特許第6129074号(P6129074)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6129074-溶鉱炉の内張り用複合材耐火物 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6129074
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】溶鉱炉の内張り用複合材耐火物
(51)【国際特許分類】
   F27D 1/00 20060101AFI20170508BHJP
   C04B 35/52 20060101ALI20170508BHJP
   C04B 37/00 20060101ALI20170508BHJP
   C21B 7/04 20060101ALI20170508BHJP
   F27D 1/06 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   F27D1/00 N
   C04B35/52
   C04B37/00 A
   C21B7/04
   F27D1/06
【請求項の数】26
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-523647(P2013-523647)
(86)(22)【出願日】2012年4月23日
(65)【公表番号】特表2013-539003(P2013-539003A)
(43)【公表日】2013年10月17日
(86)【国際出願番号】EP2012057341
(87)【国際公開番号】WO2013007408
(87)【国際公開日】20130117
【審査請求日】2012年10月19日
【審判番号】不服2015-15519(P2015-15519/J1)
【審判請求日】2015年8月20日
(31)【優先権主張番号】11173453.9
(32)【優先日】2011年7月11日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512298708
【氏名又は名称】エスゲーエル カーボン ソシエタス ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】SGL Carbon SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ヤヌシュ トマラ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ヴィーベル
(72)【発明者】
【氏名】フランク ヒルトマン
【合議体】
【審判長】 鈴木 正紀
【審判官】 河本 充雄
【審判官】 河野 一夫
(56)【参考文献】
【文献】 特表平10−501877(JP,A)
【文献】 特開平5−71880(JP,A)
【文献】 特開平8−338689(JP,A)
【文献】 特開2005−162607(JP,A)
【文献】 特開平10−297978(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D1/00-1/18
F27B1/00-3/28
C21B7/00-7/06
C04B35/52-35/56,37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐摩耗性保護を提供する保護層及び熱流を提供する伝導層からなる積層複合材であり、個々の層の間の層間結合強度が6MPaを上回り、前記保護層が、熱的、化学的及び機械的耐摩耗性に対する保護を提供する、耐火物。
【請求項2】
個々の層の間の層間結合強度が、少なくとも7MPaである、請求項1記載の耐火物。
【請求項3】
少なくとも1の層の曲げ強度が、層間結合強度よりも高い、請求項1または2記載の耐火物。
【請求項4】
少なくとも1の層の曲げ強度が、6MPaを上回る、請求項記載の耐火物。
【請求項5】
接着剤及び/又は機械的固定要素を含まない、請求項1からのいずれか1項記載の耐火物。
【請求項6】
少なくとも実質的に立方体の形状を有し、その際、層は、その底部表面又はその側部表面に沿って一緒に結合している、請求項1からのいずれか1項記載の耐火物。
【請求項7】
少なくとも実質的に立方体の形状を有し、その際、保護層及び伝導層は、その底部表面に沿って一緒に結合しており、かつ、保護層の厚さが、耐火物の全厚の10〜25%又は30〜45%である、請求項記載の耐火物。
【請求項8】
少なくとも実質的に立方体の形状を有し、その際、保護層及び伝導層は、その側部表面に沿って一緒に結合しており、かつ、保護層の厚さが、耐火物の全厚の10〜25%又は30〜45%である、請求項記載の耐火物。
【請求項9】
伝導層が、保護層の熱伝導率を100%とした場合に、保護層の熱伝導率よりも少なくとも25%より高い熱伝導率を1500℃で有する、請求項1からのいずれか1項記載の耐火物。
【請求項10】
伝導層の熱膨張率と保護層の熱膨張率の差が、23℃〜1500℃の温度で、多くとも0.6μm(K・m)である、請求項1からのいずれか1項記載の耐火物。
【請求項11】
以下の工程:
a)保護層のための混合物、及び、伝導層のための混合物、を提供する工程、
b)工程a)において提供された混合物から積層したグリーンブロックを形成する工程、及び
c)工程b)のグリーンブロックをベーキングする工程、
を含請求項1から10のいずれか1項記載の耐火物の製造方法
【請求項12】
工程b)における形成が、バイブロ成形、ブロックプレス、単軸プレス又はアイソスタティックプレスにより実施される、請求項11記載の耐火物の製造方法
【請求項13】
工程a)において提供される保護層のための混合物が、乾燥混合物及びバインダーに対して、少なくとも20質量%のか焼した無煙及び少なくとも3質量%のケイ素を含有する、請求項11又は12記載の耐火物の製造方法
【請求項14】
工程a)において提供される保護層のための混合物が、さらに酸化物セラミックスを含有する、請求項12記載の耐火物の製造方法
【請求項15】
工程a)において提供される保護層のための混合物が、さらに非酸化物セラミックスを含有する、請求項13又は14記載の耐火物の製造方法
【請求項16】
工程a)において提供される保護層のための混合物が、さらにグラファイトを含有する、請求項13から15のいずれか1項記載の耐火物の製造方法
【請求項17】
工程a)において提供される保護層のための混合物が、
−次のものの乾燥混合物:
−別の炭素質材料と任意に混合した、か焼した無煙10〜95質量%、
−ケイ素3〜20質量%、
−酸化アルミニウム、二酸化チタン、ケイ酸アルミニウム及び2以上の前述の化合物の混合物からなる群から選択されている酸化物セラミックス2〜30質量%、
−非酸化物セラミックス0〜20質量%、及び
−合成又は天然のグラファイト又は両者の混合物0〜30質量%、
及び
−少なくとも1のバインダー
を含有する、請求項13から16のいずれか1項記載の耐火物の製造方法
【請求項18】
工程a)において提供される伝導層のための混合物が、乾燥混合物及びバインダーに対して、少なくとも30質量%の合成又は天然のグラファイト又は両者の混合物を含有する、請求項11から1のいずれか1項記載の耐火物の製造方法
【請求項19】
工程a)において提供される伝導層のための混合物が、さらに少なくとも10質量%の更なるか焼した無煙を含有する、請求項1記載の耐火物の製造方法
【請求項20】
工程a)において提供される伝導層のための混合物が、さらに酸化物セラミックスを含有する、請求項1又は1記載の耐火物の製造方法
【請求項21】
工程a)において提供される伝導層のための混合物が、さらにケイ素を含有する、請求項1から20のいずれか1項記載の耐火物の製造方法
【請求項22】
工程a)において提供される伝導層のための混合物が、
−次のものの乾燥混合物:
−合成又は天然のグラファイト又は両者の混合物20〜80質量%、
−別の炭素質材料と任意に混合した、か焼した無煙20〜80質量%、
−ケイ素0〜20質量%、及び
−酸化アルミニウム、二酸化チタン、ケイ酸アルミニウム及び2以上の前述の化合物の混合物からなる群から選択された酸化物セラミックス0〜20質量%、
及び
−少なくとも1のバインダー、
を含有する、請求項18から21のいずれか1項記載の耐火物の製造方法
【請求項23】
工程c)においてグリーンブロックを1100〜1400℃の温度でベーキングする、請求項11から22のいずれか1項記載の耐火物の製造方法
【請求項24】
熱処理したブロックを工程c)に応じたベーキングの前及び/又は後に含浸剤で含浸し、その際、含浸したグリーンブロックをベーキングする、請求項11から23のいずれか1項記載の耐火物の製造方法
【請求項25】
請求項1から10のいずれか1項記載の耐火物少なくとも1を含有する内張りを含む溶鉱炉。
【請求項26】
溶鉱炉の内張りにおける請求項1から10のいずれか1項記載の耐火物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に溶鉱炉の内張り用である耐火物、かかる耐火物を含有する内張りを含む溶鉱炉、及び、溶鉱炉の内張りにおけるかかる耐火物の使用、に関する。
【0002】
耐火物は、高温、例えば1000℃超の温度で高強度を維持することによって特徴付けられる。このために、耐火物は、高い耐熱性が必要とされる複数の適用において、例えば炉、キルン、焼却炉及び反応器の内張りにおいて、溶融物のためのるつぼのための材料又はその類似物として使用される。
【0003】
溶鉱炉の内張りにおいて使用される耐火物は、特に、複数の要求、例えば高い耐火性、溶鉱炉設計に関して適度な熱伝導率、高い機械的強度、例えば2000℃までの温度での高い圧縮強度、を満たすべく、優れた耐摩耗性及び高い耐酸化性を有し、というのも、溶鉱炉は常に、その寿命の間に、熱的、化学的及び機械的摩耗に曝露されているからである。最後に、溶鉱炉の寿命は、熱的、化学的及び機械的摩耗に関する、その耐火性の抵抗性により決定される。また、液体ホットメタル及びスラグ中の溶解に対する高い抵抗性が、溶鉱炉の内張りの耐火物のために所望される。前述の特性は、溶鉱炉のハース壁において使用すべき耐火物のために特に重要であり、というのも、これはその運転の間に温度因子、化学的攻撃及び高温金属流動現象からの極めて強力なストレスに曝露されているからである。
【0004】
溶鉱炉の内張り用の現在の耐火物は、2000℃までの温度での炭素及びグラファイトの高い耐火性及び満足のいく圧縮強度のために、炭素及びグラファイト材料を基礎とする。これら耐火物は、典型的には、炭素質材料を含む原材料混合物からグリーンブロックを形成し、このグリーンブロックを1000℃超の温度で熱処理することによって製造される。しかし、標準的な炭素材料は、低い耐摩耗性、特にアルカリに対する低い抵抗性、酸化に対する低い抵抗性、炭素で飽和していない液体ホットメタル及びスラグ中での炭素材料の溶解に対する不十分な抵抗性、及び、その孔中への液体ホットメタルの比較的高い浸透性、しか提供しないという欠点を有する。炭素及びグラファイトの前述の欠点のある特性を少なくとも部分的に補償又は改善するためには、特定の添加剤が、炭素及びグラファイト材料へと通常は添加される。例えば、微細粉末化ケイ素がしばしばかかる材料へと添加され、というのも、これによって−熱処理の間の炭化ケイ素への変換に伴って−耐火物中で孔直径の減少が引き起こされ、耐火物中への液体ホットメタルの浸透が減少するか又は完全に回避さえされるような低い値になるからである。他方では、酸化アルミニウムの添加は、液体ホットメタル及びスラグ中の炭素の溶解に対する材料の抵抗性を増加させる。
【0005】
必要とされる特性、特に炭素ベースの耐火物の耐摩耗性をさらに改善すべく、炭素材料の1以上の層上に保護層としてセラミックスカップを配置することが既に提案されている。セラミックスカップは主として、必要な耐摩耗性を耐火物に付与する機能を有する一方で、炭素材料は必要とされる熱伝導率に作用する。例えば、EP0040440 B1は、−下から上へと−グラファイトの薄層、慣用の炭素の層、グラファイト層、半グラファイトの中間層及び高含有量の酸化アルミニウムを含む耐火煉瓦の層、を含む、溶鉱炉のための底部ライニングを開示する。しかし、セラミックスカップを含むライニングは、セラミックスカップの取付けが高価かつ労働集約的であり、こうしてさらに、内張りの取付け及び取り替えの間の溶鉱炉の休止時間を増加させるという欠点を有する。
【0006】
その上、異なる熱伝導率を有し、かつ、異なる耐摩耗性を有する、2以上の接着させた層を含む耐火物ブロックが知られている。US2005/0254543 A1は、例えば、アルミニウムの製造のための炭素熱還元炉の内張りを記載し、前記内張りは、グラファイトの基礎層とそれにコランダム接着させたセラミックスコーティング層を有する。上側のセラミックス層が必要な耐摩耗性を耐火物に付与する一方で、グラファイトの下側の基礎層は必要とされる熱伝導性を耐火物に付与する。しかし、これら耐火物もまた高価である。より重要なことには、これら耐火物は、接着させた層の間の比較的弱い結合強度のために、特に高温に関して限定した抵抗性しか提供しない。この比較的弱い結合強度のせいで、そして、個々の層の異なる熱膨張率のために、特に高温に曝露されると、耐火性ブロック中にクラックが容易に形成される。こうして、一般に、接着又は機械的固定要素により溶鉱炉中に取り付けられたライニング材料のアセンブリーは、比較的短い寿命を有する。
【0007】
相応して、本発明の基礎となる課題は、前述の欠点を克服する、すなわち、コスト効率的であり、取付けが容易であり、長い寿命を有し、かつ、溶鉱炉の内張りとしての使用のために特に必要とされる、優れた機械的及び熱的特性を有する、耐火物を提供することである。これら特性は、適度な熱伝導性、高い機械的強度、優れた酸化抵抗性、優れた耐摩耗性、例えば、溶融したホットメタル及びスラグ中の溶解に関する良好な抵抗性、特に高温に関する優れた抵抗性、を含むことが望ましい。
【0008】
本発明によれば、前記課題は、保護層及び伝導層を含む積層複合材であり、個々の層の間の層間結合強度(interlayer bonding strength)が6MPaを上回る、特に溶鉱炉の内張りにおける使用のための、耐火物により満足される。
【0009】
この解決策は、保護層及び伝導層を含み、高い結合強度で、すなわち、6MPaを上回る層間結合強度(この強度は、2つの層の接着及び/又は機械的固定を介して得られる結合強度を上回る)で一緒に結合されている、積層複合材の形にある耐火物が、優れた機械的及び熱的安定性、特に高温に関する優れた抵抗性を、溶鉱炉の運転の間に存在する強力な条件下でさえも有する、という意外な知見に基づく。以下でより詳細に説明するとおり、隣接する層の間のこの強力な結合は、バイブロ成形、ブロックプレス、単軸プレス、アイソスタティックプレス又は押出工程、を含む方法を用いて複合材を製造することにより達成されてよい。高温に関する本発明の耐火物の優れた抵抗性は、個々の複合材層の固い結合のために、耐火物の離層が、−2以上の接着された及び/又は機械的に固定された層でなる各アセンブリーとは対照的に−耐火物が高温に又は迅速な温度変化又は少なくとも相対的に迅速な温度変化、例えば、溶鉱炉の起動時の温度変化に曝露される場合にさえ、溶鉱炉の運転の間に信頼して回避されている、という事実によるものである。
【0010】
そのために、本発明の耐火物は、極めて長い寿命を有する。
【0011】
さらに、本発明の耐火物は、異なる特性に関するその双方の側面、すなわち、溶鉱炉の運転の間に鉄溶融物へと向けられている、耐火物の側面(以下では、この側面はホット側面又は保護側面とも称され、熱的、化学的及び機械的耐摩耗性に関する)を、また同様に、耐火物の逆の側面(以下では、熱流に関してコールド側面又は伝導側面とも称される)、を最適化することを可能にする。
【0012】
追加的に又は代わりに、保護側面は、溶鉱炉の運転の間に天然のスカル形成(in situで形成される鉄含有保護層)を支援するその能力に関して最適化されていてよい。本発明の耐火物は、保護層及び伝導層により付与される異なる特性を単一の複合材において組み合わせるので、炭素質材料の1の層、及び、セラミックス材料の第2の異なる層を含む慣用の耐火物よりも、より容易かつよりコスト効率的に取り付けられることができる。
【0013】
「層間結合強度」との用語は、本発明によれば、表題「Carbonaceous materials used in the production of aluminium - Prebaked anodes and cathode blocks - Part 2: Determination of flexural strength by the four-point method」を有するISO 12986−2方法において説明された試料で測定した曲げ強度を意味し、その際、この試料は、以下のとおりに調製されている:耐火物の層間領域から直径30mm及び長さ110mmでもってシリンダー状試験体をドリルする。より具体的には、試料は、2つの隣接する耐火物層の間にある界面を通じて、この界面が生じるコアのその中央に又は少なくともほぼ中央に存在するように垂直に又は少なくともほぼ垂直にコアドリルすることにより調製している(図3に示すとおり)。この全試料を、層間結合強度の測定前に少なくとも1000℃で処理し、これは、かかる耐火物のための通常の製造において保証されている。層間結合強度自体の測定を次いで、ISO 12986−2に説明されるとおり、室温で実施する。
【0014】
その上、「保護層及び伝導層を含む積層複合材」との書き方は、複合材、すなわち、少なくとも2の異なる材料の単一ピースのアセンブリーが、少なくとも2の層、すなわち、少なくとも1の保護層及び少なくとも1の伝導層を有するが、更なる層、例えば1以上の中間層(例えば、保護層と伝導層の間に配置されている)及び/又は第2の保護層及び/又は第2の伝導層を含有してよいことを意味する。積層複合材がどれだけ多くの層を含むかとは関係なく、複合材の全ての層は(外側層の場合には)1の隣接する層へと又は(内側層の場合には)2つの隣接する層へと結合され、その際、全ての2つの隣接物の間の層間結合強度は、本発明に一致して6MPaを上回る。この関連において、中間層とは、本発明によれば、隣接する層とは異なる組成を有する層であると留意されたい。しかし、複合材の製造の間に、例えばバイブロ成形工程において、得られる混合層は、これら層の界面での少ない体積の隣接する層の相互浸透の結果として、本特許出願においては、境界層であると考慮され、したがって、隣接する層の他の追加の層としては考慮されない。
【0015】
上で説明したとおり、本発明の複合材の全ての隣接する層の間の層間結合強度は、6MPaを上回る。本特許出願の個々の層の間の層間結合強度が高いほど、高温に関する耐火性の抵抗性は高い。このため、複合材の全ての隣接する層の間の層間結合強度が、可能な限り高いことが好まれる。この理由から、個々の層の間の層間結合強度が少なくとも7MPa、より好ましくは少なくとも7.5MPa、さらにいっそうより好ましくは少なくとも8MPa、特により好ましくは少なくとも8.5MPa、さらにより好ましくは少なくとも9MPa、よりいっそう好ましくは少なくとも9.5MPa、最も好ましくは少なくとも10MPaであることが好ましい。かかる強力な結合強度は、例えば、バイブロ成形(vibro molding)、ブロックプレス、単軸プレス、アイソスタティックプレス又は押出により得ることができる。
【0016】
最も簡易な場合(この場合が、特に好ましい)には、本発明に応じた耐火物が、保護層及び伝導層のみからなる。製造方法に依存して、この実施態様の保護層と伝導層の間には、混合層が存在してよく、これは、複合材の製造の間に、例えばバイブロ成形工程の間に、少ない体積の保護層及び伝導層の相互浸透の結果として、形成される。上で説明したとおり、かかる混合層は、本特許出願においては、追加の層としては考慮されず、むしろ境界層として考慮される。保護層が好ましくは、熱的、化学的及び機械的耐摩耗性に関して及び任意にさらに溶鉱炉の運転の間の天然のスカル形成を支援するその能力に関して最適化されている材料から構成されている一方で、伝導層は好ましくは、熱流に関して最適化されている材料から構成されている。以下により詳細に説明するとおり、天然のスカル形成の支援は、1以上のセラミックス添加剤、好ましくは酸化アルミニウム及び二酸化チタンを含むマイクロ孔ストラクチャーの保護層を提供することにより達成されてよい。
【0017】
本発明の代替的な一実施態様によれば、耐火物は、外部保護層、外部伝導層、及び、前記外部保護層と外部伝導層との間に配置された1以上の中間層、からなってよい。原則的に、保護層の上に、更なる第2の保護層が配置され、及び/又は、伝導層の上に、更なる第2の伝導層が配置されていることも可能である。しかし、コストの観点を考慮するとこの態様は好ましくない。
【0018】
耐火物の少なくとも1の層の曲げ強度が層間結合強度よりも高いことが好ましい。耐火物の全ての層の曲げ強度が、層間結合強度よりも高いことが、さらによりいっそう好ましい。耐火物が、それぞれ、2より多い層、ひいては2又はそれより多い界面又は境界層を含む場合には、好ましくは、耐火物の少なくとも1の層の曲げ強度、より好ましくは耐火物の全ての層の曲げ強度は、少なくとも最も低い層間結合強度より高い。こうして、層間結合強度とは独立して、複合材の少なくとも1の層の曲げ強度が、より好ましくは複合材の全ての層の曲げ強度が、6MPaを上回る、好ましくは少なくとも7MPa、より好ましくは少なくとも7.5MPa、さらにいっそうより好ましくは少なくとも8MPa、特により好ましくは少なくとも8.5MPa、さらにより好ましくは少なくとも9MPa、よりいっそう好ましくは少なくとも9.5MPa、最も好ましくは少なくとも10MPaである。層の曲げ強度は、ISO 12986−2に説明される方法を用いて決定され、その際、この試料は次のように調製される:耐火物の層から、直径30mm及び長さ110mmでシリンダー状試験体をドリルする。より具体的には、試料は、本発明に応じた複合材から取り出される場合には、界面に対して垂直又は少なくともほぼ垂直にコアドリルすることにより調製されている。こうして、コア試料の可能性のある構造的配向は、複合材コア試料におけるものと同じである。試料が、単独保護層又は単独伝導層からなる比較試料から取り出される場合には、この試料は、コア試料の可能性のある構造的配置が、複合材コア試料におけるのと同じであるように、複合材の試料の方向に相応する方向におけるコアドリルにより調製されている。全試料を、曲げ強度の測定前に少なくとも1000℃で処理し、これはかかる耐火物の通常の製造において保証されている。曲げ強度自体の測定を次いで、ISO 12986−2に説明されるとおり、室温で実施する。
【0019】
上述のとおり、6MPaを上回る耐火物の個々の層の間の高い層間結合強度は、接着剤及び/又は機械的固定要素、例えばねじ、ボルト又は類似物を用いては、特に、耐火物がその調製の間に1000℃を上回る温度への熱処理に曝露されている場合には、達成されることができない。この理由から、耐火物が接着剤及び/又は機械的固定要素を含むことは必要でなく、実際には、本発明による耐火物が、接着剤及び/又は機械的固定要素を全く含まないことが特に好ましい。
【0020】
原則的に、耐火物は、任意の既知の三次元的形状を有してよい。しかし、溶鉱炉中へと容易に取り付けることができるようにするために、耐火物がブロックの形態、すなわち、少なくとも実質的に立方体の形状を有することが好ましい。ブロックの個々の隣接する層は、その底部表面に沿って又は側部表面に沿って一緒に結合されていてよい。第1に言及した場合には、ブロックはサンドウィッチ状のデザインを有し、その一方で、後者で言及した場合には、ブロックはシシカバブ状のデザインを有する。第1に言及した形状が溶鉱炉の底部ライニングにおける使用には特に好ましく、後者に言及した複合材の形状は、溶鉱炉のハース壁のライニングにおける使用に特に好適である。
【0021】
本発明の第1の好ましい実施態様によれば、耐火物は、二層複合材であり、すなわち、保護層及び伝導層からなり、かつ、少なくとも実質的に立方体の形状を有し、その際、保護層及び伝導層はその底部表面に沿って一緒に結合されている。この実施態様において、保護層の厚さは好ましくは耐火物の全厚の10〜50%であり、かつ、伝導層の厚さは好ましくは耐火物の全厚の50〜90%である。特に、耐火物が熱流に関して最適化されている場合には、保護層の厚さが、耐火物の全厚の10〜25%であり、伝導層の厚さが、好ましくは、耐火物の全厚の75〜90%であることが好ましい。これとは対照的に、耐火物がスカル形成の簡易化に関して最適化されている場合には、保護層の厚さが、耐火物の全厚の30〜45%であり、伝導層の厚さが、好ましくは、耐火物の全厚の55〜70%であることが好ましい。無論、保護層の厚さ及び伝導層の厚さの合計は100%である。この実施態様では、8〜9MPaの、保護層と伝導層の間の層間結合強度は、この複合材をバイブロ成形、ブロックプレス、単軸プレス、アイソスタティックプレス又は押出により調製することにより、容易に得られることができる。
【0022】
本発明の第2の好ましい実施態様によれば、耐火物は、二層複合材であり、すなわち、保護層及び伝導層からなり、かつ、少なくとも実質的に立方体の形状を有し、その際、保護層及び伝導層はその側部表面に沿って一緒に結合されている。この実施態様においても、保護層の厚さは好ましくは耐火物の全厚の10〜50%であり、かつ、伝導層の厚さは好ましくは耐火物の全厚の50〜90%である。やはり、耐火物が熱流に関して最適化されている場合には、保護層の厚さが、耐火物の全厚の10〜25%であり、伝導層の厚さが、好ましくは、耐火物の全厚の75〜90%であることが好ましい。これとは対照的に、耐火物がスカル形成の簡易化に関して最適化されている場合には、保護層の厚さが、耐火物の全厚の30〜45%であり、伝導層の厚さが、好ましくは、耐火物の全厚の55〜70%であることが好ましい。この実施態様において、保護層の厚さ及び伝導層の厚さの合計もやはり100%である。10〜11MPaの、保護層と伝導層の間の層間結合強度は、この複合材をバイブロ成形、ブロックプレス、単軸プレス、アイソスタティックプレス又は押出により調製することにより、容易に得られることができる。
【0023】
本発明の第3の好ましい実施態様によれば、耐火物は、保護層、伝導層、及び、前記保護層と伝導層の間に配置された1以上の中間層からなり、その際、耐火物は、少なくとも実質的に立方体の形状を有し、その際、保護層、伝導層及び1以上の中間層は、その底部表面に沿って一緒に結合されている。この実施態様においては、耐火物の全厚に対して、保護層の厚さは好ましくは10〜40%、全ての中間層の全厚は好ましくは5〜25%、そして、伝導層の厚さは好ましくは45〜85%である。無論、この実施態様において、保護層の厚さ及び伝導層の厚さの合計もやはり100%である。その上、かかる複合材は、バイブロ成形、ブロックプレス、単軸プレス、アイソスタティックプレス又は押出により得ることができる。
【0024】
本発明の第4の好ましい実施態様によれば、耐火物は、保護層、伝導層、及び、前記保護層と伝導層の間に配置された1以上の中間層からなり、その際、耐火物は、少なくとも実質的に立方体の形状を有し、その際、保護層、伝導層及び1以上の中間層は、その側部表面に沿って一緒に結合されている。この実施態様においては、耐火物の全厚に対して、保護層の厚さは好ましくは10〜40%、全ての中間層の全厚は好ましくは5〜25%、そして、伝導層の厚さは好ましくは45〜85%である。無論、この実施態様において、保護層の厚さ及び伝導層の厚さの合計もやはり100%である。かかる複合材は、バイブロ成形、ブロックプレス、単軸プレス、アイソスタティックプレス又は押出により容易に得ることもできる。
【0025】
上述のとおり、伝導層は好ましくは、熱流に関して最適化されている材料から構成され、その一方で、保護層は好ましくは、熱的、化学的及び機械的耐摩耗性に関して及び/又は溶鉱炉の運転の間の天然のスカル形成を支援するその能力に関して最適化されている材料から構成されている。このために、伝導層が、保護層よりもより高い熱伝導率を有することが好ましい。伝導層が、例えば1500℃の運転温度で、保護層の熱伝導率よりも少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%、よりいっそう好ましくは少なくとも100%より高い熱伝導率を有する場合に、特に良好な結果が達成される。例えば、保護層は、例えば1500℃の運転温度で、多くとも10W/(m・K)の熱伝導率を有してよく、そして、伝導層は、少なくとも12.5W/(m・K)、より好ましくは少なくとも15W/(m・K)、最も好ましくは少なくとも20W/(m・K)の熱伝導率を有してよい。
【0026】
高温に関して本発明の耐火物の抵抗性をいっそう改善するために、本発明の更に好ましい実施態様によれば、伝導層の熱膨張率と保護層の熱膨張率の差が、可能な限り小さいことが示唆されている。伝導層の熱膨張率と保護層の熱膨張率の差が、室温(すなわち23℃)と運転温度(例えば1500℃)の間の温度で、好ましくは、室温(すなわち23℃)と運転温度(例えば1500℃)の間の全ての又は少なくともほぼ全ての温度で、可能な限り少ない場合に、特に良好な結果が得られる。伝導層の熱膨張率と保護層の熱膨張率の差が、室温(すなわち23℃)と運転温度(例えば1500℃)の間の温度で、それぞれ同じ温度で測定した場合に、多くとも0.6μm/(K・m)、好ましくは多くとも0.4μm/(K・m)、より好ましくは多くとも0.2μm/(K・m)であるときに、特に良好な結果が得られる。
【0027】
原則的に、本発明の耐火物は、隣接する層が相互に6MPaを上回る層間結合強度でもって結合されている複合材を生じる任意のプロセスによって調製されてよい。例示的に、耐火物は、次の工程を含むプロセスにより得ることができる:
a)保護層のための混合物、伝導層のための混合物、及び、任意に、1以上の中間層のための混合物、を提供する工程、
b)工程a)において提供された混合物から積層したグリーンブロックを形成する工程、及び
c)工程b)のグリーンブロックをベーキングする工程。
【0028】
工程b)におけるグリーンブロックの形成は、隣接する層が相互に6MPaを上回る層間結合強度でもって結合されている任意の方法により、つまり、例えば、バイブロ成形、ブロックプレス、単軸プレス、アイソスタティックプレス又は押出により、実施されることができる。
【0029】
上述したとおり、保護層は好ましくは、優れた熱的、化学的及び機械的耐摩耗性及び/又は溶鉱炉の運転の間に天然のスカル形成を支援する高い能力を有するように、その組成に関して最適化されている。こうして、保護層により、溶鉱炉の内張りの摩耗が、特に溶鉱炉の初期運転の間に大幅に減少されることができる。保護層は、さらに、ホットメルト中の炭素の溶解及び耐火物の開放孔システム中への液体の浸透を妨げる。好ましくは、工程a)において提供される保護層のための混合物が、前記混合物の乾燥アグレゲート、また同様にバインダーに対して、少なくとも20質量%の炭素質材料、好ましくはか焼した無煙、及び、少なくとも3質量%のケイ素を含有する。無煙の代替物として又は好ましくは無煙に加えて、1以上の他の炭素質材料がこの混合物中に添加されてよい。ケイ素の添加は、保護層中への液体ホットメルトの浸透が溶鉱炉の運転の間に減少するか又は完全に防止さえされるような低い値への保護層中の孔直径の減少を引き起こす。より具体的には、ケイ素は、微細孔構造の形成を生じ、このことは、1μmを超える直径を有する孔からの累加した多孔率が試料体積の5%を超えないことを意味し、これは通常は水銀多孔計により測定される。
【0030】
工程a)において添加したバインダーは、この分野の任意の既知のバインダーであってよく、例えば、コールタールピッチ、石油ピッチ、フェノール樹脂、フルフリール樹脂、コールタール、石油タール、及び、2以上の前述の化合物の任意の混合物、からなる群から選択されたものである。バインダーの量は、作業可能なペーストが得られるように好ましくは選択され、このことは、成形プロセスのためのペーストの好適な粘度が得られることが意味される。
【0031】
その上、工程a)において提供される保護層のための混合物が、さらに酸化物セラミックスを含有し、前記酸化物セラミックスがより好ましくは酸化アルミニウム、二酸化チタン、ケイ酸アルミニウム及び2以上の前述の化合物の混合物からなる群から選択されていることが好ましい。酸化アルミニウムの添加は、液体ホットメタル及びスラグ中への溶解に対する材料の抵抗性を増加させる。高い程度のこの有利な作用を得るために、工程a)において提供される保護層のための混合物が、保護層の乾燥アグレゲートを基礎として、酸化物セラミックス6〜14質量%、より好ましくは8〜12質量%を含むことが好ましい。さらに、ケイ酸アルミニウムの添加は、ホットメタルに対する保護層の抵抗性を改善する。
【0032】
これに加えて、工程a)において提供される保護層のための混合物はさらに、保護層の耐摩耗性をさらに改善すべく、非酸化物セラミックスを含有してよい。非酸化物セラミックスは、金属炭窒化物、金属炭化物、金属ホウ化物、金属窒化物及び2以上の前述の化合物の混合物、からなる群から選択されてよい。具体的な一例として、二ホウ化チタンが言及される。
【0033】
熱伝導性を調節するために、工程a)において提供される保護層のための混合物は、さらに適量のグラファイトを含んでよい。
【0034】
単に例示的に、工程a)において提供される保護層のための混合物は、次のものを含有してよい:
−次のものの乾燥混合物:
−別の炭素質材料と任意に混合した、か焼した無煙10〜95質量%、
−ケイ素3〜20質量%、
−酸化アルミニウム、二酸化チタン、ケイ酸アルミニウム及び2以上の前述の化合物の混合物からなる群から選択された酸化物セラミックス2〜30質量、
−非酸化物セラミックス0〜20質量%、及び
−合成の又は天然のグラファイト又は両者の混合物0〜30質量%、
及び
−少なくとも1のバインダー。
【0035】
本発明のよりいっそう好ましい実施態様によれば、工程a)において提供される保護層のための混合物は次のものを含む:
−次のものの乾燥混合物:
−別の炭素質材料と任意に混合した、か焼した無煙30〜90質量%、
−ケイ素5〜15質量%、
−酸化アルミニウム、二酸化チタン、ケイ酸アルミニウム及び2以上の前述の化合物の混合物からなる群から選択された酸化物セラミックス5〜20質量、
−非酸化物セラミックス0〜10質量%、及び
−合成の又は天然のグラファイト又は両者の混合物0〜30質量%、
及び
−少なくとも1のバインダー。
【0036】
さらに上述のとおり、伝導層は好ましくは、優れた熱流を有するように、その組成に関して最適化されている。好ましくは、工程a)において提供される伝導層のための混合物は、伝導層の、また同様にバインダーの要求される高い熱伝導性を調節するために、少なくとも20質量%のグラファイトを、この混合物の乾燥アグレゲートに基づいて含有する。保護層におけるのと同様に、工程a)において伝導層のための混合物に添加したバインダーは、この分野の任意の既知のバインダーであってよく、例えば、コールタールピッチ、石油ピッチ、フェノール樹脂、フルフリール樹脂、コールタール、石油タール、及び、2以上の前述の化合物の任意の混合物、からなる群から選択されたものである。バインダーの量は、作業可能なペーストが得られるように好ましくは選択され、このことは、成形プロセスのためのペーストの好適な粘度が得られることが意味される。
【0037】
その上、工程a)において提供される伝導層のための混合物が、さらに、更なる炭素質材料、好ましくはか焼した無煙を少なくとも10質量%含有することが好ましい。
【0038】
これに加えて、工程a)において提供される保護層のための混合物が、さらに酸化物セラミックスを含有し、前記酸化物セラミックスが好ましくは酸化アルミニウム、二酸化チタン、ケイ酸アルミニウム及び2以上の前述の化合物の混合物からなる群から選択されている。これらセラミックス材料は、保護層に関して上述のものと同じ機能を有する。
【0039】
本発明の更なる好ましい一実施態様において、工程a)において提供される伝導層のための混合物は、更にケイ素を含有する。
【0040】
単に例示的に、工程a)において提供される伝導層のための混合物は、次のものを含有してよい:
−次のものの乾燥混合物:
−合成の又は天然のグラファイト又は両者の混合物20〜80質量%、
−別の炭素質材料と任意に混合した、か焼した無煙20〜80質量%、
−ケイ素0〜20質量%、及び
−酸化アルミニウム、二酸化チタン、ケイ酸アルミニウム及び2以上の前述の化合物の混合物からなる群から選択された酸化物セラミックス0〜20質量、
及び
−少なくとも1のバインダー。
【0041】
本発明のよりいっそう好ましい実施態様によれば、工程a)において提供される伝導層のための混合物は次のものを含む:
−次のものの乾燥混合物:
−合成の又は天然のグラファイト又は両者の混合物30〜70質量%、
−別の炭素質材料と任意に混合した、か焼した無煙20〜50質量%、
−ケイ素5〜15質量%、及び
−酸化アルミニウム、二酸化チタン、ケイ酸アルミニウム及び2以上の前述の化合物の混合物からなる群から選択された酸化物セラミックス5〜15質量%、
及び
−少なくとも1のバインダー。
【0042】
耐火物が1以上の中間層を含む場合には、(複数の)中間層は、上述のとおり、保護層又は伝導層に関して上述のとおり構成されていてよい。
【0043】
本発明の更なる好ましい実施態様によれば、工程c)においてグリーンブロックを1100〜1400℃、好ましくは1100〜1300℃、より好ましくは1150〜1250℃の温度でベーキングする。
【0044】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、熱処理されたブロックは、工程c)に応じたベーキング後に、終生成物の見掛け密度、機械的強度及び熱伝導率を高めるべく孔を満たすべく、含浸剤、例えば、コールタール、石油タール、コールタールピッチ、石油ピッチ、樹脂又は類似物で含浸されてよい。含浸後に、含浸剤を炭化すべく、ブロックを、好ましくは温度900〜1300℃、より好ましくは温度1000〜1200℃、よりいっそう好ましくは1100〜1200℃で再ベーキングする。含浸及び再ベーキングは、複数回繰り返されてよい。
【0045】
その上、本発明は、上述の耐火物の少なくとも1を含む内張りを含む溶鉱炉に関する。
【0046】
本発明の更なる主題は、溶鉱炉の内張りにおける前述の耐火物の耐火物の使用である。
【0047】
本発明を、付属する図面を参照して、その中に例示的に示され、かつ、説明される実施態様を参照して、より詳細に説明する。図面は以下のことを示す。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1図1は、本発明の一実施態様に応じた耐火物を示す。
図2図2は、本発明の別の一実施態様に応じた耐火物を示す。
図3図3は、本発明に応じた層間結合強度の測定のための試料の調製の仕方を図示する。
【0049】
図1に示す耐火物10は、保護層12及び伝導層14を含み、かつ、立方体の形状を有する二層複合材である。複合材の両方の層は、複合材がサンドウィッチ状のデザインを有するように、その底部表面に沿って一緒に結合されている。言い換えると、保護層12は、伝導層14の上に結合されている。この複合材デザインは、溶鉱炉の底部ライニングにおける耐火物の使用のために特に好ましい。
【0050】
また、図1に示す耐火物10も、立方体の形状を有する二層複合材であり、保護層12及び伝導層14を含む。この複合材の両方の層は、複合材がシシカバブ(shish-kabob)状のデザインを有するように、その底部表面に沿って一緒に結合している。このデザインを有する複合材は、溶鉱炉のハース壁のライニングにおける耐火物の使用のために特に好適である。言い換えると、保護層12は、伝導層14の隣に結合している。
【0051】
図3は、ISO 12986−2に説明される方法に応じた層間結合強度の測定のための試料が本発明に応じてどのように調製されるかを図示する。耐火物10の層間領域から、直径30mm及び長さ110mmでシリンダー状試験体16をドリルする。より具体的には、試料を、耐火物10の2つの隣接する層12、14の間に配置されている界面18を通じて垂直に又は少なくともほぼ垂直にコアドリルすることにより、界面18が、生じるコア16の中央に又は少なくともほぼ中央に存在するように調製する。その後、ISO 12986−2に説明されるとおり、層間結合強度自体の測定を、室温で実施する。
【0052】
以下においては、本発明を、限定しない例としてより詳細に説明する。
【0053】
実施例1
優れた熱流のために特に最適化されている二層耐火物を、保護層のための混合物及び伝導層のための混合物を調製することにより調製し、その際、保護層のための混合物は次のものを含んだ:
−か焼した無煙75質量部、
−合成グラファイト15質量部、
−酸化アルミニウム10質量部、及び
−ケイ素10質量部、
−この混合物にコールタールピッチを、作業可能なペースト、すなわち、成形プロセスのための好適な粘度を有するペーストが得られるような量でバインダーとして添加した。
そして、伝導層のための混合物は次のものを含んだ:
−合成グラファイト46質量部、
−か焼した無煙36質量部、
−ケイ素8質量部、及び
−酸化アルミニウム10質量部、
−この混合物にコールタールピッチを、作業可能なペースト、すなわち、成形プロセスのための好適な粘度を有するペーストが得られるような量でバインダーとして添加した。
【0054】
保護層のための混合物及び伝導層のための混合物を、全高さを基準として、保護層のための混合物の高さが約40質量%であり、そして、伝導層のための混合物の高さが約60質量%であるように型中で積層した。次いで、ブロックを最高温度1200℃で粉コークスパッキング(coke breeze packing)中でベーキングする前に、両方の混合物をバイブロ成形により各々寸法(W×H×L)500×400×2500mmを有するグリーンブロックへと成形した。
【0055】
この方法で得たブロックの単一層は以下の特性を有した:
保護層:
−見掛け密度:1.71g/cm3
−冷間破壊強度:50MPa、
−曲げ強度:12MPa、
−1500℃での熱伝導率:12W/m・K 及び
−孔サイズ分布:1μmより大きい直径を有する孔からの開放多孔率の合計は試料体積の1.9%に等しかった。
伝導層:
−見掛け密度:1.70g/cm3
−冷間破壊強度:45MPa、
−曲げ強度:11MPa、
−1500℃での熱伝導率:23W/m・K 及び
−孔サイズ分布:1μmより大きい直径を有する孔からの開放多孔率の合計は試料体積の2.3%に等しかった。
【0056】
上で説明したように決定した保護層と伝導層の間の層間結合強度は、9MPaであった。
【0057】
実施例2
スカル形成の簡易化のために特に最適化した二層耐火物を、実施例1に説明した方法と同様に調製したが、但し、スカル形成保護層のための混合物は次のものを含んだ:
−か焼した無煙45質量部、
−合成グラファイト30質量部、
−ケイ素10質量部、及び
−酸化アルミニウム10質量部、
−この混合物にコールタールピッチを、作業可能なペースト、すなわち、成形プロセスのための好適な粘度を有するペーストが得られるような量でバインダーとして添加した。
そして、伝導層のための混合物は次のものを含んだ:
−合成グラファイト67質量部、
−か焼した無煙15質量部、
−ケイ素8質量部、及び
−酸化アルミニウム10質量部、
−この混合物にコールタールピッチを、作業可能なペースト、すなわち、成形プロセスのための好適な粘度を有するペーストが得られるような量でバインダーとして添加した。
【0058】
この方法で得たブロックの単一層は以下の特性を有した:
保護層:
−見掛け密度:1.72g/cm3
−冷間破壊強度:60MPa、
−曲げ強度:13MPa、
−1500℃での熱伝導率:11W/m・K 及び
−孔サイズ分布:1μmより大きい直径を有する孔からの開放多孔率の合計は試料体積の1.7%に等しかった。
伝導層:
−見掛け密度:1.71g/cm3
−冷間破壊強度:35MPa、
−曲げ強度:11MPa、
−1500℃での熱伝導率:30W/m・K 及び
−孔サイズ分布:1μmより大きい直径を有する孔からの開放多孔率の合計は試料体積の3.5%に等しかった。
【0059】
上で説明したように決定した保護層と伝導層の間の層間結合強度は、8MPaであった。
【0060】
比較例1
二層耐火物を、保護層のための混合物及び伝導層のための混合物を調製することにより調製し、その際、保護層のための混合物は次のものを含んだ:
−か焼した無煙75質量部、
−合成グラファイト15質量部、
−酸化アルミニウム10質量部、及び
−ケイ素10質量部、
−この混合物にコールタールピッチを、作業可能なペースト、すなわち、成形プロセスのための好適な粘度を有するペーストが得られるような量でバインダーとして添加した。
そして、伝導層のための混合物は次のものを含んだ:
−か焼した無煙36質量部、
−合成グラファイト46質量部、
−ケイ素8質量部、及び
−酸化アルミニウム10質量部、
−この混合物にコールタールピッチを、作業可能なペースト、すなわち、成形プロセスのための好適な粘度を有するペーストが得られるような量でバインダーとして添加した。
【0061】
次いで、両混合物を以下の寸法を有する個々のグリーンブロックへと成形した:
保護層:500×160×2500mm、及び
伝導層:500×240×2500mm。
【0062】
これらブロックを粉コークスパッキング中でベーキングし、最高温度1200℃で処理した。
【0063】
その後、ベーキングしたブロックの表面を破砕し、両方のブロックをその底部表面によって、これら表面をフェノール樹脂を使用して接着させることにより一緒に結合した。150℃での接着剤の硬化後に、この接着したブロックを1000℃まで加熱した。
【0064】
こうして得られたブロックは、実施例1に説明したブロックと同様の特性を有したが、但し、保護層と伝導層の間の層間結合強度は著しく低かった。より具体的には、上で説明したように決定した保護層と伝導層の間の層間結合強度は、3MPa未満であった。
【0065】
比較例2
比較例1に説明した方法と同様に二層耐火物を調製し、但し、ブロックを1000℃での引き続く熱処理なしに150℃で接着の後に硬化だけさせた。
【0066】
こうして得られるブロックの、上で説明したように決定した保護層と伝導層の間の層間結合強度は、5MPa未満であった。
【0067】
この点に関して、二層が接着剤により一緒に結合している二層ブロックの層間結合強度は、ブロックが高温で、例えば約1000℃(耐火物のベーキングに必要とされる温度)で熱処理されていない場合には、比較的高くてよいことに留意される。比較例1と2の比較により示すとおり、約1000℃での熱処理は、接着層の層間結合強度の著しい減少を生じる。
【符号の説明】
【0068】
10 耐火物
12 保護層
14 伝導層
16 シリンダー状試験体/コア
18 界面
図1
図2
図3