペーパー、カーボンフェルト、カーボンクロス、または活性炭シートなどの炭素材料であってもよい。また、正極5の材料は、導電性のよい金属メッシュであってもよい。例えば、アルミニウム、銅、ステンレス、ニッケル、またはチタンであってもよい。
【0047】
イオン透過膜7は、非導電性材料で構成される。イオン透過膜7として、具体的には、カチオン交換膜、アニオン交換膜、ガラス繊維膜、不織布、ろ紙を使用することができる。
【0048】
正極5の外部に露出した表面(「露出表面」と略する)は、酸素を含む気体相と接するように配置される。露出表面の少なくとも一部は多孔体の表面であってもよい。また、正極5の露出表面には酸素還元触媒が担持されていてもよい。これにより、負極6における有機性物質の酸化によって生じる電子および水素イオンと、正極5の露出表面と接する気体相に含まれる酸素との反応(酸素還元反応)が促進される。
【0049】
続いて、燃料電池システム100の動作を説明する。
【0050】
被処理液として、例えば、有機性物質、窒素含有化合物(例えばアンモニア)などの被処理成分を含有する液体を用いることができる。ここでは、有機性物質を含む電解液を用いた例を説明する。
【0051】
第1の電池ユニット10Aの液体供給口11Aから処理槽3に供給された被処理液は、処理槽3内の流路8を液体排出口13Aまで流通する。このとき、被処理液内の有機性物質の一部が、電極セル2の負極6の表面に担持された微生物により酸化分解される。負極6の表面では、酸化反応により水素イオン(H
+)および電子(e
-)が生成する。水素イオンは、イオン透過膜7を通って、正極5に移送される。電子は、外部回路4に放出される。一方、正極5の表面(処理槽3の外部に露出した表面)では、負極6側から移送された水素イオンと、気体中の酸素と、負極6から外部回路4を介して移動してきた電子とが反応し、酸素の還元反応が生じる。このような一連の電子化学反応により、電子が外部回路4を移動する際に電気エネルギーが取り出される。
【0052】
上記の反応によって、有機性物質の一部が微生物により分解された被処理液は、液体排出口13Aから排出される。この後、第1の接続部20Aの接続路9を通って、第2の電池ユニット10Bの液体供給口11Bに供給される。被処理液内に残る有機性物質の一部は、第2の電池ユニット10Bの処理槽3内の流路8において分解される。このようにして、被処理液の有機性物質を複数段階で酸化分解することが可能となる。電池ユニットの個数をさらに増加させることにより、処理量および処理能力をさらに高めることができる。
【0053】
本実施形態では、被処理液を、接続路9の一部に気体相Gが存在するように、接続路9を流通させる。このため、
図2(a)に模式的に示すように、燃料電池システム100の動作中、第1の接続部20Aの接続路9内には、気体相Gと、被処理液による液体相Lとが形成される。気体相Gと液体相Lとの界面の水圧は、気体相Gの気圧と等しくなる。前述のように、第1の接続部20Aは、被処理液の流入による気体相Gの気圧上昇が抑制される構造を有しているので、気体相Gよりも下方に位置する被処理液の水圧を低減することが可能である。
【0054】
この例では、接続路9は、大気空間に通じる開口部15を有しているので、気体相Gの気圧は、例えば大気圧近傍まで低下し得る。この場合、接続路9内の気体相Gと液体相Lとの界面(水面)の水圧は大気圧と略等しくなる。従って、第2の電池ユニット10Bの流路8を流通する被処理液の水圧は、接続路9内にある水面(液体相Lと気体相Gとの界面)を基準とした第2の電池ユニット10Bの流路8の深さh1に比例して大きくなる。深さh1は、接続路9の高さ未満となる。このため、第2の電池ユニット10Bの流路8における水圧が増大して、被処理液が電極セル2に侵入することを抑制できる。また、処理能力を高めるため、さらに多数の電池ユニットを鉛直方向に配置した場合でも、上記水面を基準とする下方に位置する電池ユニットにおける流路の深さh1を、接続路9の高さ未満に抑えることができる。従って、下方にある複数の電池ユニットのそれぞれにおいて、被処理液の水圧の増大による被処理液の正極5への侵入や外部の気体相への漏れを抑制することが可能となる。
【0055】
これに対し、比較のため、
図2(b)を参照しながら、接続路9に気圧調整部が設けられていない例(比較例)を説明する。
図2(b)に示す比較例の燃料電池システムでは、水圧は、上方にある電池ユニットの流路における被処理液の水面を基準とした、下方の電池ユニットの流路の深さh2に比例して増大する。処理能力を高めるため、さらに多数の電池ユニットを鉛直方向に配置した場合には、下方に存在する電池ユニットに加わる水圧は、最も高い位置に配置された電池ユニットの水面を基準とした深さに比例して増大する。図示していないが、システムの動作中に接続路9内に気体相が形成された場合でも、気体相における気圧上昇を抑制できないので、下方の電池ユニット内の水圧の上昇を抑えることは困難である。従って、下方に配置された電池ユニット内では、被処理液の水圧が極めて大きくなり、被処理液が電極セル2における正極5の多孔体に侵入したり、外部に漏れるなどの問題が生じるおそれがある。
【0056】
このように、本実施の形態の燃料電池システム100では、ガス拡散電極を正極5に用いた第1および第2の電池ユニット10A、10Bを、気圧調整部を有する第1の接続部20Aを介して、鉛直方向に配置する。ガス拡散電極を用いているので、被処理液中の有機性物質などの酸化および発電を高い効率で行うことができる。また、複数の電池ユニット10A、10Bを鉛直方向に配置できるので、燃料電池システム100を設置する面積の増大を抑えつつ、被処理液の処理能力および発電出力を高めることが可能である。さらに、
図2を参照しながら説明したように、鉛直方向において下方に位置する電池ユニットにおいても、流路を流れる被処理液の水圧の増大を抑えることができる。このため、正極5への被処理液の侵入や外部への漏れに起因する発電出力の低下を抑制できる。従って、大型化の可能な、高効率の燃料電池システム100を実現することが可能となる。
【0057】
<気圧調整部の構成>
次に、本実施形態における第1の接続部20Aに設けられる気圧調整部の構成を説明する。
【0058】
図1に示す第1の接続部20Aには、気圧調整部として、接続路9を大気空間などの外部空間に連通させる開口部15が設けられている。開口部15の位置は特に限定されないが、接続路9の上方(鉛直方向において上方)に配置されていると、接続路9に形成される気体相Gと外部空間とをより確実に連通させることができる。例えば、開口部15は、第1の接続部20Aの上面または側面の上部に配置されていてもよい。また、開口部15を介して連通させる外部空間は、大気空間に限定されない。例えば、接続路9は、燃料電池システム100全体または各電池ユニットを収容する収容体の内部に連通するように構成されていてもよい。
【0059】
本実施形態における気圧調整部の構成は、接続路9を外部空間に連通させる構成に限定されない。
図3(a)および(b)は、他の気圧調整部を備えた第1の接続部20Aを例示する断面図である。
【0060】
図3(a)に示すように、気圧調整部として、膨張および収縮可能な袋状体16が、接続路9の内部空間に連通するように設けられていてもよい。袋状体16は、システムの動作中に接続路9に形成される気体相Gと接するように配置される。例えば第1の接続部20Aの上方に配置されていてもよい。袋状体16は、伸縮可能な材料から構成される。伸縮可能な材料として、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム等の合成ゴム、スチレン系、オレフィン系等の熱可塑性エラストマーなどが用いられ得る。これにより、接続路9内に形成される気体相Gの体積を、袋状体16を膨張させて得られる空間の分だけ増大させることができる。この結果、被処理液の流入による気体相Gの気圧上昇が抑制される。
【0061】
あるいは、
図3(b)に示すように、気体調整部として、接続路9に圧力調整弁17を設けてもよい。圧力調整弁17は、接続路9内に形成される気体相Gの気圧変動を抑制するように構成される。従って、被処理液の流入による気体相Gの気圧上昇を抑制することが可能である。
【0062】
<被処理液の物理的遮断構造>
本実施形態の燃料電池システム100は、動作時に、第1の電池ユニット10A内の流路8を流通する被処理液と、第2の電池ユニット10B内の流路8を流通する被処理液とを、接続路9内の気体相Gによって物理的に遮断し得るように構成されていてもよい。
【0063】
燃料電池システム100の動作時に被処理液をより確実に物理的に遮断するために、例えば、第1の接続部20Aの鉛直方向の寸法(高さ)を十分大きくし、被処理液を自由落下により接続路9を移動させてもよい。このとき、接続路9全体が被処理液(液体相L)で満たされないように、例えば、被処理液の流量や接続路9の流通方向に垂直な断面積などを適宜調整してもよい。
【0064】
あるいは、第1の接続部20Aは、接続路9に供給される被処理液の量を制御する流量制御部を有していてもよい。流通制御部は、被処理液の供給を停止(すなわち被処理液の流通を遮断)できるように構成されていてもよい。例えば、
図4に示すように、第1の接続部20Aは、接続路9を開閉可能な開閉部21を有していてもよい。開閉部21は、開閉部21が閉じたときに、第1の電池ユニット10Aの流路8から第2の電池ユニット10Bの流路8への被処理液の流通を遮断し、開閉部21が開いたときに被処理液が流通するように構成されていてもよい。流通制御部として、例えば、電磁弁、水車、ししおどしなどを用いることができる。これにより、電池ユニット10A、10B内を流通する被処理液をより確実に物理的に遮断できる。
【0065】
各電池ユニット10A、10B内の被処理液を物理的に遮断するように動作すると、次のような利点が得られる。接続路9に気体相Gを確実に形成できるので、気体相Gの気圧を調整することにより、被処理液の水圧上昇を抑制できる。また、被処理液が遮断されると、2つの電池ユニット10A、10B間の被処理液を介した電気的接続が遮断されることから、各電池ユニット10A、10Bを、それぞれ、独立した1個の電池としてみなすことが可能となる。従って、各電池ユニット10A、10Bの外部回路4を、電池システムとして最大の出力になるように直列もしくは並列に接続することができる。
【0066】
<その他の電池ユニットおよび接続部の構成>
本実施形態における電池ユニット10A、10Bでは、処理槽3内に形成される流路8の水平方向の寸法は、鉛直方向の寸法以上であってもよい。水平方向の寸法とは、例えば、各処理槽3内の流路8の長さおよび最大幅を指し、鉛直方向の寸法とは、流路8の高さを指す。このような構成によると、流路8の鉛直方向の寸法を小さく抑えることができるので、各電池ユニットにかかる水圧をより低く抑えることができる。なお、図示する例では、処理槽3の内部空間全体が流路8に相当するため、処理槽3の内部空間の水平方向の寸法は、鉛直方向の寸法以上であれば、上記効果が得られる。
【0067】
処理槽3内の流路8は、被処理液を流通させたときに気体相の形成が抑制される構造を有していてもよい。これにより、例えば嫌気性微生物を利用して被処理液の処理を行う場合には、被処理液と空気(酸素)との接触を抑制できるので、処理槽3内における好気性微生物の繁殖を抑制できる。流路8内に気体相が形成されることを抑制するため、各電池ユニット10A、10Bにおいて、液体供給口11A、11Bは、液体排出口13A、13Bよりも鉛直方向において下方に設けられていてもよい。
【0068】
図1に示す例では、第1および第2の電池ユニット10A、10Bの処理槽3内では、被処理液は主に水平な面(重力方向に垂直な面)内で流通し、第1の接続部20A内では、被処理液は主に鉛直方向に流通するように構成されている。また、鉛直上方から見たとき、第1および第2の電池ユニット10A内の被処理液の流通方向は、互いに逆向きになるように構成されている。なお、被処理液の流通方向はこの例に限定されない。例えば、処理槽3内の流路8が水平な面に対して傾斜していてもよい。
【0069】
<3個以上の電池ユニットを備えた燃料電池システムの構成>
上述したように、本実施形態の燃料電池システムは、鉛直方向に配置された3個以上の電池ユニットを含んでいてもよい。これらの電池ユニットのうち鉛直方向に上下に配置された2つの電池ユニット間に、それぞれ、接続部が設けられていてもよい。
【0070】
図5は、3個以上の電池ユニットを備えた燃料電池システム200を例示する断面図である。
図5において、
図1に示す燃料電池システム100と同様の構成要素には同じ参照符号を付し、説明を省略する。
【0071】
燃料電池システム200は、鉛直方向において上方から第1の電池ユニット10A、第2の電池ユニット10B、第3の電池ユニット10C、第4の電池ユニット10Dおよび第5の電池ユニット10Eが配置されている。図示していないが、各電池ユニットは外部回路に接続されている。なお、ここでは5個の電池ユニットが配置されているが、電池ユニットの個数はこれに限定されない。第1および第2の電池ユニット10A、10Bは第1の接続部20Aによって接続されている。同様に、第2および第3の電池ユニット10B、10Cは第2の接続部20B、第3および第4の電池ユニット10C、10Dは第3の接続部20C、第4および第5の電池ユニット10D、10Eは第4の接続部20Dによってそれぞれ接続されている。各電池ユニット10A〜10Eの構成は、
図1を参照しながら前述した第1および第2の電池ユニット10A、10Bの構成と同様であってもよい。また、各接続部20A〜20Dの構成は、
図1を参照しながら前述した第1の接続部20Aの構成と同様であってもよい。
【0072】
燃料電池システム200によると、
図1に示す燃料電池システム100と同様に、高い効率を確保しつつ、大型化により被処理液の処理量や発電出力を向上できる。電池ユニットの個数を増加させることにより、所望の規模の燃料電池システム200を構築できる。
【0073】
燃料電池システム200は、第1の電池ユニット10A内の流路8を流れる被処理液を、その下方にある1個または複数の電池ユニットを経由させずに、さらに下方にある他の電池ユニットに移送させ得るバイパス流路23Aをさらに有していてもよい。図示していないが、第1の接続部20Aにおける接続路9を流通する被処理液の経路を、第2の電池ユニット10Bの流路8とバイパス流路23Aとの間で切り換える経路切り換え部を有していてもよい。これにより、例えば何れか1つの電池ユニットに問題が生じた場合でも、その電池ユニットへの被処理液の供給を停止して、他の電池ユニットのみを用いて燃料電池システム200を動作させることができる。従って、電池ユニットのメンテナンスもしくは交換を行うことが容易になる。
【0074】
図5に示すように、バイパス流路23Aは、第1の接続部20Aにおける接続路9と第2の接続部20Bにおける接続路9とを、第2の電池ユニット10Bを介さずに接続するように設けられていてもよい。あるいは、バイパス流路23Aは、第1の接続部20Aにおける接続路9と第3の電池ユニット10Cにおける流路8とを、第2の電池ユニット10Bおよび第2の接続部20Bを介さずに接続するように設けられていてもよい。同様に、第2の接続部20Bにおける接続路9と、第3の接続部20Cにおける接続路9または第4の電池ユニット10Dにおける流路8とを、少なくとも第3の電池ユニット10Cを介さずに接続するバイパス流路23Bが設けられていてもよい。また、第3の接続部20Cにおける接続路9と第4の接続部20Dにおける接続路9または第5の電池ユニット10Eにおける流路8とを、少なくとも第4の電池ユニット10Dを介さずに接続するバイパス流路23Cが設けられていてもよい。
【0075】
なお、バイパス流路23Aは、第1の接続部20Aと、第2の電池ユニット10Bよりもさらに下方に配置された電池ユニット10C〜10Eまたはその電池ユニットに接続された接続部20B〜20Dの何れかとを接続するように配置されていればよい。例えば、第2の電池ユニット10Bを含む複数の電池ユニットを介さずに、さらに下方にある電池ユニットに被処理液を移送するように構成されていてもよい。例えば、第1の接続部20Aと第3の接続部20Cとを、第2および第3の電池ユニット10B、10Cを経由させずに接続するバイパス流路が設けられていてもよい。このようなバイパス流路を燃料電池システム200に設けると、バイパス流路23Aよりもバイパス流路の長さを短縮できる利点がある。
【0076】
図5に示す燃料電池システム200では、被処理液が、鉛直方向において最も上方に位置する電池ユニット10A内の流路8から、最も下方に位置する電池ユニット10E内の流路8まで順に流通するように構成されている。なお、燃料電池システムを構成する複数の電池ユニットのうち一部の電池ユニットが鉛直方向に配置されていればよく、全ての電池ユニットが鉛直方向に順に配置されていなくてもよい。例えば、複数の電池ユニットを鉛直方向に配置した電池ユニット群を複数個形成し、これらの電池ユニット群を水平方向に並べて燃料電池システムを構成していてもよい。あるいは、複数の電池ユニットを水平方向に並列に配置した電池ユニット群を複数個形成し、これらの電池ユニット群を鉛直方向に配置してもよい。
【0077】
さらに、複数の電池ユニットのうち少なくとも2つが上述したような電池ユニット10A、10Bと同様の構成を有し、これらを接続する接続部が第1の接続部20Aと同様の構成を有していればよい。従って、例えば電池ユニットを連結させる接続部が全て気圧調整部を有している必要はなく、少なくとも1つの接続部に気圧調整部が設けられていれば、水圧上昇を抑制する効果が得られる。
【0078】
(実施の形態2)
本発明による燃料電池システムの実施の形態2は、接続路9における気体相Gの酸素分圧を0.2atm以下に抑える点で、
図1に示す実施の形態1の燃料電池システム100と異なる。
【0079】
図6は、本実施形態の燃料電池システム300を例示する断面図である。
図1に示す燃料電池システム100と同様の構成要素には同じ参照符号を付し、説明を省略する。
【0080】
燃料電池システム300は、収容体25の内部に収容されている。収容体25は密閉されている。収容体25の内部の酸素分圧は0.2atm以下となるように調節されている。収容体25の内部の窒素分圧を0.8atm以上とすることにより、酸素分圧を0.2atm以下に抑えてもよい。また、燃料電池システム300の各電池ユニット10A、10Bでは、例えば嫌気性微生物の代謝機構を利用して、被処理液中の被処理物質の分解および発電を行う。
【0081】
燃料電池システム300では、第1の接続部20Aの接続路9は、開口部15によって、収容体25の内部空間と連通していてもよい。これにより、以下に説明するように、接続路9内における酸素の溶解を抑制する効果が得られる。
【0082】
前述のように、燃料電池システム300を動作させると、接続路9には、気体相Gと液体相Lとが形成される。気体相Gと液体相Lとの界面は、気体相Gの気圧と等しい水圧を有する。この界面を通じて、気体相Gの酸素が被処理液へ溶解する。ヘンリーの法則に基づき、気体相Gにおける酸素分圧が高いほど、気体相Gに接する被処理液に溶解する酸素の量が増える。被処理液に溶解する酸素の量が増えると、被処理液中で好気性微生物が繁殖し、負極6の表面を覆うことにより電池出力が低下してしまう。本実施形態では、気体相Gの酸素分圧を、大気中の酸素分圧0.21atmよりも小さい0.2atm以下にできるため、気体相Gと被処理液の界面からの酸素の溶解を抑制することが可能である。
【0083】
なお、接続路9と連通し得る外部空間の酸素分圧が0.2atm以下であれば、上記効果が得られる。例えば、第1の接続部20Aは、接続路9に設けられた圧力調整弁などの圧力調整部を有し、圧力調整部により気体相Gの酸素分圧を局所的に0.2atm以下に制御するように構成されていてもよい。この場合、燃料電池システム300は、収容体25で包囲されている必要はなく、大気空間中に配置されていてもよい。
【0084】
また、燃料電池システム300では、各電池ユニット10A、10Bの多孔性の正極5は、収容体25の内部空間、すなわち酸素分圧が0.2atm以下の気体相と接している。これにより、以下に説明するように、流路8内における酸素の溶解を抑制する効果が得られる。
【0085】
正極5では、正極5と接する気体相中に存在する酸素と、負極6から移動してきた水素および電子との反応が行われる。このとき、酸素量が多すぎると、反応に使われなかった酸素が、多孔性の正極5を透過して負極6に到達する可能性がある。嫌気性微生物を利用して被処理液の処理を行う場合には、過剰な酸素が負極6に達すると、被処理液内で好気性微生物が繁殖し、出力を低下させる可能性がある。これに対し、本実施形態では、正極5の表面と接する気体相の酸素分圧は0.2atm以下に抑えられている。このため、多孔性の正極5を透過して負極6に到達する酸素の量を低減でき、好気性微生物の繁殖に伴う出力低下をより効果的に抑制することができる。
【0086】
なお、正極5と接する気体相の酸素分圧が0.2atm以下であれば、上記効果が得られる。従って、燃料電池システム300全体が収容体25で包囲されている必要はなく、例えば各電池ユニット10A、10Bのみが酸素分圧の低い空間内に配置されていてもよい。
【0087】
ただし、
図6に示すように、燃料電池システム300における各電池ユニット10A、10Bの正極5と、第1の接続部20Aの接続路9とを、共通の酸素分圧の低い空間(ここでは収容体25の内部空間)に接触させることにより、接続路9および流路8の両方で生じる酸素の被処理液への溶解を抑制できる。従って、燃料電池システム300の酸素に起因する出力低下をより効果的に抑制できる。
【0088】
本実施形態の燃料電池システム300においても、実施の形態1と同様に、接続路9を開閉する開閉部が設けられていてもよい。また、
図5に例示しているように、3個以上の電池ユニットを鉛直方向に配置した構成を有していてもよい。
【0089】
(実施の形態3)
本発明による燃料電池システムの実施の形態3は、各電池ユニット10A、10Bが複数の電極セルを有している点で、
図1に示す実施の形態1の燃料電池システム100と異なる。
【0090】
図7は、本実施形態の燃料電池システム400を例示する断面図である。
図1に示す燃料電池システム100と同様の構成要素には同じ参照符号を付し、説明を省略する。
【0091】
燃料電池システム400では、各電池ユニット10A、10Bは、第1の電極セル2Uおよび第2の電極セル2Lを備えている。第1の電極セル2Uの負極6と第2の電極セル2Lの負極6とは、流路8を介して対向するように配置されている。これにより、各電池ユニット10A、10Bの体積あたりの正極5及び負極6の面積を増加させることができるので、各電池ユニット10A、10Bの電池出力を向上できる。
【0092】
図7に示す例では、各電池ユニット10A、10Bの処理槽3の上面に第1の電極セル2U、処理槽3の底面に第2の電極セル2Lが配置され、これらの電極セル2U、2Lの間に流路8が形成されている。流路8を流れる被処理液は、電極セル2U、2Lの負極6の表面と接する。
【0093】
なお、第1および第2の電極セル2U、2Lは、処理槽3の対抗する側面にそれぞれ配置されていてもよい。また、各電池ユニット10A、10Bに、3個以上の電極セルが設けられていてもよい。
【0094】
図8(a)は、本実施形態の他の燃料電池システム500を例示する断面図である。
図8(b)は、燃料電池システム500における電極セル部30の拡大断面図である。また、
図8(c)および(d)は、それぞれ、燃料電池システム500における電池ユニット10Aを例示する斜視図である。
【0095】
燃料電池システム500における各電池ユニット10A、10Bは、複数の電極セル部30(1)〜30(4)を有している。電極セル部の個数は特に限定されず、任意に選択され得る。
【0096】
各電極セル部30(1)〜30(4)は、
図8(b)に示すように、処理槽3の外部にある空間と連通した空隙(エアポケット)31と、その両側に配置された第1および第2の電極セル2a、2bとを有している。電極セル2aの正極5と、電極セル2bの正極5とは、空隙31を介して対向するように配置されている。また、電極セル2a、2bは、正極5が気体相(空隙31)に露出し、負極6が処理槽3内の流路8を流れる被処理液と接するように配置されている。
【0097】
図8(c)に示すように、これらの電極セル部のうち一部の電極セル部30(1)、30(3)は、処理槽3の第1の側面から処理槽3の内部に向かって延び、他の電極セル部30(2)、30(4)は、処理槽3における第1の側面に対向する第2の側面から処理槽3の内部に向かって延びている。各電極セル部の空隙31は、処理槽3の第1または第2の側面において外部と通じている。あるいは、
図8(d)に示すように、各電極セル部の空隙31は、処理槽3の上面(または底面)において外部と通じていてもよい。
【0098】
第1の側面から延びる電極セル部30(1)、30(3)と、第2の側面から延びる電極セル部30(2)、30(4)とは、処理槽3の液体供給口11Aと液体排出口13Aとの間に交互に配置されていてもよい。各電極セル部30(1)〜30(4)は、水平な面において、処理槽3の液体供給口11Aと液体排出口13Aとを結ぶ直線に対して、略垂直に延びていてもよい。被処理液は、処理槽3の内部空間において、電極セル部30(1)〜30(4)の間を流通してもよい。この場合、処理槽3における流路8は、水平な面内において蛇行してもよい。
【0099】
燃料電池システム500によると、各電池ユニット10A、10Bの体積あたりの正極5及び負極6の面積を増加させることができるので、各電池ユニット10A、10Bの電池出力を向上させることができる。
【0100】
図8に示す例では、電極セル部30(1)〜(4)において、空隙31の両側に2つの電極セル2a、2bが配置されているが、空隙31と接するように少なくとも1個の電極セルが配置されていればよい。
【0101】
なお、処理槽3が少なくとも2つの電極セルを有し、一方の電極セル(例えば電極セル部30(1)の電極セル2b)が処理槽3の第1の側面から処理槽3の内部に向かって延び、他方の電極セル(例えば電極セル部30(2)の電極セル2a)が処理槽3の第1の側面に対向する第2の側面から処理槽3の内部に向かって延びていれば、上記の効果が得られる。
【0102】
本実施形態の燃料電池システム400、500においても、実施の形態1および2と同様に、接続路9を開閉する開閉部が設けられていてもよい。また、3個以上の電池ユニットを鉛直方向に配置した構成を有していてもよい。さらに、燃料電池システム400、500は収容体25の内部に配置されていてもよい。
【0103】
(実施の形態4)
本発明による実施の形態4は、上述したような燃料電池システムを構成可能なモジュール(以下、「燃料電池システム用モジュール」と称する。)である。
【0104】
図9は、本実施形態の燃料電池システム用モジュール600を例示する断面図である。燃料電池システム用モジュール600は、電池ユニット10と、電池ユニット10に接続可能な接続部20とを備える。電池ユニット10および接続部20は、それぞれ、前述の実施の形態1における電池ユニット10A、10Bおよび第1の接続部20Aと同様の構成を有していてもよい。
【0105】
電池ユニット10は、被処理液を流通させる流路8を有する処理槽3と、流路8に被処理液を供給する液体供給口11および流路8から被処理液を排出する液体排出口13と、少なくとも1つの電極セル2とを備える、電極セル2は、負極6と、少なくとも一部が多孔体である正極5と、正極5と負極6との間に配置された非導電性のイオン透過膜7とを有している。電極セル2は、負極6が流路8を流通する被処理液と接し、正極5が処理槽3の外部において気体相に露出するように配置されている。
【0106】
接続部20は、被処理液を流通させる接続路9と、接続路9における被処理液の移動に伴う気圧変動を抑制する気圧調整部とを有している。気圧調整部は、図示するように、外部空間と接続路9とを連通させる開口部15であってもよい。外部空間は、接続路9の内部空間の体積以上の体積を有する外部空間であってもよく、例えば大気空間であってもよい。あるいは、気圧調整部は、
図3を参照しながら上述したように、膨張および収縮可能な袋状体や圧力調整弁であってもよい。
【0107】
本実施形態では、電池ユニット10における液体供給口11および液体排出口13の少なくとも一方は、接続部20における接続路9と接続可能に構成されている。
【0108】
接続部20は、接続路9に被処理液を供給する流入口41と、接続路9から被処理液を排出する流出口43とを有していてもよい。電池ユニット10の液体排出口13は、接続部20の流入口41に接続可能であり、電池ユニット10の液体供給口は、接続部20の流出口43に接続可能であってもよい。
【0109】
また、本実施形態の燃料電池システム用モジュールが備える電池ユニットの数は1つに限らない。例えば、燃料電池システム用モジュールが2つの電池ユニットと1つの接続部20とを備え、2つの電池ユニット10における液体排出口13のそれぞれが、1つの接続部20における接続路9と接続可能に構成されていてもよい。
【0110】
また、本実施形態の燃料電池システム用モジュールが備える接続部の数は1つに限らない。例えば、燃料電池システム用モジュールが1つの電池ユニットと2つの接続部20とを備え、1つの電池ユニット10における液体供給口11が2つの接続部20のうちの一方における接続路9に、1つの電池ユニット10における液体排出口13が、2つの接続部20のうち他方における接続路9に接続可能に構成されていてもよい。
【0111】
燃料電池システム用モジュール600を複数個接続することにより、任意の処理能力および出力を有する燃料電池システムを容易に構成することが可能になる。例えば燃料電池システム用モジュール600を用いて、前述した実施形態の燃料電池システム100〜500を構成することができる。
【0112】
接続部20は、他の流入口42および他の流出口44をさらに有していてもよい。3個以上の燃料電池システム用モジュール600を鉛直方向に配置して燃料電池システムを構成する場合、接続部20の他の流出口44と、下方の接続部20の他の流入口42とを繋ぐようにバイパス流路を形成することも可能である。図示するように、接続部20の流入口41、42は、例えば、燃料電池システムを構成した際に、流出口44、45よりも鉛直方向において上方に位置するように設けられていてもよい。
【0113】
なお、
図9に示す例では、電池ユニット10および接続部20は、
図1に示す電池ユニット10A、第1の接続部20Aと同様の構成を有するが、代わりに他の実施の形態と同様の構成を有していてもよい。例えば、接続部20は、
図3に示すような他の気圧調整部や、電磁弁などの流量制御部を備えていてもよい。また、電池ユニット10は、
図7および
図8に例示するように、複数の電極セルを有していてもよい。