特許第6128981号(P6128981)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6128981ポリオレフィン系樹脂発泡シートの製造方法及びポリオレフィン系樹脂発泡シートロール状物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6128981
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】ポリオレフィン系樹脂発泡シートの製造方法及びポリオレフィン系樹脂発泡シートロール状物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/14 20060101AFI20170508BHJP
【FI】
   C08J9/14CES
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-127897(P2013-127897)
(22)【出願日】2013年6月18日
(65)【公開番号】特開2015-979(P2015-979A)
(43)【公開日】2015年1月5日
【審査請求日】2016年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 聡
(72)【発明者】
【氏名】青木 健
(72)【発明者】
【氏名】田口 亮
【審査官】 福井 弘子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−033136(JP,A)
【文献】 特開平10−058511(JP,A)
【文献】 米国特許第05411689(US,A)
【文献】 特開2007−238779(JP,A)
【文献】 特表平06−507129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00−9/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
見掛け密度10〜200kg/m、平均厚み3.5mm以下のポリオレフィン系樹脂発泡シートの製造方法であって、ポリオレフィン系樹脂と炭素数3〜6の脂肪族炭化水素とを含有する発泡性樹脂溶融物を押出発泡して得られる、炭素数3〜6の脂肪族炭化水素を含有し、脂肪酸エステル、脂肪族アミン、及び脂肪酸アミドから選択される少なくとも1以上の収縮防止剤を実質的に含まないシート状発泡体を、加熱雰囲気下で熱処理することにより、熱処理後のポリオレフィン系樹脂発泡シート中の前記炭素数3〜6の脂肪族炭化水素の含有量を0.05質量%以下に減少させることを特徴とするポリオレフィン系樹脂発泡シートの製造方法。
【請求項2】
熱処理後のポリオレフィン系樹脂発泡シート中の前記炭素数3〜6の脂肪族炭化水素の含有量を0.02質量%以下に減少させることを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂発泡シートの製造方法。
【請求項3】
前記シート状発泡体の独立気泡率が15〜63%であり、前記シート状発泡体に熱風を当てることにより熱処理することを特徴とする請求項1又は2に記載のポリオレフィン系樹脂発泡シートの製造方法。
【請求項4】
前記シート状発泡体が発泡層と樹脂層とを有する多層構造であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡シートの製造方法。
【請求項5】
ポリオレフィン系樹脂と炭素数3〜6の脂肪族炭化水素とを含有する発泡性樹脂溶融物を押出発泡して得られる、炭素数3〜6の脂肪族炭化水素を含有するシート状発泡体を、一旦ロール状に巻き取り、これを展開してなるシート状発泡体に請求項1から4のいずれか一項に記載の熱処理を行うことを特徴とするポリオレフィン系樹脂発泡シートの製造方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡シートをロール状に巻き取ることを特徴とするポリオレフィン系樹脂発泡シートロール状物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡シートの製造の際に用いられる炭素数3〜6の脂肪族炭化水素の残存量を低減させたポリオレフィン系樹脂発泡シートの製造方法、及びポリオレフィン系樹脂発泡シートロール状物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン系樹脂発泡シートは、その緩衝性を生かして、主に緩衝材や梱包材として使用されている。
【0003】
特に近年では、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ等の画像表示機器等のガラスパネル用の板ガラスの搬送時に、板ガラス間に挟んで板ガラス表面の傷付きを防止できる薄手の緩衝材として開発され、好適に用いられている(例えば、特許文献1、2を参照)。
【0004】
このポリオレフィン系樹脂発泡シートは、通常、ポリオレフィン系樹脂に脂肪族炭化水素等の発泡剤を含有させた発泡性樹脂溶融物を、押出装置を用いてシート状に押出発泡させて製造される。そして、これらのポリオレフィン系樹脂発泡シートは製造後、ロール状物として保管され出荷される(例えば、特許文献3、4を参照)。
【0005】
このように製造された、製造直後のポリオレフィン系樹脂発泡シートの気泡や樹脂中には、発泡剤として用いた脂肪族炭化水素等が残存している。そして、この脂肪族炭化水素は、通常、保管している段階で発泡シートから徐々に抜けるとともに、空気が侵入してガス置換がおこる。しかしながら、ガス置換が進んで脂肪族炭化水素の残存量が微量となった場合には、さらに残存量を低減させようとするとガス置換に多大な時間をかける必要がある。
【0006】
一方、近年、ポリオレフィン系樹脂発泡シートは、ロール状に巻き取った状態で輸出されることが多くなってきている。また、輸出製品として出荷する際にはコンテナ等の密閉空間内に長時間載置されることとなるが、発泡シート中の脂肪族炭化水素と空気との置換が十分に行われていない状態でコンテナ等の密閉空間に載置した場合には、密閉空間内でガス置換が進行し、その結果、密閉空間内の脂肪族炭化水素濃度が上昇するおそれがある。
【0007】
なお、ポリオレフィン系樹脂発泡シートを製造する際に、発泡剤として用いられる脂肪族炭化水素としては、通常、可燃性ガスであるブタン等が用いられる。密閉空間内でガス置換が進行すると、密閉空間内のブタン濃度が上昇して爆発限界濃度範囲内に達する可能性がある。
【0008】
そのため、ポリオレフィン系樹脂発泡シートや該発泡シートのロール状物を輸出する場合には、製造後、長時間保管して養生し、可燃性ガスのブタンの残存量をさらに微量なものとする必要があった。また、ロール状に巻き取ったロール状物の中心部分のポリオレフィン系樹脂発泡シート中に残存するブタンは、特にガス置換が起こり難いといった問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−181933号公報
【特許文献2】特開2007−262409号公報
【特許文献3】特開2007−238779号公報
【特許文献4】特開2009−62442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、かかる課題を解消するためになされたものであって、押出発泡後のシート状ポリオレフィン系樹脂発泡体、また、押出発泡後に一旦ロール状に巻き取って保管しておいたシート状ポリオレフィン系樹脂発泡体ロール状物について、シート状ポリオレフィン系樹脂発泡体中に残存する、発泡剤として用いた脂肪族炭化水素の量を一定量以下とする、ポリオレフィン系樹脂発泡シートの製造方法、及び該発泡シートロール状物の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
<1>見掛け密度10〜200kg/m、平均厚み3.5mm以下のポリオレフィン系樹脂発泡シートの製造方法であって、ポリオレフィン系樹脂と炭素数3〜6の脂肪族炭化水素とを含有する発泡性樹脂溶融物を押出発泡して得られる、炭素数3〜6の脂肪族炭化水素を含有し、脂肪酸エステル、脂肪族アミン、及び脂肪酸アミドから選択される少なくとも1以上の収縮防止剤を実質的に含まないシート状発泡体を、加熱雰囲気下で熱処理することにより、熱処理後のポリオレフィン系樹脂発泡シート中の前記炭素数3〜6の脂肪族炭化水素の含有量を0.05質量%以下に減少させることを特徴とするポリオレフィン系樹脂発泡シートの製造方法。
<2>熱処理後のポリオレフィン系樹脂発泡シート中の前記炭素数3〜6の脂肪族炭化水素の含有量を0.02質量%以下に減少させることを特徴とする<1>に記載のポリオレフィン系樹脂発泡シートの製造方法。
<3>前記シート状発泡体の独立気泡率が15〜63%であり、前記シート状発泡体に熱風を当てることにより熱処理することを特徴とする<1>又は<2>に記載のポリオレフィン系樹脂発泡シートの製造方法。
<4>前記シート状発泡体が発泡層と樹脂層とを有する多層構造であることを特徴とする<1>から<3>のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂発泡シートの製造方法。
>ポリオレフィン系樹脂と炭素数3〜6の脂肪族炭化水素とを含有する発泡性樹脂溶融物を押出発泡して得られる、炭素数3〜6の脂肪族炭化水素を含有するシート状発泡体を、一旦ロール状に巻き取り、これを展開してなるシート状発泡体に<1>から<>のいずれかに記載の熱処理を行うことを特徴とするポリオレフィン系樹脂発泡シートの製造方法。
><1>から<>のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂発泡シートをロール状に巻き取ることを特徴とするポリオレフィン系樹脂発泡シートロール状物の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡シートの製造方法によれば、押出発泡後のシート状ポリオレフィン系樹脂発泡体、また、シート状ポリオレフィン系樹脂発泡体製造後に一旦ロール状に巻き取って保管しておいたシート状ポリオレフィン系樹脂発泡体のロール状物について、ガス置換のための養生の時間を短縮して、シート状ポリオレフィン系樹脂発泡体の気泡や樹脂中に残存する、発泡剤として用いた脂肪族炭化水素の量を一定量以下とする、ポリオレフィン系樹脂発泡シートの製造方法、及び該発泡シートロール状物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明で用いるシート状発泡体形成用押出装置の概略図である。
図2】本発明で用いる加熱装置の概略図である。
図3】実施例で用いた試験片の採取位置を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡シート(以下、単に発泡シートということがある)の製造方法、及び該発泡シートロール状物の製造方法は、ポリオレフィン系樹脂に脂肪族炭化水素等の発泡剤を含有させた発泡性樹脂溶融物を、押出装置を用いてシート状に押出発泡させて製造されたシート状ポリオレフィン系樹脂発泡体(以下、単に、加熱前の発泡シートと略称する場合がある)に、加熱雰囲気下で熱処理を施すことにより、発泡シートを構成する樹脂中や、特に発泡シート中に残存する発泡剤の残存量を低減し、発泡シート中に残存する発泡剤の含有量を特定量以下とするものである。
【0015】
以下に、本発明のポリオレフィン系樹脂発泡シート、及び該発泡シートロール状物の製造方法の一実施形態について詳述する。
(加熱処理)
本発明の発泡シートの製造方法、該発泡シートロール状物の製造方法における熱処理では、例えば、図2に示すような加熱装置20に、別途製造されたシート状発泡体150を通過させることにより、加熱雰囲気下で熱処理を行い、ガス置換を効率的に行うことができる。
【0016】
加熱装置20は、入口21及び出口22が設けられた箱型であり、加熱装置20内部にはシート状発泡体150を装架して搬送するためのガイドローラー23が複数設けられている。加熱処理前のシート状発泡体150は、加熱装置20の入口21から導入され、ガイドローラー23に装架された状態で搬送されながら加熱処理が施され、出口22から搬出される。加熱装置20内は、図示しない熱源により、設定した一定の温度が保持されるようになっている。
【0017】
なお、加熱装置20の前には、図示しない繰り出し機が接続されており、また、加熱装置20の後には、引き取り機や巻き取り機が接続され、発泡シートロール状物とすることができる。
【0018】
加熱装置20を上記の構成及び動作とすることにより、省スペースで効率よく、シート状発泡体全体に対して所望の条件の加熱処理を施すことができる。
【0019】
シート状発泡体の加熱処理条件は、加熱処理後の、発泡シート中に残存する可燃性ガス等の発泡剤の含有量を0.05重量%以下、好ましくは0.02重量%以下とする条件である。
【0020】
なお、高温で長時間の加熱処理を施せば、発泡シート中の発泡剤と空気とのガス置換は確実に行われるが、過剰な加熱処理を施した場合、発泡シートの独立気泡率等が減少して発泡シートのコシがなくなるおそれがある。
【0021】
そのため、本発明の発泡シートロール状物の製造方法の加熱処理では、加熱処理後の発泡シートの垂れ下がり量を抑制することが望ましい。
【0022】
上記の加熱処理後の残存する発泡剤の含有量、発泡シートのコシを低下させないためには、加熱装置内の温度は、加熱装置内の搬送距離、搬送速度等に応じて適宜設定することができるが、通常、設定温度は40〜100℃、好ましくは45〜80℃の範囲である。なお、該加熱温度とは、加熱装置内に設置された少なくとも5箇所以上における、装置内雰囲気温度の最高到達温度である(なお、熱風加熱方式の場合においては、熱風の出入り口での測定は避けるものとする)。
【0023】
また、加熱装置内の通過時間(加熱処理時間)は10〜250秒、好ましくは15〜200秒の範囲である。また、ラインスピードは生産性の観点から、概ね10〜200m/分であることが好ましく、20〜180m/分であることがより好ましく、30〜150m/分であることがさらに好ましい。上記範囲の加熱時間であれば、厚みの薄いシート状発泡体の表面における、加熱によるダメージを抑制することが可能となる。
【0024】
なお、加熱装置20内の加熱は、熱風方式、輻射加熱方式等、一般に加熱炉に使用される加熱方式を採用することができる。具体的には、一定温度の熱風がシート状発泡体に当たるようにして、加熱装置内の温度が保持される、熱風方式を採用することが好ましい。熱風方式によりシート状発泡体を加熱した場合には、特に、加熱ムラを少なくすることができると共に、加熱装置内の脂肪族炭化水素等のガスの濃度を低く保って、ガス置換を効率的に行うことが可能となる。
【0025】
熱風方式による加熱においては、シート状発泡体に熱風が直接当たるようにして加熱されることにより、より効率的なガス置換を行うことができる。なお、熱風温度の下限は加熱装置内の温度以上であることが好ましく、40℃以上がより好ましく、50℃以上がさらに好ましい。また、熱風温度の上限は概ね200℃以下であり、好ましくは170℃以下であり、より好ましくは150℃以下である。上記範囲内であれば、熱風が発泡体の物性に影響することは少なく、独立気泡率が高く維持されやすい。ここで、熱風温度とは、加熱装置内の熱風吹き出し口における熱風の温度をいう。
【0026】
なお、上記加熱装置内の温度と熱風の温度が一致している必要は必ずしもない。ある一定の雰囲気温度以上で、シート状発泡体に雰囲気温度以上の熱風が当てられることによって、気泡内におけるガス置換をさらに効率的に行うことができる。また、該加熱装置には、熱風の吹き出し口、排気口が形成されているが、排気口から排出された気体からは、ガス置換された脂肪族炭化水素等が除去され、回収される。
【0027】
なお、加熱装置内の温度設定や、熱風温度の温度を高くするほど、また、加熱処理時間を長くするほど、該発泡シート中の炭化水素残存量が低減される傾向にある。したがって、該発泡シート中の炭化水素残存量を一定量以下とするためには、加熱処理前後の炭素数3〜6の炭化水素の含有量について、上記傾向から予備実験を行うことで、目的の炭化水素含有量が低減された発泡シート、及び該発泡シートロール状物を得ることができる。
【0028】
また、上記加熱処理は、加熱装置をシート状発泡体の押出装置の後工程に連続して設置して連続して行ってもよい(オンライン方式)。なお、オフライン方式においては、発泡シート製造時の余熱が残っていないので、オンライン方式時よりも加熱温度設定を若干高めにする必要がある。一方、シート状発泡体の製造後、一旦巻き取って発泡シートロール状物とし、必要に応じて養生した後に、シート状発泡体として展開しながら加熱処理を施すこともできる(オフライン方式)。
このような巻き直し作業を行うことにより、製造後の発泡シートロール状物の保管・養生中に、可能な範囲で発泡剤や空気のガス置換を行うことができ、その後の熱処理の加熱時間を短く、また、加熱温度を低くすることが可能となる。さらに、製造後の発泡シートロール状物の保管・養生中に、発泡シートの気泡内の内圧を調整し、熱処理による発泡シートの物性低下を抑制することが容易となる。
【0029】
また、上記実施形態の加熱処理では、図2に示すような、発泡シートを複数のガイドローラーに装架した状態で搬送するタイプの加熱装置について説明したが、平面状のコンベア上に載置した状態で搬送しながら加熱処理を施すタイプの加熱装置を用いることもできる。
【0030】
なお、該ガイドローラーを使用する場合には、図2に示すように、加熱装置内でシート状発泡体の引き取り方向を変えて、ジグザグ状に搬送することができ、省スペースで加熱処理時間を稼ぐことができることから好ましい。
【0031】
上記の条件で加熱処理を施した発泡シートは、巻き取り機により巻き取ることにより、発泡シート中に、可燃性ガス等の発泡剤成分の含有量を一定量以下とした発泡シートロール状物とすることができる。
【0032】
以上、一実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において各種の変更が可能である。
(見掛け密度)
本発明の製造方法により得られる発泡シートの見掛け密度は、要求される発泡シートの用途等に応じて適宜設定することができるが、通常、10〜200kg/m、好ましくは15〜150kg/m、より好ましくは20〜100kg/mの範囲である。
【0033】
該発泡シートの見掛け密度を上記範囲内とすることにより、表面保護性が良好であり、保形性や圧縮強さ等の機械的強度に優れ、ガラス基板等の緩衝材として好適に用いることが可能となる。なお、特に、発泡シートの見掛け密度が低い場合には、発泡シートに残存する発泡剤の量が多くなる傾向にあるため、本発明の製造方法の効果が発揮されやすくなる。
(平均厚み)
該発泡シートの平均厚みは、要求される発泡シートの用途等に応じて適宜設定することができるが、被包装物に対する緩衝性、表面保護性を考慮した場合、通常、3.5mm以下である。該発泡シートの平均厚みは、好ましくは0.05〜3.0mm、さらに好ましくは0.1〜2.5mmの範囲である。特に、発泡シートの平均厚みが上記範囲のように薄いものに関しては、発泡シートに与えられるダメージをできる限り少なくするためには、加熱時間を少なくするとともに、加熱装置内の温度よりも熱風の温度を高めに設定して、シート状発泡体に熱風が当たる時間を少なくすることが好ましい。
【0034】
本発明により得られる発泡シートの押出方向(MD方向)の垂れ下がり量は、加熱処理前の垂れ下がり量(Ma)と加熱処理後の垂れ下がり量(Mb)の比(Ma/Mb)が2以内であることが好ましく、1.9以内であることがより好ましい。上記の加熱処理により、発泡シートの加熱によるダメージが低く抑えられているので、上記発泡シートの垂れ下がり量の範囲を満足する発泡シートが得られる。
【0035】
なお、本発明で用いる押出方向の垂れ下がり量とは、得られた発泡シートの押出方向と試験片の長さ方向を一致させて、長さ200mm、幅100mmの発泡シートの試験片を、水平な支持台上に、長さ200mmのうちの50mmの部分が支持台端部からはみ出すように支持して、試験片はみ出し部の先端部の垂れ下がり量(mm)を測定した量である。同様にして、幅方向(TD方向)の垂れ下がり量を求めることもできる。
【0036】
本発明により得られる発泡シートのロール状物は、その巻き中部分においても、炭素数3〜6の炭化水素の含有量が低減されたものである。なお、発泡シートロール状物とは、図3に示されるような、発泡シートが巻き芯に巻き取られてロール状に形成されたものであり、通常、ロール幅は700〜4000mm、発泡シートの全長は100〜2000m、ロール径200〜2000mmのものである。但し、巻径については巻芯に3インチ巻き芯管(外径80mm)を使用した際の径を表記している。
【0037】
本発明に用いられるシート状発泡体は、ポリオレフィン系樹脂、発泡剤、気泡調整剤等の各種成分を、発泡シート形成用押出装置内で溶融混練して押出発泡して、シート状の発泡体としたものである。すなわち、通常製造される、加熱前のポリオレフィン系樹脂発泡シートを意味し、例えば、特開2004−181933号公報、特開2007−262409号公報などに記載された方法により得ることができる。また、押出発泡して得られたシート状の発泡体を、一旦ロール状に巻き取り、これを展開したものを加熱処理前のシート状発泡体として、加熱処理を行うこともできる。以下、本発明に係るシート状発泡体の製造方法について説明する。
(ポリオレフィン系樹脂)
本発明のシート状発泡体の製造で用いられるポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂は、表面硬度が低く柔軟性に優れ、被包装体の表面保護に優れることから好ましく用いられ、特にポリエチレン系樹脂が、より柔軟性、被包装体の表面保護性に優れているため、より好適に用いられる。
【0038】
前記ポリエチレン系樹脂としては、例えば、エチレン成分単位が50モル%以上の樹脂が挙げられ、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−ヘキセン−1共重合体、エチレン−4−メチルペンテン−1共重合体、エチレン−オクテン−1共重合体等が挙げられ、さらにそれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
【0039】
これらのポリエチレン系樹脂の中でも、発泡性を考慮した場合、密度が935g/L以下のポリエチレン系樹脂を主成分とするものが好ましい。具体的には、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンを用いることが好ましく、発泡性が特に良好な低密度ポリエチレンがより好ましい。
(発泡剤)
発泡剤としては、炭素数3〜6の脂肪族炭化水素であり、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、イソヘキサン、シクロヘキサン等の炭素数3〜6の脂肪族炭化水素が挙げられる。
【0040】
また、これらの発泡剤は、2種以上を混合して用いることができる。発泡剤は、上記したなかでもポリオレフィン系樹脂との相溶性、発泡効率の観点から、ノルマルブタン、イソブタン、又はこれらの混合物を主成分とするものを特に好適に用いることができる。
【0041】
なお、発泡剤の添加量は、シート状発泡体の見掛け密度等に応じて、適宜調整されるものであるが、通常、発泡体を構成するポリオレフィン系樹脂100質量部に対して3〜30質量部、好ましくは4〜25質量部の範囲である。
(気泡調整剤)
本発明のシート状発泡体の製造では、上記の成分に加えて、気泡調整剤を配合することもできる。気泡調整剤としては有機系のもの、無機系のもののいずれも使用することができる。
【0042】
無機系の気泡調整剤としては、例えば、ホウ酸亜鉛、ホウ酸マグネシウム、硼砂等のホウ酸金属塩、塩化ナトリウム、水酸化アルミニウム、タルク、ゼオライト、シリカ、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム等が挙げられる。
【0043】
また、有機系の気泡調整剤としては、例えば、リン酸−2,2−メチレンビス(4,6−tert−ブチルフェニル)ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カルシウム、安息香酸アルミニウム、ステアリン酸ナトリウム等が挙げられる。また、クエン酸と重炭酸ナトリウム、クエン酸のアルカリ塩と重炭酸ナトリウム等を組み合わせたもの等も用いることができる。これらの気泡調整剤は2種以上を混合して用いることができる。
【0044】
気泡調整剤の添加量は、シート状発泡体に形成させる気泡に応じて適宜設定することができるが、通常、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、0.05〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部の範囲である。
(その他の添加剤)
また、前記シート状発泡体の製造においては、各種の添加剤を添加してもよい。
【0045】
各種の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、耐候剤、紫外線吸収剤、難燃剤、無機充填剤、抗菌剤、着色剤等が挙げられる。
【0046】
前記シート状発泡体の製造には、脂肪酸エステル、脂肪族アミン、及び脂肪酸アミドなどの収縮防止剤、具体的にはステアリン酸モノグリセライド等の収縮防止剤が添加されていないことが望ましい。収縮防止剤が添加されていない発泡シートは、被包装物への汚染をさらに低減することが可能となる。一方で、収縮防止剤が添加されていない発泡シートは、炭素数3〜6の脂肪族炭化水素の揮散が起こり易くなることから、該飽和炭化水素の残存量を低下させることがより容易となる。上記観点から、前記ポリオレフィン系樹脂発泡シートの収縮防止剤の含有量は、0.1質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以下であることがより好ましく、0.02質量%以下(0も含む)であることがさらに好ましい。
<ポリオレフィン系樹脂シート状発泡体の製造>
図1に、本発明に係るシート状発泡体の製造に用いる発泡体形成用押出装置(以下、単に押出装置という)の概略図を示す。
【0047】
本発明に係るシート状発泡体は、まず、ポリオレフィン系樹脂、発泡剤等の各種成分を、押出装置10内で溶融混練して発泡性樹脂溶融物とした後、押出装置10の先端に取り付けた環状ダイス11より押出発泡してチューブ状の発泡体12を得る。
【0048】
次いで、このチューブ状発泡体12を該チューブ状発泡体12の内側に配置したマンドレル13上を通過させ、マンドレル13下流側に設けたカッター刃等の切開手段14を用いて切り開いてシート状の発泡体150を製造する。
【0049】
例えば、上記実施形態では、図1に示す押出装置を用いて製造する単層構造のシート状発泡体ついて説明したが、多層構造のシート状発泡体を用いることもできる。多層構造のシート状発泡体を得るには、例えば、第一の押出装置と第二の押出装置を連結したタンデム押出装置とし、その出口に共押出用環状ダイを取り付け、該共押出用環状ダイの出口に第三の押出装置を連結させた装置を用いて、共押出して製造した多層構造のシート状発泡体に対して加熱処理を行う方法を採用することができる。
【0050】
該シート状発泡体の見掛け密度、平均厚み等の各種物性は、発泡シートの使用用途等に応じて、適宜設定することができる。なお、上記のようにして製造した加熱処理前の発泡シート、すなわちシート状発泡体においては、製造直後、あるいは製造後から時間の経っていない保管の段階では、発泡シート中に可燃性ガス等の発泡剤成分が残存している。
【実施例】
【0051】
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
<ポリオレフィン系樹脂シート状発泡体の製造>
まず、実施例1〜4及び比較例1〜3のポリオレフィン系樹脂シート状発泡体として、多層構造(実施例1〜3、比較例1〜3用)と単層構造(実施例4用)の2種類を製造した。なお脂肪酸エステル、脂肪族アミン、及び脂肪酸アミドなどの収縮防止剤を添加しないで製造を行った。
(多層構造のシート状発泡体の製造)
発泡シート形成用押出装置として、発泡層形成用のスクリュー径115mmの第一押出装置と、第一押出装置の下流側にスクリュー径150mmの第二押出装置を連結したタンデム押出装置の出口に、共押出用環状ダイを取り付け、該共押出用環状ダイに、樹脂成型用の直径65mmの第三押出装置を出口に連結させた装置を用いた。
【0052】
表1に示すポリエチレン系樹脂と、発泡剤(ノルマルブタン70質量%とイソブタン30質量%のブタン混合発泡剤(以下、混合ブタンと表記する))及び気泡調整剤(タルク、松村産業株式会社社製、ハイフィラー#12)を、第一押出装置で溶融混練し、発泡層形成用樹脂溶融物とした。
【0053】
一方、表1に示すポリエチレン系樹脂と帯電防止剤(三洋化成株式会社製高分子型帯電防止剤ペレスタットVL300)と揮発性可塑剤(ノルマルブタン70質量%とイソブタン30質量%のブタン混合物、上記ポリエチレン系樹脂と帯電防止剤からなる樹脂組成物100重量部に対して表2に示す重量部を配合した)とを第三押出装置で溶融混練し、樹脂層形成用樹脂溶融物とした。
【0054】
次に、前記発泡層形成用樹脂溶融物と、前記樹脂層形成用樹脂溶融物とを、共押出用環状ダイに導入した後、表2に示す押出条件で、発泡層形成用樹脂溶融物に樹脂層形成用樹脂溶融物を積層して共押出して筒状発泡体を得た。
【0055】
次いで、共押出した筒状発泡体を、マンドレル上を通過させ、切り開いて、実施例1〜3及び、比較例1〜3の多層構造のシート状発泡体を得た。
(単層構造のシート状発泡体の製造)
発泡シート形成用押出装置として、発泡層形成用のスクリュー径115mmの第一押出装置と、第一押出装置の下流側にスクリュー径150mmの第二押出装置を連結したタンデム押出装置の出口に、環状ダイを取り付けた装置を用いた。
【0056】
表1に示すポリエチレン系樹脂、発泡剤(ノルマルブタン70質量%とイソブタン30質量%のブタン混合発泡剤)及び気泡調整剤(タルク、松村産業(株)社製、ハイフィラー#12)を、第一押出装置で溶融混練し、発泡シート形成用樹脂溶融物とし、環状ダイに導入した後、表2に示す押出条件で筒状発泡体を得た。
【0057】
次いで、押出した筒状発泡体をそのままマンドレル上を通過させ、切り開いて実施例4の単層構造のシート状発泡体を得た。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
上記の条件で製造したシート状発泡体をロール状に巻き取り、ロール状物とした。
【0061】
このときの各ポリオレフィン系樹脂シート状発泡体及び該シート状発泡体ロール状物の状態を表3に示す。
【0062】
【表3】
【0063】
<加熱処理>
(実施例1)
上記で得たシート状発泡体のロール状物を展開しながら、図2に示す加熱装置に導入して、表4に示す加熱条件(加熱装置内温度50℃(熱風温度80℃)、加熱時間20秒)の加熱処理を行った。
【0064】
加熱処理を施した発泡シートを、再度ロール状に巻き取り、発泡シートロール状物とした。
(実施例2)
加熱装置内温度70℃(熱風温度100℃)とした以外は、実施例1と同様の加熱処理を行った。
(実施例3)
加熱処理時間を40秒とした以外は、実施例2と同様の加熱処理を行った。
(実施例4)
単層構造の発泡シートを用い、加熱処理時間を60秒とした以外は、実施例2と同様の加熱処理を行った。
(比較例1)
加熱装置内温度30℃(熱風温度30℃)、加熱時間20秒の加熱処理を行った。
(比較例2)
加熱装置内温度110℃、加熱時間20秒の加熱処理を行った。
(比較例3)
表3の実施例1に記載された、加熱処理前のロール状物を、45℃の養生室に5日間放置した。発泡シートのブタン残量は、養生前の0.258wt%から、0.240wt%になり、その低減率は7%であった。
<測定>
実施例1〜4、比較例1〜3において、加熱処理前の各ポリオレフィン系樹脂シート状発泡体及びこれらのロール状物、並びに、加熱処理後の各ポリオレフィン系樹脂発泡シート及びこれらのロール状物について、発泡シート試験片の見掛け密度、加熱処理前後のブタン残量、加熱処理前後の厚み、加熱処理前後の独立気泡率、加熱処理前後の垂れ下がり量(MD及びTD)を以下の方法により測定した。
(発泡シートの見掛け密度)
発泡シートの見掛け密度は、発泡シートの長さ方向に無作為に5箇所それぞれについて、全幅にわたり切り出した試験片の重量(g)を、該試験片の外形寸法から求められる体積(cm)で除した値を単位換算(g/cm)して各サンプルの見掛け密度を求め、得られた値の平均値を見掛け密度とした。
(ブタン残量)
図3に示す加熱処理前及び加熱処理後のロール状物151の巻き中部分(152部分)、且つ幅方向の中心部分から、1gの試験片152を切り出した。この試験片152を密閉容器内で、既知量のシクロペンタンをトルエンに加えた50ccの溶媒中に常温で24時間浸漬して、試験片152中に残存する発泡剤の炭素数3〜6の脂肪族炭化水素を溶媒中に抽出した。
【0065】
溶媒中に抽出した炭素数3〜6の脂肪族炭化水素の量を、ガスクロマトグラフを用いて内部標準法により定量し、予め測定しておいた試験片152の質量から、試験片152中に残存する発泡剤の量を求めた。なお、ロール状物の巻き中部分とは、図3に示すように、ロール状物のロール外径(直径X)からロール芯部分の径(内径Y)の差(Z)を算出し、その差の50%の長さをロール直径Xの外径から差し引いた箇所とする。なお、実施例、比較例においては、発泡剤としてブタンを使用したので、ブタン残量として記した。
【0066】
なお、ブタン残量の低減率は、熱処理前のブタン残量をAとし、熱処理後のブタン残量をBとして、下記式(1)により求めた。
【0067】
(1−B/A)×100・・・(1)
(平均厚み)
発泡シートの長さ方向に無作為に5箇所それぞれについて、また、発泡シートを幅方向に沿って一方の端部から他方の端部に至るまで等間隔に複数箇所(5点以上)について測定される厚み(mm)の算術平均値として求めた。
(独立気泡率)
押出発泡シートの独立気泡率は、まず、発泡シートの長さ方向に無作為に5箇所それぞれについて、押出発泡シートを幅方向に5等分し、それらの中央部付近から25mm×20mmのサイズになる様に切り出したシートを厚み25mm以上になるまで重ねて測定用カットサンプルとした。(計5個)次に、ASTM−D2856−70の手順Cに従って、各カットサンプルの真の体積Vxを測定し、下記式(2)により独立気泡率S(%)を計算し、それら計算値の算術平均値を押出発泡シートの独立気泡率とした。なお、測定装置として東芝ベックマン株式会社の空気比較式比重計930型を使用した。
S(%)=(Vx−W/ρ)×100/(Va−W/ρ) (2)
ただし、Vx:上記空気比較式比重計による測定により求められるカットサンプルの真の体積(cm)(押出発泡シートのカットサンプルを構成する樹脂組成物の容積と、カットサンプル内の独立気泡部分の気泡全容積との和に相当する。)
Va:測定に使用されたカットサンプルの外形寸法から算出されたカットサンプルの見掛け上の体積(cm
W:測定に使用されたカットサンプル全重量(g)
ρ:押出発泡シートを構成する樹脂組成物の密度(g/cm
(垂れ下がり量)
図3に示す加熱処理前及び加熱処理後のロール状物151の巻き中部から、長さ200mm、幅100mmの試験片153を、発泡シートの押出方向と試験片153の長さ方向が一致するように切り出し、該試験片153を水平な支持台上に、長さ200mmのうちの50mmの部分が支持台端部からはみ出すように支持して、試験片153はみ出し部の先端部の垂れ下がり量(mm)を測定し幅方向の垂れ下がり量(MD)とした。
【0068】
さらに、図3に示す加熱処理前及び加熱処理後のロール状物151の巻き中部から、長さ200mm、幅100mmの試験片154を、発泡シートの幅方向と試験片154の長さ方向が一致するように切り出し、該試験片154を水平な支持台上に、長さ200mmのうちの50mmの部分が支持台端部からはみ出すように支持して、試験片154はみ出し部の先端部の垂れ下がり量(mm)を測定し押出方向の垂れ下がり量(TD)とした。
【0069】
これらの測定結果を表4に示す。
【0070】
【表4】
【0071】
表4に示す結果からも明らかなように、実施例1〜4の、本発明で規定する条件の熱処理を施した発泡シートは、十分にブタン残量が低減されており、他の全ての測定結果においても優れたものであることが確認された。
【0072】
これに対して、加熱装置内温度を30℃と低くした比較例1では、ブタン残量は低減するものの、十分な低減ではないことが確認された。
【0073】
また、加熱装置内温度を110℃と高くした比較例2は、加熱によるダメージが大きく、製品となる発泡シートを得ることができず、各測定も行うことができなかった。
【0074】
また、45℃の養生室に5日間放置した比較例3は、ブタン残量の低減率は7%程度であった。
【0075】
これらの結果から、本発明の方法によれば、発泡シートの状態を維持したままで、短時間に発泡シート中のブタンの含有量を大幅に低減できることが確認された。
【符号の説明】
【0076】
10 発泡シート形成用押出装置
11 環状ダイス
12 チューブ状の発泡体
13 マンドレル
14 切開手段
150 ポリオレフィン系樹脂発泡シート
151 ポリオレフィン系樹脂発泡シートロール状物
152、153、154 試験片
20 加熱装置
21 入口
22 出口
23 ガイドローラー
図1
図2
図3