(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6129007
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】目皿ポットクリーナー
(51)【国際特許分類】
A47K 11/10 20060101AFI20170508BHJP
A47L 13/10 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
A47K11/10
A47L13/10 E
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-150674(P2013-150674)
(22)【出願日】2013年7月19日
(65)【公開番号】特開2015-19855(P2015-19855A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2016年1月12日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 販売日 平成25年1月21日 販売した場所 株式会社太陽モップ(東京都江東区古石場3丁目11ー12) 販売者 キクロン株式会社 [刊行物等] 展示会名 第23回ビルメンフェア 主催者名 横浜建物管理協同組合(神奈川県横浜市中区蓬莱町2−4−1横浜大通り公園ビル2F) 展示日 平成25年2月6日 展示会場 横浜産貿ホール(神奈川県横浜市中区山下町2番地) 出展者 有限会社ニツセイ
(73)【特許権者】
【識別番号】391007758
【氏名又は名称】キクロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100117097
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 充浩
(72)【発明者】
【氏名】井上 滋紀
【審査官】
油原 博
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−169995(JP,A)
【文献】
実開平07−037036(JP,U)
【文献】
実開昭50−020460(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 11/10
A47L 13/10、17/00、17/06
E03C 1/30−1/308
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に二股挟持部を有する柄部と、二股挟持部に挟持された略円柱形状の清掃部とを備え、
二股挟持部が第一挟持部と第二挟持部とを備え、第二挟持部に清掃部に挿入される固定ピンが設けてあり、第一挟持部に固定ピンが通過する貫通孔が設けてあるとともに、固定ピンが貫通孔を通過した状態を固定するための係止部が、固定ピンに設けてあり、
清掃部が、弾性多孔質素材からなる粗部と、粗部の相対する二面に配置され、粗部よりも、単位長さ当たりのセル(気泡)の数であるセル数が大きい弾性多孔質素材からなる密部とを備え、
固定ピンが、密部が配置されておらず、かつ相対する粗部の二面と貫通孔とを通過した状態で固定され、清掃部が二股挟持部によって挟持される目皿ポットクリーナー。
【請求項2】
弾性多孔質素材が、合成樹脂製スポンジである請求項1に記載の目皿ポットクリーナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、男性小便器の底部に設けられている目皿ポットの清掃に使用する目皿ポットクリーナーに関する。
【背景技術】
【0002】
目皿ポットは、男性用小便器の底部に設けられ、小便器からの汚水が下水管に流れる通り道である。目皿ポットは、通常、円筒形状であるため、一般的な便器掃除ブラシでは清掃し難く、歯ブラシ、靴ブラシ、コップ洗ブラシ等によって掃除せざるを得なかった(非特許文献1を参照。)。ただ、これらのブラシは、目皿ポットと形状や大きさが異なるので、掃除し難く、汚水が飛び散り、その効率も悪かった。
【0003】
そのため、目皿ポットは小便器の他の部分とともに清掃されはするものの、汚れが溜まり易く、清掃と清掃の間に目皿ポットに尿石が発生してしまうことがあるとの問題点があった。
【0004】
なお、尿石は、尿中の有機物や尿素、カルシウムイオンが滞留中に腐敗分解濃縮したものであって、小便臭の主な原因であり、尿石の清掃には比較的強い酸性で人体に有害な洗剤を使用する必要がある。
【0005】
さて、このような問題点を解決するため、従来から、プラスチック製の長柄の先端に設けられた二股挟持部の間に複数のスポンジ板を挟持させた便所等摺洗具が発明されている(特許文献1を参照。)。ただ、この便所等摺洗具には、便器を洗浄する際、スポンジ板の外側に汚水が留まってしまうため、汚水が周囲に飛び散るとの問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭50−20460号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「尿石除去剤や尿石防止剤の専門店 〜尿石の落とし方 尿石の取り方〜」、[online]、有限会社 小坂井衛生社、[平成25年7月3日検索]、インターネット<URL:http://www.seiketu.net/original7.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、この発明は、通常の便器掃除ブラシと同様の労力しか必要とせず、便器の他の部分と同程度に清掃できるとともに、清掃の際に生じた汚水を周囲に飛び散らせない目皿ポットクリーナーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、この発明の目皿ポットクリーナーは、一端に二股挟持部を有する柄部と、二股挟持部に挟持された略円柱形状の清掃部とを備え、
二股挟持部が第一挟持部と第二挟持部とを備え、第二挟持部に清掃部に挿入される固定ピンが設けてあり、第一挟持部に固定ピンが通過する貫通孔が設けてあるとともに、固定ピンが貫通孔を通過した状態を固定するための係止部が、固定ピンに設けてあり、清掃部が、弾性多孔質素材からなる粗部と、粗部の相対する二面に配置され、粗部よりも、単位長さ当たりのセル(気泡)の数であるセル数が大きい弾性多孔質素材からなる密部と、を備え、
固定ピンが、密部が配置されておらず、かつ相対する粗部の二面
と貫通孔とを通過した状態で固定され、清掃部が二股挟持部によって挟持されるものである。なお、弾性多孔質素材は合成樹脂製スポンジが好ましく、ポリウレタン製スポンジがより好ましい。
【発明の効果】
【0010】
この発明の目皿ポットクリーナーは、清掃部の形状が略円柱形状であるので、目皿ポットの清掃に適しており、目皿ポットを効率よく清掃でき、尿石を発生させることもない。また、目皿ポットを洗浄した際に生じる汚水が、目皿ポットの壁面と接触した密部から中心部にある粗部を経由して下に落ちるので、汚水を飛び散らせることもない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、目皿ポットクリーナーの外観図である。
【
図4】
図4は、目皿ポットクリーナーの組立工程の一部を示す図である。
【
図5】
図5は、
図1に記載の目皿ポットクリーナーのA−A部分の断面図である。
【
図7】
図7は、目皿ポットクリーナーを柄部とは反対側から見た外観図である。
【
図8】
図8は、目皿ポットクリーナーの使用状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に述べる実施形態はこの発明を具体化した一例に過ぎず、この発明の技術的範囲を限定するものでない。
【0013】
図1は、この発明に係る目皿ポットクリーナー1の外観図である。この図に示すように、目皿ポットクリーナー1は、柄部11とその一端に挟持された略円柱形状の清掃部12とを備えている。なお、目皿ポットクリーナーとは、特に便器内の目皿ポット部分の清掃に適した便器清掃用具である。
【0014】
図2は、目皿ポットクリーナー1から清掃部12を取り外した柄部11の外観図である。この図に示すように、柄部11は、目皿ポットクリーナーの使用者が手で握るための把持部11aと、第一挟持部11b及び第二挟持部11cからなる二股挟持部と、を備えている。
【0015】
また、第二挟持部11cの上面には清掃部12に挿入される固定ピン11dが設けてあり、第一挟持部11bの先端部には、固定ピン11dが通過する貫通孔11eが設けてある。そして、貫通孔11eを通過した固定ピン11dの先端をこの状態で固定するため、固定ピン11dの先端には矢尻型の係止部が設けてある、なお、この係止部は二股挟持部に力を加えて押さえ込むと、貫通孔11eを通過できるよう変形する。
【0016】
さらに、第一挟持部11bと第二挟持部11cの相対する面には、挟持した清掃部12の抜け落ちを防ぐための鋸歯状突起11fが設けてある。なお、柄部11は、ポリプロピレンなどの合成樹脂から、射出成形などの公知の方法によって製造できる。
【0017】
図3は、柄部11から取り外された清掃部12の側面視断面図である。この図に示すように、清掃部12は、その中心部を構成する粗部12aと、粗部12aの相対する面に配置された密部12bと、を備えている。
【0018】
粗部12aと密部12bは、連続気泡を有する弾性多孔質素材から構成され、粗部12aのほうが密部12bよりもセル数が小さい。なお、セル数とは、弾性多孔質素材の単位長さ(25mm)当たりのセル(気泡)の数のことであり、セル数が大きいものほど目が詰まったものになる。なお、セル数は、弾性多孔質素材のある区間に含まれるセルの数を顕微鏡などで数えることによって測定・算出した値である。
【0019】
弾性多孔質素材のセル数は8〜75であり、中でも、粗部12aのセル数は8〜10が好ましく、密部12bのセル数は11〜15が好ましい。
【0020】
粗部12aと密部12bを構成する弾性多孔質素材としては、公知の連続気泡を有する弾性多孔質素材であれば、特に限定することなく使用できる。例えば、ポリウレタン、ポリスチレン、メラミンなどの公知の合成樹脂から公知の方法で製造したスポンジ、ナイロン(登録商標)製不織布、ポリエステル製不織布が挙げられる。
【0021】
なお、密部12bをポリウレタンなどの合成樹脂製スポンジで構成する場合には、通常の方法で製造されたスポンジを熱圧縮したものが好ましい。熱圧縮によってスポンジの耐久性が向上するとともに、スポンジの骨格が太くなって洗浄効果も向上するからである。
【0022】
また、清掃部12は、粗部12aの相対する面に密部12bを配置したのち、粗部12aと密部12bとを接着剤や熱溶着などの公知の方法によって接着してもよく、接着せずに配置したまにしておいてもよい。
【0023】
このような清掃部12としては、例えば、セル数の異なる合成樹脂製スポンジを接着剤で接着したもの、合成樹脂製スポンジの両面にナイロン(登録商標)製不織布を接着剤で接着したものなどが挙げられる。中でも、入手し易いことから、セル数の異なる合成樹脂製スポンジを接着剤で接着したスポンジが好ましく、安価であることから、セル数の異なるポリウレタン製スポンジを接着剤で接着したスポンジがより好ましい。なお、接着剤による接着には、ポリウレタン系接着剤などの公知の接着剤を、スプレー等によってスポンジに噴霧したのち、スポンジを重貼りする等の公知の方法が使用できる。
【0024】
この発明の目皿ポットクリーナー1は、前記の柄部11と清掃部12から、例えば、次のようにして組み立てられる。まず、清掃部12の一端を変形させて、柄部11の第一挟持部11bと第二挟持部11cの間に嵌め込む。この際、
図4に示すように、第二挟持部11cの固定ピン11dが清掃部12の粗部12aに突き刺さるような向きで嵌め込む。
【0025】
つぎに、固定ピン11dの先端部分に設けられた矢尻型の係止部が、清掃部12の粗部12aを経由して貫通孔11eの通過するまで、第一挟持部11bと第二挟持部11cとを押さえ込む。これによって、固定ピン11dが貫通孔11eを通過した状態で固定され、清掃部12が柄部11に挟持された状態が維持される。そのため、固定ピン11dの先端を削除などしない限り、清掃部12は柄部11から外れない。
【0026】
このようにして、組み立てた目皿ポットクリーナー1の断面図を
図5に示す。なお、
図5は
図1に記載の目皿ポットクリーナーのA−A部分の断面図である。
図5に示すように、清掃部12は、第一挟持部11bと第二挟持部11cによって挟持され、固定ピン11dによって固定されている。また、
図5に示すように、清掃部12の挟持されている部分は清掃部12の内側に押し込まれ、清掃部12の挟持されていない部分は、柄部11とは反対側(先端側)に向かって広がっている。すなわち、清掃部12はその先端側に向かって広がった略円柱形状をしている。
【0027】
目皿ポットクリーナー1を
図5とは異なる方向で切断した断面図を
図6に示す。なお、
図6は
図5のX−X部分の断面図である。この図に示すように、清掃部12の挟持されている部分の断面は略円形である。また、目皿ポットクリーナー1を清掃部12の先端側から見た図を
図7に示す。この図に示すように、清掃部12の先端側で、粗部12aは密部12bの間から露出している。
【0028】
そのため、
図8に示すように、目皿ポットクリーナー1を使用して、男性用小便器Bの底部に設けられた目皿ポットMを清掃する際には、清掃部12が目皿ポットの内壁面の形状に適合した略円柱形状であるので、清掃部12の密部12bが目皿ポットMの内壁面に密着して、効率よく摺り洗いできる。また、清掃の際に生じた汚水は、密部12bよりもセル数の小さい粗部12aに移行したのちに、粗部12aの先端から目皿ポットMの底に落ちるので、周囲に飛び散らない。
【0029】
なお、この発明は前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内で様々な変更を加えることができる。
【0030】
例えば、清掃部12が、その先端側に向かって、すなわち柄部11とは反対向きの方向に向かって、先細りになっていてもよい。これによって、目皿ポットクリーナー1を目皿ポットMに挿入し易くなる。また、前記実施の形態では、固定ピン11dは第二挟持部11cと一体化していたが、独立分離していてもよく、第一挟持部11bと一体化していてもよい。さらに、把持部11aの後端にあるフックの形状、把持部11aの形状、把持部と二股挟持部との取付角などは、市場動向に応じて自由に変更すればよい。
【符号の説明】
【0031】
1 目皿ポットクリーナー
11 柄部
11a 把持部
11b 第一挟持部
11c 第二挟持部
11d 固定ピン
11e 貫通孔
11f 鋸歯状突起
12 清掃部
12a 粗部
12b 密部