(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
球状のシリカアルミナ系粒子は、種々の重合体フィルムやその他の樹脂またはゴム等に対する充填剤、化粧料に対する充填剤、香料や薬品類に対する支持担体、クロマトグラフィ用充填剤等の用途に広く使用されている。
このシリカアルミナ球状粒子の製造方法としては、シリカ−アルミナゾルをスプレーし或いはそのスプレーを気流と衝突させる方法、有機金属化合物の加水分解による方法や立方体または球体の粒子形態を有する結晶性ゼオライトを、その結晶構造が破壊されるがその粒子形態が実質上損なわれない条件下に酸で中和して、該ゼオライト中のアルカリ金属分を除去する方法が知られている。
【0003】
ところで、シリカアルミナゾルを用いて製造されるシリカアルミナ系球状粒子は、一次粒径が比較的粗大であり、しかも粒度分布も広く、このため、樹脂に対する分散性が低いという欠点があり、更には吸湿性が大きく、樹脂に配合して熱成形する際に発泡を生じるという問題も有している。一方、ゼオライトを用いて製造されるシリカアルミナ系球状粒子は樹脂に対する分散性等に優れているものの、粒子の屈折率が樹脂の屈折率と大きく異なっており、更に吸湿性が大きいという問題も抱えている。
【0004】
上記のような欠点が解決されたシリカアルミナ系球状粒子として、特許文献1には、P型ゼオライトに特有のX線回折像を有し且つ個々の粒子が全体として明確な球体形状とギザギザの表面を有するゼオライト粒子を用い、このゼオライト粒子をカルシウムイオン等でイオン交換した後、200℃〜700℃で焼成して得られたものが提案されている。
【0005】
特許文献1のシリカアルミナ系球状粒子は、X線回折学的に実質上非晶質であり、個々の粒子が全体として明確な球体形状とギザギザの表面とを有し、且つRH90%、室温及び48時間経過の条件で13%以下の吸湿量と1.48〜1.61の屈折率とを有している。かかる粒子は、樹脂に対する分散性が良好であるとともに吸湿量が低いため、発泡の問題も有効に解決されており、また、屈折率が各種の樹脂フィルムの屈折率に近似しており、透明性等に優れたフィルムを与えることができ、更には、粒子がギザギザ状の表面を有しているためにアンチブロッキング剤としての特性に優れ、樹脂フィルムに配合した時に透明性を保ちながらフィルム同士の密着を防止することができる。
【0006】
しかしながら、特許文献1の非晶質シリカアルミナ球状粒子においても、アンチブロッキング剤としての特性が十分でなく、例えば良好なアンチブロッキング性を確保するためには、樹脂フィルムにかなりの量の粒子を配合することが必要であり、粒子が密で硬く更に粒子径が大きいため、フィルムを擦り合わせると表面を傷つけるという欠点もある。
【0007】
これに対して、特許文献2には、アンチブロッキング性に優れ、樹脂フィルムに対する傷付き防止性に優れたシリカアルミナ系凝集粒子が開示されている。このシリカアルミナ系凝集粒子は、X線回折学的に非晶質であり、微細な一次粒子が凝集して適度な大きさの二次粒子を形成しているという形態を有している。これは言いかえると、粒子内に空隙を有し、嵩密度が小さいということである。そのため、前述の特許文献1に開示されている非晶質シリカアルミナ球状粒子と比べ、樹脂に同一重量配合したときにより多くの突起を形成することができ、非常に優れたアンチブロッキング特性を有している。また、一次粒子が小さく且つ小さな一次粒子が集合した凝集体の形態で挙動するため、耐スクラッチ性(耐傷付き性)も良好である。
【0008】
特許文献1及び2は何れも本出願人が提案したものであり、特許文献2のシリカアルミナ凝集粒子は、確かに優れたアンチブロッキング性を発揮し得る。しかしながら、特許文献2のシリカアルミナ凝集粒子は、優れたアンチブロッキング性を発揮するために、その凝集状態を極めて精密に制御する必要がある。不適切な凝集状態の粒子では、フィルムに配合したときに凝集粒子の崩壊による微粉が発生し、アンチブロッキング性や耐スクラッチ性が不十分となってしまう不都合がしばしば生じる。
【0009】
また、特許文献3には、ゼオライトスラリーをスプレー造粒することが開示されているが、スプレー造粒により粒子を球状に定形化したとしても、アンチブロッキング性や耐スクラッチ性の改善を図ることはできない。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<シリカアルミナ系定形粒子の製造>
本発明のシリカアルミナ系定形粒子は、例えば特許文献2に開示されているシリカアルミナ系凝集粒子と同様、P型ゼオライトの結晶粒子をCa交換し、その後焼成することにより製造されるが、大きな違いは、焼成に先立って、Ca交換された粒子を湿式下で徹底的に粉砕し、次いでスプレー造粒により粒子の定形化を行うという点にある。即ち、湿式下での徹底的粉砕及びスプレー造粒を行った後に、焼成を行うことにより、後述する特性を有する本発明のシリカアルミナ系定形粒子を得ることができる。
以下、各工程等について詳細に説明する。
【0019】
1.原料P型ゼオライト;
本発明において原料として用いるP型ゼオライトはNa型であり、具体的には、ケイ酸ナトリウムまたは活性ケイ酸ゲル、シリカゾル、メタカオリン、アルミン酸ナトリウム、アルミナゾル及び水酸化ナトリウムを、下記条件を満足するように混合したアルミノケイ酸ソーダのゲルから製造される。
配合条件(モル比)
Na
2O/SiO
2:0.2〜8(好ましくは0.5〜1.0)
SiO
2/Al
2O
3:3〜20(好ましくは3.5〜6)
H
2O/Na
2O:20〜200(好ましくは30〜120)
【0020】
上記配合条件のアルミノケイ酸ソーダのゲルを生成するとき、P型ゼオライトを種晶として添加することもできる。添加するP型ゼオライトの種晶は、粉末の形態で添加することもできるし、水性スラリーの形態で添加することもできるが、一般的には、水性スラリーの形態で添加するのがよい。さらに、この種晶は、湿式粉砕により、粒径を0.1〜2μm程度に調整しておくことが、粗大な二次粒子(凝集体)を生成させず、シャープな粒度分布のP型ゼオライトを得る上で好適である。この粒径は、例えばコールターカウンター法により確認することができる。
【0021】
種晶の添加量は、反応により生成するアルミノケイ酸ソーダ当り、1〜20重量%程度の量とするのがよい。
また、種晶を水性スラリーの形で混合するときには、混合系の水分濃度が、上記条件から逸脱しない程度とすべきであり、一般的には、1〜30重量%濃度の水性スラリーの形態で混合するのがよい。
【0022】
ゲルの生成は、上記の混合系を10〜80℃程度の温度に0.1〜20時間程度、攪拌下に保持しての熟成により行われる。
【0023】
ゲルの生成後、80〜200℃の温度下で常圧もしくは水熱下で結晶化せしめ、ゲルを消失せしめて目的とするP型ゼオライト粒子を得ることができる。
【0024】
2.Ca交換処理;
以上のようにして得られたP型ゼオライトの結晶粒子は、ろ過及び水洗を行った後、Caイオンによるイオン交換処理に付される。この処理と後述する焼成処理によりゼオライトが実質上非晶質化する。
このようなCa交換処理は、水溶性のCa塩、例えば塩化物、硝酸塩、酢酸塩等の水溶液を使用し、これらの水溶液とP型ゼオライト粒子とを接触させることにより行われる。この接触は、Ca塩水溶液とP型ゼオライトとを水性スラリーの状態で攪拌処理する方法や、P型ゼオライトを固定床又は流動床でCa塩水溶液と接触させる方法が採用され、この接触は一段式或いは多段式で行うことができ、また連続式、回分式の何れによっても行うことができる。
【0025】
上記のCa交換処理により、Naの一部がCaでイオン交換されるが、この処理条件は、例えば、P型ゼオライト中のNa
2O分の少なくとも10モル%以上、特に30モル%以上がCaOで置換されるような条件とすればよい。具体的には、Ca量が、P型ゼオライト中のNa
2O分当り0.5モル倍以上、特に1.0モル倍以上となるような量でCa塩水溶液を使用し、一般に初期濃度が10〜50重量%、特に20〜40重量%のCa塩水溶液と接触させるのがよい。接触時の温度は20〜100℃、特に30〜70℃の範囲が適用であり、当然のことながら、高温の方が交換処理は短縮される。接触時間は、温度や交換率によっても相違するが、0.5〜3時間の範囲である。
【0026】
3.徹底的粉砕処理及びスプレー造粒;
本発明のシリカアルミナ系定形粒子を得るためには、後述する焼成処理に先立って、上記のようにして得られたCa交換P型ゼオライト粒子を含むスラリーをろ過により固液分離し、水洗し、さらにろ過ケーキを徹底的に粉砕し、この後にスプレー造粒することが重要である。
【0027】
この徹底的粉砕処理は、P型ゼオライトの未粉砕粒子がなくなるまで行う必要があり、具体的には、湿式下でCa交換P型ゼオライト粒子の粒径が中位径0.5μm以下で単峰性の粒度分布となるまで行うことが必要である。これにより、粒子内空隙が大きくなり、最終的に得られるシリカアルミナ系定形粒子のメソ孔細孔容積比を所定の範囲に高めることができる。そして、結果として
図3、
図4のように定形粒子の表面は緻密な状態となる。例えば、この湿式粉砕が行われなかったり、或いは湿式粉砕処理を行ったとしても、中位径が0.5μm以下に達するまで徹底的に行われていない場合には、メソ孔細孔容積比を所定の範囲以上に大きくすることができない。即ち、最終的に得られるシリカアルミナ系定形粒子は、未粉砕粒子の凝集物でしかなく、溶融樹脂が侵入しやすい粒子内空隙を多く有し、その結果、樹脂に配合した時に容易に粒子崩壊してしまい、微粉の発生を免れなくなってしまう。
尚、中位径が0.5μm以下まで粉砕されたか否かは、レーザー回折散乱法により確認することができる。
【0028】
上記のような湿式下での徹底的粉砕処理は、Ca交換P型ゼオライト粒子を水性媒体(通常、水)と混合したスラリーの形態で行われるが、このスラリーの固形分濃度は、粉砕効率を高めるために、通常、5〜25重量%程度に設定される。また、この際、SiO
2/Al
2O
3(モル比)が15を超えない範囲、より好ましくは、Ca交換P型ゼオライト粒子当り5〜20重量%となる量で、コロイダルシリカ等の微細なシリカ粒子をバインダーとして添加することもできる。このようなバインダーの添加により、メソ細孔径が小さくなる方向に細孔分布がシフトし、また、より粒子強度を高め、微粉の発生を抑制することができる。
この粉砕処理に用いる粉砕装置とは、このような高レベルの粉砕可能な装置を用いることが必要であり、一般に、ビッカース硬度が13GPa以上であり且つボール系が5mm以下である高硬度ボール(例えばアルミナボール)などを用い、例えば、ボールミルによる粉砕が挙げられる。
【0029】
上述した湿式下での徹底的粉砕後、スプレー造粒を行い、これにより、粒子の定形化が図られ、例えば球形若しくは球形に近い形状の定形粒子を得ることができる。
尚、ゼオライトスラリーをスプレー造粒することは、例えば前述した特許文献3にも記載されているように公知である。しかしながら、本発明者等の知る限り、このようなスプレー造粒に先立って、ゼオライトスラリーを徹底的に粉砕処理するという手段は、これまで採用されていない。因みに、この特許文献3においては、スプレー造粒前においての粉砕は、その中位径が1μm程度の大きさになる程度のレベルである。
【0030】
本発明において、このようなスプレー造粒は、通常、水性スラリーの固形分濃度を5〜25重量%程度に調整し、二流体ノズルを使用し、1〜5kgf/cm
2程度の噴射圧で行われ、これにより、球形若しくは球形に近い形状に造粒された定形粒子を得ることができる。
【0031】
4.焼成処理;
上記のようなスプレー造粒により得られたCa交換ゼオライトの定形粒子は、焼成処理に付される。
焼成条件は、Ca交換率によっても相違するが、一般に300〜850℃、特に600〜800℃の範囲である。
また、焼成は、固定床、移動床或いは流動床で行うことができ、処理時間は0.5〜5時間の範囲で十分であり、前述したCa交換に加えての焼成によって、P型ゼオライトは完全に非晶質化され、樹脂配合剤として好適な物性が得られる。例えば、この焼成温度が高すぎると、屈折率が樹脂に比してかなり高くなってしまい、樹脂に配合したときに透明性が損なわれるなどの不都合を生じるおそれがある。また、焼成温度が低く、焼成が不十分である場合には、非晶質化が不十分となり、残存するCa交換ゼオライトの結晶構造に由来する吸湿性を示し、樹脂に添加し加工した際に発泡する恐れがある。
焼成後の製品は、適宜、解砕または粉砕し、必要により分級して本発明のシリカアルミナ系定形粒子とする。
【0032】
<シリカアルミナ系定形粒子>
上記のようにして得られる本発明のシリカアルミナ系定形粒子は、Ca交換及び焼成により非晶質に変性されているため、例えば
図2のX線回折像に示されているように、ゼオライトの結晶構造に由来する結晶ピークは完全に消失しており、さらに、その無水物換算での化学組成は、前記式(1)、即ち、
mCaO・nNa
2O・pSiO
2・Al
2O
3 (1)
式中、
m及びnは正の数であり、
m+nが0.9〜1.1、m/nが0.05/0.95〜0.9/0.1
の範囲内にあり、
pは2.3〜15の数である、
で表わされる化学組成を有し、また、熱減量(110℃)は0.1〜5重量%程度である。
【0033】
また、Ca交換後に徹底的粉砕及びスプレー造粒が行われているため、
図3の顕微鏡写真に示されているように、個々の粒子が独立して存在する定形粒子構造を有しており、P型ゼオライトに特有のギザギザな表面も消失した球形もしくは球形に近い定形粒子となっている。
例えば、この定形粒子は、通常、下記式;
A=(r
1・r
2)
1/2/r
1
式中、r
1は、該粒子の電子顕微鏡写真で観察される粒子の外接円半径であり、
r
2は、該粒子の電子顕微鏡写真で観察される粒子の内接円半径である、
で表される真円度が0.70上の範囲にある。
【0034】
さらに、上記のような粒子構造を有しているため、レーザー回折散乱法で測定した体積基準の中位径(D
50)が3〜20μm、特に3〜12μmの範囲にあり、極めて微細であるばかりか、1.3μm以下の微細粒子含有量が8%以下、特に6.5%以下であり、極めてシャープな粒度分布を有しており、嵩密度は0.40〜0.65g/mlと著しく小さな範囲にある。
【0035】
上述した粒子構造に加えて、本発明のシリカアルミナ系定形粒子は、水銀圧入法で測定して細孔半径が1.8〜25nmでの細孔容積が0.15〜0.40ml/gの範囲にあり、前述した徹底的な湿式粉砕により、下記式(2);
メソ細孔容積比(%)=(メソ細孔容積/全細孔容積)×100 (2)
式中、メソ細孔容積は、細孔半径が1.8〜110nmでの細孔容積であり、
全細孔容積は、細孔半径が1.8〜10800nmでの累積細孔容積である、
で定義されるメソ細孔容積比が30%以上とかなり大きくなっている。即ち、徹底的粉砕を行っていないものと比較して、溶融樹脂が侵入しやすい粒子内空隙がかなり小さく狭められている。
【0036】
このような粒子構造を有する本発明のシリカアルミナ系定形粒子は、樹脂に配合したときの耐スクラッチ性に優れており、しかも、微細で粒度分布がシャープであることに加えて嵩密度がかなり小さいことから、所定重量を樹脂に配合した時の粒子数がかなり多く且つ均一に分散させることができ、優れたアンチブロッキング性を発揮する。
【0037】
また、本発明のシリカアルミナ系定形粒子は、先にも述べたように、上記のメソ細孔容積比が大きく、溶融樹脂の侵入しやすい粒子内空隙がかなり狭められており、この結果、粒子強度が高く、樹脂に配合した時或いはその後の加工等により樹脂中で剪断力が加えられたときの粒子の崩壊が抑制され、樹脂中での微粉の発生が有効に防止される。即ち、粒度分布がシャープであり、著しく微細な粒子をほとんど含んでいないばかりか、樹脂中での微粉発生も防止されているため、前述した耐スクラッチ性やアンチブロッキング性が安定にムラなく樹脂中で発揮される。
【0038】
さらに、本発明のシリカアルミナ系定形粒子は、P型ゼオライトを原料として得られたものであることから、その屈折率は各種樹脂の屈折率に近似しており、例えば、その屈折率は1.49〜1.53程度の範囲にある。従って、樹脂フィルムに配合したときに、樹脂と粒子の界面での散乱による透明性の低下を大幅に抑えることができる。フィルム表面には配合した粒子に由来した凸部が発生するが、この凸部はアンチブロッキング性を発現させていると同時に、透明性を低下させる要因にもなっている。この凸部が十分な大きさでないとアンチブロッキング性が発現されず、透明性を低下させるだけである。すなわち、微粉を多く含む粒子では樹脂フィルムに配合した時にその透明性が低下する。しかるに、本発明では、このような微粉の発生を有効に抑制できるため、透明性の低下も有効に回避することができる。
【0039】
加えるに、本発明のシリカアルミナ系定形粒子では、ゼオライトの結晶構造が消失しているため吸湿量も少なく、樹脂に混合して熱成形を行ったときの発泡を有効に防止できる。また、ハンター反射法による白色度が90%以上と白色度に優れている。
【0040】
<用途>
上述した説明から理解されるように、本発明のシリカアルミナ系定形粒子は、アンチブロッキング剤として極めて有用であり、耐スクラッチ性も良好であり、フィルム等に配合した時に、フィルム同士の擦れなどによりフィルム表面に傷をつけることもない。従って、この定形粒子は、種々の樹脂、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、結晶性ポリプロピレン−エチレン共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の熱可塑性ポリエステル;6−ナイロン、6,6−ナイロン等のポリアミド;塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂等の塩素含有樹脂;ポリカーボネート;ポリスルホン類;ポリアセタール等の熱可塑性樹脂に配合し、樹脂成形品、例えば二軸延伸フィルム等にアンチブロッキング性を付与する目的に好適に使用できる。
【0041】
また、本発明のシリカアルミナ系定形粒子は、微粉含有量が低いことに加え、定形粒子内にメソ細孔を有することで嵩密度が小さくなるため、少量の配合で樹脂中に多数の粒子を存在させることができ、先にも述べたように、少量の配合量であっても優れたアンチブロッキング性を確保することができる。
例えば、アンチブロッキング性を発現するために、アンチブロッキング剤として、上述した熱可塑性樹脂100重量部当り、0.01〜5重量部、特に0.10〜0.6重量部の量で、本発明のシリカアルミナ系定形粒子を配合すればよい。この際、その透明性を低下させることもなく、また、フィルム成形に際しての発泡も効果的に防止されることは上記で述べた通りである。
【0042】
尚、本発明においては、このシリカアルミナ定形粒子の表面を、無機酸化物、例えば酸化チタン、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、或いはシラン系、チタニウム系もしくはジルコニウム系のカップリング剤、脂肪酸、樹脂酸や各種石鹸、アミド、エステル等の誘導体で被覆し或いは表面処理して各種の樹脂に配合することもできる。
【0043】
さらに、本発明のシリカアルミナ系定形粒子は、上記以外にも、成形用熱硬化型樹脂や被覆形成用塗料に対する充填剤または補強剤、更にはセラミックス基材としての用途に供することもできるし、各種紙に対する内填剤や紙に対するコート用充填剤、パウダーファンデーション、液状(ペースト)ファンデーション、ベビーパウダー、クリーム等の種々の化粧料基剤、研磨剤、歯磨き基剤、医薬、農薬、香料、芳香剤等を担持させるための担体としても有用であり、各種クロマトグラフィ用担体としての用途にも供給することができる。
【実施例】
【0044】
本発明の優れた効果を、次の実験例で説明する。なお、シリカアルミナ系定形粒子の各種物性は、以下の方法で測定した。
【0045】
(1)化学組成;
元素分析については、(株)リガク製
Rigaku RIX 2100を用い、ターゲットはRh、分析線はK
α、検出器はPCで以下の条件で測定を行った。なお、試料は150℃で2時間乾燥した物を基準とする。
【表1】
得られた分析データより、Al
2O
3、CaO、Na
2O、SiO
2、の化学組成値を求め、Al
2O
3に対する各モル比m、n、pの値を算出した。
【0046】
(2)X線回折(XRD);
Rigaku製RINT−UltimaIVを用いて、下記条件でX線回折を行った。
ターゲット:Cu
電圧:40kV
電流:40mA
ステップサイズ:0.02°
走査速度(ステップ):2°/min
スリット:DS2/3° RS0.3mm SS2/3°
【0047】
(3)中位径(D
50);
Malvern社製Masterizer3000を使用し、溶媒に水を用いてレーザー回折散乱法で体積基準での中位径(D
50)を測定した。
【0048】
(4)嵩密度;
JIS.K.6220−1 7.7:2001に準拠して測定した。
【0049】
(5)水銀圧入法による細孔容積;
Micromeritics社製オートポアIV9500を用いて水銀圧入法による細孔容積および細孔分布を測定した。細孔半径10800〜1.8nmまで測定しその累積細孔容積を全細孔容積とし、このうち細孔半径110〜1.8nmをメソ細孔と定義しこの区間の細孔容積をメソ細孔容積とした。また、下記式(2);
メソ細孔容積比(%)=(メソ細孔容積/全細孔容積)×100
式中、メソ細孔容積は、細孔半径が1.8〜110nmでの細孔容積であり、
全細孔容積は、細孔半径が1.8〜10800nmでの累積細孔容積である、
で計算した割合をメソ細孔容積比と定義した。なお、細孔半径1.8〜25nmでの細孔容積と5〜10nmでの細孔容積もそれぞれ測定した。
細孔分布の縦軸の表記は、メソ細孔の有無の判断および細孔容積の大きさを比較する場合には累積細孔容積、メソ細孔の半径を比較する場合にはdV/dR細孔容積を用いた。
【0050】
(原料P型ゼオライトの調製1)
3号ケイ酸ソーダ(SiO
2:22.6mass%、Na
2O:7.31mass%)、アルミン酸ソーダ(Al
2O
3:24.1mass%、Na
2O:19.3mass%)、49%苛性ソーダおよび水を用いて、下記モル比で全体が2630gになるように希ケイ酸ソーダ液(A液)と希アルミン酸ソーダ液(B液)を調製した。苛性ソーダはB側に、水はA液B液が同体積になるよう調整した。
配合条件(モル比)
Na
2O/SiO
2=0.85
SiO
2/Al
2O
3=4.0
H
2O/Na
2O=70
上記のA液を3Lステンレス製容器に入れ、60℃に加温しながら攪拌下B液をゆっくり混合し、全体が均一なアルミノケイ酸アルカリゲルとした。1時間の熟成後、このアルミノケイ酸アルカリゲルを攪拌しながら95℃まで昇温し、15時間反応して結晶化を行なった。次いで濾過、水洗して中位径(D
50)=3.3μmのNa−P型ゼオライト球状粒子のケーキを得た。固形分濃度35mass%であり、固形分換算にして223gのNa−P型ゼオライトケーキ(S−1)が回収された。
【0051】
(原料P型ゼオライトの調製2)
ゼオライトケーキ(S−1)を種晶に用いてP型ゼオライトを以下の様に調製した。S−1のケーキを固形分10mass%になるように水で希釈し、3mmΦのアルミナボール4.19kgとともに内容量6.3Lの磁性ポットミルに入れた。10時間湿式粉砕を行い、中位径(D
50)=0.38μmの種晶スラリーを得た。つぎに、上記のアルミノケイ酸アルカリゲルを下記モル比で全体が2630gになるように調整し、これに予想される収量に対して5mass%の種晶スラリーを加えた。
配合条件(モル比)
Na
2O/SiO
2=0.75
SiO
2/Al
2O
3=4.5
H
2O/Na
2O=60
1時間の熟成後、このアルミノケイ酸アルカリゲルを攪拌しながら95℃まで昇温し、95℃を保ちながら36時間反応して結晶化を行なった。次いで濾過、水洗して微細な凝集構造を有するNa−P型ゼオライトのケーキ(S−2)を得た。特に、95℃に加熱する条件として過熱蒸気を直接アルミノケイ酸ゲルに当てた時は、凝集体が崩壊したNa−P型ゼオライトのケーキ(S−3)が得られる。
【0052】
(Ca交換処理)
Na−P型ゼオライト(S−1、S−2またはS−3)を20mass%のスラリーに希釈した後、ゼオライト中のNa
2Oに対し、S−1あるいはS−3を使う時は1.0モルとなるCaCl
2水溶液を、S−2を使う時は0.75モルとなるCaCl
2水溶液を加え、それぞれについて60℃にて1時間攪拌しイオン交換を行なった。次いで濾過、水洗し、S−1からCa−P型ゼオライトケーキ(S−4)を、S−2からCa−P型ゼオライトケーキ(S−5)を、S−3からCa−P型ゼオライトケーキ(S−6)得た。
【0053】
(実施例1)
Ca−P型ゼオライトケーキ(S−5)を固形分10mass%になるように水で希釈し、3mmΦのアルミナボール4.19kgとともに内容量6.3Lの磁性ポットミルに入れた。4時間かけて徹底的に湿式粉砕を行い、中位径(D
50)=0.30μmのスラリーを得た。このスラリーをアンハイドロ社製噴霧乾燥機Lab.1にて、二流体ノズルより液量1L/h、噴霧圧3.0kgf/cm
2で150℃の乾燥雰囲気中に噴霧し、Ca−P型ゼオライトの定形粒子を得た。この定形粒子を坩堝に入れて小型電気炉にて750℃で1時間焼成し、シリカアルミナ系定形粒子を得た。その製造条件と物性を表2に示す。また、本発明のシリカアルミナ系定形粒子のX線回折像を
図2に、電子顕微鏡写真を
図3に、水銀圧入法で測定した細孔分布を
図6(縦軸:累積細孔容積)および
図7(縦軸:dV/dR細孔容積)に示す。
【0054】
(実施例2)
Ca−P型ゼオライトケーキを球状Ca−P型ゼオライトケーキ(S−4)に変更し、徹底的湿式粉砕を16時間行うことで得られた中位径(D
50)=0.41μmのスラリーを噴霧した以外は、実施例1と同じ条件でシリカアルミナ系定形粒子を得た。その製造条件と物性を表2に示す。
【0055】
(実施例3〜6)
徹底的に湿式粉砕するゼオライトの固形分濃度、あるいは、噴霧乾燥条件を表2に示したとおり変更した以外は、実施例1と同じ条件でシリカアルミナ系定形粒子を得た。各製造条件と物性を表2に示す。
【0056】
(実施例7)
実施例1の徹底的湿式粉砕で得られた中位径(D
50)=0.30μmのスラリーにゼオライト固形分の5mass%のコロイダルシリカを混合したスラリーを、実施例1と同じ条件で噴霧乾燥と焼成を行い、シリカアルミナ系定形粒子を得た。その製造条件と物性を表2に示す。
【0057】
(実施例8〜9)
混合するコロイダルシリカの重量比条件を表2に示したとおり変更した以外は、実施例7と同じ条件でシリカアルミナ系定形粒子を得た。各製造条件と物性を表2に示す。また、実施例8の電子顕微鏡写真を
図4に、実施例7〜9の水銀圧入法で測定した細孔分布を
図8(縦軸:累積細孔容積)および
図9(縦軸:dV/dR細孔容積)に示す。
【0058】
(比較例1)
球状Ca−P型ゼオライトケーキ(S−4)を坩堝に入れて小型電気炉にて750℃で1時間焼成し、シリカアルミナ系定形粒子を得た。その製造条件と物性を表2に示す。また、電子顕微鏡写真を
図5に、水銀圧入法で測定した細孔分布を
図6(縦軸:累積細孔容積)および
図7(縦軸:dV/dR細孔容積)に示す。
【0059】
(比較例2)
焼成するゼオライトをCa−P型ゼオライトケーキ(S−5)に変更した以外は、比較例2と同じ条件でシリカアルミナ系定形粒子を得た。その製造条件と物性を表2に示す。また、水銀圧入法で測定した細孔分布を
図6(縦軸:累積細孔容積)および
図7(縦軸:dV/dR細孔容積)に示す。
【0060】
(比較例3)
焼成するゼオライトをCa−P型ゼオライトケーキ(S−6)に変更した以外は、比較例2と同じ条件でシリカアルミナ系定形粒子を得た。その製造条件と物性を表2に示す。
【0061】
(比較例4)
Ca−P型ゼオライトケーキ(S−5)を1時間かけて湿式粉砕を行い、中位径(D50)=0.92μmのスラリーを得た。このスラリーを実施例1と同じ条件で噴霧乾燥および焼成しシリカアルミナ系定形粒子を得た。その製造条件と物性を表2に示す。また、水銀圧入法で測定した細孔分布を
図6(縦軸:累積細孔容積)および
図7(縦軸:dV/dR細孔容積)に示す。
【0062】
(比較例5)
球状Ca−P型ゼオライトケーキ(S−4)を6時間かけて湿式粉砕を行い、中位径(D
50)=0.95μmのスラリーを得た。このスラリーを実施例1と同じ条件で噴霧乾燥および焼成しシリカアルミナ系定形粒子を得た。その製造条件と物性を表2に示す。
【0063】
【表2】