【実施例】
【0012】
実施例に係るキャンバー成形装置10を図面を参照して説明する。キャンバー成形装置10は、自動車等に装備されるリーフ式サスペンションに用いられるリーフばね(板ばねの一種)を製造するために用いられる。キャンバー成形装置10は、板材(加工途中品)にキャンバー形状を付与し、板ばね形状とする。なお、板材に付与されるキャンバー形状は、リーフ式サスペンションに求められる性能に応じて適宜設計される。
【0013】
図1,2に示すように、キャンバー成形装置10は、ベース12と、ベース12に設けられた複数のチェーンガイド14と、ベース12に対向して配置されるシリンダ39を備えている。キャンバー成形装置10では、チェーンガイド14に架け渡されるチェーン22と、シリンダ39に案内されるワイヤ36によって、板材40にキャンバー形状が付与される。
【0014】
チェーンガイド14は、ベース12の取付面12a(
図1の下側に示す面)の複数個所に取付けられている。具体的には、取付面12aの右端に2つのチェーンガイド14がx方向に間隔を空けて配置され、取付面12aの中央に2つのチェーンガイド14がx方向に間隔を空けずに配置され、取付面12aの左端に2つのチェーンガイド14がx方向に間隔を空けて配置されている。右端に配置された2つのチェーンガイド14と中央に配置された2つのチェーンガイド14との間には間隔が設けられ、中央に配置された2つのチェーンガイド14と左端に配置された2つのチェーンガイド14との間にも間隔が形成されている。
【0015】
各チェーンガイド14は、シリンダ16と、シリンダ16に対してy方向に進退動するピストン18を備えている。シリンダ16は、ベース12の取付面12aからy方向(−)に突出している。ピストン18は、シリンダ16に対してy方向(−)に進退動可能に取付けられている。詳細には、ピストン18は、図示しないサーボモータに接続されている。サーボモータを駆動することで、シリンダ16に対するピストン18のy方向の位置が調整される。ピストン18の先端には、チェーン22を案内する案内部が形成されている。複数のピストン18(チェーンガイド14)の先端に、チェーン22が架け渡されている。
【0016】
ベース12内には、ドラム20a,20bが配置されている。チェーン22の一端はドラム20aに巻き付けられており、チェーン22の他端はドラム20bに巻き付けられている。ドラム20aの回転軸には、チェーン22を巻き取るためのモータ52(
図3に図示)が接続されている。モータ52によりドラム20aが駆動されると、ドラム20aにチェーン22が巻き取られる。すなわち、ドラム20aが駆動ドラムであり、ドラム20bが従動ドラムとなっている。ドラム20aにチェーン22が巻き取られることで、チェーン22に張力が付与される。チェーン22に張力が付与されると、チェーン22にy方向の力が作用しても、チェーン22はその形状を保持することができる。
【0017】
ここで、チェーン22は、
図5,6に示すように、プレート24,26と支持ピン28によって構成されている。プレート24,26の両端には貫通孔が形成されている。一対のプレート26の貫通孔には支持ピン28が挿通しており、その支持ピン28の両端は一対のプレート24の貫通孔に回転可能に支持されている。これによって、一対のプレート24の間に一対のプレート26が配され、一対のプレート24と一対のプレート26が支持ピン28により連結されている。また、一対のプレート24は、一対のプレート26に対して支持ピン28の軸周りに回動可能となっている。なお、
図6から明らかなように、チェーン22は、支持ピン28の長さの分だけ幅Wを有しており、後述するように、この幅Wを有する面で板材40に接触する。具体的には、幅Wを有する面において、プレート24の厚み(又はプレート26の厚み)×プレート24の枚数(又はプレート26の枚数)分だけ板材40に接触する。なお、本実施例では、幅W方向に2枚のプレート(24,24),(26,26)が配置されたチェーン22を用いたが、本明細書に開示の技術はこのような形態に限られない。例えば、幅方向に1枚、3枚、4枚又はそれ以上の枚数のプレートを配置してもよい。幅方向に配置するプレートの枚数を増減することで、プレートとチェーンの接触面積を適正化することができる。
【0018】
なお、ベース12の取付面12aの両端には、ワイヤガイド32が取付けられている。ワイヤガイド32は、両端に配置されたチェーンガイド14よりもさらに外側に配置されている。ワイヤガイド32は、取付面12aからy方向(−)に突出している。ワイヤガイド32の先端には、ワイヤ36を案内する案内部が形成されている。
【0019】
図1,2に示すように、ベース12に対向する位置には、一対のシリンダ39が配置されている。シリンダ39は、チューブ38bと、図示しないピストンに取付けられたロッド38aを備えている。シリンダ39は、図示しないフレーム(図示省略)に取付けられている。ロッド38aは、チューブ38bに対してy方向(+)に進退動可能に取付けられている。ロッド38aは、図示しない油圧装置によって駆動され、ワイヤ36を介して板材40をy方向(+)に押圧するようになっている。ロッド38aの先端には、ワイヤ36を案内する案内部が形成されている。
【0020】
ワイヤ36は、シリンダ39及びガイドローラ34を介してワイヤ巻取装置54(
図3に図示)に接続されている。ガイドローラ34は、ベース12に取付けられたワイヤガイド32の両側に配置されている。ガイドローラ34は、ベース12に対してy方向に進退動可能に設けられている。ガイドローラ34には、ワイヤ36を案内する案内部が形成されている。ガイドローラ34は、ワイヤ36をワイヤ巻取装置54に案内する。ワイヤ巻取装置54は、ベース12側に配置され、ワイヤ36を巻き取る一対のドラムと、一対のドラムの一方を回転駆動するモータを備えている。モータによりドラムを回転駆動することで、ドラムにワイヤ36が巻き取られ、ワイヤ36に張力が付与される。
【0021】
なお、
図3に示すように、キャンバー成形装置10は、上述した各部14,52,54,39を制御する制御装置50を備えている。制御装置50は、CPU,ROM,RAM等を備えたコンピュータにより構成されている。制御装置50は、ROMに格納されたプログラムを実行することで、各部14,52,54,39を制御する。
【0022】
上述したキャンバー成形装置10を用いて、板材40にキャンバー形状を付与する手順の一例を説明する。本実施例では、板ばねを製造する際の焼入れ処理を利用して板材40にキャンバー形状を付与する。すなわち、板ばねを製造する際には、まず、ばね鋼(例えば、SUP6,SUP9,SUP9A,SUP11A等)を所定寸法の板材に加工し、その板材に対して機械加工(例えば、穿孔加工、圧延加工等)を行うことによって目玉42等を形成して半製品形状(以下、板材40という。)とする。本実施例では、半製品形状とした板材40を焼入れ処理のために加熱し、加熱された状態でキャンバー形状を付与し、その後、焼入れ処理を行う。本実施例では、焼入れ前の加熱により加熱された板材40にキャンバー形状を付与するため、キャンバー形状を付与するためだけに加熱処理が行われることはない。なお、焼入れ後の板材40には焼戻しやショットピーニング等の処理が行われる。その後、表面に塗料を吹付けて塗装し、板ばねが完成する。以下、キャンバー成形装置10を用いて板材40にキャンバー形状を付与するときのキャンバー成形装置10の動作について説明する。
【0023】
まず、
図4に示すように、各チェーンガイド14を駆動して、ピストン18の先端の位置(y方向の位置)を調整する(S10)。すなわち、板材40に付与するキャンバー形状に応じて、制御装置50は各チェーンガイド14のピストン18をシリンダ16に対してy方向に移動させる。これによって、各チェーンガイド14に架け渡されたチェーン22の形状が、板材40に付与するキャンバー形状に倣った形状となる。次に、制御装置50はチェーン巻取モータ52を駆動して、ドラム20aにチェーン22を巻き取る(S12)。これによって、チェーン22に張力が付与され、チェーン22が各チェーンガイド14間に緩み無く架け渡される。その結果、チェーン22にy方向の外力が作用しても、チェーン22はその形状を保持することが可能となる。
【0024】
次に、キャンバー成形装置10に板材40をセットする(S14)。すなわち、チェーンガイド14に架け渡されたチェーン22と、ガイドローラ34間に架け渡されたワイヤ36の間に板材40をセットする。上述したように、板材40は、焼入れのために加熱されており、焼入れ温度以上となっている。したがって、板材40のキャンバー成形装置10へのセットは、ロボットによって行われる。これによって、
図1に示す状態となる。
【0025】
次に、制御装置50は、シリンダ39を駆動してロッド38aを伸長すると共に、ワイヤ巻取装置52を駆動してワイヤ36をドラムに巻き取る(S16)。これによって、板材40の一方の面(
図1,2では下面)にワイヤ36が当接し、板材40をチェーン22に向かって押圧する力がワイヤ36から板材40に作用する。このため、板材40の他方の面(
図1,2の上面)がチェーン22に当接し、チェーン22の形状に倣ったキャンバー形状が板材40に付与される。
図6から明らかなように、チェーン22は、板材40の短手方向に幅Wを有し、板材40との接触面積が広く確保されている。このため、板材40に曲げ加工をする間、チェーン22は板材40を適切に支持することができる。なお、ワイヤ36が板材40をチェーン22に向かって押圧する際は、ガイドローラ34がベース12に向かって移動し、ベース12に設けられたワイヤガイド32の先端よりもベース12側に移動する。このため、
図2に示す状態では、ワイヤ36はワイヤガイド32を介してガイドローラ34に案内されている。
【0026】
板材40にキャンバー形状を付与すると、キャンバー成形装置10から板材40を取り出す(S18)。具体的には、制御装置50は、シリンダ39を駆動してロッド38aを退動させ、チェーン22とワイヤ36の間から板材40を取り出す。これによって、板材40にキャンバー形状が付与される。
【0027】
上述した説明から明らかなように、本実施例のキャンバー成形装置10では、各チェーンガイド14の位置(ピストン18のy方向の位置)を調整することで、チェーンガイド14に架け渡されるチェーン22の形状を調整することができる。このため、1台のキャンバー成形装置10で、複数のキャンバー形状を板材に付与することができる。また、チェーン22で板材40を支持するため、チェーンガイド14を板材40の長手方向に離間して配置することができる。その結果、位置調整が必要となるチェーンガイド14の数を減らすことができ、キャンバー形状を変更する際の調整作業を短時間で行うことができる。
【0028】
最後に、実施例と特許請求の範囲の記載の対応関係を説明する。ピストン18のチェーン案内部が「チェーン支持部」の一例であり、チェーンガイド14が「位置調整機構」の一例であり、ワイヤ36、シリンダ39及びワイヤ巻取装置54が「押圧手段」の一例である。
【0029】
以上、本明細書に開示する技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0030】
例えば、上述した実施例では、板材40に所望のキャンバー形状が付与されるよう6個のチェーンガイド14によってチェーン22の形状を調整したが、チェーン22の形状を調整するチェーンガイドは6個に限られず、任意の数とすることができる。また、上述した実施例では、板材40をチェーン22に向かって押圧するためにワイヤ36を用いたが、このような構成に限られず、ベース12側と同様の構成(すなわち、チェーンガイド+チェーン)を採用して板材を押圧してもよい。また、板材40を成形するためにプレート24,26で構成されたチェーン22を利用したが、このような形態に限られず、チェーンには、可撓性があり、かつ、一定の幅を有する長尺物を用いてもよい。
【0031】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。